文化・芸術

2020年3月28日 (土)

未来と芸術展―人は明日どう生きるのか 最先端アート集結

 東京・六本木にある森美術館で開催されていた「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命―人は明日どう生きるのか」に行ってきました。そのときは開館していたのですが、先月末に新型ウイルス拡散防止のために休館となり、そのまま再開することなく会期は終了してしまいました。残念です。Img_70911g
 行って見て、近未来の世界への予行演習をみた思いがしました。テクノロジーの発達で、私たちの生活は今、急速に変化しています。アーティストたちは最先端技術を駆使して、これまで絵空事としか思われなかった社会の姿をリアルに表現していました。
 未来はさらに便利になって、ワクワクするような楽しいものになっていくのか、それとも私たちの手の届かないところにまで進んでしまって、逆に脅威を感じるようになるのか、未来の暮らしを改めて考えさせられたことでした。

 会場に入る前に、特設シアターに案内されました。そこでは何と「AI美空ひばり」の上映が行われていたのです。NHKが人工知能・AIを使って美空ひばりの“神秘の歌声”の再現に挑んだ映像作品で、昨年末の紅白にも登場したものでした。
 新曲「あれから」を歌う美空ひばりに、やはり違和感がありました。ひばりさんを知らない人たちに、このフェイク画像が植え付けられていくことになります。それはいいことなのか、どうなのでしょうか。昔からおなじみで鼻歌など歌っていた者としては、ちょっと気持ち悪かったです。

 展覧会は5つのセクション(章)で構成されていました。展示作品で気になったものをいくつかご紹介していきましょう。

第1章「都市の新たな可能性」
 新陳代謝しながら変わる都市のモデルとして、海上都市など、環境に配慮した都市のアイデアが提案されていました。
Img_70961  上は、高層建築に山水画のイメージを取り入れて設計した「山水都市リサーチ」。中国の建築家グループ「MADアーキテクツ」の作品で、尖ったビル表面の木目のような縞模様が目を惹きます。


Img_71051 空中に浮かぶ都市を単純化した模型で、パリを拠点に活動するXTUアーキテクツの「Xクラウドシティ」という作品。植物の浄化作用を活かしたプロジェクトとか。

第2章「ネオ・メタボリズム建築へ」
 新たな素材の開発や新工法の研究により、既存の「建築」がどのように更新されていくかを考えるコーナーです。

Img_71281  注目は、上の「ムカルナスの変異」というミハエル・ハンスマ イヤーの巨大な建築物です。
 Img_71301jpg 内部にはパイプがいっぱい垂れ下がっています。
 これはイスラムのムカルナス装飾をAIによりパイプで表現したものだそう。
 まるでパイプオルガンの中に入ったような空間でした。
 
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 右は、エコ・ロジック・スタジオによる建築の模型です。

 3Dプリンターで作成されたもので、蜂の巣のような繊細な曲線模様が美しい!

 ポイントはユーグレナ(ミドリムシ)という藻のような植物が光合成して酸素を生成すること。

 建築も環境にやさしく機能することを狙った新しいプロジェクトです。


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第3章「ライフスタイルとデザインの革新」
 衣食住という、私たちの生活により身近な作品やプロジェクトが並んでいます。
 まず「衣」では、バイオテクノロジー・アーティストのエイミー・カールの作品に目を奪われます。人体の血流など循環器系や神経系といった隠れた経路を表に出し、ファッションデザインとして表現したものだそう。ボディ内部のライトがシルエットを浮かび上がらせています。
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 左は靭帯と腱のドレス、真ん中は呼吸器系のドレス、神経系のユニセックスなジャンプスーツです。

 また中里唯馬のオートクチュールコレクションも展示されていました。3Dプリンターやレーザーカッターといったデジタルファブリケーションを駆使し、最新テクノロジーを服飾デザインに融合させています。
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 一番右は、2019/20秋冬ものとして発表された作品です。スパイバー社がバイオテクノロジーを使って開発した人工合成タンパク質素材が使われています。
 ファッションデザインの原理も、テクノロジーの進化とともに、このような現代とは異なるものになっていく、エイミー・カールと中里唯馬、二人の作品は、そうしたことを象徴しているようです。
 
