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2024年6月

2024年6月30日 (日)

インテリア ライフスタイル ⑴ イタリアパビリオンに注目

 デザイン性に優れた小物・雑貨を中心に、衣・食・住に関わる国内外の商材が集まる「インテリア ライフスタイル」展が、6月12日~14日、東京ビッグサイトで開催されました。出展企業は、20カ国/地域から507 社(国内:461 社/海外:46 社)、来場者は3日間合計で16,577名だったと発表されています。昨年より少し減少していますが、それでも会場は多くのバイヤーでにぎわっていました。

 私が注目したのは、イタリアパビリオンでした。ここにはイタリアン・デザイン・デーの一環としてイタリア大使館貿易促進部が参加していました。
 テーマは「かたちを超えて。イタリアデザインのこれから」です。家具を中心に、現在まで綿々と続くイタリアン・デザインの最高峰の製品が展示され、その中には、昨年、デザインの「オリジナル」を追求した展覧会『The Original』(21_21 DESIGN SIGHT)展で反響を呼んだものも出品されていました。

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 上は、カッシーナのアームチェア『ルイーザ』です。1949年フランコ・アルビニが製作し、2008年にカッシーナが復刻した椅子で、イタリアで最も歴史と権威あるデザイン賞である、コンパッソ・ドーロ賞を1955年に受賞するなど、数多くの賞を受賞しています。直線的なデザインのなかに、ジョイントに向けて厚くなる部分など、細かいこだわりが光っています。

 展示会の最終日にはセミナーが行われ、『The Original』展の発案者で世界的なデザイナーである深澤直人氏、ディレクターをつとめたデザインジャーナリストの土田貴宏氏、そして企画協力の田代かおる氏が登壇。同展覧会の中で存在感を放っていたイタリアのデザインについて語り合われました。

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 1950年代に花開き現代にいたるまで進化を続けるイタリアのプロダクトと家具がデザインの世界にもたらしたものとは?そして、これからのイタリアデザインとは?
 イタリアン・デザインの普遍性と革新性、そして持続可能性が紹介され、未来へのビジョンとともに、新たな時代におけるイタリアデザインの可能性が語られました。このディスカッションを通じて、デザインがどのように社会と環境に貢献できるのか、そしてそれがどのようにして次世代に引き継がれていくのかが浮き彫りにされ、参加者たちはイタリアン・デザインの魅力とその未来への期待に胸を膨らませることができたのではないでしょうか。 

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2024年6月29日 (土)

「ててて商談会2024.6」“次の仲間に会える場所” 75社集結

 「ててて(TETETE)商談会」が6月半ば、東京・青山のスパイラルホールにて開かれました。“次の仲間に会える場所”と、生活用品をはじめ食や服飾、家具など、さまざまな分野で地域に根差したものづくりを営む作り手75組が全国各地から集い、にぎやかな商談風景でした。

Jacquard Works (ジャカード・ワークス)
 桐生の老舗、ジャカード織物メーカーである須裁(SUSAI)のファクトリーブランドです。桐生テキスタイルプロモーションショーで毎回見ている機屋さんで、布製バッグをつくっていることを知って、ちょっとビックリしました。オーナーが産地と工場の存続を求めて、2022年に誕生させたといいます。
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 とくにおすすめは、アーティスト、高橋信雅氏の「クラシック・シリーズ」とコラボしたトートバッグです。「大人の滑稽」をコンセプトにしたお茶目でクールなイラストがジャカード織機で細部の凹凸までこだわって表現されています。ヤギをモチーフにしたものなど、親しみやすいデザインが好評の様子でした。

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   ふっくらと柔らかく、驚くほど軽いスエットで、誰もが袖を通したくなるようなブランドです。聞けば丸編みニットで有名な和歌山産地で、1970年から続く旧式編み機を使い、ゆっくりと編み上げたものだそう。

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 今回は新たに開発したベビーウェアを提案していました。綿100%で赤ちゃんが喜びそうです。

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 「日常と発見をつくる」をモットーに、誰かに見せるためのデザインではなく、着る人の手元に届いたその先のことも想像して一着を仕立てているといいます。
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 体の動きに沿う、曲線を取り入れたシンプルなデザイン、遊びは素材と小さなディテールを取り入れて、例えばパンツは、中央を切り替えで立体感を出したバルーンシルエットのもの。階段の上り下りや、膝をつく動作のしやすさを意識し、もちろんポケット付きです。
 着心地のよい服を長く着るために、「染め直し」やお直しにも力を入れているブランドてす。そこにはいつまでも想像力が膨らむほんの少し特別な日常着が揃っていました。

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2024年6月28日 (金)

湘南 江の島の「トンボロ」を初体験

 湘南の一大観光スポット、江の島はトンボロの名所でもありました。トンボロは干潮時に浅瀬が海上に姿を現し、海岸から対岸へ陸続きになる自然現象です。イタリア語のユーモラスな呼び名が付いています。

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 私も先日、この珍しい現象を初体験してきました。江の島ではこの時期、一握りの時間だけですが、片瀬海岸東浜から島へ徒歩で上陸できるように仮設階段が設置されていました。階段の設置は昨年から始まったとのことでしたが、私はこの春初めて知りました。
 江戸時代の浮世絵にトンボロの絵があり、家康も歩いて渡ったという話が残っています。
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 私が行った日、水は完全に引いていなくて、溜まっている水の中を歩かなくてはなりませんでした。橋が無かった時代は、皆こんな風に裸足になって歩いて渡ったのですね。絵空事と思っていたことを体感するとは!水に触れて愉しかったです。
 浜辺は親子で潮干狩りを楽しむ人でいっぱいでした。潮だまりにはカニとか小さな魚もいたようです。のどかな初夏の一日でした。

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2024年6月27日 (木)

ミラノ・ウニカ7月展 日本パビリオンJOB過去最大41社

 この7月9日~11日、ミラノのロー・フィエラミラノで開催されるミラノ・ウニカ(MU)7月展に、日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)と日本貿易振興機構(JETRO)主催の日本パビリオン「The Japan Observatory (JOB)」が出展します。 

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 今回の2025/26秋冬JOBは過去最大の41社・800㎡の規模で日本企業が出展。新規に出展する企業は13社となり、輸出ビジネスとMUへの期待の高さが伺えます。
 ウール、綿、シルク、化合繊、機能繊維などの織物、ニット素材、レースの幅広いテキスタイルに加え服飾資材の出展者がそろい、日本の産地素材や、サステナブルを意識した原料の組み合わせや後加工のテクニックで、日本ならではのクオリティを提案し、バイヤーのあらゆるニーズに応えるといいます。
 また、ジェトロでは今回、JOBに初参加、または出展履歴3回未満の中小企業を対象に「JOB NEXT by JETRO」として支援プログラムを組んでいます。このコーナーには中小企業5社が参加して、輸出にチャレンジするとのことです。
 さらに毎回、人気のJOBトレンド&インデックスコーナーについて。今シーズンは「大切なこと」をテーマに展開されるといいます。環境や人への気遣い、やさしさ、気配り、思いやりといった目に見えない価値を重視するトレンドで、こうした想いを込めた空間構成で発信されるジャパン・クオリティは、きっと注目を集めることでしょう。私も取材に行くのが今から楽しみです

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2024年6月26日 (水)

メゾン・エ・オブジェ24年9月展 テーマ「テラ・コスモス」

 インテリアとデザインの総合見本市「メゾン・エ・オブジェ2024年9月展」が9月5日~9日、フランス・パリのノール見本市会場で開催されます。
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 メゾン・エ・オブジェは今年30周年を迎えて、2024年を宇宙年としています。9月展では「テラ・コスモス(TERRA COSMOS)」という新たなインスピレーションテーマを打ち出しています。
 ペクレール・パリ社のトレンド予測担当である、ブリュンヌ・ウァクラット氏は、「宇宙と現実が交差し、持続可能な新たなフィクションが生まれる」と述べています。「テラ・コスモス」は、宇宙の広大さや神秘を基にしつつ、消費者が望む斬新でクリエイティブなアイデアや革新的な製品を提供することを目指すテーマです。

 宇宙旅行が可能となり、テクノロジーの進歩がライフスタイルを変えています。私たちは宇宙の一部として、責任感と道徳的なものづくりを求められています。そこには無重力ツーリズムや宇宙とのつながりを探求する神秘的なヴィジョンが必要です。

 「テラ・コスモス」は、没入型のバーチャル体験やスマートマテリアル、3D、AIを活用し、ファンタジーを日常に取り入れます。新素材は粗削りだったり洗練されていたり、また虹色の光沢や透明感を持っていたり、天体の鉱物的な表面を連想させたりします。デザイナーたちは、感覚的未来主義を表現し、インテリアに鉱物的な粗さを取り入れています。照明は生き生きとしたハロ(光の輪)を生み出し、カラーを流動的なスペクトルにします。

 「テラ・コスモス」は、ホテル・飲食業でも広がりを見せ、没入型の発見や極端な体験を提供します。デンマーク人シェフ、ラスムス・ムンクのホリスティックなメニューは、没入感のある環境で楽しめます。テキサス州のホテル「エル・コスミコ」は、宇宙と地球の狭間の体験を提供し、3Dプリンターで作られた宿泊施設を設ける予定といいます。

 メタバースとは、インターネット上の仮想空間のことです。仮想空間内のショップでは、実際の店舗ではできないような斬新なデザインが施されていて、インターネットを通じて商品を購入することができます。こうした未来的なデザインとデジタル購買体験が組み合わさることで、まるで宇宙にいるような感覚を味わえたりします。
 バーチャルな建築作品から着想を得た空間は、メタバースから飛び出したような様相を呈し、非物質的オブジェや環境は、既に現実のものとなっています。クロムメッキや透明なガラスを用いた演出が、無機質感に変化をもたらします。

 展示会マネージングディレクターのメラニー・ルロワによると、「テラ・コスモス」テーマは、未来志向を超えて会場で具体化され、来場者は製品展示、イベント、シンボルによる見学ルートを通じて体験できるとのことです。

 メゾン・エ・オブジェ24年9月展は、ワクワクするような未来を予感させるインスピレーションと体験を提供する展示会になりそうです。

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2024年6月25日 (火)

