ファッションビジネス

2020年1月 8日 (水)

FB学会 特別講演 齊藤孝浩氏「ファッション・サバイバル」

 先般、ファッションビジネス(FB)学会2019全国大会で、昨年2月に上梓された「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞社刊)の著者、ディマンドワークス代表の齊藤孝浩氏が特別講演されました。Img_09702 テーマは「ファッション・サバイバル~これから10年のファッション消費の未来」です。講演は、ご著書「アパレル・サバイバル」に沿う内容で進められ、ITシフトにより大きく変わる「消費の形」とともに、進化するアパレル業界の最前線に迫る、という大変興味深いものでした。
 前半はデジタルショッピングを中心に、後半はサステナブルの考え方、とくにクローゼットに溢れている服やものの循環について語られました。
 冒頭挙げたのが日本の衣料品市場規模と販路別シェアの変化です。2008年から2017年までの10年間で、規模は7%シュリンクし、販路別では百貨店や量販店が減じた一方、専門店や通販は約4割増となり、プレイヤーが入れ替わったといいます。
 まず、ファッションの流通革新は10年周期で起こっているとし、これからの10年を意識して活動していかないといけないと注意喚起しました。1990年代後半にユニクロなどのベーシックSPAが登場し、2000年代後半にH&Mなどのファストファッションが旋風を巻き起こしました。その後2010年代後半にはショッピングのデジタル革新が起こり、ファストファッションには定着感があるといいます。2018年はポストファストファッションへ向けて節目の年だったと指摘します。
 次に日本は欧米から10年遅れで追随していると釘を刺します。欧米では既にオムニチャネルを卒業し2020年からサステナブルの時代に入っているのに、日本はまだオムニチャネル時代でECモール依存からも脱皮していないといいます。
 そこで変化のヒントをつかむべく、ポストファストファッション時代に向けて先行する欧米の事例を大きく4つ、紹介しました。
①都市型トレンドファッションディスカウンターの台頭。例えばH&Mの6掛けで販売する英国のプライマーク。また米国のオフプライスストア(ブランドの余剰在庫を低価格で販売する店舗)TJXカンパニーなど。TJXはもしかしたら世界一の売上高とか。日本でもワールドが子会社を通じてオフプライスストア「アンドブリッジ(&BRIDGE)」を展開しています。
②女性の内面の美にフォーカスするビューティ部門を導入したファッションストア。ビクトリアシークレットを始め、アンソロポロジーもスキンケアに乗り出しています。
③コト提案をする体験予約型ストア。教室やパーソナルカウンセリングに力を入れるルルレモンやセフォラなど。
④ショッピングのオンライン活用とオムニチャネルリテイリングOMOへの取り組み。アマゾンの自宅をフィッティングルームにする「アマゾン プライム ワードローブ」やゾゾのWEARなど。
 これら、とくに④のサービスがこれまでと違うのは、情報のパーソナライズを提供することで、時間短縮やコスト節約、それに加えて無駄足なし待ち時間なしでストレスを解消していることといいます。従来のオンラインショッピングは事前情報収集や店舗行き、商品探しといった消費者が抱えるショッピングの悩みを流通革新(イノベーション)により解決してきました。しかしこれからはアマゾンなどの例にみられるように、パーソナライズを通じて、顧客の発見の過程をさらに加速する(最適化)する時代になっているのです。
 その上で、オンラインショッピング時代に残された課題は、フィッティング、コーディネイト、商品受け取りであるとの見解を披露。デジタル時代の店舗革新の例として、英国ではクリック&コレクト、米国ではストアピックアップが進んでいること、また欧米店舗では、来店客のスマホを店頭でオンラインにつなぐことにより、ショッピングの体験価値を拡張する試みが進行中であるとレポートしました。情報収集~ショッピング~その後のフォローを途切れることなくシームレスにつなぐシームレスショッピングにより、とくにザラでは顧客に「失敗」させない最適解を提供しているといいます。
 またテクノロジーの進化に関する明言も興味深かったです。「これまでテクノロジーは企業の勝ち残りのためのものでした。しかしスマホ・4G以降、テクノロジーは消費者の豊かさのためのものになった」といいます。そして「次の革新は消費者のスマホの中で起こる。解決すべき消費者の課題は買うだけではなくその先にあるクローゼットにも広がっていく」。パラダイムシフトが「~1990年代のプロダクト・アウト」から「1990年代のマーケット・イン」へ、「2000年代はクローゼット・イン」へ変化している、との提言も目からウロコでした。
 さらに「革新の舞台は店頭から顧客のクローゼット最適化へ」お話は佳境に入っていきます。ここではスマホを舞台に繰り広げられる、主なワードローブ(服)の循環支援型ファッションテックをピックアップしました。
①コーディネイトをヒントに買い足しを手伝うシェアリングサービス
②ワードローブの着回し管理アプリ
③着なくなった服を下取りして新しい服を買うオンライン古着販売
④大好きな服と長く付き合うオンラインクリーニング完結型サービス
⑤オフシーズン服を預かり撮影、オンラインクローゼットにのせる都市型トランクルームサービス
⑥着なくなった服をもって買い物に行く、自己完結型衣料品循環プロジェクトなど
 ほんとうにいろいろな事例があっていずれも巨額の利益を出しているというのも驚きです。

