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2024年4月

2024年4月30日 (火)

「コダワリノヌノ2024」展 川村ニットの熟成綿に注目

 「コダワリノヌノ2024」展が、去る3月27日~28日の2日間、渋谷区文化総合センター大和田2Fのギャラリー大和田で開催されました。
出展したのは、泉工業(株)、井脇織物(株)、島田製織(株)、有限会社カナーレ、川村ニット(株)、(株)ワンエニー、カネタ織物(株)、宮下織物(株)、加栄レース(株)の1府8県9社です。各社の匠達が織りなすコダワリの生地が展示されました。

 中でも目新しく思ったのが、川村ニット(岐阜県)が手掛ける熟成綿です。
 熟成綿とは、水分を十分に吸収させて綿が開花した状況に戻したコットンのことです。
 熟成室という多湿の環境で綿のスライバーを20~40日間、保存すると(これを熟成すると言っています)、綿繊維1本1本の天然クリンプが増え、公定8.5水分率が8.5%近く上昇。綿繊維が膨れて太く柔らかくなり強度が増し、紡績し易い状態になるといいます。
 Img_64181   やわらかな肌触りが気持ちいい熟成綿ニットに注目です。

 島田製織(兵庫県)は播州織の産元で、洗練された高級感のある先染め綿織物に定評があります。シンプルなものからファンシーまで、様々。
 左はファンシーなコードレーンギンガムです。右はよろけ織です。限られた機屋でしか織ることができない希少な織物です。
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 井脇織物(和歌山県)
Img_64211jpg_20240513085401  コットン/レーヨンのロングパイルです。シルクのような光沢とふっくらしたハリ・コシ感、きしみ感があるのも魅力の生地です。

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2024年4月29日 (月)

Ifs未来フォーラム~2024年から始めるサステナビリティアクション~ ⑵ 「Z世代」×「旅」をテーマに

  「ifs未来フォーラム2024~2024年からはじめるサステナビリティアクション~」では、トークセッション1に続くトークセッション2で、「Z世代」×「旅」のテーマが取り上げられました。

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 セッションのタイトルは、「令和的非日常~ Z世代の旅から見えた、これからの『消費の兆し』と『マーケティングの方向性』~」でした。中村ゆい氏がファシリテーターを務め、(株)JTBコミュニケーションデザインの吉濵 舞氏とifsの小林脩人氏がゲストとして参加し、座談会形式でディスカッションが行われました。

  セッションではまず、旅から見えたZ世代の消費の兆しについて解説がありました。
 Z世代は、より高い目標の達成から等身大の目標の実現へと価値観がシフトしており、また社会への関心が一般的な社会全体から身近なコミュニティへと変化しています。彼らの消費キーワードは「小さな安心を積み重ねる消費」や「心理的なつながりを求める消費」であり、自己表現よりも自然な自己を重視し、SNSを日常の記録や思い出のアーカイブとして活用しています。

 次に、「令和的」マーケティングの方向性について、Z世代が内面的な満足感を求める傾向が強まっていることが強調されました。これに伴い、消費者との関係が平成時代のような一方通行から、より対話的で参加型の関係へと移行していくことが示唆されました。
 コロナ禍を経て、若者世代の旅の在り方が大きく変化していることが浮き彫りになった興味深いセッションでした。

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2024年4月28日 (日)

ifs未来フォーラム~2024年から始めるサステナビリティアクション~ ⑴ 「あしたの消費のドライバー」

 伊藤忠ファッションシステム株式会社(以下、ifs)が2月末に開催した「ifs未来フォーラム2024~2024年からはじめるサステナビリティアクション~(以下、未来フォーラム)」に参加しました。
Ifs  「サステナビリティ」というテーマにふさわしい、東京・南青山の緑豊かなLittle Darling Coffee Roastersを会場に、ファッションや化粧品、食、自動車、百貨店、不動産、商社など様々な業種から約200人が集う中、世の中の今と未来を読み解き、一歩先の新たなビジネスの可能性を考えるトークセッションが実施されました。 
 クローズアップされたのは環境意識が高いといわれる 1996年ごろ~2012年ごろ生まれの「Z世代」です。彼らは2020年には全人口の約3分の1となり、今後収入の4分の1を占め、未来を大きく動かす存在になると予測されています。

 トークセッション1では、「あしたの消費のドライバー」と題して、ifs 未来研究所の上席研究員である小原直花氏と浅沼 小優氏が登壇し、ファシリテーターにはifs未来研究所の所長代行である山下徹也氏が務めました。彼らは2024年の消費を動かすキーワードとして、「コミュニティコマース」、「ケアリングエコノミー(思いやり経済)」、「メタバースへの参加」、「ゆっくりとしたリカバリー」を挙げ、消費の牽引役となるZ世代の消費マインドを掘り下げました。

 特に注目すべきはifs独自の世代マーケティングです。コロナ禍が明けて、気候変動への意識が高まるとともに、人との交流が活発化しています。自己や周囲への関心が強まる中、男性は仕事、女性は家庭に重点を置く傾向も根強く残っており、年齢によって異なるライフステージの影響が顕著になっています。リタイア世代がのんびりとしたリラックスムードを楽しんでいる一方、40代以下は経済的な不安や政治への不信感から「いらいら」した気分を抱える人が多く、現役世代ではとりわけ経済的不安や人間関係、ストレスケアに対する不安・心配が高まっていると指摘されています。

 この中で浮上しているのが、ifsが新しく発表したオリジナル世代区分の「Self-D世代」です。Z世代の中の18~22歳、2001年~2004年生まれの若者世代を指し、“ Self-D”の “ D” はDiscipline(自律)/Diversity(多様)/ Defense(防御)を表しています。「不安定さ」、「あわただしさ」、「さみしさ」を感じつつも、新たなチャレンジや興奮を求める気持ちが強い世代とされています。

 その特徴は「自分の暮らしは自分で守る」、「他者の視点を積極的に取り入れて自身の可能性を広げる」、「成長の実感が不安を解消。常に動き続けることを意識する」、「お金は自分の選択肢を広げてくれるもの」、「消費は自分の成長を映すもの」にあります。企業はこれらの特性を踏まえた上で、新たなビジネスを創出していくことが重要だと強調されました。

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2024年4月27日 (土)

