映画・テレビ

2021年10月21日 (木)

映画『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』を見て

 名立たるラグジュアリーブランドのデザイナー、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)の映画『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』が先月公開され、私もすぐに見に行ってきました。

  マルジェラは「ファッション界の透明人間」、「ファッション界のバンクシー」と呼ばれています。そのキャリアを通して、一切、公の場に姿を現さず、あらゆる取材や撮影を断り続け匿名性を貫いています。
 私は映画を見ながらいつ顔を見ることができるかと待ち望んでいたのですが、最後まで叶いませんでした。見ることができたのは縫い目をいじったり、マネキンにグリッターを塗ったりする彼の手だけ、それにやわらかな彼の声でした。

 映画の中で、マルジェラ自身が語る言葉と映像の記録は大変貴重なものばかり。ミステリアスであり続ける彼をドキュメンタリー映画に仕上げたライナー・ホルツェマー監督の力量に感動させられました。

 1989年のパリコレにデビューし80年代から続いていた華やかで煌びやかなファッションを否定するかのような破壊的な脱構築スタイルを提案したマルジェラ。そこにはこれまで語られることのなかったプライベートな記録が明かされています。ベルギーのルーヴェンに生まれ、ドレスメーカーだったという祖母の影響もあって7歳でバービー人形の服をつくったことや、アントワープ王立芸術学院でファッションの基礎を学び、ジャン=ポール・ゴルチェのアシスタントとなってその大胆さを身に付けたこと、とくにゴルチエは憧れの存在で、偽のバッジをつくってそのショーに忍び込んだことなど、面白おかしく披露しています。
 その作品は、シュールレアリズムや歴史的なファッションからインスピレーションを得て、過去と未来の衝撃的な衝突を表現したものが多いようです。最初のモチーフの一つは、17世紀の王族が使用していたジャボと呼ばれる装飾的なビブだったとか。顔を隠すこと、変装することに重点を置いてデザインしているのは、その方が服へのインパクトが増すからとも、また彼が人前に出ることを嫌っていたからだともいいます。
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  初期の頃、マルジェラは目立たないように、自分の服に自身の名前を付けることさえしていませんでした。その代わりに、人々が誤った糸と勘違いするような小さなステッチを4つ、背中に付けたのです。それが有名なカレンダータグの始まりだったといいます。
 シルエットは実験的かつファッションの既成概念に一石を投じるようなデザインで、常にドラマチックです。中でも独創的なのが廃棄物を拾ってつくったもの、例えばシャンパンのコルクと黒いリボンを使った頑丈で精巧なネックレスや、割れた皿の破片をワイヤーで自由落下させたウエストコート、軍用の靴下で作ったセーター、食料品の袋で作ったタンクトップ、さらにガムテープを使った仕立てなど。いずれも茶目っ気があって、ポストモダン的で、しかもシックです。
 マルジェラは早い段階で、服が自分を物語っていると考えるようになったといいます。インタビューや写真撮影を断念した理由について、「自分が守られていると感じられれば、もっと多くのことを提供できると思ったから」と語っています。
 本作ではマルジェラの創作にまつわる様々なミステリーが解き明かされます。革新的で大胆不敵、本質を見極め、決して妥協しないとみられてきたマルジェラですが、実は大変繊細で優しい気持ちの持ち主だったことも分かりました。

 この異端児、マルジェラが1997年、エルメス(HERMES)のレディスプレタポルテのデザイナーに就任したニュースが流れたときは、ファッション業界にちょっとした衝撃をもたらしました。私も驚かされましたが、その究極のミニマリズムは “マルジェラらしくない″と言われながらも高く評価されたことが思い出されます。2003年に退任し、ブランド20周年となる2008年、デザイン活動を終了すると決断。2009年に51歳にして突然引退してしまいました。

 その後はアートに専念、モダンアーティストとして今月20日から初めての個展をパリのギャラリー「Lafayette Anticipations」で開催中です。展覧会はマルジェラがこれまでキャットウォークで見せてきたような、非定型でアートの境界を押し広げるようなものだそう。
 今後はアートの分野でどのような活躍を見せるのでしょう。楽しみです。

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2021年9月29日 (水)

銀座メゾンエルメスで映画『皆殺しの天使』を見て

 久しぶりに銀座メゾンエルメスでルイス・ブニュエル監督のメキシコ映画『皆殺しの天使』(1962年)を見ました。
 モノクロの映画上映というと、懐かしい名作が多いですが、これもその一つです。
 とはいえ何ともキツネにつままれたような不思議な作品でした。大邸宅の豪華な晩餐会に招かれた美しく着飾ったブルジョワの客たち、彼らはなぜかは分かりませんが誰もこの客間から出られなくなるという異様な状況に陥ってしまうのです。
 使用人たちは晩餐会が始まる前に、何かに急かれるように屋敷を去ってしまい、残っているのは執事一人です。密室空間に閉じ込められ、次第に追い詰められていく極限の人間模様が描かれます。