41r20ccpbl  最後に「クリエイティブとは、新しいものを創り出すだけでなく、問題提起をし、解決策を提案すること」の言葉で締めくくりました。このことに気付いて実行できれば、未来は決して悲観するばかりではありません。逆に明るく楽しいショッピング環境が整うと、改めて思いました。

 今やサバイバルの分岐点、「アパレル・サバイバル」、ぜひ一読をお勧めします。

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2019年12月29日 (日)

渋谷の街が変わった! 若者も大人も楽しめるSC開業

 今年末、街の風景が大きく変わったといえば渋谷でしょう。11月1日に「渋谷スクランブルスクエア」、11月22日に「渋谷パルコ」、12月5日に「東急プラザ渋谷」の3つの大型SCがオープンしました。ファッションではラグジュアリーブランドやデザイナーブランドが増え、アートを採り入れた施設や感度の高いライフスタイルショップが拡充されています。これまで「若者の街」というイメージで発展してきた渋谷が、これら新商業施設の開業で、「若者も大人も、また外国人も楽しめる街」へ変貌し始めているのです。

「渋谷スクランブルスクエア第一期(東棟)」
 10月末に行われた内覧会に参加しました。ここは渋谷エリアで最も高い47階建てビルの地下2階から14階を占める商業施設です。東急東横百貨店の跡地に建っていますから渋谷駅に直結・直上していて、交通至便なことは言うまでもありません。 
Img_03711jpg  まずは230mの展望施設「渋谷スカイ」を訪れようと、エレベーターに乗り込みました。Img_03701jpg 天井から光から降り注ぐ演出に驚いているうちに、あっという間に屋上へ到着。広々とした心地よいスクエア(広場)から、東京を一望しました。
 ここはまさに渋谷のランドマークタワー、渋谷の新名所になりそうです。

 12階と13階はレストランフロアで、美味しいメニューを堪能できます。日本初のスペイン料理のお店「ホセ・ルイス」も出ています。
 10階と11階はライフスタイル・グッズ・フロアで、11階に中川政七商店がツタヤブックストアと軒を並べています。

Img_04141jpg 日本全国つづ浦々からの工芸技術を活かした生活雑貨が人気の店です。

 7階から9階はファッションフロアで、セレクトショップなどが出店しています。
 またビューティが6階にあるというのも新しい構成です。

 注目のラグジュアリーブランドは、駅の改札階でもある3階に入っています。
Img_04301  上はブランドのシグネチャーカラー、白黒のインテリアでまとめたジバンシーです。この他、バレンシアガ、サンローラン、ディオール、サカイ、ブルガリ、ティファニーなど。洗練されたモード感あふれるフロアです。
 
「渋谷パルコ」
 ここはファッションとアート、エンターテインメントが見事に融合しているSC。

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 渋谷駅から600m離れていても、行ってみようと思わせられてしまいますから不思議です。

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 1階の入口付近に陣取っているのはグッチで、奥にはロエベやディオール×リモアなどもあります。以前はなかったラグジュアリーブランドを導入して、富裕層を狙っているようです。 

Img_24601 コム・デ・ギャルソン・ガールは、赤やピンクを訴求。ポップな水玉模様をあしらうなど、ガーリーなファッションを提案しています。

 2階は今をときめくデザイナーブランドが勢揃いしています。
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 中でも人気なのが2 G(ツージー)。ギャラリーとセレクトショップとアートトイショップが一体化したスタジオです。入口のデザインからしてアートムードたっぷり。

