ファッションビジネス

2021年6月14日 (月)

UNIFAサステナブルトーク「ファッションと気候変動」

 ユニバーサルファッション協会(略称 UNIFA)では5月29日、オンライン研究会vol.2 UNIFAサステナブルトークを開催しました。初回に続き、登壇したのはユニバーサルファッション協会理事でMASATO YAMAGUCHI DESIGN OFFICE 代表 / デザイナーの山口大人氏です。

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 今回は、「ファッションと気候変動」をテーマに、世界が激変する中、ファッション産業はどのように気候変動と向き合っていくのか、ユニバーサルデザインの視点を入れながら、いつものように切れのよい語り口で分かりやすく語られました。 
 
 まず気候変動について。「気候危機」と表現すべきで、要因は人間活動にあり、GHG(グリーンハウスガス=温室効果ガス)を排出しているのは大半が先進国、割り食うのは途上国であり、ここからしてユニバーサルデザインになっていないと指摘しました。
 世界の平均気温上昇は2015年パリ協定で、産業革命前と比較して、1.5度に抑える努力が求められているとのことです。このままいくと2030~2052年の間に1.5度に到達する可能性が高く、1.5度を超えると、固有性の高い生態系及び人間システム(サンゴ礁や先住民)や極端な気象現象(集中豪雨、干ばつなど)、特定の集団、例えばアフリカなど途上国に偏って影響を及ぼすリスク、生物多様性の損失、南極の氷が溶けるなど大規模な特異現象が懸念されるといいます。

 次にファッション産業の対策について。Global Fashion Agenda(コペンハーゲンでの世界最大のサステナブルファッション)とMckinsey&Company(マッキンゼー)が共同発表した「ファッション・オン・クライメイト(Fashion on Climate)」のレポートから、解決案を提示。
 ①GHG 排出量の定量化 
 ②GHG排出量の削減の可能性(手段)
 ③排出削減と経済(コスト)
 ④プレイヤーの役割
 上記、4つの項目の内、特に②GHG排出量の削減の可能性(手段)を取り上げて解説しました。
 2018年、ファッション産業のGHG排出量は約21億トンで世界全体の4%という数字を示し、このままいくと2030年には約27億トンに達するとのことです。減らさなければいけないはずなのに逆に増えてしまうのです。
 平均気温の上昇を1.5度にするためには半分の11億トンに削減する必要があるといいます。このために求められるのが、①上流事業からの排出量削減:61%、②ブランド事業からの排出量削減:18%、③持続可能な消費者行動の推奨:21%です。これができれば、約17億トンを削減できるポテンシャルがあると強調しました。
 
 それではどのように削減するか、その方策を<上流事業>、<ブランド事業>、<消費者>別に詳述、取り組みの具体例も紹介しました。
 ここでは以下に、その項目を挙げておきます。
<上流事業>
 ①機械と技術革新によるポリエステル生産の効率化
 ②綿花栽培での肥料と農薬の使用量の削減(70%)
 ③機械と技術革新による紡績、織り、編みの効率化
 ④ウエット(湿式)からドライ(乾式)プロセスへの移行 
 ⑤100%再生エネルギーへの移行
 ⑥生産と製造の無駄を最小限に抑える
 ⑦暖房など空調関連のエネルギー効率化
 ⑧ミシンの効率向上

<ブランド事業>
 ①リサイクル繊維、オーガニック繊維、バイオベース繊維の採用
 ②海上輸送の比率向上(海上83%:航空17%→海上90%:航空10%)
 ③デジタル化によりサプライチェーンの効率化やニアショアリング(地産地消に近い考え方)
 ④リサイクルパッケージの採用、パッケージの軽量化
 ⑤店舗設備の空調の効率化、LED照明への切り替え、再生エネルギー100%への移行
 (LEDへの切り替えでエネルギー80%向上)
 ⑥Eコマースの返品率削減(返品率35%→15%)
 ⑦過剰生産の削減(衣服の40%が値下げで販売されている)

<消費者>
 ①ファッションレンタル、リコマース、リペアなどの循環型ビジネスモデルへの移行
 (2030年までに5着に1着は循環型のチョイスが必要)
 ②洗濯と乾燥の削減
 (6回に1回は洗濯をスキップ、30度未満での洗濯、乾燥機の利用を抑える)
 ③回収とリサイクル(クロースドループ リサイクル モデルへの移行)

