ファッションビジネス

2020年7月 4日 (土)

対談 佐々木康弘×坊垣佳奈「D2Cが小売りの主役になる日

 D2C (DtoC メーカー直販)がコロナショックもあって需要が急激に伸びています。
  先般WEBセミナーで、TAKRAMディレクター佐々木康弘氏とマクアケ共同創業者の坊垣佳奈氏によるJpg 、「D2Cが小売りの主役になる日」をテーマにした対談がありました。
  D2Cが小売業界をどのように変えていくのか、その成功の鍵は哲学と倫理にある、といった興味深い内容でした。下記にその概要をまとめてみます。
 
 まずコロナショックによってD2Cはどのように変わるのか?
 佐々木氏は、「普遍的なものになっていく」といいます。「EC比率が5%から16%になるのに10年かかったが、コロナにより8週間で16%が27%になった。コロナはまさに未来加速装置のようなもので、ハインツはハインツ・トゥ・ホームを3週間で始めたし、ペプシもスナックス・ドットコムをスタートさせるなど、大企業がどんどんD2Cに乗り出している。これからはあらゆる小売業がD2Cを手掛けるようになるだろう。コロナでデジタルと顧客が半強制的につながった。これはアフターコロナもアセットとして残り続ける」。
 坊垣氏は、「D2Cをスタートアップではない伝統的な老舗企業が始めたことが象徴的」といいます。「従来、卸に出していた酒蔵が、酒屋が店を閉じたため直接オンラインで売るようになった。このようにこれまで業界的にやりづらかったことが日本には多くあった。コロナを機に非合理的を合理的に変えるチャンスが来ている。こういうことが各業界で起きている気がする」。
 佐々木氏は、「既存の流通に配慮してD2Cをやらなかった業界は多いと思う。これまでは店舗が主でD2Cは副だったが、D2Cが本丸に上がりつつある」。
 ここで話題となったのがアパレルで、アパレル業界はコロナの影響で廃業になっている業界の第3位にランキングされているといいます。ちなみに1位と2位は、それぞれ飲食とホテル業界です。
 坊垣氏は、「試着して買うと思われていたアパレルが、インスタライブを始めるなど、一気にオンラインにシフトするようになった。自分もそうだが、女子たちはみんなオンラインで服を購入している」。「オンラインでより買いやすくすることが進んだ業界がアパレルだ」といいます。
 
 次にD2Cとはそもそも「何か」です。
 佐々木氏は、「D2Cの本質は、ただのECではなくモノを買う以外のコミュニケーションをどれだけふくらませられるかにあり、それがこれからのD2C企業に問われている」といいます。「モノの良さを押し出すコミュニケ―ションは否定しないが、つくっている人の背景のストーリー、製造している人の顔が見えることも大事。最近はBLM運動などに見るように、社会的メッセージを発信することも増えている。ただしメッセージを出すだけではなく日々の行動をどうやっているのか、真実が沁み出ているメッセージなのかどうかが問い質されている」とも。
 これを受けて坊垣氏は、「オンラインコミュニケーションのコンサルティングのニーズが上昇している」といい、「コミュニケーションに必要なのは“誠実さ”であり、一本筋が通ったものがないと、ボロが出る」と話します。 
 佐々木氏は、「モノをきちんと理解して共感してもらって購入することが大切になっている。キーワードは坊垣さんの言う“誠実さ”と思う。そうであれば、これまでは知り合いだけに売っていたのが、D2Cにより昔の商店街のように、クチコミで広がる。長野県の名産品などをD2Cで購入するなど、敷居が低くなって、買った本人も多幸感がある」。
 
 またブランドの軸となる世界観について、軸とは宗教性なのか倫理性なのかといった話も出ました。
 佐々木氏は、「消費者のモチベーションはマズローのいう5段階欲求の最高段階である自己実現のその上の自己超越に来ている。企業に要望されるのはeコマースだけではない社会的倫理であり、メッセージを届けるだけでなく、心からの共感でアクションさせていくことが求められている」。
 坊垣氏も、「ブランドは“売れればよい”がよしとされない空気があって、これが一気に広がった。成功者の定義が変わり、何を自身が叶えたのか、そこには社会のためという要素が入っていることが大切で、その意識は地球環境への貢献などをみても、若い世代ほど高い」。
 
