文化・芸術

2019年10月25日 (金)

パリのブールデル美術館で「背中側のモード」展

 この9月のパリで、ファッションで話題の展覧会が開催されていました。それがモンパルナスのブールデル美術館で行われていた「背中側のモード」展です。
 ブールデル美術館は彫刻家アントワーヌ・ブールデルのアトリエだったところです。ブールデルの彫像とともに、有力デザイナーのドレスが展示されている光景は圧巻でした。
 ドレス作品は約100点あり、改装中のガリエラ美術館所蔵のものだそうです。道理で素晴らしい名品揃いでした。
 本展はタイトルのように「後ろ姿」がテーマです。背中の見せ方をデザイナーの作品と写真で紹介しています。
Img_69791  上はグランドホールの展示風景です。

Img_69771  このホールの最奥に一点設置されていたのが、ビジュアルにも使われているマルティーヌ・シットボンのドレス(1997-98秋冬コレクション)です。アシンメトリックなカットのシンプルなシルエットにハッとさせられます。肩甲骨をなだらかなカーブで美しく見せています。

Img_69861  手前はヨージ・ヤマモトのドレスとスカート(1996-97秋冬)です。これは前からですが、後ろ側も見事なカッティングでした。

Img_69891  右はバレンシアガのオートクチュールコレクションからイブニングドレス(1961-62秋冬)です。

 さすが、裁断の魔術師、本物はすばらしいです。
 背中を膨らませたドレープの美しさは、もう匠の技!


 
Img_70151  コム・デ・ギャルソンの有名なコブドレス(1997春夏)、「Body Meets Dress」の作品もブールデルの工房に静かに佇んでいました。隣にはブールデルの名作「瀕死のケンタウロス」があって、その首を不自然に傾けた造形と呼応しているようでした。
 理想の身体は人それぞれで、違っていいということでしょうか。
 
Img_70121  右の背中に鳥の翼を付けた造形もシュールです。
 これは作者不詳でした。
 
 この他、様々な背中に焦点を当てたモードがあり、紹介しきれません。

 メンズ作品も充実していて、一つひとつが興味深かったです。






 展覧会を見て、西洋人の背中の美しさに改めて感動しました。背筋がピシっとしていて姿勢のよい人がほんとうに多いのです。だから背中の意匠にもこだわるのでしょう。
 それにひきかえ、我が日本人には猫背が何と多いことか。日本人の約8割が猫背で、世界中の猫背の6割は日本人という統計も出ているそうです。
 骨格が異なるとはいえ、私も背中をきれいに見せたいですが---。それには背筋を鍛えなければなりません。歩くときも胸を張って肩を後へ引いて歩こうと思います。でももう手遅れかな。そんなことを思った「背中側のモード」展でした。

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2019年10月24日 (木)

パリのプティ・パレ ロマン主義時代のパリ1815-1848 展

 この9月、パリのプティ・パレで開催されていた展覧会「ロマン主義時代のパリParis Romantique, 1815-1848」を鑑賞しました。9月15日が終了日でしたので、ギリギリのタイミングで間に合いました。 
 ロマン主義時代というのは19世紀前半の時代です。タイトルにもあるように、1815年から1848年まで、ナポレオン失脚から2月革命まで、短期間に多くの政変が起きた不安定な時代でした。

 会場では当時の様子を伝える資料が多数(約600点)展示されていて、服飾資料も少しでしたが、見ることができました。
Img_70221jpg  
 この時代はブルボン王朝による第2次王政復古が始まり、ロココ趣味に変貌していく頃です。
Img_70231  女性服はウエストが自然の位置になり、スカートが広がって、羊の脚型袖が大流行します。
 コルセットも復活し、清純でか細い少女のような女らしさが求められるようになり、女性たちはそうした偶像化された理想の美を目指して身をやつしたといわれています。
 右はその頃の花柄プリントのコットンドレスです。
 