プルミエール・ヴィジョン・パリ2024年7月展

 2024年7月2日~4日、パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場で、クリエイティブでサステナブルなファッションを目指す、世界のプロたちが一堂に会するプルミエール・ヴィジョン・パリが開催されます。

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 来場者を待っているのは、約40か国(イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、日本、イギリス、ベルギー、韓国、トルコ、中国等)から参加する総数920を超える国際色豊かな出展社(ヤーンメーカー、テキスタイルメーカータンナー、テキスタイルデザインスタジオ、服飾資材・部材メーカー、縫製業者等)が発表する2025/26秋冬素材コレクションです。
 その内訳は、テキスタイルメーカー434社、縫製工場(OEMメーカー)202社、デザインスタジオ50社、タンナー66社、服飾資材・部材メーカー115社、ヤーンメーカー25社、スマートクリエーション出展社33社で、日本からは全27社(うち新規1社)が参加します。

 2024年2月展でプルミエール・ヴィジョンがローンチしたホステッド・ゲストプログラムは、フランス内外から194名のゲストを招聘し、大きな成果をあげました。このプログラムは、2024年7月展にも引き継がれ、今回もGLイベンツグループから100万ユーロもの資金提供を受けて、業界内の重要な絆の強化だけでなく、戦略的パートナーシップの推進にも貢献することになります。 
 この大規模なオペレーションを補強するのは、仏企業の国際化を使命とする国の機関“ビジネス・フランス”による新たな輸出促進制度です。ビジネス・フランスは独自の国際的エキスパートネットワークを活用することで、「輸出はフランス国内で始まる」と名付けられたプログラムを展開しています。国からの補助金で運営されている同プログラムは、外国のデシジョンメーカーたちの訪仏と、バイヤーと仏企業の輸出商談のための実効性のあるプログラムの実行に必要な資金を提供しています。
 マッチメイキングプログラムも更新されます。2024年初めに導入された同プログラムは、587組の出展社とブランドの出会いとユニークなコラボレーションの機会を創出し支援プログラム更新によって、強化されています。

 新たなNew? 
・ソーシングサポートの導入
  ラグジュアリーブランドを対象として、パーソナライズされたきめ細かいソーシングサポートが導入されます。このサービスを希望する来場者は、PVキューブでプルミエール・ヴィジョンファッションチームスタッフから個々のニーズに合わせたサービスを受け、シーズンの最もエンブレマティックな素材サンプル(テキスタイル300種、未発表のレザー50種)をチェックすることができます。(ただし、事前に招待されたブランド限定のサポートサービスです。)

・スポーツにオマージュ
 今回のプルミエール・ヴィジョン・パリは、2024パリ五輪という一大イベントを目前に控えた熱気のなか、3週間前の開催とあって、スポーツにオマージュを捧げています。
 クリエイティブなファッション産業がここ数十年に成し遂げた進化とイノベーションは、パフォーマンス追及の面でもエレガンスの面でもスポーツ界に大きな影響を与えました。スポーツウェアはより快適になり、UVに強くなり、撥水性を高め、防風機能と透湿性を獲得し、速乾性を備えるようになりました。プルミエール・ヴィジョン・パリは今回、スポーツ&テックエリアに数百もの最新開発素材を結集するとのことです。
 スポーツウェアの未来を方向付けるイノベーションやトレンドを発見するすばらしい機会をとなりそうで、ますます期待が高まります。

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2024年6月24日 (月)

2024秋冬ピーチ展 洗練された大人カジュアル

 この6月初旬、ピーチ(PEACH)プレスルームで、2024秋冬ブランドのプレスプレビュー展が開催されました。
 全体に洗練された大人カジュアルブランドが多かったです。

Ottod'Ame(オットダム)
 新規のブランドです。ブランド名は、イタリア語で「無限の意味を持つシンボル=8」を意味するotto(オット)と「女性」を意味する「DAME(ダム)」を合わせた名称で、2011年に設立されたトスカーナ発のブランドです。
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 「楽しむのに年齢は関係ない」はデザイナーのSilvia Mazzoli(シルヴィア・マッツォーリ)のモットーとか。カジュアルでありながらグラマラス、繊細なロマンティシズムとダイナミックなロック精神を兼ね備えているのが、強みといいます。

Marmors(マルモア)
 ブランド名の由来は、ローマ語の大理石「marmor」から。きめ細かく、研磨すると美しい光沢を放つ石です。
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 「クリーンな洗練カジュアル」をコンセプトに、着心地や風合いの良いミニマルな要素とメンズライクな要素を融合、その人の新たな定番となって、大切に永く愛用していただけるような日常着を提案しています。

blancvert(ブランベール)
 「大人コンフォート」をコンセプトに、いつも自分らしい新しさを求める洗練された女性のためのブランドといいます。
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 モダンでシンプル、しかも優しく心地よく。穏やかな空気感が漂うコレクションです。

IKITSUKE(イキツケ)
 2024年春夏商品から自社ブランドをスタート。ワールドグループで、専門店に向けた卸販売を行う株式会社ワールドアンバーとの協業を開始し、全国の専門店、百貨店の自主編集売場などへの販売を行っていくとのこと。
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 「リラックス・エレガンス」をコンセプトに、展示では上のようなノルディックセーター(スキーセーター)が目につきました。

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2024年6月23日 (日)

2024秋冬プロスペール展 「クワイエットラグジュアリー」

 プロスペールが取り扱うファッションブランドの2024秋冬展が6月初旬、同社ショールームにて開催されました。主要ブランドは、昨今のメガトレンドである「クワイエットラグジュアリー」の洗練されたデザインと高いクオリティを誇るブランドです。

チョノ(CHONO)
 今季のテーマは「MY STANDARD」です。無限の選択肢の中から自分にとってのスタンダードを探し求めることの重要性を強調しています。
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 エレガンスでは、チュールテープとグロッシーな糸を組み合わせたツイードや、「幸福な王子」に着想を得た宝石とツバメのモチーフをあしらった遊び心のあるテキスタイル。クラシックなスタイルで新鮮に感じられたのがモノトーンのコントラストを意識したワンピース、またスカートにレイヤリングされたフェザー調ジャカード。マニッシュなスタイルでは、リラックスしたシルエットのダブルジャケットとセンタープレスのワイドパンツに注目です。

エフ(ykF)
Img_78751  テーマは自然界に存在しない「ミステリアス・ブルーローズ」です。着目したのは2009年に開発された青いバラ。人工的でありながら重なる花弁の陰影が神秘的な美しさを放っています。
 今シーズンは、異なる素材を組み合わせて青の奥深さを表現したドレスが印象的でした。マットな表面の尾州ウールとレザーライク加工サテンの組み合わせ、数段階のブルートーンで織り上げた陰影が美しい米沢ジャカード、ドレープで魅せるブルーサテンなど、神秘的でクールな大人の女性を演出するコレクションです。

レイジースーザン(LAZYSUSAN)
 目に留まったのが、ウサギのキュートなジュエリーケースです。巾着型のケースは手早く開閉でき、時間に追われがちな旅行先でもジュエリーの保管に便利そう。
Img_78821_20240624152301  お値段も5,500円と手ごろなのもいいですね。

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2024年6月22日 (土)

24秋冬ソスウ展 メンドリル × ジェネラルスケールに注目

  メゾンミハラヤスヒロのソスウ(SOSU)が扱うブランドの24秋冬プレビュー展が6月初旬、神宮前の同社ショールームで開かれました。
 メゾンミハラヤスヒロを始めとする様々なブランドが展示されている中で、初めて知ったのが「メンドリル(Mendrill)」というブランドです。
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 これはスタイリストでファッションディレクター、デザイナーの井嶋一雄氏が2021年に立ち上げたファッションブランドで、名称は尾長猿の一種、マンドリルをシンボルマークにした「マンドリル」だったそうです。ユーモラスでウィットに富んだデザインですね。
 2023年、もっと広く大人の男性向けにと「メンドリル」に改称。デザイナーの三原康弘氏が手掛ける「ジェネラルスケール(General Scale)」とコラボしたカプセルコレクションが好調といいます。
 商品は、オリジナルプリントをフロントとバックに施したフーディーやTシャツで、プリントは井嶋氏が趣味としているカンフーをモチーフにしたハンドペイントプリントのグラフィック、素材は環境的、社会的責任を考慮するジェネラルスケールのラインをベースに、リサイクルコットンやオーガニックコットンなど、生分解性のある原料が中心です。 
 そのかっこよさに注目です。

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2024年6月21日 (金)

栃尾からの発信『おりなす®とちお』展 一味違う先染め

 25春夏『おりなす®とちお』展 (主催:栃尾織物工業組合)が6月5~6日、今回は場所を移してレンタルスペースさくら北参道にて開催されました。
 出展したのはテキスタイル4社、ニット2社、産地買継商1社です。「伝統技術・テクノロジー・自然との融合」をキーワードに、得意の先染め生地や糸使いに特徴のあるニット生地を発信していました。
 中でも興味を惹かれた生地を紹介します。同じ先染めでも従来のものとは一味違う表情の先染めでした。

Img_78301_20240624102601 (有)木豊工場 
 タータンチェックのシャツ地です。
 とはいえ伝統的なものではなく、微妙にうねっている、よろけ格子になっています。
 コットン100%

Img_78421_20240624102601 山信織物(株)
 斑にかすれた自然感覚に仕上げるスペック染色で、洗練されたカジュアル感覚を表現しています。
 コットン70/ポリエステル30

栃尾ニット(株)

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 経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」(2008年)に選定された丸編ジャージーメーカーです。とくにカットジャカードやリンクスジャカード、パイルジャカードなど、ジャカードニットの技術が素晴らしく、私はいつも注目しています。

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2024年6月20日 (木)

山の空気を吸いに榛名山へ

 前橋から足を延ばして、久しぶりに山の空気を吸いたいと、榛名山を訪れました。上毛三山(赤城山・妙義山・榛名山)の一つで、200名山でもあり、以前から行ってみたいと思っていた山でした。
 湖畔の高原駅から一気に標高1,391mの榛名富士山頂へ、ロープウェイに乗って到着です。ロープウェイといっても2両連結式ゴンドラで、このタイプのものは日本初なのだそうです。