 分断が激しさを増すアメリカも話題に上りました。
 佐々木氏は、「コロナはイコライザー"equalizer(均衡を保つもの)"という人がいる。確かにウイルスは人を選ばない。しかし今起きている現象はイコライザーではないと思う。米国では中間層が減少して、経済的分断が大きくなっている」。
 これに対して坊垣氏は、「昔より正義感が強まっている。平等意識が高まり、政治と民衆の距離が近くなっている気がする。日本もテラス事件のように動いたら変わる感覚が少し出てきていると感じている」といいます。
 佐々木氏もこれに合わせるように、「思想的格差が少なくなり良い意味でいい方向へ向かっている」。そして「東京圏を“東京国”、地方自治体を“オンライン国”とすると、田舎と思っていた“オンライン国”がコロナで成長している」という面白い例え話を披露。コロナは地方と東京の差を縮めたといいます。
 
 さらにこれからのブランドは「“鏡”から“窓”へ」に言及。
 佐々木氏は、「ビジョンが重要であり、判断軸のある経営が求められている。ビジョンがあれば社員が目指す道筋も整えられる」といい、ビジョン達成の在り方として、「これからのブランドは、マーケットを分析しそれを反映する“鏡”から、消費者との間に壁がない“窓”が開いている状態にならないといけない」と持論を述べます。「透ける壁の向こうでどういう人がつくっていて、オフィスの中にはなにがあるのか、見える状態にしていくために不可欠なのかミッションやビジョンで、それがないとバラバラになる」と、またしてもビジョンの重要性を強調しました。
 坊垣氏も、「カスタマーサポートの返信の一つであっても、経営判断と紐づく状態をつくっていかないとブランドの一貫性がなくなる。組織経営に一貫性を持たせるビジョンやカルチャーは必須」と応じます。
 
 今後のD2Cサービスとは?
 佐々木氏が挙げたのが、エクササイズ・エアロバイクの“ペロトン(Peloton)”。自宅にいながら非接触でトレーニングできて、しかもオンラインで世界中の人々と共有する楽しさがあり、アメリカで大人気のブランドになっているとか。
 坊垣氏は、視点を変えて「レガシーな業界が手がけたら上手くいくかも」といいます。佐々木氏も、「D2Cはこれまでスタートアップが中心だったが、今では大手老舗も取り組んでいるし、小さなコミュニティ向けにやっているのもある。いろいろなタイプが生まれてくると思う」と。
 未来的D2Cといっても、坊垣氏によると、それは「新しいモノではなくあるべき姿だったみたいなモノで、特別感は持っていない」。佐々木氏も「突き抜けたものが生まれるというよりは、いろいろなところに染み渡るように広がっていく」とみているそう。
 日本からグローバルブランドを生み出すために、佐々木氏は「マインドセットの変更が大切」であり、「プロダクツの意味を拡張する必要がある」といいます。
 坊垣氏は、「海外から賞賛されるレベルのものをつくる技術がいろいろなエリアに残っている。それを言語化して表現する技術とそのこだわりをコミュニケーションにも発揮させることが必要不可欠。しかしその人たちができるかというと、できないと思う方がよくて、そこは割り切ることが肝要。こだわってモノづくりする精神と世の中に発信する技術は、真逆を向いている。だから外部にサポートを依頼することはやむを得ない選択」と主張します。
 
 最後に佐々木氏が、「D2Cプレイヤーに要求されるのは、企業家の思いを純度100%で届けることがもっとも重要。元々何をしたいのか、届けた相手をどういう感情にしたいのか、そういうところの磨き込みがあれば後は何とでもなると思っている。つまりは最初の問い、哲学に戻るということ」と述べて、締め括りました。
 
 「あらゆるブランドがD2C化する」、その意味をようやく理解できたかな、と思う対談でした。

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2020年6月29日 (月)

