文化・芸術

2025年11月14日 (金)

パリ装飾美術館「ポール・ポワレ ― モードは祝祭である」展

 パリ装飾美術館で開催中の展覧会「ポール・ポワレ ― モードは祝祭である」を鑑賞しました。
 ポール・ポワレ(1879~1944)といえば、20世紀初頭に女性をコルセットから解放し、ファッションを芸術の領域へと押し上げた革新者。彼の名は、モードの歴史における革命の象徴として語り継がれています。

革命児ポワレの誕生
 呉服商の家に生まれたポワレは、幼少期から演劇や美術に強く惹かれたといいます。
 10歳のときに見た1889年パリ万博の眩い光景が、彼の創造の原点となりました。
 1903年、自身のクチュール・メゾンを創設。
 そして1907年のコレクションで発表した“コルセットを排したドレス”が、モード史を一変させます。流れるような直線のシルエット、鮮烈な色彩、そして異国趣味あふれる装飾。そこには自由を謳歌する新しい時代の息吹が宿っていました。Img_01341

芸術と祝祭の融合
Img_99561_20251111214901  ポワレは単なる服飾デザイナーではありませんでした。
 香水ブランド「ロジーヌの香水」を立ち上げ、装飾美術学校「マルティーヌ」を設立するなど、ファッションを“総合芸術”として広げていきます。
 なかでも1911年に自邸で開催した仮装舞踏会「千夜二夜物語」は伝説的。招待状、装飾、音楽まですべてを芸術的に演出し、ゲストたちを幻想の世界へと誘いました。展覧会タイトル「モードは祝祭である」は、この精神を見事に体現しています。

旅が育んだ色彩の感性
 ポワレの創造力の源には、旅があります。
 妻ドニーズとともにロシアを訪れ、地中海を巡り、モロッコやアルジェリアの文化に触れることで、彼の色彩感覚はさらに磨かれました。
 展示では、旅先でのスケッチや刺繍、テキスタイルの数々が紹介され、異国の風がポワレの作品にどう息づいたのかを感じ取ることができます。
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アートとの共鳴

 ポワレはラウル・デュフィやジョルジュ・ルパップ、ポール・イリブといった芸術家たちと積極的に協働しました。
  Img_99371 デュフィによる《La Petite Usine(小さな工場)》(上の写真)は、彼のアトリエの創造的熱気を生き生きと描き出しています。
  さらに映画『L’Inhumaine』(1924年)では衣装を手がけ、音楽、建築、絵画といった多様な分野とモードを結びつけました。ポワレにとってファッションは、あらゆる芸術が交差する舞台だったのです。

モードの王から伝説へ
 しかし、第一次世界大戦後、社会はよりシンプルで実用的な装いを求め始めます。
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   1925年の「アール・デコ博」で披露した豪華な展示(上の写真)は話題を呼びましたが、経営は次第に悪化し、メゾンは閉鎖へと向かいました。
 それでもポワレの精神は、ジョン・ガリアーノ(ディオール)、高田賢三(Kenzo)、アズディン・アライアなど、後世のデザイナーたちの創作に脈々と息づいています。Img_00951jpg
 展覧会の終章で紹介される彼らのオマージュ作品は、ポワレの影響の大きさを改めて感じさせるものでした。

芸術家としてのクチュリエ
 「私はクチュリエではない。アーティストである。」
 ポワレのこの言葉が示すように、彼の仕事は服づくりを超えた総合芸術でした。衣服、香り、色彩、祝祭、そして人生そのもの――それらを一つの作品として生きた彼の姿を、この展覧会は鮮やかに描き出しています。

 会期は、2026年1月11日までです。モードとアートの境界を超えた“祝祭”を、ぜひ現地で体感してみてはいかがでしょう。

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2025年11月13日 (木)

