「裸であるか服を着ているか:ドラクロワと衣服」展
ウジェーヌ・ドラクロワは、19世紀ロマン主義を代表する画家であり、ボードレールが「ルネサンス最後の、そして近代絵画最初の巨匠」と称賛した存在です。ルーヴル美術館にあるドラクロワの「民衆を導く自由の女神」は名画としてあまりにも有名です。
この彼が生前最後に住んでいた、サンジェルマン・デプレにあるアパルトマンは現在、ドラクロワ美術館として一般向けに公開されています。
今夏、この美術館で「裸であるか服を着ているか:ドラクロワと衣服」という企画展が開催されていて、見に行ってきました。
展示は、ドラクロワがどのように人物を服で覆ったのか、あるいは裸のまま描いたのか、また、登場人物の衣装がどのようなものだったのかに焦点を当てており、大変興味深いものでした。
右はドラクロワの若き日の肖像画です。1825年頃に英国人の友人、タレス・フィールディングが描いたもので、首元には当時流行のスカーフ状のタイが飾られています。
架空のキャラクターと肖像画が並んで紹介されていたり、ある作品では頭からつま先まで服をまとった人物が描かれていたり、また別の作品では裸のままの人物が描かれていたり。服装の有無は非常に象徴的であり、これらの選択は描かれた主題に関する情報を豊かに提供するだけでなく、ドラクロワの描画スタイルやアプローチについても深い洞察を与えてくれます。
上は、ドラクロワの「バッカスと虎」1834年フレスコ画。
さらに、ドラクロワが描いた衣服そのものにも独特の象徴が込められています。作品には、布地の質感や色彩、細かなディテール、刺繍、模様などが丁寧に描かれており、袖や襟からは描かれた人物の時代背景やアイデンティティ、社会的地位をうかがい知ることができます。これらの衣装の描写は、ドラクロワがどのようなインスピレーションや参照元を用いて作品を制作したのかを理解する手がかりにもなっているのです。
ドラクロワの作品に込められた奥深い物語やその芸術的探究心を垣間見ることができた展覧会でした。
中庭には可憐な風露草のピンクの花が咲き乱れていました。街中とは思えない静かさで、風にそよぐ葉音だけが心地よく響いていました。
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