ファッションビジネス

2017年9月 1日 (金)

「アメリカのファッション産業とライフスタイル」を紐解く

 先般、開催されたジャパンジュエリーフェアでは、異業種やファッション関連イベントも用意されていました。その一つが、アメリカのファッション業界に関する最新情報セミナーです。
Img_07521_2 講師はファッション業界の情報発信地であるニューヨークに精通するファッションジャーナリストで、杉野学園ドレスメーカー学院 院長の布矢 千春さん。「アメリカのファッション産業とライフスタイル」をテーマに、業界の仕組みやメディア戦略、美術館とマスコミの関係性など様々な角度からアメリカのファッション業界を紐解かれました。

 冒頭、アメリカではファッションをアートというよりビジネスと捉えていると指摘。ヨーロッパ、とくにフランスを見ている私としては、ちょっとびっくりしました。でも確かにアメリカで起こったビジネスの潮流は、スモール・ビジネスが日本に入ってきたように、早晩日本にも来ています。しかもそのスピードは年々早まる一方です。アメリカの動向を注視していかなければ、とまずは気が引き締まります。

 最初は布矢さんが毎回取材されているニューヨーク(NY)コレクションから。主催団体は現在、インターナショナル・マネジメント・グループ、略してIMG(International Management Group)」で、それまで運営してきたアメリカファッションデザイナーズ協議会CFDA (Council of Fashion Designers of America)を買収したといいます。2015年に冠スポンサーだったメルセデス・ベンツが降板、その後は冠なしで、様々な企業がスポンサーになっているとのこと。ファッションに関わることで自社の広告宣伝に利用し、ファッションを通してビジネスを成立させようとしている実態が語られました。
 デジタル化も進行し、コレクション会場への入場は招待状ではなくスマホで、GPS機能とも連動しているといいます。日本もいずれそうなっていくのでしょうね。
 コレクション会場では、NYで再開発中の主な3つの施設を紹介。ハドソンヤード地区、グランドゼロの近辺、ウエストフィールドワールドセンターだそうです。今度行ってみたいですね。
 次に美術館について、ファッション業界との驚きの繋がりが明かされました。例えばNYを代表する美術館のメトロポリタンミュージアム、通称MET(メット)は私立美術館で、その集金システムを支えているのはラグジュアリーブランドといいます。館内にはヴォーグのカリスマ編集長であるアナ・ウィンター氏の名前を冠したファッション専用の展示スペース、「アナ・ウィンター・コスチューム・センター」があり、各界のセレブの装いに世界のメディアが注目するメットガラは、同美術館の巨大な資金調達源になっているとのことです。このパーティ券は一枚25,000ドルと高額ですが、それにも関わらず殺到するというのですから驚かされます。とはいえ購入しているのはブランド企業自体なのだそうですが---。
 さらに寄付社会アメリカのチャリティイベントについても触れ、以前は成功したから慈善事業に寄付するというものだったのが、今はビジネスの動機が慈善事業になっているという現状や、ウエルネス志向で人気上昇中のアスレジャーも話題にしました。そして最後に取り上げたのがヒップスターが集うブルックリン地区のお話です。そのボーイズカルチャーが今、日本の若者たちにブームを呼んでいるだけに印象に残りました。これは時間切れで少し残念!

 それにしても揺れ動くアメリカの生情報は私にとって大変新鮮で、刺激的でした。すばらしいご講演に感謝します。

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2017年8月24日 (木)

WEF公開シンポジウム⑶ 服が売れない時代にすべきこと

 WEF公開シンポジウムでは、最後にパネルディスカッションが行われました。Img_99151 パネラーは、このブログ⑴で紹介したお二人、西塚瑞穂氏と森川 亮氏、それにデザイナーの横森美奈子氏です。コーディネーター役はファッション・ジャーナリストの生駒芳子氏で、生駒氏の質問に、パネリストが答えるというカタチで進行しました。
 質問は多岐にわたりましたが、とくに服が売れていない時代に何をすべきか、10年後をどうみているのか、に興味がいきました。