 次に「住」では、クラレンベーク & ドロス「ヴェールの女性 III(「菌糸体プロジェクト」シリーズより」)の椅子が興味深い。
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 椅子の材料は3Dプリンターと、キノコのもとである菌糸を混ぜ込んでつくったものだそう。イスの表面にキノコが吹き出していて、装飾ともなっています。

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 ペットロボットたちも広場を動き回っていました。ソニーのアイボもいて「お手」をしてくれたり、可愛かったです。
 
 さらに「食」です。
Img_71731   タンパク質源不足に備えて、上はゴキブリを食すという、ギョッとするアイデアです。また組織培養された肉の料理なども提案されていました。
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 右は、電通が中心になってやっているオープン・ミール(OPEN MEALS)の スシ製造機です。
 甘味や辛みなど、食品の味をデータ化して、3Dプリンターで造形化するというもの。
 これによりどこでも同じものが食べられるようになるかもしれないといいます。
 宇宙ステーションの中でもおスシが食べられる時代がくる、そんなデータ化された食の方向を示す作品です。

 
第4章「身体の拡張と倫理」
 大きく「バイオ」と「ロボット」とに分けて問題提起が行われていました。
 まずはバイオテクノロジーの実験をするラボ「バイオ・アトリエ」から。
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 上は、話題を集めているヴァン・ゴッホの切り落とした左の耳です。ディムート・シュトレーペによるDNAによって再現するプロジェクト「シュガーベイブ」の作品。ゴッホの家系を辿って、その血縁の人物からDNAを組織培養してつくった耳で、限りなく遺伝子的に近いといいます。

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 アギ・ヘインズによる遺伝子デザインされた赤ん坊のモデル「変容」シリーズから、赤ちゃんの身体を改造した事例。ちょっと怖い作品です。 

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 遺伝子工学により、何でもつくれるようになる未来を暗示させる作品で、オーストラリアのパトリシア・ピッチニーニの「親族」と名づけられた彫刻です。オランウータンと人間の間にある動物の表現が、リアル過ぎて恐怖を覚えました。
 
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 上は、光輝く能衣装でアーティストのスプツニ子!と串野真也による「ANOTHER FARM」というインスタレーション。なぜ光るかというと、遺伝子組み換えされた蚕がつくる、光るシルクが用いられているからだそう。
 
 次にロボットです。「人とロボットとの対話」をテーマにした展示が中心でした。 
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 昨年お台場でのコンサートで、このロボットがオーケストラを指揮したそうです。人間の動きをシミュレーションしたら、どこまで人間らしくなるのかを追求したロボットのインスタレーションです。

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 上は、ダン・K・チェンの「終末医療ロボット」です。病人の腕をやさしく撫でてくれる「みとりロボット」で、超高齢社会の日本ではなくてはならないものになってきそうです。独りで死んでいく、そういうときにこういうパートナーがあったら慰められそうですね。すぐに登場して欲しいロボットです。
 
第5章「変容する社会と人間」
 テクノロジーが急速に進化する未来は決して明るいものだけではないようです。ここでは豊かさとは何か、人間とは何か、生命とは何かを考察する作品を体験します。
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 上は、「ズーム・パビリオン」と題したラファエル・ロサノ=ヘメル&クシュシトフ・ウディチコの体験型インスタレーションです。部屋に入ると自分の姿が写されていて、ギクッとします。監視カメラがあちらこちらに設置されているのです。誰かに行動を見張られている、そのことを否応なしに意識させられます。
 
