文化・芸術

2020年1月19日 (日)

「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展

 今、「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展がパナソニック汐留美術館にて開催されています。先日この内覧会に行ってきました。
 冒頭、遠山館長が「今年は東京五輪の年ということで、日本をテーマにした企画展を4本計画している、その第一弾が本展です」と挨拶。「日本が工業化して大量生産が本格化した1930年代から60年代にスポットを当て、当時の家具や建築などに見られるモダンデザインに影響を与えた建築家やインテリアデザイナー、家具デザイナーの作品資料など約160点を展示しています」と概容を語られました。
 続くギャラリーツアーでは、大村理恵子学芸員が「モダンデザインとは?」に触れ、「大衆の生活をより豊かにするために量産していこうという時代になったとき、新しい美の概念が必要になり、欧州でこれをモダンデザインと呼ぶようになりました。その特徴は機能的で合理的、シンプルな造形を持つデザインです。各国に拡がって異文化交流し、それぞれの国に土着のデザインが生まれていきました」。

 本展では5章仕立てで、日本におけるモダンデザインの開花の過程が紐解かれます。(写真は特別な許可を得て撮影しております)
 
 第1章 ブルーノ・タウトと井上房一郎たち「ミラテス」を中心に
 ブルーノ・タウトはドイツから来日したドイツ人建築家で、京都桂離宮に出会い、日本建築の美を欧州に伝えた人物です。
Img_27511  上は、「ミラテス」という銀座にあった伝説の家具工芸店です。
 タウトは群馬県高崎で工芸の指導と執筆活動をしていて、その時に懇意になった井上房一郎が軽井沢と銀座に「ミラテス」をオープン、タウトのデザインによる生活用品などを扱ったといいます。ここではそうしたタウトの作品や「画帖―桂離宮」も展示されていて、印象的でした。 

Img_27621  上は、タウトが来日中に竣工した建築作品「旧日向別邸」、別名「熱海の家」のインテリアです。
 
 第2章 アントニン&ノエミ・レーモンド
 井上房一郎と親交のあったもう一組の建築家、アントニン&ノエミ・レーモンド夫妻の作品を紹介するコーナーです。アントニンはチェコ出身のアメリカ人建築家で、世界初のコンクリート打ちっ放しの住宅を実現、ノエミはフランス出身のインテリアデザイナーです。
Img_27711jpg  上は、赤星四郎別邸です。和風の要素を取り入れた上質な洋風建築は当時の人々を魅了したといいます。
 
第3章 剣持勇の「ジャパニーズ・モダン」
 タウトの助手を務め、「ジャパニーズ・モダン」を提唱したデザイナー、剣持勇のコーナーです。
Img_27871jpg  上の奥にあるのが、代表作ともいえる籐の丸椅子です。他に柏戸椅子なども出品されています。
 すべて釘など使わず木組みでつくられていることがわかります。
 剣持作品には確かに、素材を探求したり手触りに拘ったり、大胆なデザインと繊細なディテールが共存していて現代的です。

第4章 ジョージ・ナカシマと讃岐民具連
 日系二世のジョージ・ナカシマが作った家具が展示されています。
Img_27951  40年代からのものなのに、それが全然古臭くなく洗練されていてステキです!

第5章 イサム・ノグチの「萬來舎」とあかり
 言わずと知れたイサム・ノグチのあかりシリーズです。岐阜提灯の技術を応用して1950年代に制作されたといいます。
Img_28041   今ではごく普通にどこにでも見かけるこのあかりですが、イサム・ノグチは、単なる照明器具ではなく“光の彫刻”と考えていたそうです。だからこそバリエーション豊かに展開していくことになったのですね。
 (このコーナーは誰でも写真撮影できます。)
 
 本展を見て、1930年代から60年代は大量生産の時代だったとはいえ、必ずしも工業生産ばかりではなかったことが理解出来ました。手仕事による量産を考えたモノづくりがされていたのですね。一つひとつの作品には職人たちの未来への夢が込められているようでした。
 
 展覧会は3月22日までです。詳細はホームページhttps://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200111/ をご覧ください。

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2020年1月13日 (月)