 森川氏は「日本は幸せ過ぎるのか、新しいものを生み出す力に欠けている。イノベーションへの取り組みが遅れていて、韓国の方がむしろ積極的。少し変人と思われるようなユニークな人、イノベーターが活躍できるような環境が必要」、「10年後にはAIロボットが部屋にいて、情報をロボットとシェアする時代になるだろう」といいます。
 西塚氏は「賢い=安いではない。誰かとつながり共感したいという気持ちに変わりはないので、キーはこれからもゲストとお気に入りの店員。個人的なコミュニケーションを強化していく」。
 横森氏は「ファッショントレンドがノームコアになって、ファッションへの興味が薄れている」、「若者たちは普通の格好でよいと思っているので、10年後にはユニフォーム化するのではないか。しかしそれでいいのかという層も出てくる。自分の条件をインプットすると服が出てくるといった風になるのでは」と指摘。 

 いずれも心にグサッとくるような印象的なお話でした。

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2017年8月23日 (水)

WEF公開シンポジウム ⑵ 女性向け動画メディアに注目

 先般のウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF 尾原蓉子会長)主催の公開シンポジウムで、二人目の登壇者は、Cチャンネル代表取締役社長 森川 亮氏。Img_98961jpg 「動画でコミュニケーションし、行動し、物を買う時代」をテーマに、基調講演されました。
 ちなみに「Cチャンネル」は、ライン(LINE)の元社長だった同氏が、2年前に立ち上げた若い女性向けのインターネット動画雑誌です。

 同サイトを見ますと、そこには女性の関心を惹く動画がズラリ。実用に役立つハウツーものが中心で、メイクやファッション、ヘア、ネイルから料理、トラベル、さらに恋愛まで、カテゴリー別にアップされています。
 こうした情報はクリッパーと呼ばれる動画制作者がつくって発信していて、タレントやモデル、また社内のメンバーらがセルフィ―動画を撮って自分で編集し動画を投稿しているといいます。
 スマホで閲覧しやすい縦型サイズも特徴で、時間も短い1分動画です。このスピード感がいいですね。これからは写真よりも動画の時代、ということを印象付けられます。

 講演で、森川氏は、今やコミュニケーションはクローズドがメインといいます。ミレニアム世代は今、SNS離れを起こしていると。彼らの興味はフェイスブックやツィッターからインスタグラムへ、つまり文字から写真へ移り、それが動画へシフト。それも一部の人だけが見る、時限式のライブ発信がホットといいます。
 メディアの変化も、次のように指摘します。かつて映画は映像を見に行く時代をつくり、テレビは映像を受け止める時代をつくった。Cチャンネルは映像でコミュニケーションする時代をつくるといいます。
 これまで映像業界の課題は、スピードが遅い、コストがかかることでしたが、メディアもファッション業界のファストファッションのようにSPAモデルを目指さなければ、とも。ほんとうにすばらしい先見性です。
 Cチャンネルは、メディア業界を変革し、グローバルメディアのナンバーワンになると宣言しました。何しろ創業2年で、すでに10か国に展開し、900万人がリーチしているそうです。 
 テレビのコマーシャルは見たくないけれど、中身のいい動画ならスマホで繰り返し見て楽しめます。商品特性をハウツーで見せ、そこにちょっとしたエンタメ感覚も入っているのですからなおさら、何度も見たくなるものもあるでしょう。それも一分以内という短いメッセージです。この「繰り返し見る」ことができるというのも重要な要素といいます。
 スマホでハウツー動画コマーシャル、メーカーがこれを利用しない手はないと思います。新時代の幕開け、そんな感想をもったご講演でした。

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2017年8月22日 (火)

WEF公開シンポジウム ⑴ テレビショッピングに学ぶ

 去る7月下旬、東京ウィメンズプラザホールで開催されたウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF)主催の公開シンポジウムに参加しました。
 WEF会長の尾原蓉子氏によると、今回は、“店舗の外”で深く静かに進む潮流から二つの事例に照準を当てたといいます。一つはテレビショッピング、もう一つは若い女性向けファッション動画メディアです。異なる客層、異なる手段で生活者にアプローチする革新的企業の戦略と実践を学ぶことで、ディスラプション(旧来の秩序破壊)的変革が進むファッションビジネスにおける成功の条件を探るのが狙いといいます。
 テーマは「顧客フォーカスで共感と感動を呼ぶファッションビジネス・イノベーション~テレビショッピングと女性向け動画のファッション雑誌から学ぶ~」。
 大変興味深い内容でしたので、ここにその概略をまとめておきたいと思います。