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 壁を打ち壊して水を確保したり、迷い込んだカワイイ羊を焼いて食べたり、人間は貪欲です。息を引き取る人もいます。こうした中でも女性たちが爪の手入れをしたり、紅を差したり、身づくろいをする姿が印象的です(上の写真)。
 ときは1930年代のスペイン内戦時代を思わせます。邸宅の外では人々が集まり心配そうに見つめていますが、誰も怖がって足を踏み入れようとしません。
 こうなってくると富も権力もなく滑稽でしかありません。これはブニュエル監督の皮肉のこもったシュールな不条理劇でした。

 現代でもパーティは終わったというのに、帰りづらくてずるずると時間をひきずってしまうことがあります。誰も出ていかないと、出ない方がよいと皆がそう信じ込み、実際は出られるのに出ようとしない、「場の空気」に巻き込まれてしまうのです。
 ル・ボンの名著『群衆心理』を思い出しました。他者の動向に注意を払わずにはいられない私たち、とくに日本人は要注意では?と思った映画でした。

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2021年8月 2日 (月)

映画「ココ・シャネル 時代と闘った女」を見て

1_20210731113501  ジャン・ロリターノ監督による映画「ココ・シャネル 時代と闘った女」を見てきました。
  ニュース映画や史実画像を基に、シャネルの人生を55分間の映像に凝縮した作品です。シャネルと親交があったジャン・コクトーなどのアーティストや、シャネルスーツを愛用した女優のロミー・シュナイダー、ジャクリーン・ケネディの姿も映し出されています。フランソワーズ・サガンも登場し、シャネル批判を繰広げていたのにも驚かされました。

 本作はシャネルの没後50年、「シャネルNo.5」の誕生100年記念公開ドキュメンタリーです。記念というと、一般にお祝いムードにあふれたものが多いですが、この作品はそれとは少し異なっています。シャネルの栄光に光りを当てるだけではなく、影の部分までがシビアに描き出されているのです。しかしそのことで私はむしろ、シャネルも私たち同様の悩みを抱えた人間だったと共感させられました。
 例えばシャネルの子ども時代は非常に貧困で、18歳までオーバジーヌ修道院で過ごしたことになっています。しかし実際は親戚に引き取られて育った記録が残されていて、修道院には行っていなかったそうです。修道院の話はあとからつくられた神話のようなものだったのですね。
 また第二次世界大戦中の秘話も明かされています。シャネルはやはりナチス情報部に登録されていたことが分かりました。
 英国の上流階級とのパイプを持っていたシャネルは、和平を模索するナチスのために英国政府に働きかけます。その相手が何とチャーチル首相でした。チャーチルはシャネルのことを「男と帝国の両方を支配できる魅力的な女性だ」と評しています。この間、シャネルが捕虜になった甥を助けようと奔走したというのも初めて聞くエピソードでした。

 シャネルは19世紀的価値観から女性を解放し「皆殺しの天使」と言われ、自由で自立した女性を先導し鼓舞し続けたとされています。しかしその一方で、男性に囲われていた過去があったり、お針子たちのストライキに容赦ないノーを突きつけたりもしています。シャネルNo.5を巡っては主導権争いも起こしました。でもこうした負の部分は、無からスタートしたシャネルにとって必然のことだったと思われます。「私にとってお金とは自由に他ならない」の言葉が心に響きました。

 71歳でパリオートクチュール協会に復帰して以降の活躍も目覚ましいです。最晩年はミニスカートに反発するなど、相当に気難しくなった様子も活写されて印象的でした。
 1971年に87歳で死去、スイスのローザンヌにある墓碑銘には「私はヒロインではない。しかし、自分がこうしたいと思った人生を生きた」と刻まれているそうです。

 自由を求めて最後まで強く生き抜いたシャネル、その生き方もシャネルスタイルも、ともに永遠の女性の憧れであり不滅です。

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2020年1月 5日 (日)

映画『アパレル・デザイナー』 業界を熱くするストーリー

 先月半ば、映画『アパレル・デザイナー』の特別試写会に行ってきました。東京・代々木の会場には、ファッション関係者らが続々詰めかけ、ほぼ満席でした。

Dac42e4540f5be9c  このところ、現在活躍しているデザイナーをクローズアップしたドキュメンタリー映画を目にする機会が多くなりました。でも“インハウス・デザイナー”と呼ばれる企業内デザイナーはあまり表に出て来ません。ましてやアパレル企業の中で働くデザイナーを主人公にした映画なんて、これまでありませんでした。この映画はまさに日本初のアパレルをテーマにした画期的な作品です。