Img_70261  男性服はダンディズムの一層の高揚をみた時代です。
 
  右は白で統一したダンディなスタイルです。ベストにあしらわれた花の刺繍が男性なのに女性的に見えます。

 この時代は男性もコルセットを着けたといわれていて、その有名な風刺画も展示されていました。


 
Img_70311jpg  このロマンティック時代と言えば、ショパンとジョルジュ・サンドが活躍した時代でもあります。上は二人の肖像画です。
 私はパリのロマンティック美術館にも行っていますので、同じものを目にしているのですが、今回は全体の雰囲気も手伝って印象に残りました。

Img_70341jpg  ショパンが 弾いたというピアノも見ることができました。さぞかし優雅だったでしょう。ため息が出ます。
 
 先般のパリコレクションでは、服飾史を紐解くようなクラシカルなドレスが有力デザイナーたちにより現代風にデザインされています。来春夏のトレンドの一つにもなっている、ピュアな白いレースや透けるような薄い生地を使ったフリルやラッフルの可憐なドレスは、もうまさにロマン主義時代のパリジェンヌ---です。
 歴史はカタチを変えて繰り返すことを改めて実感します。

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2019年10月22日 (火)

パリでアライア×タチ展 別の視点からファッションを見る

 この9月、パリのマレ地区にあるアライア・ギャラリーで、アズディン・アライア(Azzdine Alaia)が手がけたタチ(Tati)のコレクションを見てきました。タイトルは「Another Way to Look at Fashion / 別の視点からファッションを見る」です。
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 アズディン・アライアと言えばチュニジア出身の偉大なクチュリエですね。2017年に逝去して、去年、多くの回顧展が開催され、私もこのブログ2018.3.19付けで「私はクチュリエ」展の記事を載せています。
 このアライアが1991年、ディスカウントストアのタチとコラボレーションしてコレクションを発表したときは、ほんとうに驚きました。ビッグネームが安売り専門のタチと組む、なんて想像もつきませんでしたから。タチのオーナーもチュニジア出身で、同郷の誼もあったのでしょうか。コラボ話をもちかけたのは、アライアの方だったといいます。「タチの客はファッショナブルな服を買えない。だからデザインしたかった」と述べているそう。
Img_86641jpg  今では最高級ブランドもごく普通に格安ブランドと協働する時代になりました。シャネルの亡きカール・ラガーフェルドも2004年、「H&M」とデザイナーコラボを始めました。その後次々と現れるようになり、もう当たり前の現象と化しています。
 その先鞭をつけたのがアズディン・アライアだったのです。「お金がなくてもファッションを楽しめる」、そんなファッションの民主化を果たしたデザイナーでした。「別の視点からファッションを見る」というタイトルの意味もここにあったのですね。

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 会場には、タチのトレードマークであるギンガムチェックのプリントドレスがズラリと勢揃いしていました。白とフーシャピンク、白とブルー、白と黒のコントラストを効かせた大柄ギンガムがフレッシュで目に鮮やかです。しっかりした厚みのあるコットンの生地が使われています。ボディラインを美しく見せるボディ・コンシャスな裁断はアライア独特のもので、見る者を刺激せずにはいられません。さすがボディコンで一世を風靡したデザイナー、迫力があります。


  この庶民に愛されたタチも今年2月に閉店しました。アズディン・アライアといい、タチといい、ファッションの歴史に刻まれるブランドです。本展で、私もその歴史の一つに立ち会えたことを、ほんとうにうれしく思ったことでした。

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2019年9月26日 (木)

フィレンツェでゴージャスなグッチガーデン

 今回は欧州出張ということでミラノに行き、日程の合間にフィレンツェへ旅しました。ミラノからは列車で2時間足らずです。
 到着して向かったのはシニョリーア広場に面して建つルネサンス様式の建物、「グッチガーデン(GUCCI Garden)」、つまり元のミュゼオ・グッチです。現クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレが新たにデザインを手掛けて、2017年にオープンしたもので、行ってみたいと思っていたスポットでした。 
 