Img_98941  まず登壇したのが、ジュピターショップチャンネル執行役員マーチャンダイジング本部副本部長の西塚 瑞穂氏です。「心躍る瞬間を。顧客と共鳴し合う売り場づくりの挑戦」と題して基調講演されました。(実は同社について、このブログ2014.7.9付けでも取り上げていますのでご参照ください。)
 ご存知のように、同社はテレビショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」を運営する、1996年創業の日本初のテレビ通販会社です。最近はオムニチャネル政策も功を奏し、20期連続、増収をキープし続けているといいます。2016年には前年比2.1%増の1,549億円の売上を達成したとか。
 顧客は90%が女性で、50代が26%、60代が35%、また70代以上も20%だそう。シニア層が多いことがわかります。女性に人気のカテゴリーを中心に幅広く、連日約500アイテムを紹介しているそうで、分野別では、ファッション、ビューティ、食関連が各3分の1くらいとか。商品は基本的に1時間ほどかけて丁寧に説明していくので、ユニークなエピソードがあるなどといったストーリー性のある、こだわりの商品が選ばれることが多いといいます。
 1日に7万2千件もの電話があって、1万2千箱を出荷したこともあったとか。生放送だからこそのリアルな臨場感のある情報を伝えることを大事にしていて、お客の反応を読み、その場で活かす、お買い物目線に立った進行を心がけているとも。
 またゲストとキャスト(司会者)によるお客の心の琴線に触れる生トークも重要なポイントといいます。例えば「横森美奈子のリアル・クローゼット」のように、デザイナーの生の声が聞けたり、お気に入りの販売員が実際に試着して見せたりすると、消費者の購買意欲はよりいっそう掻き立てられるのだとか。
 こんな風にして売り上げた一日の最高記録は、2013年10月4日に販売したカシミアマフラーで、6万3000本に上ったといいます。

 最近よく「モノよりコト消費」と言われます。生放送のテレビショッピングは、モノをコトとしてバーチャルに体験できる強みがあります。同社のミッションとは、いかに客と心を通い合わせ「心躍る瞬間」をつくれるかだそう。心に響く生トーク、ますます期待したいですね。

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2017年8月 3日 (木)

2018春夏モード・イン・フランス展 ⑴ フランス大使も来臨

 フランス国内に先駆けて、2018年春夏のコレクションを発表する第43回モード・イン・フランス展が、この7月26~28日に東京・渋谷で開催されました。3日間を終えて、参加企業は56社61ブランド、来場者数は昨年7月展並みの1,600名だったといいます。出展したレディースウェアのブランドは大部分が結果に満足で、新規顧客の獲得も好調だったとのこと。サンプル発注も多く、今後の正式発注に期待している様子といいます。

 初日のカクテルパーティには、ローラン・ピック駐日フランス大使もご来臨して挨拶されました。
Img_99571  
 同展を主催するフランス婦人プレタポルテ連盟のパトリシア・ブラフマンさんによる記者会見も行われました。そのポイントは三つです。
 一つは日本市場の重要性です。日本はフランス婦人服の輸出先として8番目に大きい国で、今後も成長が見込まれ、重要な地位を占めているといいます。
 二つ目は最近ニュースを騒がせているEPAの大枠合意について。2019年の関税撤廃はフランス企業にとって大きな朗報と評価しています。
 三つ目は「エスパス・ラベル」の新設。これはとくにクリエイティブでエッジの効いたブランドを集めたエリアだそう。次回1月展よりスタートするとのことで、期待されます。

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2017年7月 3日 (月)

髙田賢三さんに聞く パリと東京のデザインとビジネス

 ファッションデザイナーの髙田賢三さんをゲストにお迎えするワークショップが、先月16日、東京・渋谷のカラート71で開催されました。世界のファッション業界で功績を残したセレブの登場とあって、会場はこのプロジェクト始まって以来という170名もの関係者が集まり、盛会でした。

1  テーマは「成長の時代から成熟の時代へ 髙田賢三さんに聞く パリと東京のデザインとビジネス」です。お話は、昨年、30回にわたり連載された日本経済新聞の「私の履歴書」を中心に対談形式で進行しました。