 最後にファッション産業の対策のまとめとして:
・1.5度未満に抑えるには2030年までに排出量を約半分へ
・上流事業、ブランド、消費者、それぞれのセクターで対応が必要
・多様的に企業間、産業間を越えた連携で排出量を抑える必要がある
 これには “ガバナンス” が鍵になると述べられ、締めくくりました。
 
 ファッション産業が抱える大変複雑で難解な環境問題の要点を整理し、ソリューションにまで踏み込み解き明かしていただきました。すばらしい講演に拍手! 次回も楽しみにしています。

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2021年5月 8日 (土)

オンライン研究会 vol.1 UNIFAサステナブルトーク 「サステナブルなファッションから見るユニバーサルデザイン」

 少し前の2月27日、私が事務局を担当しているユニバーサルファッション協会(略称 UNIFA)で初のオンライン研究会、vol.1 UNIFAサステナブルトークを開催しました。スピーカーはユニバーサルファッション協会理事でMASATO YAMAGUCHI DESIGN OFFICE 代表 / デザイナーの山口大人氏で、テーマは「サステナブルなファッションから見るユニバーサルデザイン」です。

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 「サステナビリティ」はファッションの未来を拓くキーワードと言われています。直訳すると「持続可能性」で、SDGs(持続可能な開発目標)の世界を目指す動きの総称です。「誰一人取り残さない」というSDGsの原則は、UD (ユニバーサルデザイン)の基本理念である包括性(inclusivity)と合致しています。UDとSDGsは連動しているのです。 
 ユニバーサルファッションは、UDのファッションであり、サステナブルなファッションと呼んでも過言ではないと思います。そこで今回は世界的なサステナブルファッションの潮流から見たユニバーサルデザインを語っていただき、ユニバーサルファッションの本質とは何かを改めて考えてみました。参加者は17名(内、UNIFA会員10名)でした。

 冒頭、山口氏はサステナビリティについて概説、その上で世界のサステナブルファッションの潮流を次の2つのキーワードで解説しました。
 一つは「アソシエーション」です。大きく3つ、「FASHION PACT(2019年フランスG7サミットの際、誓約されたファッション協定)」、「Textile Exchange(アメリカ母体のNGO)」、「ACT (Action, Collaboration, Transformation 労働者の生活賃金を達成する組織)」を紹介。
 もう一つは「法による規制」です。たとえば2020年にフランスで在庫や売れ残り品の廃棄禁止法案が成立し施行されたことや、2022-23年、EUが廃棄繊維製品の分別回収規制を導入、適宜リサイクルや加工を進める予定であることなど。
 欧州ではこの二つ、企業間、産業間を超えた連携で課題解決に取り組む「アソシエーション」と、「法による規制」の重要性が増しているといいます。しかもその一方で、様々な分野の人々の連携により問題解決のためのイノベーションが生まれ、そこから新しいビジネスが出現していることにも言及しました。
 次に本題のユニバーサルデザイン(UD)についての考察です。UDもサステナブルファッションのように、「アソシエーション」と「法による規制」で推進されるのではないかといいます。
 障がいと一口に言っても、医学モデルと社会モデルがあり、後者の社会モデルはその多くが社会環境によって作り出されるものです。UDを推し進めるには、社会との関係性が何よりも重要であり、「アソシエーション」と「法による規制」で社会をUDにする、それがひいては持続可能な社会をつくることになるとの考えに、私も共感させられました。
 
 ディスカッションではこの難題に参加者から様々な意見が出され、時間切れとなりました。
 次回に期待です。

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2021年3月22日 (月)

「デジタルで進むサステナブルなファッション」寄稿

 一般財団法人日本綿業振興会発行の機関紙「COTTON PROMOTION コットンプロモーション」(2021年冬号)のコラム「マーケティング・アイ」に寄稿しました。テーマは「デジタルで進むサステナブルなファッション」です。
 本紙と併せてご覧下さい。1_20210322002301

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2021年3月 8日 (月)

再エネ時代到来!2030年、日本アパレルは変革できるか?