  1階はショップになっていて店頭はさすがゴージャス! 
Img_68341   今秋一番のドレスやここでしか買えないバッグもあります。グッチ好きにはたまらないかも。

 2階から4階までがギャラリーになっています。
Img_68081 Img_68101jpg  往年の名品に交じって最近のコレクションが展示されていました。
 
Img_68111   バッグの逸品を揃えた展示室です。
 
Img_68311   被り物も中国か日本のお堂なのか、独特な形のものがみられます。
 
Img_68181    階段を上がるとメンズコレクションがズラリ。

   左は松に鳳凰のような鳥の刺繍   右はキモノスタイル
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Img_68271   グッチ流のトロンプロイユも興味深い。右のコートには蛇を模したブレードがあしらわれています。
 
 全体を見てラグジュアリームードを満喫しました。とはいえ何かもの足りない思いがしたことは確かです。制作の工程やパターンなどアトリエや職人に関する展示があってもいいのに---。
 とはいえ創作のヒントはいっぱい、ぜひ訪れたい価値あるミュージアムと思いました。

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2019年9月 9日 (月)

静嘉堂文庫「入門 墨の美術―古写経・古筆・水墨画」展

 今、静嘉堂文庫美術館で開催されている「入門 墨の美術―古写経・古筆・水墨画―」の内覧会へ行ってきました。
 冒頭、河野館長が鑑賞のポイントを語られました。その中で印象に残ったのがタイトルの「入門」です。「書」というと、とかく敷居が高いと思われがちなので、少しでも多くの方々に「墨の美の世界」を楽しんでいただきたいと、この言葉を入れたそうです。書道は苦手、と思っていた私も、これで少し気が楽になりました。
 出品されているのは、同館所蔵の六曲一双の大屏風を含む30点で、墨の選りすぐりの名品揃い。それらが古写経・古筆・水墨画の3つのグループに分けられ展示されています。
 (写真は特別の許可を得て撮影しています。)
Img_60221jpg  水墨画によく登場する「寒山拾得(かんざんじっとく)図」(上)からオリジナルのキャラクター「かんざんくん」もつくり、古写経・古筆・ 水墨画の各コーナーで案内に一役買っています。

  最初は奈良時代、漢字の「祈りの墨―古写経―」です。
Img_60211   上は奈良に都があった1200年前のお経で、「5月1日経」という、仏教が伝来して間もない天平時代のものといいます。当時写経は一大事業であったとか。楷書の字体がきちんと揃って端正、美しく見えました。

 次が平安時代、「雅なる墨―古筆―」です。
Img_60021   平安朝となって、平仮名が生まれた頃のものです。「古今和歌集」高野切」など、水が流れるように流麗なやわらかい筆致は、一幅の絵を思わせます。厳かだった奈良時代と比べると、なんて優美なのでしょう。
Img_60061 x  上は、国宝「倭漢朗詠抄 大田切」唐紙のような下絵の上に書かれています。
 法華経の信仰が篤かったこの時代、末法思想からお経を筒に入れて土に埋めたそう。その経筒も展示されていました。

 さらに時代は下って室町時代、「墨に五彩あり―水墨画―」です。
  Img_59841  当時の詩画軸の典型的な美術品や、「伝 周文」筆と伝承される重要文化財「「四季山水図屏風」など大屏風が多数展示されています。 Img_60251   中国ではBC1500年、殷の時代には既に「墨」があったといわれているそうです。漢字が絵から発達したように、書画一致思想は東洋独自の文化で、その根底には墨というマテリアルがあったのですね。
 東洋美術の根幹をなす墨の世界、「書」の絵画のような芸術性に改めて感動しました。
 なお展覧会は10月14日までです。HP http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html
で詳細をご覧ください。

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2019年9月 3日 (火)