第11回綿織物産地素材展 新規増え活気のある商談風

 日本綿スフ織物工業連合会(綿工連)主催の第11回綿織物産地素材展が去る3月半ば、東京・六本木の綿工連会館にて開催されました。
出展者は、株式会社杉岡織布(高島)、高麻株式会社(高島)、辰巳織布株式会社(大阪南部)、東洋織布株式会社(知多)、株式会社ミツノブ(九州)、株式会社和紙の布(大阪南部)の6社で、辰巳織布と東洋織布は2年ぶりの出展でした。
 小規模ながら、活気のある商談風景が見られました。主催者によると新規の来場者が増えたとのことで、今後の動きが期待されます。

Img_61371 株式会社ミツノブ(九州)
 久留米絣の伝統を受け継ぐ久留米織の織元です。
 昔懐かしい感覚を残しながらもモダンに仕上げた生地が揃っています。
 多用途に使いやすそうです。

高麻株式会社 (高島)Img_61571  
 オリジナル高島ちぢみ、先染めで綿100%。
 2重ビームのサッカーちぢみなども。



株式会社杉岡織布(高島)
 撚糸技術を活かしたちぢみで、独特の繊細なカラーグラデーションが美しい先染め楊柳を提案しています。日本の蒸し暑い夏に最適な機能とファッション性を備えた生地です。Img_61391

株式Img_6174 会社和紙の布(大阪南部)
 和紙40/綿60 蜂の巣状の織り目を持つワッフル織。
 カサッとした独特の温かみのある風合いに惹かれます。

東洋織布株式会社(知多産地)
 昭和初期に一世を風靡した知多木綿の産地からの出展です。帆布からガーゼまで、様々な白生地コレクションです。Img_61301_20240511174701

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2024年4月26日 (金)

ネクストファッションデザイナー インクルーシブ受賞作品

 東京都主催の学生向けファッションコンクール「Next Fashion Designer of Tokyo 2024(ネクストファッションデザイナー オブ トーキョー2024) 」と日本独自の着物などの文化や伝統を現代のファッションの力により新たな形で世界に発信していく「Sustainable Fashion Design Award(サステナブルファッション デザイン アワード)」の最終審査作品発表会が3月20日、有楽町マリオン センターモールにて開催されました。
 今年で2回目の開催となるネクストファッションデザイナーには約1300件、サステナブルファッション・デザインアワードには約1000件と、昨年の4割増となる約2300件の応募が集まったそうです。
 応募者が急増した背景には、豪華な審査員陣や賞金だけでなく、提供される教育プログラムも大きく寄与したといいます。このプログラムは単なるアワードで評価されるための指導ではなく、クリエイターとしての視点からデザイナーとしてのビジネス展開に必要なスキルまで包括的にカバーしています。それが将来的なデザイナーとしての成功を目指す人々にとって大きな魅力となっているようです。

  各部門の受賞作品が表彰される中、とくに興味深かったのがインクルーシブ部門です。障害のある方の着用を前提としたデザイン部門で、大賞に輝いたのは、東京モード学園の速水美里さんでした。

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 上が速水美里さんの作品「あべこべ」です。視覚障がい者の方を対象とした前後裏表の無い四方面で着ることのできる服をコンセプトに、日常生活を送る上で、前後裏表を確認せずに容易に着脱できる服を制作したとのことです。柄は汚れが目立ちにくいマーブル模様を、ニードルパンチで表現しています。布にフエルトを打ち込んでいるため、立体感を出しつつ、汚れたりほつれたりした際もすぐに修正できます。ニードルパンチの特性であるダブルフェースという持ち味を生かし、裏表見え方の変わるデザインを意識したといいます。

 優秀賞は二人で、一人は東京モード学園の佐藤愛海さんの作品名「Color Freedom(カラーフリーダム)」です。
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 青色は人に落ち着きを与え、黄色は明るさや元気を与えるとされています。対比の強い色を使用することで異なる色を識別しやすくなり、青色と黄色は色盲の方でも識別が容易です。色は悩むものではなく、楽しむものとして捉えられるべきという考え方で制作されたとのことで、すばらしいです。

 もう一人が文化服装学院の松本優美永さんの作品名「Comme Je Suis(ありのままの私)」です。
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 着心地を重視し、ゆったりとしたサイズ感で、動きやすいストレッチ素材を使用。袖が汚れた際、簡単に取り外しができたり、スカートは紐を引っ張ることで、使い勝手の良さを考慮していたり、またその日の気分でフォルムを変えることができたり、機能的なデザイン性が評価されました。

 今年は初年度よりもインクルーシブというテーマへの理解が深まり、多様な視点から見た思いやり溢れる作品が多く集まっていた印象です。全体に見ごたえのある発表会でした。

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2024年4月25日 (木)

TOKYO AI Fashion Week/2024 A/W Contest 結果発表

 「TOKYO AI Fashion Week/2024 A/W Contest」の審査結果が発表されました。
 RFWT(楽天ファッションウィーク東京)のリリースによると、国内外から集まった応募総数1,900以上の作品の中から、最終審査に進んだ90作品に対して、一般投票と審査員による投票によって下記、最優秀賞と優秀賞の全3作品が決定したとのことです。

Ai1  最優秀賞「Ninja Revival - 令和に転生した忍者たちの裏甲賀すぎるランウェイ」
 Creator Name: Satoshi Sakai
 黒装束を纏わなくても、天井を歩いたり水の上を歩いたり壁をよじ登ったり、その動きは忍者そのもの。明るく楽しい令和版忍者が発現されています。

 Ai3 優秀賞「smoke to wear」
 Creator Name: こまれ
 煙を着る、そんな決まった形がない服に未来を感じます。



Ai2  


 優秀賞「clothes for animals」
 Creator Name: つじ
 動物達の美しさを最大限引き出すために生み出したコレクションだそう。思わずギョッとさせられた刺激的な作品です。



 今や、生成AIによるデザイン革命が起こっています。新たなアイディアやデザインが次々と生み出され、従来の常識を覆すような斬新な作品が生まれています。この革命により、デザインの可能性が無限に広がり、創造性を持った人々がますます活躍する時代が訪れようとしています。そう思うと、ちょっとワクワクしてきますね。未来がどうなっていくのか、楽しみになります。

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2024年4月24日 (水)