杉原厚吉氏講演会 不可能立体最前線~脳の不条理な世界

  先般のAIITイノベーションデザインフォーラムで、明治大学の杉原厚吉研究特別教授が登壇、「不可能立体の最前線~脳が作り出す不条理な世界~」をテーマに講演されました。
 先生は、国際ベスト錯覚コンテスト(Best Illusion of the Year Contest)の常連ファイナリストで3回優勝、2回準優勝され、また現在、2月23日まで台湾の故宮博物院の特別展で作品が展示されている、不可能立体の第一人者です。
 まず“不可能立体”とは何か、ですが、これは絵を見たときなどのあり得ない立体の印象であり、そのような立体を表す“だまし絵”のことです。エッシャーの名画などに見る技法であり、ファッションデザインの表現にもよく使われます。
 この不可能立体をつくるトリックとして、次の3つ、①不連続のトリック : つながっているように見えるところにギャップを設ける。②曲面のトリック : 平面のように見えるところに曲面を使う。③非直角のトリック : 直角に見えるところに直角以外の角度を使う、があるといいます。
 次に紹介されたのが、あり得ない動きが見えてくる「不可能モーション立体」です。(ここから方程式による立体の探索が始まり、頭が混乱してきます----。) 人間の脳は、3組の平行線しか使われていないのに、面と面が直角に接続していると勝手に思ってしまうそう。脳が直角好きだからで、車を運転していて遭遇する“お化け坂”、つまり上り坂が下り坂に、また下り坂が上り坂に見える坂道錯視もその一つといいます。
 さらに変身立体という鏡に映すと姿が変わる立体について解説。これは二つの方向から見たとき、まったく別の形に見える立体で、本当に不思議!と思いました。
Img_16201jpg Img_16171  
 上の写真はそのとき先生がお持ちになられた実物見本の中の二つです。正面から見た立体は、鏡の中のものと全く異なる形をしています。
  P_20191120_203401_vhdr_on2_3 でもそれを横から見て、分かりました。
 右のように正面からは円筒形に見えたのが、実は角のある立方体だったのです。
 
 最後に、まとめとして不可能立体の背景には次の二つの性質があるといいます。①数理的性質 : 一枚の画像には奥行きの情報がない。②心理学的性質: 脳は直角を優先する傾向がある。確かに人は平行四辺形の立体を直方体と思って見ているようです。
 
 先生はこの錯視の考え方を、道路信号の位置や標識などに採り入れることで交通安全に役立てられるといいます。グラフィックデザインのポイントとして心に刻みたいと思いました。
 但し、なぜ人間は直角が好きなのか、その理由は謎のようです。

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2020年1月12日 (日)

クリエイティブの祭典“AnyTokyo 2019”⑵ 伝えるの未来

 先般開催された “AnyTokyo(エニートーキョー)2019”は、クリエイティブの祭典というように、予測できない未来を実験、そして発見するための斬新なアイデアがいっぱい。中でもオヤッと思ったのが、コミュニケーションに新たな価値を生み出そうとする動きでした。

 トークセッション「伝えるの未来」ではそうしたアーティストたちの活動に目を見張ったことが思い出されます。
Img_12681jpg    それは博報堂が発刊する雑誌「広告」の編集長でクリエイティブディレクター/プロダクトデザイナーの小野直紀さん(右)をモデレーターに、パネリストとしてインタープリターのmmm/サンマロさん(左)と、クラウドファンディング・MOTION GALLERY/POPcorn共同代表の大高健志さん(中)が参加して行われた座談会でした。
 コミュニケーションといえば主体は言語です。最近は翻訳もテクノロジーの進化で精度が上がり、国境の壁がなくなってきました。しかしこのディスカッションで気づかされたのは、言葉だけでない、ボディランゲージやビジュアルの重要性でした。

 とくに印象に残ったのは、mmm/サンマロさんです。手話を第一言語に育ち、インタープリター、つまり手話通訳家であるそう。盲聾の方に向けて触手話もやっていらっしゃるといいます。mが3つ並ぶお名前には、音波の波のイメージが込められているようです。
1_20200112091501  ここでは音楽家Kenta Tanakaと音で空間をデザインする展示を見せていました。ヘッドフォンを通して聞こえる音とそこに存在する空間,視覚での実像と聴覚での虚像の関わりを感じる実験行為です。文章で表現するのは何とも難しいのですが---。写真はAnyTokyoのHPからの引用です。
 