 今や世界中が脱炭素社会を目指して動き出す中、みんな電力主催の特別ウェビナーに参加しました。テーマは「再エネ時代到来!2030年、日本アパレルは変革できるか?」です。 Photo_20210302191901
 登壇者は、DEPT Company代表 eri(えり)氏、リトルリーグカンパニー カンパニーオフィサー ロンハーマン事業部 事業部長 兼 ウィメンズディレクター 根岸由香里氏、CDP Worldwide-Japan シニアマネージャー 高瀬香絵氏、ファシリテーターはみんな電力 事業本部マネージャー 間内賢 氏で、それぞれの立場から、再エネに関する取り組みや実績、それらを通してみる日本アパレルの未来について語られました。

 まず再エネの専門家、高瀬氏が、CDPの立場から「気候変動から未来を守ろうと立ち上がっている企業と投資家」と題して解説。2030年までにCO2排出を半減、2050年にはネットゼロを掲げるファッション産業憲章に署名した企業117社をリストアップ。日本からはアシックス、ファーストリテイリング、YKKの3社が参加しています。リーバイスは2025年までに2016年比90%削減、シャネルは2025年には電力の100%を再エネにするとコミットしていることなどを報告。

 次に根岸氏がロンハーマンの取り組みを紹介。「幸せが私たちのゴール」というスローガンの下、ビジネス構造の改革や再エネシフト、無駄を省き廃棄・ごみの削減、商品における素材や生産過程の透明性の明確化といった活動を進めているとのこと。中でも力を入れているのがCO2排出ゼロの再エネで、本社・店舗のエネルギーはもとより、サプライチェーンとも連携し、生産背景、物流拠点等を含めて再エネ化を推進しているといいます。再エネを選ぶ大切さをディベロッパーなどに広く伝えたいと意欲的です。
 
 eri(えり)氏は、オリジナル製品をつくりながらも古着を仕入れ、補修、販売するアパレルを手掛けています。2020年にサードハンドプロジェクトを立ち上げ、地球環境に対して可能な限り負担をかけない事業を積極的に行っているといいます。ちなみにサードハンドとはセコハン、セカンドハンドの次という意味ですね。
 これまで私たちはモノを売ることがゴールと思ってきましたが、それは間違いときっぱり。大量につくって残ったら焼却するやり方は2030年までに成立しなくなるといいます。 
 時代はゆりかごから墓場までというように、墓場まで責任の持てるモノづくりへ。何をつくるかではなくどうつくるか、客にどういうものをつくれるか、つくる側が考えないといけない。ロンハーマンのような理念を掲げているところで買い物したいと思う、そういう人が増えているとも。 
 ここで今一度立ち止まって何が本当の意味でカッコいいのか、ファッションを悪いモノではなくて心を豊かにして、みんなをハッピーにできるモノに変えていきたいと、語るeri(えり)氏、輝いて見えました。
 
 さらに再エネについて、普及には何が必要かという問いに、高瀬氏は、がんばっている人を応援し声を上げることで再エネは進むといいます。日本は再エネの量と価格が問題ですが、しだいに安く入手しやすくなり、あと1-~2年も経てば一気に増加すると。政府の後押しもあって、ものすごい勢いで変化が起こっているといいます。

 最後に一言。根岸氏は、「再エネにシフトすることが第一歩」。eri(えり)氏は「100%サステナブルはまだ難しい。“リスポンシブル”という言葉を大事にしたい。自分がやっていることに責任が持てれば、第3者にも未来にも責任を持つことができる」と。
 高瀬氏はロンハーマンの「幸せが私たちのゴール」を挙げて、「何のために私たちは働いているのか。ネットゼロを目指すのは、それ自体が幸せだから。ハピネスを生活の基軸に置くことがサステナブルにつながる」と述べて、締めくくりました。
 
 再エネ時代が到来する2030年に向けて、日本アパレル業界の未来が透けて見える印象に残るウェビナーでした。

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2021年3月 6日 (土)

