ファッションビジネス

2018年10月30日 (火)

JFW-IFF MAGICセミナー「ビームスの海外戦略」を語る

 先般開催されたJFW-IFF MAGICでは、次代のビジネスを展望する多数のセミナーが行われました。その柱テーマの一つが「海外の市場開拓」でした。最終日にはビームス執行役員 経営企画室 室長金田 英治 氏が登壇し、「ビームスの海外戦略」と題して、ブランディングをはじめとする様々な事例を、繊研新聞の柏木均之記者との対談形式で語りました。
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 セレクトショップのトップを常に走り続けるビームスは、昨年英国と台湾に現地法人を立ち上げるなど、海外に積極的に打って出ています。
 中でも評価の高いブランドが「ビームスプラス」だそうです。これはアメリカのオーセンティック・カジュアルブランドですが、アジアよりも欧米で人気とか。アメリカの源流にこだわるブランドが本場米国では非常に少ない、というのも興味深いです。
 ヨーロッパ進出は、2014年のパリ、ボンマルシェが最初、2017年にはロンドンのハーヴェイニコルズに、いずれも期間限定でショップをオープン。スカジャンや吊編み機によるスエットから日本の玩具やこけしまで品揃えして、手応えを得たといいます。VMDや売場構成がヨーロッパでは新鮮に映ったこともあるそうです。しかし「何故?」と問われて、金田氏は「個人の感覚が盛り込まれていたから」といいます。ビームスでは店頭スタッフが自分なりのアレンジを自由に採り入れることができるのですね。個人の感覚を自由に出せるのがビームス流といいます。
 また英国の現地法人では、主にブランディングやPRなど日本ブランドの海外進出のサボートと、海外ブランドの日本市場参入のサポート、アーティストのマネジメント事業などを扱っているとのこと。たとえばフランス出身のアーティスト、ジャン・ジュリアンとコラボしたり、ミスターポーターと協業して日本ブランドをキュレートしたり、コペンハーゲンの国際ファッション展CIFFに出展して日本ブランドを紹介したり、ここでは会場をビームスのシンボルカラーであるオレンジ色に染めて盛り上げたエピソードも披露。
 このようにビームスの持ち味は編集型にあるといいます。日本のコンテンツ、伝統工芸などを海外発信するアシストもしていて、地方自治体からはビームスなら何とかしてもらえるのでは、と思われているとも。
 各所にネットワークを持つビームスの強みを活かした取り組みに花が咲きました。
 最後に小売業で重要なのは、「人」といいます。コミュニケーションをとってコミュニティをつくるのは人の魅力あってこそで、ビームスにはそうした魅力的スタッフがたくさんいるそうです。個々人がWEBサイトに登場して、フォロワー数を増やしている。そんなファンたちの要望もあって、昨年宝島社から、スタッフの家での暮らしぶりにスポットを当てた「ビームス・オン・ライフ」を出版、版を重ねているそうです。その人が次に何を着ようとしているのか、ファンはそれを参照して商品を購入するといいます。
 これはグローバルサイトでも同様だそう。商品紹介だけではなく、いかに自分流にアレンジするか、着こなし方も提案するなど、現在はファンづくりに注力しているといいます。
 小売りの真髄はモノ(=商品)でも器(=店舗)でもない、「人」であると改めて強調。日本でも海外でも評価されるビームスの強みは、「個人個人がブランドの形をつくっていること。規模を追うのではなく、小さなコミュニティを各都市に増やし、熟成させていく」と述べてセミナーを締めくくりました。

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2018年9月 1日 (土)

セミナー「独自性のある店づくりがお客の支持を集める!」

 消費の価値観は今や、「プレミアム消費」、「ディスカウント消費」、「シェアリング」など様々に多様化しています。こうした中、ジャパンジュエリーフェア2018セミナーで、消費動向と今後の展望を語るパネルディスカッションが行われました。
 パネラーは、三越伊勢丹の特選・宝飾時計統括部バイヤー 志村 英明 氏、髙島屋横浜店ジュエリー&ウオッチサロン シニアマネージャー青木 繁 氏、ジュエリーカミネ代表取締役 上根 学 氏、ジュエリーサロン ポンデュプレジール代表 橋本 佳代 氏で、司会はPR現代代表取締役社長 下島 仁 氏です。テーマは「独自性のある店づくりがお客の支持を集める!」で、お客さまの支持を集める取り組みについて議論が交わされました。ファッション業界にそのまま当てはまるようなお話しが多く、大変興味深かったです。