隠れた邸宅ミュゼ「ジャン=ジャック・エンネル」美術館

 9月の第3週末はパリ文化遺産の日とあって、話しに聞いていたパリ17区にある邸宅美術館「ジャン=ジャック・エンネル(Jean- Jacques Henner)美術館」に行ってきました。
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 ここは19世紀に活躍したアカデミー派の画家、ジャン=ジャック・エンネル(1829?1905)の邸宅をそのまま公開した、静かな隠れ家のような美術館です。
 印象派が革新を進めていた時代に、彼はあえて伝統に立ち返り、人物の内面を丁寧に描いた写実的な作風で高い評価を得ました。ローマ賞を受賞し、芸術アカデミー会員やレジオン・ドヌール勲章受章といった華やかな経歴を持ちながらも、現在ではその名を知る人は少なく、まさに“忘れられた巨匠”といえます。
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 館内は、もともと友人で画家のギョーム・デュビュフの邸宅を改装したもの。オリエンタルな装飾のアトリエやデルフト陶器の暖炉など、19世紀当時の雰囲気が美しく再現されています。展示されている肖像画の多くは、依頼主の社会的な顔と個人の内面を見事に描き分け、写真では表せない人間の深みを感じさせます。Img_9912_deblur1
 また、エンネルは女性画家の教育にも力を注ぎ、150人以上の女性を指導しました。現在の美術館でもその精神を受け継ぎ、女性アーティストに焦点を当てた企画展を開催しているとのこと。静寂の中で19世紀フランス美術のもうひとつの光に出会える、知る人ぞ知る名館でした。

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2025年11月11日 (火)

「クレオパトラ:女王の神話と現実展」映画と歴史を越えて

 パリのアラブ世界研究所で開催されている「クレオパトラ:女王の神話と現実展」を訪れました。
 本展は、古代エジプト最後の女王クレオパトラ7世の生涯と、2000年にわたり形作られてきた彼女のイメージを探る展覧会です。

Img_97911  右は、「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、世界の歴史も変わっていたであろう」パスカルの「パンセ」の一節とともに展示されていたクレオパトラの頭像です。

 実際のクレオパトラは、絶世の美女としてよりも、卓越した政治力や語学力、外交手腕に優れたファラオでした。
 しかし、私たちの頭にあるおかっぱ頭や極太アイライン、黄金の装飾といった姿は、映画や美術、広告によって作られた幻想に過ぎません。

 展覧会では、考古学的遺物や宝飾品、彫刻など歴史的事実を示す資料に加え、リズ・テイラーやモニカ・ベルッチの映画衣装や現代美術作品も展示されています。古代の記録と近現代の表現を比較しながら、神話と歴史の両面からクレオパトラ像を再考できる構成です。

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 上は、映画でモニカ・ベルッティが着用したドレスです。
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 右は、ジョン・ガリアーノによるディオールのドレスです。

 本展を巡ることで、「伝説」と「現実」の間にあるクレオパトラの真実に触れ、自らの目で歴史を見極める大切さを改めて感じられます。神話に彩られた女王の姿と、冷静に検証された史実が織りなす空間は、知的好奇心を刺激する貴重な体験となりました。

 会期は2026年1月11日までです。

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2025年11月10日 (月)

リック・オウエンス“愛の神殿”―― 挑発と美が交錯する回顧展

   パリ市立モード美術館・ガリエラ宮で開催中の、リック・オウエンス初の回顧展「Rick Owens, Temple of Love(リック・オウエンス/愛の神殿)」を事前予約のうえ訪れました。
 本展は、ロサンゼルスでの初期から現在に至る約30年の創作活動を総覧し、100体を超えるルックをはじめ、未公開のアーカイブや映像作品、アーティストとのコラボレーションなどが紹介されています。
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 会場に一歩足を踏み入れると、そこはまさに彼の名のとおり“愛の神殿”。
 90年代のロサンゼルス時代からパリ移住後まで、彫刻的な造形やダークトーンによる挑発的な美が展開され、服という枠を超えた、社会や規範への“叫び”としての作品が圧倒的な存在感で迫ってきます。女性の肉体的な強さや、生々しい美しさを讃えるその表現は、まさに生きたパフォーマンスのようでした。

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 展示は館内だけでなくファサードや広場にまで広がり、19世紀建築に新たな息吹と光をもたらしています。
 ファッションを武器に社会へ挑み続けるリック・オウエンスの世界を、全身で体感できる展覧会です。会期は2026年1月4日まで。