 最後に、森美術館特別顧問の南條史生氏の言葉で締めくくります。「未来は私たちがつくるもので、我々が判断した結果の未来がもうすぐにやって来る。そのときに後悔しないためによく考えて行動しなければならない。今後大きく問われるのは環境問題とバイオテクノロジーの使い方やモラルの問題。人類が幸せに暮らせるために、どのような社会をカタチづくっていったらいいのか、それを今ここで考えていただきたい」。
 未来と芸術展、未来を示唆する様々な作品を通して、どのような未来を作っていくべきか、考えさせられた展覧会でした。

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2020年3月27日 (金)

「画家が見たこども展」“さあ、こどもに戻ろう。”内覧会

 東京・丸の内の三菱一号館美術館の「画家が見たこども展」“さあ、こどもに戻ろう。”の内覧会に、2月26日、参加してきました。
1_20200328163001  同館は今年10周年を迎えるそうです。本展はその記念展で、19世紀末パリの前衛芸術家グループ「ナビ派」の画家たちが追求したテーマの中から、「子ども」に焦点を当てて企画したといいます。フランス、ル・カネのボナール美術館の全面協力のもと、国内外の美術館および同館の所蔵品から、ゴッホやボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットンらが描いた「子ども」の油彩・版画・素描・挿絵本・写真等、約100点を展示していて、いろいろな意味で力が入っていることが分かります。

Img_70441  ギャラリートークは新型コロナウィルスの感染拡大の防止を配慮し、中止とのことでした。でも同館・高橋明也館長(左)から簡単な解説があり、「青い日記帳」主宰のTakこと中村剛士さん(右)のナビゲーションもあって概容を伺うことができました。
 
 それによると西欧では19世紀初め頃まで「子ども」は、“幼子キリスト”を別として、“半人前” で魂のない人と見られていたといいます。日本では浮世絵に子どもの絵があるのは自然なことですが、西洋画では子どもは長い間、脇役だったのですね。それが変わってきたのがロマン派の頃からで、その後ナビ派の画家たちは、子どもをテーマにたくさんの絵を描くようになったといいます。
   上、お二人の真ん中の絵は、モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルの「ブレのベルナールとロジェ」です。画家の二人の息子を主役に、子どもの純粋無垢さや幼いぎこちなさが感じられます。セーラー服姿も興味深かったです。
 Img_70321  ピエール・ボナールのリトグラフ「乳母たちの散歩、辻馬車の列」。
 日本の屏風絵のような装飾的な作品で、輪回しに興じる子どもが可愛いですね。
 
Img_70301  ピエール・ボナールのリトグラフ「並木道」。着飾った紳士、淑女と共に子どもも重要要素として描かれています。
 
  下は、フェリックス・ヴァロットンによる木版画「可愛い天使たち」の一コマ。
 Img_70421 描かれているのは警察に連行される貧しい男を追いかけるたくさんの子どもたちです。
 善悪を超えて、無邪気さゆえにときに残酷さを伴う子どもの本質を風刺した、おもしろい作品です。 
 Img_70351  アルフレド・ミュラーの油彩画「ピクニック」。
 
Img_70721jpg  ピエール・ボナールの油彩画「猫と子どもたち」。このような猫や犬が描かれるようになるのもこの時代からとか。

Img_70761_20200328162701  モーリス・ドニの油彩画「入浴するノノ」です。ドニは9人の子どもをもうけたそうで、「ノノ」は長女の「ノエル」のことだそう。たらいで沐浴するノノが宗教的で神聖なイメージで描かれているのも興味深いです。
  
  他にもいろいろ。なお画像は、主催者の特別の許可を得て撮影しています。なお展覧会は6月7日まで。詳細はHPhttps://mimt.jp/kodomo/をご覧ください。
  現在休館中ですが、一日も早い再開を願っています。

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2020年3月26日 (木)

銀座エルメス サンドラ・シント展「コズミック・ガーデン」

 先月、銀座メゾンエルメスフォーラムで開催されていたサンドラ・シント展「コズミック・ガーデン(宇宙の庭)」に行ってきました。サンドラ・シント(Sandra Cinto)はブラジルのサンパウロ在住のアーティストで、ドローイングにより空想と現実の間に漂う叙情的な風景や物語を紡ぎ出すアーティストといいます。
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  展示場は壁面いっぱいに様々なブルーに覆われていて、まさに「地球は青かった」の気分! 朝のさわやかな明るいブルーから真っ青な空のブルー、夜の闇のナイトブルーまで、移り変わるブルーのグラデーションが広がっていました。