ポストコロナのラグジュアリーブランドビジネス

 コロナ危機で先が見えない状況の中、好調だったラグジュアリーブランドも変革を迫られています。
Img_38141  上は、この2月、ミラノのラグジュアリーブランドが軒を並べるモンテナポレオーネ通りのスナップです。

 ポストコロナに向けてラグジュアリービジネスはどのような戦略をとったらよいのでしょうか。これを示唆するボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の興味深いレポートを紹介します。

  ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)とアルタガンマが実施したコロナ前後、1月と6月の調査によると、今年はラグジュアリー関連消費が25~40%落ち込むとのことです。購入に消極的な消費者の信頼を取り戻すためには、新たな戦略を練る必要があるといいます。
 インタビューで回答した人の47%が、回復は遅いとみています。ただし例外は中国で、77%がリバウンドを確信しているそうです。ポストコロナ時代となっても中国はラグジュアリーブランドの主要な顧客(現在、世界市場の約35%)であり続け、現地での購入が続くとみられています。
 この中国を別とすると、欧米市場の正常復帰は遅れる見通し、といいます。コロナへの健康不安がとくにミレニアル世代の間で強く、またその経済力も揺らいでいることが多いという理由からです。BCG のパートナーの一人、ニコラ・ピアノン氏は「ここ2年は困難をかかえることになる」と警告。「コロナ以前のレベルに復帰するのは2022年、あるいは2023年」と予測しています。一方、一部のセクター、たとえばストリートウェアやスポーツウェア、化粧品については急速な回復を予想していることも明らかにしています。
 BCGの調査ではまた、欧米のバイヤーとアジアのバイヤー、特に中国との間で、バイイング行動が分極化していることにも言及。前者は地味で控えめで個性的な高級感を好む傾向があり、後者は引き続き高揚感のある目に見える商品を好むとか。これもちょっと注目しておきたい現象ですね。
 さらにラグジュアリー市場で高まるデジタル販売について。新型コロナウイルスは既存の傾向、中でもデジタル化を加速させたと強調。E-コマースは2019年の12%に対し、2022年には20%に達するとみているそうです。また中古の高級品市場も急成長し、従来の高級品の4倍の成長率で、2022年には市場の約8%、250億ユーロを占めると予想されるといいます。
 このような変化に企業はどう対応していくべきでしょう。ここでは次の3つの柱、①国際化、②社会的責任を伴う持続可能な開発、③顧客との直接かつ即時の対話を意味する「同時性」を挙げ、これらに焦点を当てていくことがこれまで以上に重要になる、と指摘しています。
 ビジネスの中心に人々を戻し、世界の声に耳を傾け、誠実な方法で社会にコミットすることをためらわない、そうした姿勢が今後のラグジュアリーブランドにますます求められることになりそうです。

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2020年6月24日 (水)

ファッションウィークの在り方見直しへの動き

 このところ、ファッション業界ではファッションウィークの在り方を見直そうという動きが広がり始めています。
 いろいろな噂が飛び交う中、もっとも興味深かったのが東洋経済オンライン(6/12)に掲載された情報です。これはニューヨークタイムズ紙に掲載された「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレとのインタビュー記事を翻訳したもので、タイトルは「グッチ『ファッションショー減らす』宣言の衝撃」となっています。
 これによるとミケーレは、ファッションショーの回数を削減し、ブランドが毎年開催するショーの数を5回から春と秋の2回に減らし、事実上、クルーズショーのアイデアを放棄すると発表、さらにメンズとウィメンズの区別や、秋冬と春夏という伝統的な呼び方も廃止してもよいと考えているとのことです。
 グッチといえばラグジュアリービジネスの盟主的存在です。そのトップをつとめるミケーレの「新しい空気を入れて、この複雑なシステムを生まれ変わらせる必要がある」の言葉は、重く受け止められたのではないでしょうか。
 この9月に予定されているミラノコレクションについても、グッチはスキップするそうです。「フェンディ(Fendi)」も別の日程で、ローマ本社にてプレゼンテーションを行う方針とか。グッチと同じケリンググループの「サンローラン(Saint Laurent)」も同様で、7月のデジタル版ミラノ ファッションウィークに参加した後、9月のパリコレには参加しないことを表明しています。折しも本日、WWDジャパンから、フランスのクチュール・モード連盟(La Federation de la Haute Couture et de la Mode)が、9月28日~10月6日にパリ・ファッションウィークをリアルとデジタルの両軸で開催することを正式に発表したというニュースが飛び込んできたところですが---。
06_nyfw_feb  ニューヨーク ファッションウィークも揺れ動いている様子で、「マイケル・コース(Michael Kors)」は9月に従来型のショーは行わず、10月か11月に特別な形式でのプレゼンテーションを開催するとしています。

