書籍・雑誌

2014年1月13日 (月)

「モードの身体史―近世フランスの服飾にみる清潔・ふるまい・逸脱の文化」内村理奈著

 17世紀から18世紀にかけてのフランスは、ルイ14世治世下にあって、服飾文化の華が開いた時代です。本著は、この時代に焦点を当て、日常の身体行動の視点で、当時のモードを捉えた注目の書です。

 著者の内村理奈先生は、跡見学園女子大学マネジメント学部生活環境マネジメント学科准教授で、服飾文化学会理事でもあり、日本ファッション協会うらら会でもご一緒するなど、親しくしています。夏休みには研究のため、毎年フランスに渡られ、パリではBNに通われていると伺っていましたが、昨秋、とうとうその成果を書籍にされました。ご著書を、ようやく読了し、改めてそのすばらしさに感銘しています。

 とかく王侯貴族など上流階級のモードに偏りがちな西洋服飾史ですが、ここでは、庶民にもフォーカスされていることが大変新鮮でした。

 とくに第1部「清潔―身体感覚の秩序」にある、リヨンでの遺体調書からの比較考察については、大変興味を惹かれました。これで白という色がいかに贅沢なものであったのか、がわかります。当時の人々の清潔感、皮膚感が伝わってくるようです。白い下着は盗難の対象になるほど貴重なものだったというのも面白いお話です。フランス語でクリーニング屋のことを、今なおblanchisserie(漂白屋)と言う理由も頷けました。

 第Ⅱ部「服装規範―ふるまいの秩序」」では、現代も続く帽子の作法、その表象が、わかりやすい言葉で描かれています。普段よくかぶる帽子だけに、気づかされることの多い内容です。

 第Ⅲ部「逸脱するモード―秩序の揺らぎ」は、服飾研究では大変重要な部分で、読み応えがありました。中でも仮面に関する論考は、大いに参考になります。上流貴婦人たちのみが付けたという黒い仮面の意味が解き明かされ、納得です。
 
 それにしても膨大な文献資料をよく調べて、精査されていると、感心させられました。さすが学究の徒でいらっしゃいます。
 これは私の大切な座右の本とさせていただこうと思っています。
 
25637966_1_3  「モードの身体史―近世フランスの服飾にみる清潔・ふるまい・逸脱の文化」
 内村理奈著 (悠書館 2013.10)  3,780円(本体3,600円)

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2014年1月 5日 (日)

「生き続ける300年のモノづくり-京都府北部・丹後ちりめん業の歩みから」北野裕子著

 お正月休みに、北野裕子先生のご著書「生き続ける300年のモノづくり-京都府北部・丹後ちりめん業の歩みから」を拝読しました。著者とは、服飾文化学会で知り合い親しくさせていただいております。
 とりわけ3年前に開催された丹後での同学会夏期セミナーでは、先生が同地の織物を研究されていることもあって、大変お世話になりました。改めてお礼申し上げます。
 
 丹後地方は言わずと知れた「縮緬(ちりめん)の里」。今なお日本の生糸の約1/3を消費し、ちりめんの約6~7割を生産している日本最大の絹織物産地です。江戸期、八代将軍吉宗の時代にこの技術が導入されて以来、明治・大正・昭和と、激動の時代を生き抜き、急激なグローバル化への対応も乗り越えて、現在に至っています。しかもここ数年は、パリのテキスタイル見本市に出展するなど、世界に挑戦する企業も現れるようになりました。
 連綿と生き続ける小さな地場産業に、大きな光が当てられるようになってきたのは何故なのか。本著は、その歩みとともに背景を探り、今後の方向を見据えながら、業界が抱える諸問題をわかりやすい表現で解説しています。
 
 とくに昨今は、経産省の「クール・ジャパン」戦略などもあって、日本の伝統工芸が見直され、中でも大きな位置を占める伝統織物に世界の目が向けられています。こうした絶好のタイミングで出版されたのが、この著作です。
 この本には、成熟社会の中で、繊維産地が底力を発揮するためのヒントが散りばめられています。これからのモノづくりを捉え直す好材料として、繊維関連に限らず幅広い分野の方々に、ぜひお読みいただきたい一冊です。
 
