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2024年8月

2024年8月31日 (土)

「レ・ブルーとイヴ・クラインの出会い」展 スポーツとアート

   パリ・オリンピック開催でスポーツムードが高まり、スポーツとアートの融合が注目を集める中、シャンゼリゼ通りのロンポワンにあるオークションハウス、アールキュリアル(ARTCURIAL)で、「レ・ブルーとイヴ・クラインの出会い」展が開かれていました。
 「レ・ブルー」はフランスのスポーツチームの愛称で、サッカーやラグビーの青いユニフォームからこう呼ばれるようになったといいます。
またブルーと言えばフランス人アーティスト、故イヴ・クラインの神秘的な青色「クラインブルー」が有名です。ここでは、イヴ・クラインのアーカイブの支援によって制作されたフランスのスポーツ選手たちの象徴的な品々が展示されていました。
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 あのサッカーのジネディーヌ・ジダンのジャージや、ブラヒム・アスロームのボクシンググローブ、トニー・エスタンゲのヘルメット、テディ・リナーの黒帯なども出品されていました。

 7月26日からはオークションに出されることになっていましたから、今はもう誰かの手に渡っていることでしょう。最低でも5,000ユーロが必要となるため、誰もが購入できるわけではありませんが、収益金は社会的排除と闘い、スポーツへのアクセスの不平等と闘い、困難な状況にあるスポーツ選手や女性を支援する「Le Sport a du Coeur」協会に寄付されるとのことです。
 このオークションは、アートとスポーツが一体となり、社会貢献へと繋がる意義深い機会を提供しました。人々の心を動かし、未来の可能性を広げる一助となることを期待しています。

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2024年8月30日 (金)

「モード、デザイン、ジュエリーの旅路」展 注目シルエット

 パリの装飾芸術美術館ではもう一つ、「 Parcours mode, design, bijoux (モード、デザイン、ジュエリーの旅路)」展が開催されていました。
 これは20世紀から現代に至るまでのファッション、クチュール、プレタポルテの傑作を紹介する特別展で、モダン&コンテンポラリーデザインに特化した常設ギャラリー、マルサン・パビリオンでの初の展覧会でした。
 実は私はチュイルリー公園側にある、このギャラリーを訪れたのは初めてで、5階から9階まで、フロアーごとに何があるのか、ワクワクしながら巡りました。展示されていたのは、30体のファッションシルエットと、約100点のクリエイタージュエリーです。その新たな視点での演出は大変興味深く、印象的でした。
 中でも注目したのが、次の4つのファッションシルエットです。

バルマンとアメリカ西部
 これはオリヴィエ・ルスタンがバルマンで初めて手がけた2012年春夏プレタポルテコレクションで発表した豪華なルックで、ピエール・バルマンが抱いていたアメリカ西部への憧れを思い起こさせるものといいます。ゴールドの刺繍糸やチューブ、ビーズ、ストラスがあしらわれたツイル素材のジャケットとショートビスチェドレスで構成されています。
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 このメタリックな美学は、イギリスのデザイナー、ロン・アラッドのデザインや、ジャン・デプレによるアールデコ調のジュエリーと対比させて展示されていました。

アンドレア・クルーズとアップサイクリング
 不要になった素材を再利用するアップサイクリングを代表するのが、アンドレア・クルーズのシルエットです。そのコレクションから選ばれた複数のピースを組み合わせ、廃棄衣料の切断、編み込み、裏返し、オーバープリントなど、さまざまなアップサイクリング手法を駆使してつくられています。
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 共に展示されていたのは、現代ジュエリーのヴェレナ・ジーバー=フックスやリサ・ウォーカーの作品です。

ステファン・ローランとブラジル
 本展を代表するビジュアルに使われているのがこのドレスです。2023年にクチュリエのステファン・ローランが制作したドレスで、ショーのフィナーレを飾ったものとか。輝かしいゴールドのドレスはブラジルの守護聖人であるアパレシーダの聖母にインスパイアされたもの、金糸の布地は、映画『黒いオルフェ』に登場するオルフェウスとエウリディケのカーニバル衣装を思わせ、また、アマゾン文化のマラジョアラ様式に影響を受けた装飾は、オスカー・ニーマイヤーの作品にも通じるものといいます。
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 カンパーナ兄弟の家具と並んで展示されて、ラテンアメリカのバロック様式と神聖さを見事に表現しています。印象に残るドレスでした。

イッセイ・ミヤケとアート
 日本人デザイナーでは、イッセイ・ミヤケの作品が目を引いていました。これは彼が1996年のフィレンツェ・ビエンナーレ「アートとモード」で発表したドレスです。プリントデザインは、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの『泉』を題材にした日本人アーティスト森村泰昌の写真をプリントしたものです。
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 絵画の表現、衣服としての実体、そしてそれを着る身体が一つの生きたシルエットに融合し、複雑な女性像を形作っています。イッセイ・ミヤケの「私のすべての探求は、常に動きと衣服による自由に焦点を当ててきました。着る人が最終的な形を与えるのです」の名言が胸に響きました。

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2024年8月29日 (木)

パリ 装飾芸術美術館「デパートの誕生。ファッション、デザイン、玩具、広告。1852-1925」展

   パリに行ったら必ず立ち寄る美術館が装飾芸術美術館です。今回も何をやっているのか、見てきました。
 開催されていたのは、19世紀半ばに登場した百貨店の誕生をテーマにした展覧会、「デパートの誕生。ファッション、デザイン、玩具、広告。1852-1925」展でした。
 ボン・マルシェやギャルリー・ラファイエットなどの百貨店が、歴史、社会、政治を通じてどのように発展し、モダニティと消費社会の象徴となったかを紹介。700点を超えるポスターや衣料品、玩具などを展示し、パリの商業の進展を描き出し、消費社会の到来を予見する内容で、興味深かったです。

買い物をすること、それはブルジョワの娯楽
 1850年代、ナポレオン3世の構造改革と経済政策により、パリは近代化し、百貨店が登場します。オスマンの都市改造と鉄道発展がこれを後押しし、ブルジョワ階級の台頭に伴い「買い物」は新たな娯楽となったのです。百貨店は大量文化と余暇の近代性を象徴し、エミール・ゾラは『女の幸せ』で「女性の王国」として百貨店を描いています。
 Img_99311  この時代のポスターが多数、展示されていました。

百貨店:商業の革命
 エミール・ゾラは、パリ初の百貨店「ボン・マルシェ」の創設者アリスティッド・ブシコからインスピレーションを得て、近代商業の基盤を築いた革新を描いています。ブシコはファッションの大衆化や通信販売などを導入し、百貨店は情熱を注ぐ場所となったのです。
 この展覧会には経営者と従業員に焦点を当てた部屋もあり、販売員や部門長の職業に関する資料が展示されていました。百貨店が「美しさの向こう側」を見せる場所として描かれている、ゾラの調査ノートもありました。

ファッションの大衆化:パリジェンヌの姿
 19世紀はパリジェンヌの時代で、百貨店は彼女たちを魅了し、商品に触れ、試す機会を提供していたのですね。アンリ・ティリエのポスターは、展示会での商品に触れる感覚を描いています。百貨店は原価削減により他店を圧倒する価格を実現し、多くの人々がエリート専用の商品を手に入れられるようになりました。

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 衣料品の生産も機械化され、合理化が進み、ルーヴル百貨店はオートクチュールやデザイナー作品を取り入れ、ファッションに大きな影響を与えていたことが分かります。

セールと展示会の発明
 百貨店は、季節ごとの展示会「セール」を導入し、白い衣類や夏の衣装などを販売することで、閑散期を減少させます。セールの日程は広告で顧客に伝えられ、イラストレーターによるポスターがプロモーションに貢献しました。

Img_99551  セールで販売された手袋や帽子などのファッションアクセサリーが展示され、当時の商品の豊富さが偲ばれました。

子供、 新たなターゲット
 19世紀、家族内での子供の重要性が高まり、いよいよ子供向け売り場が登場します。衣服は大人と区別され、玩具も視覚的遊びや職業の模倣が提案されています。1910年のマリン服やミニチュアのシンガー製ミシンも見られました。
 Img_99611_20240825132801  高品質で精巧な玩具が展示されていて、印象深かったです。

通信販売の導入
 ボン・マルシェは増加する在庫処分のため通信販売を導入し、イラスト付きカタログで国内外の顧客を広げたといいます。カタログは季節ごとに発行され、家庭用品や装飾品などの品目が増加、ブルジョワ階級のライフスタイルや好みの変化を反映していました。

アートワークショップ
 1912年にプランタンが設立した「プリマヴェーラ」アトリエは、最新美学に敏感な若いアーティストを雇用し、アートワークショップの先駆けだったとか。
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 その絶頂を象徴するイベントが、1925年の国際装飾芸術および近代工業芸術博覧会で、各百貨店は、自社の最高の創作物、家具、陶器、テキスタイル、ガラス、装飾品を宣伝するためのパビリオンを持って、最高の創作物を宣伝したといいます。

  既製服の成立と二人三脚で発展してきた百貨店の物語。会期は10月13日までです。

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2024年8月28日 (水)

エヴァ・ジョスパン個展 段ボール製の精緻な彫刻に驚嘆!