ワコールのアバター接客「パルレ」 アバター活用に期待感

 ファッションビジネスにオンライン化が加速する中、アバターをコミュニケーションツールとして活用する事例が現れるようになりました。昨年10月末、ワコールは、アバター接客システム「アバカウンセリング パルレ(以下、パルレ)」を東京の「3Dスマート&トライ」東急プラザ表参道原宿店に導入しています。このニュースに興味を持っていた私は、ファッションスタディーズから「ついにアバターを活用したサービスがファッションビジネスに出てきた!」をテーマにしたオンライントーク開催の知らせを受けて、早速申し込みました。
 登壇者は、パルレの開発責任者であるワコールの総合企画室イノベーション事業推進部長下山廣氏、パルレのアバターシステムを開発したHEROES代表の高崎裕喜氏、ネットイヤーグループ デジタル&フィジカルデザイン編集部UXデザイナーの仙崎萌絵氏、Apparel Play Office 代表 パタンナー・アパレル3Dモデラーの大橋めぐみ氏、聞き手はファッションスタディーズ代表の篠崎友亮氏です。

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 冒頭、ワコールのアバター接客「パルレ」を紹介する約5分間のビデオが放映されました。下着というインティメイトなアイテムをアバターと楽しく会話しながら選べるサービスで、この3Dアバターカウンセリングならストレスレスな買い物体験ができそうです。過疎や遠隔の地に住んでいる人も相談しながら買えるすばらしいサービスと思いました。
 ファッションビジネスへのアバター活用に期待がふくらみます。

 このシステムを体験した仙崎萌絵氏は、次のように語っています。「個室でじっくり1対1で相談し、対面ではないので緊張しなかった。商品知識に長けたプロによる具体的なアドバイスが受けられ、3Dのパーソナライズデータで自分の体型を見つめるきっかけにもなった」とか。また店舗の空間デザインや体験を受けるまでのWEBサイト、アバターの会話設計など、コミュニケーション全体を意識した設計になっていて、悩みやニーズに寄り添ってもらえる体験ができて、最高だったそう。
 大橋氏も体験してきたとのことで、とくに3Dスキャンに驚嘆したといいます。自身のサイズが数値化されるだけではなく画像で体型が可視化されるのが興味深かったと。また「これはいいな」と思ったのは、人の気配がないこと。「待たせているのかも」などといった不要な気づかいがないので、リラックスできたといいます。
 
 総じて高評価だった「パルレ」。その意図や目指すところについて下山氏は、デジタルによってリアルのサービスをより良くしていくことに注力しているといいます。ワコールは全国に2,400店舗、リアルな販売員が3,500人いるそうです。彼らリアルな人たちの活躍をより広げたい、リアルな接点の意味合いをもっと強めたい、との思いを軸にデジタルトランスフォーメーションに集中して取り組んでいるとのことです。仙崎さんや大橋さんに感動してもらえたのは、人を意識したデジタルだからと感じているとも。
 デジタルは人のためにあり、デジタルの力でリアルをブラッシュアップすることで、結果として人間の可能性を広げることができると語気を強めます。
 
 高崎氏は、アバトーク(AVATALK)の発明者です。そのきっかけは、今の世の中が人の気持ちをいいづらい社会になっていると思ったことだったといいます。下山氏からデジタルを通して最終的に人につながるとの考えを聞いて、一緒に開発したいと思ったのがすべてだそう。目指すのはフィジカルとバーチャルの世界が融合し、人を支えるツールになること、と言及しました。
 
 下山氏は、アバターは空間と時間を超えて人間の可能性を広げるツールと指摘。販売員は日本全国どこにいても誰でもアバターとして働くことができるし、テレワークで接客業だけ取り残される議論があるけれど、アバターがあればまったく違う世界になるといいます。人間は生まれてからずっと五体満足な状態でいることは実はレアケースで、それにより活動が制限されている方々にもアバターは活躍の場を提供できるとも。
 さらにアンケートをとってみたところ、「パルレ」のサービスは驚くほど顧客満足度が高かったそうです。働く側もアバターを介することでストレスをあまり感じずに働けるとの声が多く、双方にメリットがあるといいます。
 アバターは二人いて、それぞれ進藤みなみさん、明石舞さんと名前が付いているとか。キャラクター設定にはとりわけこだわったそうで、アニメキャラではない人間らしい好感度を意識したといいます。この親しみやすいアバターのデザインも、成功の要因と分析していました。
 ワコールでは今後、このシステムを全国に展開していくとのこと。下着に悩む方、心強いですね。
 