 まず最近のお客の動向について、百貨店の立場から志村氏は「賢い消費をするようになり二極化している、本物志向で、ストレスフリーの快適性を求める動きが強い」。青木氏は「直近6ヶ月の実績をみるとジュエリーの売上げがダウン、逆にウオッチはアップしていて、プレミアム消費が時計に移行している」などと述べていたのが印象的です。
 次にお客に喜ばれる自社の取り組みを、志村氏は「中間層に向けて広く浅くはもう通用しない。上客に焦点を当て、品質価値や独自性を伝え、快適空間へのアプローチで顧客の心をつかむようにしている」。青木氏は「イベントの開催や、オリジナル商品の提案、販売時の体験談をHPで共有する試みなどを行い、お客様にジュエリーの魅力を伝える努力をしている」と語られました。
Img_41081jpg  神戸で宝飾店を営む上根氏は「スリランカに鉱山を所有し、原石から宝飾品まで一貫して取り扱っていることを強みに、世代を超えた代々の宝物となるように、不朽の名作づくりに取り組んでいる。アニメ好きなので、手塚治虫の“アストロボーイ”のジュエリーや“ベルサイユのばら”、“リボンの騎士” のサファイアの王冠などをつくったところ、大きな反響がありTV局などメディアが押し寄せ、今まで宝石を知らなかった人たちにも認知されるようになった」そう。WEBを接点にオーダーメイドのジュエリーを手がける橋本氏は「買い物がストレスになる時代なので、まずは安心できるサービスを提供することが基本。ラインでの問い合わせなど客がアクションを起こしやすい工夫を心掛けている」など。
 さらにジュエリー業界の課題と今後の可能性に触れ、志村氏は、「一つは品質の低下で、そうならないようにしっかりと本物のクオリティを扱っていく。もう一つは百貨店が入り込めていない地方で、地域の富裕層の満足度が高い企画を打ち出す」。青木氏も「価格訴求の限界が来ている。ラグジュアリーも値上げしている」などと述べ、「ジュエリーの魅力発信の一つとして“ハロウィーン” などのオケージョンも考えている」。上根氏は「ヨーロッパの名家に伝わるような宝飾をつくり続ける」。橋本氏は「WEBが今後ますます有効な手段になってくる」、「SNSなどを通じてWEB世代に魅力を伝えていくことが大切と思う」といいます。

 話し合われた内容は、ジュエリー業界に限らない重要なポイントばかりでした。私も大いに参考になりました。これを機に業界のさらなる発展を期待しています。

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2018年8月 7日 (火)

リファッション2018シンポジウム 「SDGsから考える」

 この7月7日、文化学園大学にて開催された「リファッション2018」シンポジウムに行ってきました。これはファッションビジネス学会リファッション研究部会が毎年開いているもので、今年で10回目を迎えます。
 今回のテーマは「SDGs(国連の持続可能な開発目標)から考える」です。

 基調講演では、日本エシカル推進協議会会長の中原秀樹氏が「リファッションとエシカル ― エシカルって何?」をテーマに登壇。「ファッションがつくられ消費される結果、人と環境の両方が苦しんでいる」とし、買い手よし=エシカルな消費、売り手よし=エシカルな企業、世間よし=エシカルな社会の「三方よし」を実現すべきと強調しました。

 企業講演は2社で、最初の報告はH&Mジャパンです。世界のトップを行くスウェーデン発ファストファッションブランドの登場とあって、今回のシンポジウムのメインはやはりここでした。注目の発表となりました。
Img_14363 パネリストはH&MのPRプロジェクトリーダー、ジェンナー真帆氏 (写真 右)とCSRマネージャーの山浦 誉史氏です。「H&Mにおけるサステナビリティの今」と題して、同社のサステナビリティへの取り組みを語りました。