Img_70141jpgImg_70211  ブルーには流れるような白い線描き模様―荒波に散るしぶき、波紋、漂うクラゲ、あるいは崩れた雪の結晶のようなモチーフが描かれていて、謎めいた神秘の世界に誘われます。これは宇宙に存在するかもしれない魔訶不思議なDNAを持つ生命体なのかもしれないなどと、流動する生命の表現のようにも思われ、想像がふくらみます。

 最後の夜の展示室には靴を脱いで入ります。クッションも置かれている、ちょっとした瞑想空間です。瞬く星空を楽しみながら、私も束の間リラックスしました。Img_70131  
 ブルー好きの私、これを見てますますブルーが大好きになりました。
 開催は5月10日までですが、ご多分にもれず、ここも新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、お休み中です。感染症封じ込めの方が大事ですので、残念ですが仕方ありません。

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2020年3月23日 (月)

「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識

  先般開催の「rooms 40」で、メディア環境学者の久保友香さんによる『「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』と題した講演会が行われました。
Img_69661  日本学術会議の公開シンポジウム(このブログ2016.7.27付け参照)の折り、久保さんの活動に興味を持った私。昨春、久保さんが出版された著書『「盛り」の誕生』も拝読しました。ここではその一部始終を簡単にまとめてみます。