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 そこから少し登って榛名富士山神社へ。眺望があるかと思いましたら、樹木に覆われて見えませんでした。
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 見晴らしがよかったのは、山頂駅直近の展望台で、関東平野や上州の山々を一望しました。

20240601160340imgp57411  榛名湖をドライブで周回し、均整のとれた榛名富士の姿を目に焼き付けて、少しのんびり。
 日常の喧騒を忘れてリフレッシュしたひとときでした。

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2024年6月19日 (水)

アーツ前橋「ここにいてもいい リトゥンアフターワーズ」展

 アーツ前橋で6月16日まで開催されていた「ここにいてもいい リトゥンアフターワーズ : 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口」展を見てきました。
 山縣良和さんは物語性のある実験的な表現の場としてコレクションを発表する「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」のデザイナーであり、「coconogacco(ここのがっこう)」の代表でもあります。本展は、この山縣さんが美術館で開催した初の個展でした。これまでの集大成とともに、ファッション表現の「いま/ここ」を表わす新作がインスタレーションされていました。

 展覧会は一篇の物語の世界を探検でもしているかのように6つの章で構成され、夫々の章に思いがけない発見があって、好奇心をそそりました。とくに気になった作品を紹介します。

第0章 「バックヤード」
 ここは入ってすぐのフロアで、無料のエリアです。

20240601104410imgp55561   過去のコレクションで作成されたドローイング、絵画、写真、映像、書籍、布地などの作品や素材が展示されています。

第1章 「神々、魔女、物の怪」
 ブランドの原点ともいえる神話の世界です。
 20240601105304imgp55721  3.11からの再生を祈った《七福神》が階段の中央に据えられていました。福をかき集める熊手が表現されています。山縣さんの存在を世界に知らしめることになった記念的作品です。

20240601105444imgp55781  魔女や妖怪などダークなキャラクターが出現します。とはいえ怖くて悲しいイメージではなくて、ちょっとドジでチャーミング、日常的存在の魔女、誰もが何時でも魔女になりうるという想いを込めてつくった作品とか。

20240601105540imgp55831  焼け焦げたボロの山は、《After Wars》のコレクションからの1点です。東京都庭園美術館で行われたショーに登場したことが思い出されました。山縣さんは、「父親が長崎出身のせいか、戦争の記憶とも向き合うべきという感覚が昔からあります。」とおっしゃっています。

第2章 「集団と流行(はやり)」
 フリーマーケットのイメージから集団性が生み出すエネルギーに着目した展示で、同調性バイアスが強い日本社会の集団と流行の危険な側面を表現したコーナーです。

20240601110138imgp55901   新型コロナウイルスの感染爆発も流行(はやり病)です。布団に眠る人の姿は病に倒れた人を連想させました。

20240601110446imgp55961  2019年に上野の噴水広場で行われたコレクションからの作品《フローティング・ノマド》です。内戦で住む場所を失ったシリア難民を彷彿させるショーでした。「ここにいてもいい」というタイトルとは真逆の「ここにいられない」という世界の深刻な状況を写した作品です。

20240601110814imgp56031  記者会見の場面を表現したもの。スキャンダルが起こると一斉にヒステリックに集団で叩いてしまう、日本だからこそ起こりうる光景がとらえられています。

第3章 「孤立のトポス」
 コロナ禍で、東京を離れて長崎の島々で制作された《Isolated Memories(孤立した記憶)》がベースのインスタレーションです。
 20240601111056imgp56141  軽トラックには、狸や犬などの動物たちがいっぱい乗り込み、その後にも動物たちの長い行列が続く、印象的な展示でした。

 山縣さんは「ファッション表現は、自分自身を客観的に見つめ、研究しながら内なる自分像を外に出す行為です。このプロセスは、自分の自己イメージに関連する人間像をクリエーションやデザインを通じて変えていく作業でもあり、自分の変化しやすさを体験することにもなります。」と述べています。だからここではあえて人間ではない動物たちを主役にしたのですね。

第4章 「変容する日常」
 広い展示室には誰かが使い古した家財道具がたくさん持ち込まれていて、より暗い、不穏な気配が漂っているように思われました。

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 展示されていたのは、ウクライナやガザ、日本の能登の震災など、日常が簡単に崩れる現実を反映したもので、アーツ前橋に非日常の生活感を持ち込む試みで行われたといいます。近代の電化製品や空き家の食器棚、放置自転車などを設置し、リトゥンの考える「家」を仮設。そこにはナマハゲのようなキャラクターや人間のようで人間ではない存在がいます。13年前の東日本大震災で美術館が避難所になったエピソードもヒントに、非日常が日常に侵入するイメージを表現したとのことでした。

Img_78231  Img_78241 廃棄された布で仕立てた服です。
 マネキンが箒を手にゴミを集めているポーズも面白いです。

 右のカラフルなルックは、鳥取伝統の因幡の傘踊りで用いられる装飾的な傘をさしています。

 鳥取出身の山縣さんの故郷への想いが伝わってくるような作品です。

 

第5章 「ここにいてもいい」
 展覧会タイトルと同じ「ここに いても いい」は、これまでの章と異なり明るい雰囲気です。タイトルには「此処」や「個々」の意味が含まれ、自己の個性や生きる場所を肯定しようとしています。文字「い」と「こ」の形からは子供の成長を連想し、生活の中のパーソナルな出来事が重視されているようです。

 最近、女の子が誕生した山縣さん、仕事や育児で日常が忙しくなる中、社会問題への関心が薄れ、自身の目の前の出来事からリアルな作品を創作するようになったそうで、映像には子供を撮影した動画を使用し、家族の尊さや成長への願いを込めたといいます。 

Img_78031  中央にインスタレーションされていたのは、赤/白のギンガムチェックのドレスです。その上には、子どもの幸せや成長を祈る、日本古来の人形伝統文化「つるし雛」が飾られていました。

 家族を大事にしながら、ファッション表現の新たな物語を紡いでいく、山縣さんの決意が感じられたすばらしい展覧会でした。

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2024年6月18日 (火)

ライラ・トウキョウで「マルタン・マルジェラ」アーカイブ

 渋谷にあるライラ・トウキョウは、昭和中期に建てられた画家のアトリエを改装したセレクトショップです。建物の老朽化により、この6月2日に営業を終了することになり、その直前に「メゾン・マルタン・マルジェラ」の秘蔵のアーカイブを披露する展覧会が開かれました。
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 展示されていたのは、何ともクラシックでロマンティックなコスチュームでした。
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Img_77141  解説によれば、これらは1992年10月15日にパリ18区の異なる場所で同時刻に行われた1993年春夏「ホワイトショー」と「ブラックショー」で発表されたアーティザナルラインです。ルネッサンスから17世紀に着想した舞台衣装を解体・再構築して、新たな命を吹き込んだものといいます。
 コード刺繍の立体感のある仕上がりのドレスや男性用上着を女性の肩に合わせ肩を狭めたジャケット、また機能と装飾を兼ねた軍服のブランデンブルクスタイルなど----、ヴィンテージというよりももうアート作品です。

 今や伝説的といわれるマルタン・マルジェラの希少なコレクションを至近距離で堪能したひと時でした

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2024年6月17日 (月)

堀田 覚氏 講演「ファッションとテクノロジーの現在地」

 ファッションビジネス学会東日本支部がこの5月25日、開催した総会後講演会に、先進的なマーケティングの取り組みを続ける株式会社パルの取締役 専務執行役員 プロモーション推進部部長(WEB事業推進室室長、コミュニケーションデザイン室室長)堀田 覚氏が登壇。「ファッションとテクノロジーの現在地~パルグループの戦略~」をテーマに講演されました。

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 冒頭、右肩上がりで売り上げ利益拡大中と自社紹介。アパレル売上高は、ファーストリテイリング、しまむら、アダストリアなどに続く5~6番目の規模、リアル店舗数は900で年内に1,000店を超える見込み。EC化率は2015年4%でしたが、今やその10倍近くに急伸。2030年には売上目標3,000億の内、ECで1,000億にするといいます。

激変するファッション業界の現状
 第4次産業革命の時代に突入し、様々な数値がデータ化され、それをAIが学習して新たな提案を行うようになりました。ほぼすべてがスマホでインターネットと常につながっている現代、ファッション業界も大きな変化を迎えています。

 かつて、ファッションは個性を重視するものでしたが、2014年に登場した「ノームコア」(究極の普通)が逆に個性的とされる時代となりました。所有よりも使用や体験が重視される感性の変化もあり、何を着るかよりもどう着るか、ブランド品よりも普通のものをかっこよく着こなすことが評価されるようになっています。例えば、ユニクロをおしゃれに着こなす方が高く評価されることもあります。

 トレンド消費から友だち消費・イベント消費への流れが強まっており、提供者としては、モノを手に入れた後の使用イメージを伝えること(「あなたの人生・生活にどう具体的に関わるのか」)が接客技術としてますます重要になっています。

 デザインとクリエーションの世界も変化しています。全員がクリエイターとなる時代が到来し、販売においてはユーザー主体の感覚とユーザーとのコミュニケーションが不可欠です。かつて分業で成り立っていたクリエイター職は、テクノロジーの進化により個人で全て完結できるようになっています。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルやユーチューバー、インスタグラマー、TikTokerの台頭がその一例です。

 アウトプットされた作品の上手さよりも、クリエイター個人の個性や信念が重要視されており、分業で作られたものには共感しづらくなっています。ものづくりの方法も変化し、データを活用して個人に合わせたパーソナルオーダーが拡大しています。

 店舗も変わっています。消費者にとっての便利さでは、24時間365日購入できるECサイトが実店舗よりも優位です。事業の効率性においてもECが優れています。しかし、五感で感じられる体験やワクワクする出会いは、実店舗がECに勝る部分です。実店舗では、AIがまだ到達できない五感をフルに活用したコンサルティング接客が重要で、接客技術の高い人の価値が高まっています。

オムニチャネルは、オンラインとオフラインを融合させた新たなサービス提供を目指すOMO(Online Merges with Offline)へと進化しています。ECも伸ばさないと顧客接点が減り、実店舗も厳しくなるため、ECと実店舗はともに成長させる必要があります。パルの現状では、顧客の実店舗とECサイト「PALCLOSET」の相互利用者は、片方のみの利用者と比べて約4倍の購入実績があるといいます。