 さらにお話しは音の可能性へと展開し、音とは振動であること、その振動のバイブレーションが骨を通して音として伝わる「骨伝導」へ広がりました。今人気の骨伝導イヤホンから、話題は本展の目玉となっている「エコー(echo) プロジェクト」へ。これは以前から私がもっとも注目しているプロジェクトです。このウェアが“骨”を中心につくられていると伺って、納得しました。

 ところでこの「エコー(echo)プロジェクト」とは何か、簡単にご紹介しましょう。
 これはダイアログ・イン・ザ・ダーク檜山晃とライゾマティクスリサーチ、アンリアレイジが協働で取り組んでいる事業で、目の見えない方を支援しようと、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017での展示から始まったといいます。服には導電性繊維が用いられていて、信号を発し、距離を計測することで空間を認知し、その反応が振動として着ている人自身に返ってきます。服自体が発信し空間との距離を感じる「エコー(echo)」を通して、今までに感じたことのない空間の知覚方法を体験、思い巡らすという、感動的なプロジェクト!です。
Img_11881jpg  Img_11871jpg  
 この「エコーウェアecho wear」を制作したのがアンリアレイジのデザイナー、森永邦彦さん。和服は“骨”、洋服は“肉”で着るとの考え方を基に、和服をイメージしてシルエットをつくったといいます。さすが森永さんと、またしても敬服させられたことでした。
 
 この他、表現の伝え方、その理解の仕方など、楽しいトークが続き、何と茶道の茶室の提案も出てビックリ。暗闇で所作をする茶の湯では触覚が頼りです。見えない場所では感覚が研ぎ澄まされます。
 現代人はそうした直観力をもっと磨く必要があるのかもしれません。
 
 この先の「伝える」とは何か、改めて考えさせられたトークセッションでした。

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2020年1月11日 (土)

クリエイティブの祭典“AnyTokyo 2019” ⑴ 「着るの未来」

 クリエイティブの祭典といわれる“AnyTokyo(エニートーキョー)2019”が、昨年11月16日~24日、kudan house(東京・九段下)にて開催されました。
 2015年に国の重要文化財・増上寺(このブログ2015.11.30参照)で開かれて以来、4年ぶりの開催で、4回目となる今回は、会場が東京・九段下の九段ハウスkudan house(旧山口萬吉邸)でした。登録有形文化財として登録されている歴史的建造物で、2018年にリノベーションされて、日本庭園のある会員制ビジネスサロンとしてオープンしています。
 どんなところかしらとドキドキしながら門をくぐり受付をすませて入ってみると、玄関前には、巨大な蜘蛛のような“モンスター”が鎮座していました。
Img_12511jpg  これはアーティスト高島マキ子さんの「Hopeful monster」という作品です。女性が嫉妬から蜘蛛へと変身させられるギリシャ神話の生物に着想し制作したといいます。キメラ化された妖怪は現代女性の不条理・恐怖を考察し具象化したものとか。抑圧者から逃れようと長い足を時折動かして、少しの希望を求めてもがいている姿が、何か切なく見えました。
 
 大正ロマンの香り漂う洋館の内部では、高島さんのような各分野のイノベーターたち、25組の作品が、インスタレーションされていました。テーマは“Crazy Futures / かもしれない未来”で、プロダクトからファッション、インテリア、建築、ロボティクス、コミュニケーション… まで様々。いずれも暮らしにイノベーションを起こすこれからのデザインです。それらがジャンルの垣根を超えて集まり、お互いの創造力やイマジネーションを刺激し合っているように思われました。