 ストーリーは、苦境に追い込まれた老舗アパレル企業を立て直すという、業界を熱くするようなお話しです。会社再生を託されたデザイナーの藤村雄二(高嶋政伸)を中心に組成されたデザインチームが、新しいブランド立ち上げに向かって挑戦する姿が描かれています。
 ここでは服づくりの裏方であるパタンナー、加世田京子(堀田 茜)も準主役です。仕事を命じるデザイナーを殺したいと思うほどに疲れ切っているのに、服をつくりたい一心で奮闘します。靴職人ヒールクリエイターの岸本ゆり子(西村美柚)の凛とした初々しさも魅力的です。そんな脇役たちの存在感が光っていました。

 言ってみればファッションの舞台裏で起こるドタバタの苦労話です。現実はそんなに甘くないと思われる業界人は多いかもしれません。でも旧弊を乗り越えようとする藤村雄二の精神にはきっと誰もが励まされるのではないでしょうか。
 26年ぶりに主役を演じた高嶋政伸は、流石の名演技を見せてくれました。その藤村の科白の一つ、「服は人間の身体に一番近いアート」という言葉が印象的です。
 
  なお試写会では出演者数人が挨拶しました。 また上映終了後には映画の大団円となったファッションショーが、 主題歌『Destiny』に乗って、 画面から 現実の舞台に飛び出す ハプニングの 演出もありました。
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 業界人なら必見の特筆すべき記念作です。一般公開は1月10日から。ぜひご覧ください。
 


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2019年6月 2日 (日)

映画「マックイーン モードの反逆児」を見て

 先日やっと暇をみつけて、アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリー映画「マックイーン モードの反逆児」を見てきました。ロードショーはもう終盤で、館内はほぼ満席でした。
58edc1d3c4aa3a1c   見終わった後、感動のあまり席を離れたくない気持ちにおそわれました。こんなこと初めてです。アレキサンダー・マックイーンは、まさに真の天才デザイナーでした。
 実は私はアレキサンダー・マックイーンのランウェイを見たことがありませんでした。この映画で、彼のショーがいかにドラマティックな物語に満ちたスペクタクルなものだったかを得心しました。彼は偉大なショーマンでもあったのですね。2台のロボットがスプレーで人形のようなモデルの白いドレスに色を吹き付けていくパフォーマンスや、幻想的なケイト・モスのホログラム投影、モデルによるチェスゲーム、セントマーティン卒業以来ずっと支援してくれたイザベル・ブロウへのオマージュ、プラトンのアトランティス---と、まるで夢でもみているような印象的な場面が続々。会場の熱狂ぶりはいかばかりだったでしょう。
1_8  それにしてもこれほどまでに惹きつけられてしまうとは! そこには華麗なモードの裏に人間の暗い影の部分、死や暗黒の世界が横たわっているのを感じるからなのかもしれません。彼のデザインの原点は中世衣装にあるとよく言われます。そういえば“スカル”のモチーフを流行らせたのも彼でした。 
 サヴィルロー仕込みのテイラーリングの技術と、クチュールメゾンの職人技で、プレタポルテでありながらオートクチュールのような作品を送り出したアレキサンダー・マックイーン。商業主義に流されず、常に反骨精神をもって、この世にないものを生み出そうとした、衣服の「彫刻家」でした。
 映画では、天才ならではの苦悩がにじみ出ているようで、胸が傷みました。ファッションとは何か、クリエイションすることの意味を突き詰めようと最後までもがき続けていた姿が描き出されていました。40歳の若さで自死を選んだのは、このためだったのでしょうか。それは母の葬儀の前日でした。
 私たちもファッションについて改めて問い直してみる必要がありそうです。

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2019年1月20日 (日)

映画『ボヘミアン・ラプソディ』に興奮冷めやらず!