「日本のグラフィックデザイン2019」展 関連トークも

 先般、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)主催「日本のグラフィックデザイン2019」展が、東京ミッドタウン・デザインハブにて開催されました。これはこのほど年鑑『Graphic Design in Japan』2019年版が発行されたことを記念する展覧会で、掲載作品の中から身近な雑貨や書籍、商品パッケージ、シンボル・ロゴ、ポスターなど約300点が実物やモニターで展示されました。
 
Img_53361jpg  上はアワード受賞作品の展示コーナーです。中央右のモニターに映し出されているのが、最高賞の亀坂雄策賞で色部義昭氏による「地下鉄のCI計画『Osaka Metro』」、また手前は、JAGDA賞パッケージのカテゴリーで受賞した渡邉良重氏の「Tartine(洋菓子店のパッケージ)」、奥に架かっているグリーンの作品は、JAGDA賞ポスターのカテゴリーで受賞した永井一正氏の「LIFE」です。
 
Img_53201jpg  またアワードとは別の「This One!」に選出された作品で、私がとくに注目したのが、浅葉克己氏による「デザイナーブランドのショップ」です。 これはイッセイ ミヤケが2018年に京都に出店したときのもので、Img_53211 一生さんの「一」の書を大胆に書いた暖簾です。
  「一」の一文字に強い意志が感じられ、インパクトがあります。
 うちわも添えられていて、何とも小粋!
 
 さらに関連イベントとしてトークショーも行われ、その一つに参加しました。
Img_53331  出演は、伊藤忠ファッションシステム/ifs未来研究所所長の川島蓉子氏と、廣村デザイン事務所 主宰の廣村正彰氏、聞き手はJAGDA年鑑委員長の柿木原政広です。
 最初に、東京2020スポーツピクトグラムの開発チームの一員としてデザインを担当された廣村氏が、その舞台裏を語りました。
 スポーツピクトグラムは1964年の東京オリンピックで初めて採用されたものだそうで、今回は当時のものをリスペクトしつつ、普遍性と先進性を追求したといいます。
 躍動するアスリートを幾何学的に単純化して表現するために、筋肉の動きに着目。胴体部分を抜くことでそれらしく見えるように表現したそう。そぎ落とせる部分はできる限り省いたといいます。とはいえ人の姿はどの競技にも入れたそう。ちなみに1964年のセーリングでは人は入っていません。体操は床、新体操はリボンの場面、バスケットボールはシュート、サッカーはシュートだったのをドリブルにしたなど、以前と変化したものも多々あるとのことです。
 Tokyo2020_03_o 33競技50種類をデザインされて、「会心の作は?」と問われて、廣村氏は「陸上競技」(右)と答えていました。
 スッキリと美しくて印象的です。
 
 次に川島氏が企業との事例、とくに「とらや」との取り組みについて明かされました。これはifs未来研究所と三越伊勢丹がコラボレーションして、「未来の夏ギフト」を展開したときのお話しで、興味深かったです。
 従来の地味な羊羹のイメージを超える「皆でワイワイ、シェアできる“みらい”の羊羹」をテーマにした、3人のデザイナーによる創作和菓子、グエナエル ニコラ氏の雅な扇子の形、テキスタイルデザイナーの須藤玲子氏の粋な縞模様、アートディレクターの渡邉良重氏の水中花のような表現は、もう従来の地味な羊羹のイメージを超えている、と思いました。
 バカラをイメージしてつくったという、ひと口サイズの和菓子の詰め合わせも、ほんとうにおしゃれでビックリ!です。「職人に無理を言うことで新しいものができる」というのも名言ですね。
 創業500年の老舗に新風を吹き込むことに成功した川島さん、これからもご活躍を期待しています。

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2019年8月30日 (金)

「今森光彦展 写真と切り絵の里山物語」豊かな里山と暮らし

 今、松屋銀座で開催されている「今森光彦展-写真と切り絵の里山物語」の内覧会に行ってきました。
 写真家で切り絵作家の今森光彦氏、そのご本人がギャラリートークしてくださり、素敵な会でした。今森氏は話し出すと止まらないという方で、トークをたっぷり楽しませていただきました。(写真は主催者より特別に撮影の許可をいただいています。)