 このように、激変するファッション業界において、データとAIの活用、SNSを通じた新たなプロモーション、個人の創意工夫がますます重要になっています。

パルグループの戦略
 パルグループの戦略は、スタッフのSNS活用、データの活用、個人の創意工夫を重視しています。パルのSNS戦略は特に強力で、SNS投稿を行うスタッフは約1,800名で、全社員の3~4割に当たります。1万人以上のフォロワーを持つスタッフは約250名、全スタッフの総フォロワー数は約1600万人に達し、日本のファッション業界でNo.1と自負しています。

 かつてのプロモーションはマスメディアや口コミに依存しており、一方通行でした。しかし、現在のプロモーションはSNSを通じて双方向のやり取りが可能になり、細分化された口コミ情報が循環する構造となっています。パルは、自社発信の重要性を強調し、スマホシフトによるSNSの普及やスマホでの情報摂取が能動型から受動型に変化している点を捉えています。人々が共感を通じて情報を受け取ることで、スタッフの生産性を向上させ、給与を上げるとともに、デジタルでの活躍を高く評価しています。

 パルのオムニチャネル戦略はSNSを中心に据えており、新規顧客のデータを収集し、パーソナライズされた心地よい情報発信を行うことを目指しています。エンゲージメント率が重要な指標であり、個人対個人のエンゲージメントが特に高くなることを重視しています。反応がAIのデータの元となるため、反応を引き出すことが成功の鍵となります。

 生成AIと識別AIの活用も進めており、チャットGPTなどのAIチャットサービスが次々と登場しています。しかし、現状では人とAIとのコミュニケーションにおいて、AIは質問に応えるだけにとどまっています。今後は、機械的なAIから一歩進み、人間のようなコミュニケーションができる「もう一人の私」となるAIを目指しています。

 パルは、AIフェイスチェンジやAI骨格診断などのデジタルメイトサービスを提供し、簡単に自分の顔や骨格を理解できるようにしています。

 今後の目標は、お客様とスタッフがより密接に結びつき、「令和の商店街」のような個人商店の集まりを作り上げることです。

 最後に、ありのままの自分を楽しむことを支援し、コンプレックスと感じている特徴や偏愛を個性として認め、多様な美や価値観を共有できる世界を目指していると語って、講演を締め括りました。

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2024年6月16日 (日)

映画『うつろいの時をまとう』matohuの「美意識と手仕事

 去る5月15日、服飾ブランド 「matohu(まとふ)」のデザイナー、堀畑裕之氏と関口真希子氏のクリエーションを描いた三宅流監督の映画 『うつろいの時をまとう』の東京凱旋上映と、輪島塗・塗師の赤木明登氏 + 堀畑裕之氏の共著『工藝とは何か』の刊行を記念したトークショーが東京大学駒場キャンパスにて開かれました。
 登壇されたのは、デザイナーの堀畑裕之氏と関口真希子氏、工藝家の赤木明登氏、映画監督の三宅 流氏、東京大学名誉教授で哲学者の小林康夫氏です。「美意識と手仕事」をテーマに美を感じる心と、ものづくりに関する根源的な問いから見える世界を語る、大変興味深いイベントでした。

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 私は、特別先行試写会で映画 『うつろいの時をまとう』を昨春行われた「matohu」23/24秋冬コレクションで鑑賞していました。(このブログ2023.4.9付け参照)
 映像では、堀畑裕之氏と関口真希子氏が街を歩き、日常の風景に見られる微細な美、たとえばコンクリートのひび割れやシミ、塗装がはがれた錆などをスマートフォンで撮影し、それを服のデザインに昇華する様子が映し出されています。二人は、日本古来からの美意識である「無地の美」に着目し、何気ない風景の中から無限のテクスチャーや色合いを見出し、それをデザインに反映させる創作哲学を実践しています。日常の中で美や豊かさを発見するデザイナーの視点を端的に表現するアートドキュメンタリー映画で、久しぶりに静かな感動を覚えた作品でした。
 第41回モントリオール国際芸術映画祭のオフィシャルセレクションに出品され、ワールドプレミア上映されて、日本では今年3月25日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム他で、現在、全国を順次公開中です。

 トークでは、これまで気づかなかった「学び」がたくさんあり、下記にそのいくつかをまとめました。

「matohu」のテーマである「日本の眼」、その全体像や由来
 堀畑氏は、民芸運動の創始者である柳 宗悦が病床で書いた数ページの文に触発され、日本人が培ってきた独自の視点、「日本の眼」が現代にも通じることを強調します。柳は、西洋の工芸に偏る現代の美術界に憤りを感じ、日本の「無地の美」や「数奇の美」などが西洋への贈り物となり得ると述べています。堀畑氏は、この視点に立ち、日本のものの見方を再評価して、服のデザインに反映させる試みを始めました。8年間にわたる17章のコレクションを通じて、伝統的な「侘び寂び」という言葉を使わずに、「見ることの学び」を追求したといいます。

「見ることの学び」について
 堀畑氏の友人である輪島塗の赤木氏も、「見ることの学び」の重要性を語ります。赤木氏は35年にわたり漆の色彩を追求しており、現在は白い漆の黒を探究しているとのことです。
 堀畑氏も藍の複雑な色彩の神秘に触れ、映画監督の三宅氏も映画の中で「無地の美」に共感したと語っています。
 赤木氏は日本の伝統工芸が消えつつある現状を憂い、手仕事の重要性を強調しました。弟子を取って技術を継承することが重要で、師匠の仕事を「見て学ぶ」ことで技術が身につくと述べています。
 関口氏も江戸小紋の技術、中でも鮫小紋が失われつつあることを懸念し、人の手による制作が心に触れるものであると主張しました。
 また、堀畑氏は独立前にコムデギャルソンでパタンナーとして働いていた際、川久保氏から「服を良く見なさい」と教えられたとか。襟の角度など細部に目を向けることの重要性を学んだそうで、この経験から、伝統工芸以外でも「見ること」を学び、身体的に取り入れることができると感じたとのこと。過去の日本人の視点を取り入れる中で、昔の人の身体感覚と重なる瞬間があり、映画ではそこのところもうまく表現されているといいます。

「不作為の美」とは
 堀畑氏は、ものづくりにはコントロールできない部分があり、偶然の美は完全に無作為ではないと述べます。「ふきよせ」と「ぼろ(BORO)」のテーマは、不作為の美や偶然の美を表現し、街路に吹き寄せられた落ち葉の美と繋がります。
  関口氏は、意図しない美を取り入れたコレクションを通じて、不作為の美の価値を強調します。
  赤木氏は、漆の世界では計画的な美が求められますが、それでも言葉の届かない部分が存在すると語ります。
  堀畑氏は、ブランド名を「纏う(まとう)」と動詞にしている理由について、着る人が主語であって欲しいからだと説明します。そこには「ふきよせ」をまとって欲しいという願いも込められているといいます。映画では、服をまとう人の視点も描写されており、出演者の一人である赤木明登氏がコートを纏って夕焼けと一体化するシーンが「うつろいをまとう」ことの重要性を示していて、まさにこの言葉「うつろいをまとう」が映画のタイトルになったそうです。

自然と工芸との関わりについて
  小林氏は、ものづくりが自然を破壊する一方で、自然と共振することもあると述べ、伝統工芸は自然を利用していますが、それ自体が自然ではないと指摘しました。
 堀畑氏は、「自然」という言葉が明治時代に哲学者の井上哲次郎によって「ネイチャー」を翻訳するために作られた新しい言葉であると、注意喚起します。それ以前の日本では「自然」という概念は存在せず、山や川があるように、また自然薯という言葉にも見るように「おのずからしからしむ」と、勝手にそうなっているものを意味していたとのことです。日本では自然と人間が対照化されず、自然の中に自分たちも含まれているという感覚だったのです。ギリシア哲学に見られる「人工と自然」の対立は日本では意識されてこなかったとの説明に納得、感服したことでした。

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2024年6月15日 (土)

アバンティ「プリスティン」24/25秋冬「襲(かさね) 」テーマ

 アバンティのオーガニックコットンのブランド「プリスティン」の24/25秋冬ものの展示会が5月中旬、同社本社にて開催されました。
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 今シーズンのテーマは「襲(かさね) 」です。これは平安時代に生まれた「襲式目」に由来する言葉で、薄い衣を何枚も重ねることで襟元や袖口に生まれる美しい濃淡の美意識のこと。日本人が好む四季の移ろいを表しているとも言われています。

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 「何て雅な!」と思いながら、行ってみると、そこには落ち葉の重なりを連想させる銀杏(いちょう)のプリントシリーズが迎えてくれました。黄色く色づいた葉が舞い落ちる様子を描いた図柄は、深まる秋の情緒たっぷりです。草木染めによる優しい色合いが、温かいしなやかな肌触りのオーガニックコットンの生地を引き立てています。
 またもう一つ、注目したのがノンミュールジングウールとコットンをざっくり編んだニットの草木染め製品です。とくに今季は、緑の綿(グリーンコットン)の鉄媒染に挑戦、これにより緑綿の葉緑素の色が抜け落ちない染着に成功し、柔らかいヤクの毛を混ぜて深みのあるグレーのウェアを打ち出していたのも印象的でした。

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 さらに定番アイテムもバリエーションの幅を広げて、従来のアンダーウェアを3サイズ展開で復刻したり、スウェットに残糸・残布を新たに繊維として再生させたリコットン素材を使うなど、さらなる素材へのこだわりを見せていたり---。
 今、大人気のブランドらしい、積極的なチャレンジ精神を感じたコレクションでした。

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2024年6月14日 (金)

「コットンの日」イベント⑶ アワードは藤田ニコルさんへ

 「コットンの日」イベントで恒例の「コットンアワード2024」受賞式が執り行われ、アワードはモデルでタレントの藤田ニコルさんに贈られました。

  Img_73411jpg_20240620094101 右は、日本紡績協会会長で東洋紡代表取締役社長 竹内郁夫氏より藤田ニコルさんにアワードが授与されたワンショットです。