412yqu7be9l_sx339_bo1204203200_  理系の研究者ながら日本文化に関心を持つようになり、日本文化を数字で解明しようと取り組んでいる久保さん。近年、とくに注目しているのが女の子の「盛り(大量に何かを付け加えること)」の文化だそう。カワイイギャルからヤマンバギャル、インスタ映え、最近では“消えそうな色コーデ”も「盛り」。この現象に共通するのは、盛っている女の子は皆そっくりに見えること。没個性と批判されたり、クリエイテイブとは正反対の扱いを受けることも多かったりするといいます。またもう一つ、「盛り」には実際の姿がどんなものかわからなくさせるところがあること。これについては自己肯定感が日本の女の子は他国に比べて低いのではないかと分析。ユニリーバの調査(2017年)によると、10代の少女たちの93%が自分の見た目に自信がないと答えているそうです。ちなみに他の国々は50%くらいとか。日本では自信のない女の子が圧倒的に多く、これが見た目を隠して盛ってしまうことと関連があるのではないか、とみられているようです。
 「盛り」を研究するようになった経緯については次のように語っています。きっかけとなったのはポップティーン2011年2月号の表紙写真と喜多川歌麿の浮世絵「寛政三美人」が似ていると思ったことから。「寛政三美人」は三人ともそっくりで、何かしら加工が施されているとみていて、源氏物語絵巻の女性も、大正時代の竹久夢二が描く女性もそっくり。こうしたことから日本には「盛る」文化が歴史に深く根付いているのではないかと推察できるといいます。
 この日本の美意識を解き明かそうと、思い立ったのが得意の数学を使って数値化する試み。最初に対象としたのが絵画の構図で、透視図法を基本とする西洋画に対し、あえて透視図法を採り入れない日本画のデフォルメ具合のデータ化にチャレンジしたといいます。
 次に「盛り」の歴史を大きく4期に分類して解説されました。目が盛られて大きくなっていくのが、2期と3期の間の1900年頃からだそう。というのも明治維新後、西洋から新しい化粧道具が入ってきて、それまで白い粉化粧で目を細くしていた女性たちは、アイシャドーやマスカラなどを使った黒化粧をするようになったのです。
 現代に目を移すと、デカ目の始まりはプリクラという「盛り」を自動化したマシーンの登場からで、プリクラはその後、日本の女の子のニーズに合わせて独自に変化していったといいます。
 その歴史を紐解くと、1995年、初登場したのがプリクラ「プリント倶楽部」で、画像処理はほとんどなかったそう。1998年に画像処理が入って来て、美肌・つや髪がもてはやされます。2003年頃から目の強調が始まり、目ぢから期となります。2007年には見るからにデカ目期となり、目はどんどん大きくなり、2011年にピークを迎えて、その後ナチュラル盛り期が到来。大きい彫りの深い目で、陰影でナチュラルにつくるようになったとか。
 さらに「女の子は何故盛るのか」です。これについてはたくさんの女の子たちにインタビューされ、得られた結論が「自分らしくあるため」だったとか。自分らしくとは、そっくりにつくる「盛り」とは真逆です。自分らしい「個性」という言葉にたどり着いたことが不可解に思えたといいます。しかし次第に、盛った目に一人一人の違う個性が見えてきたそうで、コミュニティの中でデカ目を守った上で表現する個性だったと気づかれたとか。そしてそれは日本文化の思想にある「守破離」という考え方に近いと指摘。型を守った上で個性を出す「盛り」は日本的と、改めて納得したと話されました。
 この間、アイメイクレコーダーや「盛り」専用の分析装置の開発に乗り出したそうですが、装置ができ上ったときにはデカ目ブームは終わっていたとか。盛りの計測ができきらない状態が続いているといいます。
 最後に「盛り」の語について、これは割合、最近の言葉であるそう。初めて使われたのは「ランズキ」2003年11月号のプリクラ特集の中でのこと。しかしその前からプリ帖では散見されていて、写真の自分を重要視したことから「盛る」が登場。プリクラがこの言葉を拡散していったといいます。その後2009年カメラ付き携帯で自撮りが盛んになると、つけまつげやカラコンが大流行。目は盛られて大きくなり、2014年頃にピークを迎えると、急速にデカ目ブームは終了。現在はアイメイクコミュニュケ―ションはスマホになり、インスタ映えするように、トータルでシーン全体を盛るようになっていると語られました。
 「盛り」は今もずっと続いています。人気の韓国風オルチャンメイクは「盛り」から来ていますし、日本ではもうやらなくなっている“原宿カワイイ”は世界中に広がっています。既にこの文中でも触れましたが、自分の容姿に自信がない女の子は日本では93%、世界でも50%いて、彼女たちの間ではつくられたビジュアルを評価し合う傾向が強まっているとか。「盛り」はこれからも拡大して、世界の女の子たちを取り込んでいくと思われる、と結論づけて講演を締め括りました。

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2020年2月26日 (水)

パリにも錯覚を楽しむイリュージョンミュージアム誕生

 パリにも目や脳の錯覚を楽しむイリュージョンミュージアムが昨年末、ポンピドゥセンターの近くに誕生したというので、行って来ました。
 館内は狭いこともあって、人がいっぱい。子どもを連れたファミリーがたくさん来ていてはしゃいでいました。なかなか盛況のようです。

  そこにはいろいろありました、おもしろい不可能モーション立体や 変身立体(下の写真)が--。Img_67661pg
 でもそれほど驚かなかったのは、明治大学で2015年まで錯覚美術館を運営されていた杉原厚吉研究特別教授のご講演(このブログの2020.1.13付け参照)を聴講していたからです。

Img_67791pg  でも、ほんとうに怖いと思った衝撃的体験は、「ヴォルテックスのトンネル」(上の写真)です。トンネルに入ると壁がぐるぐる回って、前に進みたくても進めないのです。バランスを失うとはこういうことか、と思いました。
Img_67971   それからもう一つ、テーブルの上のお皿から人間の頭が飛び出す「ボナペティ!」も、ぎょっ!と、一瞬震えました。

 Img_67781 他にも7色の影が現れるプロジェクション・マッピング(右)とか、マルチな顔を表現する万華鏡など、様々な不思議を体感。
 とくに「逆さまの部屋」など、インスタ映えを意識したスペースは若者たちに人気のようです。