 右は、この2月のニューヨークコレクション会場入口付近の写真(COTTON INCORPORATED社提供)です。
 こんな華やかな光景を今年はもう見ることはなさそうです。
 
 こうした中、今話題となっているのが、店頭での販売時期とセール期間の後ろ倒しです。2020年秋冬シーズンからは販売時期を、秋冬ものは8月~1月に、春夏ものは2月~7月に変更し、店舗に配送される商品の季節性と実際の天候を一致させようという提案で、セール期間もシーズン終盤の1月と7月に統一しようというものです。提唱しているのが、「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)」をはじめとする有力ブランドのデザイナーやCEOとあって、大きく広がりそうです。
 でも考えてみれば、これはひと昔前までやっていたことですね。これまであまりにも早め早めと、先を急ぎ過ぎていました。これはその反省といえるでしょう。
 
 ファッションウィークの見直しといい、販売時期やセール期間の再考といい、コロナショックをきっかけに、ファッションビジネスがその本来の姿へ戻ろうとしている、そんな風に思われます。

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2020年6月10日 (水)

米国EC市場で台頭する「クリック&コレクト」

 ウイズコロナの時代となり、EC市場が成長を続ける中で世界的に「クリック&コレクト」、すなわちオンライン購入/店頭受取のショッピングスタイルが台頭しています。その最先端を行く米国市場の最新情報を紹介しましょう。
 Img_48472g 米国も多数の消費者がファッション商品を購入するため店舗を訪れているといいます。しかしその多くはパンデミックの不安から抜け切れていないのが現実とか。これについてファーストインサイトCEOグレッグ・ペトロ氏は、「人々はコロナの影響で人やモノとできる限り接触しない買い物体験を求めています。小売側としてはなるべく接触しない方法で買い物客に働きかけ、必要なものを見つけられるようにすることが肝要で、それがこれからの小売り業者の“ニュー・ノーマル”です」と語っています。
 ファーストインサイトの調査によると、ほとんどの消費者はアパレル(54%)、ホームセンター(36%)、靴(32%)を、店頭で買いたいと考えていますが、65%の女性は試着室での試着は安心できないと回答。また66%の女性が販売員と一緒に買い物をするのは不安と答えています。男性は女性よりは安心感があるものの、半数以上の54%が「試着室も販売員が付くのも安心できない」と回答しています。
 コットンインコーポレイテッドの2020年消費者調査も、新型ウイルスの流行が始まって以降、55%の消費者が“BOPIS”を希望しているといいます。これは“Buy Online Pick-up In Store”の頭文字をとった略語で、「クリック&コレクト」のこと。また71%が、「ショッピングモールでの買い物が快適に感じられるようになるまでには、しばらく時間がかかる」と認め、再開後も58%は、オンラインで服を買うことが多くなると回答。「クリック&コレクト」の買い物モードが人々の心に響くものになっているようです。 
 "BOPIS"でしたらウイルスに関連した配送の遅延を心配することもありませんし、注文した当日か翌日に商品を受け取れます。送料も節約できます。受取時には実物を確認し、その場で返品も可能というのも、その魅力に拍車をかけているといいます。 
 このオプションを選ぶことは、アマゾンへの逆襲の機会との指摘もあります。 
 ECビジネスにイノベーションをもたらす大きな可能性を秘めている「クリック&コレクト」、今後の買い物の在り方を変えそうです。