 そのビジネスコンセプトは「ファッションとクオリティを最良の価格でサステナブルに提供すること」であるそう。既に2015年から「コンシャス・エククルーシブ・コレクション」を打ち出しています。「SDGsコンパス」はH&Mの行動指針であるといいます。そこには次の3つのポイントがあるようです。

⑴ 100%循環経済を目指す。
・2030年までに素材をすべてサステナブル、つまり再生可能なものに切り替える。コットンは2020年までにオーガニックやリサイクル、ベター・コットン・イニシアティブ認証など持続可能な綿花栽培によるものに変える。
・古着の再利用は、2030年までに95%にする。
・2040年までにクライメット・ポジティブ(地球温暖化に対して積極的に影響を与える)企業となる。
⑵ 100%変化に導く。
・技術革新を助成する。例えばトレーサビリティの実現で、昨秋立ち上げた新ブランド「アーケット(ARKET)」は、「どの生地を使い、誰が作り、どこで生産されているのか」といった情報をオープンにしているのが特徴。
・非営利のH&Mファンデーションが2015年に創設したイノベーション・コンペティションのGlobal Change Award。その目的は、革新的なアイデアを通じて廃棄物ゼロの「100%循環型のファッション業界」を達成することといいます。
 2018年の受賞者は、クロップ・ア・ポーター(Crop-A-Porter 収穫後の作物の残り物を、バイオ繊維に再生する技術)、スマート・ステッチ (Smart Stitch 服のお直しとリサイクルを簡単にする溶ける糸)、ザ・リジェネレーター(The Regenerator コットンとポリエステルの混紡布地を分解し、衣服を新しい布繊維に再循環させる技術)、藻類のアパレル (Algae Apparel 藻類をエコフレンドリーで肌に良いビタミンを放出する、バイオ繊維と染料に変える)、きのこファッション(Fungi Fashion 着古したら地面に埋めて分解。きのこの根から裁断も縫製もしない服を3Dプリンタで実現)と、まさに驚異的でびっくり!
⑶ 公平かつ平等な労働環境を支援する。
・D&Iグローバル・リーダーを創設し、バングラデシュなどのサプライ工場と民主的労働環境づくりを推進している。ちなみにD&Iとは、ダイバーシティ& インクルーシビティのことで、Diversity&Inclusivityの略。
・H&Mでは、女性従業員数が76%、その内女性管理職は72%と働く女性の比率が圧倒的に高い。

 次に企業講演したのは、ジム専務の早川千秋氏。1965年に原宿にメンズニットアパレルとして創業し、当初から、「地球環境を考える」を企業理念としていたといいます。
 オーガニックコットンとメイド・イン・ジャパンを訴求する「ギブ ライフ GIVE LIFE」を立ち上げ、その30年の変遷を追いながら、「リバース・プロジェクト」とのコラボレーションや、「エシカルタウン原宿」を発信する活動などを振り返りました。
 今後の環境変化への対応や小企業が世界に羽ばたくことの困難な状況についても言及されていたのが印象的です。

 最後に、学生による意欲的な研究発表などがあり、シンポジウムを締めくくりました。

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2018年7月 6日 (金)

JAFIC新体制発足と懇親パーティで合同ショーや展示会

 日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)が14日、東京ミッドタウンにて開催した懇親パーティに出席しました。

Img_11553  今年度より人事が一新されて、挨拶に立ったのが、新理事長に就任した北畑稔レナウン社長です。「需要増進と市場拡大をさらに推進していく」などと述べられました。
 今夏は新事業の日本百貨店協会との取り組み「プレミアムサマーバザール」など、イベントも楽しみです。「アパレル」とサッカーワールドカップに引っ掛けて、日本「アバレロ!」」と締めくくったのが、愉しくて耳に残っています。

Img_11581_3    続いて来賓の小池百合子東京都知事が登壇されました。
 「東京をファッション発信の拠点にする、このために共に歩んでいきたい」などとエールを送られました。