TOKYO AI Fashion Week/24 AW Contest/生成AIセミナー

 RFWT2024年秋冬の関連イベントとして、TOKYO AI Fashion Week(主催:OpenFashion社)が実施されました。
  イベント期間中には人と生成AIによる最先端技術とファッションクリエイティビティが融合する、革新的なファッション作品のデザインコンテスト「TOKYO AI Fashion Week /2024 AW Contest」が二日間限定で東京・青山にて一般公開されました。展示されたのは、応募総数1,900以上の作品の中から一次審査を通過した90作品の内の18作品です。
  Img_63151_20240506203501
 上は2024 AW Contestwで選ばれた作品の展示風景です。
 来場者は人間とAIによって生み出された斬新なファッション作品を鑑賞し、さらにお気に入りの作品へ投票することで、AIを活用してファッション業界に新しい風を吹き込むプロジェクトに参加することができるようになっていました。(私も一票、投じました。)

 またファッション業界への生成AIの影響やAIの最新事例などを語る「ジェネレーティブAIとファッションの未来」と題したセミナーが同時開催されました。登壇したのは(株)OpenFashion代表取締役/CEO上田 徹氏と同最高責任者/COO上條千恵氏です。
 その気になったポイントは次のようです。
・市場が急拡大し、AIゴールドラッシュが起きている。AIに必要なGPUチップ、データセンター需要が急増、売上が3倍に急拡大。
・Metaが桁違いのAIインフラを構築する。ザッカーバーグCEOは「完全な汎用知能の実現を目指す」と宣言。
・Open AI社の動画生成AI Sora。テキストを入力するだけで魅力的な動画を即座に生成。
・失業のリスク。1月に発表されたハリウッドのリーダー300人を対象にした調査で、回答者の4分の3が自社の雇用・削減・統合に促すと回答している、など。
・仕事の変化。ライティングは33%減少、翻訳は19%減少、カスタマーサービスは16%減少、逆にビデオ編集・制作は39%増加、Webデザインは10%増加、ソフトウェア開発の仕事も増加。
・著作権のリスク。AIが生成したアートは著作権を持つことができないと、米国の連邦裁判官が裁定したことなど。これに対してMeta、グーグル、マイクロホストは反発している。

 生成AIは今後、ますますファッション業界に大きな影響を与えることになりそうです。期待とともに刺激的なトークセッションでした。

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2024年4月23日 (火)

RFWT24/25秋冬「アルゴリズムによって形成された着物」展

 RFWT2024年秋冬では会期中、「Algorithm-Formed Kimono(アルゴリズムによって形成された着物)」展が開かれました。
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 これは “Sync Fabric Studio”のインスタレーション第1弾です。“Sync Fabric Studio”は2024年に創設された体験型スタジオで、現代社会におけるファブリックの在り方を提案しています。
 ここではKORI-SHOW PROJECTの山口 壮大氏と 東京国立博物館協力の元、江戸時代の“着物の図案”をジェネレーティブAIで機械学習し、伝統に即しながらも革新的なグラフィックを生成。また、着物の“無駄の無い構造”にも着目し、データシミュレーションを応用して、最新のファブリックを用いながらも廃棄率をゼロにしたパターンメイキングを実現。生成された着物の図案を最新のデジタル機器でプリントした“未知の羽織”を実験的に製作・展示していました。

 下記、“Sync Fabric Studio”の解説を引用して紹介します。

セクション1 : 雛形図案 × ジェネレーティブAI (機械学習) 
 雛形本とは江戸時代の代表的衣裳の見本帳のこと。当時は小袖図案制作の参考資料として、呉服屋が注文を受ける際のサンプルとして、あるいは絵本として、様々な用途で流行の衣裳の模様、意匠(デザイン)の見本帳(カタログ)として利用されていました。

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 この雛形図案のデザインをAIに学習させ、ルールを踏襲したAIが新たに図案を生み出すことで、伝統に即しながらも前例のない、革新的なデザインを提案。実際の雛形本から生成AIによって新たなデザインが生み出されるまでの過程を見ることができます。

セクション2  : パターン×データシュミレーション×機能素材
 着物の反物を100%使い切る理念をstudioが推奨する生地規格に踏襲。着物の“おくみ部分”を無くし、長方形のパーツのみで構成される羽織の構造を採用し、数億通りのデータシュミレーションを経て、ロス率1%~3%のパターンメイキングをシュミレーションしています。
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 体型に対して厳密な洋服とは異なり、肉体を寛容に包み込む和服ならではの“身体を最優先しない構造”を“未知の羽織”と称して、新たなスタンダードの一端として提案しています。

セクション3  : 雛形本×オーダーシステム
 雛形本の発注書/仕様書としての機能を現代に適応するべく、オーダーシステムを試験的に実装しています。好みの図案を選び、身体寸法、生地規格の適合をオンラインオーダーシステムを通して模擬体験できるようになっています。

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 ジェネレーティブAIやデータシュミレーションを活用し、江戸時代の雛形本から着想を広げた、現代に相応しい着物を考察した展覧会でした。

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2024年4月22日 (月)

RFWT24/25秋冬 オンワード アップサイクル・アクション展

 楽天ファッションウィーク東京(RFWT)2024年秋冬の会期中、オンワードグループによる「アップサイクル・アクション」の展示イベントが、RFWT公式会場である渋谷ヒカリエ8階コートにて開催されました。
 同グループは「ヒトと地球に潤いと彩りを」というミッションステートメントに基づき、サステナブル経営を推進するプロジェクト「グリーン・オンワードGreen Onward」に取り組んでいます。その取り組みの一環として、「アップサイクル・アクション」をスタートしたとのことです。

 会場では、回収した自社衣料のデニムを使用し、オンワードグループのクリエイション力・生産技術力を活かして、自由な発想で企画・製作したアップサイクルアイテム129点が展示・予約販売されました。
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Img_61981_20240506162101  ゲストクリエイターはMaison Shun Ishizawaの石澤駿氏とHARU氏とnisaiの松田直己氏です。
 右は総数3,000点以上の1点物を発表しているという、nisaiのコーナーです。
 アイテムの多くは古着素材によるオールハンドメイド、ハンドペイントとのこと。

