ファッションビジネス

2020年9月13日 (日)

有隣堂が目指す書店の未来~誠品生活日本橋プロジェクト

 先般、東京ビッグサイトで開催された雑貨EXPOで、私もお馴染みの書店、有隣堂の松信 健太郎社長が登壇するセミナーが行われました。題して「有隣堂が目指す書店の未来~アジアNo.1書店を日本へ 誠品生活日本橋プロジェクト」です。
 2019年9月、アジアNo.1書店ともいわれる台湾の誠品書店が日本橋に上陸したときは、大きな話題を集めました。導入したのが有隣堂と知り、驚かされたことを覚えています。コロナ禍の中、どのような展望を持たれているのでしょうか。興味津々拝聴しました。
 
 まず出版市場の縮小です。ピークの1996年に比べ48.6%低下したとのことです。ECアマゾンの台頭やスマホの発達、電子書籍の成長など、理由は様々。そこには日本独特の出版流通の崩壊もあるといいます。世界に例のない流通方式で発展してきた出版市場で、リードしてきたのは雑誌の販売売上だったのです。しかし2016年にはついに書籍の売上を下回るようになります。出版社では雑誌はもはや収益源ではなく、ブランドツールと再定義しているとか。この流れはコロナ禍でさらに加速しているといいます。
 次に有隣堂が他の書店と異なり売上を伸ばしてきた理由についてです。実は書店以外の事業で利益を出していたのですね。それは事務機器やオフィス通販を手掛ける外商部門です。有隣堂の売上の約半分が外商だったとは、驚きです。
 こうした中、台湾発の大型複合セレクトショップ「誠品生活」の日本1号店の開業に参画したのです。「誠品生活」は代官山蔦屋書店がモデルといわれる“本屋らしくない本屋”ですし、またタイム誌アジア版でアジアにおける最も優れた書店と高評価されたこともあったようです。
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 「誠心生活日本橋」は「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」をテーマに、昨秋、華やかにデビュー。多彩なカルチャーの発信基地として機能しているようです。
 店内はまさに雑貨と本の回廊! 台湾・中国と江戸の歴史文化が見事に融合していると思いました。
 
 開業して1年の「誠品生活」ですが、認知度は今一つ。ウィズコロナに合わせた軌道修正を視野に入れているとのことですので、今後の展開を楽しみに待っています。

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2020年9月10日 (木)

ウェビナー中川政七氏「すべてはビジョンからはじまる」

 奈良を本拠に「中川政七商店」「遊 中川」「日本市」などの自社ブランドを確立し、業界特化型の経営コンサルティング事業に携わる中川政七商店。先般、代表取締役会長 中川政七氏が登壇するウェビナー「すべてはビジョンからはじまる」が開催されました。
 私は、中川政七商店が主催する「大日本市」のイベント(このブログ2019.9.17付け)や、この8月初めに東京駅の新商業施設「グランスタ東京」にオープンした「中川政七商店 分店 服」(このブログ2020.8.11付け)など、事あるごとに取材しています。
 今回の講演は、経営に効果的なビジョンの実践方法を分かりやすく解説するレクチャーでした。その概要を下記にまとめてご紹介します。

 まずは自己紹介から。同社のビジョン「日本の工芸を元気にする!」の基本は、「経済的自立」+「ものづくりの誇りを取り戻す」ことであり、このために次の二つの考え方、一つは流通の出口を確保し拡大することと、二つ目は経営再生コンサルティングを軸に事業展開しているという。
 流通の出口拡大といっても、そこには限界があると話す。2007年頃から経営再生コンサルティングに取組むようになり、10年で20社、産地の一番星をつくろうと活動を始めた。最初のクライアントが佐賀県波佐見焼のマルヒロで、HASAMIというブランドを立ち上げた。売上より借金が多かった会社だったが、今では優良企業になっている。このように年商1億円以下の赤字企業を再生し、その件数は累計で50社以上にも上るという。
  何故うまくいったのか。それは部分ではなく全体を見たことと分析する。 最初に見るのは決算書で、それを読み解いた上で、どう手をつけていくかを考え実行するのが最大のポイントという。 いわば経営者の家庭教師をやっているような感覚とか。
  Img_41591  販路開拓では「大日本市」と呼んでいる合同展示会(右の写真は2018年夏の会場風景)を開催、毎回約50社が出展し、大いににぎわっている。
 また地域の行政と組んで人材育成講座も開講、11期生まで出ている。講義の最終回は実践型の事業プレゼンで、そこから生まれたブランドで大ヒットしているものはいくつもある。
 とはいえ産地の衰退は予想以上に早い。サプライチェーン崩壊という現実にも直面しているが、立て直しには製造背景の統合が不可欠。しかしそれには投資が要る。投資にプラスアルファの価値を呼び込むために、日本工芸産地協会という業界団体を結成、観光や現地に足を運んでもらえる環境づくりにも力を入れている。同社はここ3~4年、奈良地域のブランディングにも取り組んでいるという。
 