 Img_12071_20200110120801 ファッション分野で、一つ、興味深かったのが右の「アルゴリズミック/キメラ」です。これはAIによる衣服の製造システムを提案するもので、手掛けたのはファッションとテクノロジーの融合を目指すSynfluxのメンバー、スペキュラティヴ・ファッションデザイナーの川崎和也さんと佐野虎太郎さん、デザインエンジニアの清水快さんと藤平祐輔さんです。
 このシステムなら、これまで大量に出ていた生地の廃棄部分を削減でき、環境面でもコスト面でも効果を発揮できると明言しています。生地もバクテリアを培養してつくった生分解素材を使用し、バイオロジカル・テーラーメイドを目指しているとのこと。次の“スパイバー”になれるか、期待されます。ファッションブランドの「ハトラ」も係わっているとのことで、驚きました。
Img_12091  アルゴリズミック・クチュールを衣服製造の新たなスタンダードにしていきたいというSynflux、今後が楽しみです。

 “AnyTokyo 2019”では、「着るの未来」と題したトークセッションも開かれました。
 WWD JAPAN.com編集長・村上要氏をモデレーターに、バイオアーティストの福原志保さん、それに上記「アルゴリズミック/キメラ」の作品制作に携わったスペキュラティヴ・ファッションデザイナーの川崎和也さんが、私たちの衣服、着る行為は、この先どのように変わっていくのか、語りました。Img_11831jpg
 過去100年ほどの間、衣服の形はそれほど大きく変わらず、ファッションシステムもあまり変化しなかった業界ですが、近年、激震が起こっています。情報技術の発達や深刻化する環境問題をはじめとした、ファッションに関わる倫理的な問題を提起する動きが活発になっているからです。
 こうした中で、川崎さんはサステナビリティの見地から、ファッションシステムの見直しと更新を訴えました。福原さんはテクノロジーを採り入れることでイノベーションを起こしている伝統工芸や職人の話をされていたことが印象に残りました。

Img_12441  右は福原さんが着用されていたリーバイスの「トラッカー ジャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル」です。袖のカフス部分に、ご自身も開発を担当した導電性繊維が埋め込まれていて、この部分に触れるとスマホを操作できようになっています。
 Img_12471jpg 右のサンローランのリュックサックのショルダーベルトにも、この導電性繊維が使われているとのことで、有力ブランドを中心にこのようなウエアラブルテクノロジーが広がっていることに驚かされました。

 目に見えないところでデジタルが活躍するエキサイティングな未来が増殖し始めています。「着るの未来」、どんどん楽しくなってきそうでワクワクします。

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2019年12月18日 (水)

「カルティエが魅せる職人技」展 カルティエの職人技体感

 この10月半ば、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で「カルティエが魅せる職人技」展が開催されていました。これは国立新美術館で開かれていた企画展「カルティエ、時の結晶」のクラフツマンシップを体験する期間限定のイベントでした。
Img_90341  会場には普段なら絶対に見ることのできないジュエリーや時計制作のための道具、カルティエのクリエイションの源となる石が展示されていて、その上、職人によるデモンストレーションも行われていました。 
 
Img_90291  上は、宝石彫刻師のフィリップ・二コラ氏です。
 宝石を彫刻する技術、グリプティックという歴史ある職人技をお持ちで、2008年に「メートルダール (フランス文化・通信省がフランス伝統工芸の最高技能者として認定する職人に与える称号) 」に認定されたといいます。
 そのユニークな技法を間近で拝見できるなんて、このような機会はもうめったにないです。ワァーっと女性たちに取り巻かれていました。

 またストローマルケトリの職人も来ていました。
Img_90361  ストローマルケトリとは、藁をナイフでカットしたものを着色し、貼り合わせ、平らな面に意匠を描く寄せ藁細工で、寄せ木細工のような感じのものです。カルティエはストローマルケトリを高級素材と組み合わせて、時計など傑出したピースをつくり出してきたのですね。
 
 希少なクリエイションの秘密の一端を垣間見たひと時でした。

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2019年12月16日 (月)

