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2024年6月10日 (月)

横浜トリエンナーレ 映画『首相官邸の前で』上映会&トーク

 今回の横浜トリエンナーレでは「野草の生きかた:ふつうの人が世界を変える」と題して、小熊英二監督映画『首相官邸の前で』の上映と、小熊英二氏を招き蔵屋美香(総合ディレクター/横浜美術館館長)とのトークによるスペシャルイベントが開催されました。

Flyer_s  映画『首相官邸の前で』は主に2011-12年の脱原発運動の流れをわかりやすくまとめたドキュメンタリー映画です。
 2012年夏、ごくふつうの20万人の人びとが首相官邸前に集まり、原発にまつわる政策に抗議しました。原発事故前は異なる立場にいた8人が危機を経て「脱原発」と「民主主義の危機」という共通の言葉で集まって、民主主義の再建は可能なのか。現代日本に実在した奇跡的な瞬間をとらえた作品です。

 トークでは、小熊監督がこの映画を製作費、わずか50万円のポケットマネーでつくったとお聞きしてびっくり!スタッフは編集担当の石崎俊一氏と2人だけだったというのにも驚かされました。出演者は全員無償協力で、映像はYOUTUBEで配信されていたものを選び、著作権を一つ一つクリアにした上で編集されたとのことです。 
 誰でもやろうと思えばできるのですね。お見事というしかない、感動の映画でした。長いと思っていた上映時間の1時間49分はあっという間に過ぎました。

 小熊氏は社会学者です。それがなぜこのような映画を制作しようとしたのでしょうか。そこには理由が2つあったといいます。一つは、氏が現代史研究をされていることで、反原発運動を記録しておく必要があると思われたことだそう。1968年の安保闘争のときもきちんとした記録がなく、残っていたのは一番派手な映像・写真だけで、全体がよく分からない状態になっているとのことです。
 もう一つは、映像として絵になる場面が多数あり、記録に値するものが多かったからといいます。実際、私も映画を見て、街頭運動のプラカード一つとっても創意工夫があり、アートなおもしろさがある、と思いました。

 この運動は確かに日本で起こったことであり、誰もが忘れてはいけないことです。でも今はもう多くの人が思い出そうともしない、そんな出来事になってしまっているようです。私も反原発運動があったことを覚えてはいましたが、いつの間にか念頭から消えていました。
 改めてこの映画を見て、これ程の大規模なものだったとは思ってもいませんでした。この運動は、NYの「ウォール街占拠」や香港の「雨傘革命」とは違って、世界にほとんど知らされなかったといいます。これには大手メディアであるTVや新聞での取り上げ方が小さかったことが影響しているようです。
 氏は今回、この映画を世界各国で上映して、反響の大きさに衝撃を受けたと語られています。何も知識のない人が見てもまた、100年後の人が見てわかるように、との期待を込めてつくられた映画だったのですね。

 トークをリードされた蔵屋美香館長もステキな語り手でした。タイトルの「野草」とは、日本語では「雑草」という意味だそうです。気候変動や災害、戦争、経済格差に不寛容と、わたしたちの時代は多くの生きづらさを抱えていますが、「ふつうの人びと」が雑草のようにたくましく、これらを変える力となりうるのではないかと、希望の光を感じさせる上映会&トークイベントでした。

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