 自然体のキャラクター、多彩な才能が、自然でピュア、様々なシーンで活躍するコットンのイメージに相応しいという理由で選出された藤田ニコルさん。
 コットンの白いレースのワンピースで登場し、「お洋服に関わるお仕事をしているので、選ばれてすごく光栄です。コットン=白、というイメージが私の中では強いので、今日のワンピースは可愛らしくてピュアな少女らしさを表現してみました」と満面の笑み。
 「コットンと聞いて思い浮かぶのは、やはりTシャツやデニムです。コットン素材は毎日の生活の中でとても身近な存在です。おしゃれをしているときもコットン素材を取り入れていますが、家ではリラックスしたいので、動きやすいTシャツで過ごしています。私はストレスが溜まるのが大嫌いなので、ストレスフリーな服作りを心がけており、コットンは欠かせない素材です。」などと、受賞の喜びを語っていました

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2024年6月13日 (木)

「コットンの日」イベント ⑵ 福田 稔氏 特別講演

 今回の「コットンの日」イベントでは、昨年に続き特別講演にA.T. カーニー株式会社シニアImg_7331 パートナー 福田 稔氏が登壇、『2040年アパレルの未来 ~「成長なき世界」で創る、循環型・再生型ビジネス~』をテーマに講演しました。
 下記、その概要をまとめましたので紹介します。

1. アパレル市場の変化
  ウクライナ戦争を背景とするインフレの加速や、コロナ禍に伴う二極化の進展、人々の価値観が職場中心から個人や家族を中心とした価値観へと移り変わる中で、下記3つの変化があるといいます。
① 多く作り、新品を売る時代の終焉
 インフレの影響を除いた実質ベースでみると、コロナ前、2019年の世界アパレル市場規模は248兆円でしたが、まだ戻っていません。2027年までの予測を見ても、ほぼ0.3パーセントと横ばいで、量としてはほぼ増えていません。世界の新品アパレル市場は成長力に乏しく、新品を売る時代が終わりを迎えつつあることを示しています。これには中国とアメリカの成長率が下方修正されたことが大きく、日本は実質ベースで完全にマイナス成長に入っています。価格帯別にみると、ラグジュアリーにはまだ成長余地が存在します。
②中古市場の世界的な拡大
 新品が伸び悩む一方で、中古品市場は世界的に拡大しています。 国内でも物価高、サステナビリティ意識の高まりを背景に中古衣料品市場が成長。世界のアパレル市場規模の推移予測では2023年は約30兆を超え、2027年には50兆を超えると予測されています。2027年の新品市場は約250兆と言われていますから、市場の6分の1が中古品になると予想されています。日本でも同じような状況で、日本の中古品市場は既に4000億を超え、年10パーセント以上の成長率で伸びています。
③ウェルネス関連市場の成長
 アパレル全体が横ばいの中で、ウェルネスに関連するスポーツやアウトドアなどは大きく伸びています。背景にはコロナ禍を経た価値観の変化があります。コロナ禍の3年間、日本では幸福度が上昇し続けていますが、これは職場中心から個人や家族中心の価値観への変化があったからと推察されます。

2. アパレル業界のサステナビリティの現状と対策の状況
 アパレル業界は、環境汚染、資源の無駄遣い、人権侵害など、多くのサステナビリティ関連の問題を抱えています。国連はこれらの問題を糾弾しており、特にCO2排出が大きな影響を及ぼしています。地球温暖化は深刻な問題であり、過去50年間で地球の平均気温は急激に上昇しています。このまま対策を講じなければ、2100年には最悪のシナリオで地球の平均気温が+6.4℃上昇すると予測されています。最善のシナリオでも+1.5℃の上昇が見込まれています(国連IPCC)。
 温暖化による異常気象は各地で発生しており、グローバルなGDPにも大きな損失を与えています。しかし、現行の規制枠組みでは1.5℃以上の上昇を抑えることは難しく、さらに厳しい規制が求められています。温暖化による海面上昇は、例えば荒川の洪水リスクを増大させています。アパレル業界のCO2排出比率は全体の8%に達しており、業界全体でこの問題に取り組む必要があります。

 CO2排出量の大部分は、原料調達から縫製の工程で発生しており、生産量の増加に伴って排出量も増加しています。世界のアパレル業界では、2010年代からサステナビリティへの意識が浸透し始め、特にEUの規制強化によってその傾向が加速しています。
 EUは2022年に「EUテキスタイル戦略」を策定し、循環型へのシフトに向けた様々な規制枠組みを検討しています。先進国を中心とした大量生産・消費は、途上国に多くの社会問題を引き起こしています。特にアフリカでは、中古衣料品の露店市場が形成され、安価ではあるものの自国の繊維産業が育たないという課題が存在します。大量に運ばれた衣料品の一部はゴミとなり、スラム街などでゴミの山が形成されています。
 2023年、EUはアパレル・繊維業界が循環型に移行するためのTransition pathwayを発表しました。特にデジタルプロダクトパスポート(DPP)の義務化は市場に大きな影響を与えると予測されています。EUでは既に小売業界において環境負荷表示が始まっており、消費者からも支持を得ています。例えば、カルフールでは環境負荷表示が行われており、アパレル業界でも普及すれば大きな変革が期待されます。
 フランスでは昨年、衣服の廃棄を禁止する法律が公布され、今年から段階的に施行されています。また、2023年にはスウェーデンやオランダでも同様の法律が導入されています。フランスでは2023年1月より、リサイクル素材利用率、リサイクルの可能性、トレーサビリティ、マイクロプラスチックファイバーの含有有無を情報提供事項として義務付けています。ユニクロなどはこれに対応しています。
 また、フランスではリペアにかかる費用を補填する制度を2023年10月から導入しています。この支援の原資は生産者や輸入者に課され、拠出額は2023年から2028年までの5年間で1億5400万ユーロ(約240億円)に上ります。
 ニューヨーク州ではアパレル企業に対して環境負荷低減に向けた取り組み状況の公開を義務付ける法律の導入を検討中であり、カリフォルニア州でも同様の動きがあります。

 フランスや欧州においては、実態を伴っていないにもかかわらず環境に配慮した製品・サービスであると見せかける「グリーンウォッシュ」を規制する動きが加速しています。2022年9月、オランダ当局はH&Mに対して、コンシャスラインをグリーンウォッシュとして賠償請求し、欧州での販売停止が波紋を呼びました。他の欧州諸国でも公的機関によるグリーンウォッシュに関する調査や警告が増加しています。
 例えば、ウルトラファストファッションの英ASOS(エーソス)は、好調な業績にもかかわらずサステナビリティの観点から批判を浴び、株価は下落しました。ASOSは2030年カーボンニュートラルを宣言していますが、2022年7月にはグリーンウォッシュの疑いでイギリス当局の捜査が開始されています。欧州では「脱炭素」という言葉を安易に使うこと自体がグリーンウォッシュと見なされる可能性があり、取り組みの中身と質が問われています。
 その最たる例として、カナダのルルレモンが見せかけの環境配慮を主張しているとして、カナダの規制当局に提訴されています。サステナブル/ウエルビーイングなイメージがある企業でも、イメージと実態に矛盾があると、グリーンウォッシュと指摘されるリスクがあります。数年後には、第三者認証が必要なサステナビリティレポートの報告が企業に義務付けられる見通しです。

 日本でも経済産業省と環境省が2023年に「繊維製品の資源循環システム検討会」を設置し、現在は「産業構造審議会繊維小委員会」に引き継がれ議論が継続しています。2023年末には、繊維製品の資源循環システム構築に向けた課題と取り組みの方向性が示されました。今年、繊維製品における環境配慮設計を促進するために「環境配慮設計ガイドライン」が作成・発表されました。このガイドラインでは、繊維産業のサプライチェーンに従事する各事業者が取り組むべき環境配慮設計項目、評価基準や評価方法が設定されています。
 欧州で先行する規制強化の動向を踏まえると、今後日本でも新たなサステナビリティ対応が求められる可能性があります。

3. 資本主義と消費社会の行方
 ケイト・ラワースが提唱する「ドーナツ経済学」は、社会と地球の限界を尊重しながら経済を運営する必要性を強調しています。資本主義は地球の環境容量を考慮したモデルへと移行すべきです。特にアパレル業界は、バージン素材を使った大量生産が環境に多大な負荷をかけていることを認識する必要があります。
 現在、世界のマテリアルフットプリント(資源消費量)は増加の一途をたどり、地球の環境容量とされる500億トンの2倍に達しています。GDPとマテリアルフットプリントの成長率は密接に関連しており、アパレル・繊維産業におけるバージン素材の使用量も増加しています。循環型モデルへの移行が求められていますが、まずはバージン素材の使用量を抑え、リサイクルを促進するために素材自体の見直しが必要です。
 現状の技術では、混紡素材のリサイクルは難しく、3種類以上の混紡が困難です。そのため、単一素材やリサイクルしやすい素材へのシフトが求められます。現在、手放される衣類の中でリユース・リサイクルされる割合は約35%に過ぎず、クローズドループ(循環型)のモデルを構築することが業界の課題となっています。
 例えば、スイス発スニーカーのOnは使用済みのランニングシューズを回収し、素材を100%リサイクルする取り組みを開始しました。さらに、パーツ数を抑えた100%バイオベースの素材を使用したランニングシューズを販売しています。サブスクサービス「Cyclon」では完全リサイクル可能なランニングシューズも提供しています。同様に、東リはタイルカーペットの完全循環型モデルを開発しました。このようなモデルをどのように横展開していくかが今後の課題です。

 また、環境再生型(リジェネラティブ)のアプローチも必要です。食品大手のネスレは、2030年までに環境再生型農業からの調達を50%まで増やすとしています。サステナブルを超えたこのアプローチは、農地の二酸化炭素吸収量を増やすことを目指しています。繊維アパレル業界でも、パタゴニアやステラ・マッカートニーが環境再生型農業で栽培されたコットンを使用した製品を発表しています。綿花の栽培においても、このアプローチが重要なキーワードとなるでしょう。