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2020年5月22日 (金)

ウエビナー「逆境の今アパレル企業が戦略投資する意味」

 コロナ危機で先が見通せない昨今の状況です。先日、アパレルの名門、レナウンの経営破綻のニュースも飛び込んできました。
 こうした中、セントリックソフトウェア主催(メディア協力 繊研新聞社)「逆境の今アパレル企業が戦略投資する意味」と題したウエビナーを拝聴しました。
Img_50431  セントリックソフトウェアはシリコンバレーを本拠地に、多くの企業のデジタルトランスフォーメーションをサポートしている企業です。ルイヴィトンを始め世界をリードする企業やブランドが同社のPLM(Product Lifecycle Managementの略で、「製品ライフサイクル管理」)を活用しているといいます。
 パネリストはこのセントリックソフトウェアコマーシャルディレクター 荒井基宏氏、戦略コンサルタント / ターンアラウンドマネージャー 河合拓氏、繊研新聞社 編集局長 矢野剛の3氏です。ビジネス再開の今だからこそ、強いIT基盤を築くためにITへの戦略投資が必要と、投資の重要性やリモート環境の充実、セントリックPLMソリューション導入のメリットなどが議論されました。
 
 まずは日本のファッションビジネスの現状です。矢野氏が90年代以降の構造的問題を解説しました。SPAモデルが進出し、次第にOEMが増加して企画までもが組み込まれてODMとなり、生産分野がブラックボックス化。そこから価格競争が起こり、近年それが加速して価格競争による過剰在庫の悪循環が進んでいるといいます。
 河合氏はそれに加えて、生産現場が20年前と変わっていないことを指摘。工場は依然として紙と手でコミュニケーションしているのに対し、販売の方はAIを採り入れるなど進化し、今や化石時代と21世紀が一緒にバリューチェーンを形成している状況になっているとのこと。SPAはモノをつくって売る業態ですが、メンタル的には売場とつくり手が分断されていて、デジタル化は売場に集中。その結果、つくる側は分業でやってきたこともあり、デジタリゼーションから取り残されたといいます。これからは横のデジタル化が最後のブルーオーシャンになってくるとも。 
 次に基幹システムへの投資についてです。コロナ禍でアパレルは疲弊を余儀なくされ、DtoCでセントリックPLMを導入しているところもあるとのことですが、しかし新規投資はアパレル、とくに百貨店アパレルにとって、資金的にも人材的にもかなり困難のようです。
 荒井氏は、PLMの受注状況を問われて、欧米や中国企業は旺盛といいます。なぜかというと売上至上主義から利益至上主義に変化しているからで、このためよいモノをつくることが必須、つまり余剰生産しない、余剰在庫をつくらない製品開発が追求されているのだとか。モノづくりの過程で余分なコストを極力削減することが求められているのてすね。
 セントリックPLMは効率よく品質のよいモノをつくるソリューション。欧米や中国企業が導入している理由は、①よいモノをつくる仕組みを構築したい、②すべてがストップしているこの時期だからこそ、再開に向けた足場固めをしたい。③細分化したEC市場のニーズに応えたいから。昨今は工場とブランドがデジタルでやり取りするのがトレンドで、セントリックPLMならこれらすべてが可能。そこで工場とブランドのワンセットでの購入が多いといいます。
 さらに話題はアフターコロナへ。繊研に「7つの予言」という論考を書かれた河合氏は、今年をTOB元年と位置付けたそう。金融主導で業界再編が起こる可能性が高く、こういうときはアフターコロナにビフォーコロナを引きずるのか、あるいは自分自身が変わるのか、変わるとしたらどう変わるのかという絵をしっかりと持っておくことが大切だといいます。
 荒井氏は、最近のECの売上を見て通常とは異なるものが売れているといい、変わるトレンドに素早く対応するための武器が必要と強調。また消費回復までに少なくとも1~2年はかかるとの見通しを示し、マーケットの変化をキャッチアップできる体制を整えておかないと苦しくなると予想します。セントリックPLMは期間を短縮化できるのも強みで、需要期にできる限り近い段階で消費者に商品を提供できるのも特徴といいます。
 最後に、アパレルがこれから競争力を得るためにはどうすればよいのか、という質問が出ました。
 矢野氏は、アパレル本来の企画力やデザインの部分を再構築しないといけない。多様な付帯業務はコンピュータに任せて効率化を図ることを提案。
 河合氏は、デジタル化の行きつく先は原点回帰。人間がどう差別化していくかを考えること、これが競争を優位にする鍵になると述べ、商売の原点に戻すことがデジタルの本質とコメント。
 荒井氏は、クリエーションもリモートワークでできるようになり、クリエイティブかつ差別化された製品開発に、PLMはますます重要になってくると、語ってウエブを閉じました。