 文化服装学院を卒業後、三愛に入社し、1964年、24歳でパリへ渡った賢三さん。このときインドや中東を回る1ヵ月の船旅をしたことが、その後エスニック調ファッションで「世界のケンゾー」を生む土台になったというのが印象的でした。
 また当時は日本人への差別も大きい時代でしたから、ご苦労もあったようです。ファッション画を売り歩いていたあるとき、ルイ・フェローで絵が5枚売れ、ここで元気が出て、人生が変わったと感じたそうです。これがまさに転機だったのですね。
 1960年代末に自身のブティックをオープンします。生地はプリントを使おうとパリ中を探したそうですが、リバティくらいしかなく、帰国して日本的な柄を意識して調達したとか。着物や浴衣、絞りなどだったといいます。また形も日本の平面的な裁断が新鮮に見えたそうです。着物のゆとりに注目し、「衣服からの解放」を目指して、直線裁ちで縫い目のあまり無い服、「サン・クチュール」と呼ばれたドレスをデザインします。それが当たって、時代の寵児となっていったのですから、ほんとうに人生って不思議です。
 当初、お店の名前が「ジャングル・ジャップ」だったことも思い出されました。ジャングルというのは、賢三さんが好きだったアンリ・ルソーの絵画からとったものだったことを知りました。あの頃、この名称でいろいろ揶揄されたこともあったのですね。
 1970年代は楽しかった、と回想します。それが1980年代、会社の規模が大きくなるにつれ、制約も増えていったとか。シルエットもボディコンシャス礼賛となり、ファッション感覚が離れていくのを感じ、とうとう「ケンゾー」ブランドをルイ・ヴィトンに売却します。さぞかしつらい時期だったのではないでしょうか。

 現在も創作活動を続けている高田賢三さん。女性の美しさはしぐさ(動作)にあるとのことで、どうやら伝統的な日本の女性らしさに惹かれているご様子でした。
 最後に今後の方向を問われて、メンズファッションに興味があるそう。着用されていたサンローランのスーツがお似合いでした。ますますのご活躍を期待しています。

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2017年6月20日 (火)

FB学会特別講演 「ファッションビジネスにAIがもたらすもの

 ファッションビジネス(FB)学会東日本支部の特別講演会が、Img_79401jpg3日東京・杉野学園で開催され、カラフルボード代表/人工知能科学者の渡辺祐樹氏が登壇、 「ファッションビジネスにAIがもたらすもの」をテーマに講演されました。
 ところで私は以前、WEFセミナーで同氏の講演(このブログ2016年8月10日 付けも参照)を伺ったことがあります。でも今回はより掘り下げた内容で、大変興味深く拝聴しました。
 お話はまず2014年にリリースしたファッション人工知能アプリ「SENSY(センシー)」から。これは人間行動の理由を司る感性を解析し、その人の好みに必要なものを届けるAIで、そのヴィジョンはあらゆる人に人生が変わる出会いを演出することといいます。
 次にAIテクノロジーについて。AIとはArtificial Intelligenceの略語で、人間のように考えて行動するプログラムのこと。現在この第3次ブームが来ているといいます。
 AIには2種類あり、一つは汎用AIでロボットのようなもの、もう一つは特化型AIです。SENSYは後者の特化型で、その人が服を購入することになった背景を分析し、その人の感性を理解して、その人が欲しいと感じる商品やサービスを提案します。
 プロダクツとして、BtoC向けのSENSYアプリと、BtoB向けの店舗接客、EC接客の「SENSY CLOSET」、パーソナライズDM等を紹介。一人一台のAI開発を目指すといいます。
 ファッションと冠っていますけれど、客に合わせたメッセージを送れるので、単にファッションを推薦するだけではなく、レストランガイドといった食のサービスなど、様々な分野に活用できるとも。ソフトバンクと連携してペッパーが接客したワインの試飲会では、人の味覚を解析することにより販売が大きく改善したそうです。現在、ヘルスケアやコスメ、旅行、音楽など様々な案件が進行中とも語りました。
 さらに需要予測の判断もできるので、ファッション業界が抱える在庫管理の問題解決に役立ちそうです。
 まさにAIでファッションビジネスが変わる! です。ほんとうにすごいことになってきましたね。

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2017年6月15日 (木)

講演会 安達市三氏が語る「ファッションデザインの軌跡」

 ファッションビジネス学会総会が文化学園大学で5月20日に開催され、恒例の特別講演会にコルクルーム代表 安達 市三氏が登壇しました。テーマは「ファッションデザインの軌跡」です。Img_78501_2 ファッション業界の担い手として、道を切り拓かれてきたご自身のデザイン活動をたっぷりと語られました。(右は安達氏。資料を前に)
 とくに既製服の黎明期から自身の企画会社コルクルームを設立された頃までの体験談は、実に生き生きと具体的で、当時の光景が眼前に広がってくるようでした。知らなかった世界の扉が開けた思いがしました。