 イリュージョンミュージアムは世界のあちらこちらに出現していて、日本でも一昨年、大阪に登場しているのですね。ローマ、アムステルダム、マドリッドなど、これからもどんどん増えていくとのことです。
 錯覚の研究をされている杉原先生が、交通標識などに利用される以上にエンターテインメント業界で大きな可能性がある、とおっしゃっていたことを改めて思い出していました。

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2020年2月25日 (火)

「アライアとバレンシアガ」展 響き合うフォルムの彫刻家

 パリのマレ地区にあるアズディン・アライアのギャラリーでは、「アライアとバレンシアガ」展が開催されていました。
 二人はともに“フォルムの彫刻家”と称される、パリモード界の巨匠です。その美しいボディラインを形づくる服が、まるで対話でもしているかのように対になって、響き合いながら、順路に沿って展示されています。

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 ディレクションを担当したのはオリビエ・サイヤール氏で、両者を比較しながら見ることができる構成は、さすが辣腕キュレーターの仕事と思いました。触ってはいけないとはいうものの、至近距離で細部まで鑑賞できますので、モードを学ぶ学生は必見といったところでしょう。
 展示作品は全部で56点ありました。(パンフレットにはその全ての写真が掲載されています。) そのいくつかをご紹介します。

Img_52131jpg 右:アライア(1988年秋冬クチュール コレクション) 黒のロング ビスチェ ドレス。
 左:バレンシアガ(1966年秋冬オートクチュール コレクション) 黒のシルク クロッケ、ストラップレス、ドレープのイブニングドレス。

Img_52651jpg  右:アライア(2012年秋冬コレクション) ネイビーブルーのウール ジャケット。
 左:バレンシアガ(1953年秋冬オートクチュール コレクション) オークル色のウールのコート、ファスナーなし、4つのフラップポケット付き。

Img_52701  右:アライア(2011年秋冬クチュール コレクション) バーガンディ色の穴開きベルベット ドレス。
 左:バレンシアガ(1968年春夏オートクチュール コレクション) 黒のギピュールレースのカクテルドレス。

 こうして見ると、スペイン出身のクリストバル・バレンシアガとチュニジア出身のアズディン・アライア、この二人の天才は密接な関係にあったように思われます。 
 最後のビデオ上映によると、プレタポルテが台頭した1968年、バレンシアガは突然クチュールメゾンを閉鎖。アトリエで長年働いていたマダム・ルネが、残された多くの布地やドレスを当時無名だったアズディン・アライアに自由に選ばせたのだそうです。
 バレンシアガの後を継いだジバンシーは、亡くなるまで二人の展覧会の実現を望んでいたとのことで、ようやく本展開催が叶った、ということのようです。
 
 二人の魂の共鳴を感じたすばらしい展覧会。開催は6月28日までです。パリに行ったらぜひ訪れてみてはいかがでしょう。

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2020年2月23日 (日)

パリのボン・マルシェで「雨のち花」のインスタレーション

 この2月、パリのボン・マルシェ百貨店では、「雨のち花 ame nochi hana」というインスタレーションが行われていました。これは「雨のち晴れ」にかけた言葉で、何ともポエティック!
Img_50491_20200224184401 Img_50771   吹き抜けの空間には、天井から無数の白い蕾型のオブジェがぶら下がっていて、音楽とともに、上昇しながら徐々に花開いていきます。その美しいこと、目を丸くして見つめてしまいます。花が上りつめると今度はまた蕾の形になって、雨粒のように降り落ちてくるのです。
 この情景を演出したのは、デザイナーで建築家、佐藤オオキ率いるnendoです。
 nendoによれば、年明けは白いリンネル製品(寝具)を販売する「mois du Blanc(白い月)」なので、白をモチーフにした展覧会を求められたそう。

 3階では、ステージが設えられていて、傘をさして人が歩いていました。
 Img_50621 よく見ると、床に映る傘の影の中に雨やら花やら不思議な映像が現れていて、ちょっと驚きます。
 これは誰でも参加できる「uncovered skies」と題された体験型イベントで、こういうのも楽しいですね。