 業界の多くの方が、このオンラインパネルディスカッションに参加され、刺激されたものと思います。有意義な時間となりました。

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2020年5月21日 (木)

新しい小売業の風景 ゲームにつながるブランド

 自宅待機でモバイルゲームが爆発的な成長を見せています。それもそのはず、世界中で家での気晴らしにテレビやビデオ、それに加えてゲームもそのための大事なツールの一つになっているのですから。
1_20200520201401  日本でも家庭用ゲーム機、任天堂「スイッチ」とソニー「プレステ4」が大ヒット、今年上半期の売れ筋ランキング上位に挙げられています。
 買い物のやり方も変化してきました。コットン・インコーポレイテッドの「2020年コロナウイルス対応消費者調査」によると、米国では消費者の47%がオンライン、宅配サービスなどといった新しい買い方を発見したと回答、57パーセントが、「この経験は今後の買い物の仕方を変えるだろう」と答えているといいます。
 そうした変わる買い物習慣の一つに、ゲーム内広告を利用したショッピングがあります。ゲームにさりげなくブランドをつなげる試みで、例えば「ラピッドファィア・ネットワーク」とか「アドバゲーム」など。とくに昨年、「ナイキ」が期間限定でバトルロイヤルゲーム「フォートナイト」とコラボして、「ジョーダン」ブランドをアピールしたことも話題になりました。
 米国セールスフォースの「コネクテッド・ショッパーズ・レポート」では、現在、ゲーム機を利用して商品を購入している買い物客はわずか4%ですが、その4倍の数(16%)がこれに興味を持っているとのことです。とくにZ世代では、25%の人が将来、ゲーム機を使って買い物をしたいと考えているそうです。
 
 モバイルゲーマーの半数は女性とのデータも出ています。ブランドがゲームに密かにシームレスに入り込んで、商品販売につなげていく ―― 新しい小売業の風景になりそうですね。

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2020年5月20日 (水)

時の試練に耐えて進化するデニム

 コロナ禍による経済危機で様々なものが変化しようとしています。しかし、それは慣れ親しんできた心地よいものが失われるという意味ではありません。それらは進化していくのです。
 デニムジーンズの歴史が、そのことを物語っているようです。
 Bluejeansbirthdayheader 今日はブルージーンズの誕生日、5月20日です。
  左はコットンインコーポレイテッドから届いたバースデーカードです。
 「ブルージーンズ、147歳、おめでとう!」
  そこで今回は、その誕生から大恐慌を乗り越えて進化し続けるジーンズについて考えてみたいと思います。
 
 ブルージーンズの最初の一本が正式に特許を取得したのは1873年です。Img_4538levis1 そのとき誕生したのが、今やジーンズの代名詞となったリーバイスの501Ⓡです。これは何十年もの歳月をかけての出来事だったといいます。
 1853年、リーバイ・ストラウスという生地商がニューヨークから、反物を売るためにゴールドラッシュの町サンフランシスコに移り住んだのが始まりです。常連客となったのが、ジェイコブ・デイヴィスという仕立屋でした。ある日、彼はストラウスに手紙で、ポケットの破れやすい箇所と前開きのボタン留めの根元にリベット(金属鋲)を打ってズボンを丈夫にする方法を考案したことを伝えます。彼はこのパンツの特許を取得したいと考えていたのですが、正式な手続きをするための費用がなく、ストラウスにアイデアを提案したのです。ストラウスが手数料を払えば、二人で一緒に特許を所有することができます。1873年5月20日、彼らは「ポケットの開口部を固定する改良技術」の特許を取得しました。デニムのボトムスを現在のブルージーンズに変身させたのは、リベットの使用でした。
 