 会場では、JAFICプラットフォームに参加している8人のデザイナーブランドによる合同ショーが行われました。
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Img_11621  また素材産地の播州(右の写真)と尾州、遠州、石川がそれぞれ小ブースを設けて、デザイナーとのコラボ作品などを披露していました。

Img_11511jpg  さらに「チームベンチ」の活動も注目されました。チームベンチはファッションで障がい者スポーツを支援しようというJAFICのチャリティ事業です。賛同企業が、商品とともに使用した原画も紹介、明るさ溢れる作品展示が印象的でした。

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2018年6月24日 (日)

「オフィスのトレンドとワークデザイン」働き方につれ変化

 先般開催されたワールドインテリアウィーク2018のイベントの一つ、東京デザインハブにて行われたセミナー「インテリアの可能性を巡って」で、「オフィスのトレンドとワークデザイン」と題したプレゼンテーションが行われました。Img_07861jpg 講師はオフィス事情に詳しい三井デザインテックの大川貴史氏です。変わるワーカーのスタイルやオフィスの環境に、デザインはどう応えていくのでしょう? この興味深いテーマを簡単にまとめてみました。

 まず語られたのが、オフィスのデザインの変遷です。ご指摘のように、私が入社した頃は、部署別にデスクが並び窓際に部長席があるといったレイアウトが普通でした。80年代にニューヨークのオフィスへ行ったとき、驚いたのはワーカーのスペースがひとり一人、パーティションで仕切られていたこと。個性を重んじる国は違う、と思いました。ところが今はもうそのような仕切りなどなくて、決まったデスクもない、フリーアドレスというカタチのオフィスが増えているそうです。その方が、仕事や気分に合わせて自由に動けて効率がよいとか。日本もそうなってきているようです。働き方につれてオフィスの姿は変化しているのですね。

 次に海外のオフィスデザイン最前線のレポートを紹介。米国ポートランドのAirbnbのオフィスはまるで邸宅のよう。サロンのような空間に広いカフェテリアがあって、ペットを連れてきてもよいのだそうです。オランダやデンマークのコペンハーゲン、オーストラリアのシドニーなど様々な先進的な事例を映像で見せていただき、感心しました。自席は用意されていても、どこでも仕事ができる環境になっていて、昇降式のデスクが備えられ席が自由に選べたり、吹き抜けのモールのような空間から自然光が射し込んでいたり----、もう至れり尽くせりです。

 この動き、日本ではどうでしょう。最近は働き方改革もあって、ユニクロをはじめこうした快適な空間をつくることを投資と考える企業が多くなってきているといいます。しかしまだまだこれからのようです。
 ワークプレイスをクリエイティブな場へ進化させていく、そのためには従来のような個人作業中心ではなく、個人作業に加えて多様なメンバーとコラボレーションできるチームで活動する場にしていくことが求められるといいます。

 最後に、その8つのポイントを挙げて締めくくられました。
①オープンオフィス ― ヒエラルキーなしに立体的にオフィスがつながる空間。
②コラボレーション ― カフェテリアなど対人コミュニケーションのとれる空間。
③フォーカス ― 集中できる空間をバランスよく配置すること。
④フレキシビリティ ― 目的を限定しないで多目的に使えるスペース。
⑤ウエル・ビーイング ― ワーカーの心と身体に配慮。自然光やグリーンなど。
⑥パーソナライゼーション ― ワーカー個人の尊重。
⑦コーポレイト・アイデンティティ ― 企業文化の発信。
⑧ソーシャライゼーション ― 社会とのつながり。

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2018年6月22日 (金)

FB学会東日本支部特別講演「シャネルの挑戦と近未来像」

 ファッションビジネス(FB)学会では前週に続き、東日本支部でも杉野学園ホールにて特別講演会を行いました。登壇したのはシャネル代表取締役 リシャール コラス氏です。
   学園の学生も揃って参加し、熱のこもった会場風景となりました。Img_07661コラス氏は、シャネル社に入社して35年、来日して25年になられるそうです。「グローバルファッションビジネス・シャネルの挑戦と近未来像(Vision)の戦略について」をテーマに、流暢な日本語でユーモアを交えて語られました。

