ファッションビジネス

2019年7月 3日 (水)

循環型社会セミナー「ファッションとサステナブル」

 先月初め、「ファッションとサステナブル~これからのアパレル企業が目指すもの~」と銘打った循環型社会セミナー(繊研新聞社主催)が、東京・渋谷で開催されました。
 冒頭、主催者から在庫を扱う物流会社からの提案で企画されたセミナーであるとの趣旨説明があり、その後、業界を代表する4名の識者が次々に登壇。在庫をつくらない方法や滞留在庫の循環方法などを語りました。会場は満席で、アパレル企業のサステナビリティへの関心の高さが伺われました。
 最初は基調講演で、演壇に立ったのはディマンドワークス代表の斎藤孝浩氏です。Img_28461 在庫コントロールを生業にされてきたご自身の経験から、小売り目線でアパレル在庫をどうしたら最適化できるかを話されました。
 売れ筋と死に筋について、よく売れているからといって売れ筋とは限らない、在庫過多なら過剰分は死に筋商品で会社に損失をもたらすなどといったことから、勝ち組企業の代表としてZARAの商品企画―基本色に対し絞り込んだ色や柄をコーデイネイト提案する―や、ZARAが仕掛ける店頭マジックなどを紹介。毎シーズンのリスク回避や分散方法を解説し、最後に在庫を売り切る原則として、商品計画や販売計画を全社で共有すること、そして週毎に進捗確認・軌道修正して販売終了週までに全社協力して売り切ることが重要であると強調しました。

 休憩をはさんで次に講演したのが、アイコレクトジャパン取締役 田中秀人氏です。アイコレクト、通称アイコ(I:CO)は繊維リサイクル世界最大手、スイスのソエックスグループに属し、元はソーラーパネルを生産していた会社だったそう。2009年にドイツで不要な衣類を店頭で回収する事業を立ち上げ、アメリカ、フランス、中国そして日本にも拠点を構えて、世界中で活動しているといいます。目指すのは循環型アパレル産業の構築(CLOSED LOOP)で、パートナー企業が続々増加。今では60か国以上、H&Mやアディダスなどの小売業中心に50社以上に上っているそう。 
1img_2840  右はこのブログ2014年1月30付けに掲載したときの「アイコ」のブースです。回収箱は企業ごとに様々。当時も色々な彩りのボックスが並んでいました。
 回収された衣服は、リ・ウェア(再着用)されるものが60%、残りの40%が反毛して自動車用などに、リサイクルされるそうです。
 今後の課題は、環境への負荷をできる限り無くすこと、その上で古着をポジティブに使っていくことに焦点を当てると述べ、締めくくりました。

 3番目に登場したのが、ウィファブリック代表取締役社長 福屋剛氏です。在庫「デッドストック」を資源とみなし、企業間で簡単に取引のできる企業間マッチングプラットフォーム・スマセル(SMASELL)を運営し、循環型社会を目指していくとのこと。「オンラインプラットフォームで滞留在庫の販売機会を最大化し、廃棄の無い循環型社会を目指す!」をテーマに、スマセルの今後の可能性を熱くスピーチしました。

 トリを務めたのが、NHN SAVAWAYのTEMPOCLOUD事業部事業部長 安達友昭氏です。「プラットフォームが考える循環型マーケットのご提案」と題して、今年4月にリリースしたクラウド型ECプラットフォーム「TEMPOCLOUD(テンポクラウド)」を活用した循環型マーケットのお話をプレゼンしました。

 今や、良いものを作って売れればよいでは済まされない変革期です。セミナーを終えて、在庫削減と同時に廃棄処分後の循環過程まで、切実に考えていかなければいけない、そんな時代に突入したことを改めて痛感しました。

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2019年6月28日 (金)

JAFIC懇親会 『CSR憲章』を基に社会的活動に取組む

 この13日、東京ミッドタウンで行われた日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)の総会後、開催された懇親パーティに参加しました。