 この時代は、カリフォルニアのゴールドラッシュに向かう人々の足となる鉄道建設が盛んでした。しかしストラウスとデイヴィスが特許を取得して数ヶ月後の1873年9月、アメリカ経済が悪化、鉄道建設に資金を提供していたジェイ・クック・アンド・カンパニーが過大な債務超過に陥り、破産を宣言します。これがドミノ効果を引き起こし、2年以内に18,000社の企業が倒産し、失業率は14%にまで上昇したといいます。不況は1929年に株式市場が暴落する大恐慌まで続きます。
 リーバイ・ストラウス社も困難に襲われましたが、それでもジーンズを生産し続けたといいます。西部劇映画がヒットし、カウボーイの生活スタイルが好まれたこともあり、恐慌から脱するとジーンズは復活し売り上げは上昇したのです。
 その後、デニムは多くの進化を遂げて現在に至っています。かつて「ロー(下衆な)ファッション」などと蔑まれてきたブルージーンズですが、今やデザイナーコレクションで人気を誇るファッションとなっています。
 デザイナーたちは消費者の好みを念頭に置きながら、ワークウェア(作業着)からクラシックなワードローブに、適応させてきたのです。  
 
 ここからは、最近のジーンズの消費動向をみていきましょう。
 コットンインコーポーレイテッドの調査機関「コットンライフスタイルモニター(Cotton Lifestyle Monitor)」によると、2010年、消費者の96%がデニムジーンズを購入する際に重要な要素はフィット感だと答え、次いで快適性(95%)、品質(91%)、「よく見える」(90%)、耐久性(88%)、価格(86%)でした。それが10年後の2020年には、フィット感(97%)と快適さ(96%)に関しては同じような数字が出ているのですが、消費者は、品質(94%)、耐久性(93%)、価格(93%)を大幅に重視するようになっています。同時に、防水性や色あせ防止などの性能面に、以前よりも多くの人が関心を持つようになっていて(65%対58%)、環境への配慮(49%対43%)も重視するようになっています。
 またストレッチはここ数年の間に女性用市場で成長しており、過去1年間に販売された女性用ジーンズの88%に見られるとのことです。メンズ市場ではストレッチは少数派で、販売本数の20%しかないのですが、昨年の伸び率は40%と、チャンスがあるといいます。
 一方で、女性がジーンズにストレッチ以上のもの、たとえばスリミング、リフトアップ、吸湿性などの特別な機能を求めていることも注目されます。
 
 今後、進化するジーンズの動きに目が離せません。

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2020年5月14日 (木)

CCI バーチャルイベントでサステナブルなアメリカ綿を紹介

 COTTON USA WEEKLY(2020.5.8)で、CCI(国際綿花評議会)の欧州地区アパレル/小売担当ディレクター、ステファニー・ティエール・ラトクリフ(Stephanie Thiers-Ratcliffe)さんが、活躍していることを知ってうれしくなりました。
 12 これによると、ステファニーさんは、先月末、CCIがスポンサーとなって開催されたイノベーションフォーラム主催のバーチャルイベント「バーチャル・サステナブル・アパレル/テキスタイル・カンファレンス」でパネリストを務めたとか。コロナウイルスの影響により、アムステルダムでの予定が、バーチャル方式での実施となったのですね。
 テーマは「アパレル業界がどのようにファッションおよびテキスタイルサプライチェーン全体において、製造現場を変革し、消費者を巻き込み、循環を促進し、気候への影響を軽減していくか」だったそう。彼女は、H&Mおよびパタゴニアとのサプライチェーンのトレーサビリティを高める最新イノベーションの一環として、「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」(このブログ2020.5.11参照)を紹介。透明性やコラボレーション、およびデータを基にした長期的なサステナビリティ戦略が成功の鍵であり、「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」がその目標達成において業界をサポートする機会を提供することを分かりやすく解説したといいます。
 
