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2024年3月

2024年3月31日 (日)

24/25秋冬 シンヤコヅカ 「冬の宴に飛び込む」をテーマに

 小塚信哉デザイナーが手掛けるシンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)の2024/25年秋冬コレクションが、東京プリンスホテル・ガーデンプールにて発表され、降りしきる雨の中、行ってきました。
 ランウェイは屋外プールでしたので、雨に打たれてのショーでした。
 テーマは「DIVE INTO WINTER FEAST 冬の宴に飛び込む」です。ブルーのライトに照らされたプールは、まるで水中にいるような幻想的な雰囲気を醸し出していました。
 ファーストルックは冬の潜水を楽しんでいるかのように、潜水用のヘルメットにウェットスーツ、水泳で使用するフィンを着けて登場。温かなケーブル編みや北欧伝統のノルディック柄が、ネイビーやホワイトを中心にコートやフーディ、バギーパンツなどに展開されていたのも今シーズンの特徴です。Img_55411pg_20240424153601
 冬のアウトドアスポーツを堪能しようという、デザイナーの想いが伝わるコレクションでした。

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2024年3月30日 (土)

ifs未来フォーラム~2024年から始めるサステナビリティアクション~ ⑵ 「Z世代」×「旅」をテーマに

 「ifs未来フォーラム2024~2024年からはじめるサステナビリティアクション~」では、トークセッション1に続くトークセッション2で、「Z世代」×「旅」のテーマが取り上げられました。セッションのタイトルは、「令和的非日常~ Z世代の旅から見えた、これからの『消費の兆し』と『マーケティングの方向性』~」でした。ifs未来研究所研究員の中村ゆい氏がファシリテーターを務め、、Z世代の当事者である(株)JTBコミュニケーションデザインの吉濵 舞氏と ifsマーケティング開発第3グループ の小林脩人氏がゲストとして参加し、座談会形式でディスカッションが行われました。

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  セッションではまず、旅から見えたZ世代の消費の兆しについて解説がありました。Z世代は、より高い目標の達成から等身大の目標の実現へと価値観がシフトしており、また社会への関心が一般的な社会全体から身近なコミュニティへと変化しています。彼らの消費キーワードは「小さな安心を積み重ねる消費」や「心理的なつながりを求める消費」であり、自己表現よりも自然な自己を重視し、SNSを日常の記録や思い出のアーカイブとして活用しています。

 次に、「令和的」マーケティングの方向性について、Z世代が内面的な満足感を求める傾向が強まっていることが強調されました。これに伴い、消費者との関係が平成時代のような一方通行から、より対話的で参加型の関係へと移行していくことが示唆されました。コロナ禍を経て、若者世代の旅の在り方が大きく変化していることが浮き彫りになった興味深いセッションでした。

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美しきシルクロードと染織の世界展 学生の藍染作品も展示

 この3月初め、「現代の名工」に指定され、天然染織や日本原産種の希少な蚕「小石丸」 の養蚕に取り組む秋山眞和氏による展覧会「美しいシルクロードと染織の世界」展が開催されました。
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1_20240424114801  現在、小石丸の養蚕を行っているのは皇室以外では秋山氏のみだそうです。
 その最も細くて強く、しかも艶のある糸使いのきもの作品や、氏が世界で初めて現代に復活させた貝紫による染色技法などを拝見し、品格の高さに感銘しました。

 また氏の指導により目白ファッション&アートカレッジの学生が制作した藍染作品も展示されました。「天人」をテーマにした爽やかな青空に浮かぶ、澄んだ白い雲を喚起させる力作で、すばらしかったです。
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 日本の伝統工芸がデザイナーを目指す若者たちの新たなインスピレーションを得る一助となっていることに改めて感動した展覧会でした。

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2024年3月29日 (金)

ハルメク~ 今、企業が知るべきシニア層へのマーケティング

 雑誌「ハルメク」は、直販スタイルのシニア女性向け定期購読誌です。日本ABC協会によると、書店やコンビニで販売されていないにもかかわらず、近年、雑誌販売部数において、女性誌部門でNo.1を獲得しているといいます。
Photo_20240422103701  なぜ雑誌「ハルメク」がシニア女性から熱い支持を得ているのでしょうか。
 先般、eコマースフェア東京のセミナーで、その秘密を解き明かすセミナーが開催されました。登壇したのはハルメクホールディングス、ハルメク・エイジマーケティング管掌 執行役員 木船 信義 氏です。「団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年問題はすぐそこ! 今 企業が知るべきシニア層へのマーケティング」と題して、シニアのニーズ把握の取り組みや、心を掴む訴求や商品開発のツボを語られました。

 冒頭、ハルメクは50代以上、シニアに特化したマーケティング集団であり、雑誌・ウェブ・リアル体験・物販事業・店舗事業を行っていることを紹介、その後講演がスタートしました。
 下記、その興味深い概要です。