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 「生き続ける300年のモノづくり-京都府北部・丹後ちりめん業の歩みから」
 北野裕子著 (新評論 2013.10)  4,200円

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2013年8月19日 (月)

「三宅一生─未来のデザインを語る」珠玉の一冊

 「三宅一生─未来のデザインを語る」を読了しました。ここには、世界の衣服デザイナー、三宅一生さんが語るデザインについての珠玉の言葉が収められています。
00024855_3       聞き手・編  テレビマンユニオン会長 重延 浩 
          岩波書店発行 定価 2900円+税

 「デザインには希望がある。そしてデザインは驚きと喜びを人々に届ける仕事である。好奇心を満載にして生きていくということが、デザインなのではないか。デザインには未来を見る目が必要なのです」の表紙を飾る言葉。
 「ただ消費するばかりでなく、つくることの大事さをもう一度考えよう」と呼びかける言葉。
 衣服は人間のためにある。人間が衣服のためにあるのではない」という「一枚の布」を発想されたときの言葉。
 どれもみな感銘させられます。
 
 高校生時代にイサム・ノグチの作品に出会ったことがきっかけで、デザインを意識するようになったことや、ファッションがデザインとして世の中に認められていない分野だったから、これは面白そうだ、と思い、ファッション・デザイナーを志したこと、そして「一枚の布」から「プリーツ ブリーズ」、「A-POC」、「132.5」の服づくりまでの軌跡、デザインミュージアム「21_21デザインサイト」立ち上げなど、つぶさに語られていて、とくに若い方々におすすめです。
 
 「21_21デザインサイト」の「21」は、単純に21世紀ではなく、視力2.1の意味だったこともこの本で知りました。デザイナーはパーフェクトサイトとされる視力2.0よりも、もう少しよく見える2.1で、先を考え、工夫し、実践していく人間であって欲しい、という願いを込めて命名されたとのこと。この精神が今、「国立デザイン美術館をつくろう」という運動に発展しているのでしょう。

 付録のDVDも付いていて、一生さんのデザイン哲学がより一層立体的に理解できるようなっているのも、うれしい一冊です。              

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2013年8月 2日 (金)

「あらいたて きもちいい!パンツ」重版出版

 今日、8月2日は「パンツの日」。「パン(8)ツ(2)」の語呂合せで、1984年に記念日に制定されました。パンツの日だからというわけではないのですが、2007年に私の監修で、刊行された図書、“ものづくり絵本シリーズ「あらいたて きもちいい!パンツ」”( チャイルド本社発行)が、この7月、重版出版されました。

 小さな子どもたちにとって、毎日はいているパンツがどうやってつくられているのか、原料から製品になるまでを、わかりやく解説してあります。
 普段何気なく身につけているパンツですが、植物の種子がつくり出す白いやわらかい丈夫な繊維、もめんからできていることを、子どもたちに知らせたい、そんな思いからできあがった絵本です。イラストレーター、ささき みおさんのふんわりとやさしい絵が、コットンにぴったりです。 
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    中島妙/ぶん ささきみお/え 柳原美紗子/監修 600円

 本を編集していただき、重版でまたしても大変お世話になりましたアルバの清家和美さん、本当にありがとうございました。      

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2013年5月21日 (火)

「不思議な一粒」木綿への愛と祈りの書

 「綿から生まれ、綿に返る」という理念を大切に木綿と向き合い、対話しながら木綿の力を提案し、創作活動を続けていらっしゃる工芸作家、岡嶋多紀さんから著作「不思議な一粒」が贈られてきました。
 木綿と和紙、この二つの素材にこだわり続けている著者の集大成ともいうべき豪華本で、表紙に茶綿入楮紙、中扉に色木綿入楮紙が使用されています。
 タイトルの「一粒」とは、棉の種のこと。この書には、一粒の種から始まった木綿が、織物から和紙へ生まれ変わり、“木綿往生”するまでの、木綿への深い愛と祈りが込められています。