 パリのマレ地区にあるギャラリーCONTINUAで、造形作家エヴァ・ジョスパン(Eva Jospin)の個展が開催されていました。彼女の作品に触れ、その細やかで精緻な彫刻に驚嘆しました。

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 使用されている素材はすべて段ボールです。展示されていたのは、壮大な廃墟や樹木が密集する森、暗く神秘的な洞窟を連想させるインスタレーションで、まるで古代神話の世界へとタイムスリップしたかのような感覚を覚えました。

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 エヴァ・ジョスパンは1975年にパリで生まれ、パリ国立美術学校を卒業後、さまざまなメディアを通じて森や建築をテーマにした緻密で大規模なインスタレーション、彫刻、ドローイングを展開してきたアーティストです。
 ファッション界でも活動しており、特に印象的だったのは、クリスチャン・ディオールの2023年春夏コレクションの舞台装飾を手掛けたことです。この事実を知り、彼女の才能に改めて感銘を受けました。

 夢のような現実を垣間見ることができた素晴らしい展覧会でした。

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2024年8月27日 (火)

川久保玲「ドーバー ストリート マーケット パリ」を訪れて

 パリのマレ地区のフラン・ブルジョア通りに、5月にオープンした「コム デ ギャルソン」の旗艦店、「ドーバー ストリート マーケット パリ」を訪れました。ストアは、17世紀に建てられたタウンハウスの1階、2階、地下で、1,100平方メートルの広さです。川久保 玲がデザインした空間は、曲線の壁で仕切られた “白い迷宮”のよう、そこに約150ブランドが入っているといいます。
 「コム デ ギャルソン」を始め、傘下の「ジュンヤ ワタナベ」や「ノワール ケイ ニノミヤ」、それに「アンダーカバー」、「サカイ」、またラグジュアリーメゾンの「バレンシアガ」や「ボッテガ・ヴェネタ)」、「プラダ」、「ミュウミュウ」、さらに若手の「セッチュウ」などが混在しています。

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 ストアのファサードにも驚かされました。そこにはフォトグラファー、パオロ・ロヴェルシのヴィジュアルがズラリと立ち並んでいたのです。
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 ロヴェルシと言えば、世界を代表するファッションデザイナーたち、特にコム デ ギャルソンの川久保玲や山本耀司、ロメオ・ジリとのコラボレーションで知られています。この春、ガリエラ美術館では彼の個展が開催されており、その一部をここで見ることができたのです。何てラッキーでしょう!と感じました。
 その展示は、幻想的で時に神秘的な美の世界が広がり、まるで女性の深層を映し出しているかのようでした。

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2024年8月26日 (月)

リュクサンブール美術館「マッチ、デザイン、スポーツ」展

   7月初めのパリは、パリ・オリンピックに間近い時期で、街にはオリンピックの幟旗が立ち並び、美術館ではスポーツをテーマにした企画展が多々開催されていました。Img_98021_20240823140301
 その一つが、リュクサンブール美術館で行われていた「マッチ、デザイン、スポーツ」展です。「マッチ (MATCH)」は「試合」「競技」のことで、展覧会はスポーツとデザインのつながりに注目し、その舞台裏を紹介するというものでした。

Img_98041  上は「近代オリンピックの父」と呼ばれるクーベルタン男爵が、厚紙にグラファイトとグアッシュで描いたという五輪のデッサンです。

 まずは過去の革新的な技術を振り返り、スポーツ選手や女性、そして用具を改良した偉大な発明家たちにスポットが当てられます。ラケットやボール、防具など、また衣服や乗り物、用具など、今日に至るまでの発明と変貌を探ります。
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 最も速く、最も正確で、最も強い選手になってメダルを獲得するためには、多くのトレーニングに加えて最先端の設備も必要とあって、デザイナーたちも努力を重ね、スポーツの世界を向上させ続けてきた、そんな歴史を伝えるインスタレーションが続きます。

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 また、スポーツの実践に欠かせない、カメラや審判システム、トレーニングマシン、健康モニタリングマシンの展示も見られました。アスリートのあらゆる動きが、新しいテクノロジーのおかげで見ることができるようになり、研究、分析されていることが分かります。

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 さらに障害者アスリートの存在もクローズアップされていました。彼らが使用する用具は、デザインや技術の革新がスポーツの概念を一新したことを証明しているようです。今ではアスリートすべてが、その身体的なコンディションに関わらず、自分の身体の延長として、この先進的な器具の恩恵を享受することができるようになっています。時代の進化を大いに喜びたいと思いました。

 スポーツはまさに時代の先導者です。そんなデザインの展覧会でした。

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2024年8月25日 (日)

AW25/26ミラノウニカ ⒁ 日本パビリオン(JOB) MUに勢い

 今回はミラノウニカ(MU)に勢いを感じて、日本パビリオン(JOB)に出展した企業が多く見られたのが、印象的でした。

尾州ウール・コレクション BISHU WOOL COLLECTION
 10回目の参加となる今回は、ハイエンド向けウールの国島(株)とウールと合繊織物、ニット素材のトップメーカーである中伝毛織(株)、それにチーム岐阜からファンシーツイードが主力の岩田健毛織(株)と毛織物や麻、綿の生地を常時ストックしているファインテキスタイル(株)が出展。Img_23911  上は、ファインテクスタイルのカラフルなハンガーです。

 欧米有力メゾン数社が来場するなど、来場数は昨年7月展と比べ増えて、尾州ブランドの認知度向上の成果が見られたといいます。

(株)ファーベストFIRBEST/長谷虎紡績(株)HASETORA SPINNING
 3回目の出展で、遠赤外線機能繊維「光電子」の認知度が向上してきた様子です。
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 「光電子」を使用したインサレーションや人工タンパク質繊維「スパイバー」、セルヴィッチなどデニムコレクションが引き続き好評とのことでした。

小松マテーレ(株)KOMATSU MATERE
 JOBへの出展はコロナ禍前にグループ参加して以来で、単独出展は今回が初めてとか。来場客は予想より少ないものの、独自開発の合繊織物及びニットの製品染用素材に好反響が得られているといいます。

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 ブースでは欧州トップクラスの製品染色メーカーであるティントリア・エミリアーナ(伊)と協業した製品サンプルを多数展示。ヴィンテージ調の風合いが特徴であることに加え、必要な分だけを生産するという環境に配慮した点も強調されていました。

川越政(株)KAWAGOSHIMASA
 幅広いストックサービスの商品群に加え、サステナブル素材やピスポーク素材の小ロット製作にも対応可能。また商社を介さないため、低価格かつ迅速な対応を実現しているといいます。

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 特に、チェック柄のシャツ地やミックス調ウール/リネン混の素材など、日本ならではの品質が高く評価されているとのこと。

フジサキテキスタイル(株)FUJISAKI TEXTILE
 カットソーやボーダー、プリントなどサステナブルな製品を幅広く取り揃え、全体に好調の様子でした。

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双日ファッション(株) SOJITZ FASHION
 常時 1,600 種類以上のオリジナル商品と 20,000 色以上の色展開で生地仕入れのソリューションを提供しているという同社です。
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 今回もコットンの代表選手を揃えたブランド、VANCETの無地や先染め、SEVENBERRYのプリントが好調で、前回2月展よりバイヤーの動きは良いといいます。

<プルミエールヴィジョン・パリにも出展した企業>

(株)サンウェル SUNWELL
 例年通り、客の入りは良く、プルミエールヴィジョン・パリもミラノウニカも数は同じくらい。ただしパリは客層がワールドワイドなのに対し、ミラノはイタリア中心にフランスなどが多いといいます。

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 日本の職人技によるトレンド素材を豊富に揃えています。入り口手前のハンガーには備後産地の武道用インディ染めの厚地コットン生地を並べ、意外に好評とのことでした。

瀧定名古屋(株)TAKISADA-NAGOYA
 客層は6~7割がメンズ関係で、逆にプルミエールヴィジョン・パリはレディス関連が6割超えだそう。両者の客質の違いがわかります。
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 ウール混ドレス・スーツ地で、とくにスパイバー使いのものが高く評価され、カシミアと変わらぬ高価格でも求める客が多いといいます。

(株)エイガールズ A-GIRL’S
 メゾン系やアメリカからの来客が多いとのこと。ハイゲージジャージーやパイルを中心に、シルク100%のファーやカシミアの裏毛が人気。
 Img_24071  またスパイバーが好評で、綿混やテンセル混など、認知度の高まりを感じるといいます。

スタイレム瀧定大阪(株) STYLEM TAKISADA-OSAKA
 オーガニック綿、リサイクルナイロン、FSC アセテートと、GRS/RCS/GOTS/OCS/RWS によって認証されたサプライヤーであることを訴求。
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 今シーズンは、上のヴィンテージ・デニム風のプリントや、透けるほど薄いポリエステル100%段ボールニットが人気だそう。

柴屋(株)SHIBAYA
 日本の技術でしか出せない風合いを生かした、他にはない「SHIBAYA オリジナル」をアピールしていました。Img_24251_20240817103201
宇仁繊維(株)UNI TEXTILE
 35,000 種類の日本産のオリジナルの生地をラインナップし、短サイクル、小ロットで提供する人気の生地メーカーです。
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 ブースでは赤に焦点を当てて展示が目立っていました。人気は引き続きダブルラッシェル・メッシュといいます。

デビス(株)DEBS CORPORATION
 オリジナル糸を使用し、丁寧な工程を経て、シルクを超える風合いの薄地素材を提供しているという同社です。
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 今季もクラシカルな素材にスポーツで要求される機能加工を施し、ファッショナブルかつスポーティな新しいスタイルに対応する生地を多数提案し、人気を博していました。

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2024年8月24日 (土)

AW25/26ミラノウニカ ⒀ 日本パビリオン「JOB NEXT」

 今回の日本パビリオン(JOB)では、新たな取り組みとして、ジェトロによる支援プログラム「JOB NEXT by JETRO」が組まれていました。対象はJOB に初参加、または出展履歴 3 回未満の中小企業です。5 社が参加し、内新規出展は3社で、輸出にチャレンジしていました。

桜井商店 SAKURAI LACE
 桐生市で、栃木県佐野市の自社工場にラッセルレース機9台とエンブロイダリーレース機4台を設備するレースメーカーです。桐生プロモーションショーにも毎回出展している私にとってもお馴染みの会社でした。
 独創的な商品開発力を強みに、JOBに初出展して、日本製レースの知名度向上を目指すといいます。

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 工場内の不要な残糸を使用して作られたツイード調レースや、ニードルパンチとの組み合わせ、リサイクルポリエステルを使用したジャカードレースなどを提案。環境に配慮した製品開発を進めていることをアピールしていました。

キュアラボ(株) Curelabo
 環境負荷を抑えるため、廃棄植物残渣から繊維を開発している沖縄発の企業です。ここではサトウキビを搾った後に残る繊維質の副産物、「バガス」のアップサイクルを中心に紹介していました。
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 天然藍染めコットンとバガスをアップサイクルした紙糸を使用したデニム生地や、ウールのスーパー100sとバガス紙糸を組み合わせたギャバジン、オーガニックコットンとネップ糸・バガス紙糸を用いたシャンブレー生地など、化学薬品を使用しない染色も特徴で、バイヤーの目を釘付けにしていました。