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2025年11月 9日 (日)

沈黙を彫る――アズディン・アライア、完璧を刻んだクチュールの記憶

  パリ・マレ地区のフォンダシオン・アズディン・アライアでは、展覧会「沈黙を彫る(De silence sculpte)」が、11月30日まで開催されていて、私も足を運びました。
 展示の中心は、アライアが11年の沈黙を破り復帰した2003年夏秋クチュール・コレクションです。会場は当時のショーが行われた歴史的なガラス屋根の下で、約30点の作品が再び姿を現していました。
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 デニムをモスリンのように操り、地の目を外したカッティングで身体を包むドレス、クロコレザーのジャケットなど、卓越した技術と静謐な美が融合した作品群が並びます。Img_96711 キュレーター、オリヴィエ・サイヤール氏によれば、この時期のアライアは「沈黙のうちに完璧を刻んだ存在」。クチュールとプレタポルテの境界を超え、すべての服に等しく敬意を注いだといいます。

 2階では、写真家ブルース・ウェーバーが『ヴォーグ・イタリア』のために撮影したモノクロ写真が展示され、布と身体が織りなす詩的な瞬間を映し出していました。

 展覧会は、アライアの創造の頂点と、仕立ての芸術への深いオマージュでした。静寂の中にこそ宿る美――アライアが遺したその哲学は、今もなお、時を超えて私たちの心を震わせ続けています。

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2025年11月 8日 (土)

ボン・マルシェ「ロックン・ドロール」展 ― ロックがデパートを占拠!

   パリ左岸の老舗デパート「ル・ボン・マルシェ」では、この秋「ロックン・ドロール(Rock’n’Drole)」展が開催されていました。タイトルの“Drole”とは「おかしな」「ユーモラスな」という意味。その名の通り、遊び心あふれる楽しいイベントでした。

 キュレーションを手がけたのは、フランスを代表するロックファンでありテレビ司会者のアントワーヌ・ド・コーヌ氏。館内は1階から3階までロック一色に染まり、1階では70年代風ロックファッションや限定アイテムが並び、2階にはレコーディングスタジオを模した空間が登場します。

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 見どころは3階の「ロック・モーテル」。ド・コーヌ氏のコレクションを中心に、ビートルズやボウイ、プリンスなど伝説のロッカーたちに捧げられたベッドルーム、10室が並び、英語ナレーションのオーディオガイドで巡ることができます。まるでロックの世界を旅しているような臨場感で、音楽とアートが交差する瞬間を五感で楽しめる展示でした。

Img_93541_20251111103601                    エルヴィス・プレスリーの 部屋

Img_93621                     ビートルズの部屋

 ロックの熱狂とユーモアが共存する空間で、心が軽やかになるような時間を過ごせました。

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2025年9月20日 (土)

アイリス ボタンの博物館を見学して

 先日、以前より興味を持っていた東京・日本橋にあるアイリス ボタンの博物館を見学しました。この見学会はNPO法人ユニバーサルファッション協会による今夏の特別企画で、協会会員を中心に10数名が参加しました。
 アイリスといえば、1946年に創業した、ボタンを中心とした服飾付属品メーカーです。現在同社の相談役であり、名誉館長でもある大隅浩氏のコレクションをはじめ、世界中から集められた約1,600点のボタンが展示されています。
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 ご案内していただいたのは、ユニバーサルファッション協会のトークイベントで講師を務めていただいた株式会社アイリス商品企画部兼務Eコマース課の谷川洋子さんと、同博物館学芸員の皆口美香さんです。二手に分かれて、主な展示について解説していただきました。

 博物館が開館したのは1988年11月22日、「ボタンの日」です。
 館長の大隅氏は18~19世紀に貴族たちが装いにImg_66781_20250908200601 用いたボタンを収集しており、それらはいずれも現代では見られない独特の装飾美を備えています。こうした貴重な品々を広く一般の方にも楽しんでいただきたいとの思いから、公開に至ったといいます。

 右は、ローマ時代の「フィビュラ」です。
 1枚布をまとったトーガを肩で留めるための青銅製の留め具で、安全ピンのような形をしています。
 布のひだを整え、ボタンの原型ともいえる存在です。