 次に本題のブランディングとビジョンについて。ブランディングとは付加価値をつけることではないときっぱり。付加価値というと、いかに安くてよいモノをつくるかという足し算になり、価格競争しか生まない。その対極にあるのがブランディングで、ブランド価値は掛け算であり、その価値をいかにつくり込んでいくか、意味的価値をつけるのがブランディングであるという。
 この意味的価値や感じ方は時代と共に移り変わっていて、モノがない時代は「安心」を、次にラグジュアリーブランドなどへの「憧れ」の時代、近年はデジタルに需要が移っていることを大前提にした「共感」の時代へ動いている。
 このブランディングを時代変遷とともに読み解くと、「安心」「憧れ」の時代は、商品そのものがブランドの価値を生んでいた。しかし今や「共感」の時代となり、商品だけではない。モノからコトへと言われるように、ブランドのライフスタイル、ストーリーを伝えることで共感を得るのが今の時代のブランディングであるという。商品2~3割、ブランド7~8割の比重で伝えなければいけない時代になっている。
 ところが最近、それがまたしても変化しつつあると語る。共感はもう一つ上のレイヤー、会社そのもののビジョンや思想、つまり「スタンス」へ移っているというのである。ライフスタイルよりは「ライフスタンス」という言葉を10年前くらいから唱えてきたが、それがようやく共感を生む時代になってきているという。
 それではビジョンとは何か。ビジョンとは将来のあるべき姿を描いたものであり、未来の旗印みたいなもの、そこに向かってみんなが熱くなれるものという。中川政七商店が掲げるビジョン「日本の工芸を元気にする!」のように、ビジョンは会社の事業とつながっていて、そこに向かって前進する、実現するというものでないといけないとも。
 さらにビジョンを考える上で重要なのは、CSRよりもCSVと指摘する。企業が追求すべきは、もうかったときに余裕があるから貢献するCSRよりも、本業と社会貢献が混然一体となり、ビジネスに取り組むことと社会貢献が切り離せないCSV (Creating Shared Values)の方という。「利益追求」と「社会貢献」、「自己実現」の3者が重なり合う、その真ん中でピンを打っているようなものがビジョンであると図を使って解説した。
 最後にビジョンはつくった後が重要と、次の3つのポイントを挙げた。一つは、事業との整合性を担保して展開すること。二つ目は、社内での理解で、それを徹底的にやること。社員の自覚が必須という。三つ目は、ビジョンから別の戦略、例えばコンサルティングなどをスタートさせること。実際、ビジョンをかかげなかったらコンサルティングは始まらなかった。それ自体はもうからないが、やり続けたことで、2015年ポーター賞の受賞につながるなど評価され、その後の中川政七商店の戦略的優位を築くことができたという。

 まとめとして、ライフスタイルより一つ上のレイヤーが求められる時代になりつつあること。ビジョンは非常に大切で、掲げているだけでは意味がなく、それに対して真摯に向き合うと意外な効能もあり、それが競争戦略につながる。中川政七商店がこれだけできている理由はビジョンが定まったことと思う、と結んだ。

 これからの時代のブランディングや、ビジョンを実装させるための経営のヒントになるお話が詰まっている、さすがの講演でした。

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2020年8月27日 (木)

WEBセミナー「革新と企業価値向上をどう両立させるか」

 「ニューノーマル」という前例のない事態に、どう適応し、成長戦略を描くか。経営をテーマにしたWEBセミナーがしきりと開催されています。
 その一つが丸井グループ代表取締役社長代表執行役員CEO 青井 浩氏と一橋ビジネススクール教授 楠木 建氏による「革新と企業価値向上をどう両立させるか」と題した対談です。青井氏に楠木氏がインタビューする形式で進行しました。
 丸井グループはコロナ禍も、他の商業施設の苦境をよそに今期、9期連続増配しています。その経営への考え方が興味深く、概容をまとめてみました。

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 冒頭、青井氏が、丸井グループの企業価値の中核にある「共創経営」について語ります。
 この言葉は「すべての事業プロセスにお客様の視点を取り入れること」であり、創業者の「信用はお客様とともに創るもの」に由来しているといいます。近年はこの考え方をすべてのステークホルダーに広げ、ステークホルダーとともに価値をつくる「共創経営」を進めているとのことです。
 ステークホルダーは、お客様、お取引様、社員、株主・投資家、地域・社会、それに一昨年から加えた将来世代です。これらすべてのステークホルダーが重なる部分を企業価値と定義し、この部分を広げることが企業価値の向上 と考えているといいます。
 一般にステークホルダー間の利害は対立しがちです。しかしよく見ると社員教育など利益が一致する部分もあるのです。そこで丸井グループでは短期的ではなく長期的視点で、利益の対立よりも調和をステークホルダーとの対話を通じて見つけ出そうとしているといいます。
 最近よくいわれるステークホルダー資本主義、「共創経営」はこの考え方を企業経営に落とし込んだともいえるそう。