(株)アイリス IRIS
 ボタンメーカーの同社は欧州市場での新規顧客開拓を目指し、初出展。
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 日本の養殖ブリの皮を原料とした「フィッシュレザー fish leather」のボタンやバックル、南米エクアドル産のタグワヤシの実を原料にした「NATURIS」を提案。また「BIOMASS BUTTON」は廃棄される米ぬかやバガスを含有したプラスチックボタンで、エコテックス認証を取得しています。トレーサビリティについても強調していました。

(株)シャンブレー CHAMBRAY
 東京・日本橋を拠点とする先染めメーカーで、前シーズンに続く、2回目の出展です。アメリカ綿でヴィンテージの名品を復刻するTHE STATES MADE®や、リサイクルポリエステル使いのREFABRISH®、GOTS認証取得のオーガニックコットン100%のトップ糸にOrgamixを提案。パッチワークなど込み入った先染めや、コーデュロイも好評といいます。

(株)パノコトレーディング Panoco Trading
 オーガニックコットン100%の原糸を使用したコレクションを展開している同社も、出展2回目です。裏毛のファータイプや、フワフワ、ポコポコしたコットンとウールのラグジュアリーなテキスタイルに注目が集まっていました。

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2024年8月23日 (金)

AW25/26 ミラノウニカ ⑿ 日本パビリオン(JOB) 初出展企業

 今回のミラノウニカ(MU)の日本パビリオン (JOB)に初出展したのは全41社のうちの13社でした。まずは気になった、そのいくつかをご紹介します。

(株)ショーイチ SHOICHI
 大阪市に拠点を置くアパレル在庫処分サービス企業、(株)ショーイチが今回初めて出展しました。2025年からEUで売れ残り衣料品の廃棄が禁止される法令が施行されることを背景に、同社はアップサイクルやリサイクル事業の発信を目指しています。
 Img_23881_20240816150601  主力製品はリサイクルウール糸や生地で、初日からバイヤーたちの好感触を得られ、欧州でも認知度が高まっているようです。

ユメテックス(株)YUMETEX
 同社は、京都から日本各地の産地と連携し、独自の加工技術で新たな生地を開発しています。今回、欧州市場を開拓すべくJOBに出展したといいます。
 Img_24311_20240816150401  出品作は軽く透明感がありながら暖かさを持つフロッキー加工のポリエステルや、豪華さと柔らかさを兼ね備えたニードルパンチ加工のレース生地、織り技術で手作り感を演出した先染め生地など、トレンドエリアでも目立っていました。

(株)ブラック BVLAK
 LVMHや KERINGが展開するラグジュアリーブランドや国内外の高級ブランド向けに最先端の生地を企画・製造・輸出するスタートアップ企業です。大手商社の豊島のブース内に初出展し、新たな顧客開拓を目指していました。
  Img_24851_20240816150801  ナイロンとウールを組み合わせた裏毛生地、透け感のあるテレコ生地、表面に凹凸感を持つカットソー素材などを提案、ハイファッションに新たな可能性を提供するといいます。

タキヒョー(株)TAKIHYO
   今期はプルミエールヴィジョンパリからMUを優先し、JOBに初出展。アメリカなど有力バイヤーが想定以上に多く商談に力が入っている様子でした。
 Img_25391_20240816150901  18世紀の英式紡績機を使用した独自の梳毛紡績によるオリジナル生地を提案。細繊度のプレミアムシェットランドヘリンボンは空気を含んだ柔らかな仕上がりです。またシルクノイルワタを加え、ネップ調の糸で鮮やかな色合いを実現したウール/シルクサージや、シープ加工でボリューム感を持たせたシェットランドパイルなど。RWSやGOTSなど、サステナブル認証も取得しているとのことです。

(株)チクマ CHIKUMA
 イタリアに代理店を持つ同社です。今期はプルミエールヴィジョンパリからMUへ乗り替えて、JOBに初出展しました。強みはサステナブル対応とアウター生地です。
  Img_24151_20240816150701   リサイクルナイロン100%の高級感ある撥水サテン、リサイクルポリエステルの3重織りツイル、ヴィンテージ感を持たせたリサイクルコットン・ナイロン混紡生地などを紹介し、好評の様子でした。

帝人フロンティア(株)TEIJIN FRONTIER
  同社も今期、プルミエールヴィジョンパリからMUへの乗り替え組です。商社のコンバーティング力と繊維メーカーの素材開発から製品生産までの技術力を融合させ、ドイツや英国、フランス、イタリアに拠点を持ち、グローバルに展開しています。
  Img_24191   ソフトで高級感あるレーヨンキュプラベルベット、伸縮性に優れたリサイクルポリエステルツイル、高密度リップストップといった、サステナブルで高性能な素材を提案しています。
 
清原(株) KIYOHARA
 世界中のトレンドを反映したデザイン性の高い副資材を開発する企業で、今回JOBに初出展しました。バイヤーの入りは思っていたよりも良く、パリとは違う客層が来ているとのことでした。
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 主力商品は、機能とデザインを融合させたプレス式スナップボタン「MORTAR HOOK」や、天然ボタンに金属にしか行わないメッキ加工を施して高級感を実現した「NATURAL BUTTON with PLATING」、デザイン性を強化した「STOPPER & CORD END」などが含まれ、全体にマットよりもシャイニーな表現が好評、エレガントな傾向が戻っているとのことでした。

ミナミ(株) MINAMI
 今期はプルミエールヴィジョンパリに出展した後、ミラノに来てJOBに初出展しました。
オーガニックコットンとリネンを使用したヘビーウェイトの裏毛生地に、リネンのドライタッチを活かす加工を施したり、また、オーガニックコットンをインディゴ調に染めて霧がかかったようなストライプ効果を表現したり、ソフトなウールパイルで独自の柔らかさとユーズド感を演出したり、得意のヴィンテージ調の生地を提案して、好評を博していました。

カジレーネ (株)KAJIRENE
 合繊テキスタイルの一大産地、石川県に拠点を構える繊維メーカー「カジグループ」の生地ブランド、「KAJIF(カジフ)」の認知度向上を目指して初出展。
 超軽量素材「KAJIF ULTIMATE LIGHT」や、収縮現象によるピーチスキン調の「KAJIF COMPACTION」、独自のフリーカット技術を用いた「KAJIF CUTTABLE」を提案。リサイクル素材のアイテムもラインアップし、軽さ、強度、ストレッチ性を兼ね備えた高機能素材を提供し、人気を集めていました。

東レインターナショナル(株)TORAY INTERNATIONAL
 欧州市場での認知度向上とアパレル企業とのコネクション構築を目指してJOBに初出展。東レグループのバーティカルな開発力を活かし、ストレッチ綿、シルク×ウール、リサイクルナイロンなどの天然繊維と合繊を組み合わせた多様な商材を紹介しました。ナイロンやポリエステルを使用した機能テキスタイルや独自の紡績糸によるデニム生地など、意匠と機能性を兼ね備えた素材提案が高く評価され、東レの品質と技術力を際立たせていました。

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2024年8月22日 (木)

AW25/26 ミラノウニカ⑾ 日本パビリオン(JOB) 広がる一歩

 今回、ミラノウニカ(略してMU)に出展した日本パビリオンのジャパン・オブザーバトリー(略してJOB)は、41社(36 社+JOB NEXT by JETRO 企業 5 社)、うち新規出展企業は13社で、728 ㎡のスペースで展開されました。これは2014 年 9 月の開始以来、過去最大規模で、円安を背景に輸出ビジネスとMUへの期待の高さが伺える展示会となりました。
 実際、始まってみると、ホール入り口からすぐに目に留まる好立地と出展企業数の増加が功を奏し、日本ならではの高品質な生地への評価が高まったといいます。
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 とくに好評だったのが、日本のトレンド&インデックスコーナーで、独特な色彩やグラフィックがバイヤーを引き付け、JOB出展者素材の発見の場として機能していました。

 これにはジェトロが海外事務所ネットワークを活用して、有力ブランドのバイヤーの誘致を成功させたことも大きかったようです。会期中もバイヤーのニーズを引き出し、各社ブースへの誘導サービスを行っていました。

 主催したJFW(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)のリリースによれば、サンプルピックアップ数は前回展の1.7倍に増加し、商談件数は2,036件に達し、新規顧客の開拓にも繋がったといいます。
 来場者は依然としてイタリアバイヤーの来場が半数以上を占めていますが、前回7月展と比較すると、フランスをはじめとする他の欧州国やアメリカ、トルコ、アジア等からのバイヤーの来場割合が、大きくはないものの増加傾向です。
 商材では、サステナブル素材への関心が高まる中、ストックサービスへのニーズも顕著に増えていて注目されます。

 このように、MUでのJOBの取り組みは、日本企業の強みを最大限に引き出し、今後のビジネスチャンスをさらに広げる一歩となったと言えるでしょう。

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2024年8月21日 (水)

AW25/26ミラノウニカ⑽ イノベーションエリアAIも焦点

 技術革新はテキスタイル・衣料産業の発展に不可欠です。今期もミラノウニカ会場のホール3に、イタリア・ファッション協会のテクニカル・イノベーティブ・テキスタイル部門である「TexClubTec」によるイノベーションエリアが設営されました。
 フォーラムでは「ファッション向けの先端繊維材料とAI技術」に焦点が当てられ、最先端技術やプロセスを提供するサプライヤー、18社が、最新のイノベーションを展示しました。

 とくに気になった企業です。

イノヴァ・ファブリック INNOVA FABRICS
 2017年創業のイタリアのニットメーカーで、主に下着、水着、衣料、スポーツウェア向けに、高機能ニット生地を設計、生産、販売しているとのこと。3Dプリントからルレックスプリント、エンボス加工やラミネート加工に至るまで、幅広い仕上げや特殊加工を手掛け、コレクションは多岐にわたるといいます。
 Img_26061_20240814235601  上は、スポーツウェア、下着・水着にも応用できるよう設計された素材使いのシャツです。

ノバレシン Novaresin S.p.A.
 イタリアの大手繊維仕上げ加工の会社です。
 Img_26271_20240814235601  レジンコーティング、ホットメルトラミネーション、フォームラミネーション、機能膜製造、また耐火性や撥水性など高機能加工も提供しているとのことです。