1. 団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」のインパクト
 ベビーブーム世代と言われる1947~49年生まれは640万人で、日本の経済発展を支え、流行をつくり出してきました。その彼らが後期高齢者となる2025年は、要介護者も増え「バブル経済」や「失われた30年」以上のインパクトが起きるとみられています。

2. 前期高齢者と後期高齢者の消費性向の違い
 自覚年齢は若く、いつまでも若いと見られていると思っている人がほとんどです。しかし65歳ではまだシニアと認めたがらなかった前期高齢者も後期になると変わってきます。健康年齢もあり膝・腰など健康不安から、後期高齢者の消費は体力を使わないものへ移行します。
 たとえば75歳以上になると旅行をしなくなります。ゴルフのラウンドを回る人もぐんと減り、庭いじり・ガーデニングも減少。視力の衰えで読書や将棋なども漸減し、手先や目を使う編み物・和洋裁をやる人も少なくなり、コンサートや映画も2時間が耐えられなくなります。代わりに、自分のできる範囲で頑張れる体操や運動、カラオケなどが伸び、絵画・彫刻制作など、自分一人でも楽しめる趣味が増加します。
 また消費される内容も変わります。後期高齢者の1人当たり支出額は減少、新車を買わなくなり、スマホなど通信費が減ります。逆に増えるのが医療・入院費です。全体に世帯収入が減少する中、60代から70代初めは退職金や相続で余裕のある所帯も見られます。

3. ハルメクのシニアマーケティング
 シニアは年寄りらしくないものを求めています。補聴器は首掛け式集音機と呼んでいますし、キャリーカートもおばあさんっぽくないデザインにするなどして、明るい暮らしを目指すことが重要と強調しました。
 また葉書で客の声を聞いたり、アンケートや座談会を行ったりするなど、「思い込みを捨てる、分かった気にならない」ことが大切と指摘。
 デジタル化はシニアも進んでいて、前期高齢者はほぼ100%スマホが使えます。但し、本当に使いこなしているかは別問題ですが。スマートウオッチはまだ浸透しているとは言えないそう。
 SNS利用率は30%を超え、インスタグラムが2倍以上に増加。とはいえ閲覧が中心で発信するのは3割くらいとか。
 ネットショッピング利用率も右肩上がりで増えていて、およそ2人に1人、52%が利用しているとのことです。しかし75歳以上ではまだ10%程度で、シニアと言っても一括りにできないといいます。
 シニアは概して裕福なので、彼らを攻略しないと、日本経済は動かないと釘を刺しました。

4. 今後の市場流行予想・展望
 ハルメクでは何が流行っているかを定期的に調査しているとのことです。2022年~2023年のトレンド分析で浮上したキーワードを挙げ、次のように解説しました。
●スマ活シニア 
 スマホを活用した決済や動画視聴、ポイント活用、インスタグラムの利用が大幅に増加しています。スマホが生活に不可欠なものとして入り込んでいることがうかがえます。
●推し活で若返り
 シニア女性の35.2%が推しを持ち、年間平均9万円を推しに費やしています。推しは彼女たちの行動や生活を変え、心身にポジティブな効果をもたらしています。
●とっくにSDGs 
 シニア世代は、食材を無駄にしない丁寧な暮らしを続けてきました。今後も賢いSDGs生活をリードする存在です。
●コンパクト終活 
 生前整理はシートに書くだけで、身の回りも気持ちもスッキリ。葬式準備は身内だけで行うと、伝統や形式から解放されます。
●Ageメイク
 眉毛や目元をメイクすると気分がアップ。外出したくなりますし、年齢に合ったポイントメイクで華やかさを楽しめる気持ちになります。
●素材丸ごとおやつ
 栄養価が高く食品ロスも減らせるお菓子です。野菜の素揚げや小魚スナック、ドライフルーツなどが含まれ、自然な素材を活かしたおやつは、シニア世代に不足しがちな栄養素を補うのに人気です。

 シニア女性は多くの未解決ニーズを抱えています。サービスの不足や、年配者向けに特化しすぎていることが課題となっています。彼女たちは新しいことを学び、挑戦したいと思っていますが、その機会や場がないことが多いです。また、オシャレを楽しみたいと思っても、体型の変化や勇気の欠如、やり方がわからないことなどがハードルとなっています。さらに、孤独を回避する手段も不足しています。
 最後に、長寿社会が到来し、若者を追いかけるだけでなく、シニア独自の新しい動きが彼女たちの悩みを解決する鍵となると述べて、結ばれました。

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2024年3月28日 (木)

