ファッションビジネス

2017年7月 3日 (月)

髙田賢三さんに聞く パリと東京のデザインとビジネス

 ファッションデザイナーの髙田賢三さんをゲストにお迎えするワークショップが、先月16日、東京・渋谷のカラート71で開催されました。世界のファッション業界で功績を残したセレブの登場とあって、会場はこのプロジェクト始まって以来という170名もの関係者が集まり、盛会でした。

1  テーマは「成長の時代から成熟の時代へ 髙田賢三さんに聞く パリと東京のデザインとビジネス」です。お話は、昨年、30回にわたり連載された日本経済新聞の「私の履歴書」を中心に対談形式で進行しました。

 文化服装学院を卒業後、三愛に入社し、1964年、24歳でパリへ渡った賢三さん。このときインドや中東を回る1ヵ月の船旅をしたことが、その後エスニック調ファッションで「世界のケンゾー」を生む土台になったというのが印象的でした。
 また当時は日本人への差別も大きい時代でしたから、ご苦労もあったようです。ファッション画を売り歩いていたあるとき、ルイ・フェローで絵が5枚売れ、ここで元気が出て、人生が変わったと感じたそうです。これがまさに転機だったのですね。
 1960年代末に自身のブティックをオープンします。生地はプリントを使おうとパリ中を探したそうですが、リバティくらいしかなく、帰国して日本的な柄を意識して調達したとか。着物や浴衣、絞りなどだったといいます。また形も日本の平面的な裁断が新鮮に見えたそうです。着物のゆとりに注目し、「衣服からの解放」を目指して、直線裁ちで縫い目のあまり無い服、「サン・クチュール」と呼ばれたドレスをデザインします。それが当たって、時代の寵児となっていったのですから、ほんとうに人生って不思議です。
 当初、お店の名前が「ジャングル・ジャップ」だったことも思い出されました。ジャングルというのは、賢三さんが好きだったアンリ・ルソーの絵画からとったものだったことを知りました。あの頃、この名称でいろいろ揶揄されたこともあったのですね。
 1970年代は楽しかった、と回想します。それが1980年代、会社の規模が大きくなるにつれ、制約も増えていったとか。シルエットもボディコンシャス礼賛となり、ファッション感覚が離れていくのを感じ、とうとう「ケンゾー」ブランドをルイ・ヴィトンに売却します。さぞかしつらい時期だったのではないでしょうか。

 現在も創作活動を続けている高田賢三さん。女性の美しさはしぐさ(動作)にあるとのことで、どうやら伝統的な日本の女性らしさに惹かれているご様子でした。
 最後に今後の方向を問われて、メンズファッションに興味があるそう。着用されていたサンローランのスーツがお似合いでした。ますますのご活躍を期待しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月20日 (火)

FB学会特別講演 「ファッションビジネスにAIがもたらすもの

 ファッションビジネス(FB)学会東日本支部の特別講演会が、Img_79401jpg3日東京・杉野学園で開催され、カラフルボード代表/人工知能科学者の渡辺祐樹氏が登壇、 「ファッションビジネスにAIがもたらすもの」をテーマに講演されました。
 ところで私は以前、WEFセミナーで同氏の講演(このブログ2016年8月10日 付けも参照)を伺ったことがあります。でも今回はより掘り下げた内容で、大変興味深く拝聴しました。
 お話はまず2014年にリリースしたファッション人工知能アプリ「SENSY(センシー)」から。これは人間行動の理由を司る感性を解析し、その人の好みに必要なものを届けるAIで、そのヴィジョンはあらゆる人に人生が変わる出会いを演出することといいます。
 次にAIテクノロジーについて。AIとはArtificial Intelligenceの略語で、人間のように考えて行動するプログラムのこと。現在この第3次ブームが来ているといいます。
 AIには2種類あり、一つは汎用AIでロボットのようなもの、もう一つは特化型AIです。SENSYは後者の特化型で、その人が服を購入することになった背景を分析し、その人の感性を理解して、その人が欲しいと感じる商品やサービスを提案します。
 プロダクツとして、BtoC向けのSENSYアプリと、BtoB向けの店舗接客、EC接客の「SENSY CLOSET」、パーソナライズDM等を紹介。一人一台のAI開発を目指すといいます。
 ファッションと冠っていますけれど、客に合わせたメッセージを送れるので、単にファッションを推薦するだけではなく、レストランガイドといった食のサービスなど、様々な分野に活用できるとも。ソフトバンクと連携してペッパーが接客したワインの試飲会では、人の味覚を解析することにより販売が大きく改善したそうです。現在、ヘルスケアやコスメ、旅行、音楽など様々な案件が進行中とも語りました。
 さらに需要予測の判断もできるので、ファッション業界が抱える在庫管理の問題解決に役立ちそうです。
 まさにAIでファッションビジネスが変わる! です。ほんとうにすごいことになってきましたね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月15日 (木)