 まず楠木氏が「ステークホルダーのためにというが、どの順番でステークホルダーに貢献していくのか」と質問すると、青井氏「いの一番はお客様、次が株主・投資家」とのこと。
 次に「エポスカードは規模が小さいが、利益率は圧倒的に高い。その中身は?」と問われて、青井氏は「創業は家具の月賦販売だった。そこは丸井の原点であり、元々金融と小売りは一体だった。小売りの視点からカード事業を手掛けていることもあり、エポスゴールドカードは年会費無料。無料なのは丸井グルーブのみ」。
 さらに楠木氏が「丸井は取引先にも新しく売上をつくる機会を提供している。ESGについての考え方は?」というと、青井氏は、ESGのE(環境)の観点から、バックミンスターフラーの富の定義「富とは将来の世代に残せる未来の日数である」の言葉に衝撃を受けたことを話し、「環境を守るとは将来世代のための倫理的責務のような取り組み」と理解したそう。再生エネルギーのベンチャーである「みんな電力」と資本業務提携し、ESGがビジネスにもつながるという取り組みを目指しているといいます。
 最後に、楠木氏が「コロナ騒動でどのようなインパクトがあったか。危機のときこそ、それまでの実力や戦略の優劣がはっきりする。『共創』という長期のストーリーはコロナ禍のもとその価値を大きくしているように思う。実感しているところがあったら教えて」と締めを促します。
 これに対する青井氏の発言に、私も感動しました。それは次のようです。
 「緊急事態宣言で2か月間全店舗を閉鎖した。厳しい状況下、取引テナントが困難に陥った。丸井グループは売上粗利方式ではなく、家賃をいただく不動産型のビジネスモデルに転換していることもあり、契約上、家賃をいただくことができる立て付けになっている。しかし一切受け取らない全額免除こそフェアと考え、2か月分を免除した。株主からすると債権放棄だが承認してもらった。取引先は喜んだが、一番うれしかったことは、社員が『共創』を口先だけではなく本気でやっているということを感じ取ったもらえたことだった」。
 
 お話しを伺って、丸井グループの「共創経営」はまさにホンモノ! 改めて青井社長の姿勢に共感しました。

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2020年8月25日 (火)

ウェビナー「小売・百貨店のニューノーマル」を探る

 先般、メディアアーティストなど様々な肩書を持つ落合陽一氏が出演する「ウィークリー落合」で、「小売・百貨店のニューノーマル」と題したウェビナーが開催されました。右肩下がりが続く小売・百貨店業界ですが、コロナショックが重なって、将来が危ぶまれているといいます。「百貨店はもう終わりゆくモデルなのか? それとも、百貨店には新たな可能性があるのか?」、百貨店の新機軸を打ち出すリーダーや専門家による議論を興味深く視聴しました。
 ゲストとして登壇したのは、青井浩氏(株式会社丸井グループ)、軍地彩弓氏(株式会社gumi-gumi)、仲田朝彦氏(株式会社三越伊勢丹HD)、宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部教授)です。
 その概要をまとめてみました。

 まずは現状から。
 百貨店の今年7月の東京地区百貨店売上高は、前年同月比-27.9%と大きく落ち込んでいます。これについて軍地氏が「ルイヴィトンやエルメスなどのハイブランドは上回っているところも多く、ブランド品は価値が落ちない」と述べたものの、落合氏は「最近、服を購入しなくなった」。宮田氏は「EC通販の利用が増えて、今まで通販で買わなかった生活必需品までカバーされてしまった」と語り、青井氏は、米国でEC化率が7~17%になるのに10年かかっていたのが、コロナによりわずか8週間で27%になった例を挙げ、「ECは今後さらに加速する」とそのさらなる拡大を指摘します。

 次に百貨店の位置付けが変化していることについて。
 青井氏は「販売員とのコンタクトができているところが好調。この人から買いたいと思う気持をどのように起こすか、客とのエンゲージメントをどうやってつくるかが求められている。とくにオンライン接客は販売員が客のもとに行く感覚を演出できる。手持ちアイテムとどう着合わせるかなどをアドバイスすることで、お買い上げ度が高まる」と。軍地氏も「デジタルで客と販売員がつながったことはメリット。ソーシャルディスタンスといいながらも、販売員との距離は近くなった。インスタライブで販売するなど、TVショッピングのような売り込む力が問われている」といいます。
 青井氏は「店はこれまでモノを売り買いをする場だったが、ECでいつでもどこでも買えるようになった。わざわざ店へ行く価値とは何か。そこにはモノを買う以外の体験価値があるからで、この体験価値がこれからの店舗の価値を創出する」といいます。宮田氏も「百貨店は商品を売るよりは体験そのものをデザインしていく場であっていい」と賛同。

 ここからが小売・百貨店の未来への処方箋です。
 仲田氏が「『楽しいひとときをお過ごしいただけましたか』とお客様にいえる時間と空間、そこに価値を置くことが今後の命題になりうる」と発言。軍地氏は「NYでのフィジカルストアというのは、そんな店」とNY体験を披露しました。たとえばナイキのコンセプトストアはディズニ―ランドへ行くような感じで、体験を楽しむ、買わなくてもいいそうです。
 青井氏は「店は売らなければいけないという前提がある以上、客とのすれ違いは避けられない。そこで今考えているのが、売ることが主ではない『売らない店』。客にすてきな時間を過ごしていただくために、購入するまでのプロセスやブランドとのエンゲージメントを大切にする店をつくりたい」。「これからはD2Cや個人経営のブランドがでてくるおもしろい時代になる。大きいところと無数の小さいビジネスが入れ替わることが起きるのがこれからの時代だ」といいます。
 青井氏率いる丸井は、このように既成概念を排したモノを『売らない店』に進化し始めています。先日、丸井新宿店に「ベータ(このブログ2020.8.13付け参照)」が入ったことは確かに象徴的な出来事でした。