 ボン・マルシェでは週末、ミュージック体験コーナー、MUSIC FOR ALL STUDIOもオープンしていました。曲をつくって演奏して録音する、そんなサービスのようです。
 改めて日本的な「おもてなし」精神を感じるデパートね、と思ったことでした。

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2020年2月22日 (土)

パリFLV「シャルロット・ペリアン展」日本との繋がりを想う

 パリに来て、目的の「プルミエールヴィジョン・パリ」まで少し日が空いていることから、美術館巡りをしました。

 最初に向かったのは、ブローニュの森にある美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン(FLV)」です。今、「Le Monde Nouveaud de Charlotte Perriand(シャルロット・ペリアンのニューワールド)」というシャルロット・ペリアン没後20周年の大回顧展が開催されているのです。
 シャルロット・ペリアンといっても日本ではあまりお馴染みではないようです。が、実は著名な建築家でありデザイナーです。私も以前、その個展を見たことがあって、日本との繋がりが深い、女性アーティストがフランスにいる、と思っていました。1940年に来日して輸出工芸指導の装飾美術顧問となり、ヨーロッパのモダンデザインを伝えたといいます。同時に日本の「民藝」の影響も強く受けたようで、木や竹など自然素材を用いた線構成の家具や意匠など、日本人の心をくすぐるような作品を数多く制作しているのです。
 
 本展では地下のギャラリーから上へ、ほぼ年代順に約400点が展示されていました。中でも私が興味を惹かれたのはギャラリー4で、1940年の「日本と再構築」のテーマを扱っていた展示室でした。 
Img_49031jpg_20200224164301  日本家屋の伝統的な畳の空間には、蚊帳を張った寝室が設えられていました。
Img_49071  その隣には名作の籐椅子や、茶室の炉を思わせる演出のほか、子どもの絵のようなデザインを拡大したタペストリーが架かっていました。作成したのは龍村美術織物だそうです。
Img_49171  上の御簾のような仕切りも龍村美術織物によるものです。
 Img_49431   ペリアンによる家具の代表作のひとつが「ニュアージュ・ブックシェルフ」です。桂離宮の違い棚からインスピレーションを得たものといいます。これはもういたるところに見られました。
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Img_49491  ペリアンが1927年に初めて門を叩いたル・コルビュジエの作品(上)や、一緒に働いたという画家、フェルナン・レジェの作品も数えきれないほどたくさん展示されていました。ピカソなど様々なアーティストの絵もあり、親しい交流があった様子がうかがえました。
 Img_49521jpg  イサム・ノグチの「アカリ」も出品されていました。

Img_49681  名作揃いの展示室を通り抜けて、最後に到達するのが「茶室」です。ペリアン96歳のときの作品で、パリのユネスコ庭園に造られたものだそう。傍らにイサム・ノグチの1979年作の彫刻が配置されていました。
 
Img_48971jpg  展覧会は室内だけではなく、外にもあり、それが「限りなく水に近い家」です。
Img_49751  この家は1930年に建てたものを再現した小さな木造家屋で、中に入ると人工の滝が借景となって迫ってきます。
 
 本展は当初の予想以上の反響があって、来場者が押し寄せているそうです。私も少しでしたが行列しました。
 今何故、ペリアンなのでしょうか?  そこには自然を尊重する姿勢や、レス・イズ・モアの精神、真に幸福な人間生活とは何なのか、といったメッセージが込められているからなのかもしれません。
 お見逃しなく、といってもこの24日までです。もうすぐ終了ですので残念なのですが---。

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2020年2月10日 (月)