 リーディングプレーヤーたちは、スコープ1/2/3の削減に向けた目標を掲げ始めています。例えば、ザラの親会社Inditexは、2018年から2022年にかけて売上を25%増やす一方で、スコープ3のCO2排出を6%削減することに成功しました。CO2削減に向けては、スコープ3の削減が重要であり、生産量の削減、製品仕様の再設計、ブランドポートフォリオの変革が必要です。

 さらに、現時点では新規植林・再植林が炭素除去の有力オプションであり、「排出量を減らす」ことが最も重要です。とはいえ気候変動の責任の大部分は先進国にあり、今後規制が強化されるほど、グローバルサウスからの反発が拡大する可能性があります。グローバルサウスのGDPは2040年前後に米国や中国を抜く可能性があり、世界は多極化と混迷へと向かうでしょう。
 現在は「株主資本主義」から「公益資本主義」への移行期です。新しいイデオロギーの下で、新たな繊維・アパレル産業の創造に取り組むべきです。消費者も徐々に消費行動の中でサステナブルを意識するようになっています。

 最後に、ライフスタイル企業に求められる企業経営の在り方が大きく変化する中、勝ち残るためのポイントを6つ、挙げました。
●大量生産モデルからの脱却:大量生産・大量消費を前提としたビジネスモデルからの脱却。衣服を長くリペアしながら着る時代へと変わっていく。
●循環型・再生型へのビジネスモデルのシフト:循環型のクローズドループを作り、バージン素材の利用を減らすことが喫緊の課題。中期的には循環再生型の要素を取り入れ、バリューチェーンに組み込み、環境再生につなげることが必要。
●カーボンニュートラルに向けた継続的な取り組み:アパレル産業はサプライチェーンの改善が必須。特に気候変動対策、カーボンニュートラルは不可欠。
●5R(リペア、リユース、リデュース、リサイクル、レンタル)を通じたライフタイムの延長:既存の製品に対して5Rを実践するのではなく、5Rを前提とした製品デザインや商品計画に変えていくことが重要。
●ESG対応:上場企業は株価を意識した無理な売上成長を追求すべきではない。売上・利益よりもESGスコアの向上を目指すことが株価の伸びにつながる。
●KGI/KPI改革:従来の経営指標を再設計し、幸福度や環境負荷を重視したKPI設計が必要。 

 以上のように、「企業経営の在り方が大きく変わる端境期にあることを理解し、適切な対応を進めていくことが重要です」述べて、講演を結ばれました。

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2024年6月12日 (水)

「コットンの日」イベント ⑴「サステナビリティ」をテーマに

 今年も5月10日の「コットンの日」を迎え、ホテル雅叙園東京にて「コットンの日」のイベントが開催されました。
 今年のテーマは「サステナビリティ」でした。
 冒頭、日本紡績協会の竹内郁夫会長(東洋紡社長)は、「日本の繊維業界は、持続可能な社会を目指し、環境配慮型の原料綿や加工プロセス、リサイクル技術を導入しています。また、サプライチェーンにおける人権尊重も重視し、多くの企業経営者が宣言しています。」などと挨拶。
 次いで特別講演に入り、福田 稔 A.T.カーニー株式会社 シニアパートナーが登壇、「2040年アパレルの未来 ~業界が持続可能になるためにすべきこと~」と題して講演しました。内容は明日のブログで詳しく紹介します。
 さらに国際綿花評議会アジア地区担当上席理事のラズヴァン・ワンチャ(Razvan Oancea)氏による講演があり、「U.S. Cotton サステナビリティとトレーサビリティ」をテーマに、U.S.コットン・トラスト・プロトコルについて解説しました。
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 氏は、「サステナビリティは単なる流行ではなく、すべての業界に必要な重要な要素です。米国の綿花業界では、1985年からエコシステムとサステナビリティに取り組み、水の使用量や温室効果ガス排出量、土地利用、エネルギー使用量を削減してきました。2025年に向けて、新たに土壌炭素の増加など6つの目標を設定し、農家やサプライチェーン、ブランド、消費者にとって情報の透明化と明確化が重要であることをアピールしています。米国は40年以上にわたり、安全で信頼性の高いサステナブルなデータを提供しており、CCIは生産を最適化する技術的なソリューションを提供しています。U.S.コットン・トラスト・プロトコルは、サステナブルで責任ある技術を用いて綿花栽培の新基準を策定し、サプライチェーン全体で製品を追跡して完全な透明性を確保しています。」と述べ、U.S.コットン・トラスト・プロトコルの意義を改めて強調しました。

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2024年6月11日 (火)

「青藍工房展 Parisの予感」プレス発表会 阿波藍モダンに

 この2月のプルミエールヴィジョン(PV)パリで国際的な職人技を紹介する特設エリア「メゾン・デクセプション」(このブログ2024.2.22付け参照)が開設され、そこでとりわけ目を惹いていたのが、徳島から初参加した「青藍工房」でした。
 この染色工房がこの5月中旬、東京・銀座かねまつホールで「青藍工房展 Parisの予感」を開催、プレス発表会に招待していただき、行ってきました。
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 徳島の藍染めは「阿波藍」と呼ばれ、江戸時代から国内の藍染市場を引っ張ってきました。「藍染のふるさと」と呼ばれる所以です。しかし、戦後、化学染料が登場すると、すっかり廃れてしまいました。そうした中、藍染の復興を願って1971年に橋本陽子氏が創設したのが「青藍工房」でした。橋本さんは溶かした蝋を生地に塗ることで、その部分が染まらないようにする「蝋けつ染め」によって、藍の濃淡を表現する独自な作品を生み出しました。
  2022年ル・サロンの絵画部門に入賞し、2023年パリのルーブル美術館で開催された「第28回国際文化遺産展示会」に出展し大きな話題を集め、今年のPVパリ「メゾン・デクセプション」への選出にもつながったといいます。

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 会場には橋本陽子氏(写真の車椅子の女性)とその娘である浮川初子氏夫妻(写真の両端)と橋本清子氏ら、橋本ファミリーが集い、華やいだ雰囲気にあふれていました。

 ここから展示作品の一部をご紹介します。

Img_74051  カトレアの花をモチーフに藍の濃淡で染めたシルクオーガンジーで仕立てたドレスです。前身頃2m、後身頃3mと、5mの布地が使われているとのことで、優美さたっぷりの仕上がりです。(浮川初子氏の作品)

Img_73911_20240617090101  「艶やかな美人」という花言葉の「月下美人」の花を、シルク紬に染め上げた幻想的なドレスです。(浮川清子氏の作品)

Img_74001_20240617090101  古代文字「西周金文の十二支」(浮川初子氏の作品)です。

Img_74041_20240617090201  2022年の「ル・サロン」展で、橋本陽子氏が初入選を果たした《上巳の渦》と名づけたテキスタイル作品です。「動物の爪が獲物を捕らえるかのような渦巻の表現が素晴らしい」と高く評価されたといいます。確かに葛飾北斎を思わせる大胆な構図は圧巻!と思いました。

 伝統の藍染めを藍蝋けつ技法でモダンに表現した藍の美を堪能したひと時でした。

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2024年6月10日 (月)

横浜トリエンナーレ 映画『首相官邸の前で』上映会&トーク

 今回の横浜トリエンナーレでは「野草の生きかた:ふつうの人が世界を変える」と題して、小熊英二監督映画『首相官邸の前で』の上映と、小熊英二氏を招き蔵屋美香(総合ディレクター/横浜美術館館長)とのトークによるスペシャルイベントが開催されました。

Flyer_s  映画『首相官邸の前で』は主に2011-12年の脱原発運動の流れをわかりやすくまとめたドキュメンタリー映画です。
 2012年夏、ごくふつうの20万人の人びとが首相官邸前に集まり、原発にまつわる政策に抗議しました。原発事故前は異なる立場にいた8人が危機を経て「脱原発」と「民主主義の危機」という共通の言葉で集まって、民主主義の再建は可能なのか。現代日本に実在した奇跡的な瞬間をとらえた作品です。

 トークでは、小熊監督がこの映画を製作費、わずか50万円のポケットマネーでつくったとお聞きしてびっくり!スタッフは編集担当の石崎俊一氏と2人だけだったというのにも驚かされました。出演者は全員無償協力で、映像はYOUTUBEで配信されていたものを選び、著作権を一つ一つクリアにした上で編集されたとのことです。 
 誰でもやろうと思えばできるのですね。お見事というしかない、感動の映画でした。長いと思っていた上映時間の1時間49分はあっという間に過ぎました。

 小熊氏は社会学者です。それがなぜこのような映画を制作しようとしたのでしょうか。そこには理由が2つあったといいます。一つは、氏が現代史研究をされていることで、反原発運動を記録しておく必要があると思われたことだそう。1968年の安保闘争のときもきちんとした記録がなく、残っていたのは一番派手な映像・写真だけで、全体がよく分からない状態になっているとのことです。
 もう一つは、映像として絵になる場面が多数あり、記録に値するものが多かったからといいます。実際、私も映画を見て、街頭運動のプラカード一つとっても創意工夫があり、アートなおもしろさがある、と思いました。

 この運動は確かに日本で起こったことであり、誰もが忘れてはいけないことです。でも今はもう多くの人が思い出そうともしない、そんな出来事になってしまっているようです。私も反原発運動があったことを覚えてはいましたが、いつの間にか念頭から消えていました。
 改めてこの映画を見て、これ程の大規模なものだったとは思ってもいませんでした。この運動は、NYの「ウォール街占拠」や香港の「雨傘革命」とは違って、世界にほとんど知らされなかったといいます。これには大手メディアであるTVや新聞での取り上げ方が小さかったことが影響しているようです。
 氏は今回、この映画を世界各国で上映して、反響の大きさに衝撃を受けたと語られています。何も知識のない人が見てもまた、100年後の人が見てわかるように、との期待を込めてつくられた映画だったのですね。

 トークをリードされた蔵屋美香館長もステキな語り手でした。タイトルの「野草」とは、日本語では「雑草」という意味だそうです。気候変動や災害、戦争、経済格差に不寛容と、わたしたちの時代は多くの生きづらさを抱えていますが、「ふつうの人びと」が雑草のようにたくましく、これらを変える力となりうるのではないかと、希望の光を感じさせる上映会&トークイベントでした。

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2024年6月 9日 (日)

横浜トリエンナーレ ⑺ 美術館外壁の大壁画が面白い!