特別講演 安達市三氏が語る「ファッションデザインの軌跡」

 ファッションビジネス学会総会が文化学園大学で5月20日に開催され、恒例の特別講演会にコルクルーム代表 安達 市三氏が登壇しました。テーマは「ファッションデザインの軌跡」です。Img_78501_2 ファッション業界の担い手として、道を切り拓かれてきたご自身のデザイン活動をたっぷりと語られました。(右は安達氏。資料を前に)
 とくに既製服の黎明期から自身の企画会社コルクルームを設立された頃までの体験談は、実に生き生きと具体的で、当時の光景が眼前に広がってくるようでした。知らなかった世界の扉が開けた思いがしました。

 そのクライマックスを大きく2つ挙げて、レポートします。

 一つは、三宅一生氏とともに立ち上げた青年服飾協会のお話です。
 熊本県人吉市出身の同氏は、絵を描くのが好きで上京して早稲田大学美術学科に入学します。同時にファッションへの興味から、桑沢デザイン研究所でファッションデザインを学ぶダブルスクール生活をします。こうしたなかで知ったのが「世界デザイン会議」という日本初の国際デザイン会議でした。ここでは建築デザインは高い評価を受けていましたが、ファッションデザインはデザインとして認められないとされて、参加することができなかったそうです。そうした折り、装苑で三宅一生氏の投書を読み、彼もこのことを憤慨していることに気づきます。早速手紙を出すなどして、三宅一生氏を会長に昭和34年、青年服飾協会を創設したといいます。メンバーは高田賢三氏を始めとする錚々たる顔ぶれでした。このような方々が、ファッションデザインの地位を高め、デザイナーとしての地位を高めていかれたと思うと、感無量です。

 もう一つは、ボディ(人台)の開発です。
 卒業後入社した三菱レイヨン商品開発部で、同社の顧問デザイナーだった安東武男氏と出会います。そして同氏のアシスタントとして、オーダーから既製服へ切り替わろうとしていた業界の指導に乗り出します。立体裁断への機運が高まりを見せていた頃で、まずは既製服にこの技術を導入しようと働きかけました。しかしサイズがないと既製服はつくれません。そこで文化服装学院に協力を仰ぎ、18~30歳の女性2万人のデータを収集、それを基に5号、7号、9号、11号という奇数表示のサイズをつくったといいます。ちなみに米国のサイズは偶数表示です。
 服のフォルムも、オートクチュールのジャン・パトゥのデザインを紹介するテレビ番組で安東武男氏の助手を務め、本物を見る機会に恵まれ、毎回研究したそうです。学生時代に、三宅一生氏が新聞紙を使って立体裁断で服をつくったことも披露、これも印象に残るエピソードでした。
 工業用ボディ作成には様々な試行錯誤があったようです。米国から帰国して立体裁断講習会を開いていた大野順之助氏に、共同制作を持ち掛けます。米国ではヌードボディだけではなくゆとりの入ったボディも用いられていることが分かったといいます。そして1965年、ついに既製服用ボディ「アミーカ」を発表しました。ピンワークしやすいゆるみ入りのボディで、製造はキイヤです。その後、各社が開発に乗り出し、改良を重ねて、現在に至っています。

 この開発がなかったなら、日本のアパレル産業の急成長もなかった、そう思うとますます同氏のご尽力に頭が下がりました。
 改めて深い敬意を表します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月31日 (水)

ライセンシング エキスポで新たなビジネスチャンスを!