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 まず今期の役員の方々の紹介がありました。
 次に再任された北畑 稔理事長が、「今期はSDG’sを目標に策定された『CSR憲章』に基づき、企業の社会的責任、つまりCSR活動に重点的に取り組んでいく。JAFIC参加企業は335社で中小企業が多い。その環境改善につながる活動に資するように努めていきたい」と挨拶。続いて岩田 功 CSR委員長が、『CSR憲章』の7つの指針―人権や労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者・顧客、コミュニティーへの参画と発展、組織統治について―を解説。
Img_29901  小池百合子東京都知事も来場し、「都としてデザイナーの人材育成を後押ししていく。来年の東京オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典であると同時に文化の祭典でもあり、この機会を活かして東京発信のファッションを世界に届けることを祈念している」とスピーチしました。
 最後にCSRの事例、たとえば会員企業のダイバーシティ推進活動や、衣服のリユース活動「ふくのわプロジェクト」などを映像で紹介。産地とクリエーターによるサステナブルファッションも披露されました。

 避けては通れないサステナビリティの課題を積極的に推進しようとしているJAFIC、その今後に期待しています。

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2019年6月10日 (月)

FB学会東日本支部講演会 赤峰幸生氏「美しいとは何か」

 ファッションビジネス(FB)学会東日本支部で、先月25日、定期総会に続いて講演会が行われました。講師として登壇したのは(株)インコントロ代表取締役社長の赤峰幸生氏です。「美しいとは何か」をテーマに語りました。
 赤峰氏は、ジェントルマンにふさわしいクラシックなスタイルを模索しているメンズファッション界のオーソリティです。
Img_25411  幼少の頃から絵を描くことが好きで、社会学者の伯父「清水幾太郎」の薫陶を受けて、デザインの世界を志し、桑沢デザイン研究所に入学。卒業後の1968年から服づくりを始め、良いものはメイド・イン・イングランドであることに気づき、74年に「WAY OUT」を設立。これはマンションメーカーの走りだったそう。82年に「GLENOVER」を立ち上げ、90年に現在の(株)インコントロを創業。2007年に「Akamine Royal Line」をつくり、オンワード樫山の「五大陸」には当初から関わってこられたとか。現在も百貨店やセレクトショップなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティング活動を行っているといいます。  
 まず現代という時代性についてです。物事をしっかりとした“楷書体”で見ることのできない若者が増え、メーカーは普遍的に着用できるトレンチコートやレザー、スラックスが出せていない。百貨店は四面楚歌にあると憂えます。バーバリーと三陽商会のライセンス契約が終了したように、今後「ライセンスブランドは消える」と予言。アメリカの見様見まねでやってきた日本のファッションビジネスは終焉し、戦後のビジネスを見直すときが来ている、とメッセージを送りました。
 次に「良い服は何か」について。例えばイタリアのサルトリア、アントニオ・リベラーノのスーツは30年も着続けているそう。このように時代を超えて受け継がれる服は、時間をかけて労力を惜しまずつくられているといい、良いものは手間暇かけてつくったもの、ときっぱり。
 この日の服装も、20年前のイタリア製コットンのジャケットで、ナポリでメンズファッションショーがあった時に見た服にインスパイアされてデザインしたものだそう。売れるものをつくるのではなく、連綿と存在させたいものをつくり続けることが大切と強調しました。
 最後に本題の「美しいとは何か」について。民藝運動の父と呼ばれる柳宗悦の思想を紹介。民芸品の定義 (柳宗悦の美思想「美の法門」) ―実用性、無銘性、複数性、廉価性、地方性、分業性、伝統性、他力制 ―を掲げて、講演を締めくくりました。

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2019年6月 7日 (金)

講演 パリコレ エシカル・サステナブルファッション考現

 ファッションの絶対的ミッションとなってきた「エシカル」や「サステナブル」。パリコレの常連も「サステナブルでなければファッションではない」という認識が当たり前になってきているといいます。 
 こうした中、去る5月18日、新宿の文化女子大学にて開催されたファッションビジネス学会特別講演会で、この問題を語るにふさわしい講師が招かれ、多くの関心を集めました。
Img_22071jpg   登壇したのはパリコレ取材で活躍されている朝日新聞社 東京本社報道局 文化くらし報道部 編集委員の高橋 牧子さんです。「パリコレクションにおけるクリエーションの傾向―エシカル・サスティナブルファッション考現―」と題して、ラグジュアリーブランドの世界で今、何が起こっているのか、語られました。
 
 お話の中で驚かされたのは、パリの気候があまりにも極端になっていることです。昨年は3月なのにマイナス12度にもなったそう。また7月には37度の高温で体調を悪くする人が続出したとも。自然環境問題はもう避けて通れないと、多くのデザイナーたちがメッセージを発しているようです。
 