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』、公開からずいぶん日が経ってしまったのにまだやっていました。先日ようやく時間を見つけて映画館に行ってきました。
 これは70年代から80年代にかけて絶大な人気を集めた英国のロックバンド、クイーンのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの伝記映画です。
175831_2  フレディが様々な困難に直面しながらも、全身全霊で音楽に捧げる様子をテンポよく映し出していきます。日本との繋がりも深いようで、ドレッシングガウンにキモノを愛用していたフレディの姿が印象的です。クイーンから離れてソロになったフレディでしたが、メンバーは家族だった、と気づいて戻る場面も見ていてよかった、和みました。終盤の“ライヴ・エイド”はもう感動の嵐で、胸がいっぱいになりました。思わず涙腺が緩んだりして---。上映時間が2時間半で何て長いの、と思っていたのですが、ほんとうに早く過ぎて、もっと見ていたいといった感じでした。
 それにしても映画館はさすがの大画面です。久しぶりだったせいか、すごい迫力でした。フレディを演じたラミ・マレック、それに他のメンバーもそうなのですが、もうそっくりで、魂がのりうつっているかのように思えました。ゴールデングローブ賞で作品賞、ラミ・マレックが主演男優賞を受賞したというのもうなずけます。

 見終わって、今もクイーンの楽曲が耳の奥から離れません。かつて私もカセットテープに録音するなどしていたのです。改めて懐かしさがこみあげてきて、未だに興奮冷めやず!といったところです。

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2018年6月23日 (土)

映画「ファブリックの女王」 マリメッコ創業者波乱の人生

 マリメッコに関するミニレクチャー&「ファブリックの女王」上映会が、去る5月末に開催されたワールドインテリアウィーク2018で、東京デザインハブにて行われました。
 マリメッコといえば、フィンランドを代表するファッションブランドです。このブログ2017.1.5付けでも展覧会の記事を掲載しています。映画「ファブリックの女王」も話題となりました。このブームは北欧人気も相まって現在も続いているようです。今年2月末まで竹中工務店東京本店にあるギャラリーエークワッドでは「マリメッコの暮らしぶり」展も開催されていました。
Img_07671  上映会では、このギャラリーの副館長 主任学芸員の岡部三知代さんによる、マリメッコ創業者のアルミ・ラティアやそのスピリットに関するミニレクチャーがありました。

 映画は期待していた通りの伝記的なドラマでしたが、アルミの苦悩ぶりが半端でなく暗くて重かった! 予告編にはなかった、見ていてつらくなるような場面が多かったです。それもそのはず、創業した頃は戦後間もない時代で、国土は荒廃し、生活は困窮を極めていたのです。そうした状況をデザインの力で変えようとしたアルミです。女一人で起業して生きていこうとすれば、強くたくましく、ときに破天荒にもならざるを得なかったのでしょう。鮮烈な彩りのファブリックの世界とはあまりにもかけ離れた波乱の人生模様に、すっかり気圧されました。

 とはいえフィンランドは2017年世界男女格差ランキングで第3位です。これも彼女のような女性パワーあってのことと思われます。ちなみに日本は114位と底辺に沈んでいます。また今年3月に国連が発表した世界幸福度ランキングでは、フィンランドは何と堂々の1位になりました。幸せと思っていた日本ですが、ランクを落として54位です。
 この差は何なのでしょう。背景に、のびのびと自由な環境があるかないか、そうした精神性によるのかもしれないと今思っています。フィンランドには、日々の暮らしに喜びを振りまいてくれるマリメッコのようなスピリットが、きっと息づいているのですね。
 映画を鑑賞して、その力強いユニークな「色と柄」、時代を感じさせない「タイムレス」なスタイルが何故生まれたのか、改めて考えさせられました。

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2018年1月27日 (土)

映画ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男

 このほど公開されたドキュメンタリー映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」を見てきました。 ライナー・ホルツェマー監督がドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)に1年間密着してつくりあげたという2016年制作の作品です。

Photo_2 ドリス・ヴァン・ノッテンは、パリコレで繊細な美的感覚で知られるベルギー出身のクリエイターです。2014年にパリ装飾美術館で大回顧展(このブログ2014.9.28付け参照)が開催されて、その百花繚乱ぶりに圧倒されたことが思い出されました。

 映画の冒頭、「ファッションは嫌い。半年も持たずに消えてしまうものは好きではない」の言葉が何とも印象的でした。トレンドに左右されない、時代を超えて長く着られるものをつくり続けていく、との姿勢に好感しました。
 ラグジュアリーブランドとしては数少ない独立派で、広告は一切しない、自由にクリエーションするためにスポンサーも要らない。またアクセサリーや小物ではなく服のデザインそのもので勝負している稀有なブランドでもあります。
 それなのに常に第一線で創作活動を続けて25年にもなるのです。大切なのはやはりよきパートナーやたくさんのスタッフたちの存在なのですね。彼らに囲まれて、生き生きと楽しそうに仕事しているシーンが何度も映し出されていました。