 「ライセンシング エキスポ ジャパン2017」(UBM主催)が、ファッション見本市JFW-IFF MAGIC 4月展と同時開催されました。キャラクターやブランドライセンスを活用し「新たなビジネスチャンスを!」アピールするイベントで、LIMA(国際ライセンス産業マーチャンダイザーズ協会)が特別後援しています。
Img_73371
Img_73401_2  会場では「ウォーリーを探せ」のユニフォームを着たスタッフたちが出迎えました。初めての開催でしたが約70社が出展し、来場者は13,772人と、成功裏に閉幕したといいます。

 ライセンシング ビジネスフォーラムでは、WGSNディレクターの浅沼小優氏とプロジェクト セールス ディレクター水上俊哉氏による「ブランドライセンシング ヨーロッパ2016ハイライト」と題したセミナーに参加しました。
 語られたのはまず、テーマパークの重要性です。ライブ体験がよりリッチになって盛り上がりを見せているといいます。例えばドバイに昨年誕生した世界最大の屋内テーマパーク「IMG WORLDS OF ADVENTURE(アイエムジー・ワールド・オブ・アドベンチャー)」や、東京を上回るという巨大な上海ディズニーランド、埼玉県飯能市に予定されているムーミンのテーマパークの話など。次に学びながら楽しめる知育アニメについて、とくに理系のものが注目されているといいます。日本の「キッザニア」や、絵文字による自己表現なども人気だそう。さらに1990年代に一世を風靡したキャラクターが復活していることも。スーパーヒーローものなど、日本発のものが多いことや、また子どもに限らず成人向けも増えているなどといった指摘もあり、大変興味深かったです。

 場内を巡って、足を止めたのが「もったいない(MOTTAINAI)」の展示コーナーでした。
Img_71971
Img_71981  ノーベル賞を受賞したあのケニア人女性のワンガリ・マータイさんが提唱した「もったいない」が、タオルやマイ傘、マイ・バッグ、マイ・ボトルなど様々な商品になって、出品されていました。
 ライセンス・パートナーはこうしたモノだけに限りません。旅行プログラムやフリーマーケットといった各種イベントなどにも広がっていて、売り上げの一部はマータイさんか設立した植林活動「グリーンベルト運動」に寄付されるそうです。
 今は亡きマータイさんも喜んでいらっしゃることでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月27日 (土)

JFW-IFF MAGIC テクノロジーでファッションを変える

 ファッション業界では、ファッションテック(ファッション+テクノジロー)という言葉がよく聞かれるようになりました。昨年はVR元年だったなどとも言われます。
 先頃開催のファッション見本市JFW-IFF MAGICでも、「デジタルを使ったアパレル体験を加速」と題したパネルディスカッションが行われ、 関連ベンチャー16社が集うファッションテック・ベンチャーエリアが設けられていました。
Img_72961
Img_72991_2 そこにはファッションレンタルの「エアークロゼット」や国内縫製工場での小ロットオーダー「シタテル」、ブランドバッグレンタル「ラクサス」などなど、「テクノロジーでファッションを変える」サービスが目白押し。
 中でも私が注目したベンチャーをご紹介します。