 6階は、任天堂が入っていて、ポケモンセンターもあって大人気!Img_25341 ここはもう人でごった返していました。インバウンドも多いようです。
 
Img_25251  右は、地下の飲食店街「キッチンカオス」にあるシンボルデザインです。デザイン設計は藤本壮介さんで、派手なネオンサインがカオスのような路地裏を表現しているようです。
 何とジビエと昆虫食を出す「米とサーカス」も出店していてビックリ!
 驚きに満ちた新生パルコです。
 2020年3月にはパルコ劇場がオープンする予定で、これに先駆けてこけら落とし公演が1月末に行われるそう。
 話題の多いパルコに、ますます目が離せません。

「東急プラザ渋谷」
 かつての東急プラザが、「大人を楽しめる渋谷へ」をコンセプトに、ライフスタイルを提案する商業施設に生まれ変わっています。
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 ターゲットは40代以上、年齢を重ねるに連れて足が遠のいていた層に向けて渋谷の面白さや楽しさをアピールしていくそうです。
 それを象徴するのが、5階の「シブヤライフラウンジ」。イオンのお直し・リメイク・オーダーのサロン「アトリエ・クチュリエール」があったり、資産運用や投資、保険などの様々な大人の悩みに対応するサービスカウンターがあったり。大人世代の要望に応えての展開。この中心にロボットのペッパーが働く「ペッパーパーラー」があるのもおもしろいです。
 
 こんな風に渋谷の新SCを見てきた私、一見似ているようですが、やはりそれぞれの特徴を活かした業態になっていると思いました。「渋谷スクランブルスクエア」はエレガントな高級感、「渋谷パルコ」はビジネス×アート、「東急プラザ渋谷」は大人のライフスタイルを打ち出しているというように。

 さて来年は6月にあの宮下公園に、巨大な商業施設がオープンするとのことになっています。またしても生まれ変わる渋谷、街歩きがますます楽しくなりそうです。

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2019年12月28日 (土)

新1万円札の顔 渋沢栄一を紐解く 東の渋沢と西の五代

 この4月、新しい紙幣を2024年度に発行することが発表されました。20年ぶりとなる紙幣刷新で、新1万円札の顔となるのが渋沢栄一です。 
  東京商工会議所では今年度、東京商工会議所の創設者で初代会頭でもあった渋沢栄一を記念するセミナーを複数回開いています。
 Img_05231jpg 明治初期の日本経済発展の礎を築いた実業家の一方で、東京養護院に情熱を注ぐなど社会事業家でもあった渋沢栄一とは、どのような人物だったのでしょう。その人となりに興味を持ち、先般、開催された講演会に参加しました。
  登壇したのは大阪商工会議所大阪企業家ミュージアム館長・大阪大学名誉教授 宮本又郎 氏です。「激動期におけるビジネスリーダーの役割~東の渋沢栄一、西の五代友厚を中心に~」をテーマに語られました。
 まずは東の渋沢栄一と西の五代友厚の人物評です。五代友厚はNHK朝ドラ「あさが来た」でディーン・フジオカが演じて一躍有名になった大阪経済界の重鎮でした。渋沢は豪農の出で、五代は薩摩武士の出身。ともに明治政府の官僚で経済界の実力者だったことなど、共通点は多いようです。そんな二人もパリ万博を巡ってさや当てがあったそう。ちなみに五代は日本初の洋式紡績工場、鹿児島紡績所の設立に尽力し、これが現在のユニチカの礎になったのですね。
 次に両者の功績を振り返りながら、彼らの行動理念や現代経営にもつながる要諦などを検証していきます。新事業の創出を積極的に援助した二人、渋沢は主に移植産業、銀行や鉄道を、五代は在来産業、両替商金融事業を展開し、蓄財せずに、渋沢は91歳没で長寿を全う、五代は49歳で没しています。 
 二人が目指した新しいビジネスモデルやニュービジョンについて触れる中、とくに心に深く刻まれたのが渋沢の「合本主義」と「道徳経済合一説」です。渋沢は“日本資本主義の父”といわれていますが、自身では決して資本主義という言葉は使わず、「合本主義」と呼んでいたそうです。これは「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」と定義される概念で、また「道徳経済合一説」は道徳と経済は一致するという説です。宮本先生はこれを「合成の誤謬」、狭い道をみんなが我先にと通ろうとすると却って混雑してスムースに通行できなくなるという例えを使って、他者の利益を尊重することで自分も利益を得られるという渋沢の思想を紹介しました。サステナビリティへの流れから最近、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱したCSV (Creating Shared Value共通価値の創造)が注目されていますが、渋沢栄一は明治時代に既にこれを実践していたのですね。
 最後に今日における財界指導者の役割として、ベンチャーをもっと支援すべきあり、渋沢栄一の合本主義の精神「他利尊重」でいくことこそSDG’sの目標に叶うと強調して講演を締めくくりました。