 講演は究極のラグジュアリーハウスを創設したココ・シャネルの人物像から始まりました。シャネルは幼い頃、父親により修道院に預けられ、父親はそのまま蒸発してしまいます。修道院育ちのシャネルにとって、そのストイックな建物や白と黒、ベージュといった色は印象的なものだったに違いないと、コラス氏はいいます。それが後にシャネルのアイコンとなるリトルブラックドレスや、シャネルNo 5の香水瓶に見るシンプルなデザインにつながっていったのですね。

 またシャネル社では同社を支える高度な技術を持つ工房を、敬意を表してパラフェクション(paraffection)カンパニーと呼んでいるそうです。フェザークラフトのルマリエ(Lemarié)や刺繍のルサージュ(Lesage)などの仕事場を映像で紹介、さらにバッグ一つ作るのにも18時間、製造技術の修得に少なくとも3年を要するとも。伝統ある職人技が大切にされている様子がわかりました。「過去を生かしてより良い未来を作るのだ」(ゲーテの言葉)は、まさに同社の哲学といいます。 

 次にココ・シャネルの創作物が常に機能という目的を持っていたことを解説されました。
 一つはショルダーバッグです。当時は女性用のバッグといえば手提げのハンドバッグかクラッチしかありませんでした。そこで彼女は鎖のチェーンを付けてショルダー掛けにし、両手が使えるようにしたのです。また軽くするために薄い子羊革を選んで、キルティングを施し強度を高めると共に傷を目立ちづらくもしています。
 もう一つはリトルブラックドレスです。この黒いドレスはその頃「フォード・ドレス」と呼ばれていたそうです。フォードはアメリカの自動車メーカーで、大ヒットしたフォ―ドモデルTが黒一色だったからだそう。黒といえば喪服の時代に、シャネルはあえて男性の下着用だった黒のジャージを使って、歩きやすい膝丈のドレスをデザインし、新時代をリードしたのですね。
 この他、スポーツウェアからシューズ、ジュエリー、時計、化粧品と、機能を重視したクリエーションは枚挙にいとまがありません。初めて日焼け止めクリームを商品化し、リップスティックを考案したのもココ・シャネルだったといいます。

 さらにシャネルの銀座ビルについても興味深いお話しがありました。設計を担当したのは著名なアメリカ人建築家のピーター・マリノ氏です。外壁を四角いモザイク形状にし、LEDイリュミネーションによりシャネルツィードの模様を演出しています。動きのある表現は確かに見ていて飽きません。またココ・シャネルがアートのピグマリオン(アーティストを育てる人)でもあったことから、ネクサスホールというギャラリーを設け、展覧会を無償で開催したり、コンサートを催したり。10階のアラン・デュカスとのコラボレストランは、名称も彼女に因んで「ベージュ」にしたといいます。

 最後に驚かされたのが、このビルの建設に携わった2,500人もの職人の名前を刻んだ大理石の定礎板が、正面に設置されているという話題でした。コラス氏は、職人への感謝の気持ちを表現したかったといいます。銀ブラで通りかかった元職人が「これは私がつくった」と言ってくれたらうれしい---と。

 まさにシャネルのスピリットを体現されていると、感銘させられるエピソードが続々。心に残るすてきな講演会でした。

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2018年6月21日 (木)

FB学会特別講演「繊維産業の課題と経済産業省の取組」

 ファッションビジネス(FB)学会総会後、特別講演会が去る5月19日、文化学園大学にて開催されました。講師は経済産業省製造産業局生活製品課長 杉山 真氏です。
Img_06601jpg_2   「繊維産業の課題と経済産業省の取組」と題して、繊維産業の現状と問題点、今後の方向などを講演され、同省の考え方を知ることができました。WEBサイトには同じ内容の文書も掲載されています。そのポイントを下記にまとめました。