○ヴァーチャサイズVIRTUSIZE
 「ヴァーチャサイズ」はオンライン試着ソリューションです。Img_72911ネットで買いたいアイテムと手持ちの商品をイラストで重ね合わせて比較できるという、スウェーデン発の画期的なシステムです。すでに世界中の多くの有力企業で導入されているといいます。
 代表取締役 上野アンドレアス・オラウソン氏のお話を伺い、パーソナルショッピングの実現!と驚嘆しました。
 ネットショッピングでは、サイズが合うかどうかは一番大きな関心事です。同じMといっても、年によって異なっていることが多く、標準化されていないのです。でもこれを導入すれば、顧客満足度は90%以上、返品率は30%減少し、売上増加につながるといいます。
 同氏は、欧米と日本の欧米のEコマースについても、違いを指摘しました。欧米では、まず買ってもらい、返品OKという仕組みなので、EC化率は高く、返品率も高いそうです。少しでも返品を減らそうと、有力アパレルがヴァーチャサイズを採り入れていることに得心します。日本は法律の制約もあって返品が少ないですが、EC化率は1割にも満たない、もとより低いのですね。
 日本は今後大きな市場と、可能性を期待していました。

○ラファブリック LaFabric
 「ラファブリック」は、オンラインカスタムオーダーのショッピングサイトです。とくに男性のビジネスファッションに力を入れていて、リアル店舗も持っています。一度採寸すれば、その後は好きな時間に好きな場所で気軽にショッピングを楽しめるという仕組みを提供しているのです。生地も選べるように、サンプルを送ってくれるとのこと。注文確定後、約4週間で仕上がり、自宅までスピードで届けていただけるといいます。忙しい人にうれしいサービスですね。
 もうこれでサイズが合わないスーツを着るという、うっとうしさから解放される人が増えそうです。

○光る靴 オルフェ Orphe
 「オルフェ」は動きに合わせて光る靴です。これはno new folk studioがANREALAGEとコラボレーションして開発した、話題のスマートフットウェアです。
Img_72931 スマホのアプリから光の色やデザイン、動きを自由に編集して、これまでにないダンスやアートのパフォーマンスができるようになったといいます。足の動きをセンシングして、運動をリアルタイムで解析し、ファッションやダンスのみならず、楽器やヘルスケア、スポーツ、またARやVRに拡張していけるとも。
 デモンストレーションで見せていただいた七色の光が美しかったです。タップダンスが楽しくなりますね。

○フィッティン FITTIN
 これは女性ランジェリーに特化したオンラインフィッティングサービスです。2_3 またこの春から、オンラインのオーダーメイド・ランジェリーサービスもスタートさせたといいます。
 女性の下着の悩みは声に出しにくいものです。同社パンフレットによれば、78%もの女性がトラブルを抱えた経験があり、70%の女性が下着のサイズを間違えているとのこと。
 店舗での試着アドバイザーを、WEB上で頼める、とあってユーザーが広がりそうです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月26日 (金)

JFW-IFF MAGIC ビームスの日本のモノ、コト再発見

 先般開催されたファッション見本市JFW-IFF MAGICのセミナーで、株式会社ビームス 執行役員 ビームス創造研究所(HALS)所長 シニアクリエイティブディレクターの南馬越一義氏のお話がありました。バイヤーの視点で全国に出かけて日本のモノ、コトを探し出し、“日本”を ブランディングするプロジェクトをディレクションされています。Img_72061jpg 「新しい価値の創造に挑む~日本の優れたコト、モノを再発見し、発信する~」をテーマに、その取り組みを対談形式で語りました。

 お話は、2012年にファミリー3世代へ向けた新業態「ビーミング ライフストア(B:MING LIFE STORE)」を立ち上げたときのことから始まりました。当時は“ゆるキャラ”ブームで、中でも人気ナンバーワンだったのが「くまモン」です。この「くまモン」とコラボレーションして、大物産展を開催。熊本の手工芸品メーカーと組んでつくった「くまモン」グッズは大当たりし、大いに盛り上がったそうです。
 その後、東北の復興支援で、山形県のけん玉、福島のシルクや会津木綿、岩手の裂き織などを手がけ、地方との仕事が多くなっていったといいます。そうしたローカルとの出会いが広がる中、ビームス創業40周年の昨年、三越伊勢丹とのプロジェクト「スタンド フォーティセブン(Stand 47)」がスタートします。年末に開いた大縁起物市も大ヒット。これは九州と東北の縁起物と国内外のアーティストとのコラボ企画で、双六とかご祝儀袋など様々な雑貨からファッションでは長崎のパーカもよく売れたとか。
 セレクションの切り口は、何といっても「おもしろい」ことだそう。おもしろくて楽しいものをつくりたい、それが大前提といいます。伝統工芸だからといって必ずしもメイドイン・ジャパンにこだわらないし、また若い世代で頑張っている人たちと組むことも大事なポイントだそう。
 さらに目利き力は歩くことでついてくるとも。その地域とのつながりが地方を活性化することにも意義を感じるといいます。