JRC リフレックス JRC Reflex
 高品質なレトロリフレクティブ(再帰反射)生地およびトリミングを製造するメーカーで1988年に設立され、フランスのロマンに本社を構えており、最先端の工場はイタリアのベルガモにあるそう。
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 その技術は、アクティブウェアやアスレジャー向けのアパレルやフットウェアブランドに人気とのこと。ストレッチやリサイクル素材を使用したもの、メリノウールやマイクロフリースを基材としたサーマル生地のものなど、さまざまな種類が揃っています。

 またスタートアップコーナーで興味深かったのが、フィリ・パリ(FILI PARI)のミネラルダイです。

フィリ・パリ FILI PARI
 同社は世界初の大理石から繊維を作った会社で、その秘密は大理石の粉末にあるといいます。そのミネラルダイは大理石の粉末を天然の顔料として使用し、水の使用量を抑えたプロセスによる糸染めです。使われる水の量は従来の染色方法の150リットルに比べると、わずか1?20リットルで、特許取得済みの機械が使用されています。
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 展示されていたのは9色で100%コットンの糸に染めたもの、他にも様々な素材に可能だそう。ナチュラルなミックス調の外観で技術的な性能も損なわれることはないとのことでした。

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2024年8月20日 (火)

AW25/26ミラノウニカ ⑼「マーレ・ディ・モーダ」新設

 今期、ミラノウニカでは新たな取り組みとして、「マーレ・ディ・モーダ(MarediModa)」エリアを新設し、2026年夏向けビーチウェアのプレビュー展が行われました。

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 マーレ・ディ・モーダは、2002年に設立されたビーチウェア、アンダーウェア、アスレジャー(スポーツウェアと日常着の融合)の分野に特化した国際的な展示会および組織です。
 このほど、ミラノの特定のエリアでネットワークに所属する企業を幅広く巻き込んだ新たな革新的プロジェクトを開始することになり、公式パートナーであるライクラ(THE LYCRA COMPANY)の特別参加のもと、ミラノウニカで独占的にビーチウェアのテキスタイルやアクセサリーを展示することになったといいます。
 このエリアには15の出展者が集まり、それぞれの企業の専門分野を簡単に把握できるサマリーコーナーや、26年春夏トレンドに焦点を当てた情報トーテムが設置されました。
 その中心には、LYCRARバイオ由来のファイバーが置かれるなど、全体として、ファッション業界を持続可能で循環型のアプローチへと導く展示が展開されていました。

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2024年8月19日 (月)

AW25/26 ミラノウニカ ⑻ 「ベルベット・ミ・アモール」展

 ミラノウニカでは、「“VELVET MI AMOR” ベルベット・ミ・アモール(ベルベット 私の愛)」展が開催されました。これは、ステファノとコリーナ・キアッサイによる、長い歴史を持つ生地“ベルベット”の新たな可能性を提案するインスタレーションです。

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 ベルベットといえば、短くて密な毛羽を持つ滑らかなパイル織物で、日本ではよく「ビロード」とも呼ばれます。ここでは、似たテクスチャーを持つコーデュロイも含め、幅広いバリエーションが展開されていました。

 ベルベットは、ファッションにおいて常に存在し続けてきた素材ですが、これまで完全に主役の座を得ることはありませんでした。歴史の中で用途を変化させ、軽量化されながらも、新たな加工技術で性能を向上させてきた古くからの織物です。とはいえ、滑らかなベルベットにはクラシックでバロックなイメージが、コーデュロイにはレジャー用のスポーツウェアとしてのイメージが根強く残り、その枠を超えることはできていなかったのです。

 ステファノとコリーナ・キアッサイは、この固定観念を打ち破るべく、イタリアの伝統的な職人技と技術革新を融合させたコレクション「VELVET MI AMOR」を発表しました。このコレクションは、ベルベットが単なる贅沢や伝統の象徴ではなく、幅広い創造性を持つ素材であることを証明している、と思いました。

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 コレクションでは、シルクやモールスキン、コットン、ナイロン、ライクラ、スエードなど、多様な素材が使用され、形状やボリュームの工夫、加工技術や写真プリントを駆使して、「ベルベット風の幻想」を作り出していました。また、色彩や光の表現にも細心のクリエイティブな工夫が施され、クラシックなバーガンディやキャメル、ブラウン、錆び色といった色合いと、ビビッドなフクシア、アシッドグリーン、エレクトリックブルーといった意外な色彩が組み合わされているのも特徴です。さらに、コーデュロイでは、縦、横、斜めの切り替えやコードのサイズの組み合わせにより、従来の「直線的な繊維」の技術的ルールを破り、この素材の柔軟で立体的な特性を際立たせていました。

 ベルベットという単一の素材の概念に焦点を当て、それを研究、分析、実験の対象とすることで、その驚異的な芸術的可能性を明らかにしたこのコレクションは、見る者をシュールな雰囲気に誘い込む、印象的な展示となっていました。

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2024年8月18日 (日)

AW25/26ミラノウニカ ⑺ 地球の未来のためのファブリック

 ミラノウニカで確立した価値として認識されているのが、創造性、品質、そして持続可能性です。13回目となる今期トレンド&サステナビリティエリアでは、持続可能性と創造性のより一層の融合が示されました。Mu_39_tendenze_sostenibilita_0001
 展示されたサンプルのタグには、持続可能性を促進する核心的な価値である、①危険な化学物質を排除して労働者、消費者、市民の健康を保護することや、②天然資源の使用を削減し循環型経済の原則への配慮、③社会的正義の促進、④気候変動との闘い、⑤生物多様性の保護がグラフィカルに表現されています。
 これらの5つの核心的な価値に加え、製品タグには製造者の3つの重要な特性も表示されています。①持続可能なビジネスマネジメントシステムの実施、②欧州委員会が定める製品環境フットプリント(PEF)に関する声明の取得、③サプライチェーンのトレーサビリティシステムの実施です。
 MU トレンド&サステナビリティ・プロジェクトは、創造的な才能に対して新しく、より持続可能な解決策や素材を探求するよう招待し、挑戦を促しています。その際、品質、美しさ、スタイル、独自性を犠牲にすることはありません。

数字が示すミラノウニカにおけるトレンドと持続可能性
 MUトレンド&サステナビリティエリアで展示された厳選410の出展者によるサンプル数は、合計3,432点に及びました。どれもミラノウニカの技術委員会が定めた基準を満たしています。前回展と比較すると驚異的な成長を示す数字で、サンプル総数で+23.6%、参加出展者数で+19.9%の増加となっています。プロジェクトの記録を塗り替える新記録であり、業界での関心の高まりとその重要性を再確認するものといえます。

 データからは、サプライチェーンでの化学物質の安全性や循環型経済の原則が、ほとんどすべてのサンプルに反映されていることが確認されています。

 82.8%のサンプルは、化学物質の排除に関する主要な認証、基準、プロトコルに準拠して製造されています。これらのサンプルには「Chemical Safety」ラベルが付けられています。

 90.3%のサンプルは、循環型経済に関連する特性を持っています。多くはリサイクル素材や単一の繊維で作られており、リサイクルが容易になっています。これらの製品には「Circular Economy」ラベルが付けられています。

 79.5%の出展者は、サプライチェーン全体での労働と人権に関する国際的な条約に従うことを要求する認証を受けたサンプルを提出しています。これらのサンプルには「Social Justice」ラベルが付けられています。

 64.6%の出展者は、温室効果ガス(GHG)排出量を削減したサンプルを提示しています。これらのサンプルは、石油や天然ガスなどの化石燃料由来の繊維の代わりに使用される材料で作られているか、またはヨーロッパで生産されており、輸送による排出量が減少しています。これらのサンプルには「Climate Action」ラベルが付けられています。

 63.2%の出展者が、生物多様性の保護や回復に沿ったサンプルを提出しています。オーガニック農業素材の使用は確立された実践ですが、これらの素材の入手困難や再生農業の認証システムの不足がサンプルの数を制限しています。これらのサンプルには「Biodiversity Conservation」ラベルが付けられています。

 企業の持続可能性に関する取り組みを考慮すると、110以上の出展者が企業の持続可能性管理システムを導入していることが確認されています。さらに、16の出展者がサプライチェーンのトレーサビリティシステムを導入しており、欧州委員会が定めた製品環境フットプリント(PEF)認証を持つ出展者の数も増加しています(9社で、前回の2倍)。

基準、プロトコル、認証
  製品基準とラベルで最も一般的なのは化学物質の安全性とリサイクルに関するものです。サンプルの41%がOeko-Tex Standard 100認証を受けており、32%がGRS(Global Recycled Standard)認証、2%がRCS(Recycled Claim Standard)認証を受けています。    
 オーガニックソーシング認証はGOTSが11%、OCSが1%、FSC認証は11%です。RWS(Responsible Wool Standard)、BCI(Better Cotton Initiative)、Bluesign、Biobased ISCC Plusなどは10%未満で、その他の認証は1%未満です。

 組織基準とラベルでは、ZDHCプロトコル(25%の出展者)、ISO 14001認証(21%の出展者)、Oeko-Tex STeP(13%の出展者)、カメラ・デッラ・モーダ/SMI化学ガイドライン(14%の出展者)、4sustainabilityプロトコル(10%の出展者)が含まれます。10%未満の割合では、SA 8000、Textile and Health、ISO 45001、Seri.co、TF Traceability&Fashion、ISO 50001、EMAS、B Corpなどがあります。

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2024年8月17日 (土)

AW25/26 ミラノウニカ ⑹ トレンドファブリック&カラー

 「MU ファミリー」のファブリックは、ダイナミズム(躍動感)とセンシャリティ(官能性)の両立が特徴、つまり力強さと優美さを兼ね備え、見た目の力強さと、触れて感じる心地よさの両方を兼ね備えています。

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 重量感のあるウール、ダブルギャバジン、コンパクトな質感のしっかりとした織物や、モヘアやナイロンと組み合わせた上質なウール、そして通常よりも重厚なコットン(ポプリン、パナマ、ギャバジンなど)が含まれ、場合によってはナイロンやポリアミドとの混紡もあります。シワになりにくい仕上げを施したクラシックなシャツ用コットンや、他の糸とブレンドされ、ジャージーのような触感とライクラのような高性能を備えたシルク混紡も豊富に揃っています。また、異なる特性を持つ糸を組み合わせて一本の糸にした厚みのある結合糸を使用し、軽い縮絨が施されたクラシックな高級糸で編まれたニットウェアの数々も展開されています。