 一方、仲田氏は、生活者の情熱の対象が、以前と異なり“服” ではなく、“アニメやゲーム” になっていることに触れ、「日本のアニメやゲームのパワーは大きい。今、取り組んでいるのは、買うまでのプロセスに価値を置いたバーチャルストア」と紹介。アバターを使った伊勢丹の仮想店舗を動画でプレゼンテーションしました。

 
 上はYouTubeで公開されているファンタジックな仮想店舗です。未来に向けたワクワク感の中に、伊勢丹らしいきちんとしたレガシーが重視されています。ぜひご覧ください。

 宮田氏の発言「ファッションはパリやミラノといった上から来るものではなく、個別のところで練り上げたものの価値の方が力を持ちうる状況になりつつある。トップダウンからボトムアップへの転換点にあり、先行しているのが映像の世界。日本の多様さやマニアの熱狂が世界を変える、面白いフェーズにある」も、印象に残りました。
 
 今や、百貨店は生き残りの岐路に立っています。これまでの「百貨店」像にすがらないことが「ニューノーマル」の決め手になりそうですね。

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2020年8月19日 (水)

2.5次流通 「アップサイクルとITビジネス」の未来を語る

 サステナビリティが叫ばれる中、「2.5次流通」という新しいビジネスモデルが誕生しています。その代表的なブランドが古着のアップサイクルを手掛ける「SREU(スリュー)」です。先般、伊藤忠インタラクティブ株式会社主催、FashionStudies?共催により、SREUディレクター 米田年範氏とRepro(リプロ)株式会社代表取締役 平田祐介氏、モデレーターに朝日インタラクティブ株式会社CNET Japan編集長 藤井 涼氏が登壇するウェビナーが開催されました。「2.5次流通 アップサイクルとITビジネス」と題して、その未来が語られ、大変興味深い内容でした。下記、その概容をまとめてみました。

 まずSREUとReproの企業紹介から。
 「SREU」は、米田氏と植木沙織デザイナーが手がける、1点ものの既製服をコンセプトにシーズンテーマを設けないブランドです。前身は2016年にスタートしたFURUGI-NI-LACE(フルギニレース)で、文字通り、古着と女子たちの好きなレースを組み合わせた服づくりを行っていたといいます。
 2017年にパリでの展示会に出展し、2018年に渋谷ランウェイに参加します。
 2019年にサステナビリティへの流れと海外展開を踏まえて、ブランド名を「SREU」へ改称。名称はSustainabilityとRecycleとUpcycleを組み合わせた造語だそう。リメイクという軸は変えずに、アップサイクルの要素を加え、サステナブルな服づくりを目指して、リブランディングし、東コレに参加しました。
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 上の写真は、そのときセルリアンタワー東急ホテルのラウンジで開催したファッションショーで撮影したもの。(このブログ2019.11.9付け参照)
 2020年春も東コレに参加予定でしたが、コロナ禍で中止となり、その代わりにショー会場に予定していたワールド青山ビル前で、マスク300枚を通行人に配布。(このことはいろいろなメディアで取り上げられていましたね。)手作りのリメイクマスクで、5月までに2,000枚以上つくったそうです。販売はせず、医療従事者への支援やノベルティに利用されたといいます。
 「Repro」は、2014年に平田氏が3度目の起業で創業した、B2C企業向けマーケティングソリューション サービスを開発し運用する会社であるとのこと。WEBサイトを訪れるユーザーの行動データや、ユーザーの属性データを簡単に収集できるようにし、データを活用してユーザー一人ひとりに企業がメッセージを送れるプラットフォームを展開しているといいます。今や国内ではトップシェア、世界66か国7,500ものサービスを築けているそうです。

 次に2.5次流通とは何か、です。米田氏は、「一度流通したモノの再流通」と定義します。古着屋などで2次流通しているものからオーバーフローしているものに価値を与え、新たな商品として流通させることであり、要らなくなったものをデザインして、もう一度価値をつけて販売する、それが2.5次流通であると。
 その事例として、SREU×REPROの協業を挙げました。REPROの型落ちした企業TシャツをSREUがリメイクして2020春夏コレクションで発表し、GMOペパボのハンドメイドサービス、MINNE(ミンネ)で発売するビジネスです。
 近年、プロモーション用につくったオリジナルTシャツの在庫を抱える企業は少なくないようです。旧作をリメイクして新しい作品として活用することは、衣服ロス問題の解消につながりますし、企業のCSRの一環になります。
 こう考えると「サステナブル、アップサイクル」を目的とするブランドにとって、良いことばかりのようですが、そこには次のような課題があると、米田氏は指摘します。
 1つは数年先へ向けて、①100%環境負荷削減でのプロダクト展開、②リメイクがベースの1点ものに対応した量産システムの確立、③他社との取り組みです。
 もう1つはコロナ禍を経た直近の課題で、①オンライン展開、②2021秋冬コレクションの発表方法、③展示会の方式を模索することといいます。
 