ケアショー・ジャパン2024 超高齢社会の介護・医療・予防

 「超高齢社会の介護・医療と、まちづくりのために」コンセプトにした展示会「ケアショー・ジャパン2024」が2月20日~21日、東京ビッグサイトで開催されました。健康博覧会との同時開催で約180社が出展し、3日間で約1万人が来場したと発表されています。
 中でも私が興味深く思ったのはジェンダード・イノベーションエリアでした。とくにフェムテック関連で気になったブランドを、紹介します。

MAEE (マエエ)
 女性はむくみやすいといいます。男性と比べ筋肉量が少ないため、冷えや血流の低下などが起こりやすい傾向にあり、足のポンプ機能も、男性よりも弱いため、むくみのリスクが高いそう。そんなむくみを本格的にケアするというブランドを見つけました。
 それがポーラ・オルビスグループの(株)encyclo(エンサイクロ)のMAEE (マエエ) です。インナーやレギンスからソックスやストッキングまで、様々なアイテムを展開していて、インナーウェアは着るだけでマッサージタイムが得られるとのこと。ハニカム型の凹凸編みが肌との間に空気をつくり、肌をやさしく刺激することで全身をやさしくマッサージしてくれるといいます。 

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 とくに私が注目したのがコンプレッション(着圧)ソックスで、一般医療機器に認証されています。歩く、立つ、座るなど、履くことで、筋肉のポンプ作用をサポートし、効率的に血行やリンパのながれを促してくれるとか。靴の中にも履ける程よい厚みで、お家の中だけでなく、外出にも使え、ウール混なので足もとから温かく、アクティブに動けるとも。冷え性にうれしいソックスです。

hanayaka® (ハナヤカ)
 繊維メーカー、セーレンのフェムテックブランドで、無縫製吸水ショーツや骨盤底筋サポート吸水ショーツ、まるで素肌感覚というインナーウェアを打ち出していました。

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 360度ストレッチの特殊素材、1枚の生地で縫い目のない特殊製法(ユタックスの接着技術)で、ウエストも足口もフリーカットでストレスフリー、ずっと着ていたいを実現しているといいます。
 吸水ショーツとして、気になるヒップラインやお腹周りを整え、ボディラインを美しくメイクするという、女性にうれしいアイテムです。

Hamon band 2 (ハモンバンド 2 )
 ミツフジでは熱中症のリスクを事前に知らせるリストバンド型ウェアラブルデバイス、Hamon bandの次世代モデルが展示されていて、興味深かったです。それがHamon band2で、より使いやすいものに進化していました。
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 正常時は、緑色LEDが点灯し、注意アラート時は、黄色LEDが点灯、警告アラート時は赤色LEDが点灯して、振動と共にリスクを知らせる仕組みになっているとのことです。また通気性に優れ、脱着しやすくサイズ調整も簡単にできるナイロン素材のマジックテープ仕様となり、快適な装着性に。
 これからの暑い夏、シニア世代にとってはなくてはならないツールになるかもしれません。

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2024年3月27日 (水)

浅野撚糸 サロン型ラボストア「スーパーゼロラボ」オープン

  タオルで人気の岐阜県の糸製造会社「浅野撚糸」が東京・南青山の販売拠点を2月20日、リニューアルオープンすると伺い、私もプレス発表会に行ってきました。
 オープンしたのは「スーパーゼロラボ」と呼んでいるサロン型ラボストアです。店内には販売エリア、ショールームエリア、イベントエリアが備えられ、日本のテキスタイルと文化を発信していくといいます。特殊撚糸工法で製造した「スーパーゼロ」糸や矢橋工房の漆器、無農薬食品を取り扱い、内装は日本の職人の手仕事と端材、廃材を使用した木工家具などを組み合わせ、和の温もりと現代的な洗練を演出しています。
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1_20240417101201  テキスタイルデザイナーの梶原加奈子さんが手掛けるアパレルブランド「ASANO KANAKO KAJIHARA」の始動も話題です。商品構成は「スーパーゼロ」の特徴が分かる柔らかい風合いのストールが中心で、ウールやリネン、紙繊維使いなど、新素材の開発も進めているそう。
綿の一般的な原料がカシミヤのような風合いや上質感を持つ製品に生まれ変わっているのも驚きでした。
  梶原さんは「環境に配慮した取り組みも行い、ラグジュアリーブランドとしての成長を目指したい」。浅野社長は「南青山から世界に向けて、新しい拠点で海外バイヤーを魅了していく」と期待を込めて語っていたのが印象的でした

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2024年3月26日 (火)

2024年秋冬「メゾン ミハラヤスヒロ」展示会

 「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」の 2024年秋冬展示会に行ってきました。この1月のパリ・メンズファッションウィークで発表されたコレクションです。 
 テーマは「WOBBLER PART FOUR(ウォブラー パート フォー=よろめき第4部)」です。