Img_66421_20250908200301  上にあるのは、鹿児島の伝統工芸・薩摩焼の技術を用いたボタン。江戸時代末期、薩摩藩はボタンを含む工芸品を輸出し、西洋で流行した「ジャポニスム」を背景から支えました。薩摩焼「SATSUMA」は、今もコレクター垂涎の的です。

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 こちらは黒ガラスボタン。ビクトリア女王が喪服を着続けたことから黒い衣装が流行し、需要が高まりました。型を用いた大量生産が可能で、19世紀末から20世紀初頭にかけて広く普及しました。

Img_66481  18世紀後半の男性貴族の衣装に見られる豪奢なボタンも印象的でした。上着の胸元から膝まで大きなボタンを並べ、留め具としてではなく、権威や華やかさを示す装飾でした。

Img_66611  さらに、ミクロモザイクのボタン。18金の土台に300片もの色ガラスがはめ込まれ、中央の鳩には色調のグラデーションで立体感が表現されています。

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 右は、ココ・シャネルのスーツです。
 ボタンには獅子座生まれのシャネルを象徴するライオンの鬣が刻まれています。
 紳士服の要素を取り入れた機能的なスタイルを提案したシャネルらしく、ライオンは新しい時代を切り拓く女性へのエールでもありました。Img_66661






 
 この他にも七宝焼や刺繍、カメオ、軍服の金ボタン、トグルボタン、象牙や白蝶貝といった天然素材のボタンなど、多彩なコレクションがありました。

 Img_66971 最後に、番外編として紹介されたのが、右のカーディガンに付いているユニバーサルデザインのボタンです。少しとがりを持たせた形状で、ボタンホールにすっと入りやすく、高齢者や障害のある方にもやさしい工夫が施されています。

 長い歴史の中で、ボタンは装飾品であり、ステイタスの象徴であり、そして実用品でもありました。わずか数センチの小さな形に込められた美と技術、そして人々の思い。その一つひとつが、ボタンの奥深い世界を物語っていました。

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2025年9月19日 (金)

ジュリアン・シャリエール 「ミッドナイト・ゾーン」展

 六本木・ペロタン東京で開催されたジュリアン・シャリエールの展覧会「Midnight Zone」を観てきました。
 スイス出身の彼は、火山や氷河、熱帯雨林など極限環境を舞台に、自然と人間、テクノロジーとの関係を探求するアーティストです。

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Img_66291  映像作品《Midnight Zone》は、灯台のフレネルレンズをカメラの目とし、魚群や鮫の群れの中を深く潜航していく映像体験で、幻想的でありながら深海鉱山開発の視線をも想起させます。撮影地は太平洋のクラリオン・クリッパートン断裂帯。ここには数千種の未発見生物が棲息していますが、多金属ノジュールの採掘計画が進み、生態系破壊の危機に直面しています。

 シャリエールは、まだ理解されていない深海を記録するのではなく、「喚び起こす」ことで、その脆弱性や私たちの関わり方を問い直そうとします。本展は自然美を超え、人間の活動と地球との関係を再考させる試みでした。
 暗く冷たい海中を漂う光景に包まれると、都会の猛暑は遠のき、まるで涼やかな深海に身を解き放つような解放感がありました。

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2025年9月16日 (火)

企画展「そのとき、どうする?展 ―防災のこれからを見渡す―」

 企画展「そのとき、どうする?展 ―防災のこれからを見渡す―」が、21_21 DESIGN SIGHTで開催されています。
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 会場に入るとまず「『安全な場所』って、どこ?」という問いが目に飛び込んできます。その先には、過去の災害の記録やデータビジュアライゼーション、さらに未来を見据えた研究やプロジェクトなどが並びます。重いテーマかと思い身構えていましたが、展示は怖さや重大さを強調するのではなく、参加を促すように軽やかに構成されており、自然と引き込まれました。