 これらをどのように解決していくのか、IT企業、最新技術が力を発揮してくれそうです。
 藤井氏は、今注目されている3つの技術を紹介しました。
 ⑴ 世界の工場をシェアする「Any Factoty」。世界のアパレル生産工場とインフルエンサーや企業をつなぐ、ものづくりのプラットフォームです。アジア各国にある200を超える生産工場と連携していて、誰もが作りたいものを簡単に発注できるそうです。米田氏も利用してみたいと話していました。
 ⑵ 触れる動画「TIG(ティグ)」。動画内のコンテンツにタップするとウエブサイトやECサイトに即アクセスできるサービスです。気になる箇所に触れるだけでその情報が得られますので、検索要らず。ヒートマップというユーザー行動を“見える化” するツールもプレゼン。東京ガールズコレクションやザ・ノースフェイスなども使っているとのこと。動画で、人がどこに反応したかが分かるとあって、導入が増えそう。米田氏もかなり乗り気な様子でした。
 ⑶ 意識を瞬間移動させる「アバターインavatar-in」。
 ANAグループが開発したもの(このブログ2020.1.4付け参照)で、これまで夢だった“テレポーテーション”を実現するものです。専用の移動式デバイスにログインすると、遠隔で操作や会話が可能になります。蔦屋家電ではコロナ禍の一日、本のコンシェルジュサービスを実施。自宅に居ながら本選びする体験を楽しんだといいます。
 ファッションも1点ものの制作が、デザイナーと直接対話しながら、簡単につくれそうですね。
 
 最後は、2.5次流通×ITの未来についての座談会となりました。デジタル化が進行する中、2.5次流通には様々な可能性があるようです。
 中でもおもしろかったのが、古着の調達に関する話でした。古着の収集は現在、海外との往来ができないとあって、困難になっているそう。その代わり国内では断捨離する人が増えて、古着回収業者がパンクするほど集まったといいます。アパレルもAI在庫管理が進むと廃棄する服の量は減少します。しかし廃棄物ゼロにはなりませんから、2.5次流通が消えることはないでしょう。ベーシックな別ブランドをつくって回収し、新ラインをつくり、その売れ残りを材料にSERUにする、との米田氏の提案も一理ありますね。
 さらにシフトせざるを得ないのが、展示会のオンライン化です。ネックは新規顧客を取り込めないことや、質感やサイズ感を伝えにくいこと。とくにレディスは形がイレギュラーなものが多く、ネットでどう対応するかなどの話題も出ました。
 コロナ禍が続く不安な時代ですが、確かに言えることは2.5次流通がまさにサステナブルな業態であること。米田さんに、大いに期待しています。

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2020年8月13日 (木)

シリコンバレー発体験型ストア「ベータ」有楽町にオープン

 この8月1日、米国シリコンバレー発体験型ストア「ベータ(b8ta)」が、東京・有楽町の電気ビルにオープンしました。
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 体験型ストアとは委託販売モデルを採り入れたリアル店舗なのに、「販売を主目的にしない店舗」のことです。従来型のテナントモデルと異なり、「RaaS(Retail as a Service)」と呼ばれるビジネスモデルを展開していることも特徴です。店舗内で商品が売れても販売手数料などは徴収せず、出品企業に販売金額の全額を支払い、消費者のマーケティングデータを小売業やメーカー向けに提供します。単なるショールーミングとの違いもこの点にあるのですね。

 「ベータ」はその草分けです。世界中のイノベーティブな製品を発見・体験・購入できる場となっています。
 米国の店舗には日本企業もよく視察に訪れたといいます。日本人は新しもの好きが多いですから、最新ガジェットやD2Cブランド製品などが置かれた売場に、ワクワクしたのではないでしょうか。

 私が訪れたのはこの有楽町店です。が、実はもう一つ、新宿丸井にも同時開業しています。売場面積は有楽町店が256㎡で、新宿の約2倍の広さです。
 商品ラインナップは145種類以上とか。ガジェットや雑貨、食品、スキンケア、アクセサリーなどの外、アパレルも揃っています。傍にはタブレットが置かれていて、商品情報を得られるようになっています。その場で購入したい場合には「Buy Now」ボタンを押すと、店頭スタッフに通知が届く仕組みになっているといいます。
 
Img_91681  店に入って、まず目に入ったのがペットロボットです。これはこの2月に森美術館で開催されていた「未来と芸術」展でも見たのと同じロボットでした。「LOVOT」といいます。つぶらな瞳が動いて可愛い!

Img_91741  100回洗える夏マスク/hamon AG マスク(ハモン エージー マスク)。ミツフジの新開発高機能マスクです。
 
Img_91751  高級感のあるベーシックなアパレルも。男女両用だそう。
 
Img_91931  セラピーロボット「Qoobo」。撫でるとしっぽを振って応えてくれます。癒されそう。

Img_91851  カインズのインテリアハンガーです。洗濯ものを軽く引っ張るだけではずれますので、取り込みやすいです。TVCMでおやっと思ったUD商品です。実際に見て試してみて、機能性を実感。2018年度グッドデザイン賞を受賞した理由もわかりました。
 
Img_91801  カインズの「立つほうき」です。右のラッパ状の先からほうきが出てくる仕組みになっています。ほうきは左のちりとりとセットになっていて、ちりとりの中に収まります。ちょっこっと置いても目立たない、便利なアイデア商品と感心しました。
 
 この他いろいろ、おもしろいものを目にすることができます。まずは行ってみることですね。

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2020年7月 3日 (金)