 まず注目の若手から。真っ先に挙げたのがマリーン・セールです。2017年のLVMHプライズでグランプリを受賞し、廃棄された素材を利用したコレクションで頭角を現しているデザイナーです。 今秋冬コレクションは核戦争による地球滅亡をテーマに、核シェルターに見立てた洞窟を設け、そこからガスマスクをつけたモデルを登場させたといいます。
Img_22111  右は、この洞窟の中で光っていたアクセサリーで、インビテーションとともにプレゼントされたものだそう。
 このマリーン・セールの才能を引き出したのがバレンシアガのデムナ・ヴァザリアです。地球の危機を訴え、3Dプリンターで型をつくり、針と糸を極力使わない立体的な構造の、無駄のないミニマルなシルエットを提案しています。とはいえ、そこには伝統を大切にするオートクチュール・メゾンの、精緻な職人の手仕事との複合があることもポイントです。
 またエシカルでサステナブルといえば、その代表はステラ・マッカートニーでしょう。菜食主義者の両親に育てられたこともあり、社会活動を志し、ファッションデザイナーとなっても、ファーやレザー、シルク、ラムウールを拒否し、動物愛護活動にも熱心です。
 
 次に超巨大資本、昨年度の売上げ5兆8千億円のLVMHグループと1兆7千億円のケリンググループの取り組みについてです。両者はともに、サステナビリティの分野でも競争しているようです。つい先頃も火災に遭ったノートルダム寺院への支援で、ケリングが120億ユーロ出すなら、LVMHは250億ユーロ拠出すると言っています。
 LVMHは、2020年までに輸送にかかるCO2排出量をパッケージの縮小などにより、25%削減すると宣言。素材もサステナブルなものに変えていくとのこと。
 ケリングは動物福祉の改善が業界の急務と、新たな規定を公開。また18歳未満のモデルの起用を禁止すると表明しています。 
 もう一つ、リシュモングループでは、昨年時計の「ボーム」を誕生させています。これはストラップがコルクやコットン、レザーなど生分解性のある素材で製造されるなど、あらゆる面でエコを追求した新ブランドです。ショパールも、時計とジュエリーに「エシカルゴールド」の使用を決定したと発表しています。
 
 さらにファーやレザーについても、グッチやジバンシーなど多くのメゾンがリアルファーそっくりのエコファーへの切り替えを進行中。その方が表現の幅が広がるという利点もあるようで、本物のファー使いのブランドは減少しているといいます。
 シャネルは、元々ファーは使っていないそう。昨年末、他ブランドに先駆けて、ワニやパイソンなどのエキゾティックレザーの不使用宣言をしています。
 この他、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョンにも触れ、人種差別や年齢、性別、体型の枠を取り払うブランドのさらなる増加が顕著になってきたといいます。
 
 ファッション産業は、2番目に環境を汚染している業界とも言われています。これを打開するために求められるのが、まさに産業の変革で、その要になるのがグローバルに展開するブランドやビッグなコレクションブランドです。
 今回の講演でパリコレに参加しているクリエイティブなブランドが、いかにサステナブルに注力し始めているか、その事例を多数伺い、希望のようなものを感じました。但し危機を煽って、偽善に陥ることがないように---。この路線を前向きに進んでいってくれることを願っています。

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2019年5月 4日 (土)

キャリアミセス 『ミモレ』編集から見えてくる婦人のホンネ

 アパレルの中で売上が最も大きいのが、仕事をもつ女性や大人の女性を主なターゲットとするキャリアミセス市場です。先般の「ファッションワールド東京2019春」では、このキャリアミセスのトレンドにスポットを当てたセミナーが開催されました。登壇したのは講談社のWEBマガジン『ミモレ (mi-mollet) 』編集長 大森 葉子氏と、ファッションビジネスジャーナリストの松下 久美氏です。大人世代の女性たちが求めているものや本音、悩み、価値観を語り合うという、大変興味深い対談でした。