 なお会場となった東京丸の内の東京商工会議所ビル6階には、東商渋沢ミュージアムがあり、渋沢栄一の直筆書物や銅像などが展示されています。足跡を訪ねてみたら意外な名言に出会えるかも。Img_05261 Img_05291

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2019年12月15日 (日)

アウトドア ファッションの未来に微生物由来タンパク質繊維

  2019 メンズファッションブランドナビによると、アウトドアウェアの人気ブランドランキングの第一位は、ゴールドウインの「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」でした。
Img_24631jpg  このブランドのショップ(渋谷パルコ)では今、スパイバー(Spiber)による石油や動物資源に頼らない微生物由来のタンパク質を使ったアウトドアジャケット「ムーン・パーカ MOON PARKAⓇ」が店頭を飾っています。
 アパレル産業においては今や、環境への配慮、対策は必要不可欠です。アウトドアウェア分野ではこの意識がとくに高く、上記ゴールドウインとスパイバーは、機能性と環境性を高度に両立した素材、製品のあり方を考え、共同開発に取組んできたといいます。

 先般のファッションワールド東京では、“ジャパン ノース・フェイスを作った男”といわれるゴールドウイン副社長の渡辺 貴生氏(このブログ2019.9.2も参照)とスパイバー代表の関山 和秀氏が登壇。「アウトドア、ファッションの未来」をテーマに基調講演されました。

 まず関山氏がプレゼンテーション。タンパク質に目をつけ、鋼鉄よりも強いといわれる蜘蛛の糸という魅力的な材料を基に微生物を使ってつくれないか、と研究を始めたといいます。その主成分のタンパク質は20 種類のアミノ酸が直鎖状に繋がった生体高分子で、アミノ酸の組み合わせパターンはほぼ無限に存在するそうです。関山氏らは微生物の発酵プロセスを利用して繰り返し実験、その結果、発酵構造タンパク質(ブリュード プロテインBrewed Protein)ファイバー、「クモノス QMONOSⓇ」の開発に成功したのです。
 2015年にゴールドウインとの協力が実を結び、「ムーン・パーカ」のプロトタイプを発表、今年2019年に製品化されたと語られました。

 次に渡辺氏が、ムーン・パーカに先駆けてTシャツを今夏250着限定で発売し完売したことを報告。今年はアポロ11号から50周年という記念の年でもあり、開発当初は水に弱かったそうですが、防水透湿機能を改良し、開拓者精神に則って、ムーン・パーカを製品化したといいます。12月12日からの抽選販売を発表したところ、50着限定なのに応募者多数ですぐに受付終了となったとか。価格は1着15万円ですが、大人気のようです。

 続いてこの新素材の今後について、興味深いお話がありました。今後この繊維を使って様々な種類の素材がつくられるようになり、循環型ではないタイプの繊維は、ファーフリーファーやレザー、インシュレーションを含めてあらゆるものが、この発酵構造タンパク質繊維に置き換えられていくというのです。
 現在、タイに量産のためのプラントを計画中で、2030年までに100万着の服の原料を生産するといいます。ゴールドウインではあと5年以内に他のブランドも一定アイテムをこの構造タンパク質繊維に変えていき、一着丸ごと再生可能なものにしていくそうですし、2025年には他のメーカーも使えるようにしたいとのことでした。

 最後にまとめとして、関山氏は「人類が直面する課題解決に貢献したいという気持で取り組んだ。アパレル先行で始めたが、自動車など多様な業種に広げていきたい」。渡辺氏は、「テクノロジーは環境をより良いものに変えることができる。スポーツやアウトドアをこの方向に少しでも前進させていきたい」などと語られました。
 お二人の環境への強い思いが伝わるセミナーでした。

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2019年12月14日 (土)

「エクラ」の編集から見えてくる、ミセスマーケットの潮流

 出版不況といわれる中、50歳前後のおしゃれな女性を対象にした雑誌「エクラ」は、この11月号も完売するなど、販売が絶好調といいます。この「エクラ」の長内育子編集長が先般「ファッションワールド東京」のセミナーに登壇、「『エクラ』の編集から見えてくる、ミセスマーケットの潮流」をテーマに講演しました。

