ファッションビジネス

2019年9月 4日 (水)

セミナー「パナソニックのユニバーサルデザインの取組み」

 先日、ユニバーサルファッション協会の定例会、カラート71プロジェクトでユニバーサルデザイン(UD)の家電に関するセミナーが開催されました。テーマは「パナソニックのユニバーサルデザイン第一人者 中尾洋子さんに聞く ― 誰もがいきいきと暮らせる社会を目指す最先端のユニバーサルデザイン」です。
Img_57431  創業以来「UDは我社のDNA」と宣言するパナソニックは、UDのリーディングカンパニーとして自他ともに認められる存在です。今年も国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)国際デザイン賞金賞を二部門で受賞しました。医療福祉部門の「歩行トレーニングロボット」と、住宅設備部門で高齢者でも安全に利用できる「スマイル浴槽」です。
中尾洋子さんはこのパナソニックで2005年からUDを担当、全社UD推進担当 主幹として商品開発から広報活動まで様々なかたちでUDに関与されています。
 本セミナーでは、実際に開発に携わられた幅広い事業領域の商品やサービスを例に、UD を実現する様々な取り組みを語られました。その要点をピックアップしてみましょう。
 最初の話題は「“様々な人が使い、暮らしの中で人の近くにある家電”だから考えてきたこと」です。家電は生活必需品ということもあり、想定していない人の安全性も考える必要があるといいます。例えば洗濯機ですが、「ななめドラム式」が車いすユーザーにも使いやすいと、好評を得ているとのことです。
 次に「大切に思っているのは想像力と創造力」というお話に移ります。障がいを持っている方には想像力を働かせて、「何かお手伝いしましょうか」と声をかけるなど、選択肢を提供していくことが大切といいます。ここでのキーワードはまさにこの「選択肢」です。商品開発にあたっては、多様な選択肢に配慮した視点が欠かせないと強調します。環境や製品が対応していれば、障がいは顕在化しないのです。 
 例えば目の見えない方もTVや照明を使われているのですね。視覚障がい者の方は日常的に家電を使用されている、その例としてTVがあります。TVは情報の入手になくてはならないものになっているといいます。音声による美術館鑑賞ガイドも必須のサービスになっている様子です。また視覚障がいといっても全く光を感じていないという訳ではないので、防犯のためにも照明は必要といいます。
Img_57471  右は肢体不自由者のために開発したというライトです。
 手の甲や肘でも押して使え、電池はどのタイプのものでも対応可能という大変便利な照明器具です。

 ここからは具体的な取組み事例を、実物とともに次々に紹介されました。
Img_57461  まずは世界初のUDフォントの開発とその具体的活用例から、白内障疑似体験ゴーグルの開発、家電では手・指以外でも操作できる「レッツリモコン」(右)など。

Img_57481  とくに高齢者を見つめた家電にも力を入れているとのことで、 重さ2.0kgの超軽量掃除機(右)や、さらに軽い750gのハンディスティック掃除機も見せていただきました。
Img_57161  暗い道で安全・安心を高めるネックライト(右)は、子どもだけではなく大人にも「あったらいいな」と思うライトです。

 先進技術についても触れられ、空港での顔認証ゲートを始め、人の身体や心の状態をセンシングする様々なテクノロジー、ロボットも上記に記したIAUDアワード受賞の「歩行トレーニングロボット」や、重い荷物を持って見える位置でついてきてくれる運び屋さん「ポーターロボット」など。
 最後に、目指す社会は、「誰もが社会参加できることで、いきいきと暮らせる社会、コミュニケーションを誘発して人と人との繋がりが生まれる社会」と明言。「UDとは人や社会を想いやる創造力」の言葉で締めくくりました。

| | コメント (0)

2019年9月 2日 (月)

「ザ・ノース・フェイスの挑戦」渡辺 貴生 副社長が講演

 先般開催された「日経クロストレンドFORUM 2019」で、ゴールドウインの渡辺 貴生 副社長が登壇。「ザ・ノース・フェイスの挑戦」をテーマに基調講演されました。Img_51281jpg  「ザ・ノース・フェイス」は日本で独自に進化したといいます。渡辺 貴生氏はこの“ジャパン ノース・フェイスを作った男”といわれているのです。何故アウトドアのプロからストリートの若者まで熱烈に支持されるようになったのか。また注目企業・スパイバーと共同開発した構造たんぱく質素材で何を目指しているのかなど、その裏側を語られました。