 そのクライマックスを大きく2つ挙げて、レポートします。

 一つは、三宅一生氏とともに立ち上げた青年服飾協会のお話です。
 熊本県人吉市出身の同氏は、絵を描くのが好きで上京して早稲田大学美術学科に入学します。同時にファッションへの興味から、桑沢デザイン研究所でファッションデザインを学ぶダブルスクール生活をします。こうしたなかで知ったのが「世界デザイン会議」という日本初の国際デザイン会議でした。ここでは建築デザインは高い評価を受けていましたが、ファッションデザインはデザインとして認められないとされて、参加することができなかったそうです。そうした折り、装苑で三宅一生氏の投書を読み、彼もこのことを憤慨していることに気づきます。早速手紙を出すなどして、三宅一生氏を会長に昭和34年、青年服飾協会を創設したといいます。メンバーは高田賢三氏を始めとする錚々たる顔ぶれでした。このような方々が、ファッションデザインの地位を高め、デザイナーとしての地位を高めていかれたと思うと、感無量です。

 もう一つは、ボディ(人台)の開発です。
 卒業後入社した三菱レイヨン商品開発部で、同社の顧問デザイナーだった安東武男氏と出会います。そして同氏のアシスタントとして、オーダーから既製服へ切り替わろうとしていた業界の指導に乗り出します。立体裁断への機運が高まりを見せていた頃で、まずは既製服にこの技術を導入しようと働きかけました。しかしサイズがないと既製服はつくれません。そこで文化服装学院に協力を仰ぎ、18~30歳の女性2万人のデータを収集、それを基に5号、7号、9号、11号という奇数表示のサイズをつくったといいます。ちなみに米国のサイズは偶数表示です。
 服のフォルムも、オートクチュールのジャン・パトゥのデザインを紹介するテレビ番組で安東武男氏の助手を務め、本物を見る機会に恵まれ、毎回研究したそうです。学生時代に、三宅一生氏が新聞紙を使って立体裁断で服をつくったことも披露、これも印象に残るエピソードでした。
 工業用ボディ作成には様々な試行錯誤があったようです。米国から帰国して立体裁断講習会を開いていた大野順之助氏に、共同制作を持ち掛けます。米国ではヌードボディだけではなくゆとりの入ったボディも用いられていることが分かったといいます。そして1965年、ついに既製服用ボディ「アミーカ」を発表しました。ピンワークしやすいゆるみ入りのボディで、製造はキイヤです。その後、各社が開発に乗り出し、改良を重ねて、現在に至っています。

 この開発がなかったなら、日本のアパレル産業の急成長もなかった、そう思うとますます同氏のご尽力に頭が下がりました。
 改めて深い敬意を表します。

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2017年5月31日 (水)

ライセンシング エキスポで新たなビジネスチャンスを!

 「ライセンシング エキスポ ジャパン2017」(UBM主催)が、ファッション見本市JFW-IFF MAGIC 4月展と同時開催されました。キャラクターやブランドライセンスを活用し「新たなビジネスチャンスを!」アピールするイベントで、LIMA(国際ライセンス産業マーチャンダイザーズ協会)が特別後援しています。
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Img_73401_2  会場では「ウォーリーを探せ」のユニフォームを着たスタッフたちが出迎えました。初めての開催でしたが約70社が出展し、来場者は13,772人と、成功裏に閉幕したといいます。

 ライセンシング ビジネスフォーラムでは、WGSNディレクターの浅沼小優氏とプロジェクト セールス ディレクター水上俊哉氏による「ブランドライセンシング ヨーロッパ2016ハイライト」と題したセミナーに参加しました。
 語られたのはまず、テーマパークの重要性です。ライブ体験がよりリッチになって盛り上がりを見せているといいます。例えばドバイに昨年誕生した世界最大の屋内テーマパーク「IMG WORLDS OF ADVENTURE(アイエムジー・ワールド・オブ・アドベンチャー)」や、東京を上回るという巨大な上海ディズニーランド、埼玉県飯能市に予定されているムーミンのテーマパークの話など。次に学びながら楽しめる知育アニメについて、とくに理系のものが注目されているといいます。日本の「キッザニア」や、絵文字による自己表現なども人気だそう。さらに1990年代に一世を風靡したキャラクターが復活していることも。スーパーヒーローものなど、日本発のものが多いことや、また子どもに限らず成人向けも増えているなどといった指摘もあり、大変興味深かったです。