 最後に、篠崎氏が「デジタルだから人を排除するのではなく、デジタルで人の可能性を広げることがこれからのキーワードと思う」と述べて、締め括りました。

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2021年3月 4日 (木)

齊藤孝浩氏講演「在庫コントロールのための組織と業務」

 先般、小売業の在庫問題を解決するクラウドサービスを開発・提供しているフルカイテン(FULL KAITEN)主催のオンラインセミナーに、Photo_20210302105601 ファッション流通コンサルタントでディマンドワークス代表の斉藤孝浩氏が登壇。「過剰在庫が気になり始めたら取り組みたい 在庫コントロールのための組織と業務」と題して講演しました。
 今、多くの小売企業が「在庫ばかり増えて売上が増えない」、「売上は増えるけど粗利が稼げない」課題に直面しています。斉藤氏は在庫を切り口にその原因と解決策のポイントを紹介しました。
 
 まず事業拡大と過剰在庫です。事業が拡大する中、みられる現象として、1つ目は、売り上げは増えているが売れ残り在庫も増えている。在庫効率(在庫回転率、在庫日数)が悪化している。2つ目に、値下げが増え、粗利率が低下する。販売管理費は売上と共に増えるので営業利益が減少する。3つ目に粗利率をキープしようと、値下げを抑えると期末在庫が増える、を挙げます。規模が小さいとき(1~3店舗くらい)はバイヤーが仕入れ、店舗が販売することで、在庫消化は上手くいくが、10店舗くらいになると人が増えてきて、30店舗30億円規模になるとMDの職務が増えて、役割連携にコミュニケーションギャップが出て、売り逃しが起きる。年商30億円くらいのところに在庫管理の壁があり、在庫コントロールに本格的に取り込む必要があるといいます。

 次にこのコミュニケーションギャップを解消するポイントは何かです。それは①いつ売るか、②何を売るか、③いつまでに売り切るか、バイヤー(仕入れ担当者)の頭の中にある、この3つを明確に伝えることが重要と強調。これができると売り逃しは減少するとのこと。
 ①いつ売るかでは、販売チャンスを可視化することがキー。売上と粗利を最大化できるタイミングはいつかを明確にするために、1年間を週単位でグラフ化し、販売ピークにどんな商品を販売したら売上と粗利を最大化できるか、仕入れ担当者と販売担当者のがんばりどころをピンポイントで一致させることが鍵になるといいます。
 ②何を売るかでは、販売計画を月単位で販売現場と共有し、毎月商品別に販売計画を立てること。例えばユニクロです。ユニクロのように販売計画を月単位でわかりやすく共有すれば、販促・EC担当はどの商品に注力すればいいか、無駄な販促費をかけないで済みます。また店舗販売担当者は売場をどう変えればよいかを理解できます。DB(ディストリビューター)は商品ごとの配分の強弱がわかり無駄な配分をしないで在庫集約に備えられます。これにより各職務が在庫最適化に向けて動き出し、販売目標を共有した自走組織になるといいます。
③いつまでに売り切るかでは、販売期限を明確化すること。シーズンの販売期間と販売期限のグラフを作成し、その商品をいつまでに売り切るかを明確にすれば、各販売担当はその商品の販売期限を認識し、それに合わせて行動するようになり、売り切りのための「目標管理」ができると指摘しました。
 
 最後にまとめとして、在庫管理が気になり始めたら、社内一丸となって目標を共有すること。そして在庫コントロールを実践して値下げを抑え、在庫を販売期限までに売り切る努力を惜しまず、粗利最大化の自走組織にしていくことが大切と語って、締めくくりました。 
 
 新型コロナウイルスの影響で成果をなかなか上げられないファッション小売業界への貴重なアドバイスとなる講演でした。
 

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2021年3月 3日 (水)