 まずは設立の歴史です。1966年にサンフランシスコで、登山を趣味としていたダグラス・トンプキンスが「ザ・ノース・フェイス」という名前の小さなスキー用品店を立ち上げたのが始まりといいます。後を継いだのがケネス・ハップ・クロップで、アウトドアに着目してビジネスを発展させます。続いてリチャード・バックミンスター・フラーが“デザインサイエンス” という思想を持ち込み、この中で「最少の物質、時間、エネルギーが最大の効果を発揮する」という考え方を打ち出します。
 フラーのこの哲学は以後、ザ・ノース・フェイスが掲げる3つの理念に受け継がれているといいます。すなわち、①地球環境保護活動に積極的に関わること。②アウトドア業界の中で最高のパフォーマンスを創造すること。③アウトドアスポーツからアスレティックへ、より多くの人が楽しめるよう拡張すること。
 次に、今秋冬からの「ザ・ノース・フェイス」の新たな事業です。
 一つは、水を通さず空気は通す新素材「フューチャーライト(futurelight)」を使用したアイテムの発売です。この素材はナノスピニングの技術を応用した不織布の一種で、通気性のないゴアテックスに比べ革新的と強調します。
 二つには、“Core & More(コア・アンド・モア)”、つまりアスリートの発想をコアにマーケットのさらなる拡大を図る戦略です。例えば人気のヒューズボックス(FUSE BOX)はアスリートの意見を参考に背負い心地を改良してリニューアルしたといいます。
 またファッション業界への認知度を高めるために、コム・デ・ギャルソンやハイクとのコラボ、ナナミカによる別注ラインのパープルレーベルなどに力を入れていくとも。
 三つには、リテール・オペレーション、小売り事業戦略です。これには様々な取り組みがあり、例えば「ザ・ノース・フェイス・マウンテン」は山好きに特化した店、「ザ・ノース・フェイス・プラス」は、ノース・フェイス以外のブランドも扱うアウトドアの店、「ザ・ノース・フェイス・マーチ」は女性向けの店など、それぞれに個性のあるショップについて、一つひとつ解説されました。
 さらにもう一つ、これまであまり提案してこなかったキャンプ市場にも、来年度からは本格参入するといいます。

Img_51361  最後に取り上げたのが、未来へ向けたプロジェクトです。
 注目はやはり“ムーンパーカ(MOON PARKA)”です。これはベンチャー企業のスパイバーと共同開発している人工クモの糸素材“クモノス(QMONOS)”を使用したダウンジャケットで、いよいよ年内に発売予定といいます。とはいえデザイナーたちは早くもこの素材を扱い始めていて、サカイは2020春夏メンズコレクションでスパイバーとのコラボTシャツを、またユイマナカザトも同じ素材で今秋冬オートクチュールコレクションを発表しています。
 “クモノス”は人工合成タンパク質素材で生分解可能です。生分解へ向けて開発が進み、ファーフリーファーやフリース素材がこのような素材に置き代わっていけば、海洋汚染の要因となっているマイクロプラスチック問題の解消につながるかもしれません。
 「生活環境に密接に関わる事業に取り組み、さらなるチャレンジを続けていく」、 渡辺氏はこう力強く述べられ、講演を締めくくりました。

| | コメント (0)

2019年8月19日 (月)

FORUM 0704 2019⑶ 衣服大量廃棄と労働問題との繋がり

 先般のフォーラム「FORUM 0704 2019」で3番目となる最終の講演では、少し深刻な社会問題が取り上げられました。
 登壇したのは朝日新聞東京本社 オピニオン編集部 記者藤田 さつき 氏とNPO法人POSSEボランティアスタッフ/通訳・翻訳家 / ジャーナリスト岩橋 誠 氏です。「衣服の大量廃棄は労働問題と繋がっているのか」をテーマに興味深い対談が行われました。Img_33221
 最初に印象的だったのは、環境問題は労働問題でもあると結論づけたこと。とくにSDGsの17目標の中で、12の「つくる責任、つかう責任」、8の「働きがいも経済成長も」に注目。様々な意見のある朝日新聞「(耕論)ViVi広告が問うもの」記事(2019.7.3)の紹介も興味深かったです。
  藤田 氏によると、日本では、年間40億点もの服が流通し、その内約10億点、それも新品の服が廃棄されているといいます。これには日本の厳格な検品制度や、在庫が節税にならず、41zzfj9nfcl 廃棄する方が経営的にも有利ということなどが関係しているようです。
 新しいものを提案し、過去のものを陳腐化させるビジネスモデルが中心のアパレルにとって、供給過剰は避けて通ることのできない問題です。しかし最近はAIテクノロジーが進展し、かなりの部分、克服できるようになってきたといいます。これからは在庫適正化に大いに活用されていくでしょう。
 ちなみに同氏は、今年4月に共著「大量廃棄社会~アパレルとコンビニの不都合な真実~」(光文社新書)を出版されています。