 場内を巡って、足を止めたのが「もったいない(MOTTAINAI)」の展示コーナーでした。
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Img_71981  ノーベル賞を受賞したあのケニア人女性のワンガリ・マータイさんが提唱した「もったいない」が、タオルやマイ傘、マイ・バッグ、マイ・ボトルなど様々な商品になって、出品されていました。
 ライセンス・パートナーはこうしたモノだけに限りません。旅行プログラムやフリーマーケットといった各種イベントなどにも広がっていて、売り上げの一部はマータイさんか設立した植林活動「グリーンベルト運動」に寄付されるそうです。
 今は亡きマータイさんも喜んでいらっしゃることでしょう。

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2017年5月27日 (土)

JFW-IFF MAGIC テクノロジーでファッションを変える

 ファッション業界では、ファッションテック(ファッション+テクノジロー)という言葉がよく聞かれるようになりました。昨年はVR元年だったなどとも言われます。
 先頃開催のファッション見本市JFW-IFF MAGICでも、「デジタルを使ったアパレル体験を加速」と題したパネルディスカッションが行われ、 関連ベンチャー16社が集うファッションテック・ベンチャーエリアが設けられていました。
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Img_72991_2 そこにはファッションレンタルの「エアークロゼット」や国内縫製工場での小ロットオーダー「シタテル」、ブランドバッグレンタル「ラクサス」などなど、「テクノロジーでファッションを変える」サービスが目白押し。
 中でも私が注目したベンチャーをご紹介します。

○ヴァーチャサイズVIRTUSIZE
 「ヴァーチャサイズ」はオンライン試着ソリューションです。Img_72911ネットで買いたいアイテムと手持ちの商品をイラストで重ね合わせて比較できるという、スウェーデン発の画期的なシステムです。すでに世界中の多くの有力企業で導入されているといいます。
 代表取締役 上野アンドレアス・オラウソン氏のお話を伺い、パーソナルショッピングの実現!と驚嘆しました。
 ネットショッピングでは、サイズが合うかどうかは一番大きな関心事です。同じMといっても、年によって異なっていることが多く、標準化されていないのです。でもこれを導入すれば、顧客満足度は90%以上、返品率は30%減少し、売上増加につながるといいます。
 同氏は、欧米と日本の欧米のEコマースについても、違いを指摘しました。欧米では、まず買ってもらい、返品OKという仕組みなので、EC化率は高く、返品率も高いそうです。少しでも返品を減らそうと、有力アパレルがヴァーチャサイズを採り入れていることに得心します。日本は法律の制約もあって返品が少ないですが、EC化率は1割にも満たない、もとより低いのですね。
 日本は今後大きな市場と、可能性を期待していました。

○ラファブリック LaFabric
 「ラファブリック」は、オンラインカスタムオーダーのショッピングサイトです。とくに男性のビジネスファッションに力を入れていて、リアル店舗も持っています。一度採寸すれば、その後は好きな時間に好きな場所で気軽にショッピングを楽しめるという仕組みを提供しているのです。生地も選べるように、サンプルを送ってくれるとのこと。注文確定後、約4週間で仕上がり、自宅までスピードで届けていただけるといいます。忙しい人にうれしいサービスですね。
 もうこれでサイズが合わないスーツを着るという、うっとうしさから解放される人が増えそうです。

○光る靴 オルフェ Orphe
 「オルフェ」は動きに合わせて光る靴です。これはno new folk studioがANREALAGEとコラボレーションして開発した、話題のスマートフットウェアです。
Img_72931 スマホのアプリから光の色やデザイン、動きを自由に編集して、これまでにないダンスやアートのパフォーマンスができるようになったといいます。足の動きをセンシングして、運動をリアルタイムで解析し、ファッションやダンスのみならず、楽器やヘルスケア、スポーツ、またARやVRに拡張していけるとも。
 デモンストレーションで見せていただいた七色の光が美しかったです。タップダンスが楽しくなりますね。

○フィッティン FITTIN
 これは女性ランジェリーに特化したオンラインフィッティングサービスです。2_3 またこの春から、オンラインのオーダーメイド・ランジェリーサービスもスタートさせたといいます。
 女性の下着の悩みは声に出しにくいものです。同社パンフレットによれば、78%もの女性がトラブルを抱えた経験があり、70%の女性が下着のサイズを間違えているとのこと。
 店舗での試着アドバイザーを、WEB上で頼める、とあってユーザーが広がりそうです。

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