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  エクラは、“J(ジャパン)マダム”をイメージして、2007年9月に集英社より創刊した雑誌です。“Jマダム”とは「ミラノマダムより可愛い、パリマダムより若々しい 」女性で、軽やかなファッションを楽しむ50歳前後のアラウンド50、“アラフィー”を想定しているとのこと。アラフィフではなく“アラフィー”と呼んでいるのも小意気ですね。
    表紙はいつも富岡佳子さんです。親しみやすい雰囲気で、主婦層を中心に幅広く女性たちに支持されていモデルさんです。
  また雑誌編集部門と通販チームと一緒に動いていることも強みで、“アラフィー”のための情報発信としての役割に努めているといいます。
 加えて今どきの“アラフィー”像について、おしゃれ感度が高く、SNS発信力があると分析。SNS利用率は90%だそうで、もうほとんどの女性がやっていることが分かります。その内インスタのユーザーは53.8%、フェイスブックを個人で発信している人は60%もいるとのこと。
 “エクラ売れ”という言葉もあり、エクラに載ったものは必ずヒットするというのも驚きです。掲載されたそのままのファッションが欲しいという人も多くいて、同じ服が700点以上売れたこともあったといいます。
 さらに「同窓会では2番目にキレイでいたい」というのもエクラが目指す女性の姿だそう。なぜ1番ではないのかというと、同窓会というハレの場では、悪目立ちしたくない、感じのいい人でありたいという心理が働くからとか。センスをチェックされる同世代の集まりでは“イイネ”が響くとも。
 シルエットでは体型カバーが大切で、アイテムでは体型を美しく見せるワンピースが人気だそう。カラーではワントーンがブームで、今秋冬はベージュやブラウンが受けているといいます。そういえば店頭ではエレガントな茶系が目に付きます。
 エクラが提案するクオリティの高い“Jマダム”ブランドが今、アツイ!私も早速チェックです。
 最後に“アラフィー”を「乙女の心、大人の財布」にたとえられました。開高 健の「少年の心、大人の財布」に倣い、“乙女の心”とは好奇心旺盛なチャレンジ精神、“大人の財布”は金銭的にも精神的にも余裕のある女性ということでしょうね。
 今や、ミセスマーケットは様変わり、前向きで高感度、洗練された大人のおしゃれを楽しむ“Jマダム”に変貌していることが分かりました。
 “アラフィー”市場の大きな可能性を感じた講演でした。

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2019年12月13日 (金)

スマートテキスタイル最前線! 要素技術と世界の開発動向

 昨日のこのブログの続きで、最近のスマートテキスタイルの状況について福井大学産学官連携本部 客員教授・名誉教授/繊維技術活性化協会 理事長 堀 照夫氏が講演されました。テーマは「スマートテキスタイル最前線! 要素技術と世界の開発動向とは?」です。そのポイントをまとめました。Img_87501jpg

 まずスマートテキスタイルとは何か。直訳すると“賢い繊維”です。とくに周囲の環境の変化に応じて,着用者の好ましい状態に動的に修整する機能を持つテキスタイル素材をこう呼んでいるといいます。したがってここには電子・電気・情報などの分野が関わってくることになります。IT機器を「身に着ける」ウェアラブルに対応する繊維といわれるのもこのためなのですね。
 世界の開発動向を見ると、先行しているのはフランスなどEU、また台湾もそうです。アメリカは非公開ですが最先端技術を持つNASAがあることから、進んでいるとみられています。日本は欧米らに比べ遅れていますが,ここ数年加速度的に進み出しているといいます。
 次にスマートテキスタイル用部品と要素技術を挙げて解説されました。
①生地 ― 肌との接触を考慮した着心地のよいもの
②導電性センサー ― 耐久性があり、30回の洗濯に耐えるもの
③センサー、デバイス、ICチップ ― 小型、軽量、耐久性があるもの
④電源 ― バッテリーは小型、薄型、軽量
 またお互いを接続する技術として回路構成のためのハング、接着、プリントなども。
 さらに国内に様々ある導電繊維を下記のように分類されました。
①銀イオン繊維 ― 塩化銀を練り込んだりメッキしたりすることにより電気が流れる抗菌性のある繊維で、メッキしやすいナイロンがメイン。ミツフジやセーレン、ウラセなど
②導電性インキやペースト ― ナガセケムテックスのコーティング剤
③伸縮性導電糸 ― 旭化成ロボ電の伸縮性電線
④ヒーティング材料 ― 三機コンシスの温かい手袋など
⑤圧電素子テキスタイル ― 帝人×関西大学の圧電組紐や圧電ロールなど
⑥テキスタイル用新電源 ― 住江織物の繊維状布帛型太陽電池
⑦布状各種センサー ― 槌屋
 この他、いろいろ。
 その上で生体信号を測定できるテキスタイル、心拍モニタリングなどを行う生体センシングウェアの展開例として、ヒトエ(東レ)、ココミ(東洋紡)、スマートフィット(クラボウ)、ハモン(ミツフジ)、帝人、グンゼ、ゼノマなど。海外ではフランスのシティズンサイエンス(Cytizen Science)社のスマートシャツなどを紹介。
 上記がいずれも接触型なのに対して、最近、非接触型で心拍モニタリングをする衣服、ノン・コンタクト・スマートスーツ(Non-contact Smart Suit)が台湾工業技術研究院で発表されたことにも触れ、世界は進化していると思いました。
 その上もう一つ、画期的と思ったのが、フランスのバイオセレニティ(Bioserenity)社研究所のスマートテキスタイルを使ったウェアです。このウェアには多数のセンサーが入っていて、一着で60項目ものデータをパリの病院のナースステーションに送ることができるといいます。2020年からは在宅でのデータ送信も可能になるといい、これまでの年間5万着から今年は10万着をつくって用意しているそう。しかも素材はコットン100%であるとのことで、堀 先生は、「これぞ最先端」と絶賛されていました。
 
