AW25/26PVパリ(25) 若年層エコファッション消費調査発表
今回のプルミエールヴィジョン(PV)パリでは35以上ものカンファレンス・プログラムが実施されました。中でも興味深かったのが、PVとIFM(Institut Francais de la Mode フランスモード学院)による「若年層の消費パターンとエコファッションとの関係」をテーマにした新しい消費者調査結果の発表です。
登壇したのはIFM経済観測所所長 ジルダ・ミンヴィエル氏で、エコファッションに対する若年層の認識、購買習慣、期待についての詳細な分析が報告されました。その概要をまとめてみました。
調査は、18歳から24歳、25歳から34歳の若年層の消費パターンとエコファッションとの関係に焦点を当てて行われ、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカの5カ国の代表的な消費者6,000人を対象に実施されたとのことです。
この結果、多くの若者が持続可能な慣行を採用し、環境や労働条件を尊重するブランドを好むことが明らかになったといいます。
2024年には、48.8%のフランス人が持続可能なファッションアイテムを購入しており、これは2023年の41.1%から増加しています。フランスでは、ほぼ2人に1人が持続可能なファッション製品を購入していることになります。またイタリアでは52.6%、ドイツでは51.4%の消費者が持続可能な衣服を購入しており、既に人口の半数以上がこのトレンドに従っています。
特に若い消費者は、エコフレンドリーな製品を購入する傾向が強く、フランスでは、18-24歳の58.9%、25-34歳の55.1%が持続可能なファッション製品を購入しています。ドイツでは、18-24歳の64.9%が年間を通じてエコ責任あるファッション製品を購入しており、これは一般人口の51.4%と比べて高い割合です。イギリスでも、18-24歳の65.7%がエコフレンドリーな製品を購入しており、一般人口の47.4%よりも高い数値を示しています。
持続可能なファッションは、長期的に消費者の購買習慣に影響を与えることになる、と指摘しました。
持続可能性を判断する最も重要な基準は素材選択
どの国でも、製品の持続可能性を判断する際に最も重要な基準となっているが素材選択です。たとえばイタリアでは、46.7%の人々が素材選択を持続可能なファッション業界の主要な要素と考えていますし、イギリスとアメリカでも、この基準を重視する割合は40%を超えています。
この要件は一般的なファッションアイテムを選ぶ際の基準にも反映されています。イタリア、ドイツ、アメリカでは、製品の品質が最も重要な基準とされており、消費者の約3分の1がこれを最優先事項としています。イタリアでは、その割合が37%に達しています。
さらに、好みのブランドを選ぶ際にも、素材選択が重要な基準となっています。イタリア(61.4%)、ドイツ(62.2%)、イギリス(60.6%)、アメリカ(67.1%)では、素材選択が最も重要な基準とされています。フランスでも、価格(54.7%)に次いで2番目に重要な基準が素材選択です。
若い消費者にとっての社会的および包括的(全ての人々を平等に受入れ尊重する)な側面
18歳から34歳の若年層にとって、製品の持続可能性を判断する際の優先事項は異なります。
フランスの18-24歳に対して、服を通じて促進したい価値を尋ねたところ、半数以上(52.4%)が倫理的かつ包括的な労働条件を促進するブランドを選ぶと答えました。これは、一般人口の26.3%や25-34歳の38.1%と比べて高い割合です。
購買を決定する際、社会的側面は若い消費者にとって重要な基準です。環境に悪影響を与えない高品質な素材や、リサイクル可能またはリサイクルされた素材の使用は、特にフランスの若い消費者の選択に大きな影響を与える可能性があります。
好みのブランドを選ぶ際、18-24歳の若いフランス人消費者の約30%が多様性と包括性を重要視しています。これは、一般のフランス人の14.8%に比べて高い割合です。
消費者が期待する透明性と良好な情報
若い消費者はエコ責任に対して高い期待を持っており、透明性と情報への要求もますます高まっています。
持続可能なファッションを購入しなかった理由として、アメリカでは34.5%、イギリスでは37.4%の人々が情報の欠如を挙げています。イタリアでは、その33.8%がどこでその製品を購入できるか分からないというのが主な理由とのこと。フランスでは、最も頻繁に挙げられている理由が価格で、41.3%の人々が価格が高すぎると答えているといいます。
フランスでは18-24歳の若者は、持続可能なファッションアイテムに対して支払う意欲が年長者よりも高く、ジーンズ、Tシャツ、スニーカーの持続可能な買い物バスケットに331ユーロを費やす用意があるといいますが、一般人口では208ユーロです。それでもなお、若い消費者にとって価格は依然として購入の障害となっています。この傾向は他の国も同様で、アメリカでは特に顕著です。
この結果から、若者は持続可能なファッションに対して高い意欲を持っているものの、実際にはその価格が購入のハードルとなっていることが、推察されます。
持続可能なファッションが高価格になってしまう問題、改めて考えさせられました。
| 固定リンク
「テキスタイル」カテゴリの記事
- AW25/26ミラノウニカ ⒁ 日本パビリオン(JOB) MUに勢い(2024.08.25)
- AW25/26ミラノウニカ ⒀ 日本パビリオン「JOB NEXT」(2024.08.24)
- AW25/26 ミラノウニカ ⑿ 日本パビリオン(JOB) 初出展企業(2024.08.23)
- AW25/26 ミラノウニカ⑾ 日本パビリオン(JOB) 広がる一歩(2024.08.22)
- AW25/26ミラノウニカ⑽ イノベーションエリアAIも焦点(2024.08.21)
コメント