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2024年6月 3日 (月)

横浜トリエンナーレ ⑴ テーマ「野草:いま、ここで生きてる」

 3年に1度の現代アートの祭典「第8回横浜トリエンナーレ」が開催されているとあって、毎回行っていることもあり、今回も見に行ってきました。20240429122621dsc_02291
 アーティスティック・ディレクターは北京を拠点に国際的に活躍するリウ・ディンとキャロル・インホワ・ルーの二人で、テーマは「野草:いま、ここで生きてる」です。「野草」は、中国の小説家・魯迅の詩集『野草』(1927年刊行)に由来する言葉で、この詩集には、彼が当時、中国国民党政権の言論弾圧下で直面した個人と社会の現実が描かれています。
 今回の横浜トリエンナーレは、この彼の世界観と人生哲学に共感するものでした。「野草」とは孤独で無防備な存在でありながら、抑えがたい生命力と反抗的な精神を象徴する存在を意味していたのです。
 コロナ禍が収束し回復へ向かい始めたのは束の間でした。今では、世界で戦争や紛争、衝突が勃発し、「個人」の存在がふたたび妥協を強いられる国々が現れ、気候変動はさらに深刻化しています。
 私は本展がこうした深まる危機感を背景に、個々の人間性、それぞれの勇気、再生力、信念、そして連帯を表すテーマを選ばれたことに敬意を表したいと思っています。ある人は政治的過ぎる、暗い、重苦しい、怖いなどと否定的な感想を述べる方もいますが、「現代アート」と言うのは「常識」をひっくり返すものであっていいのではないでしょうか。
 ファッションの世界も同様で、コム・デ・ギャルソンといったアウトサイダーが高く評価されています。社会問題や政治への疑問など時代背景に対するメッセ―ジを伝えることは、アートの重要な役割です。
 改めて、横浜トリエンナーレの野心的かつ勇気ある取り組みに感銘しました。

 会場は、約3年ぶりにリニューアルオープンした横浜美術館を含めて5つあり、世界31の国と地域から93組のアーティストが参加しています。また「アートもりもり!」と称して市内の芸術活動拠点でも展覧会が開催されていました。

 メインの横浜美術館から見ていきましょう。
 吹き抜けの開放的なグランドギャラリーはガラス張りの天井から自然光が入り、以前より明るい印象です。

 最初はこのグランドギャラリーでの展示で、「いま、ここで生きてる(Our Lives)」の章です。ここは誰でも無料で入れるようになっていました。

 まず目に飛び込んできたのは、天井から吊り下がっている巨大な傘のようなインスタレーションです。
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 赤い布地が編み込まれていますが、今にも崩れそうにも見えます。サンドラ・ムジンガ《そして、私の体はあなたのすべてを抱きかかえた》(2024年)の作品で、大きなテントのようなものもあり、中に入ると胎内に包まれているような感じがしました。
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 中央には、黒人の男性と白人の女性がいびつに組み合わさり、赤ちゃんが飛び出している奇妙な作品が置かれています。

 ピッパ・ガーナーというトランスジェンダーのアーティストによる《ヒトの原型》 (2020年)という作品で、多様性のあり方を問い続けているようです。

 


  左右の階段から2階へのスペースは、もうまるで難民キャンプのようでした。
 掘っ建て小屋のような仮設の家は、北欧の少数民族「サーミ族」の血を引くというノルウェーのヨアル・ナンゴという作家の作品で、素材はすべて横浜近郊の自然や街の中で見つけたものを利用してつくったものだそうです。
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 資源不足や気候変動に向き合う現代社会に対し、このアーティストは人と自然が共生する先住民の知恵に学んでみてはどうかと、と示唆しているようでした。

 その上には大画面があり、映し出されているのは、ウクライナのアーティスト集団「オープンワーク」による映像作品「繰り返してください」です。1-0240429123831dsc_0237
 ウクライナの危険な戦場を背景に難民キャンプの人々が、一人一人登場し、不気味な声を、それも大音量で発しています。その声は戦地の人々が耳にしている音であり、武器の音や爆発音を模したものでした。
 ゾッとさせられる光景に接して、平和ボケした私たちですが、他人事ではないことを感じさせられました。

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