 岩橋 氏は、グローバルな人権問題に日本が取り組む必要があると指摘します。ユニクロはインドネシアの工場倒産問題がまだ解決していないといいますし、H&Mはサステナブルに方向転換したといっても、工場労働者の低賃金は解消されていないとのこと。労働者が持続可能な生活を営めなければSDGsとはいえないですね。
 なおこの問題は日本でも起きていて、ベトナム出身の技能実習生の時給は240円足らずとか。いくらメイド・イン・ジャパンといってもこれでよいわけがありません。アパレルもデザイナーも最低限の労働条件を目指すべきで、クリーン・クローズド・キャンペーンやフェアトレードの重要性に目を向けて欲しい、と主張します。

 最後に、藤田 氏は「大切なのは知ること、知った上で行動すること」。岩橋 氏は「ビジネスは所詮金儲け。NGOやNPOといっても、本当にエシカルでサステナブルなのか、チェックする取り組みが重要」などとコメントして、フォーラムを締め括りました。

| | コメント (0)

2019年8月18日 (日)

FORUM 0704 2019 ⑵ 日本の伝統柄を襖紙にして世界に

 先般のフォーラム「FORUM 0704 2019」で行われた講演の二つ目は、襖紙に関するものでした。題して「日本の伝統柄を襖紙にして世界に」です。Img_33151  登壇したのは、夏水組 代表取締役 坂田 夏水 氏と、大場紙工 専務 大場 匠真 氏。すっきりとしたきもの姿がお似合いの爽やかなお二人でした。
 大場氏によると、和室が洋室に模様替えする傾向が続き、今では和室がある家は3割以下だそう。畳がなくなり障子が消え、襖紙も排除されてきたのです。 
 襖紙をどうしたら持続可能な商品にしていくのか、考えた大場氏は、襖紙を壁紙のように使うことを思いついたそう。そこで壁紙の意匠などを手掛けている坂田氏と協働し、日本の伝統柄を用いてデザインしたオリジナル襖紙のブランド「夏水組」をプロデュース。2018年からインテリアとデザインの関連見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」に出展し、国内外から注目を集めているといいます。
 その襖紙は、浴衣の注染染めに使用されてきた伊勢型紙の模様を手漉き越前和紙にシルクスクリーン印刷したもので、金粉をつけるなど柄に立体的な奥行きを持たせて仕上げているとのこと。
Img_33201  人気の柄は鶴のモチーフ、そして上の獅子地紋だそう。
 
 伊勢型紙も昨今は職人の確保が困難になっている様子です。海外展開していくには持続可能な生産が不可欠ですし、伝統を何とか守りたいといいます。私も強くそうあって欲しいと願っています。

 なおメゾン・エ・オブジェ・パリには次回も出展されるそう。もしかしたら現地でお目にかかれるかもしれないと、楽しみです。

| | コメント (0)

2019年8月17日 (土)

FORUM 0704 2019 ⑴ 「SDGsを自分ごとにする」

 去る7月6日、ファッションビジネス学会の4研究部会共催によるフォーラム「FORUM 0704 2019」が東京・渋谷区の文化学園にて開催されました。これは4研究部会の1つであるリファッション研究部会を中心に、7月4日を「おなおしの日」とし、毎年、7月4日前後にシンポジウムを開催しているもので、私もほぼ欠かさずに出席しています。
 今回は「私たちにできることは何か」という、身近な問いを考えつつ日本の伝統や労働など多角的にファッション業界の「0704=おなおし」を考察する3つの講演が行われました。 