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 今シーズンのカラーは、暖色と寒色のバランスに鮮やかな赤とプラチナの輝きがアクセントを加えています。ブラウン系は高品質な木材を思わせ、豊かさを演出。ニュートラルな中間色と自然な色合いはサステナビリティを象徴し、白の輝きや明るい色調が活力を与えています。そこにフェイクブラックやダークグレーがプレシャスなコントラストをプラス、時を超えたブルーと深みのあるブルーがクラシックな要素に新たな息吹を吹き込んでいるパレットです。

   MU ファミリーを構成するストーリーを簡単に紹介します。

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 MU ファミリー・ヘリテージ ― まるで時を経て使い込まれ、世代から世代へと受け継がれてきたかのようなヴィンテージ感のあるテキスタイル。シャツ地や薄手の生地、使い古され、ダメージ加工されたファブリック、タイダイ染めやオーバープリントされたファブリック、オパール加工やフロック加工、レース、刺繍。

 MU ファミリー・クラッシックウェア ― ウールを主体とした冬用の重厚な生地が勢ぞろい。無地や様々なクラシックデザイン、リバイバルデザインが施されています。

 MU ファミリー・レジャーウェア ― 快適さとスポーティーな素材の組み合わせ。テクニカル素材、ラミネート加工やコーティングされたテキスタイル、ジャージーやスキューバ、ニットやキルティングがセレクトされています。

 MU ファミリー・イブニングウェア ― 夜の装いに適した生地、メタリックな輝きやインサート、コーティング、また軽やかで明るいエレガントな薄地のファブリック。

 MU ファミリー・デイリーウェア ― デニムやサステナブルファブリック、レザー調、さらにパイルファー、プラッシュなど、日中や普段着に最もよく使用されるファブリック。



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2024年8月16日 (金)

AW25/26 ミラノウニカ ⑸ トレンドテーマ「MUファミリー」

 今シーズンのミラノウニカのトレンド&サステナビリティエリアのテーマは、「MUファミリー(MU FAMILY)」です。

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   ファミリーと言っても、それは名家であり、歴史あるイタリアのヴィラや18世紀のパラッツォ、あるいはイギリスの城やスコットランドの田舎にある城館に暮らす家族です。彼らの生活が繰り広げられる空間は、自然が壁を取り囲み、内装の隅々にまで息づいているかのような趣を醸し出しています。広々とした、やや手入れの行き届かない部屋には、古代の栄光を思わせるフレスコ画や、多くの世代を経て受け継がれ、進化してきた時代や趣向を物語る家具が置かれています。
   「MUファミリー」は伝統的で、大家族で、温かく、多文化的で、国際的、そして多民族的な家族たちの物語です。
   ここでは、このような家族の姿がテキスタイルで描写されています。伝統的な技術で作られた生地が現代性を体現し、環境への配慮と多様な好み、性別、年齢層を尊重するデザインとして提案されていました。
 プリンス・オブ・ウェールズチェック、ウールチェック、スコットランドのアーガイル、ぼかしやムラ、斑点、装飾的なニットウェア、ヘリンボーンといったお馴染みのモチーフが、新たな解釈で蘇り、現代の価値観や態度を再定義しています。
 これはメイド・イン・イタリーの価値を尊重し、経験、知識、伝統の循環を促進する文化的文脈の中で、父母、子供、孫たちが活用できる多文化的なワードローブは、使い捨て文化に対する真の対抗ともいえるテーマです。

 トレンド&サステナビリティエリアはMUファミリーの下、出展企業410社から合計3,432点ものファブリックサンプルが次の5つの軸、MU ファミリー・ヘリテージ、MU ファミリー・クラッシックウェア、MU ファミリー・レジャーウェア、MU ファミリー・イブニングウェア、MU ファミリー・デイリーウェアで分類展示されました。 「家」を思わせる、同じ空間の中で、そのどこか親しみやすい温かみのある演出が印象的でした。

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2024年8月15日 (木)

AW25/26 ミラノウニカ ⑷ MU ライブ&ディナー&アート

 初日の締めくくりとして、ミュゼオ・ディオチェザーノ(司教区博物館)で「MUライブディナー&アート」イベントが開催されました。このイベントは、ミラノの歴史と芸術、文化の豊かさを感じてもらうための主催者の粋な計らいです。私も、博物館の常設展示やロバート・キャパの写真展を鑑賞しつつ、ライブ音楽を楽しむという貴重な機会を得ました。

Img_96812  ロバート・キャパは、20世紀の激動の中で、カメラを武器に五つの戦場を駆け抜けた伝説的な写真家です。彼のレンズを通して見た戦争の犠牲者や市民への温かな視線に触れ、今なお続く戦争の悲惨さに胸が締め付けられる思いでした。

   レセプションパーティは博物館の中庭で行われ、夕暮れとはいえ暑さが残る中、イタリア流のおもてなしを堪能しました。
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   夜9時頃に始まったミュージックコンサートでは、歌姫の登場で会場のムードが一層高まり、芸術、文化、そして交流が見事に融合した素晴らしい夜となりました。

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2024年8月14日 (水)

AW25/26ミラノウニカ⑶ 貿易・生産減少も貿易収支プラス

 システマ・モーダ・イタリア(SISTEMA MODA ITALIA 略してsmi)経済研究所では今期もイタリア経済分析の概要を発表しています。

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   これによると、2024年の第1四半期において、Made-in-Italyの繊維製品は、貿易および生産の両方で減少を記録し、2023年のネガティブな傾向が続いています。この期間の総輸出売上高は7億7200万ユーロで、前年同期比で16.9%減少しました。輸入額は3億6500万ユーロで、15.8%減少しました。それにもかかわらず、2024年1月から3月の間に、貿易収支は大幅にプラスとなり、4億700万ユーロを記録しました。注目すべきは、中国向けの輸出が4.6%、香港向けが7.4%と好調であり、両者を合わせると、Made-in-Italy繊維製品の最大の輸出市場となり、売上は7,000万ユーロに達したとのことです。

 イタリア国家統計局(ISTAT)のデータに基づくと、Made-in-Italyの生産に関しては、織物の減少傾向がやや緩和されました(2023年第1四半期の12.3%減に対し、7%減)。一方で、ニット製品はさらに落ち込みました(2023年の対応期間で13.4%減少に対し、20.7%減少)。全ての製品カテゴリー(ニット、紡績羊毛、梳毛、および綿)は、リネンを除いて、輸出で二桁の減少を示しました。リネンは2024年第1四半期に7.7%の減少でした。同様に、輸入も二桁の減少を記録しましたが、ニット製品とリネンは、それぞれ7.5%と4.8%の減少にとどまりました。2023年の総売上高は約77億ユーロで、前年比3.1%減少しましたが、依然としてパンデミック前の水準を上回っており(2019年比1.6%増)、貿易黒字はMade-in-Italyの生産力の強さを確認する結果となり、過去7年間で2番目に高い、23億ユーロ以上の記録を達成したといいます。

 オープニングセレモニーで、イタリア貿易庁(ICE)のマッテオ・ゾッパス(Matteo Zoppas,)会長は、「2023年、イタリアの輸出額は6,260億ユーロに達し、GDPの約3分の1を占めています。パンデミックや戦争、コスト増加などの困難にもかかわらず、パンデミック前の2019年と比べて30%もの増加です。ICEは、イタリア中小企業の国際化を支援するため、展示会を通じて海外バイヤーとのビジネスマッチングを促進しています。今期は、ミラノウニカに153人のバイヤーと他のインフルエンサーやジャーナリストを含む161人のオペレーターを招き、600以上の出展者との接触を促進しました。」と語り、同庁が提供するサービスを積極的に活用するよう呼びかけていたのも印象的でした。

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2024年8月13日 (火)

AW25/26 ミラノウニカ ⑵ オープニングセレモニー

 初日、7月9日の午前11時から、恒例のオープニングセレモニーが行われました。
 会長のシモーネ・カンクリーニ(Simone Canclini)氏の挨拶の後、『Made-in-Italyサプライチェーンの未来:創造性、革新、企業規模』をテーマに、ラウンドテーブルとなりました。

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 司会を務めたのはメディアセット(Mediaset)のジャーナリストで、イル・ジョルナーレ (il Giornale) 副編集長のニコラ・ポッロ(Nicola Porro)氏、登壇したのはコンフィンドゥストリア(Confindustria)の副会長でヤママイ(Yamamay)共同創設者のバーバラ・チンミーノ(Barbara Cimmino)氏、ピッティ・イマジネ(Pitti Immagine)会長でキトン(Kiton)のCEOのアントニオ・デ・マティス(Antonio De Matteis)氏、バーンスタイン(Bernstein)のアナリストでラグジュアリー商品責任者のルカ・ソルカ(Luca Solca)氏、そしてOC&Cミラノのパートナーであるカテリーナ・サンソン(Caterina Sanson)氏です。
 議論はデジタル化と技術革新の進展がもたらす急速な変化により、繊維およびアクセサリー業界が予想外の混乱に直面しており、その対応策が求められているという点から始まりました。革新の加速が今後の分岐点となる中で、持続可能性、競争力、生産性に関する実効性のある解決策を見つけるため、より一層の努力が必要とされています。
最後に、全てのスピーカーが、企業における若い才能の関与なしには革新は実現しないこと、そして彼らに対してより良い給与条件と的確なトレーニングを提供すべきだという点で一致しました。
 ポッロ氏は、若い才能の育成と支援が業界の革新を推進するための礎であり、彼らに対する適切な報酬と成長機会の提供が、今後の持続可能な発展において不可欠であると強調し、全体を締めくくりました。

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2024年8月12日 (月)

AW25/26 ミラノウニカ ⑴ 出展者・来場者ともに増加

   25/26秋冬テキスタイルとアクセサリーの国際テキスタイル見本市、第39回ミラノ・ウニカ(略してMU)が7月9日~11日、ロー・フィエラ ミラノ見本市会場で開催されました。Milano_unica_39_0028
  出展者数は約700社です。昨年7月展と比較して +18%、またコロナ禍前の19年7月展比で +22%となっています。内訳は569社がイデアビエラとモーダイン、シャツアベニューに参加、その内イタリア企業が454社(昨年7月展比 +18%)、ヨーロッパ企業が115社(昨年7月展比 +47%)で、残りが日本パビリオンと韓国パビリオン、それに研究、イノベーションエリアだったと発表されています。
  来場者は総計5,541社で、昨年7月展比 +19%、そのうち、3,403社がイタリア企業(+11%)、2,138社が国際企業(+36%)で、フランス(+65%)、スペイン(+60%)、中国(+55%)、ドイツ(+47%)、英国(+30%)、韓国(+20%)、日本(+16%)、アメリカ(+14%)だったとのことです。また、アラブ首長国連邦から初めて参加した22社も注目に値するとしています。
  展示面積も前回比23%増加して、会場は連日、多くの来場者でにぎわっていました。