奈良の中川政七商店による複合商業施設 記者発表会

 奈良を拠点に全国に60店舗を展開する生活雑貨の中川政七商店が奈良市内に初の複合商業施設「鹿猿狐(しかさるきつね)ビルヂング」を4月14日に開業することになり、2月12日、東京・渋谷で記者発表会が行われました。私はオンラインで参加しました。
 まず代表取締役社長 千石あや氏が自社を紹介。1716年創業の老舗で、「日本の工芸を元気にする」というビジョンの下、SPA事業や産地支援事業、スモールビジネスで奈良を元気にするN. PARK PROJECTを展開していることなどを説明しました。

 次に本題の新施設です。「路地を巡り出会う、触れ、学び、味わう奈良」をコンセプトに買い物や飲食、ワークショップなどさまざまな体験型コンテンツを提供する場となっているとのことです。D432011763f741808a15b6bf46e16d1b
 建物は日本を代表する建築家 内藤廣建築設計事務所 内藤廣氏による設計で、挨拶に立った内藤氏は街並・伝統・現代・近未来を建築に表現したといいます。周囲の昔懐かしい雰囲気をまといながら未来に向けた先端的デザインが印象的なつくりです。
 
 「触れる」では、1・2階に旗艦店「中川政七商店 奈良本店」が入り、全国800以上の作り手と生み出した工芸品や食品など、同店限定品を含めたオリジナル商品約3,000点をそろえているとのこと。
 「味わう」では、関西初出店の「猿田彦珈琲」代表取締役 大塚朝之氏が「歴史的町並みの中で究極の一杯を楽しんでほしい」と、またミシュラン1つ星の「きつね」もsio代表取締役 鳥羽周作氏が「温故知新のすき焼きと弁当」を訴求しました。
 ちなみに建物の名前「鹿猿狐(しかさるきつね)」は、これら飲食店のロゴマークにある動物から採ったものだそう。
 「学ぶ」では、中川政七商店 会長 中川政七氏が、まちづくりの礎になる学びの場「JIRIN」を紹介。セミナーやワークショップ、たとえば中川政七商店のものづくりを体験するツアーなども用意しているとのことです。
 周辺施設としては、「遊中川本店」をリニューアルオープン。また茶と菓子を味わえる喫茶「茶論」のほか、300余年の史料をアーカイブ展示する「時蔵」、手つみ・手織り麻のモノ作りを学べる「布蔵」と、歴史に触れられる構成になっているというのも、楽しみです。
 
 最後に、「奈良を元気にする!日本の工芸を元気にする!」を合言葉に、千石あや氏が「奈良でのこの取り組みが全国の産地にも適用されて100年先の未来にも工芸が残るように考えてこの施設を運営していきたい」と述べて、発表会を終了しました。
 
 私もいつか奈良へ行き、中川政七商店の複合商業施設を見学してみたいですね。

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2021年3月 2日 (火)

小原 直花氏講演「生活者のこれからの暮らしのイメージ」

 先般、東京ビッグサイトで開催されたライフ&デザイン展のセミナーイベントに、伊藤忠ファッションシステム(ifs)第1ディビジョン マーケティング開発第2グループ ナレッジ開発室 室長の小原 直花氏が登壇しました。テーマは「生活者のこれからの暮らしのイメージ~心地よさの紐解き~」です。心地よい暮らしを生活者がどのように捉えているのか、Ifsが昨年9月に20~74歳までの2,000人を対象に実施したWEB調査を基に、生活者の暮らしを紐解かれて、大変興味深かったです。
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 前半はWEB調査の結果から、留意すべき点が語られました。
 まず社会のイメージです。“悪くなっている” が4割弱、“良くなっている”は3割だったそう。“良くなっている″が2019年調査時より多かったのは、現状がコロナの影響で悪すぎるからで、ポジティブに社会をみているのではないようです。また7割を超える人々が“ウイズコロナに対応し、コロナ以前の暮らしにはもう戻さない”意識になっているといいます。これを機に“これまでにない暮らしをしたい生活者”が多いというのは、注目に値する結果と思いました。
 さらに家に仕事が持ち込まれるライフスタイルになって、“仕事とプライベートを区別するか”という質問では、ハナコジュニア世代の4割弱、アラサーの5割弱が“区別する”と回答。昨今の家人に邪魔されずに仕事ができるテレワーク用オフィス需要の高まりがうなずけるようです。
 これらを踏まえて、“生活者にとって心地よい暮らしに必要なことは何か”と訊くと、1位が“身だしなみを清潔に保つ”、2位が“自分の居場所がある”ことだったそう。人間関係では“どんなに信頼できても程よい距離感を常に意識している”とか、モノ選びでは“多少高くてもほんとうに必要なモノを長く使う”、“吟味する”こともエンタメの一つというのも、今どきの若者らしいです。“いつも若々しくありたい”人も多く、コロナ禍を経て久しぶりに会う人たちに「変わったね」とは言われたくない、というのはどの世代もとくに上の世代で多数だそう。体型肌質も含め“見た目に努力は惜しまない”、というのは男女を問わず、共通の心理のようです。