Img_62071  オンワードのパタンナー、森本朱里さんが、ジーンズの片脚を袖にリメイクしたラグラン風ジャケットや、ファスナーを開ければ前後着用可能なベストなどの作り方を説明してくれました。パタンナーならではの発想を活かした、ステキなアイテムです。価格はベスト43,780円~。

Img_62131_20240506162101  広島から駆け付けたというオンワード社員の男性です。教わりながら見様見真似でつくったという、70年代のチェコ軍スリーピングシャツをデザインベースにしたゆったりしたシャツやパンツを紹介してくれました。デニムの布片を接ぎ合わせるセンスなど、初心者とは思われないすばらしい出来栄えでした。価格はシャツ29,700円~。

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2024年4月21日 (日)

RFWT24/25秋冬 ⒇ マリメッコ 「ウニッコ」60周年祝う

 フィンランドのデザインハウス、「マリメッコ(Marimekko)」はブランドを代表する柄「ウニッコ」の誕生60周年を記念し、楽天が支援するプロジェクト「by R」を通して2024-25年秋冬楽天ファッション・ウィーク東京に初参加しました。
 コレクションでは、「ウニッコ」柄をベーシックで実用的なシャツやドレス、デニムに取り入れ、大胆で豊かな柄が特徴のコレクションを展開しています。1_20240506113001
 ショーはDJの生演奏とともに始まり、まずランウェイを彩ったのは「ウニッコ」柄のピースでした。花のモチーフを立体的に貼り付けたスカートや、大きく拡大した花を配したニットなど、様々な解釈が見られました。
 シルエットはミニマルで実用的でありながら、大胆な柄使いによって無邪気で楽しげな雰囲気を醸し出していました。
 特に目を引いたのは、ヘビーウェイトのジャージードレスに描かれた「ウニッコ」柄。個性的でありながらタイムレスな印象を与えました。幾何学柄のワンピースも注目を集め、縦のプリーツによって角度によって歪んで見える視覚効果がユニークでした。
 カラーはホワイトとブラックを基調に、秋冬らしいボルドーやベージュ、ペールブルーなどが織り交ぜたパレットです。落ち着いた色調は会場の雰囲気と調和し、絶妙なバランスを保っていました。

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2024年4月20日 (土)

RFWT24/25秋冬 ⒆ ミキオサカベ 日常の延長を再現して

 「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」の2024/25年秋冬コレクションが東京・国立競技場代々木第一体育館を会場に開かれ、これまでで最大規模という約4,000人もの観客を熱狂の渦に巻き込みました。
 今シーズンのテーマは「The Day Today」です。坂部三樹郎デザイナーは「日常の延長を再現した」と語っています。
 ショーは控えめなオフホワイトのルックからスタートし、進むにつれて大胆な装飾とボリュームのあるドレスが登場。シルエットは極端に誇張され、歴史的な衣装から着想を得たドレスにはピンキングやスラッシュ、刺繍が施され、「日常の延長」というコンセプトを表現。新作シューズ「JEWELRY HIGH BUBBLE」も登場し、1700年代のシューズをベースにしたデザインや、ラインストーンやグリッター生地が使用されました。
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 フィナーレでは、貞子を連想させるモデルも登場し、プリーツやフリル、異素材の組み合わせなどで装飾された異様な存在感を放つドレスを纏って歩く姿が印象的でした

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2024年4月19日 (金)

RFWT24/25秋冬 ⒅ アンリアレイジ オム 原点を探る

 デザイナー森永邦彦が手掛ける「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が、メンズブランド「アンリアレイジ オム(anrealage homme)」をスタートさせ、2024/25年秋冬デビューショーを東京テレコムセンタービルで開催しました。
 アンリアレイジは2003年に設立され、昨年20周年を迎えました。このブランドにメンズラインを提案したのは、2000年代の原宿ストリートカルチャーを牽引したファッションアイコン、スタイリストのTEPPEI氏でした。彼は、ブランドが初期に発表したウィメンズのパッチワークジャケットを、個人的にメンズサイズで注文し、2000年代後半の原宿で着用していました。このパッチワークジャケットは、森永デザイナーによってTEPPEI氏向けに作られたもので、アンリアレイジ オムの原点となった作品です。

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 デビューショーでは、ブランドの原点を探るアイテムが多数登場しました。
 Img_64661jpgリラックスしたシルエットのテーラードジャケットやパンツには、全面にボタンが配され(右は展示会で撮影したもの)、ポップなピクセル画風のニットディテールが施されたスーベニアジャケットやピーコートなどのアウターも注目を集めました。さらに、ブランドを代表するパッチワークも新たな形で取り入れられ、ゴブラン織りのテキスタイルをミックスしたジャケットや、裏原系パンクファッションを彷彿とさせるチェックのセットアップには、刺繍でパッチワークを表現したエンブレムが装飾されました。
 これらのアイテムは、手間暇をかけた手仕事によって仕上げられており、その繊細なディテールが際立っています。

 2000年代の原宿スタイルに、アンリアレイジらしいギミックが加わり、TEPPEI氏が得意とする少年性のあるスタイルを随所に感じたコレクションでした。

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2024年4月18日 (木)

RFWT24/25秋冬 ⒄ ソウシオオツキ「グッド・メモリー」

 TOKYO FASHION AWARD 2024を受賞した大月壮士が手掛ける「ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」が2024/25年秋冬コレクションを渋谷ヒカリエにて発表しました。
  コレクションは今季も、日本人の精神性とテーラーのテクニックによってつくられるダンディズムをコンセプトに展開されました。とくに須田一政の作品集「風姿花伝」に触発され、日本人特有の思いやりを含む「品」という概念に焦点を当てて、日本独自の宗教観や道徳観、日常に潜む神の存在を服や細部に表現したといいます。

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 テーマは「グッド・メモリー(good memory)」で「冥途の土産」といった意味合いです。父親が脳梗塞で倒れたことが、制作過程に影響を与えたとも。
 洗練された印象の中に、ノスタルジックな雰囲気が漂っています。ジャケットでは、セットインショルダーやボクシーなシルエットといった伝統的な要素を取り入れつつも、ラペルに裏地やポケットを露出させることで、深層に眠る記憶を微かに想起させるデザインになっています。また、リバーシブルのウェアや内側を重視したディテールも特徴で、衣服の構築性を内部から見せる工夫が凝らされています。
 過去と現在をつなぐ衣服は、伝統的な要素を取り入れつつも、新しい表情を見せており、日本的な要素も散りばめられています。キモノ袖やキモノ打合せなど、「和」のパターンにも注目です。