 元アパレルのデザイナーだった岡嶋さんは、着捨て時代の屑になった木綿をいとおしみ、「たき織」と名付けた裂織を完成させ、ファッションやインテリアなどの様々な作品を制作しています。その後に出る残布や残糸も捨てられないと、コットンフラワーをつくり、それでもまだ残る布屑は漉いて和紙に仕上げます。ふわふわのコットンボールが、最後は色とりどりの繊維(綿)に再生する、捨てられない布―木綿和紙の誕生です。
 
 こよなく木綿を愛するアーティストの岡嶋さんに、私は以前からずっと着目し、展覧会やファッションショーにお伺いしてきました。世田谷のギャラリーを訪問させていただいたときには、見事なアートなフラワーのオブジェに、目を丸くしたことを覚えています。
 このところしばらくお会いしていなかったのですが、木綿和紙を手掛けられ、とうとう本を出版されたとは! 本当にすばらしいです。岡嶋さんに脱帽です。
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B5変型104頁(上製本/窓開き仕様段ボールケース)
発行:マリア書房
価格:¥4,725円(税込み)

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2013年4月13日 (土)

大人がときめくフリーマガジン「つなぐ通信」創刊!

Img18315x450_4   「Textile Treeテキスタイルツリー」主宰の成田典子さんから、「つなぐ通信」創刊号(2013 Spring)を届けていただきました。「いいものを、つないでいく」をコンセプトにした大人のマガジンで、年4回発行されます。

 巻頭言には、「先人たちが築き、受け継がれてきた“大切な原点”を拾い上げ、それを次世代に伝えること」が、我々の大事な使命とあり、本当にそうだなと感銘しました。魅力的なシニアにスポットを当てるインタビュー記事など、読み応えのある内容です。とくにイラストレーターでエッセイストの西村玲子さんによる「西村玲子のつなぐ暮らし」の連載は、おしゃれなライフスタイルに憧れるシニア世代にとってうれしいページでしょう。

 すべてカラー刷りで美しい写真も豊富。これがフリー(0円)でゲットできるなんて、時代は変わりました。渋谷PARCOパート1 4階のフリペーパー専門店「オンリーフリーペーパー」を始め、各所に置かれているとのことですが、現在設置・配布していただけるお店や施設を募集中だそうです。どこかありましたら、お知らせください。

 成田さんとは以前「テキスタイル用語辞典」を作成されるというので、テキスタイル資料でご協力させていただいたのがご縁です。繊維辞典というと、堅苦しいものが多いですが、これは素材のカラー写真が付いていてわかりやすく、読み物風コラムもあって、楽しく学べます。日本図書館協会選定図書でもあり、服飾や関連業界の方々にとっては大変参考になるお奨めの書です。

 「つなぐ通信」が創刊されて、改めてこの「テキスタイル用語辞典」への想いを新たにしました。すてきなつながりに感謝です。

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2013年4月12日 (金)

ユニバーサルデザインに求められる「サスティナビリティ」

 超高齢化社会に突入している変革期の日本で、求められているのは、使い手の側に立ったユニバーサルデザイン(UD)の提案です。UDとは「年齢・体型・性別・人種・障がいに関わらず誰もが楽しめるデザイン」で、その根幹を成しているのが、有限な地球に暮らす人間中心のアプローチです。いくら高品質で安価な商品が魅力的でも、ビジネス優先による環境破壊が潜んでいるとしたら、見過ごすことはできません。

 UDの背景にエコロジカルな視点、とりわけ「サスティナビリティsustainability=持続可能性」がキーワードとして浮上しています。何を持続させるのかというと、「良い社会と地球環境」です。つまり「サスティナビリティ」とは、「将来世代にわたってずっと良い社会と地球環境を保ち続ける」という考え方で、これが商品選択の重要な基準の一つになってきているのです。