 そのトップを切って登壇したのは、エムシープランニング 代表取締役/一般社団法人日本エシカル推進協議会 理事 薄羽 美江 氏です。「SDGsを自分ごとにする  JEI-SDGs Surveyでエシカル・セルフブランディング」をテーマに、一部聴講者参加型を取り入れたプレゼンテーションをされました。
Img_32861  冒頭、この日のご自身の服装について触れ、スーツはクリスチャン・ディオールのもので、お直しして蘇らせたといいます。バッグも缶ビールの廃プルトップでつくったブラジル製だそう。SDGsをまさに自分ごとにされていらっしゃるのですね。
 お話は、まずこのSDGs(持続可能な開発目標)からスタートしました。2015年までのMDGs(ミレニアム開発目標)と異なり、SDGsは2030年世界目標「誰も取り残さない/置き去りにしない」を目指して、全世界が一丸となってよりよい未来を実現するための17のゴールズが設けられていることなどを語られました。
 昨年発表されたSDGsの達成度ランキングでは、日本は156カ国中15位に入ったものの、北欧諸国などに比べると低いようです。 
 VUCA(Volatility(激動)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉) 社会が到来し、予測不可能な時代となっている今、日本政府が提唱しているソサエティー5.0は創造社会であり、SDGsの達成に大いに貢献する未来社会の成長モデルといいます。ソサエティー4.0と呼んでいた情報社会から、ソサエティー5.0の創造社会へ向けて今、大きな革命的な変化が起きようとしていることを再認識させられました。
 次が参加型で実施された「SDGs online Survey」です。JEIエシカル教育推進ワーキンググループが開発したという誰もがオンラインで参加できるSDGs Surveyというツールを使い、聴講者たちが薄羽さんの50の質問に答えていきます。たとえば「二酸化炭素の排出のことなど世界規模で話し合うことができる?」等など。参加者は一人ひとり、スマホを取り出して、SDGs度を自己診断するのです。ちょっと質問が早すぎて,私はなかなかついていけませんでした。でも皆、楽しそうにやっていました。これにより想像力、情報力、学習力、行動力、達成力の視点で、SDGsチャートを作成し、自身のSDGs度をチェックします。さて、結果はどうだったのでしょう。
 終盤、日本における地方創生からSDGsを達成するSDGsモデルとして、北海道下川町の森づくりの取組みや、住友化学のマラリアを防ぐ防虫蚊帳「オリセット・ネット」、NPOしんせいの福島の障がい者就労支援プロジェクトなどを紹介。しかしながらエシカル消費の認知度はまだまだで、ラーニングとプロモーションによる支持行動の促進が必要と力説。市民のボイコットならぬ「バイコット(Buy-cot)」による市場形成や、ESD(持続可能開発教育)が求められているといいます。
 最後に、バックキャスティング、つまり重大な変化を予期して備えることの重要性を強調して、講演を終えました。

| | コメント (0)

2019年8月14日 (水)

トークセッションifs fashion insight に参加して

 先般開催された伊藤忠ファッションシステム ナレッジ室主催のトークセッションシリーズ、ifsファッションインサイトに参加しました。これは「ファッションを再定義する」をテーマに、次代に向けたファッション×ビジネスの視点を提案するというものです。
Img_53641                 (今夏渋谷の街角で)
  今回はシリーズ5回目の最終回で、テーマは、「10のキーワードでみる、ファッション×ビジネス・生活者」です。
   進行は稲着達也氏(ifs fashion insight オフィシャルモデレーター/アソビシステム株式会社 CCO兼エグゼクティブプロデューサー)、パネリストは小関翼氏(スタイラー株式会社 代表取締役)、小原直花氏(伊藤忠ファッションシステム株式会社)、中村ゆい氏(伊藤忠ファッションシステム株式会社)の錚々たるメンバーが登壇しました。
  これまでの4回を振り返った後、2019年以降の生活者の志向を探ります。人口減少、成熟社会、デジタル化、ポストバブル社会の真っ只中にあって、時代と消費はどのような方向に動いていくのか、興味津々です。
 提案された下記キーワードを基に、対談が進められました。
1. 境界の再設定 ― 新しい方向へ仕切り直し
2 .消費活用 = コミュニケーション
3. モノ・コトづくり → 関わりづくり 
4. “べき”意識 → “好き”という感情や感覚へ
5. 一人の欲望 → 二人以上の欲望へ 皆で楽しむ
6. オフラインの経験 ― コピーできない体験
7. おたくモード消費 → ソーシャルモード消費へ
8. 欧米 → アジア! 欧米人もアジアにシフト
9. 共感 > 差別化ツール
10. SNS時代のファッション → オンライン化したコミュニケーションの枠内で可視化されたライフスタイルへ