 この春は、JTB国内旅行企画との協働プロジェクト「JTBeams」も創設しています。リリースによれば、モノ・コト・ヒトをキーワードにニッポンを楽しむコミュニティを創出し、地域活性につなげていくとのことです。自分も含めて、日本人なのに案外日本のことを知りません。ここにはきっと驚きの発見がありそうです。今後の展開を期待します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月25日 (木)

JFW-IFF MAGIC 尾原蓉子氏講演会「創造する未来」

 去る4月26~28日、東京ビッグサイトでファッション見本市JFW-IFF MAGICが開催されました。今回は従来のJFWインターナショナルファッションフェアと米国ラスベガスの合同展MAGICとの共同開催となり、700を越えるブランドが出展したといいます。

Img_71921  セミナーも多数行われ、そのトップを切って講演されたのが、一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション 代表理事・会長尾原蓉子氏です。昨年、出版された「Fashion Business 創造する未来」(繊研新聞社刊)を軸に、今年も参加された全米小売業大会からの最新情報も交えて、ファッションビジネスの未来を語られました。テーマは「Fashion Business 創造する未来 ― デジタル化とディスラプションでどんな未来を創造出来るか?」です。

 冒頭、強調したのが、ディスラプション(創造的破壊)の進行というビジネスの大潮流です。デジタル技術により既存ビジネスがディスラプトされ、ビジネスのパーソナル化と個人のライフスタイルを支援するサービス化が引き起こされているといいます。この新しいビジネスに未来を創造するチャンスが生まれていると指摘しました。
 今や時代は第4次産業革命に突入。アパレル小売業は、有店舗と無店舗合体販売からオムニチャネルへ、さらにマイストア―顧客専用にカスタマイズできるストアへ進化しつつあるといいます。顧客も変化し、従来のミレニアル世代とは異なる1990年代生まれのゼット世代が浮上。彼らは欲しいモノを楽に手に入れたいと思うキャラクターの持ち主です。そこで間接<仲介なしの直接、秘密性<オープンな透明性、一般向け<私にとって意味のあるものを求める傾向が一層強まるといいます。モノづくりの方向も従来のマス向け量産から個人向けカスタム生産へ向かうと明言します。
 次に米国におけるディスラプションの様々な成功例を紹介しました。いずれも日本の未来のヒントとなりそうな事例です。
 まずモバイル・オンディマンドの「Uber」、高級ファッションレンタルの「Rent the Runway」、メガネのネット販売「Warby Parker」、続いて「Bonobos」のショールーム・セールス・モデルです。これはリアル店舗が試着室で、販売はオンラインで行う新業態、またAIの活用で顧客に合うものを提供するパーソナル・スタイリング・サービスの「Stich Fix」、徹底的な透明性を謳い、生産から流通、消費者の元へ届くまでの全過程と、その過程にかかるコストを開示する「Everlane」など。こうしたサイトでは客が値付けする「ダイナミック・プライシング」も始まりつつあるといいます。適価販売はマーケティングの王道とも。
 こうした動きをリードするのがアマゾンで、昨年度売上はメイシーズを抜き14兆円に達したといいます。人工知能スピーカー「Amazon Echo&Alexa」は、音声と連携したサービスで新時代を予感させます。レジのない画期的な店舗「Amazon Go」も話題です。
 小売りの現場ではレベッカ・ミンコフやケイト・スペード、またリーバイスなど、VRやARを実践しているところが目立っているといいます。ノードストロムの顧客管理システム、サイズやフィットの問題を解決する「True Fit」サービスなど、枚挙に暇がないといった感じでした。
 さらにマズローの欲求5段階説によるマーケットの現状分析も印象に残りました。日本は現在5段階目の自己実現欲求にあり、消費者は自分自身にとって特別なものを追求するようになっているといいます。そこで重視されるのが感性価値、たとえば手紡ぎ手編みのセ―ターなど、感動を呼び起こすエモーショナルな商品というわけです。
 最後にファッションの未来形として、次の4つのDを提言。Design (デザイン設計)、Development(製品開発)、Display(提示)、Distribution(流通販売)です。そしてテキスタイルとアパレル、小売りを連動させることの重要性について改めて言及。日本のファッションビジネスの課題として、デジタル化とパーソナル化に向けたEコマースの実践が焦眉の急と業界をプッシュ。「The store is not dead. It’s digitalized.」(小売りホワイトペーパー)の言葉で、締め括りました。