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 ところで『ミモレ』とはどのような媒体なのでしょう。お話によると創刊は2015年1月で、会員はうなぎ上りに増えて現在6万人、PV/月900万、UU/100万とのこと。読者層は2018年のアンケートによると30~40代が最も多く、既婚75.6%、未婚24.4%、有職者は81.7%と高く、世帯年収は1,000万円以上が37.7%、600~1,000万円が30%で富裕層向けメディアということが分かります。ミモレ限定8万円のボックスを出したら即完売したそうです。
  ファッションメディアとしては大人世代ナンバーワンのスナップサイトが人気で、“なに着る”や“今日、なに着てる”で検索して入って来る人たちの、コーデを見たい、着たい、探したいという欲求に応えているといいます。これまでのスナップアーカイブ数は約12,000体とスゴイ数字になっているとか。スナップを自動解析しタグ情報を返すAIを搭載しているとも。ファッションはトレンドよりもいかに着こなすかをポイントに、自分らしさを表現したい読者にコミットしているといいます。
 コミュニティづくりも行っていて、もう一度学び直したい、同じ志を持つ人と友達になりたい、という声があることから有料講座を実施。東京や京都の大学で開講し、応募者が殺到しているそう。修了者数は延べ220名で受講生からは満足の感想を得ているそう。

 サイトを毎日訪れる層が全体の70%もある、というのにも驚かされます。それだけ多くの読者を生み出せている理由は、記事の作り手が全員顔を出し、背景にある思考のストーリーを体感できているからではないかと分析。365日毎日届くコメントは必ずバックし、次の記事づくりにつなげているとか。一人の意見の後ろにあるサイレントマジョリティの声を拾うことを常に心掛けているそうです。
 企画をリードしているのは、コンセプトディレクターの大草直子さん。例えば「大人の女性は“脱ほっこり”であか抜ける!」と“ほっこり”婦人にならないためにできることをアドバイス。この“婦人”という言葉を発案したのも大草さんで、女子カルチャーへのカウンターもあって“大人女子”ではない“婦人”にフォーカス、これで押し切ったといいます。“婦人”とは乙女心を否定しない存在、その代表が大草さんであり『ミモレ』のシンボルともなっているそう。
 たくさんの興味深いお話しの後、まとめとして下記を紹介。
 一つは女性を楽にしてあげるコンテンツであること。仕事を持ち母でもある女性は忙しい。ファッション関連が多いのは、そうした女性たちが自己表現に悩む代わりに記事を役立てて欲しいから。
 二つには「年齢を重ねることは楽しい」と思える社会を一緒につくっていくこと。若見えではない、気持ちを上げてくれるようなスタイル中心の構成はそのためといいます。
 最後に記事は中立であること。編集を手掛けているのは『ミモレ』世代で、純粋な気持ちで正直に書かないとバレることを知っている人たち。おしゃれ感度も読者とそれほど差はない。だからコスパのよいブランドなど、本当の意味で気に入ったと思うものだけを掲載しているそうです。
 女性たちの人生後半戦を応援する『ミモレ』。WEBサイトを拝見し、“婦人”の気持ちに寄り添う提案が満載、と改めて感じ入ったことでした。

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2019年5月 3日 (金)

世界一のデニム品質を誇る日本のものづくり 10年後の未来

 世界一の品質を誇る日本のデニム界。その次世代リーダーの雄たちが登壇するシンポジウムが、先般の「ファッションワールド東京2019春」で開かれました。
 パネリストはジャパンブルー専務取締役 真鍋 カツ氏、フルカウント代表取締役 辻田 幹晴氏、KUROブランドデザイナーの八橋 佑輔氏の3氏で、モデレーターはBegin編集長 世界文化社の光木 拓也氏です。「世界一のデニム品質を誇る「日本」のものづくり ~Made in Japan デニム 10年後の未来~ 」をテーマに、モノづくりへのこだわりや日本の強み、10年後を見据えた今後のヴィジョンなどが討論されました。