 さらに「次世代に向けてファッション×ビジネスに欠かせない視点とは?」を議論。
 小関氏は、「アジアへの視点」を強調。これからはアジアが重要なマーケットになってくるといいます。インターネットは日本よりアジアの方が進んでいるし、スタートアップも日本はアジアより5年くらい遅れているそう。これはもう現地に行って事実を体感するしかない、ようです。
 稲着氏は、「アジアの消費動向は、エンタメと結びついている。ファッション業界とマンガ業界とのコラボを進める必要がある」といいます。
 また「ファッションがセクシャルではなくなった」と話し、社会的ジェンダーが薄まり、性的魅力を隠す方に動いていると指摘。小原氏は「かつてハナコ世代は、ファッションを恋愛のコミュニケーションツールととらえ、女性らしさや男性らしさを求めた」といいます。これには1995年をピークに消費がシュリンクしたことも一因でしょうし、コミュニティ意識や家族志向が強まっていることのあらわれもあるのでは、などといった興味深い意見も出ていました。
 
 ファッションは時代のムードとともに変わります。その未来の景色を開くキーワードがたくさんありました。これからのファッション×ビジネスの世界を改めて考え直させてくれたトークセッションでした。

| | コメント (0)

2019年7月 3日 (水)

循環型社会セミナー「ファッションとサステナブル」

 先月初め、「ファッションとサステナブル~これからのアパレル企業が目指すもの~」と銘打った循環型社会セミナー(繊研新聞社主催)が、東京・渋谷で開催されました。
 冒頭、主催者から在庫を扱う物流会社からの提案で企画されたセミナーであるとの趣旨説明があり、その後、業界を代表する4名の識者が次々に登壇。在庫をつくらない方法や滞留在庫の循環方法などを語りました。会場は満席で、アパレル企業のサステナビリティへの関心の高さが伺われました。
 最初は基調講演で、演壇に立ったのはディマンドワークス代表の斎藤孝浩氏です。Img_28461 在庫コントロールを生業にされてきたご自身の経験から、小売り目線でアパレル在庫をどうしたら最適化できるかを話されました。
 売れ筋と死に筋について、よく売れているからといって売れ筋とは限らない、在庫過多なら過剰分は死に筋商品で会社に損失をもたらすなどといったことから、勝ち組企業の代表としてZARAの商品企画―基本色に対し絞り込んだ色や柄をコーデイネイト提案する―や、ZARAが仕掛ける店頭マジックなどを紹介。毎シーズンのリスク回避や分散方法を解説し、最後に在庫を売り切る原則として、商品計画や販売計画を全社で共有すること、そして週毎に進捗確認・軌道修正して販売終了週までに全社協力して売り切ることが重要であると強調しました。

 休憩をはさんで次に講演したのが、アイコレクトジャパン取締役 田中秀人氏です。アイコレクト、通称アイコ(I:CO)は繊維リサイクル世界最大手、スイスのソエックスグループに属し、元はソーラーパネルを生産していた会社だったそう。2009年にドイツで不要な衣類を店頭で回収する事業を立ち上げ、アメリカ、フランス、中国そして日本にも拠点を構えて、世界中で活動しているといいます。目指すのは循環型アパレル産業の構築(CLOSED LOOP)で、パートナー企業が続々増加。今では60か国以上、H&Mやアディダスなどの小売業中心に50社以上に上っているそう。 
1img_2840  右はこのブログ2014年1月30付けに掲載したときの「アイコ」のブースです。回収箱は企業ごとに様々。当時も色々な彩りのボックスが並んでいました。
 回収された衣服は、リ・ウェア(再着用)されるものが60%、残りの40%が反毛して自動車用などに、リサイクルされるそうです。
 今後の課題は、環境への負荷をできる限り無くすこと、その上で古着をポジティブに使っていくことに焦点を当てると述べ、締めくくりました。

 3番目に登場したのが、ウィファブリック代表取締役社長 福屋剛氏です。在庫「デッドストック」を資源とみなし、企業間で簡単に取引のできる企業間マッチングプラットフォーム・スマセル(SMASELL)を運営し、循環型社会を目指していくとのこと。「オンラインプラットフォームで滞留在庫の販売機会を最大化し、廃棄の無い循環型社会を目指す!」をテーマに、スマセルの今後の可能性を熱くスピーチしました。

