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2024年6月 4日 (火)

横浜トリエンナーレ ⑵「わたしの解放」と「密林の火」に注目

 無料だったグランドギャラリーから上階へ移動して、展示フロアに来ました。ここには7つの展示室があり、「わたしの解放(My Liberation)」、「流れと岩(Streams and Rocks)」、「鏡との対話(Dialogue with the Mirror)」、「密林の火(Fires in the Woods)」、「苦悶の象徴(Symbol of Depression)」の章立てで構成されていました。

 とくに注目したのは「わたしの解放」という章で、このタイトルは日本のアーティスト、富山妙子の自伝的エッセイ『わたしの解放 辺境と底辺の旅』(1972年刊)に由来しているとのことです。ここはまさにこの作家の創作の軌跡をふり返る作品展でした。(ここだけ撮影禁止エリアになっていて、残念でした。)
 炭鉱や日本の植民地支配をテーマにした作品を発表し、99歳でこの世を去った富山妙子は、日本人の裏の部分を見つめ直した画家だったのです。中でも衝撃だったのは、1980年、韓国で起きた光州事件を題材にした版画シリーズです。民衆蜂起で多くの市民が軍に殺害された悲劇が、版画という技法でより際立っていました。
 実は私は日本にそのような画家がいたなんて、知らなかったのです。ほんとうに凄い!と愕然としました。最晩年に描かれた風神・雷神図も迫力に満ちた傑作で、驚嘆しました。

20240429124746dsc_02461jpg  「密林の火」の章も、過去の歴史から現在の姿を映し出す、ショッキングな作品が多かったです。
 「火」とは紛争や対立、衝突や事件のたとえでした。デモ行進の映像もあふれていました。
 中でもギョッとさせられたのが、ビニール袋入りの捨てられた(いらなくなった?)人間の彫刻です。ジョシュ・クラインによる作品《生産性の向上(ブランドン/会計士)》、《営業終了(マウラ/中小企業経営者)》(2016)で、トマス・ラファ《Video V59: ロマ人に対する民族主義者の抗議》(2013)のビデオの前に、転がっているのです。
 AIの発達により仕事を奪われて捨てられた弁護士や銀行員、秘書といったホワイトカラーの遺骸だそうで、これも恐怖でした。

 また興味深かったのは坂本龍一の「こわれたバイオリン」の展示です。
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 2006年にビデオアートの父といわれたナム・ジュン・バイク追悼ライブに出演した坂本は、破壊的精神に満ちたバイクの精神に敬意を表して、バイオリンを叩き壊し、引きずって歩くパフォーマンスを行ったそうです。そのときのバイオリンが展示されていました。

 「鏡との対話」の章では、鏡と対話する骸骨たちの姿が現れます。
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 オズギュル・カーの《枝を持つ死人(『夜明け』より)》(2023年)の骸骨がいる、その鏡には自分たちの姿も映り込みます。これは魯迅の詩集『野草』の一節を象徴する展示とのことですが、やはりちょっと怖かったですね。

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 ここには「縄文と日本の夢」と題したコーナーがあり、縄文土器や岡本太郎の縄文の写真も飾られていて、ここだけ穏やかな空気が流れているようでした。

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