 後半は、提供する側が捉えておくべきポイント、5つを紹介。
 1つは、これからの暮らしはオンラインがほぼ日常、オフラインは非日常になってくること。とくにオフラインはその価値をどれだけ高められるか、体験の質をどれだけ上げられるか、これまで以上のものを求める生活者に合わせることが重要という。
 2つには、気持ちの切り替えで、感情に作用するものがキー。たとえば香りとか照明、ファッションなど家の中のシーンで気分をスイッチできるものに目を向ける必要がある。
 3つには、心身の健康や見た目ケア。オンラインでのパーソナルなアドバイスを求める人々も増えている。リアルもオンラインもサービスのさらなる質の向上が鍵を握る。
 4つには、テレワークの拡がりとともに、欠かせないのが企業のパーソナル対応。家族への気遣いから、通勤しないまでも家の外でのワークを希望する人もいる。そうした気分的なところをすくい上げてあげることも大切という。
 5つには、家のお外化。お花のサブスクが伸びていたり、観葉植物を家に飾ったり、バルコニーでお茶したり、お外化を進行させていくときに必要になるサービスも焦点になってくる。
 
 最後に、世代を見ていて思うこととして―。
 どの世代もコロナ以前とコロナ禍で経験したことのいいとこ取りをし、状況に応じて取捨選択できる選択肢が多いことに魅力を感じています。しかし世代によってデジタルとの距離感の違いは非常に大きく、オンラインを取り入れるために、心のハードルを下げてあげられるサポートが必須になることにも留意したいと。
 
 生活者の視点を軸に、心地よい暮らしを解析したすばらしい講演でした。拍手👏

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2021年2月26日 (金)

2021年ifs新春フォーラム⑵ ゲスト二人とトークセッション

 「2021年ifs新春フォーラム」第2部は、コロナ危機が続く社会にあって、いかに快適に過ごすか、このための生活者へのサービスや暮らし方を考えるトークセッションでした。
 ゲストはJTB 名古屋事業部 営業四課 伊藤 慶宜氏と、主婦の友社ライフスタイル編集部 第3編集ユニット「古い家ではじめた、新しい暮らし」編集長 町野慶美氏の二人です。
  冒頭、コーディネーターのifs小原直花氏が「2030年に向けた時代の方向性」を解説。Img_35161
 ifsが昨秋実施した調査で、「コロナ以前の暮らしには戻さない」 と73%もの人々が回答していることや、働き方がテレワークに変わり、住む場所に観点が移って、どこに住んでも働ける可能性が広がる時代になったことを紹介しました。
 
 議論はこの話を受けてスタート。トップに立ったのがJTBの「My office NAVI」を担当されている伊藤氏です。
 JTBナビは、NECソリューションイノベータと共同開発したテレワーク施設簡単予約サービスで、ホテルの客室や宴会場といった遊休スペースを活用して、テレワーク場所として企業に提供しているといいます。当初は東京五輪・パラリンピックによる渋滞緩和・働く場所の確保などを支援する目的で始まったそうですが、今では全国400カ所のホテルにサテライトオフィスがあり、IT企業を中心に、数十社が利用しているとか。働きながら休暇をとる「ワーケーション(ワークとバケーションを組み合わせた造語)」の場にも活用されているといいます。
 選ばれるホテルは自宅に近いホテルが多く、定期代を支給せずにテレワーク費用に充てている企業もあるそうです。これまで都市部に向かって移動していた人たちが郊外へ移っていて、社会全体の流れの変化をもろに感じているとも。
 