ロンドンV&A美術館でホイッスラーの「孔雀の間」再構築展

  ロンドンで私が必ず訪れるのがヴィクトリア&アルバート(V&A)美術館です。今回は館内ポーターギャラリーで、ホイッスラーの「孔雀の間 (ピーコックルーム)」の再構築展が開催されていました。Img_35491
 この「孔雀の間 (ピーコックルーム)」の本物は、ワシントンのスミソニアンのフリーア美術館にあって門外不出ですね。以前私はこの部屋をスミソニアンで見たことがあります。
 「孔雀」と名付けられているように、孔雀のデザインに彩られ、壁面には天井まである飾り棚に東洋陶磁器が飾られていて、暖炉の上部にはホイッスラーの名作「陶磁器の国の姫君」が架かっている、当時のジャポニズムを象徴する装飾豊かな空間になっていました。その美しさに感嘆したことが思い出されます。
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  本展に見る「孔雀の間」は、アメリカ人画家でアーティストのダレン・ウォーターストンが「Filthy Lucre(フィルシールークル)=不正な利得」をテーマに、現代を皮肉った視点で再演出したものです。

Img_35511jpg   あの豪華なインテリアはすっかり古びて、あちらこちらが壊れて、ゆがんでいます。
  暗い室内は、不気味で、どこか不穏な雰囲気さえも漂っているようでした。

  現代の過剰な文明の崩壊を暗喩しているような、ちょっと怖い感じもする、でも興味深いインスタレーションです。
  開催は5月3日まで。ロンドンに行く機会がありましたら、ここは無料ですし立ち寄られてみてはいかがでしょう。

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2020年2月 9日 (日)

ロンドンで「ビアズリー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」展

 ロンドンのデザインミュージアムでは、昨日のこのブログに掲載した「火星移住」展と、もう一つ、「ビアズリー・デザイン・オブ・ザ・イヤー 2019」展も開催されていました。
 「ビアズリー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」は、保険会社のビアズリーグループがデザインミュージアムの協力により、優れたデザインに贈られる賞で、昨年で12年目を迎えたといいます。
 本展では、2019年の入賞作品76点が、建築、デジタル、ファッション、グラフィックス、製品、および輸送の6つのカテゴリー別に展示されていました。日本からのものは無かったのが残念でした。
 
 中でも興味深く思ったのがファッションのカテゴリーです。
Img_33581jpg  
Img_33511  右は、本展のポスターにも選ばれていたViktor&Rolfによるミーム風のドレスで、2019春夏オートクチュールコレクションで発表されたものです。
 ドレスにはSNSのキャプションに着想した「TRUST ME,  I AM A LIAR. (私を信じて、私は嘘をついている)」のフレーズがデザインされています。
 ジャーナリストが事実を確認せずに声明を載せることへの問題提起を、メッセージとして表現したもので、昨年大きな話題を呼びました。
 
 
Img_33481  右は、アディダスコレクションで韓国のデザイナー Ji Won Choiが手がけた作品です。
 とくにウィナーとして表彰されたフレッシュなストリートウェアです。
 
 アディダスのモノクロ三本線が大胆にデザインされています。
 
 チマチョゴリに代表される韓国の伝統衣装「韓服(ハンボク)」を思わせますね。

 
 
 
 製品のカテゴリーでは、ユニバーサルデザインのものが取り上げられていました。そのいくつかをご紹介します。
 Img_33801 上は、IKEAの「メガスイッチ(MEGA SWITCH)」です。電気スタンドのスイッチを大きくして押しやすくしたもので、身体障害者のQOL向上に貢献する「ThisAbles」プロジェクトの一つです。この補助器具は、イスラエルのNPO「Milbat」が設計し、3Dプリントデータ(STL形式)で提供されたものといいます。
 
Img_33851   世界初のハンズフリーのダブルポンプ搾乳器です。
 働く母親にとって赤ちゃんに母乳をあげるのは大変です。この搾乳器は赤ちゃんに母乳を与え続けるための最適な方法といいます。
 時間も節約でき、搾乳量も増やせて、さらに母乳の脂肪分の増加も見込めるそうです。
Img_33781jpg  上のような美しいバイオ・プラスティックも展示されていました。
 
 他にもデザインのアイデアが満載。見ておく価値ある展覧会でした。3月末までの開催です。

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