 短時間でしたが、大変充実した実り多い内容で、さすが重鎮と敬服しました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月15日 (月)

コットンインコーポレイテッド 2017米国と日本の市場動向

 今年も米国コットンインコーポレイテッド社による「マーケット・リサーチ・プレゼンテーション」が4月21日、東京・日本橋で開催されました。講師は例年通り同社マネージャーでマーケット・アナリシスのジャスティン・コーテス氏です。
Img_71821  世界の市場を調査している同社の資料から、とくに2017年の米国と日本の市場動向について分析された結果を、「EMBRACING DISRUPTION (新しいテクノロジーを受け入れて突破口を見出す)」を基に解説されました。
 テーマは大きく二つあり、一つは「RETAIL RADICALS (小売ラジカル)」、もう一つは「JAPAN REIMAGINED (再構築される日本)」です。

 まず一つ目の「RETAIL RADICALS (小売ラジカル)」です。これは今まさにグローバルトレンドとなっているテクノロジーに焦点を当てたお話しで、小売業がテクノロジーをいかに駆使しているかについて、4つのポイントに絞って、語られました。
 第1に、カスタマイゼーションです。競争力を高めるにはこのテクノロジーが欠かせないと断言します。
 オンラインセールスはますます加速します。しかし先進国では衣類離れに歯止めがかからない。2016年の総支出にみるアパレルシェアは米国、日本とも3%、EUも4%で、2030年までの伸び率は米国やEUで1%程度とごくわずかとみられています。これに対して中国やインドでは現在5~7%で、2030年には倍増が予想されるなど、成長の可能性が非常に高い。
 こうした状況下、業績を伸ばすことができるのはテクノロジーで他と差別化可能なカスタマイゼーションを採り入れている企業といいます。例えばこの3月にオーダーセーターを2時間で完成させる「セーター・ロボット」をローンチしたアディダスや、この2月に「CODE COUTURE」を立ち上げたH&M。トップショップのウエアラブルテクノロジーに特化したスタートアップの発掘、及び育成プログラム「TOPPITCH」などを映像でプレゼンしました。
 第2に、触感・質感といった問題解決への努力です。これはオンライン販売の向上をはかるのに不可欠といいます。
 アンケート調査によると、10人中7人がオンラインでカスタマイズできるブランドを購入すると答えていて、とくにミレニアル世代ほど高いそうです。ただしオンラインでの服の購入は、試着できない、質がわからないといった不満があり、返品も多くなります。そこでこれを限りなく解消する突破口を開くことが鍵になります。例としてファッションレンタルビジネスの「RENT A RUNWAY」が行っている、顧客とほぼ同じサイズの人が衣装を着装する動画サービスや、ギャップが導入している「試着室アプリ」、これは体型に合ったアバターが試着するものなどが紹介されました。
 第3に、グローバルにローカライズするということです。とくにアパレル支出の増大が見込まれる中国やインド市場にフォーカス、各地域の特性に合わせたカスタマイゼーションや交流が重要になってくると指摘します。中国も広東はファッショニスタが多く、上海はアスレティックに熱心、北京はインターナショナルというように、求めるものが異なると数字を上げて解析。インドでは女性運動の一環として、女性たちにスポーツ参加を促すプログラムを提案するナイキの事例など、成功例を挙げました。 
 第4に、サスティナビリティの追求で、多方面から天然素材が推奨されているといいます。マイクロファイバーによる水質汚染や、レーヨン繊維の使用で樹木が伐採され森林枯渇が起こっている問題などに言及。世界中の85%の人々がコットンは環境にやさしいと回答し、3人中2人が化合繊使用を不快に感じ回避しているとの調査報告を公開しました。コットンに関する誤った情報を正すことを強調していたことも印象に残りました。