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 まず日本のデニムが最高と思うところについて。
 真鍋氏は「セルビッチデニムをつくれる力織機を使い、職人との二人三脚で培ってきた生地づくり」を、辻田氏も「日本には60年代の力織機が残っていて、それを修理しながら使用してきた丁寧なものづくりがあること」を紹介。「手のコントロールで、織機のスビードを変えることができ、裏毛スエットのように見えるデニムや緯糸に銀糸を打ち込むなど様々な可能性がある」といいます。八橋氏は「日本の精密なモノづくり。キメ細かい味の出し方も上手」を挙げました。
 次に他社に負けないポイントは何か、です。
 辻田氏は「最もはき心地のよいジーンズをつくっていること」といいます。「ジーンズはその人のものとなってからよりよくなっていく。体の一部になるまではき続けられるところが他の服と違うところで、肌触りの良さこそ大きな価値と思っている」そう。真鍋氏は「日本のデニムがイタリアなど欧米と異なるのは、水質の違いからくる風合いと色」と強調。とくにインディゴブルーの様々な青の中で、「日本が発信している“ジャパンブルー”は、天然藍が緑色から青色に変化する、少し緑味の青。その日本ならではの感覚を大切にしている」といいます。
 さらに将来への夢やヴィジョンを問われて。
 八橋氏は「10年後は買い方か変化する。ネットでは味わえない奥深い付加価値を提供できる店づくりを広げていく」。辻田氏は「変化する売り方にチャレンジすることと、高齢化する川上での若手育成」を挙げ、真鍋氏も「産地が産地としてあり続けるように、産地を盛り上げることが大事」。その上で「グローバルなデニムサミットをシェアし拡散すること、そして世界一を担い発信していく」と発言するなど、実に前向きです。
 日本メーカーの将来像が見えて、頼もしく思えたセミナーでした。

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2019年5月 2日 (木)

対談「ツモリチサト25年の軌跡と今後の展望」

 先般「ファッションワールド東京2019春」の特別講演に、“カワイイ”で人気の「ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)」を手掛けるデザイナーの津森千里さんが登壇、美モード ファッションディレクターの萩原 輝美さんと対談しました。  
Img_13631  先頃、このブランドを取り扱ってきたエイ・ネットが同事業を終了するとのニュースが流れて、衝撃を受けたばかりです。それもあってか、会場は立ち見が出るほどの満席状態でした。
 テーマは「ツモリチサト25年の軌跡と今後の展望」です。25年を経て、昨年「2018 WAKU WORK 津森千里の仕事展」を開催するなど、今も愛され続けているブランドの秘密、そしてエイ・ネットを離れて、どのように展開していくのか。興味津々で拝聴しました。

 まずは「デザイナーをやめたいと思ったことは一度もない」ときっぱり。自身のデザイン事務所のティー・シィー(T.C)を通してデザイン活動を続けていく方向といいます。
 次に「ツモリチサト」ブランドについて、印象に残った言葉があります。それはブランドのミューズが自分自身であるということ。ご自分の中に多面的な子どもがいて、その子どもの好きなものや興味のあることを、自由な発想で素直に表現するブランドが「ツモリチサト」なのだそう。
 また“カワイイ”と言われるデザインについても興味深い発言をされています。子どもは可愛いけれど、実は可愛くないのが好きで、ペットも可愛くない方が好みだそう。大人は可愛くないので“カワイイ”大人をつくるための服づくりをしているといいます。とはいえ本音は“カワイイ”ではなく“カッコいい”服と思われたかったのに---、皆が“カワイイ”というとか。 
 “セクシー”の褒め言葉もよく聞かれるそうですが、“モテ服”というのはあり得ない。“着て楽しい服”という意味に捉えていると明言します。そうはいいながらも色ではピンク、とくにサーモンピンクがお気に入りとのこと。 
 さらにパリでは、フランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会のディディエ・グランバック会長からオートクチュールを薦められたこともあったそうです。その上でもしもラグジュアリーブランドからオファーがあったら、大好きな「スキャパレリ」に行きたい、というのも津森さんらしいなと思いました。 
 
 これからも着ることで気分が上がり、楽しくなれる服をつくり続けていきたいと語って、対談を終えました。

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2019年5月 1日 (水)

日本のファッション流通 ECとデジタルシフトの未来を語る

 ファッション流通はここ10年で劇的な変化を遂げました。企業はテクノロジーの進化や顧客の変化に果たして追いつけているのでしょうか。
 先般の「ファッションワールド東京2019春」ではこの課題を取り上げた特別ディスカッションが行われました。登壇したパネラーはナノ・ユニバース経営企画本部 WEB戦略部長の越智 将平氏とDoCLASSE CMO 兼 web事業長の藤原 尚也氏、SHIBUYA109エンタテイメント オムニチャネル事業部 兼 マーケティング戦略事業部 担当部長 澤邊 亮氏の3氏と、コーディネーターのビジョナリーホールディングス執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長 川添 隆氏です。「どうなる、日本のファッション流通 ~ECとデジタルシフト 5年後の未来~」と題して、通販や小売り業の分野から今後のECのあり方を議論。川添氏の問題提起にパネラーが答えるという対談形式で進められました。
 