企画展「虫展」 トーク「虫好きの場所」でブレイクダンスも

 21_21 DESIGN SIGHTで11月4日まで開催されていた企画展「虫展」は、久しぶりに楽しかったです。
 トーク「虫好きの場所」にも参加しました。本展ディレクターでグラフィックデザイナーの佐藤 卓さんと女性漫画家で随筆家のヤマザキマリさん、ブレイクダンサーの小林真大さんの三人が虫の魅力と面白さを語り合い、すっかり引き込まれてしまいました。
 それにしてもあのヤマザキマリさんがそんなにも虫好きだったとは、ほんとうにビックリです。マンションではたくさんのカブト虫を飼っているそうです。身につけていたアクセサリーも虫を象ったモチーフ、グッチのバッグにもトンボや蝶があしらわれていました。
 小林さんは、何と蛾の愛好家で、現在、「蛾の宝庫」と言われるラオス在住です。現地ではヨーロッパと同じで、蝶も蛾も区別がないとか。確かにフランス語のパピヨン(papillon)は蝶だけではなく蛾も指します。しかも蛾の方が蝶より美しいそうです。小林さんの日常生活はいつも昆虫と一緒で、昆虫も普通に食すといいます。中でもスズメガはエビのような味わいでおいしいそうです。と言われてもとても食べる気にはなれない私ですが---。
 日本でも無印良品が来春に”コオロギせんべい”を発売するとか。2020年は昆虫食元年なんて言われているんですって。昆虫は今後大きなタンパク質源として期待されているといいます。
 中盤からはたくさんの興味深い虫の画像を見せていただきました。虫は本展の副題「デザインのお手本」であることを改めて学びました。昨日のこのブログに記したクモ糸ファイバーもそうですが、自然からインスピレーションを得て創り出されたデザインをバイオミミクリー(生体模倣)と呼んでいます。自然の形、プロセス、そして生態系を模倣することは、より持続可能なデザインを創造するためになくてはならないものになってきそうですね。

 最後に小林真大さんとお友達のラオス人のお二人が、ブレイクダンスを披露してくれました。蛾が舞うイメージを身体で表現され、激しい動きに目が点! ほんとうにすばらしかったです。

 展示会場には、20の作品と作品にまつわる「虫トピックス」が展示されていました。
Img_90661  中でも注目した作品をご紹介します。
 
極薄和紙の巣 隈 研吾×佐藤 淳
 空中を舞うかのように儚げなトビケラを優しく包み込む巣。世界で最も薄い和紙を、わずか3mmのヒノキとケヤキの骨組みで引き締めたモジュールできているそう。Img_90931  これはホント、美しかったです。
 
シロモンクロゾウムシの脚 佐藤 卓
Img_91131   エントランス付近に設置されていて、巨大さに驚きました。700倍に拡大したシロモンクロゾウムシの中脚ですって。
 
虫漢字のかんじ 向井 翠 Img_91011  虫がついている漢字がズラリと並んでいますがーーー、圧倒的に読めない漢字が多くて。でも指で押すと、内側に読み方が書いてあって、勉強になりました。
 
擬態化のデザイン 長谷川弘佳
 Img_91291jpg  コノハガの擬態を表現したもの。
  葉に見えます。

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2019年12月 8日 (日)

舘鼻則孝展 日本独特の文化を再定義 「アローズ」初公開

 東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催されている舘鼻則孝の個展を見てきました。
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 舘鼻則孝は、日本独特の文化を現代に再定義し、新しい視点による世界観を表現する現代美術家です。
 遊女が履いた高下駄から着想を得たという「ヒールレスシューズ」の作者として知られていますね。
 
 本展では日本独自の死生観「It’s always the others who die (死ぬのはいつも他の人)」をテーマに生まれたという作品「アローズ」が初公開されていました。
Img_17461jpg  上は、一本一本丁寧に手づくりした矢を225本使ったというインスタレーションで、すべて木でつくられているそう。
 
Img_17481  もちろんヒールレスシューズの新作も、稲光を記号化したような絵画を背景にたくさん出品されていました。
 右はレディー・ガガが履いて一躍、脚光を浴びたもの。

Img_17531 それにしてもシューズの高さにはびっくり! 高さが45cmもあるので、人が履くことは想定していないのでしょうが---。
 とはいえそのシンプルでスタイリッシュなデザインに魅せられます。

Img_17521 
 開催は22日まで。日本と西洋の不思議な融合が楽しめる展覧会です。

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2019年11月27日 (水)