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2024年4月17日 (水)

RFWT24/25秋冬⒃サポートサーフェス KAWAII!?-Adorable

 「サポートサーフェス(support surface)」の2024/25年秋冬コレクションが、渋谷ヒカリエにて発表されました。
 デザイナーの研壁宣男は、今シーズンのコレクションで「KAWAII!?-Adorable」をテーマに掲げましたが、普段は「かわいい」よりも「綺麗」や「かっこいい」を重視してきました。しかし、作業を終えた後に自然にテーマが浮かび上がる彼は、今季はフェミニンな要素を取り入れ、苦手な「かわいい」に向き合ったといいます。首周りのギャザーやパフスリーブ、フリル、ドレープを効かせたアイテムなど、全体を通してフェミニンな印象のルックが特徴でした。  
Img_63261pg  また洗練された無地のファブリックに加えて、中盤ではフラワーモチーフのアイテムも登場し、ブラックの花柄がシックな雰囲気を醸し出していました。
 素材感や着心地にこだわり、秋冬のアウターにはノースリーブのウールコートやジャケットも用意され、長い間着られる飽きのこないデザインが揃っていました。

 研壁は「かわいい」という言葉を苦手としながらも、その挑戦に成功し、着用する人の満足度を追求したクリエーションを提案していました。

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2024年4月16日 (火)

RFWT24/25秋冬 ⒂ メアグラーティア 「生命力」テーマに

 ヨーロッパの古着や服飾の歴史を軸に、温もりのあるアイテムを提案している「メアグラーティア(meagratia)」が、2024/25年秋冬ウィメンズ&メンズコレクションをRFWT会場の表参道ヒルズ「スペース オー」にて発表しました。
 ブランドを手掛けるのは関根隆文デザイナーです。今季のコレクションでは「Vitality(生命力)」をテーマに掲げ、自然界のパワーを感じさせるコレクションを披露しました。

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 どんなに悪い状況でも根を張る植物や人間の生命力を衣服に投影し、生気を感じる鮮やかなレッドを取り入れたルックや、ジャケットやパンツ、スカートに施した「アスファルトに生える雑草」をイメージしたオリジナル柄など、生命力を表現したデザインが特徴です。 
 さらに、ジョージコックスとのコラボレーションによるツイード生地のコートでコレクションを締めくくり、風弦によるライブパフォーマンスで幕を閉じました。Img_62561

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2024年4月15日 (月)

RFWT24/25秋冬 ⒁ ヘオース「自分の言葉を話す」テーマに

 「ヘオース(HEOS)」は中国出身で、現在は東京に拠点を置く暁川翔真デザイナーが手掛けるブランドです。2021年秋冬ものから活動を開始、ブランド名の「へオース」はギリシャ神話に登場する「暁」の神の名前に因んでいるといいます。
 このブランドが今季、RFWTのメイン会場である渋谷ヒカリエにて2024/25年秋冬コレクションを発表しました。テーマは“SPEAK MY LANGUAGE”=「自分の言葉を話す」です。過去の自分に向き合いながら、美しい瞬間や不安定な時期などの記憶を振り返り、それらを煙のように曖昧で断片的な形で繋ぎ合わせて、自分独自の鎧を形作ろうとしたコレクションといいます。記憶の中には哀愁や歓楽、ロマンスなど様々な要素が含まれており、それらが個々の人生を彩っていることを示唆しているようです。
Img_61921  ファッションショーでは、時の流れを感じさせるディテールが際立っていました。
 スタンドカラージャケットは裾を断ち切り、ライダースジャケットは深いシワを持つことで粗野さを表現。
 また、ダブルブレストコートや編み地の緩んだニットなども、長い時間の経過を連想させる雰囲気でした。
 華やかな素材使いも目を引き、幾何学模様のジャカードや輝くベルベット、艶やかなブラックドレスなどが印象的でした。
 ラストを飾ったリュクスなファーのガウンも、ゴージャスなムードを演出していました。
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2024年4月14日 (日)

RFWT24/25秋冬⒀フェティコ「永遠のお気に入り」テーマに

 「フェティコ(FETICO)」が2024/25年秋冬コレクションを東京都国立博物館表慶館にて発表しました。
 テーマは「エターナル・フェイバリット(Eternal Favorites)= 永遠のお気に入り」です。ブランドを手掛けるデザイナーの舟山 瑛美は、幼い頃から好んでいたベルベットのドレスに、レースやフリルがあしらわれた子ども服、それにヴィクトリアン・ゴシック様式のインテリア、モノクロームのアート、フェティッシュなスタイル、それらが創作の根底にあり、「いくつになっても変わらずに好きなもの」といいます。
 今季、インスピレーションを得たのは『アダムス・ファミリー』のウェンズデーやエドワード・ゴーリーの作品、ブロードウェイ版『ドラキュラ』、ハンス・ベルメールの奇妙な人形などだったそうです。どれも退廃的で皮肉的、暗く陰気でありながらも、その独特な世界観が、多くの人々を魅了し続けています。
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 とくに目立ったのが、ウェンズデー・アダムス風の大きな白い襟です。ベルベットのドレスやパフスリーブシャツ、セーラーカラーのウールコート、ボア襟のキルティングコートなどに取り入れられています。またウエストのクロスカットが、ドレスやテーラードパンツなどのクラシックなアイテムにミステリアスな雰囲気を加えています。さらにアイコン的なレース柄の無縫製ニットトップスには、ベルベットでキルティングされたスカートが合わされるなど、フェミニンな魅力を優美に強調していました。
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 「女性の美しさを引き立てる」フェティコらしいデザインに、程よいダーク感を加えたラインナップで、バリエーションが広がったコレクションでした。

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2024年4月13日 (土)

RFWT24/25秋冬⑿ ジョウタロウ サイトウ—日陰のプリズム

  「ジョウタロウ サイトウ(JOTARO SAITO)」の2024/25年秋冬コレクションが、東京・表参道にて発表されました。
 今季のテーマは「日陰のプリズム」です。ブランドを手がける斉藤 上太郎デザイナーは、日本の美を薄暗い灯りや陰影の美しさに見出した谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に着想、この伝統美を現代のキモノスタイルに再解釈し、アレンジしたといいます。