  今期からアレッサンドロ・バルベリス・カノニコ会長の後任として新会長に就任したのがシモーネ・カンクリーニ氏です。
Milanounica1 イタリア繊維財団の会長であり、1925年にコモのシルク地区で創業したラグジュアリーなシャツ生地製造を専門とする同名企業のCEOでもあります。
  氏は、「これは、当見本市が国際的な魅力をますます高めていることを示す、大きな成功であり、また、イタリア製のテキスタイルとアクセサリーへの信頼が一段と強固になったことを証明しています。」と述べ、引き続きミラノ・ウニカが業界をリードし、その地位を揺るぎないものにしていく決意を表明しました。

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2024年8月11日 (日)

AW25/26PVパリ(32) 日本企業⑥PVアクセサリー 循環性へ

 プルミエールヴィジョン(PV)パリで、服飾資材を中心とした展示会がPVアクセサリーです。ここでも大きな流れはPVファブリックと同様、サステナビリティ(持続可能性)です。
 パッケージやタグは、化石資源の使用を避け、再生可能な植物資源、有機繊維、バイオマスプラスチック、FSC認証紙からつくられたものが優先されています。印刷も自然さへの追求を一歩進めて、水性または植物性インクの使用が提案されています。
 服飾資材そのものでは、とくに循環性への動きが顕著です。ボタンやジッパー、および装飾用の装飾品はしばしば石油化学製品から派生していますが、メーカーが現在、目を向けているのは、追跡可能なセルロース繊維や再生可能資源から開発された合成代替品です。たとえばリサイクルポリエステルやポリアミドで作られたアクセサリーは、単に基本的な機能を果たすだけでなく、より高度な技術的特性(高性能、撥水、再帰反射、耐摩耗性など)を取り入れています。
 表面処理も低影響の金属コーティングであるPVDを採用するか、環境への影響を最小限に抑えた機械的仕上げでその輝きを出します。

 今期PVアクセサリーで日本企業として出展したのは、グローバルなネットワークを持つ「シンドーShindo 」一社でした。
 同社はプレーンな無地テープや意匠性のあるブレード・ニット・ストレッチテープ・パイピング・トリミングレースなど、 テキスタイルトリム分野で幅広い商品レンジを持っています。
 ブース面積はいつもより縮小していましたが、そこで打ち出していたのがヨーロッパの厳しい環境基準に則った環境配慮型商品で、ほぼ8割がリサイクルポリエステルやポリウレタンを使用しないストレッチテープでした。 
 Img_91101  上は、リサイクルポリエステル100%のダブルサテンのリボンです。

 リサイクル素材は通常のものより少し割高になりますが、ヨーロッパのバイヤーは今、こうしたエコフレンドリーな商材を求めているとのことです。
 リサイクルやリユースを考慮したモノづくりにシフトするシンドー、その取り組みに改めて感動しました。

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2024年8月10日 (土)

AW25/26PVパリ (31) 日本企業 ⑤ ニットは「違い」を強調

 ニット分野に出展した日本企業は、独自の付加価値で「違い」を強調していました。

<ニット>
エイガールズ A-Girls
 今期はブース面積を3分の1、縮小していましたが、来場者の数や質に変わりはないといいます。但し前回から来場者の顔が見えにくくになったとも。
 目玉はスパイバーとのタイアップで、ブリュードプロテイン100%やコットン混が人気だそう。
 Img_91561 また先染めボーダーで、右のようなシャドー調グラデーションのもの、綿100%。
さらに、重要なのが光沢感、マーセライズド加工やレザー風に加工したコットン、ウールも光沢を強めに出して合繊風に見せたものが好評。
 Img_91531 右は、シルク/コットンの艶のあるベロア。
 同素材でファーパイルも。
 エコでは、原料そのものの色で染めない無染色への関心が高いといいます。

東紀繊維 Toki Sen-I
 人の入りは前回の2月展よりも多く、新規も増えているとのこと。
 裏毛の人気が続いていて、とくに日本のものは好評だそう。
 Img_92731_20240806221401 右は、コットン/ウールの縮絨裏毛です。
 またオーガニックコットンについて、この言葉がよく聞かれたのは3年くらい前のことで、現在はあまり言われなくなったといいます。

ミナミ Minami
Img_91591_20240806221401  来場者数は前回並みといいますが、大手が少なく中小が多いのが気になるそう。
 右は、好評だったという裏パイルで、表は無地、裏がカスリ調の先染めのもの、綿100%です。

森下メリヤス工場 Morishita
Img_90961  昨年の7月展と比べると人が少なく、少し残念そうでした。
 今シーズンは、とくにエコな糸や繊細な編地にこだわった編地を充実させていました。
 右は、超細番手糸のウールとリサイクルポリエステル混のものです。

八木 Yagi & Co
 場所が良くなったこともあり、来場者は前回よりも多く、手応えを感じている様子でした。
 Img_91391_20240806222501 ウールの裏毛や裏パイルに加えて、綿の二重織や厚地の綿サテンといった織物も好評といいます。

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2024年8月 9日 (金)

AW25/26PVパリ(30)日本企業④ 一ひねりしたプレミアム

 プルミエールヴィジョン(PV)ファブリックで、プレミアムリラックス、シャツ、プリント、アパージーンズウェアは自然素材の多い分野です。出展した日本企業は、いずれもそのプレミアム感を一ひねりして、目新しさを演出していました。

<プレミアムリラックス>
シバヤ Shibaya
Img_91741jpg  客の入りが今一だったといいますが、自然素材の「天日干し」は引き続き好調とのことです。
 また今期は過酷な環境にも耐えるコーデュラナイロン使いを提案。右のリップストップが人気といいます。

<シャツ>
桑村繊維 Kuwamura
 前シーズンの2月展に比べ、人が少ない様子でした。
 人気素材はチェックよりストライプの方だそう。
Img_92151jpg  右は、小さいシワがより多く入るように工夫したマグ・ワッシャー加工のオーガニックワッシャーストライプです。
 ヨーロッパ向けにオーガニックコットンやリサイクルコットン使いを増やしているといいます。
 
植山テキスタイル(Maruwa) Maruwa by Ueyama Textile
 初日は来場者が多かったそうですが、全体的に少ないとのこと。

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 好評なのは、左の立体感のある洗い加工のコットンチェックや、右のインディゴ染めによる手仕事感のあるシリーズといいます。

<プリント>
北高 Hokkoh
Img_91281  リピーターが中心で、いつもに比べて活気がない様子でした。
 とはいえ前回同様、ムラ染めや刺繍入りに引き合いが多いとのことです。
 右は、コットンボイルのカットジャカードプリントです。

<アパージーンズウェア>
クロキ Kuroki
 この前の2月展より2~3割、来場数が少ないとのことですが、固定客の心はしっかりつかんでいるようでした。
 人気は日本独特のシャトル織機で織ったセルヴィッチデニムとキッパリ。
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 この伝統的な製法によるデニムが、高く評価されていることを改めて認識しました。

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2024年8月 8日 (木)

AW25/26PVパリ(29) 日本企業③ テーラーリング「他にない」

 プルミエールヴィジョン(PV)ファブリックでテーラーリング分野に出展した日本企業を4社、紹介します。伝統に新たな洗練をのせたスーツ地に加えて、各社オリジナルの「他にない」クリエーションを打ち出していたのが印象的でした。

瀧定名古屋 Takisada Nagoya - JA Fabric
 バイヤーの出足は順調で、例年並みの入りといいます。同社は事前に得意先回りを行っており、翌週にミラノウニカが開催されることもあり、今回、イタリアのサプライヤーが減少することは織り込み済みとのことでした。
 ブースでは、とくに目立っていたのが「ジャポニズム」をテーマにした生地です。日本ならではの加工、例えば絞り染めや流し染め、フォイルプリンティングといった匠の技が駆使されています。

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Img_92391_20240806152701  右は、煌めく「蜘蛛の巣」のような雰囲気が妖しい美しさを放つ、螺鈿タッチのフォイルプリント加工です。
 また、サステナビリティの流れに沿う「ソフトアーマー」と呼ばれるコンセプトも注目です。ここではしっかりと長持ちする耐久性のある生地、キルティングなどが提案されていました。

ニッケ Nikke Textiles
 客足の減少が気になっているといいます。とくにここ数年、ラグジュアリー感度の高いバイヤーが減っているそうで、悩みどころのようでした。
Img_91701  人気素材は、数年前から発表している梳毛のウールデニムです。
 ウール独特の気品のある艶と「きちんと」感で、いわゆるデニムの概念を覆す存在に進化しています。

サンウェル Sunwell
 今期は半年前の2月展よりも来場者が多いとのことで、商談はまずます好調の様子でした。
Img_91901jpg  多様な生地サンプルが展示される中で、アウトドア向けリップストップや、ひと昔前の織機で織ったようなヴィンテージ調のチェックなどが好評といいます。
 右は、「三つ杢」糸使用のコットンツィードシリーズ、コットンツィルオンブレ―チェックです。

東レ ウルトラスエード Toray Industries, Inc. Ultrasuede®
 スタンダードなウルトラスエードはもちろんですが、ここで圧倒されるのが、デザイナー力です。
Img_92071_20240806152601  右は、ウルトラスエードのニードルパンチです。
 またオパール加工を施したものも。
 ウルトラスエードならどんな加工もOK、できてしまうことに驚嘆させられました。

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2024年8月 7日 (水)

AW25/26PVパリ(28) 日本企業② ハイファンシー&シルキー

 プルミエールヴィジョン(PV)ファブリックでハイファンシー分野にはスタイレムとコボ、シルキーではデビスと宇仁繊維、三菱ケミカルが出展しました。

<ハイファンシー>
スタイレム Zen-Kiwami by Stylem Takisada-Osaka
 客の入りは2割減でしたが、その質に変わりはなかったそうです。