 とくに3.11の大震災以降、「豊かさとは何か」が問い直され、大自然を脅威と受け止めながらも、自然と共存するライフスタイルや商品に高い関心を示す生活者が増加しています。生産現場でも、環境に配慮し限りある資源を次世代につなぐ発想のモノづくりが求められるようになりました。
 
 「今が良ければいい」から、「長続きさせる」方向へ価値観の大転換が起こっている現代。14年春夏に向けたパリのプルミエールヴィジョン(PV)やミラノウニカ(MU)でも、テーマのひとつとして掲げられたのが「サスティナブルなファッション」でした。ユニバーサルファッションは「着て楽しく、着易くて動きやすい」ことが大原則ですが、今後は環境問題に関しても、より積極的に取り組む必要があります。
 
 これについて、今月10日に発売されたトレンド先読み情報誌「FASHION COLORファッションカラー2014年春夏/2013-14年秋冬号」(日本色研事業発行)に、私が寄稿した記事が「UNIVERSAL DESIGN 」見開き2ページで掲載されています。書店でぜひお求めください。
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2013年1月24日 (木)

「コットンが好き」高峰秀子を振り返る

 高峰秀子を格別な存在として意識するようになったのは、1984年「コットンが好き」という本が出版されたときです。「二十四の瞳」以来ずっと憧れていた、あの大女優が何と「コットンが好き」をテーマに本を著し、私と同類!?なことがわかって、とてもうれしくなったことを覚えています。ちなみにこの本は大ベストセラーになって、2003年に文庫本化されています。

 コットンというと、ファッションのイメージは、さっぱりしていて飾り過ぎず、さりげない雰囲気ですが、昨年出た高峰秀子・松山善三・斎藤明美著「高峰秀子 暮らしの流儀」によると、「おしゃれのコツは飾り過ぎないこと、なにげなくあること」と書かれていて、「好んだ色は黒やグレー、キンキラキンは大嫌い。装いもアクセサリーも、シンプルなデザインのものを愛した」とあります。どちらかというと私もそういう目立たない好みですし、「コットンが好き」という人らしいな、とますますファンになりました。
 
Takamineposter_2  鎌倉市にある川喜多映画記念館では、昨冬来、「高峰秀子」展を開催しています。先日ようやく見に行く機会があり、子役でデビューした5歳から55歳で引退するまでの軌跡を振り返ってきました。   

 写真やポスターなどとともに、多数の脚本(ほん)が展示されていて、その中に自筆のスタイル画が描かれているものがいくつかあり、人物の描き方が上手と感動しました。聞けば映画衣裳もよく自分でデザインし、映画「女が階段を昇るとき」では衣裳デザインはすべて高峰秀子が担当したといいます。また「六條ゆきやま紬」では織物デザインまで行ったそうです。もちろん髪型はいつも自分で整えていたとか。スターでありながら衣裳まで考案したのは、高峰秀子が最初とのことでした。

 演技もさることながら、名文家で、絵やデザインの才能もあり、家庭では料理も上手と、何拍子も揃った女優は、他にはいないでしょう。自分に厳しく、晩年には潔く生活を縮小する生き方も、実に見事で、人生の達人とはこういう人のことを言うのかと思います。
 
51fg3ec8rrl__ss500__2  「コットンが好き」というところから、心に強く刻まれた女優、高峰秀子。その「暮らしの流儀」は、今やすっかり私の座右の書となっています。

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2012年9月 1日 (土)

「遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である」(ちくま新書)読後感

 まず題名に惹きつけられ、副題にぎょっとさせられました。人間の能力はすべて遺伝子の影響をうけていると、はっきり突き付けられてしまったからです。それは確かに「不都合な真実」なのですが、しかしここでは不都合なのは遺伝子ではなく、社会や教育制度といった環境が遺伝子にとって不都合だと言っています。不都合=不平等と考えたら、わかりやすいと思いました。
 著者の安藤寿康氏は、私の知人のお兄様で、行動遺伝学や教育心理学を研究されています。この知人がお兄様の多数の著作の中で初めて読破した本というので、私も読んでみようという気になりました。遺伝と言うと理系的ですが、この本は文系です。とはいえ、やはり難解でした。
 しかし「遺伝は遺伝しない」の項で、「親と同じ遺伝的素質をもった子はむしろ非常に現れにくい」という個所は、目からウロコでした。私も「遺伝の影響があると親と同じ性質をもつた子どもが生まれる」という先入観を持っていましたから、少し救われたような気分になりました。
 「遺伝子の民族差はあるか?」も興味深かったです。遺伝子型の違いが、「集団主義的」文化か「個人主義的」文化かにかなり関連していて、韓国や中国などは集団主義的傾向が強く、アメリカやイギリスなどは個人主義的傾向が高い。日本はその中間に位置するといいます。これも何となくそう感じていたことでしたので、納得です。
 また能力差は遺伝だけではなく、環境要因も相当関わっていることを、双生児研究からつきとめた「遺伝と環境は算出できる」という項目も、面白かったです。SF映画「ガタカ」を見て、この映画の主人公が、宇宙飛行士には不適正とされた遺伝子を持っているにもかかわらず、可能性を信じて、ついに宇宙へ行く夢を実現させます。劇的な結末でしたが、希望を感じさせられました。
 最終章の「いかに遺伝的才能を発揮するか」では、「2万もの遺伝子の組み合わせからなる遺伝的組成はひとりひとりみな違い、予測もしなかった環境の中でそれが発現してくるのですから、だれも答えを知らない。ひとりひとりがその答えとなる物語を自分で作るしかない」、というのにも「やっぱり!」と同感しました。
 「遺伝子の不都合な真実」、これは遺伝子にとって不都合な社会や文化や制度の真実にきちんと向き合っていく必要がある、という、提言の書。いろいろ考えさせられるところが多い著書でした。一読をお薦めします。Photo_3

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2012年8月 4日 (土)

「オヤノタメ商品 ヒットの法則」(集英社刊) 好評発売中

今年は団塊世代が職場から引退するピークの年ということもあるのでしょう。NHKテレビで「団塊スタイル」という番組が始まったり、イオングループがシニア対応スーパーを初出店したり、サントリーウエルネスが70歳代を対象にした化粧品を発売したり、このところシニア市場に力を入れる企業がとくに目立っています。

こうした中で、タイミングよく出版されたのが「オヤノタメ商品 ヒットの法則」です。著者は、湘南くらしのユニバーサルデザイン商品研究室(SUDI)を主宰する今井啓子さんとSUDIグループです。このグループの一人として私も執筆に参加しました。

史上初の「少子高齢社会」に突入した日本社会ですが、企業は複雑に多様化するシニア市場に対応できず、シニアという言葉もタブーとされてきましたから、高齢者を対象としたマーケティングの本はほとんどありませんでした。そこで私たちSUDIは、産業界に対して要求されるべき商品やサービスのデザインの基本が、人に優しいユニバーサルデザインであると考え、これを柱に、シニア目線で選んだ商品・サービスを取材報告する本をつくることにしました。

この本のタイトルを「オヤノタメ商品」としたのは、ユニバーサルデザインの根本にあるのが、使う側への「思いやり」の気持ちであり、そうしたオヤへの思いやりの心が結局は自分にとっても快適なものとして帰ってくることになるからです。「オヤノタメは将来の自分ノタメ」、シニア市場を動かす鍵はここにあります。

ここではオヤ世代の生活の不安や不便を解消する商品やサービス、開発の舞台裏などを幅広く取り上げていますが、それらはコドモ世代にとっても使いやすいユニバーサルなものです。読者は、ここで紹介されている多くの商品ストーリーによって、「親孝行そのものの商品が、次世代の自分たちのためにデザインされたものでもある」と考え直すことになるのではないでしょうか。

高齢社会では共生が重要なテーマになってきます。親と子、作り手と買い手の双方に幸せをもたらす商品がますます求められるようになります。この本は今後のビジネスに大きなヒントを与える絶好の書。ちょっと自画自賛かもしれませんが-----

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