 まず「5年前と現在とで変化したことと変化しなかったことは?」から。
 越智氏は「変化していないのはプロダクツとプライス。 セールはクーポンで対応。Img_19291 変化したのはプロモーションとプレイスで、ポップアップストアが増えて、宣伝の仕方や売る場所が多様化した」。
 (右はナノ・ユニバースのショップ)
 藤原氏は「マーケティングの軸を常に顧客体験の最大化に置いていることに変わりはない。変化したのはメディアとITの進化で、1999年にツタヤオンラインをつくった当時は、オンラインとオフラインが敵対していた。しかし現在はシームレスにつながるようになり溶け込み合っている」。
 澤邊氏は「変わらないのはSNSの重要性と顧客の理解。変わったのは店舗やショップスタッフの役割で、ECとリアル店舗が一緒になって同じ形で売り上げを見るようになった。スタッフにはSNSのインスタやラインなどを自由に使いこなす力が求められる」という
 
 次に「これまでで失敗したと思うことは何か?」では。
 越智氏は「ファッションテックを導入したが失敗した。3Dスキャンで体型データを計測するというものだったが、体型、特に首回りを正確に測れなかったことが一因。テック系は本質的サービスがきちんとできていないと上手くいかない」。
 藤原氏は「元々紙媒体で年齢層も高い。SNSの優先順位は低く、それよりは公式サイトからの客を増やす戦略をとっている。テレビCMを初めて大規模に打ち、これをそのまま動画サイトに流したが反応は鈍かった。WEB用に動画をつくったところ、これは上手くいっている」。
 澤邊氏は「若者マーケティング研究機関“109ラボ”を立ち上げ、アンケートやグループインタビューなど、かなりアナログなことをやっている。直接会って話を聞くと、ブランドにこだわらない若者が最も多いことがわかったりする。エンタメやライブへの関心をつかんだり、新ブランドの導入に活用したりして、役立てている。2017年にオープンしたインキュベーションプラットフォームは上手くいかなかったが、今年再スタートしている」。
 
 さらに「5年後の未来を見据えて、今やるべきことは?」との質問に。
 越智氏は「ECだけではなくリアル店舗の改革が必要。店内での客の行動をデータ化する」。
 藤原氏は「サイトのリニューアルで、サイト自体をシンプル化する」。
 澤邊氏は「いったん原点に戻り、店舗の役割が増すと思う。客が何を望んでいるか、データをとり、体験価値を上げていく」など。
 
 川添氏の巧みなリードもあって、それぞれ異なる立場からファッション流通の現場が率直に語られました。近未来へのヒントもいっぱい、大変興味深い座談会でした。

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2019年3月22日 (金)

タキヒョー 滝 富夫氏が語る「ファッションビジネスのコツ」

 先月23日、ファッションビジネス学会東日本支部研究発表会が開催され、タキヒョー名誉顧問 滝 富夫氏が基調講演されました。滝 富夫氏と言えば、伊藤操著「マネージ―ダナ・キャランを創った男」として、レジェンド的存在の方です。この講演も伊藤操氏のご尽力で実現したとのことでした。
Img_11261  タイトルは「ファッションビジネスのコツ」です。とはいうものの滝 氏は冒頭「ファッションビジネスにコツはない」ときっぱり。「当たり前のことをやればいい」と断言し「自分はラッキーでタイミングもよかった」といいます。
 内容はこれまでのご自身のお仕事を振り返るもので、その波乱に富んだ体験談を語られました。お年は何と1935年生まれの84歳とか。とてもそのようには見えないしっかりとした語り口が印象的でした。
 タキヒョー社長に就任されたのは1962年で、その後1973年にニューヨークのデザイナーブランド、アン・クライン社を買収します。しかしその翌年にデザイナーのアン・クラインが急死して大混乱に陥ります。しかし当時アシスタントをしていたダナ・キャランを起用し、セカンドラインのアン・クラインⅡを成功に導くのです。そのときのエピソードも面白かったです。あるときダナに「何故私を選んだの?」に訊かれて、「あなたには色彩感覚や素材選択眼、デザイン力だけではない、フィット性がある」と告げたそう。それは滝氏が、客が服を購入する最後の決め手は“フィット”にあると見極められていたからなのですね。数字を示すことでデザイナーは納得、仕事に打ち込まれていったそうです。
 その後1985年に「ダナ・キャラン・ニューヨーク」を設立、1988年にその頭文字をとった「DKNY」を立ち上げて爆発的なヒットを呼び込みます。
 このヒットの裏には、科学的な根拠があったと強調。クリエイティブな人はとかくビジネスを卑下する傾向があるが、実は論理的に筋道を立ててビジネスをすることが重要で、デザイナーに算数の話をしてびっくりさせたこともあったとか。
 またシーズン最後の見切りをどのようにして減らすか。見切りは「身を切ること」で、このようなことを平気でやってはいけない。そこは出口改革を行って解決していくしかないとも。
 この他、クリエイティブ・マネージメントの重要性など、様々な興味深いお話しの後、これからの商品開発で大切なのはお客様が心のうちに抱いているウオンツ(欲しいモノ)を掘り起こしていくことといいます。たくさんの目に見えない「困った」を引っ張り出してきたからこそ、ここまで走り続けてこられたと感慨深げに仰って、講演を終えました。
 進藤由佳著「回想・滝富夫の流儀~困ったねから始まる」をプレゼントしていただき、再度読み直して、その経営の手腕に改めて感銘したことでした。