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 人気生地は、左のベロア(ポリエステル/エラスタン)と、右のダンボールニット(コットン/ポリエステル)とのこと。

国島(COBO)  Cobo - Kunishima
 今回は前回を少し上回る来場があり、バイヤーの感触は良かったといいます。ウール生地はWRS認証を取得しているとのことです。

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 トップ人気は、左のソフトなウール/アルパカ混。また右の表裏のないウール100%のモール糸使いのしっかりとしたメルトンも好評だったそう。

<シルキー>
宇仁繊維 Uni Textiles  -  Komon Koubou
 前回と変わりない来場者があり好調。新規とリピーターの数は半々くらいだったとのことです。
Img_90991_20240805174501  素材では綿や麻など天然繊維系が好まれており、アセテートやキュプロを求める声も多いとのこと。
 右は、以前から人気で今シーズも好評のシンプルな柄入りのラッシェルレース、ポリエステル100%です。
 
デビス Debs
 来場者数はいつも通りで、7月展ということで期待値が低かったこともあり、予想を超える入りだったといいます。

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 人気はドレープするエレガントなクレープや、弾力性のある上品な光沢のダブルサテン、ツーウェイストレッチなど。
 また6~7割はGRS認証を取得したリサイクルポリエステル使いになっている、というのも先進的、と思いました。

三菱ケミカル Mitsubishi Chemical Corporation
 来場者は前回より少ないものの、リピーターはしっかり来ているとのこと。
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 ドレープする美しい光沢のサテンなど、トリアセテート長繊維「ソアロン」訴求していました

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2024年8月 6日 (火)

AW25/26PVパリ(27) 日本企業① 出展・来場者減も手応え

  今シーズンのプルミエールヴィジョン(PV)パリはパリ五輪開催が迫る中での開催とあって、セキュリティの問題などから、出展者も来場者も減少しました。日本企業も出展したのは全27社でした。昨夏7月展は41社でしたから大きく落ち込んだことになります。
 来場したバイヤーの質が変化したとの話も聞かれ、とくにメゾン系ラグジュアリーブランドのバイヤーが期待していたよりも少なくて失望した、との声が上がっていたのが印象的でした。とはいえ欧州を始めアメリカや中国、韓国など幅広い国々からの来場があり、多くの日本企業は商談に手応えを感じていたようです。
 
 日本から唯一、新規出展したのが「ダイショーファッションテキスタイル Daisho Fashion Textile」です。オリジナル高級梳毛ウールを手掛ける尾州産地のメーカーで、PVファブリックのテーラーリング分野にブースを構えていました。
 初参加でしたが、ラグジュアリーブランドを含む、想定以上に多くのバイヤーが来場したとのことです。新顧客の開拓にもつながった、と笑顔で話してくれました。
 Img_92571jpg 人気素材はカシミア混の上品な光沢と重厚感があるメルトンです。
  右は撥水ビーバー加工を施したものです。
  またモヘア/ウールも好評とのこと。
  匠の技の技術が光る、高品質なスーツ生地で、バイヤーの心をつかんでいました。

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2024年8月 5日 (月)

AW25/26PVパリ(26) アクセサリー ラディカルスピリット

 25/26年秋冬プルミエールヴィジョン(PV)アクセサリーのトレンドは、まさにラディカルな精神を誇示しています。ミニマリストの純粋さから贅沢なクリエイティビティ、機能的なコンポーネントから宝石のようなアクセサリーまで、強い方向性が共存しています。
  (ちなみにここでのアクセサリーとは服飾資材のことです。装身具・小物ではありませんので、要注意です。)

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 とくに今シーズン、注目されるのは、実用的な要素が完璧に洗練されていることです。装飾的な美学が、さりげなく快適な工夫を通じて日常の装いに取り入れられています。

日常のデザイン
 機能的なコンポーネントはミニマリズムと洗練にフォーカスし、細部にまでこだわったジュエリーのような美しさを持つものが多くなっています。
 機能的な特徴を隠す時代は終わり、機械的な要素が目立つのものこのシーズンです。留め具やバックルなどは機能的でありながら装飾的な役割を果たし、都会的でテクノロジーとシックが融合したシルエットを完成させます。スナップやバックル、ボタンでは透明な素材が使われ、素材自体が繊細に見えるように工夫されています。
 今シーズンの機能的アクセサリーは、巧妙なデザインと専門技術が際立ち、完璧に実現された作品が並びます。各ディテールや比率は、形と機能の完璧な調和を目指して設計されています。ステンレススチールの仕上げが完璧な輝きを加え、マットブラックのメッキと組み合わせて、ラディカルなミニマリズムを演出します。
 婦人服では、パッド入りのボリュームが引き続き登場します。膨らんだ効果がスポーティーでありながら装飾的なハイブリッドとして再構築されます。タイやドローストリングはブレーディングやトリミングと組み合わせられ、ラバーはスムースでマットなレザーに置き換わります。
 この洗練されたスタイルはカジュアルなアクセサリーやコンポーネントに広がり、靴ひもやゴム、アイレットは、シルバーとガンパウダー系の中間色で装飾され、控えめで都会的なメタリック感が加えられています。

大胆な創造性
 ミニマリズムの制約に対抗し、贅沢を求める気持ちが形になる流れも浮上します。色やテクスチャー、素材、技法がミックス&マッチの精神で組み合わされ、「多いことは確かに良い!」という考えを表現したものも多くなっています。
 さまざまな文化や伝統が融合し、ユニークなハイブリッドが生まれています。キーワードは不規則さで、ツイードやブークレ、ブーレット風のルックも特徴です。古びた効果さえも昇華され、乱れたテキスタイルアクセサリーとして表現されています。ラベルやパッチはフリンジ、羽根、カットヤーンジャカードで装飾され、時にはデザインを微妙に引き延ばす、あるいは大きく乱れさせるなど、手の込んだルックを作り出しています。
 職人技があふれ、その効果が互いに競い合っているのも特徴です。羽根、フリンジ、ブレード、タフテッドテクスチャーが楽しく、お祭りのようなカオスで加工されています。色、素材、技法が混ざり合い、豪華で奇抜な結果を生み出していたりします。
 ジュエリーの分野では、宝石のようなプレシャスな感覚が強調されています。モジュール要素を組み合わせ、一つの美しい全体を作り上げる、ラグジュアリーなテトリスのような感覚のものも。ここでは対比が重要で、金属とパステル、重いものと軽いもの、大きいものと小さいもの、滑らかなものと粗いものが組み合わされています。表現力豊かで多面的な洗練を追求するシーズンともいえるでしょう。

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2024年8月 4日 (日)

AW25/26PVパリ(25) 若年層エコファッション消費調査発表

 今回のプルミエールヴィジョン(PV)パリでは35以上ものカンファレンス・プログラムが実施されました。中でも興味深かったのが、PVとIFM(Institut Francais de la Mode フランスモード学院)による「若年層の消費パターンとエコファッションとの関係」をテーマにした新しい消費者調査結果の発表です。
 Pvptalks23800x6001 登壇したのはIFM経済観測所所長 ジルダ・ミンヴィエル氏で、エコファッションに対する若年層の認識、購買習慣、期待についての詳細な分析が報告されました。その概要をまとめてみました。

 調査は、18歳から24歳、25歳から34歳の若年層の消費パターンとエコファッションとの関係に焦点を当てて行われ、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカの5カ国の代表的な消費者6,000人を対象に実施されたとのことです。

 この結果、多くの若者が持続可能な慣行を採用し、環境や労働条件を尊重するブランドを好むことが明らかになったといいます。

 2024年には、48.8%のフランス人が持続可能なファッションアイテムを購入しており、これは2023年の41.1%から増加しています。フランスでは、ほぼ2人に1人が持続可能なファッション製品を購入していることになります。またイタリアでは52.6%、ドイツでは51.4%の消費者が持続可能な衣服を購入しており、既に人口の半数以上がこのトレンドに従っています。
 特に若い消費者は、エコフレンドリーな製品を購入する傾向が強く、フランスでは、18-24歳の58.9%、25-34歳の55.1%が持続可能なファッション製品を購入しています。ドイツでは、18-24歳の64.9%が年間を通じてエコ責任あるファッション製品を購入しており、これは一般人口の51.4%と比べて高い割合です。イギリスでも、18-24歳の65.7%がエコフレンドリーな製品を購入しており、一般人口の47.4%よりも高い数値を示しています。
 持続可能なファッションは、長期的に消費者の購買習慣に影響を与えることになる、と指摘しました。

持続可能性を判断する最も重要な基準は素材選択
 どの国でも、製品の持続可能性を判断する際に最も重要な基準となっているが素材選択です。たとえばイタリアでは、46.7%の人々が素材選択を持続可能なファッション業界の主要な要素と考えていますし、イギリスとアメリカでも、この基準を重視する割合は40%を超えています。
 この要件は一般的なファッションアイテムを選ぶ際の基準にも反映されています。イタリア、ドイツ、アメリカでは、製品の品質が最も重要な基準とされており、消費者の約3分の1がこれを最優先事項としています。イタリアでは、その割合が37%に達しています。
 さらに、好みのブランドを選ぶ際にも、素材選択が重要な基準となっています。イタリア(61.4%)、ドイツ(62.2%)、イギリス(60.6%)、アメリカ(67.1%)では、素材選択が最も重要な基準とされています。フランスでも、価格(54.7%)に次いで2番目に重要な基準が素材選択です。

若い消費者にとっての社会的および包括的(全ての人々を平等に受入れ尊重する)な側面
 18歳から34歳の若年層にとって、製品の持続可能性を判断する際の優先事項は異なります。
 フランスの18-24歳に対して、服を通じて促進したい価値を尋ねたところ、半数以上(52.4%)が倫理的かつ包括的な労働条件を促進するブランドを選ぶと答えました。これは、一般人口の26.3%や25-34歳の38.1%と比べて高い割合です。
 購買を決定する際、社会的側面は若い消費者にとって重要な基準です。環境に悪影響を与えない高品質な素材や、リサイクル可能またはリサイクルされた素材の使用は、特にフランスの若い消費者の選択に大きな影響を与える可能性があります。
 好みのブランドを選ぶ際、18-24歳の若いフランス人消費者の約30%が多様性と包括性を重要視しています。これは、一般のフランス人の14.8%に比べて高い割合です。