 フランス出身で語学堪能なステファニーさん、CCIロンドンで初めてお会いして以来ずっと親しくしていただいています。太陽のように明るくて温かい、それでいてとても鋭い知的な方です。次回もまたパリのプルミエール・ヴィジョンのCCIブースでお目にかかれるのを楽しみにしています。

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2020年5月13日 (水)

日本初!COTTON USAバーチャル下げ札を導入開始

 今、コロナ禍も手伝って、eコマースの伸びが加速しています。このeコマースで優位に立つための新しい手段として注目されるのが「バーチャル下げ札」です。
 2_20200511125901 国際綿花評議会(CCI)では、「COTTON USA バーチャル下げ札」を開発し、全世界のCOTTON USAライセンシーのECサイトでの導入を推進しています。
 この下げ札を日本で初導入したのが、バロックジャパンリミテッドの人気ブランド「AZUL BY MOUSSY」です。ECサイトでCOTTON USAを検索して開くと、商品説明の下方にバーチャル下げ札がポップアップ表示されていて、「おやっ」と目が引き付けられます。マークをクリックすると30秒ほどの動画が再生され、その商品が環境に責任をもって生産されたサステナブル(持続可能)なアメリカ綿を使用していることを紹介してくれます。
 
 4月下旬にこのニュースを聞いたとき、正直、「バーチャル下げ札って、何のこと?」と思っていました。この言葉自体、初耳でした。
 でもこれなら商品の品質を見てすぐに理解できます。とくにサステナビリティというちょっと分かり難いコンセプトでつくられていることを、閲覧者に簡単に伝えられる仕組みと思いました。
 
 「なぜバーチャル下札が買物客に好まれるのか?」など、詳細についてはCOTTON USAのHP https://cottonusa.org/ja/hangtagをご覧ください。

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2020年5月 9日 (土)

再開を待つフランスのファッションマーケット

 フランスでは新型コロナウイルス対策で実施している厳しい外出制限が5月11日に解除されます。
 店舗の営業再開で、フランスの消費者意識はどう変わるのでしょうか。フランスの調査機関「オピニオンウェイ」が4月22日から24日の間、18歳以上のフランス人1016人を対象に行ったファッションマーケット調査の結果が発表されています。(Journal du Textile)
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 これによると、45%がこの先30日間、月々のファッションにかける支出をコロナ危機以前より削減すると回答。42%が、これまで購入品の一部は役に立たないことに気づいたといいます。
 また35%が感染をおそれて店舗に入るのが怖いそう。31%がトラブルを防ぐために貯金をしたいとも言っています。(日本人はフランス人よりも貯金好きですからもっと多いかもしれません) 
 さらに20%がロックダウンで収入が減ったといい、また8%はロックダウン中にネットで大金を使ったと答えています。
 
 コロナ危機が一定の収束をみせたとしても、ファッションマーケットの回復はなかなか難しそう。
 もう一つ、別の調査もあり、興味深いのでご紹介します。それはより環境に配慮した消費か、常に持続的な消費か、低価格での消費かを尋ねたものです。「消費の楽しさを再発見したい」が43%いるものの、89%の人は「消費の仕方について自問自答し、地球のためのより責任あるライフスタイルを支持している」と答えているそうです。
 メイド・イン・フランスの推進も、83%の人にとっては目的となっているといいます。しかし人々の関心事は、まずは美容ケアや美味しい食事、エンターテインメントであって、ファッションは後回し。服を買いたいと思っている人はわずか25%で、ファッションはたとえそれがフランス製であっても優先順位が低いのですね。

 国によって事情は異なりますが、日本のファッションマーケットも似たような展開を見せるのでしょうか。今後を注視していきたいと思います。

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