 まず国内繊維産業の概況です。国内生産の減少により、繊維事業所数、製造品出荷額とも、1991年比で約1/4 に減少し、アパレル市場における輸入浸透率は2017年には97.6%まで増加しました。衣料品の輸出は先進国のなかでも極めて少ないのですが、一方で生地については競争力があるとみられているようです。織物輸出額を見ると世界的に見て高い水準にあるといい、高機能・高性能繊維や高品質・高感性の素材で世界をリードしているといいます。 
 次にファッションテックついてです。第4次産業革命到来による大きなテーマとして、強調されました。アパレル業界ではE コマースの台頭で、2017年にEC化率は11%を超え、リユース、レンタル、クラウドファンディングを含め拡大が見込まれています。
 こうした中、焦点となってくるのが「コネクテッド・インダスリー」と断言。これからは様々な業種、企業、人、機械、データなどがつながり、AI等によって、新たな付加価値や製品・サービスを創出、生産性を向上し、高齢化、人手不足、環境・エネルギー制約などの社会課題を解決していくことが重要と語られました。
 その多々ある重点取組分野のなかで、とくに①スマートテキスタイルと②マスカスタマイゼーションを取り上げ、解説されました。
 ①では、生体データを取得し、高齢者、建設作業員やドライバー等の見守りや、アスリートの体調管理や運動負荷量のモニタリングを行うといった試みが見られ、「hamon」(ミツフジ)、「e-skin」(Xenoma/東大発ベンチャー)、「Smartfit」(クラボウ)、「美姿勢チェック」/「筋電WEAR」など(グンゼ)、太陽電池/太陽光発電テキスタイルの事例を紹介。
 ②では、デジタルツールを活用することで、従来の大量生産と同様の効率性で、オーダーメイドの一点物を生産・販売する試みが始まり、事例としてViscotecs(セーレン)、フクル、ZOZOSUIT(スタートトゥデイ)、島精機製作所、COUTURE(クチュールデジタル)。
 この他、マッチングプラットフォームの「シタテル」や、サプライチェーン間のデータ連携を構築する「タビオ」なども挙げられています。

 これらファッションテックは衣服というモノの概念を根本的に変革し、これまで不可能だった様々なサービスやソリューションを提供できる無限の可能性を秘めているといいます。
 今後の繊維産業構造の劇的な変化を予言する、刺激的な講演会でした。

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2018年6月 4日 (月)

IFF MAGIC 福田 稔 氏講演「アパレル産業の未来」

 先般のIFF MAGIC見本市のセミナーで、ローランド・ベルガー プリンシパルの福田 稔 氏が登壇しました。福田氏は、この ブログ2018.5.19付けで掲載した「シタテル」の戦略アドバイザーでもあります。
Img_99201jpg  「アパレル産業の未来~テクノロジーはアパレル産業をどう変えるか~」と題して、今後アパレル産業はどのように変わるのか、変わるためには何が必要となるのかについて、事例を交えながら語られました。

 まず10年後の未来を予測するにあたり、大きく二つの要素、テクノロジーの進化と消費者の変化があると指摘します。
 消費者の変化では、①価値観の多様化、②主役はデジタル世代といわれるミレニアル世代、③ニューエコノミーといわれるシェアサービスの拡大やメルカリに代表されるリユース市場の拡がり、④高齢社会となることから消費が縮小。ファッション消費は50歳代でピークを迎え、70歳代にはその半分ぐらいになると推測されています。
 次にテクノロジーの進化です。国内ファッション市場のEC化率は現在、14%となっています。これはますます増加を続け、2030年には3割を超えると予想しているそうです。これにより、①アパレルの消費形態が多様化し、中古やレンタル、スタイリングサービスなどが進出し、リアル店舗は購入場所から体験する場へ変貌していく。②消費者との情報格差が解消し、インスタグラムなど個人のトレンド発信力が強まる。③在庫リスクは、在庫を極限まで減らすマス・カスタマイゼーションなどの進展で低減される。④服作りが変わる。スマートファクトリーが導入され、ロボットミシンなどによる省人化が進行する。⑤布の革新が起こり、グーグル×リーバイスのプロジェクトジャカードのように、服がIoT化するといいます。
 多岐にわたる考察のなか、とくに興味深く思ったのがバリュー・プロポジションについてのお話でした。消費者への価値提案は次の7つの類型に収斂されていく、といいます。①利便性の追求、②プライスリーダー、③カテゴリーキラー、④ロングテール対応、⑤ライフスタイル提案、⑥エンターテイナー、⑦ローカル対応です。考えるべきポイントとして参考になります。
 さらにファッション産業の未来について、気になるところを解説されました。国内アパレル市場は中間層の落ち込みや少子化で厳しい状況が続きます。しかしグローバルで見ると、アパレルは大いに伸びる余地があるといいます。それには川上・川中の連携が大切であるとも。イタリアに見るようにメイド・イン・ジャパンのブランド力を育てていくことが業界の使命であると強調しました。ブランド力のあるメーカーはプラットフォームを活用して成長可能であるし、日・EUのEPA(経済連携協定)発効への期待、越境ECの拡大など、未来は決して暗くなく、明るいといいます。
 最後に同質化とは真逆の独自性の追求こそ21世紀アパレルのテーマと提言、印象に残るセミナーでした。