 特徴的なのは、会場各所に散りばめられた「問い」です。近づいて読むと、思わず“自分ならどうする?”と考えさせられ、シールやQRコードを使って答えを残す仕掛けも用意されています。
 また、各地に残る災害の伝承をImg_65251歌やイラストで紹介するコーナーもあり、子ども向け番組のような親しみやすいメロディにのせて防災を身近に感じられる工夫がなされています。
 右は「ナマズが騒ぐと地震」、「キジがけたたましく鳴くと地震が来る」などのことわざの展示。

 展示は2部構成で、ギャラリー1では「災害とはなにか」を探ります。

Img_65561_20250828185601  上は、siro+石川将也による《そのとき、そのとき、》と題した積み木セット。自由に組み立てられますが、10分に1度「そのとき」が来て、すべてが崩れる。災害を予期することが不可能ですが、それに備えることの大切さを教えてくれる作品です。

 ギャラリー2では「災害」をきっかけに生まれたプロジェクトやプロダクトを紹介しています。たとえば「特務機関NERV防災アプリ」や、坂茂氏による紙管と布でつくる「紙の間仕切りシステム」など、実際に役立つ取り組みを知ることができます。

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 上は、坂茂建築設計+ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク《避難所用・紙の間仕切りシステム》です。こんな仕組みがあれば安心できそう。

 また「備えない防災=フェーズフリー」という発想から、日用品を災害時に活用できるアイデアも展示されており、Img_65012 日常生活と防災をつなぐ視点が新鮮でした。
 右は、普段から使える防災スリッパ。底には安全靴の耐踏み抜き性の基準に合格したインソールが入っているので、移動する際に散乱しているガラスや釘から足を守ります。
 Img_65171 上は、津村耕佑《FINAL HOME》。衣服にたくさんのポケットが付いているので、非常食や水の持ち歩き、あるいは新聞紙を詰めてダウンジャケットのようにも使うことができます。

 本展では「そのとき、どうする?」という問いを参加者とともに考えることを目的としています。正解は一つではなく、人によっても状況によっても異なります。さまざまな視点に触れることで、自分の備えや心構えを見直すきっかけになる展覧会です。会期は11月3日まで。

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2025年9月10日 (水)

「スタジオニブロール」矢内原充志氏、初のテキスタイル展

 横浜を拠点に活動するデザイン会社「スタジオニブロール」が、7月18日~27日まで象の鼻テラスで初のテキスタイル展を開催しました。
 手掛けたのは、代表でありデザイナーの矢内原充志氏。長年布と向き合ってきた自身の歩みを「原点」から見つめ直し、さらに周囲のクリエイターたちとの対話を通じて生まれた作品群を紹介する展示となりました。

 今回のテーマは 「表層と日本性」。国内の産地で制作された新作テキスタイル40点が天井から吊り下げられ、来場者は日本的な美意識や布そのものの魅力を五感で体感することができました。

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 矢内原氏(上写真)は次のように語っています。
 「これまでは“作りたい服”から逆算して布をデザインしてきましたが、今回はあえて用途を定めず、素材そのものに向き合いました。??“表層と日本性”というテーマを、あいまいで揺らぎのある、不安定な布に重ねることで、生活の豊かさやモノづくりの未来について考えるきっかけになれば、それ以上のことはありません。」

 展示作品の一部をご紹介します

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「あいまいボーダー」
 今治のパイル織機で繊細な揺らぎを表現したテキスタイル(C100%)。
 今治出身である矢内原氏ならではの視点が生きています。

Img_62921「花と死」
Img_63051jpg  1999年、フランス・アヴィニョンで出会った画家・長谷川繁氏の絵をテキスタイルに落とし込んだ染料プリント(C100%)。「花と死」という対比は、“裏という言葉の中に表という言葉が含まれている”ような二面性を表しています。

Img_62951          「カレイド」      「グラデーション」

 昇華プリントによるP100%のテキスタイル。いずれも矢内原氏のグラフィックを数多く手掛けてきたデザイナー・河の剛史氏によるビジュアルデザインです。

 全国の産地や多様なクリエイターとの協業を通して生まれる布。そのひとつひとつが、私たちの生活における豊かさや、これからの製造業のあり方を考えるきっかけを与えてくれます。矢内原充志氏と「スタジオニブロール」の挑戦を、これからも応援していきたいと思います。

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