 冒頭、「写真と切り絵を一人の人物がやっているとは思われないでしょう。写真は外、切り絵は室内のワークですからね」と切り出されて、お話しに引き込まれました。
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 第1章は「里山物語」です。タイトルの「里山」について、「里山というのは『山』ではなくて『野良』の意味。野良仕事をする場所が里山で、日本人は自然を壊さないように自然と共存して生きてきました。この自然観を当たり前のこととしてきたのに、それが壊れつつあります」と話し、本展で「人と自然が溶け込み合い共存する空間を理解していただきたい。この自然豊かな環境を感じて欲しい」とメッセージを発せられたのが印象的です。
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 海外歴も長いそうです。辺境の地が好きで、アマゾンなど48か国へ、ケニアには8年いたし、インドネシアには48回行ったとか。インドネシアのスラベシ島の風景はご自身がお住いの滋賀県大津辺りに似ているといいます。こんな棚田が外国にもあるのですね。でも展示されている写真は日本で撮影したものだそうです。
 
 第2章は「里山の庭と暮らし」です。ここではアトリエの庭を語られました。
    30年前にこの土地(1,000㎡)と出会ったときは、荒れた田んぼだったそうです。それを「蝶々が集まる庭づくり」を目指して再生し、Img_58642 今では70種もの蝶が棲息しているとのこと。蝶々を愛するナチュラリストを「オーレリアン」と呼ぶことから、「オーレリアンの庭」と名づけていらっしゃいます。ちなみにオーレリアンとは、ラテン語で「金色の蛹」のことだそう。

Img_58811   里山への思いがつまった「オーレリアンの庭」。春夏秋冬、季節とともに変化するその豊かな自然を撮った写真を鑑賞しながら、しばし清々しい気分に浸りました。
 
 第3章は「里山のアトリエ」です。いよいよ切り絵のコーナーに入ります。
Img_58311  アトリエの「みみずくハウス」をバックに今森氏が制作の秘密を明かされました。
Img_58421   使用するのは市販のラシャ紙で、この紙をハサミで切り抜きます。カッターなど用いず、0.3 mmの極細の線も切るとのことで、ハサミの方がカッターよりも楽といいます。子どもの頃からハサミを持つと自然に手が動いたそうで、今森氏、やっぱり尋常ではありません。 
 色付けも一切されていなくて、作品はラシャ紙170枚の生の色を使って仕上げられています。限られた色の中で、不自由な感覚で仕事するのが好きとのことでした。
Img_58431jpg  作品はほんとうに細かくて、洋ナシの点々も紙、このすべてが紙を貼ってつくられているとは!まさに驚きそのものでした。
 
 美しい自然と超絶技巧の切り絵の世界を堪能させていただいた展覧会でした。豊かな里山との暮らし、私もすっかり魅せられました。
 なお会期は9月4日までです。詳細はHP http://www.matsuya.com/m_ginza/exhib_gal/details/20190828_imamorimitsuhiko_8es.htmlでご確認ください。

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2019年8月16日 (金)

銀座で「田名網敬一の観光」展 目くるめく田名網ワールド

 東京・銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリーで、21日まで「田名網敬一の観光」展が開催されています。
   まず目に飛び込んでくるのが、巨大な人間の頭部です。「いらっしゃいませ」と迎えてくれているのでしょうか。真っ赤な橋の上から
ギョロ目で睨んで歯をむき出しているのがちょっと不気味です---。
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 そこには目くるめくような田名網ワールドが広がっていました。
 (以前このブログ2017.7.9付けで掲載した個展「貘の札」もご参照ください。)
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 今年83歳になられるという作家の創作へのエネルギーはもう衰えを知らないようです。恐るべきパワー!
 かつて体験された戦争の記憶、徘徊する妖怪たち、若冲からアメリカンコミックまで、様々なモチーフがこれでもか、これでもかというようにパワフルに組み合わさって、奇想天外な宇宙観を作り上げています。それは死者たちの理想の世界を表現した“曼荼羅”のようなものなのでしょうか。作家の悟りの境地---、とはいえとびきりポップ!です。 
 