対談 佐々木康弘×坊垣佳奈「D2Cが小売りの主役になる日

 D2C (DtoC メーカー直販)がコロナショックもあって需要が急激に伸びています。
  先般WEBセミナーで、TAKRAMディレクター佐々木康弘氏とマクアケ共同創業者の坊垣佳奈氏によるJpg 、「D2Cが小売りの主役になる日」をテーマにした対談がありました。
  D2Cが小売業界をどのように変えていくのか、その成功の鍵は哲学と倫理にある、といった興味深い内容でした。下記にその概要をまとめてみます。
 
 まずコロナショックによってD2Cはどのように変わるのか?
 佐々木氏は、「普遍的なものになっていく」といいます。「EC比率が5%から16%になるのに10年かかったが、コロナにより8週間で16%が27%になった。コロナはまさに未来加速装置のようなもので、ハインツはハインツ・トゥ・ホームを3週間で始めたし、ペプシもスナックス・ドットコムをスタートさせるなど、大企業がどんどんD2Cに乗り出している。これからはあらゆる小売業がD2Cを手掛けるようになるだろう。コロナでデジタルと顧客が半強制的につながった。これはアフターコロナもアセットとして残り続ける」。
 坊垣氏は、「D2Cをスタートアップではない伝統的な老舗企業が始めたことが象徴的」といいます。「従来、卸に出していた酒蔵が、酒屋が店を閉じたため直接オンラインで売るようになった。このようにこれまで業界的にやりづらかったことが日本には多くあった。コロナを機に非合理的を合理的に変えるチャンスが来ている。こういうことが各業界で起きている気がする」。
 佐々木氏は、「既存の流通に配慮してD2Cをやらなかった業界は多いと思う。これまでは店舗が主でD2Cは副だったが、D2Cが本丸に上がりつつある」。
 ここで話題となったのがアパレルで、アパレル業界はコロナの影響で廃業になっている業界の第3位にランキングされているといいます。ちなみに1位と2位は、それぞれ飲食とホテル業界です。
 坊垣氏は、「試着して買うと思われていたアパレルが、インスタライブを始めるなど、一気にオンラインにシフトするようになった。自分もそうだが、女子たちはみんなオンラインで服を購入している」。「オンラインでより買いやすくすることが進んだ業界がアパレルだ」といいます。
 
 次にD2Cとはそもそも「何か」です。
 佐々木氏は、「D2Cの本質は、ただのECではなくモノを買う以外のコミュニケーションをどれだけふくらませられるかにあり、それがこれからのD2C企業に問われている」といいます。「モノの良さを押し出すコミュニケ―ションは否定しないが、つくっている人の背景のストーリー、製造している人の顔が見えることも大事。最近はBLM運動などに見るように、社会的メッセージを発信することも増えている。ただしメッセージを出すだけではなく日々の行動をどうやっているのか、真実が沁み出ているメッセージなのかどうかが問い質されている」とも。
 これを受けて坊垣氏は、「オンラインコミュニケーションのコンサルティングのニーズが上昇している」といい、「コミュニケーションに必要なのは“誠実さ”であり、一本筋が通ったものがないと、ボロが出る」と話します。 
 佐々木氏は、「モノをきちんと理解して共感してもらって購入することが大切になっている。キーワードは坊垣さんの言う“誠実さ”と思う。そうであれば、これまでは知り合いだけに売っていたのが、D2Cにより昔の商店街のように、クチコミで広がる。長野県の名産品などをD2Cで購入するなど、敷居が低くなって、買った本人も多幸感がある」。
 
 またブランドの軸となる世界観について、軸とは宗教性なのか倫理性なのかといった話も出ました。
 佐々木氏は、「消費者のモチベーションはマズローのいう5段階欲求の最高段階である自己実現のその上の自己超越に来ている。企業に要望されるのはeコマースだけではない社会的倫理であり、メッセージを届けるだけでなく、心からの共感でアクションさせていくことが求められている」。
 坊垣氏も、「ブランドは“売れればよい”がよしとされない空気があって、これが一気に広がった。成功者の定義が変わり、何を自身が叶えたのか、そこには社会のためという要素が入っていることが大切で、その意識は地球環境への貢献などをみても、若い世代ほど高い」。
 
 分断が激しさを増すアメリカも話題に上りました。
 佐々木氏は、「コロナはイコライザー"equalizer(均衡を保つもの)"という人がいる。確かにウイルスは人を選ばない。しかし今起きている現象はイコライザーではないと思う。米国では中間層が減少して、経済的分断が大きくなっている」。
 これに対して坊垣氏は、「昔より正義感が強まっている。平等意識が高まり、政治と民衆の距離が近くなっている気がする。日本もテラス事件のように動いたら変わる感覚が少し出てきていると感じている」といいます。
 佐々木氏もこれに合わせるように、「思想的格差が少なくなり良い意味でいい方向へ向かっている」。そして「東京圏を“東京国”、地方自治体を“オンライン国”とすると、田舎と思っていた“オンライン国”がコロナで成長している」という面白い例え話を披露。コロナは地方と東京の差を縮めたといいます。
 