 最後に、スマートテキスタイルの開発には電気電子メーカーやソフトウェア、ハードウェアとの共創が必須と述べて、講演を締めくくりました。

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2019年12月12日 (木)

講演 “データ資本主義”時代の衣類型ウェアラブルデバイス

 時代が金融からデータへ、“データ資本主義”へ移り替わろうとしている今、テキスタイル市場にも変革の波が押し寄せよせつつあります。その中心的存在が衣類型ウェアラブルデバイスです。
 先頃開催された「ファッションワールド東京」で、この衣類型ウェアラブルデバイス市場に関するセミナーが開かれ、ビッグデータが私たちの生活にどのような影響を与えることになるのか、興味津々参加しました。
 講師はIDC Japanシニアマーケットアナリスト菅原 啓氏です。「“データ資本主義”時代のテキスタイル:衣類型ウェアラブルデバイスは何を変革し、何をもたらすのか」をテーマに、市場分析から新たな価値まで概略を語られました。

 まず、ウェアラブルデバイスには次の5種類があるといいます。①衣類型―服全体から手袋や靴など、②耳掛け型、③モジュラー型―ペンダント型の装飾、④時計型、⑤リストバンド型です。これらの中で、衣類型ウェアラブルデバイスの市場動向について、活発な成長を見せる市場であると前置きしました。出荷台数は年々増加し、2016年に全世界で25万台だったのが、2019年には75万台超と3倍以上に伸び、今後も2023年には600万台、日本でも60万台になると予測されているといいます。
 次に国内市場で人気の衣類型ウェアラブルデバイスを2つ、紹介しました。
 一つはミツフジの「ハモン hamon」です。生体情報のメタ分析ができるデバイスで、キムラタンのベビー服に導入され、うつぶせ寝見守りソリューションとして活用されています。またワコールも「ハモン」と協業し、女性のストレス因子を解析するブラジャー型ウェアラブル「アイブラ(i BRA)」を開発し、この7月から法人向けに販売をスタートさせています。
  もう一つはバンダイのUNLIMITIV(アンリミティブ)の子ども向けスポーツシューズ です。
Img_87521jpg  靴底にセンサーユニットが付いていて、スマホアプリと連動することでテータを収集し、遊びながら運動能力の進化をアシストしてくれるといいます。「履くだけで速く走れる靴が欲しい」という子どもたちの要求から開発されたとか。価格も3,000円台でリーズナブルですので、サイズさえあれば大人も欲しいかも。
 こんな風にいろいろなデザインやブランド、機能を持つものが出てきているのですね。今後さらに機能的で安価なものが現れると期待されます。
 最後に、衣類型ウェアラブルデバイスは何を変革し、何をもたらすか、です。菅原氏は、衣類がデータをとることにより、“エコシステム”に組み込まれて新たな価値を帯びることになるといいます。“エコシステム”とは、最近 IT分野でよく使われる言葉で、業界や製品がお互いに連携することによって成り立つ全体の大きなシステムを形成するさまをいうようです。私たちユーザーもこのシステムを形成する一つになっていくのですね。
 「データ資本主義」時代の到来をひしひしと感じたセミナーでした。

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2019年12月11日 (水)

対談 デザイナー「コシノ ジュンコ」軌跡と行動哲学

 先般の「ファッションワールド東京 秋」セミナーで、世界的デザイナーのコシノジュンコさんが登壇しました。今年80歳になられてなお第一線で活躍されているコシノさん、このブログでも昨夏の講演会(2018.8.30付け)の模様を記していますのでご覧ください。