「マドモアゼル プリヴェ」展 ガブリエル シャネルの世界

 先日、といっても10月末でしたが、天王洲アイルB&C HALLで開催されている「マドモアゼル プリヴェ(MADEMOISELLE PRIVE)」展を見てきました。「マドモアゼル プリヴェ」とは、パリのカンボン通り31番地にあるガブリエル シャネルのメゾンの入口に掲げられた言葉です。この言葉通り本展はシャネルのアトリエをテーマとした展覧会で、私もそのクリエイティブな世界を堪能した次第です。
 入場はラインを通じた日時指定制になっています。予約があっても行列させられ、それなりに待たされました。多くの人が投稿していますし、人気のほどがわかります。
 会場は2フロアで、5つのエリアを巡ります。用意されたQRコードを読み取り、解説を聴きながら回れる仕組みになっているのもいいですね。
 展示エリアは、ホワイト、ベージュ、黒、赤、ゴールドの色調別に分かれていて、一つひとつがアパルトマンの部屋のようなつくりになっています。「何があるのかしら」とお部屋を覗き見るといった感じになるのも興味深かったです。
 メゾンのエスプリを体現する美しいドレスは、1990年代以降のオートクチュールコレクションからのもので、今は亡きカール・ラガーフェルドのデザインです。ドレスに合わせて、フレグランスやジュエリーも展示されています。その各エリアをご紹介しましょう。
 
 まずホワイトのエリア「ミラード・ステアケース(鏡の階段)」です。マドモアゼル シャネルは階段の上段に座って、誰からも見られないようにして、ランウェイショーを見るのがお気に入りだったとか。
Img_04341_20191128122901  白はマドモアゼル シャネルが好んだ色の一つです。
 Img_04401 ベーシックカラーとして黒やシルバーと組み合わせるなどして美を表現したといいます。

  右は、バカラ社製クリスタルボトルの「シャネル N°5」とダイヤモンド ジュエリーの復刻版です。

 「シャネル N°5」は1921年に誕生した伝説的なフレグランスですね。その直線的でシンプルなデザインに、シャネルスタイルの真髄が表れているといつも思います。

 次がベージュのエリアで「ソファ」と名づけられています。シャネルは1930年代、アトリエのソファをサンドベージュのスウェードに張り替えたそうです。1913年にマドモアゼル シャネルがデザインした服もジャージーの自然な色合いを活かしたベージュでした。ベージュはシャネルにとって欠かせない色だったといいます。
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 その次はブラックのエリア「ダイニングルーム」です。シャネルが友人たちを招いたというダイニングルームには、漆塗りの中国風コロマンデル屏風が広がっていたといいます。
 黒はマドモアゼル シャネルの先見性とモダニティを最もよく表す色なのですね。エレガントでシンプルな黒いジャージードレス、「リトルブラックドレス」は、今やシャネルの固有名詞になっているほどです。Img_04471   この黒を取り上げたカール・ラガーフェルドのシリーズも見応えがありました。白いレースの付け襟やトリム、スパンコールなどがあしらった、カールらしい洗練されたドレスに注目です。
 
 さらに赤のエリア「ライティング デスク」です。赤といっても落ち着いた色調のレッドで、マドモアゼル シャネルのアパルトマンには書斎をはじめいたるところに採り入れられていたといいます。赤はガフリエルが愛した色だったのですね。
Img_04531  カール・ラガーフェルドも様々な色合いの赤のアイテムを発表し、ランウェイを印象的に見せていました。
 
 最後がバロックゴールドのエリア「ファイアプレイス(暖炉)」です。リビングの暖炉はゴールドに囲まれていて、火が絶えることなく炊かれていたといいます。
Img_04621  ゴールドはマドモアゼル シャネルの重要なインスピレーション源だったそうで、カール・ラガーフェルドもこれを受け継いでいます。コレクションではレースや刺繍、ツィードなどに煌めくゴールドを多用しているのです。その繊細・精緻な凝った生地や手仕事の装飾美に圧倒されました。

