狩猟自然博物館 タマラ・コスチャノフスキー「世界の肉」展
パリのマレ地区にある狩猟自然博物館を初めて訪れました。そこで感じたのは、伝統的な狩猟にまつわる美術品や動物たちと現代アートが驚くほど調和していることでした。
開催されていたのは、アルゼンチン系アメリカ人アーティスト、タマラ・コスティアンノフスキーによるフランス初の大規模個展「La Chair du monde (世界の肉)」です。彼女は、ファストファッションや高級工芸で浪費された繊維や家族の遺品を素材に、肉体や植物を模した彫刻を制作し、記憶と自然のつながりを探求しています。
館内には彼女の作品約30点が常設展示と巧みに共存していました。
まず1階では、木の切り株を模した彫刻が目を引きました。よく見ると、シルクやコットン、ウールなど廃棄された布で構成された見事なアップサイクル・アートでした。
2階には、エキゾチックな鳥の死骸が天井から吊るされ、動物の屍が展示されていました。これらは、解体された肉体のように見え、存在の儚さを強烈に訴えかけています。
彼女はパンフレットで、「このシリーズは、植物に変わる死骸を表現しており、それらは鳥やエキゾチックな植物を宿すカプセルとなります。私の作品は変容という視点から構想されています。虐殺の場である死骸が、生命の根を張る場、つまりユートピア的な環境としての母体へと変わるというアイデアです」と語っています。確かに作品は一見、残酷に見えますが、それは生命の再生と変容を詩的に表現しているのです。
廃材を用いて、生命と死、美と残酷さを描くタマラ・コスティアンノフスキー。彼女は亡き人々の遺品を用い、詩情と不気味さが交錯するトロンプ・ルイユで劇場的なメメント・モリを創り出していました。この展覧会は、人間と自然の繋がりを改めて考えさせられる貴重な体験でした。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- トーク「身体とデザインエンジニアリング」未来の可能性探(2024.09.16)
- 企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」(2024.09.15)
- 「人間 ✕ 自然 ✕ 技術 = 未来展」未来の可能性を探る試み(2024.09.13)
- 「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」文化が交わるとき(2024.09.12)
- 「髙田賢三 夢をかける」大規模回顧展に思う(2024.09.10)
コメント