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 登場したのは、光と影を巧みに表現したキモノコレクションです。ブラックとグレーを基調とした着物には、影絵のようなモチーフが施されていたり、ボカシ技法により光の屈折を模したイエローやピンク、ミントが取り入れられていたりします。
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 とくに今回は、リアルクローズとしてのキモノ・スタイルを見せていたのも印象的でした。
 特徴的だったのが、着物にフードを取り入れたデザインです。
 これなら普段でもオシャレに着物を着ることができそうです。

 光と陰の美しさを称賛するコンセプトが、洗練された着物スタイルに映える一方、日常着としても楽しめる新しい提案となっていました。

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2024年4月12日 (金)

RFWT24/25秋冬 ⑾ コウタグシケン コント形式のショー

 デザイナー具志堅幸太が手がけるニットウェアブランド「コウタグシケン」が、2024/25年秋冬コレクションを渋谷ヒカリエで初めて発表しました。このコレクションのテーマは「整理整頓」であり、学生時代からの作品を振り返り、「organiseid well」というコンセプトのもと、ブランドの自己紹介となるコレクションを展開しました。

 ステージには、自転車で駆けつけたお笑い芸人の又吉直樹が登場し、好井まさおとのコント形式で作品を紹介する異例のショーが繰り広げられました。
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 新作は、具志堅幸太のアーカイブを再解釈したルックが中心で、モナリザモチーフのニットウェアやフェアーアイル柄セーターをアップデートしたり、赤のニットをポンチョにアレンジしたりといった工夫が凝らされています。さらに、ニットのスカジャンや1940年代のスーツをイメージしたアイテムも登場し、ニットならではの温かみや親しみやすさが表現されたコレクションとなりました。

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2024年4月11日 (木)

RFWT24/25秋冬 ⑽ エフエーエフ テーマは理想郷へ逃避

  デザイナー荒井一帆とディレクター高林司によるブランド「エフエーエフ (FAF)」が、楽天 ファッション ウィーク東京(RFWT)で初のファッションショーを開催しました。このショーは、ブランドが受賞したファッションコンペ「東京ファッションアワード 2024」の特典として行われたものといいます。エフエーエフは、共に1995年生まれの荒井一帆と高林司が2018年に設立したブランドで、ブランド名は、かつて両者がDJユニットとして活動していた際の名前から取ったものだそう。

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 ショーの演出は斬新でした。ヒカリエホールの舞台には多数のマイクが配置され、モデルが一人ひとりマイクの前に立ち、「笑顔あふれる、カラフルな世界を」などのメッセージを伝える形式で進行しました。テーマは「理想の共同体(THE NEW COMMUNE)への逃避」でした。

Img_58731  モデルたちはワーク、ミリタリー、スポーツをベースにしたストリートウェアで登場しました。ストリートスタイルとはいえオリジナルの素材選びや高度な加工技術による独創的なスタイリングが特徴です。襟や袖にスタッズを施したジャケットや、カモフラージュ柄を加工したデニムのセットアップなど。右はモデルに起用されたプロボクサーの須賀川天心です。
 さらに、海外の伝統文化との融合も試みられ、インドの伝統的な刺繍生地である「カンタキルト」を使用したアイテムも見られました。
 ブランドは世界中からインスピレーションを受け、独自の視点で解釈したコレクションを展開しているようです。

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2024年4月10日 (水)

RFWT24/25秋冬⑼ J∞QUALITY SPECIAL COLLECTION

 RFWT(楽天ファッションウィーク東京)のメイン会場である渋谷ヒカリエでは、「J∞QUALITY SPECIAL COLLECTION」展が開かれました。
 J∞QUALITYとは2015年に日本アパレル・ファッション産業協会が創設した「織り・編み」、「染色整理加工」、「縫製」の全ての生産工程を日本の高品質な工場技術と匠のこだわりで仕上げた純国産品であることを証明する統一ブランドです。
Img_58861_20240429102601  右はその第一号、「100年コート」のサンヨーコートです。

 今期、この特別事業として「J∞QUALITY SPECIAL COLLECTION」が立ち上げられ、日本のラグジュアリーゾーンのデザイナーズやファクトリーブランド向け「J∞QUALITY LUXURY LABEL」が新設されました。このプロジェクトは今年1月に開催されたイタリアのメンズ見本市ピッティ・イマージネ・ウオモに初出展し大好評だったといいます。

 今回のRFWTで実施されたのが、この特別事業に参加したファクトリーブランド12社の凱旋展示でした。

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 ヒカリエCOURTには、伝統と革新のハイゲージニットの第一ニットマーケティング、素材開発とテーラー技術の伊藤メリヤス工業、4D動態立体縫製のサンエース、「バランサーキュラーR」の丸和ニット、独自の縫製技術のマルチョウ、高品質かつ安定したインディゴ染めの山陽染工、圧着無縫製仕上げのサンティ、職人による手縫い・手巻きのサンライン、素材開発と特殊縫製のナカノアパレル、グラフィカルな特殊ジャカードの宮田毛織工業、立体的かつ複雑な編地の大河内メリヤス、特殊な手染め技術を持つ内田染工場、と日本の匠の技術が勢ぞろいしていました。
 Img_58891_20240429102601  上は、100%日本製国内生産の岩手ダウンです。

Img_58841_20240429102601  HIROKO KOSHINOの新作も紹介されていました。

 日本の繊維産地の活性化と純日本製品の拡大を目的に活動するJ∞QUALITY事業。その新しい方向性に注目です。

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2024年4月 9日 (火)

RFWT24/25秋冬 ⑻ フルス テーマは「振り返り、前へ」

 楽天ファッションウィーク東京(RFWT)の会期中、審査員特別賞を受賞した児玉耀デザイナーが手掛ける「フルス(fluss)」の2024年秋冬コレクションの一部が、公式会場ヒカリエ 9階アトリウムで展示されました。
 テーマは「look back, look forward (振り返り、前へ)」です。ブランドが目指す、日々自然な形でアップデートされ、進化していくベーシックウェアの可能性を追求しています。

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 初日にはモデルを使ったプレゼンテーションも行われました。(上はRFWTのプレス写真です。)
 少年らしい軽快さとエレガントさの対比から生まれる繊細なファンタジーを感じさせるコレクションでした。