Img_04691jpg  壁面には多数のスケッチも架かっています。真ん中のキュービックな階段は、あのホワイトのエリアの項で記した「鏡の階段」ですね。

 見終わって、帰りがけに解説本とポーチをお土産にいただきました。入場無料なのにほんとうにうれしいサービス付き。別会場で見たムービーも必見のすばらしさでした。
 「ファッションは移り変わるけれど、スタイルは永遠」というマドモアゼル シャネルの名言を、カール・ラガーフェルドは見事に体得していたのですね。ムービーの中でカールが、「永遠のスタイルとは、"シャネルスタイル" と "ジーンズと "白いシャツ"」と述べていたのが印象的です。

 もう予約はとれないかもしれませんが---、開催は12月1日までです。

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2019年11月25日 (月)

静嘉堂文庫美術館 初の染織展!「名物裂と古渡り更紗」

 今、静嘉堂文庫美術館で「名物裂と古渡り更紗」展が開催されています。今月初め、この内覧会に行ってきました。
 これは静嘉堂文庫美術館所蔵の茶道具と煎茶道具に含まれる優れた染織品を紹介する展覧会で、同館初の染織展であるそう。
Img_05931  河野元昭館長は「これらの染織品は日本文化そのもの」といいます。(右は金襴のネクタイを着けた河野館長)
  抹茶の文化は日本では連綿と受け継がれて現代に至っていますが、中国にはもうないのですね。本展の主軸となっている茶道具を包み飾る布「仕覆 = 士服(しふく)」というものも今の中国にはありません。「名物裂」とは、この厳選された布のことで、そのほとんどは中国渡来の貴重な織物です。裁ち切って使用したことから、“裂地”と呼ばれているのです。
 ところで「仕覆」とは、茶の湯で使われている言葉で、比較的新しい語であるそう。語源は「季節の服」の意味の「時服(じふく)」で、昭和初期頃から「しふく」と呼称されるようになったとか。
 日本では仕覆のような中身よりも価値ある高価な包装で品物を大切に扱い保存する文化が培われてきたのです。こうした「包む文化」は西洋など他の国々には見られない日本独特の文化と改めて感じ入ったことでした。
 
 ここから展覧会の模様を簡単にご紹介します。写真はほんの一部です。(美術館より許可を得て撮影しました)
 エピローグから第二章までは「名物裂」の展示になっていて、大きく次の3つの種類があるといいます。「金襴(きんらん)」という金糸を贅沢に使ったもの、なめらかな繻子織りの「緞子(どんす)」、縞や格子、絣などの「間道」(かんどう)です。
 第三章からは先は「古渡り更紗」です。名物裂が絹の織物なのに対し、古渡り更紗は木綿の型や手染めのプリント生地で、17世紀頃に南蛮貿易により伝えられ、とくにオランダの東インド会社を通して日本に来たものが多いといいます。“紋づくし”など様々な愛称がつけられていて、武士は中でも“ぶどう”や“リス”のモチーフを好んだそう。また本場の「インド更紗」は日本でつくられた「和更紗」に比べ退色が少なく、洗っても色落ちしないとのことです。そこには明らかに技術の違いがあったようです。
 
 プロローグ~至宝を包む~
Img_06981  静嘉堂文庫美術館が誇る国宝の“曜変天目”の仕覆です。いずれも明時代(14~16世紀)のもので、左手前は牡丹唐草紋の金地金襴です。金がはがれていますが、元は地紋の入子菱が金色に輝いていたそう。その右奥のものは白地金襴で格調の高さを感じます。

 第一章~名物裂、古渡り更紗を愛でる~「唐物茶入<利休物相>」の次第から
Img_06281  千利休が所持していたという茶入れに合わせて誂えられたという丸い仕覆です。明時代初期の裂地で仕立てられているといいます。
 
 第二章~茶入・棗を包む~織りの美、「名物裂」の世界
 ここでは中国の宋末~明時代に日本にもたらされた「金襴」、「緞子」、「間道」から、その後の桃山~江戸時代、南蛮貿易やオランダとの貿易により輸入された名物裂まで、大切に仕立てられた仕覆が展示されています。
Img_06001g  真ん中に置かれている仕覆は元から明時代の鶏頭金襴(14~15世紀)。江戸時代、当時の金額で200両ぐらいだったのではないか、と言われているそうです。