 さらにこれからのブランドは「“鏡”から“窓”へ」に言及。
 佐々木氏は、「ビジョンが重要であり、判断軸のある経営が求められている。ビジョンがあれば社員が目指す道筋も整えられる」といい、ビジョン達成の在り方として、「これからのブランドは、マーケットを分析しそれを反映する“鏡”から、消費者との間に壁がない“窓”が開いている状態にならないといけない」と持論を述べます。「透ける壁の向こうでどういう人がつくっていて、オフィスの中にはなにがあるのか、見える状態にしていくために不可欠なのかミッションやビジョンで、それがないとバラバラになる」と、またしてもビジョンの重要性を強調しました。
 坊垣氏も、「カスタマーサポートの返信の一つであっても、経営判断と紐づく状態をつくっていかないとブランドの一貫性がなくなる。組織経営に一貫性を持たせるビジョンやカルチャーは必須」と応じます。
 
 今後のD2Cサービスとは?
 佐々木氏が挙げたのが、エクササイズ・エアロバイクの“ペロトン(Peloton)”。自宅にいながら非接触でトレーニングできて、しかもオンラインで世界中の人々と共有する楽しさがあり、アメリカで大人気のブランドになっているとか。
 坊垣氏は、視点を変えて「レガシーな業界が手がけたら上手くいくかも」といいます。佐々木氏も、「D2Cはこれまでスタートアップが中心だったが、今では大手老舗も取り組んでいるし、小さなコミュニティ向けにやっているのもある。いろいろなタイプが生まれてくると思う」と。
 未来的D2Cといっても、坊垣氏によると、それは「新しいモノではなくあるべき姿だったみたいなモノで、特別感は持っていない」。佐々木氏も「突き抜けたものが生まれるというよりは、いろいろなところに染み渡るように広がっていく」とみているそう。
 日本からグローバルブランドを生み出すために、佐々木氏は「マインドセットの変更が大切」であり、「プロダクツの意味を拡張する必要がある」といいます。
 坊垣氏は、「海外から賞賛されるレベルのものをつくる技術がいろいろなエリアに残っている。それを言語化して表現する技術とそのこだわりをコミュニケーションにも発揮させることが必要不可欠。しかしその人たちができるかというと、できないと思う方がよくて、そこは割り切ることが肝要。こだわってモノづくりする精神と世の中に発信する技術は、真逆を向いている。だから外部にサポートを依頼することはやむを得ない選択」と主張します。
 
 最後に佐々木氏が、「D2Cプレイヤーに要求されるのは、企業家の思いを純度100%で届けることがもっとも重要。元々何をしたいのか、届けた相手をどういう感情にしたいのか、そういうところの磨き込みがあれば後は何とでもなると思っている。つまりは最初の問い、哲学に戻るということ」と述べて、締め括りました。
 
 「あらゆるブランドがD2C化する」、その意味をようやく理解できたかな、と思う対談でした。

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2020年6月29日 (月)

ポストコロナのラグジュアリーブランドビジネス

 コロナ危機で先が見えない状況の中、好調だったラグジュアリーブランドも変革を迫られています。
Img_38141  上は、この2月、ミラノのラグジュアリーブランドが軒を並べるモンテナポレオーネ通りのスナップです。

 ポストコロナに向けてラグジュアリービジネスはどのような戦略をとったらよいのでしょうか。これを示唆するボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の興味深いレポートを紹介します。

  ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)とアルタガンマが実施したコロナ前後、1月と6月の調査によると、今年はラグジュアリー関連消費が25~40%落ち込むとのことです。購入に消極的な消費者の信頼を取り戻すためには、新たな戦略を練る必要があるといいます。
 インタビューで回答した人の47%が、回復は遅いとみています。ただし例外は中国で、77%がリバウンドを確信しているそうです。ポストコロナ時代となっても中国はラグジュアリーブランドの主要な顧客(現在、世界市場の約35%)であり続け、現地での購入が続くとみられています。
 この中国を別とすると、欧米市場の正常復帰は遅れる見通し、といいます。コロナへの健康不安がとくにミレニアル世代の間で強く、またその経済力も揺らいでいることが多いという理由からです。BCG のパートナーの一人、ニコラ・ピアノン氏は「ここ2年は困難をかかえることになる」と警告。「コロナ以前のレベルに復帰するのは2022年、あるいは2023年」と予測しています。一方、一部のセクター、たとえばストリートウェアやスポーツウェア、化粧品については急速な回復を予想していることも明らかにしています。
 BCGの調査ではまた、欧米のバイヤーとアジアのバイヤー、特に中国との間で、バイイング行動が分極化していることにも言及。前者は地味で控えめで個性的な高級感を好む傾向があり、後者は引き続き高揚感のある目に見える商品を好むとか。これもちょっと注目しておきたい現象ですね。
 さらにラグジュアリー市場で高まるデジタル販売について。新型コロナウイルスは既存の傾向、中でもデジタル化を加速させたと強調。E-コマースは2019年の12%に対し、2022年には20%に達するとみているそうです。また中古の高級品市場も急成長し、従来の高級品の4倍の成長率で、2022年には市場の約8%、250億ユーロを占めると予想されるといいます。
 このような変化に企業はどう対応していくべきでしょう。ここでは次の3つの柱、①国際化、②社会的責任を伴う持続可能な開発、③顧客との直接かつ即時の対話を意味する「同時性」を挙げ、これらに焦点を当てていくことがこれまで以上に重要になる、と指摘しています。
 ビジネスの中心に人々を戻し、世界の声に耳を傾け、誠実な方法で社会にコミットすることをためらわない、そうした姿勢が今後のラグジュアリーブランドにますます求められることになりそうです。

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2020年6月24日 (水)