  横浜美術館の向かって左横の外壁には巨大な壁画が描かれていました。高さ15m×幅60mもあるとのことです。
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 これは参加アーティストによるSIDE COREbig letters, small things》という作品で、会期中、毎日少しずつ書き換えられ、変化していきます。
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 愛嬌のあるキャラクターや「A DUSTING OF WHITE POOP」、「TIRED TIRE」といった文字など、行くたびに違っていて面白い!

 こういうグラフィティアートは、パリなんかに行くとよく見かけるものです。政治的な意見や地域社会の訴えが多いですが、それがこの横浜に出現するとは思っていませんでした。

 この作品も今回のテーマ「野草:いま、ここで生きてる」のメッセージを伝える大きな役割を果たしていたように感じます。

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2024年6月 8日 (土)

横浜トリエンナーレ ⑹ 象の鼻パーク「ハイヌウェレの彫像」

 象の鼻テラスでは、横浜トリエンナーレ組織委員会と連携した屋外アート展示企画として、信仰といった土着的なモチーフを作品に投影している久保寛子の「ハイヌウェレの彫像」(2020年)が展示されていました。
 「ハイヌウェレ」とはインドネシアの神話に登場する女神であり、殺されたその体から食物が生まれたと言われています。この種の神話は世界各地に点在していて、民俗学ではそれらをまとめて「ハイヌウェレ」神話と名付けられているとも。
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 近づいてみると、仰向けに寝そべっている女神の彫像はほんとうに巨大でびっくりしました。断片化された身体の1片、1片が特段の大サイズです。こんなにも大きなものを運んでくるとは、それだけでも大変だったのではないかと思いやられました。鉄の骨組みを土で丁寧に塗り固めていく作業には相当な時間がかかったことでしょう。

 象の鼻カフェで行われた久保寛子と神話学を専門とする平藤喜久子の対談にも途中参加させていただき、彫像誕生の経緯などを伺いました。
 構想をスタートさせたのは新型コロナウイルスの脅威に晒され始めた2020年。社会や人類の未来に対する不安が、創作への関心を根源的、原始的なものへ向かわせ、世界の古代神話にヒントを求めるようになり、「ハイヌウェレ」に行き着いたといいます。
 中でも“土”は日本の縄文土器や土偶にもみられるように、人間の創作活動において最も古い素材の一つで、世界や人間の始まりを“泥”や“粘土”として表現する神話も多く存在しています。
 「ハイヌウェレの彫像」は、雨や日光、風などの自然要素の影響を受けて時間とともに変化して、私たちに様々なイメージを喚起させることでしょう。この“土”の女神像を通じて、古代人が抱いていた希望や夢に思いを馳せてみては、と思いました。

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2024年6月 7日 (金)

横浜トリエンナーレ ⑸ アートもりもり「再び都市に棲む」

 今回の横浜トリエンナーレは、横浜駅から山手地区におよぶ広いエリアで、「アートもりもり!」と称し、「野草」の統一テーマのもとでアートを楽しめるプログラムになっていました。

 その一つ、「UrbanNesting:再び都市に棲む」と題した展示を見てきました。
 みなとみらい線「新高島駅」地下1階に広がる大空間に展示されていたたくさんの作品の中から、とくに気になった展示を紹介します。

 入口にドーンと置かれていたのが、巨大な土玉でした。
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 これは反骨のアーティスト、柳 幸典の作品《Ground Transposition》(1987/2016)です。この玉の中には3・11東北大震災の原子力発電所事故のために除染された土が入っているとのことです。

 またファッションデザイナーでアートディレクターの矢内原充志の作品、「うつを向いて歩こう」の展示も興味深かったです。
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 展示されていたのは、横浜の街をうつのように下を向いて歩き、道路を身長の高さから見下ろして撮影した写真をそのままプリントした生地で仕立てた服のコレクションです。
 服が道路の模様に溶け込み合う、都会のカモフラージュ! これまで見たことのない斬新なアイディアに感銘しました。

 みなとみらい線馬車道駅コンコースには、写真家、石内 都の「絹の夢-silk threaded memories」がインスタレーションされていました。
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 石内 都は群馬県桐生市で生まれ、6歳まで過ごしたといいます。桐生は織物の産地ですから、絹への関心は強かったことでしょう。2010年より銘仙や繭、織物工場、製糸工場の撮影を始めたそうです。
 横浜はとりわけ絹とゆかりの深い都市でもある、ということで、現在も稼働している絹の製糸工場と、屑まゆを製糸して化学染料で染め、平織した廉価な銘仙のきものの写真がインスタレーションされました。
 「絹の夢」は、近代日本の栄光を象徴する美しい光沢のある絹を見事に描き出しています。

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2024年6月 6日 (木)

横浜トリエンナーレ ⑷ 「すべての河」の章

 横浜トリエンナーレのテーマ「野草:いま、ここで生きてる」の「すべての河」と名付けられた章は、メイン会場である横浜美術館以外に設置された二会場で展示されました。
 「すべての河」というタイトルは、イスラエルの作家ドリット・ラビニャンの小説『すべての河』(2014年刊)から取られています。このタイトルは、数多くの小さな流れが合流して大きな川になる様子を比喩として使い、国籍、人種、宗教、言語の違いを超えて結びつく新しい社会関係を象徴しています。

 一つ目の会場はBankART KAIKO。約100年前の帝蚕倉庫の一棟を復元した建物内にあるアートスペースです。
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 ここでは本展の最年少作家、25歳のミャンマーのアーティスト、ピェ・ピョ・タット・ニョのインスタレーション、《わたしたちの生の物語り》(2024年)が目を惹きました。金属や植物、人工的加工物が入り混じり、朽ちて崩壊していくようである一方で、新しい生命体に変態したかのように見える作品です。有機的な形と赤い光が合わさった様子は、何やら奇妙な生き物のよう。また3年前から内戦が続くミャンマーに生まれた、全く新しい生命体かもしれません。

 二つ目の会場は旧第一銀行横浜支店です。1階ホールでは、カフェや古着屋、 低料金の宿泊所などを運営する人々の活動が紹介されていました。
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 中でも目立っていたのが、杉並区高円寺でリサイクルショップ「素人の乱」を経営しながら、任意団体「貧乏人大反乱集団」を主宰する松本哉による大パネル展示です。そこには「革命の先にある世界」をイメージして、「世界大混乱!! もうやるしかない!!」とか「2024年、世界のマヌケ地下文化圏の奴らの交流は、いよいよとんでもないことに!!」などと書かれています。かつての反体制派の若者たちを彷彿させられ、もし革命が起こったら、こんな風になるのかも、と思ったりしました。
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 またリメイクブランド「途中でやめる」の山下陽光が初参加し、今回のテーマである「野草」をモチーフにした新作を発表、リメイク服を展示販売していました。

 2階では、オランダの作家、ブック・フェルカーダによる《根こそぎ》 (2023‐2024年)と題したHDビデオ(カラー / サウンド / 6分30秒)上映が行われていました。
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 庭に住む植物や虫たちが、薬剤をふりまく庭師に、わたしたちが生きる環境を壊さないで、と語りかけるストーリーです。動物と人間、植物が混じり合ったような奇妙なキャラクターが登場し、夢で幻覚を見ているような世界が繰り広げられます。
 人と自然の新しいあり様を表現するアニメーションでした。

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2024年6月 5日 (水)

横浜トリエンナーレ ⑶ 複雑な状況を逞しく生き抜く人々

 横浜美術館の1階に戻ると、そこには複雑な状況を逞しく生き抜く人々を表現したインスタレーションが展示されていました。

 正面横の展示室で、まず目を惹いたのが壁面を彩るカラフルな原色の菱形模様でした。
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 これはフィジーのアーティスト、サローテ・タワレの《一緒にいたらもっといい》(2022)という作品です。タワレは祖母が作っていたフィジーの織物をもとにこれを制作したそうです。そこにはトタン屋根の小屋があり、中にはモニターが3台設置され、友人と過ごすオーストラリアの日常やフィジーにいる親戚とのメッセージが表示されています。人とのつながりの重要性をアピールするインスタレーションでした。

 その奥に設置されていたのが、有刺鉄線を使った展示です。

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 南アフリカのアーティスト、ルンギスワ・グンタによる《馴染みのないものへの回帰》(2018~2024)という作品で、イガイガの有刺鉄線は黄や緑の布でくるまれています。一見、草木が生い茂っているかのようにも見えます。
 グンタはこの作品で南アフリカの不平等や不均衡を表現したとか。アパルトヘイトは終わったかのように見えて、実はまだ終わってなどいなくて、その真っ只中にいるとのことです。作品を通じてこのことを知らせたかったといいます。
 非暴力的な社会になったようでも、そこには支配の歴史が色濃く残っていて、偏見はなかなかなくならないのですね。

 最後に横浜美術館でもう一つ、館外の左端にあるギャラリーの展示を紹介します。それは中国広州で活動するプリックリー・ペーパー(刺紙)というチェン・イーフェイ&オウ・フェイホンのアーティスト2人組による《揺れ動く草の群れ》(2024) という、段ボールのインスタレーションです。
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 会場には中国に生きる人々の生活の様々な場面を大地から生える草のように表現した段ボール彫刻が立っています。そのあちこらに手づくりの本が置かれていました。監視社会の中国では自宅で本を作って楽しむ分には警察に捕まらないそうです。
 表現の自由を求める人々の想いが伝わってきて、何とも複雑な気持ちになりました。

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2024年6月 4日 (火)

横浜トリエンナーレ ⑵「わたしの解放」と「密林の火」に注目

 無料だったグランドギャラリーから上階へ移動して、展示フロアに来ました。ここには7つの展示室があり、「わたしの解放(My Liberation)」、「流れと岩(Streams and Rocks)」、「鏡との対話(Dialogue with the Mirror)」、「密林の火(Fires in the Woods)」、「苦悶の象徴(Symbol of Depression)」の章立てで構成されていました。