 トリを務めたのが、NHN SAVAWAYのTEMPOCLOUD事業部事業部長 安達友昭氏です。「プラットフォームが考える循環型マーケットのご提案」と題して、今年4月にリリースしたクラウド型ECプラットフォーム「TEMPOCLOUD(テンポクラウド)」を活用した循環型マーケットのお話をプレゼンしました。

 今や、良いものを作って売れればよいでは済まされない変革期です。セミナーを終えて、在庫削減と同時に廃棄処分後の循環過程まで、切実に考えていかなければいけない、そんな時代に突入したことを改めて痛感しました。

| | コメント (0)

2019年6月28日 (金)

JAFIC懇親会 『CSR憲章』を基に社会的活動に取組む

 この13日、東京ミッドタウンで行われた日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)の総会後、開催された懇親パーティに参加しました。

Img_29801

 まず今期の役員の方々の紹介がありました。
 次に再任された北畑 稔理事長が、「今期はSDG’sを目標に策定された『CSR憲章』に基づき、企業の社会的責任、つまりCSR活動に重点的に取り組んでいく。JAFIC参加企業は335社で中小企業が多い。その環境改善につながる活動に資するように努めていきたい」と挨拶。続いて岩田 功 CSR委員長が、『CSR憲章』の7つの指針―人権や労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者・顧客、コミュニティーへの参画と発展、組織統治について―を解説。
Img_29901  小池百合子東京都知事も来場し、「都としてデザイナーの人材育成を後押ししていく。来年の東京オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典であると同時に文化の祭典でもあり、この機会を活かして東京発信のファッションを世界に届けることを祈念している」とスピーチしました。
 最後にCSRの事例、たとえば会員企業のダイバーシティ推進活動や、衣服のリユース活動「ふくのわプロジェクト」などを映像で紹介。産地とクリエーターによるサステナブルファッションも披露されました。

 避けては通れないサステナビリティの課題を積極的に推進しようとしているJAFIC、その今後に期待しています。

| | コメント (0)

2019年6月10日 (月)

FB学会東日本支部講演会 赤峰幸生氏「美しいとは何か」

 ファッションビジネス(FB)学会東日本支部で、先月25日、定期総会に続いて講演会が行われました。講師として登壇したのは(株)インコントロ代表取締役社長の赤峰幸生氏です。「美しいとは何か」をテーマに語りました。
 赤峰氏は、ジェントルマンにふさわしいクラシックなスタイルを模索しているメンズファッション界のオーソリティです。
Img_25411  幼少の頃から絵を描くことが好きで、社会学者の伯父「清水幾太郎」の薫陶を受けて、デザインの世界を志し、桑沢デザイン研究所に入学。卒業後の1968年から服づくりを始め、良いものはメイド・イン・イングランドであることに気づき、74年に「WAY OUT」を設立。これはマンションメーカーの走りだったそう。82年に「GLENOVER」を立ち上げ、90年に現在の(株)インコントロを創業。2007年に「Akamine Royal Line」をつくり、オンワード樫山の「五大陸」には当初から関わってこられたとか。現在も百貨店やセレクトショップなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティング活動を行っているといいます。  
 まず現代という時代性についてです。物事をしっかりとした“楷書体”で見ることのできない若者が増え、メーカーは普遍的に着用できるトレンチコートやレザー、スラックスが出せていない。百貨店は四面楚歌にあると憂えます。バーバリーと三陽商会のライセンス契約が終了したように、今後「ライセンスブランドは消える」と予言。アメリカの見様見まねでやってきた日本のファッションビジネスは終焉し、戦後のビジネスを見直すときが来ている、とメッセージを送りました。
 次に「良い服は何か」について。例えばイタリアのサルトリア、アントニオ・リベラーノのスーツは30年も着続けているそう。このように時代を超えて受け継がれる服は、時間をかけて労力を惜しまずつくられているといい、良いものは手間暇かけてつくったもの、ときっぱり。
 この日の服装も、20年前のイタリア製コットンのジャケットで、ナポリでメンズファッションショーがあった時に見た服にインスパイアされてデザインしたものだそう。売れるものをつくるのではなく、連綿と存在させたいものをつくり続けることが大切と強調しました。
 最後に本題の「美しいとは何か」について。民藝運動の父と呼ばれる柳宗悦の思想を紹介。民芸品の定義 (柳宗悦の美思想「美の法門」) ―実用性、無銘性、複数性、廉価性、地方性、分業性、伝統性、他力制 ―を掲げて、講演を締めくくりました。

| | コメント (0)