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2024年4月 8日 (月)

RFWT24/25秋冬 ⑺ タナカ 自由を象徴する「翼」モチーフ

 タナカ(TANAKA)は、ヨウジヤマモトを経てユニクロのウィメンズデザインのチームリーダーを務めた経歴を持つデザイナー、タナカサヨリさんが、2017年にニューヨークで立ち上げたユニセックスブランドです。
 コンセプトは「これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ衣服。時代、性別を超えて永く愛される衣服」で、ブランドのコアはジャパンデニムを中心とするもの作りとか。2023年には「TOKYO FASHION AWARD」を受賞しています。

 今シーズンは自由を制限されることへの憤りから着想を得たというコレクションを展開。
  Img_58121_20240427201901 目立っていたのは、自由を象徴する「翼」のモチーフです。フェザーを使用したダッフルコートや羽の刺繍が施されたシャツ、翼のスタッズがあしらわれたデニムジャケットなど、多様なアイテムが登場しました。また、デニムでは花のようなギャザーやプリーツ、オーガンザの重ねなど斬新なアプローチによる、新しいデニムの表現も。キラキラと輝くビジューやスタッズ、存在感のあるパッチワークキルト、そして未来的なシルバーやヴィヴィッドなピンクなど、全体に高揚感を与える要素が随所に見られた、エキサイティングなショーでした。
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2024年4月 7日 (日)

RFWT24/25秋冬 ⑹ カミヤ 50~60年代カルチャーに着想

 カミヤ(KAMIYA )は、2015年に立ち上げられたメゾン ミハラヤスヒロの新ライン「マイン」をリニューアルし、2023年秋冬シーズンから、神谷康司デザイナーの名を冠した新ブランドとして、彼のルーツを反映したモード感あるストリートウェアを展開しています。

 ショーは猥雑な雰囲気が残る渋谷百軒店のストリートで行われ、モデルたちは通行人の1人であるかのようにウォーキングしました。

Img_57661  着想したのは、50年代~60年代の労働者階級のティーンエイジャー達で、スイス人写真家、カールハインツ・ワインバーガーの写真集『REBEL YOUTH』とケネス・アンガーの映像作品『SCORPIO RISING』だったといいます。
 当時のアメリカン・カルチャーに強く影響を受けたと思われるルックが散見されたコレクションで、ボタンフロントのジーンズやペイントや刺繍をあしらったバイカージャケット、経年変化したような色褪せたスウェットなど。ダメージ加工のディテールも目立ち、ヴィンテージ感を演出。さらに、上品なベルベット素材を使用したアイテムも多く、繊細なラメが華やかさを添えていました。
 カラーパレットは、ワントーンのブラックやカーキ、ブラウンなどシンプルで統一された色使いが特徴でした。

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2024年4月 6日 (土)

RFWT24/25秋冬⑸ ペイデフェ テーマは「四角の中に円」

 「ペイデフェ(pays des fees)」が、RFWTのメイン会場である渋谷ヒカリエで24/25秋冬コレクションを発表しました。
テーマは「circle in square (四角の中に円)」です。朝藤りむデザイナーは、成長途中の自我の葛藤や第二次性徴期の複雑な感情をこの図形で表現したといいます。身体と心の輪郭を描く幾何学的なモチーフは、干渉されずに純粋であることを象徴しているようです。
 Img_57471_20240426095101 着想したのは詩人・北園克衛の「プラスティック・ポエム」で、成長の葛藤や無機質な自己表現を題材にしています。モデルたちは風船を持って登場、特に「手」のモチーフが目立ち、自己観察と思春期の内省を反映しているようです。
 シルエットは控えめで、身体に沿うデザインが多く、これまでの曲線的かつロマンティックなフォルムをあえて抑えるかのようなデザインが散見されました。二面性を強調したディテールや顔を覆う布の使用も特徴的です。
 カラーパレットはグレー、ネイビー、ホワイトなどのベーシックな色合いが中心で、全体的に落ち着いたトーンでまとめられています。

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 ファッションを通じて、多感な時期の混乱した感覚を記号的に再現したコレクションでした

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2024年4月 5日 (金)

RFWT24/25秋冬 ⑶ ハイドサイン「グレーカラー」最終章

 楽天ファッションウィーク東京 (RFWT)のトップを飾ったのが、ユニフォームデザインのHIDESIGN(ハイドサイン)でした。ショーを手掛けたのは、ファッションディレクターの山口壮大氏とHIDESIGNの代表取締役兼チーフディレクターの吉井秀雄氏で、2023年秋冬より継続してきた「グレーカラー(Gray Collar)」テーマの最終章となる、全60体の作品を発表しました。これまでの3シーズンと同様に、どんな体型の方でも着用できる機能的なウェアを基盤にしながら、素材やディテール、フィット感などをさらに改良したといいます。

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 ショーは、30人のモデルが布で顔を覆いながら登場してスタート、機能的なウェアをアップデートしたルックが披露されました。ブルゾンやオールインワンなど、フィット感やファッション性にこだわったアイテムが特徴で、デザイナーの山口壮大氏は「本物のダメージを残しながらも機能性を保つことができるので、傷も身につけた個性として、長く愛用していただきたい」。また、吉井秀雄氏は「私たちは丁寧な製品作りに自信を持っています。今の時代は大量生産を嫌う傾向がありますが、それに合った提案ができると考えています」とコメント。
 今期は実験的に制作してきたコレクションが市場で販売される初のシーズンとのことです。さらなる発展を祈っています。

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2024年4月 4日 (木)

RFWT24/25秋冬  ⑵ 「M A S U」凱旋イベント

 楽天ファッションウィーク東京(RFWT) 24/25年秋冬の会期前夜に、FASHION PRIZE OF TOKYO 2024 受賞ブランド「M A S U (エムエーエスユー)」の凱旋イベントが、ヒカリエホールにて開かれました。
 後藤愼平デザイナーが手掛ける「M A S U」は、2023年に日本から世界で活躍するファッションデザイナーの輩出を目的とした「FASHION PRIZE OF TOKYO」を受賞。この賞の支援を受けて、この1月17日、コレクションをパリで発表しました。パリ・メンズ・ファッションウィークの期間中でしたが、公式カレンダーには載らない非公式な形でのランウェイだったとのことです。しかし会場には大勢の人々が駆けつけ熱気に溢れていたといいます。