 とくに注目したのは「わたしの解放」という章で、このタイトルは日本のアーティスト、富山妙子の自伝的エッセイ『わたしの解放 辺境と底辺の旅』(1972年刊)に由来しているとのことです。ここはまさにこの作家の創作の軌跡をふり返る作品展でした。(ここだけ撮影禁止エリアになっていて、残念でした。)
 炭鉱や日本の植民地支配をテーマにした作品を発表し、99歳でこの世を去った富山妙子は、日本人の裏の部分を見つめ直した画家だったのです。中でも衝撃だったのは、1980年、韓国で起きた光州事件を題材にした版画シリーズです。民衆蜂起で多くの市民が軍に殺害された悲劇が、版画という技法でより際立っていました。
 実は私は日本にそのような画家がいたなんて、知らなかったのです。ほんとうに凄い!と愕然としました。最晩年に描かれた風神・雷神図も迫力に満ちた傑作で、驚嘆しました。

20240429124746dsc_02461jpg  「密林の火」の章も、過去の歴史から現在の姿を映し出す、ショッキングな作品が多かったです。
 「火」とは紛争や対立、衝突や事件のたとえでした。デモ行進の映像もあふれていました。
 中でもギョッとさせられたのが、ビニール袋入りの捨てられた(いらなくなった?)人間の彫刻です。ジョシュ・クラインによる作品《生産性の向上(ブランドン/会計士)》、《営業終了(マウラ/中小企業経営者)》(2016)で、トマス・ラファ《Video V59: ロマ人に対する民族主義者の抗議》(2013)のビデオの前に、転がっているのです。
 AIの発達により仕事を奪われて捨てられた弁護士や銀行員、秘書といったホワイトカラーの遺骸だそうで、これも恐怖でした。

 また興味深かったのは坂本龍一の「こわれたバイオリン」の展示です。
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 2006年にビデオアートの父といわれたナム・ジュン・バイク追悼ライブに出演した坂本は、破壊的精神に満ちたバイクの精神に敬意を表して、バイオリンを叩き壊し、引きずって歩くパフォーマンスを行ったそうです。そのときのバイオリンが展示されていました。

 「鏡との対話」の章では、鏡と対話する骸骨たちの姿が現れます。
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 オズギュル・カーの《枝を持つ死人(『夜明け』より)》(2023年)の骸骨がいる、その鏡には自分たちの姿も映り込みます。これは魯迅の詩集『野草』の一節を象徴する展示とのことですが、やはりちょっと怖かったですね。

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 ここには「縄文と日本の夢」と題したコーナーがあり、縄文土器や岡本太郎の縄文の写真も飾られていて、ここだけ穏やかな空気が流れているようでした。

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2024年6月 3日 (月)

横浜トリエンナーレ ⑴ テーマ「野草:いま、ここで生きてる」

 3年に1度の現代アートの祭典「第8回横浜トリエンナーレ」が開催されているとあって、毎回行っていることもあり、今回も見に行ってきました。20240429122621dsc_02291
 アーティスティック・ディレクターは北京を拠点に国際的に活躍するリウ・ディンとキャロル・インホワ・ルーの二人で、テーマは「野草:いま、ここで生きてる」です。「野草」は、中国の小説家・魯迅の詩集『野草』(1927年刊行)に由来する言葉で、この詩集には、彼が当時、中国国民党政権の言論弾圧下で直面した個人と社会の現実が描かれています。
 今回の横浜トリエンナーレは、この彼の世界観と人生哲学に共感するものでした。「野草」とは孤独で無防備な存在でありながら、抑えがたい生命力と反抗的な精神を象徴する存在を意味していたのです。
 コロナ禍が収束し回復へ向かい始めたのは束の間でした。今では、世界で戦争や紛争、衝突が勃発し、「個人」の存在がふたたび妥協を強いられる国々が現れ、気候変動はさらに深刻化しています。
 私は本展がこうした深まる危機感を背景に、個々の人間性、それぞれの勇気、再生力、信念、そして連帯を表すテーマを選ばれたことに敬意を表したいと思っています。ある人は政治的過ぎる、暗い、重苦しい、怖いなどと否定的な感想を述べる方もいますが、「現代アート」と言うのは「常識」をひっくり返すものであっていいのではないでしょうか。
 ファッションの世界も同様で、コム・デ・ギャルソンといったアウトサイダーが高く評価されています。社会問題や政治への疑問など時代背景に対するメッセ―ジを伝えることは、アートの重要な役割です。
 改めて、横浜トリエンナーレの野心的かつ勇気ある取り組みに感銘しました。

 会場は、約3年ぶりにリニューアルオープンした横浜美術館を含めて5つあり、世界31の国と地域から93組のアーティストが参加しています。また「アートもりもり!」と称して市内の芸術活動拠点でも展覧会が開催されていました。

 メインの横浜美術館から見ていきましょう。
 吹き抜けの開放的なグランドギャラリーはガラス張りの天井から自然光が入り、以前より明るい印象です。

 最初はこのグランドギャラリーでの展示で、「いま、ここで生きてる(Our Lives)」の章です。ここは誰でも無料で入れるようになっていました。

 まず目に飛び込んできたのは、天井から吊り下がっている巨大な傘のようなインスタレーションです。
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 赤い布地が編み込まれていますが、今にも崩れそうにも見えます。サンドラ・ムジンガ《そして、私の体はあなたのすべてを抱きかかえた》(2024年)の作品で、大きなテントのようなものもあり、中に入ると胎内に包まれているような感じがしました。
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 中央には、黒人の男性と白人の女性がいびつに組み合わさり、赤ちゃんが飛び出している奇妙な作品が置かれています。

 ピッパ・ガーナーというトランスジェンダーのアーティストによる《ヒトの原型》 (2020年)という作品で、多様性のあり方を問い続けているようです。

 


  左右の階段から2階へのスペースは、もうまるで難民キャンプのようでした。
 掘っ建て小屋のような仮設の家は、北欧の少数民族「サーミ族」の血を引くというノルウェーのヨアル・ナンゴという作家の作品で、素材はすべて横浜近郊の自然や街の中で見つけたものを利用してつくったものだそうです。
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 資源不足や気候変動に向き合う現代社会に対し、このアーティストは人と自然が共生する先住民の知恵に学んでみてはどうかと、と示唆しているようでした。

 その上には大画面があり、映し出されているのは、ウクライナのアーティスト集団「オープンワーク」による映像作品「繰り返してください」です。1-0240429123831dsc_0237
 ウクライナの危険な戦場を背景に難民キャンプの人々が、一人一人登場し、不気味な声を、それも大音量で発しています。その声は戦地の人々が耳にしている音であり、武器の音や爆発音を模したものでした。
 ゾッとさせられる光景に接して、平和ボケした私たちですが、他人事ではないことを感じさせられました。

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2024年6月 2日 (日)

2025年春夏ミラノウニカ「流行色2024 SUMMER」掲載

Photo_20240607232201  この5月に発行された「流行色 2024 SUMMER No.617」に、今年2月に開催された「2025年春夏ミラノウニカ」の柳原美紗子の記事が、掲載されました。

 本誌にその概要や発表されたトレンドテーマやカラー、素材の特徴などを4ページにわたり解説しています。どうぞご覧ください。
 (クリックすると拡大します。)
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2024年6月 1日 (土)

2025春夏PTJ展 ⑽ ファンシージャカード こだわりの質感

 ファンシーなジャカードでは、質感の高さへのこだわりが見られます。 

有限会社クロスジャパン
 同社は、日本国内の各産地が培ってきた意匠性の高いクオリティを活かすために、テクスチャーにこだわった自社オリジナル企画によるテキスタイルを毎シーズン、マス見本として作製し、提案しているテキスタイル企画会社です。
Img_71581_20240607221501  右は、フリンジフラワーです。カット長の長い大胆なフリンジが特徴で、ワッシャー仕上げによる生地にもみ込まれたナチュラルな風合いにも注目です。ベースがナイロン混の素材のため、さらりとした春夏らしい感じに仕上がっています。
Img_73551 右は、ギンガムカットボーダーです。コットン60/キュプラ/38/ポリエステル2
生地の中に2種類の異なるギンガムチェックを入れて表現した生地です。薄手の春夏らしい軽やかな感じの生地です。

宇仁繊維(株)
 メイドインジャパンにこだわったテキスタイルメーカーです。
 ポリエステルを中心に、合繊素材や綿・シルクなどの天然繊維を自社用機の活用と協力工場との連携により、小ロット・短期間の商品提供を実現させています。
Img_70941  右は、「What’s Next(次の売れ筋)」Textile コーナーに出品されていた生地で、「20d分繊オーガンジージャカード」です。
 タテに分繊糸を使うことで、ハリ感と軽さを演出。糸の収縮差で繊細な表面感を出した、ジャカード織ならではの柄表現になっています。

有限会社山政テキスタイル
 1916年創業の丹後の合繊服地メーカーです。丹後産地の特徴である強撚糸加工技術を駆使し、川下志向のオリジナル素材造りを目指しているといいます。
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 Img_71201jpg 好評だった前回に引き続き “メイドイン京都” をテーマに2次・3次と様々な京都の後加工技術を施した素材を提案しています。
 右は、綿100%ボンディングオパール加工デニムです。

国島(株
 国島株式会社は創業1850年、尾州で最も古い歴史を持つ毛織物メーカーです。
 高密度規格をベースに多くの協力工場とのコラボレーションや独自の加工メソッドから生み出される生地は、Img_72421 変化に富んだユニークでモード感あふれるものとして海外のトップメゾンからも支持されています。
 右は、ファンシーカラミで杢調のもの。レーヨン/コットン/アクリImg_72351 ル混。


 右は、オパールローズ格子です。 

吉田染工(株)
 丸編み産地の和歌山で、糸の染色加工(チーズ染色)を行っている染工場です。グループ会社の貴志川工業でも生地の整理加工を行っており、グループ全体で糸及び生地加工の染色対応ができるといいます。
 さらに、工場内にニット機械を導入し、糸染から編みまでの一貫生産を提案する「ソメカラ (SOMEKARA)」プロジェクトでは、オリジナルの柄を6色のジャカード編みで繊細に表現する企画が人気を集めています。

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 また、SRYと呼ばれるインレー組織を活用した特殊なニット生地の開発と提案にも力を注いでおり、ニットと布帛のハイブリッド企画として、他にはない新しい感覚を追求しています。

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