消費者が期待する透明性と良好な情報
 若い消費者はエコ責任に対して高い期待を持っており、透明性と情報への要求もますます高まっています。
 持続可能なファッションを購入しなかった理由として、アメリカでは34.5%、イギリスでは37.4%の人々が情報の欠如を挙げています。イタリアでは、その33.8%がどこでその製品を購入できるか分からないというのが主な理由とのこと。フランスでは、最も頻繁に挙げられている理由が価格で、41.3%の人々が価格が高すぎると答えているといいます。
 フランスでは18-24歳の若者は、持続可能なファッションアイテムに対して支払う意欲が年長者よりも高く、ジーンズ、Tシャツ、スニーカーの持続可能な買い物バスケットに331ユーロを費やす用意があるといいますが、一般人口では208ユーロです。それでもなお、若い消費者にとって価格は依然として購入の障害となっています。この傾向は他の国も同様で、アメリカでは特に顕著です。
 この結果から、若者は持続可能なファッションに対して高い意欲を持っているものの、実際にはその価格が購入のハードルとなっていることが、推察されます。

 持続可能なファッションが高価格になってしまう問題、改めて考えさせられました。

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2024年8月 3日 (土)

AW25/26PVパリ(24) PVデザイン 繊細さと華美さの対比

 プルミエールヴィジョン(PV)パリのPVデザインは、クリエイティブなテキスタイルと表面デザインに特化した展示会です。
 今シーズンは厳選された国際的な専門スタジオ、50社が出展し、テキスタイルデザイン (パターン、モチーフ、ニットのアイデア、装飾、ヴィンテージなど) の最新コレクションを披露しました。

 25/26年秋冬は、対比に満ちたシーズンです。対立する視点が衝突し合い、新しい創造的な道が開かれます。こうした中、大きく次の二つの補完的なテーマが現れています。
 第一のテーマは、繊細な表現力の出現を讃えるものです。柔らかさへの欲求が植物をモチーフにした抽象的なデザインに反映され、スタイライズされた、ぼんやりとデリケートなパターンがパステルや淡い調和の中で優雅に広がります。
 第二のテーマは、伝統とフォークロアを中心としたインクルーシブな華美さです。自然の伝統的な表現が豊かに重なり合い、さまざまなスタイルが交錯する華やかなミックスを見せます。

< 繊細さの表現 >
 今シーズンの装飾プリントは自然からインスピレーションを受け、自然を詩的でほぼ抽象的な視点で表現しています。一見穏やかなこれらのモチーフですが、そこには予期しない深みも感じられます。

フローラ・オブスキュラ Flora Obscura
1_20240801194301  伝統的な植物や動物のモチーフがひねりを加えられ、夜にフラッシュで撮影されたかのような暗い背景から浮かび上がります。その奇妙で少し不安を感じさせる魅力で驚かせます。グラフィック処理は、科学的な図面の精密さと幻覚的なぼやけの間で揺れ動きます。これらの花柄は、男女問わず幅広く使われます。

繊細なオーバーレイ Delicate Overlays
2_20240801194301   ブラシストロークがまず孤立して描かれ、その後組み合わさるという混沌としたプロセスが、透明感や淡い色使いによって一定の柔らかさを放ちます。暗い色も脱色技術によってグレーがかったトーンに変わり、繊細な印象になります。

< インクルーシブな華美 >
 純粋さと柔らかさへの欲求に対抗するのは、輝きたいという明確な欲望です。ここでは創造性が至上のものであり、文化、伝統、世代が対立する大胆なデザインが特徴です。

神秘的な華やかさ Mystical Extravagance
3_20240801194401  このシーズンでは、華やかさがフォークロア的な雰囲気の植物や動物を通じて表現されます。シンボルが重なり合い、バロック的な豪華さを示します。動物は豊かな植物の中に隠れているかのようで、神秘的なニュアンスを帯びた活気あるアニマルプリントに仕上がります。

ぼやけた形 Blurred Shapes
4_20240801194401  色の背景に豊富な筆致が描かれ、有機的な形が浮かび上がります。モチーフは具象的な要素と抽象的な要素がスケッチのような手法で融合しています。

壊れやすい葉 Fragile Foliage
5_20240801194301  控えめな植物モチーフがニュートラルな背景から浮かび上がります。これは柔らかく焦点が合わされた粒子とぼやけた効果が夢のような感覚を生み出している、ロマンチックなモチーフです。

花柄プリント Floral Prints
 6_20240801194301 ノスタルジックな花柄は、時間の経過で優雅に変化したように見え、錆やセピア調のトーンが古き良き時代の魅力を強化します。

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2024年8月 2日 (金)

AW25/26PVパリ(24) デニムPV展「ラディカリティ」テーマ

 今回のプルミエールヴィジョン(PV)パリでは、25/26秋冬デニムの特別展が行われました。
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  それはこの6月5日と6日、ミラノで開催されたデニムPV展で発表された、ヨーロッパデザイン学院(IED)とヌオヴァアカデミア・ディ・ベッレ・アルティ(NABA)という二つの名門校の学生13人により制作された独自のコレクションです。
 このプロジェクトは、これらの若い才能がプロの環境で製品をデザインする機会を提供するというもので、学生たちは、それぞれトレンドを解釈し、パターンメイキングの専門家であるアレッシオ・ベルタの監督のもと、作品を開発したといいます。
 テーマは「ラディカリティ(急進性)」です。極端が衝突し、革新的なハイブリッドが生まれます。豪華さと純粋さ、構造と柔らかさ、技術性と職人技が対比されています。最終的なシルエットはこれらの対比を巧みに捉え、色、プリント、装飾などの仕上げに焦点を当てています。

大胆なコントラスト
Img_85121  今シーズンのコントラストの遊びは、色を通じて表現されています。たとえばブラックデニムがパレットを強調し、シーズンの淡い色合いを引き立てます。ウォッシュ加工は暗いベースに照明効果をもたらし、色の光線が予想外の方法で使用されたりします。通常のウィスカー(人工的なアタリ、つまり色落ちを作り出す技術)の代わりに、フェード効果が膝や脚の下部を強調し、深い染色処理やスプレーを使用して光のアクセントが演出されます。

デニム風の効果
Img_85441_20240801181701  クラシックデニムの外観が、他のテキスタイルベースを使用して模倣され、デニム風を表現しています。洗練されたクリーンな仕上げだったり、イミテーションウォッシュがプリントによって再現されて、モダンさを強調していたり、またトロンプ・ルイユの視覚効果がジャカードで現わされ、抽象的なパターンがクラシックなウォッシュ風ファブリックを生み出していたり。これらのネオデニムはウォッシュ効果で、新しいデザインの可能性を開くと同時に、生産過程で水を使用せず、素材の品質を保ちながら精巧でクリーンなアプローチを提供しています。

センシティブな表面
Img_85321  今シーズン、デニムは柔らかさを備えた、多様な生地で繊細な触感効果を表現しています。たとえばベルベットやファーです。これらの効果は、技術的にはリサイクルデニムや認証されたビスコースを使用したフロック効果を含む表面処理で実現されています。

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2024年8月 1日 (木)

AW25/26PVパリ(22) デニム 新たな地平を求めて

 25/26秋冬シーズンでは、デニムが新しいスタイルを探求しています。このシーズンでは、熟練した職人のような繊細な織り、温かみのある土色のディストレス効果やウォッシュ加工が特徴です。また、オーバーサイズのシルエットが彫刻のような美しいドレープ(垂れ下がる形状)を思わせます。Denimpvmilannov23h5a05101

職人技の織り Artisanal Weaves
 今シーズンのデニムは、歴史的かつ伝統的な要素を取り入れた創造的なハイブリッド製品が登場します。オートクチュールのハンドクラフト風の仕上げが特徴で、糸の遊びやジャカード技法によって、ぼやけた外観や独特のテクスチャーが生まれ、豊かな表情を実現しています。また、デニムとブークレやツイードの効果を組み合わせた新たなデザインも登場し、チェックやタータンなどの伝統的なパターンも取り入れられています。古びた外観の模倣には、ジャカードやコーティング、プリントなどのディテールが用いられ、機械的なエイジングに対する魅力的で贅沢な代替手段を提供しています。

ディストレス効果 Distressed Effects
 25/26秋冬のディストレス(プアな感覚の)デニムには、さまざまな色彩が取り入れられています。とくに主調となっているのがブラウンやレッド、バーガンディ、パープル、ライラックといった、豊かで暖かいほこりっぽい色合いです。これらの色は、時間が経過したように色あせたり漂白されたりして、より穏やかで環境に優しい仕上がりになっています。また、このテーマは、ギャバジンやニットウェア、カジュアルウェアなど、他の製品分野にも影響を与えており、広がりを見せています。

カジュアルなボリューム
 今シーズンのシルエットは、オーバーサイズでボリューム感を増しています。体にまとわりつくような素材の豊富さが特徴で、密度の高い構造的なコットンが独特の落ち感を持ちつつ形を保ちます。トップスは、コットンとセルロース繊維のミックスにより、より柔らかく快適な感触を実現したものが多く、光沢など高級感を感じさせる素材が贅沢な雰囲気を醸し出していたりします。

スポーツウェアとの出会い
 25/26秋冬シーズンのデニムは、スポーツウェアとの融合により、新しい表面感と技術的特性を備えた革新的な開発が進んでいます。アウトドアやエクストリームスポーツから受けた影響が、繊維や織り、シルエット、アクセサリーに至るまで幅広く反映されています。
1_20240801153401  高性能なナイロンを含む繊維が使われ、これにより新しい質感とシャープな感触が生まれ、耐久性の向上などの技術的特性が加わります。これにより、デニムは新しい用途にも対応できるようになります。織りの進化も見られ、マイクロバージョンや小さな四角形のファンシー織りがツイルの代替として登場しています。
 表面には透明なコーティングが施され、光沢のある効果が生まれています。持続可能なバイオベースや水性オプションも取り入れられ、カジュアルさよりも技術的な外観が強調されています。また、軽量のデニムシャツ生地はマーセライズ加工され、コットンとセルロースのブレンドによる軽やかな光沢が、スポーツとテクノロジーの融合を感じさせます。

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