Img_87691  今回は対談で、お相手は装苑の児島幹規 編集長でした。コシノさんの活動を常に見続けてきた同氏だけに引き出しが上手。デザイナー「コシノジュンコ」の人生の軌跡から行動哲学まで、様々な話題にあふれたトークとなりました。 

 デザイナーとしての始まりは装苑賞を受賞した19歳のとき、1960年です。一歩引いて世界を見ているようなところがあったというコシノさん。「洋服屋で終わりたくない」と、人がやらないことを目指して、結果をつくっていったとか。よく遊んだけれど遊び仲間は同業者ではなくて全く違う業種の人たちだったそう。そんな遊び心が役に立ち、いわゆる“壁も乗り越えたといいます。
 和太鼓の「ドラムタオ」の衣装を手掛けたり、オペラや花火をデザインしたり---。未知のものを開拓することに夢中になる性格で、「今までやったことがない、できないことをやることが“宝になる」、との名言?も飛び出しました。
  1978年に初めてパリコレに出たときも、西欧にないものを考えて、日本のルーツに中国伝来のものが多いことから中国にイメージをふくらませてショーを行ったそう。その中国ではまだ誰もやっていない1985年からショーをスタートさせ、またキューバでも1996年にサルサをテーマに現地の人たちを巻き込んでのショーをしたといいます。

 また亡き作詞家の安井かずみさんから、フランスの高名な彫刻家セザールとの交流まで、様々な人物とのエピソードも語られ、最後にタレントのブルゾンちえみの“母と呼ばれていることも明かして、びっくり! 確かに似ています。

 思いつくままのフリートークでしたが、中でも印象的だったのはコシノさんの流行についての考え方です。流行に興味はないけれど、「無いと空しい重要なもの」、「とらわれ過ぎると自分が無くなる」、「流行は終わるけれど好きなことは終わらない」、「ファッションとは流行ではなく、もっと広い、世の中全体の流れのこと」など。

 これからもこれはと思ったものをファッションで表現し伝えていくと語るコシノさん、ますます期待しています。

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2019年12月10日 (火)

講演 ユナイテッドアローズ ブランドビジネスへの挑戦

 先般開催の「ファッションワールド東京 秋」では、ファッション業界のキーパーソンによるセミナーも多数行われました。その一つが、(株)ユナイテッドアローズ(UA)上席執行役員 第一事業本部 副本部長/(株)デザインズ 代表取締役社長 田中 和安氏が登壇した基調講演です。セレクトショップが曲がり角を迎えたといわれる中、ファッション業界はどうあるべきか、「ユナイテッドアローズが挑戦するブランドレーベルの育成 ~小売視点とブランド視点の融合・BLAMINKの事例をもとに~」をテーマに語られました。

 第一に、問いかけたのが「洋服が売れないのは本当か?」です。
 売れない要因として、“イノベーション”という変化に追いついていけず、①若者のファッション離れ、②人口減少・少子高齢化、③デフレ経済があるといわれます。が、しかし「我々は売れると思っている」ときっぱり。
 服が売れないのは、選び方や買い方に変化が起こっているからで、服は売れると次のように分析されました。①服は必需品であり、服を着なくなることはあり得ない、②自己表見や自己実現は世界的な流れであり、自分らしさを表現するのに服ほど手っ取り早いものはない、③美意識への高まり、文化的成熟はもう後戻りできない、④ファッション消費はグローバルで増加している。

 第二に、「商売は競争か?」です。
 競争というと勝つか負けるかの話になり、コストとスピード勝負の結果、商品の同質化が起こります。こうなると客は欲しいものがなくなり、勝者も疲弊してしまうといいます。とくに現在はビジネス環境の変化で、大量消費に対する反省とともにノームコア疲れが見られます。こうした現状において、「商売は競争よりも“共走”」の精神でいかないとうまくいかないと指摘します。“共走”とは全員が勝ち組になって差別化していくことであり、このためのブランディングは最重要になってくると断言しました。