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2019年1月16日 (水)

「日経クロストレンド2018」消費を変えるトレンドを体感

 「日経クロストレンド2018」というイベントが昨年11月末に東京国際フォーラムで開催され、2019年に向けて消費を変えるとみられるテクノロジーやトレンド、ヒットを体感してきました。遅ればせながら、その模様をお伝えいたします。

 出展ブースではトライアルさせていただけるものが多く、それぞれに皆、興味深かったです。

 中でもファッション関連で注目したのは、レナウンの「着るだけ」です。Img_92531jpg
 これは男性向けビジネスウェアのレンタルサービスです。コーディネイトやクリーニング、保管など面倒なことを一切気にせずに、ただ「着るだけ」でよいというもの。料金は月額制でスーツ2着が4,800円からとのこと。
 こんな風に「買う」のではなく「借りる」という流れがスーツにも来ているのですね。一つ気になったのは、似たようなスーツのレンタルサービスを行っていたアオキの「suitbox」が、最近撤退したというニュースです----。とはいえ昨今レンタルはもうフォーマルウェアだけではなく、女性服では普段着にも広がってきています。流れに乗ると期待しています。

 またコニカミノルタの「クンクンボディ(kunkun body)」もスゴイ、 と思ったテクノロジーです。これはニオイをかぎ分けるAIシステムで、目に見えないニオイを「見える化」する、つまりニオイを測定するツールなのです。
Img_92471  ブースでは体臭や口臭などをタッチ&トライしていました。私も体験してみて、結果はニオイはないとのことで安心しました!

 職場内などでよく、どうにかして欲しい、と思うことのトップが、体臭や口臭だそうです。アンケートでも約7割もの人が、ニオイが気になる、と答えているとか。スメルハラスメント(スメハラ)という言葉も出てきていますね。
 「クンクンボディ」は、こんなニオイの問題を解決する画期的な技術、と思われます。今後の展開が注目されるところです。

 会場では、恒例の日経トレンディによる2018年のヒット商品ベスト&2019年のヒット予測ランキングが、ずらりと展示されていました。
 簡単にご紹介すると、2018年のヒット商品ベスト30では、第一位が安室奈美恵、第二位 ドライブレコーダー、第三位 ペットボトルコーヒー、第四位 「ゾゾ」スーツ,第五位 グーグルホーム&アマゾンエコー、第六位 漫画「君たちはどう生きるか」、Img_92561jpgそして第七位が「アイボ(aibo)」でした。
 「アイボ」はご存知ソニーの犬型ロボットです。思っていたよりもずっと小さくて、だっこしやすそう。ほんとうに愛らしい!
 2018年1月11日(ワン、ワン、ワン)に発売を始めて、7月までの半年間で2万台売れたとか。今はもう予約待ちの状況といいます。

 2019年のヒット予測ランキングでは、第一位が日仏激安&高機能カジュアル「デカトロン&ワークマンプラス」、第二位 新ニッポンの夜明け「新元号フィーバー」、第三位 アジア最強の書店「誠品生活」----となっています。
Img_92641  上は、売れ筋予想トップの「デカトロン&ワークマンプラス」のコーナーです。
 アウトドアスポーツは昨年以上に大きな旋風を巻き起こすことになりそうです。

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