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 Img_56911g 今回の凱旋イベントでは、映画館をイメージした会場に、M A S Uの服をまとったマネキンが今季のコレクション映像を鑑賞する様子を表現したインスタレーションが展示されました。
 コレクションのテーマは「falling rain said yes to the boy(雨が少年にイエスと答えた)」で、黒を基調とした陰鬱な雰囲気の中にも、光のきらめきを感じさせる要素が取り入れられ、スパンコールを用いたパーカーやパンツなどが登場し、一転して華やかさも感じさせる内容でした。

 一般の方も参加可能だったイベントで、盛り上がっていました。

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2024年4月 3日 (水)

楽天ファッションウィーク東京24秋冬⑴ AI制作ビジュアル

 楽天ファッションウィーク東京2024年秋冬(Rakuten Fashion Week Tokyo 2024 Fall/Winter、略してRFWT)が、3月11日~16日の6日間に渡り、開催されました。
1_20240425135201  2024年度のテーマは「OPEN,FASHION WEEK」で、昨シーズンに引き続き、スローガンは「TOKYOファッションの魅力を伝え、だれもが楽しめるファッションウィークを実現していく」でした。
 キービジュアルは、このテーマのもと、実在モデルの顔学習を用いた新しい手法による初のフルAIシーズンキービジュアルが用いられているとのことです。
 ファッションディレクターの山口壮大氏によると、前シーズンの「解放」という流れから、今シーズンは自然界の5つのエレメント(空・火・水・地・風)をモチーフに、人と自然環境が衣服を通じて繋がり、幸福に共生するイメージを「宴」として表現したといいます。AIのセレンディピティがなす技と、人間でしかなし得ない感性を活かしたこのキービジュアル、明るく楽しい自由なイメージで、ファッションの祭典にふさわしいと思いました。

 今期RFWTに参加したブランドは計43、そのうち35ブランドがフィジカルで、8ブランドがデジタル形式で発表しました。次ページより、そのいくつかを紹介していきます。

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2024年4月 2日 (火)

第2回「チョイス」展 こだわりのファッションブランド

  ファッションや雑貨、ライフスタイルを軸とした合同展示会、「チョイス(CHOIS)」展がこの3月5日~6日、渋谷エッジにて開催されました。昨年8月末に初開催され、今回で2回目となります。
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 出展したのは約55ブランドで、服飾雑貨45%、アパレル35%、アクセサリー5%、その他15%で構成されているとのこと。こだわりや想い、独自性を持つブランドか揃い、2日間で約750人が来場したといいます。

 気になったブランドを紹介します。

THURIUM (スリウム)
 手掛けるのは及川 絵美デザイナーです。スタートは2016年春夏からで、ブランド名は、彼女の誕生花であるanthurium(アンスリウム)からとったとか。この花の曲線のように、女性の体の曲線的なラインを美しく見せる服つくりをしているといいます。

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 ドレープラインとカッティングによる、シンプルなコレクションです。

REDAD (レダッド)
 ベイクルーズ出身の二人が始めたリメイクブランドです。
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 本来の用途では使いづらくなった良い素材をファッション性のあるアイテムにリメイク、土臭く見えないように工夫しているといいます。

Re : VECTOR (リ・ベクトル)
 アメリカンカジュアルをベースに、様々なカルチャーを織り交ぜたウェアや雑貨を提案しているセレクトショップです。

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 この他いろいろ。

 大手ブランドにはない個性的でニッチな商品へのニーズの高まりを感じた展示会でした。
 次回は8月27日~29日、今回と同じエッジで開催されるとのことです。

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2024年4月 1日 (月)

桐生テキスタイルプロモーションショー コンセプト「再生」

 第36回を迎えた「2024桐生テキスタイルプロモーションショー」が、3月6日~7日、東京・恵比寿にて開催されました。
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 桐生産地の繊維関連企業が一堂に発表する展示商談会で、出展したのは洋装部門21社、和装部門5社です。Regeneration「再生」をコンセプトに、各社得意の新作が発表されました

ミタショー
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Img_56301_20240424185801  老舗ながら、いつも斬新で表情豊かなテキスタルを生み出しているメーカーです。
 右は、パッチワーク風に立体感を演出したジャカード織物です。コットンリッチのポリエステル混。
 
 山口 晃 ✕ ミタショー コラボレーションストールの展示も行われていました。

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 山口 晃氏は現代芸術の最先端を走る、桐生出身の画家です。日本の伝統的絵画の様式で超高層ビルと江戸の建築物など、現実と非日常が混在した作風で、2020年にエルメスとコラボレーションしたり、東京パラリンピックでは公式ポスターを制作したりと、活躍の場を広げています。
 その作品をミタショーのテキスタイルにプリントしたストール、5柄が出品されていました。

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 Img_56171 奇をてらった派手さのない、独特なカラーと統一感が魅力のメーカーです。
 右は、シンプルなツイード風の織物で、気持ち良い感触のコットン100%。

桐生絹織
 シルクを主原料に、高度な技術による特殊な織物を生産している老舗メーカーです。
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 とくにカットジャカードは小ロットの細かい注文にも丁寧に対応しているとのこと。「高速量産では決して表現できない手作業の味わいImg_55601jpg を残すことでジャカード織本来の魅力を極めていきたい」といいます。
 右は、古くて新しいエレガントなジャカード織物で、コットン100%です。

Tex.Box
 今シーズンもニードルパンチのコレクションに魅せられます。
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 上は、テーラードジャケットに白い真綿が雲のように浮かんでいるアートワークです。

トシテックス
 古い和服の生地を細かく裁断した素材と何種類かの意匠糸を組み合わせて編み込んだ、多様なデザインのストールを打ち出していました。

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 着られなくなった着物に新しい息吹を与えるアップサイクルの取り組みとして注目されます。

ダイシ 
 群馬大学の研究から生まれた光触媒銅繊維シート「GUDシート」を訴求していました。
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 これは簡単に感染対策ができる画期的な素材で、マスクの上に貼ったり、ドアの取っ手やスイッチボタンに張り付けたり。新型コロナウイルスや菌類で実験を行い、除菌・ウイルス不活化性能があることが確認されたといいます。

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