 第三に、ブランディングの事例として「ブラミンク(BLAMINK)」にフォーカス。
 Img_18053 これはUAがトレンドマーケット向け事業として2016年秋にローンチした新ブランドです。南青山に旗艦店を構えています。
 このブランドを立ち上げた理由は、高感度富裕層が増えているからと明快です。価格が高くても長く着られるものが欲しいという客層の声に応えてのオープンであるそう。店舗では将来ビンテージとなって、アートピースのように時間の経過とともに値打ちが上がる服を展開しています。私も行って見て洗練された高級感漂うムードに圧倒されました。日本発のラグジュアリーを目指すブランドというのに納得です。
 ラグジュアリーブランドというと、①最低でも100年の歴史がある、②世界に流通し、主要都市で注目されている、③独自性がある、とされています。ですから日本のブランドでは無理かと落ち込んだこともあったとか。しかしラグジュアリーであるかどうかを決めるのは顧客であると気づき、独自性のある「モノ」、価値ある「ウツワ(店)」、優秀なスタッフ「ヒト」を揃えて、設立に踏み切ったと胸の内を明かされました。 
 
 最後に、UAにとってのブランド開発とは、①個性を豊かにする差別化、②「ブラミンク」のジャパンラグジュアリーへのチャレンジ、③PB強化を挙げ、「すべては顧客のために」の言葉で講演を締めくくりました。

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2019年9月 4日 (水)

セミナー「パナソニックのユニバーサルデザインの取組み」

 先日、ユニバーサルファッション協会の定例会、カラート71プロジェクトでユニバーサルデザイン(UD)の家電に関するセミナーが開催されました。テーマは「パナソニックのユニバーサルデザイン第一人者 中尾洋子さんに聞く ― 誰もがいきいきと暮らせる社会を目指す最先端のユニバーサルデザイン」です。
Img_57431   創業以来「UDは我社のDNA」と宣言するパナソニックは、UDのリーディングカンパニーとして自他ともに認められる存在です。今年も国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)国際デザイン賞金賞を二部門で受賞しました。医療福祉部門の「歩行トレーニングロボット」と、住宅設備部門で高齢者でも安全に利用できる「スマイル浴槽」です。
中尾洋子さんはこのパナソニックで2005年からUDを担当、全社UD推進担当 主幹として商品開発から広報活動まで様々なかたちでUDに関与されています。
 本セミナーでは、実際に開発に携わられた幅広い事業領域の商品やサービスを例に、UD を実現する様々な取り組みを語られました。その要点をピックアップしてみましょう。
 最初の話題は「“様々な人が使い、暮らしの中で人の近くにある家電”だから考えてきたこと」です。家電は生活必需品ということもあり、想定していない人の安全性も考える必要があるといいます。例えば洗濯機ですが、「ななめドラム式」が車いすユーザーにも使いやすいと、好評を得ているとのことです。
 次に「大切に思っているのは想像力と創造力」というお話に移ります。障がいを持っている方には想像力を働かせて、「何かお手伝いしましょうか」と声をかけるなど、選択肢を提供していくことが大切といいます。ここでのキーワードはまさにこの「選択肢」です。商品開発にあたっては、多様な選択肢に配慮した視点が欠かせないと強調します。環境や製品が対応していれば、障がいは顕在化しないのです。 
 例えば目の見えない方もTVや照明を使われているのですね。視覚障がい者の方は日常的に家電を使用されている、その例としてTVがあります。TVは情報の入手になくてはならないものになっているといいます。音声による美術館鑑賞ガイドも必須のサービスになっている様子です。また視覚障がいといっても全く光を感じていないという訳ではないので、防犯のためにも照明は必要といいます。
Img_57471   右は肢体不自由者のために開発したというライトです。
 手の甲や肘でも押して使え、電池はどのタイプのものでも対応可能という大変便利な照明器具です。

 ここからは具体的な取組み事例を、実物とともに次々に紹介されました。
Img_57461   まずは世界初のUDフォントの開発とその具体的活用例から、白内障疑似体験ゴーグルの開発、家電では手・指以外でも操作できる「レッツリモコン」(右)など。

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 とくに高齢者を見つめた家電にも力を入れているとのことで、 重さ2.0kgの超軽量掃除機(右)や、さらに軽い750gのハンディスティック掃除機も見せていただきました。

Img_57161   暗い道で安全・安心を高めるネックライト(右)は、子どもだけではなく大人にも「あったらいいな」と思うライトです。

 先進技術についても触れられ、空港での顔認証ゲートを始め、人の身体や心の状態をセンシングする様々なテクノロジー、ロボットも上記に記したIAUDアワード受賞の「歩行トレーニングロボット」や、重い荷物を持って見える位置でついてきてくれる運び屋さん「ポーターロボット」など。
 最後に、目指す社会は、「誰もが社会参加できることで、いきいきと暮らせる社会、コミュニケーションを誘発して人と人との繋がりが生まれる社会」と明言。「UDとは人や社会を想いやる創造力」の言葉で締めくくりました。

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