Img_06441  左は古金襴の裏を表にして仕立てた貴重な作例の仕覆、右は清水裂、片身替わりの仕覆です
 
 第三章~茶銚・茶心壺を包む~染めの美、「古渡り更紗」の世界
 「更紗」はヒンディ語の「sarasa(最高級)」から来た言葉で、インドの高度な染織技術によって誕生した木綿布です。ヨーロッパだけではなく、アジア、日本にも輸出されて、日本人は大いに魅了されたといいます。Img_06031_20191127165501
Img_06581g  上はインドの絣更紗(16~17世紀)の仕覆。
 
   江戸時代中期に煎茶文化が日本にもたらされると、更紗は茶銚・茶心壺など煎茶の主要な道具の仕覆に採用されるようになり、道具を華やかに引き立てるものとなっていきます。
 また大判の布のまま敷物にも用いられて、茶席に“異国の風” を吹き込んだともいわれています。 
Img_06741  敷物となっている鮮烈な赤地の更紗は、19世紀ヨーロッパのもの。ローラープリントによるもので、長さ16mあるそう。ここまで長い更紗を保管しているのは珍しいといいます。
 
 美しいデザインと繊細な手の技を今日に伝える名物裂と古渡り更紗、その優品を堪能させていただいたひと時でした。
 本展は12月15日までです。詳細はHPhttp://www.seikado.or.jp/exhibition/index.htmlをチェックしてください。

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2019年10月25日 (金)

パリのブールデル美術館で「背中側のモード」展

 この9月のパリで、ファッションで話題の展覧会が開催されていました。それがモンパルナスのブールデル美術館で行われていた「背中側のモード」展です。
 ブールデル美術館は彫刻家アントワーヌ・ブールデルのアトリエだったところです。ブールデルの彫像とともに、有力デザイナーのドレスが展示されている光景は圧巻でした。
 ドレス作品は約100点あり、改装中のガリエラ美術館所蔵のものだそうです。道理で素晴らしい名品揃いでした。
 本展はタイトルのように「後ろ姿」がテーマです。背中の見せ方をデザイナーの作品と写真で紹介しています。
Img_69791  上はグランドホールの展示風景です。

Img_69771  このホールの最奥に一点設置されていたのが、ビジュアルにも使われているマルティーヌ・シットボンのドレス(1997-98秋冬コレクション)です。アシンメトリックなカットのシンプルなシルエットにハッとさせられます。肩甲骨をなだらかなカーブで美しく見せています。

Img_69861  手前はヨージ・ヤマモトのドレスとスカート(1996-97秋冬)です。これは前からですが、後ろ側も見事なカッティングでした。

Img_69891  右はバレンシアガのオートクチュールコレクションからイブニングドレス(1961-62秋冬)です。

 さすが、裁断の魔術師、本物はすばらしいです。
 背中を膨らませたドレープの美しさは、もう匠の技!


 
Img_70151  コム・デ・ギャルソンの有名なコブドレス(1997春夏)、「Body Meets Dress」の作品もブールデルの工房に静かに佇んでいました。隣にはブールデルの名作「瀕死のケンタウロス」があって、その首を不自然に傾けた造形と呼応しているようでした。
 理想の身体は人それぞれで、違っていいということでしょうか。
 
Img_70121  右の背中に鳥の翼を付けた造形もシュールです。
 これは作者不詳でした。
 
 この他、様々な背中に焦点を当てたモードがあり、紹介しきれません。

 メンズ作品も充実していて、一つひとつが興味深かったです。






 展覧会を見て、西洋人の背中の美しさに改めて感動しました。背筋がピシっとしていて姿勢のよい人がほんとうに多いのです。だから背中の意匠にもこだわるのでしょう。
 それにひきかえ、我が日本人には猫背が何と多いことか。日本人の約8割が猫背で、世界中の猫背の6割は日本人という統計も出ているそうです。
 骨格が異なるとはいえ、私も背中をきれいに見せたいですが---。それには背筋を鍛えなければなりません。歩くときも胸を張って肩を後へ引いて歩こうと思います。でももう手遅れかな。そんなことを思った「背中側のモード」展でした。

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