 階下も鮮やかなカラーであふれていました。伊達な武装を思わせる、装飾いっぱいの服飾作品も展示されています。Img_56091 Img_56011 
 またこの春から発売されている田名網敬一とアディダスのコラボコレクション「Tanaami × adidas Originals」のコーナーも設けられています。Img_56121jpg

 Tanaami独特のグラフィックを落とし込んだ黒のアイコニックなスポーツウェアは、さりげなく個性的で、洗練された感覚です。
 
 アートワークとファッションの連携は今どきのブーム。
 田名網ワールドにこれからも注目です。

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2019年8月10日 (土)

「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン」展 

 先日、三菱一号館美術館で開催中の「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」の内覧会に参加しました。
 本展はプリーツドレス「デルフォス」で20世紀初頭の服飾業界で支持され、近年世界的に注目されているマリアノ・フォルチュニにフォーカスする初の企画展です。
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 担当学芸員の阿佐美淑子さんが、「青い日記帳」のTakさんをナビゲーターにギャラリートークされました。これによると、フォルチュニは総合芸術家であり科学者でもあるという、まさに天才!でした。私は実はファッションデザイナーとしての顔しか知らなかったのです。阿佐美さんも最初はそのように思われていたそうです。 ところが実際は、絵画や舞台芸術、染色、写真などあらゆる芸術の分野で活躍し、プリントやプリーツの機械、照明技術なども開発した発明家だったのです。

 Img_54341jpg 右の天井の照明器具もフォルチュニの作品です。
 精巧なつくりで手作りだそう。
 大小あって、これは小さい方です。

 本展の開催にあたっては、ヴェネツィアのフォルチュニ美術館による全面協力があったといいます。このため資料が多岐にわたり、何を重点的に展示するか、阿佐美さんも熟考されたそうです。結局、服飾を軸とすることでまとまり、絵画や版画、写真、舞台関連作品、デザイン関連資料などの各展示室には必ず一体、「デルフォス」を展示して、服飾作品に焦点を当てていることを暗に表現したといいます。Img_54561
 
 この「デルフォス」、設計図は残されているのですが、その通りにつくろうとしても、再現は不可能だそうです。 それほどに複雑なプリーツがとられているのですね。打ち寄せるさざ波のように重なり合う襞、そのレイヤーの繊細さに感動させられます。
Img_54191jpg Img_55351jpg 













 ところで「デルフォス」が誕生したきっかけは、当時発掘された「デルフォイの御者」像(上の左写真)だったそう。この像を見た妻のアンリエッタのアドバイスがヒントになったとか。確かにこの御者像がまとっているものによく似ています。「デルフォス」の名称もこれに由来していたのですね。
 またフォルチュニはグラナダ生まれのスペイン人です。父親が画家だったことから画業を志し、パリに移り住みます。そこで妻となるアンリエッタと出会い、イタリアのベネツィアで暮らすようになったといいます。母親は日本のきものの蒐集家だったそうで、アンリエッタは日常的にきものを着こなしていたようです。きものはフォルチュニにとって身近な存在で、妻のためにも、きものスタイルのドレスを創作したのでしょう。妻思いの優しい人柄が偲ばれます。
 フォルチュニの「日本趣味」の謎が一つ解けました。
Img_54661  上はきものを着たアンリエッタです。