 町野氏は、昨年11月「古い家ではじめた、新しい暮らし」という本を出版。
41jglodacul_sy349_bo1204203200_ 東京から地方へ移住した4組の住まい方を掲載したところ、大変参考になると好評だそう。ステイホームとなり、家事の頻度が上がり、料理や裁縫など手作りする人が増えて、楽しんで家事をしたい気分の人が多くなっているといいます。
 
 働き方や暮らし方を変えたいと思っている人を後押しするために必要なことは何かと問われて、伊藤氏は、テレワークの浸透率を上げるには、一に環境整備、二に信頼が重要と強調。そのためには仕事の評価基準も変化する必要があるといいます。ポイントは働く場をいかにストレスのない状態につくれるかで、ホテルは個室なのでストレスなしに仕事できるし、ワーケーションが可能なら、よりカラフルで楽しくなるといいます。
 
 最後に、伊藤氏が今後はテレワークとともにワーケーションが進む、旅行のやり方も多様化する、町野氏が紙の出版に拘らず、オンラインを活用してコンテンツをつくり、ネットに広げていきたいなどと語って、フォーラムを締め括りました。

 

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2021年2月25日 (木)

2021年ifs新春フォーラム ⑴ コロナが変えた未来の暮らし

 先般、恒例の伊藤忠ファッションシステム(ifs)の「2021年ifs新春フォーラム」がオンラインにて開催されました。題して「コロナが大きく変えた、だれにもまだわからない未来をどう楽しく暮らす!? まだ見ぬ社会を語り合おう!!」です。
 第1部では「2030年に向けた生活者の暮らし方キーワード」が発表され、第2部ではこれからの未来をどう楽しく快適に暮らしていくかについて、楽しいトークが繰り広げられました。

Photo_20210224073601  今や働き方や暮らし方が一変したことは誰もが感じているところですしょう。リモートワークが暮らしに入り込むようになり、仕事にも遊びにもフィジカル+デジタル=フィジタルな生活となりました。
 こうした中、心地よい暮らしとはどのようなものか、2030年に向けて未来はどうなる? フォーラムで語られた内容は、大変興味深いものでした。その概容を以下にまとめてみました。
 
 冒頭、次の二つの視点が提示されました。
 一つは、不確実が確実な時代。地球環境の変化、未知のウイルス、資本主義の限界と、この先何が起きてもおかしくない時代に突入していくとみられていること。もう一つは、生活者ムードが「常に不安と隣り合わせ」であること。サバイバルが要求される時代になっていくといいます。
 
 第1部は、上記の二つの視点を踏まえて、ifsナレッジ開発室 中村ゆい氏が、コロナ禍の生活者の変化をifs気分調査結果から分析。生活者にとっての快適さを形づくる要素とは何かをキーワード化して、紹介しました。 
 
 まず快適さのベクトルとして「分散する」です。一極集中はリスクに変容し、働き方、住まいなど、あらゆる局面で物事を分散化させていく動きが進むといいます。次に快適さを形成する条件として「柔軟に選べる」、「失敗を許容する」を挙げ、状況に応じて選択を変えられたり、やり直せたりできる環境が大切とも。とくに他者との関係では「違いを許容する」、「無理に合わせない」ことが、これからのコミュニケーションの鍵といいます。
 さらに生活に向かう姿勢としては「目の前に集中する」こと。できることから一つずつ対応し、足元から暮らしを守ることが重要といいます。物事の判断は「自分自身」で行い、他人が何をしているかは参考にならないとも。またポジティブなムードは「内側からつくる」を提案。外出やコミュニケ―ションへの制約から、楽しみや刺激となる偶然を自分の外に求めるのが難しい現状で、ポイントは健康管理や免疫力を高めるなど自分でつくり出すこと。ポジティブの源泉となるのは、「身近―心近の充実」、つまりリアルに関われる範囲にあるモノ・コトや、心が近いモノ・コトを充実させること。また「“好き”がよりどころ」になることも指摘。
 最後にテクノロジーは「積極活用する」こと、コロナ禍以前・以後の「いいとこ取り」をして、個々人に合った暮らしを実現できるよう、選択の柔軟性を高めることもアドバイス。

 暮らしをポジティブにアップデートしていくための適切なキーワード、一つひとつに納得です。

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