ファッションウィークの在り方見直しへの動き

 このところ、ファッション業界ではファッションウィークの在り方を見直そうという動きが広がり始めています。
 いろいろな噂が飛び交う中、もっとも興味深かったのが東洋経済オンライン(6/12)に掲載された情報です。これはニューヨークタイムズ紙に掲載された「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレとのインタビュー記事を翻訳したもので、タイトルは「グッチ『ファッションショー減らす』宣言の衝撃」となっています。
 これによるとミケーレは、ファッションショーの回数を削減し、ブランドが毎年開催するショーの数を5回から春と秋の2回に減らし、事実上、クルーズショーのアイデアを放棄すると発表、さらにメンズとウィメンズの区別や、秋冬と春夏という伝統的な呼び方も廃止してもよいと考えているとのことです。
 グッチといえばラグジュアリービジネスの盟主的存在です。そのトップをつとめるミケーレの「新しい空気を入れて、この複雑なシステムを生まれ変わらせる必要がある」の言葉は、重く受け止められたのではないでしょうか。
 この9月に予定されているミラノコレクションについても、グッチはスキップするそうです。「フェンディ(Fendi)」も別の日程で、ローマ本社にてプレゼンテーションを行う方針とか。グッチと同じケリンググループの「サンローラン(Saint Laurent)」も同様で、7月のデジタル版ミラノ ファッションウィークに参加した後、9月のパリコレには参加しないことを表明しています。折しも本日、WWDジャパンから、フランスのクチュール・モード連盟(La Federation de la Haute Couture et de la Mode)が、9月28日~10月6日にパリ・ファッションウィークをリアルとデジタルの両軸で開催することを正式に発表したというニュースが飛び込んできたところですが---。
06_nyfw_feb  ニューヨーク ファッションウィークも揺れ動いている様子で、「マイケル・コース(Michael Kors)」は9月に従来型のショーは行わず、10月か11月に特別な形式でのプレゼンテーションを開催するとしています。

 右は、この2月のニューヨークコレクション会場入口付近の写真(COTTON INCORPORATED社提供)です。
 こんな華やかな光景を今年はもう見ることはなさそうです。
 
 こうした中、今話題となっているのが、店頭での販売時期とセール期間の後ろ倒しです。2020年秋冬シーズンからは販売時期を、秋冬ものは8月~1月に、春夏ものは2月~7月に変更し、店舗に配送される商品の季節性と実際の天候を一致させようという提案で、セール期間もシーズン終盤の1月と7月に統一しようというものです。提唱しているのが、「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)」をはじめとする有力ブランドのデザイナーやCEOとあって、大きく広がりそうです。
 でも考えてみれば、これはひと昔前までやっていたことですね。これまであまりにも早め早めと、先を急ぎ過ぎていました。これはその反省といえるでしょう。
 
 ファッションウィークの見直しといい、販売時期やセール期間の再考といい、コロナショックをきっかけに、ファッションビジネスがその本来の姿へ戻ろうとしている、そんな風に思われます。

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2020年6月10日 (水)

米国EC市場で台頭する「クリック&コレクト」

 ウイズコロナの時代となり、EC市場が成長を続ける中で世界的に「クリック&コレクト」、すなわちオンライン購入/店頭受取のショッピングスタイルが台頭しています。その最先端を行く米国市場の最新情報を紹介しましょう。
 Img_48472g 米国も多数の消費者がファッション商品を購入するため店舗を訪れているといいます。しかしその多くはパンデミックの不安から抜け切れていないのが現実とか。これについてファーストインサイトCEOグレッグ・ペトロ氏は、「人々はコロナの影響で人やモノとできる限り接触しない買い物体験を求めています。小売側としてはなるべく接触しない方法で買い物客に働きかけ、必要なものを見つけられるようにすることが肝要で、それがこれからの小売り業者の“ニュー・ノーマル”です」と語っています。
 ファーストインサイトの調査によると、ほとんどの消費者はアパレル(54%)、ホームセンター(36%)、靴(32%)を、店頭で買いたいと考えていますが、65%の女性は試着室での試着は安心できないと回答。また66%の女性が販売員と一緒に買い物をするのは不安と答えています。男性は女性よりは安心感があるものの、半数以上の54%が「試着室も販売員が付くのも安心できない」と回答しています。
 コットンインコーポレイテッドの2020年消費者調査も、新型ウイルスの流行が始まって以降、55%の消費者が“BOPIS”を希望しているといいます。これは“Buy Online Pick-up In Store”の頭文字をとった略語で、「クリック&コレクト」のこと。また71%が、「ショッピングモールでの買い物が快適に感じられるようになるまでには、しばらく時間がかかる」と認め、再開後も58%は、オンラインで服を買うことが多くなると回答。「クリック&コレクト」の買い物モードが人々の心に響くものになっているようです。 
 "BOPIS"でしたらウイルスに関連した配送の遅延を心配することもありませんし、注文した当日か翌日に商品を受け取れます。送料も節約できます。受取時には実物を確認し、その場で返品も可能というのも、その魅力に拍車をかけているといいます。 
 このオプションを選ぶことは、アマゾンへの逆襲の機会との指摘もあります。 
 ECビジネスにイノベーションをもたらす大きな可能性を秘めている「クリック&コレクト」、今後の買い物の在り方を変えそうです。


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