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2018年6月 3日 (日)

IFF MAGIC 尾原蓉子氏講演 企業が取り組むべき課題

 先般4月25日~27日、東京ビッグサイトで開催されたIFF MAGIC見本市で、一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション代表理事・会長 尾原 蓉子氏がトップを切って講演されました。
Img_97971  演題は「ファッション・ビジネスのトランスフォーメーション~未来へ向けて成功する企業とは~」です。著書『Fashion Business 創造する未来』の提言に加え、2018 NRF (米国小売業大会)の最新情報をまじえて、企業が取り組むべき課題を語られました。

 まず取り上げたのが2018 NRF報告です。今年のテーマは「小売りのトランスフォーメーション」だったそうで、「トランスフォーメーション」とは「変容」の意味。蝶が蛹から成虫へ変態するような劇的な変化を表す言葉であるといいます。“ディスラプション(旧態秩序の破壊)”が“New Normal(新しい常態)となるなか、ファッション・ビジネスに今、そのような巨大な変化が進行していると強調しました。とくにテクノロジーとして目立ったのが、ARやAI、ロボット、スマートスピーカー、IoT、メモリーミラーなど。米国ではこれらは既に売り場へ落とし込まれ、進展しているといいます。それなのに日本はアメリカと比べると2周遅れ、とまたしても業界に喚起を促しました。
 また今回大きな話題は「アマゾン急拡大の脅威にいかに対抗するか」だったといいます。アマゾンは2018年にウォルマートを抜いて売上高トップに躍進するとみられているそうで、2020年には米国アパレル売上高の14%ものシェアを占めると予想されているのです。無人レジのアマゾン・ゴーや、ボタンをワンプッシュするだけで商品が届くアマゾン・ダッシュ、音声コミュニケーションにも注力していて、アマゾン・アレクサからの発注を割引にするなど、事業を急拡大しています。これに対しウォルマートを始めとする他社も、スマホやメガネ不要のARなど変革を推進、アマゾンを攻略しようとしているといいます。

 次にファッション・ビジネス成功のためのディスラプションとして、下記5つのキーワードを挙げ、革新的な事例を紹介しました。
⑴サービス化― ものにソフトをプラスする、例えばRENT THE RUNWAYのようなシェアリングサービス。ファッションを個人財から社会財にする仕組み。ショールーミングも。
⑵パーソナル化― 顧客に照準を合わせる、パーソナルスタイリングサービスやAIによるデザインを行うStitch Fixや、カスタムメイドのSuitSupplyなど。
⑶ストリームライン化― 透明性、合理性、本質指向で、中間業者を排除し無駄をなくすEverlane、クリーンなデニム工場や、画像の修正を排除する姿勢。
⑷スマート化― AI、ICタグをフル活用するRebecca Minkoff、ウェアラブルな「プロジェクトジャカード」のLevi’sなど。
⑸プラットフォーム化― C to C、企画から販売までをコネクトするEtsyやシタテルなど。