 めったにカメラの入らない、ドリスのアントワープの邸宅、それに花々に囲まれた庭園も紹介されて、あまりの美しさにうっとり!です。ガーデニングもお好きのようです。
 ファブリックは自らデザインして世界中に特注し、インドには刺繍工房も持っています。まさにタイトル通り、「ファブリックと花を愛する男」ですね。
 でも普段のドリスは、意外にもストイックと思いました。華やかなショーの舞台裏やアトリエでは、何の変哲もない白いシャツやセーター姿で、まじめそのものといった雰囲気です。あのスティーブ・ジョブズを連想したりしました。

 なかなか目にできない才能あるクリエイターの生き様を伝える力作でした。

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2016年6月16日 (木)

「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」 衣装初公開

 映画衣装というとディズニー映画のファンタジックな衣装が楽しいですね。
Img_70011jpg_2  今、銀座三越で映画「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」公開(7月1日から)を記念する、人気キャラクターの衣装展が催されています。

 この映画はティム・バートン監督作品「アリス・イン・ワンダーランド」の続編で、豪華キャストたちが再共演しているといいます。衣装デザインを担当したのは、本作も前作同様、コリーン・アトウッドで、前作では第83回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞しました。
 その装飾美あふれる個性的な衣装は、映画の芸術性をより一層高めているようです。
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Img_69921  アリス役は前作からさらに成長したミア・ワシコウスカで、衣装は華麗な中国風ドレスです。

 解説によると、中国文化を表現するために、テキスタイル部門のスタッフが手作業でシルク地に刺繍を施したとか。ビンテージ調の見事な仕上がりが印象的です。


Img_70001  ジョニー・デップ演じるマッドハンターの衣装は、やはり帽子がポイントのようです。
 ヴィクトリアン調の帽子でサイズをより大きくして、キャラクター性をより強調したといいます。
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 赤の女王も前作と一緒でヘレナ・ボナム=カーター、衣装も同じ天然の赤ぶどうで染めたものとか。

 ちょっとの間でしたけれど、タイムトリップした気分を味わってきました。

 開催は28日までで、22日からは伊勢丹新宿店と名古屋のイセタンハウスでも開催されるそうです。

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2016年4月21日 (木)

日本科学未来館 「9次元からきた男」に見る宇宙の始まり

 日本科学未来館が、この4月20日、リニューアルオープンしました。
9dimensions_20160_204_2  これを記念する3Dドームシアターガイア最新作映像「9次元からきた男」の試写会と、映画を科学監修された素粒子論の権威、カリフォルニア工科大学教授・理論物理学研究所所長の大栗博司氏のレクチャーに先月末、行ってきました。

 映画「9次元からきた男」は本当に衝撃的でした。3Dドームというのは初めての体験で、真に迫る大迫力とはこういうのをいうのでしょう。すべてが超リアル、まるで目の前で起こっていることのように思われました。映像は美しく、天空にきらめく星々が忘れられません。
 それにしても「9次元」とは不可思議です。副題となっている「すべては“ひも”で出来ている」とはどういうことでしょう。見る前は謎だらけでしたが、見終わってなんとなくわかった感じになりました。

Img_54151  この映画は物理学の究極の目標である「万物の理論」がテーマになっています。「万物の理論」とは自然界の法則、すなわち「宇宙はどのようにして始まったのか、宇宙はどのようにできているのか」を解明することです。この理論の一つが大栗先生の「超弦理論」で、映画はこの仮説を元に、ホラー映画界の第一人者、清水崇監督が1年がかりでつくられました。まさに力作です。

 大栗先生は「9次元から来た男とは何者か」がテーマに、「超弦理論」をわかりやすく解説してくれました。宇宙誕生のワクワクするようなお話があり、世界はミクロとマクロの二つの矛盾する法則であらわされているといいます。「超弦理論」はこの二つ、マクロな重力の法則とミクロな素粒子の法則を結びつける究極の統一理論で、これを可視化したのが「9次元から来た男」です。今、私たちは3次元の空間を体験していますけれど、超弦理論では空間は9次元とされていて、物質の基本単位は点ではなく“ひも”であるといいます。この辺からチンプンカンプンになってきます。

 映画では、「9次元から来た男」は「T.o.E.(トーエ)」という名前で表現されています。ストーリーは、科学者たちがこの「T.o.E.(トーエ)」を探す旅物語です。彼を追いかけるうちに、観客も科学者と一緒に、素粒子の世界や宇宙の始まりへ旅をします。9次元まで、次元が折りたたまれていく映像もおもしろかったです。

 難解でしたが、理論物理学者が見ている究極の景色を体験し、宇宙の謎にますます興味を持ちました。楽しい夢が広がります。どうぞ日本科学未来館のドームシアターガイアに足を運んでみてはいかがでしょう。

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