 次に二つ目のテーマ、「JAPAN REIMAGINED (再構築される日本)」です。日本は今後少子高齢化の影響でマーケットが縮小し、2030年のアパレル消費額は7.9兆円と現在より17%減少すると予測されています。こうした中、明るいと見られているカテゴリーが下記4つです。
 1つは、アクティブウェア市場です。機能的な服を購入する消費者が増え、2020年に向けて販売額は17%増と見込まれ、ワードローブの主要アイテムになってくるといいます。
 2つ目は、デニムです。二人に一人がデニムを着用するようになり、オフィスで、また洗練されたものならディナーでも、ジーンズをはく機会が拡がるといいます。2022年に売上高は現在より9%上昇するとの見方も示しました。
 3つ目には、オンラインショッピングです。2030年には日本人の99%がインターネットにアクセスするといわれ、ますます勢いを増しそうです。2021年にEコマースサイトでの販売は46%になり、55%がモバイルで買い物を楽しむようになるといいます。そこでサイズ、フィット、マテリアル、レビューといったきめ細かな情報の伝え方が大事とアドバイスされました。
 4つ目は、アパレル輸入で、サプライチェーンが多様化するといいます。品目としてはニット81%、織物19%の割合で、ニットが圧倒。とくに東南アジアからのサプライヤーの急増は止まらず、この流れは変わらないとみているようです。

 なお日本における調査は、15~54歳の男女を対象にオンラインで実施、第3者機関に依頼し、CCI国際綿花評議会とコットンインコーポレイテッド社とのコラボレーションで行われたといいます。

 最後に、同氏のセミナーは今回で終了とのことです。毎年、世界市場と日本のマーケット動向について貴重なお話しを伺い、大いに参考にさせていただきました。心よりお礼を申し上げたいと思います。ほんとうに長い間、ありがとうございました!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月26日 (水)

WEFシンポジウム ⑵ 未来のファッション・ビジネスを考える

 昨日のブログの続きです。 
 ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF)主催のシンポジウム「デザイン・シンキング(Design Thinking)-これからのファッション・ビジネスの価値創造に不可欠なアプローチ―」で、アーティスト/bcl /Poiesis Labs. CEOの福原志保さんが登壇。「アーティストとクリエイティブ・イノベーションの関係から未来のファッション・ビジネスを考える」をテーマに基調講演しました。