 日本のファッション産業に不可欠な変革とは何か、何を変えなければいけないのか― それはまさにデジタル化であると断言しました。これにより企画・生産・物流・販売をプラットフォーム化させる、すなわち垂直化・水平化が、価値の拡大につながると指摘します。
 さらに複雑で旧態依然の産業構造を変革=ビジネスをディスラプトせよ!と明言したのが印象的でした。

 最後に未来を創るメッセージとして「未来は既にここにある。ただすべての人に配分されていないだけだ」という作家ウィリアム・ギブソンの言葉で締めくくりました。

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2018年6月 1日 (金)

コットン 2018年マーケット・リサーチ・プレゼンテーション

 今年もコットン インコーポレイテッド社による2018年マーケット・リサーチ・プレゼンテーションが4月27日、東京・日本橋で行われました。
Img_99261  講師はコットン インコーポレイテッド社本部のマネージャーで戦略分析担当のジミー・ロー(Jimmy Rowe)氏です。同社が2017年にまとめた調査資料を基に、「米国及び日本の市場動向」を語られました。
 そのポイントをざっくりとご紹介しましょう。

 まず米国も日本も、多くの消費者が自分自身及び世界により良いことをする、「ドゥ・ベター (Do Better)」な存在でありたいと思っているといいます。
 衣服へのストレス軽減を望む声は強く、日本では75%がイージケアを、71%がシワ防止と吸湿速乾などの機能を求めていて、体調を管理するスマートテキスタイルへの関心も高いようです。たとえば心拍計測ウェアへの関心度は米国49%、日本20%、水分・保湿では米国49%、日本33%など。
 サステナビリティについて日本では、サステナブルな商品を購入すると答えた人は28%と、それほど積極的ではないようです。とはいえ日本人の73%がコットンは環境に安全と考えていることがわかりました。また10人中7人が長く使えるものを少量購入すると回答。とくにサーキュラー(循環)ファッションへの意識は高く、環境負荷を減らすためリユースやリサイクルに取り組む消費者は75%と多くなっています。
 また近年、問題となっているマイクロプラスティック汚染にも触れられました。コットンとポリエステルの比較実験で、コットンは250日経つとその76%が水中で分解したのに対し、ポリエステルは4%しか分解しなかったことをグラフで提示、興味深かったです。このテーマはメディアでもっととり上げられるべきとしています。
 次に取り上げたのが、最近注目のアスレジャーとデニムです。アスレジャー市場は、2009年~2017年の8年間で28%増と急増し、アンダーアーマーなどのスポーツウェアブランドで、コットンリッチが人気だそう。デニムは2012年~2014年に市場規模が少し縮小しました。しかしその後回復し3.5%の伸びを維持しているといいます。消費者の70%は本物のコットンデニムを欲しているとも。いずれもコットンの心地よさを提供できる分野で、さらなる成長が見込めると楽観的です。
 最後に「IWW IWW IWI」、つまり「I Want What I Want When I Want It (私は欲しいときに欲しいものが欲しい)」の略のオンライン用語を挙げ、オンラインショッピングについて解説しました。
 ショッピングでは、アイディアなど情報を集めるのはオンラインで、実際の買い物はリアル店舗を好む消費者が多いといいます。オンラインで服をリサーチするのは67%、オンラインで購入するのは31%だそう。伝統的な店舗でアパレルを購入する消費者は、米国も日本も80%以上に上っていて、実店舗は依然として小売りの王様です。
 とはいえここでクローズアップされるのがVRです。2021年までに世界中で8,120万のヘッドセットが出るといいます。VRを使用するブランドへの興味は、米国の消費者で57%、日本の消費者で33%。また店舗でのデジタル利用は43%となっていて、若い消費者を中心に拡大が期待されています。
 これからの小売り業にとって、デジタルを組み合わせたショッピング体験ができることは必須になってきそうです。

 最新の消費者の動きやニーズを、日米を比較しながら語っていただき、いつものことながら大変有意義な内容のプレゼンテーションでした。

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