Img_55181  紫色のデルフォスにオペラジャケットの組み合わせ。1920年代の作品です。

 ところで、「デルフォス」を始めとする衣装を数多く所蔵しているのは、日本とアメリカで、肝心のベネツィアのフォルチュニ美術館には、服飾関連は意外にも少ないといいます。では何故日本に多いのかというと、かつて資生堂のモデルとして活躍した故ティナ・チャウのコレクションがあったからだそうです。
 80年代初めのティナ・チャウこと、ティナ・ラッツの透き通るような美しさが思い出されます。あの頃、フォルチュニ展がしばしば開かれ、私も見に行きました。それを再びここで見るとは、感慨深いです。

Img_54441  上は「デルフォス」収納用の箱です。

Img_55081jpg  絹製のプリーツの形状を保つために簾のようにドレスを巻き取り、さらに捩じってまとめると、驚くほどコンパクトになります。この簡便かつ携帯性の高さが、人気を押し上げる要因の一つになったそう。これも現代に通じる画期的な発明です。それにしても既に記したように、襞が美しい!

 Img_55201jpg  桜か梅、桃と思われる文様を配した羽織風ジャケットです。袖や襟の形がきもののように平面的です。とはいえ脇や袖の明き部分や衽が省略されていて、きものの仕立てではありません。西洋服の構成になっていることが見て取れました。
  
  テキスタイルにも驚嘆させられました。Img_55221_20190810093901
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  フォルチュニはドレスや外衣だけではなく、室内装飾用にも時として同じデザイン、材質のものを使用したといいます。 日本の布の図案をそのまま引き写して絹や木綿のベルベットにプリントを施したのです。Img_55301 出来上がった模様は、プリントではなく織物によるものとしか見えません。
 右はジャカード織のベルベットのようなプリント生地です。
 
 フォルチュニはプリントの技術を考案するなど、特許も多数取得していたといいます。
Img_54931  日本の染め型紙や型押し木型、プリント生地もたくさん出品されています。
 
 それにしてもこの「デルフォス」、もう復刻できないとはいえ、映画やTVドラマなどで時折登場します。「ダウントン・アビー」で、ミシェル・ドッカリーが着ていたのも「デルフォス」だそう。そのエッセンスは現代に受け継がれています。イッセイミヤケの「プリーツ・プリーズ」のように---。

 本展を見て、女性の身体をコルセットから解放し、自然な曲線を美しくみせるその先進性に、改めて感銘させられました。「100年経っても新しい」、この言葉がぴったりな展覧会でした。

 (なお写真は美術館の許可を得て撮影しています。)
 会期は10月6日まで。詳細はHP、https://mimt.jp/fortuny/をご覧ください。

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2019年8月 5日 (月)

デビュー50周年記念「萩尾望都 ポーの一族」展

 銀座松屋で開催されている「萩尾望都 ポーの一族」展に行って来ました。少女マンガに革新をもたらした萩尾望都のデビュー50周年記念展です。萩尾望都ももう70歳なのですね。会場は思いがけなく混んでいて、50代以上ではと思われる女性たちでいっぱいでした。Img_55851
 展示されているのは約300点もの魅惑的な原画です。デビュー前のものから「ポーの一族」第1作に始まるシリーズがズラリ。それに「トーマの心臓」もあります。
 2016年には40年ぶりとなるシリーズ新作が大反響を巻き起こし、2018年には宝塚歌劇団によって舞台化が実現したのですね。本展の奥のコーナーに、そのときの花組の公演「ポーの一族」の舞台が再現されています。
 舞台衣装や・小道具も特別展示されていて、衣裳は撮影が可能です。
Img_55611 Img_55651jpg Img_55631jpg  





 







 左はメリーベルとエドガー、右はシーラとポーツネル男爵です。
 
Img_55811  左はアラン、右はエドガーです。
Img_55571  
 右はエドガーです。
 時代衣裳とはいえ、男子服はモダンです。今着ても全然おかしくないし---、というよりも装飾を求めるファッションに合っています。

 このコーナー、見逃せません。

 なお展覧会は明日6日までです。
 興味のある方はお急ぎください。

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