Img_69871  セントマーティン修士課程修了の気鋭のバイオ・アーティストという福原さん。故人の遺伝子を樹木に埋め込み墓標とする新しい埋葬サービス会社、バイオプレゼンス社を立ち上げています。きっかけとなったのは昭和天皇の大喪の礼で、日本にはお墓が不足していることに気づいたことからだそう。
 Google社のウェアラブル衣料開発プロジェクト「Google ATAPプロジェクト・ジャカード」のリーダーでもあり、講演はこの画期的なジャカードの話が中心でした。これは私も以前から大いに注目していたもので、まさに“未来を拓く”といっても過言ではないテキスタイルです。 
 福原さんは、このGoogle ATAPチームとリーバイスが共同開発したコミュータージャケットを動画で紹介しました。スマホと連動するウェアラブル・ジャケットで、袖のカフス部分にセンサー機能を持つ電導性のある繊維を織り込んだジャカードデニムが使用されています。この布にチップ内蔵のタグを接続することで、デバイス操作ができる仕組みです。発売は今春とのことでしたが、今秋になるそうで、価格は350ドル(約4万円)とか。
 鍵となる電導性繊維は、何と日本製! 銅線にポリエステル繊維を複雑に組み合わせたもので、日本伝統の組紐技術が使われているそうです。テキスタイル企画会社アンファンテリブルと組み、八王子の澤井織物工場で製造されたといいます。後で洗濯について伺いましたら、できるとのことでした。
 デニムのみならず様々なテキスタイルに織り込み可能ですから、衣服をはじめシューズなど、多様なアイテムがインターフェイス化されていくことになるのでしょう。そう思うとこの「見えない技術」にわくわくします。
 それにしてもGoogle社がファッション・ビジネスの世界に乗り出してくるとは----、未来の業界地図は大きく変わっていきそうですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月25日 (火)

WEFシンポジウム ⑴ 無印良品の“感じ良いくらし"

 先月末、ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF)主催のシンポジウム「デザイン・シンキング(Design Thinking)-これからのファッション・ビジネスの価値創造に不可欠なアプローチ―」が、都内ホールで開催されました。
 冒頭、WEF尾原蓉子会長は、「ファッション・ビジネスは今、大きな壁にぶつかっている。これを打破するために、ゼロベースで消費者の本音に密着したビジネスモデルが求められている。そのリーダーに基調講演をお願いした」と挨拶。
Img_69781  その演者として最初に登壇したのが、(株)良品計画の代表取締役会長、金井政明氏です。
 金井氏は、「無印良品のデザイン哲学“感じ良いくらし”~グローバルブランドを育てた生活美学~」をテーマに、そのビジョンを語りました。

 まずデザイン哲学は、1980年の創業時と変わっていないといいます。当時、堤清二社長は消費社会に疑問を持ち、田中一光氏とともに、ブランドや印などつけずに販売することをコンセプトにしました。トレンドに流されない自分らしく美しく暮らしたい人々に向けて、「役に立つ」を大戦略とし、人間らしい生活の回復に焦点を当てたのですね。 
 ここで例として挙げたのが、フォーク&スプーンとお箸の比較です。前者は誰がやっても同じ結果を出せる “道具の脱人間化”、後者は練習により道具が自分の体の一部になる“道具の人間化”で、道具も人間と同じ自然の中で生きた存在になっているといいます。日本人の生活美学の一端が見えてくるようです。
 またもう一例として「自己家畜化」の話をされました。豚を家畜化すると人間にとって有益な能力は伸びるが、本来の力は退化します。人間も同様で、現代社会にあまり必要でない能力は退化していく。そこで無印良品では、この消費社会の中で失ったものを取り戻そうと、簡素で簡潔、しかも丁寧で調和のとれた生活美学を提案しているといいます。
 次に“感じ良いくらし”についてです。この考え方は、2011年の東日本大震災をきっかけに生まれたそうです。この頃から利他主義的な精神がリスペクトされるようになり、抑制や我慢が、むしろ“感じ良い”ものと思われるようになってきたといいます。モノづくりのビジョンも、「これがいい」ではなく「これでいい」へ、つまり価値観が従来の個性の強いモノから、理性的満足感のあるモノへ移行するようになっていきます。そこで省資源、省アイテム、汎用性の精神で、例えばお箸に通じるようなモノをつくる、それが足つきマットレスなどのヒット商品につながっていったといいます。

 今や「MUJI」は世界的に評価が高まっています。海外店舗数も2020年には国内を上回る400以上に増やすといいます。その背景には、そうした“感じ良いくらし”のデザイン哲学に世界の人々が共感する価値観の変化があるからでしょう。
 “感じ良いくらし”の持つ深い意味に気づかされた、目からウロコのご講演でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