2019年6月 7日 (金)

講演 パリコレ エシカル・サステナブルファッション考現

 ファッションの絶対的ミッションとなってきた「エシカル」や「サステナブル」。パリコレの常連も「サステナブルでなければファッションではない」という認識が当たり前になってきているといいます。 
 こうした中、去る5月18日、新宿の文化女子大学にて開催されたファッションビジネス学会特別講演会で、この問題を語るにふさわしい講師が招かれ、多くの関心を集めました。
Img_22071jpg   登壇したのはパリコレ取材で活躍されている朝日新聞社 東京本社報道局 文化くらし報道部 編集委員の高橋 牧子さんです。「パリコレクションにおけるクリエーションの傾向―エシカル・サスティナブルファッション考現―」と題して、ラグジュアリーブランドの世界で今、何が起こっているのか、語られました。
 
 お話の中で驚かされたのは、パリの気候があまりにも極端になっていることです。昨年は3月なのにマイナス12度にもなったそう。また7月には37度の高温で体調を悪くする人が続出したとも。自然環境問題はもう避けて通れないと、多くのデザイナーたちがメッセージを発しているようです。
 
 まず注目の若手から。真っ先に挙げたのがマリーン・セールです。2017年のLVMHプライズでグランプリを受賞し、廃棄された素材を利用したコレクションで頭角を現しているデザイナーです。 今秋冬コレクションは核戦争による地球滅亡をテーマに、核シェルターに見立てた洞窟を設け、そこからガスマスクをつけたモデルを登場させたといいます。
Img_22111  右は、この洞窟の中で光っていたアクセサリーで、インビテーションとともにプレゼントされたものだそう。
 このマリーン・セールの才能を引き出したのがバレンシアガのデムナ・ヴァザリアです。地球の危機を訴え、3Dプリンターで型をつくり、針と糸を極力使わない立体的な構造の、無駄のないミニマルなシルエットを提案しています。とはいえ、そこには伝統を大切にするオートクチュール・メゾンの、精緻な職人の手仕事との複合があることもポイントです。
 またエシカルでサステナブルといえば、その代表はステラ・マッカートニーでしょう。菜食主義者の両親に育てられたこともあり、社会活動を志し、ファッションデザイナーとなっても、ファーやレザー、シルク、ラムウールを拒否し、動物愛護活動にも熱心です。
 
 次に超巨大資本、昨年度の売上げ5兆8千億円のLVMHグループと1兆7千億円のケリンググループの取り組みについてです。両者はともに、サステナビリティの分野でも競争しているようです。つい先頃も火災に遭ったノートルダム寺院への支援で、ケリングが120億ユーロ出すなら、LVMHは250億ユーロ拠出すると言っています。
 LVMHは、2020年までに輸送にかかるCO2排出量をパッケージの縮小などにより、25%削減すると宣言。素材もサステナブルなものに変えていくとのこと。
 ケリングは動物福祉の改善が業界の急務と、新たな規定を公開。また18歳未満のモデルの起用を禁止すると表明しています。 
 もう一つ、リシュモングループでは、昨年時計の「ボーム」を誕生させています。これはストラップがコルクやコットン、レザーなど生分解性のある素材で製造されるなど、あらゆる面でエコを追求した新ブランドです。ショパールも、時計とジュエリーに「エシカルゴールド」の使用を決定したと発表しています。
 
 さらにファーやレザーについても、グッチやジバンシーなど多くのメゾンがリアルファーそっくりのエコファーへの切り替えを進行中。その方が表現の幅が広がるという利点もあるようで、本物のファー使いのブランドは減少しているといいます。
 シャネルは、元々ファーは使っていないそう。昨年末、他ブランドに先駆けて、ワニやパイソンなどのエキゾティックレザーの不使用宣言をしています。
 この他、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョンにも触れ、人種差別や年齢、性別、体型の枠を取り払うブランドのさらなる増加が顕著になってきたといいます。
 
 ファッション産業は、2番目に環境を汚染している業界とも言われています。これを打開するために求められるのが、まさに産業の変革で、その要になるのがグローバルに展開するブランドやビッグなコレクションブランドです。
 今回の講演でパリコレに参加しているクリエイティブなブランドが、いかにサステナブルに注力し始めているか、その事例を多数伺い、希望のようなものを感じました。但し危機を煽って、偽善に陥ることがないように---。この路線を前向きに進んでいってくれることを願っています。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