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 ブランドを手掛ける三原康裕デザイナーは、ファッションスナップのインタビューに答えて次のように語っています。
 Img_53641_20240415143701 「ここ4シーズンほど、よろめきながらコレクションを作っているような気がして、長くやっている分、人生にも仕事にも疲れてくる時だから、あえて疲れていることを楽しんでみようとした」そう。
 展開されていたのは、ミリタリーなどを中心に、超・オーバーサイズなアウターや古びた風合いを特徴とするウェアの数々です。
 無骨な素材感のファブリックにハードなブリーチ加工を施したり、綻びやほつれを施したり、ニットに穴開きを散りばめたり。

 経年変化の美しさに焦点を当てたデザインで、古着コレクターらしい、手腕が光るコレクションでした。

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2024年3月25日 (月)

産地単独展示会「遠州織物コレクション2024」

 遠州産地の織屋、産元等による様々な繊維素材を提案する、年に一度の産地単独展示商談会「遠州織物コレクション2024」(一般社団法人静岡県繊維協会主催)が2月中旬、東京・中目黒にて開催されました。

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左は榛地織物の綿100%手織り風あじろ、右はぬくもり工房の遠州綿紬

 今回は新作生地を含めた生地・製品展示約280点のほか、遠州織物を素材として産地の職人や作り手が連携して作り上げた地域ブランド「武襯衣-MUSHA-」製品80点が展示・販売されていました。

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 上は「武襯衣-MUSHA-」ブランドです。手の温もりを感じさせる優しい肌触りの製品が揃っています。

 もう一つ、注目したのが、HFP(浜松ファブリックパフォーマーズ)のコーナーです。遠州産地の後継者を中心とする若手事業者、織布、染色仕上加工、準備加工で構成された9企業が業態の枠を超えて連携し、新たなテキスタイルや製品を企画立案しているといいます。

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 今回は、代々受け継がれてきた有松絞りの伝統技法を生かしながら新しい表現にチャレンジし、ファッションだけではなくインテリア・アートなどのジャンルにも幅広く進出している久野染工場とコラボした暖簾(のれん)を製作。ファッションデザイナーの伊藤陽子さんプロデュースのもと、「遠州織物」✕「絞り染め」をアピールしていました。

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2024年3月24日 (日)

パリの邸宅でサロンコンサート バロック音楽の夕べ

 パリでサロンコンサートに誘われ、優雅な夕べを過ごしました。
 場所はパリ裏10区にある19世紀 “花の都パリ”を象徴する「オスマニアン建築」のアパルトマンです。天井の高い王朝風の邸宅で、かつての貴族の住まいを彷彿させます。近隣の移民が集まる地域とは隣接していますが、通りを挟むと一変し、静かな環境になることに驚かされましたが---。
 そんなエレガントなサロンで、「La Lorenzany」アンサンブルの演奏を楽しみました。クラヴサン、フルート、ファゴットのトリオが奏でたのは、バッハ、ヘンデル、ヴィバルディのバロックの楽曲、トリオソナタでした。久しぶりに癒される音楽を聴いて、気分が晴れる気がしました。

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 クラヴサンは、日本では「チェンバロ」と呼んでいる楽器で、弦を爪ではじくことで音を出します。ギターに似た優しい繊細な音色で、より心の琴線に響いてくる感じです。初めて近くで見て、ピアノとは鍵盤の白黒が逆なことも発見しました。

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 上は、このコンサートのプログラム表紙に使われていた絵画です。アドルフ・フリードリヒ・エルトマン・フォン・メンツェルによる1825年の歴史画で、トリオアンサンブルが描かれています。背を向けて腰掛け、チェンバロで伴奏しているのが、「音楽の父」と呼ばれるヨハン・セバスティアン・バッハの息子で作曲家のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハとか。

 この絵とともに、過ごしたステキなひと時、忘れられない思い出になりそうです。お誘いに感謝!

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2024年3月23日 (土)

ポンピドゥー「外見の越境」展 アートとファッションの対話

 パリのポンピドゥー・センターで、「外見の越境 (La traversee des apparences) ~アートを通じたファッション」展が開催されています。
Chefsoeuvreducentrepompidou  ポンピドゥー・センターは現代アートを中心とした総合文化施設で、2025年から2030年まで修復工事のため閉館となるとのことです。本展は、その前に人気のファッションイベントに乗り出して、印象を残しておこうと企画されたといいます。

 20世紀初頭から、アートとファッションは絶え間ない対話を続けてきました。たとえばオートクチュールの先駆者の一人であるポール・ポワレは、ロベール・ドロネーやアンドレ・ドラン、コンスタンティン・ブランクーシ、パブロ・ピカソ、ラウル・デュフィなどのアーティストと交流した最初の一人でもありました。それ以来、行き来は決して途切れることなく、お互いを養い合ってきました。この流れは近年、ますます強まり、今や融合といってもよいような状況を創り出しています。 

 展覧会はこのアートとファッションの密接な関係に焦点を当てたもので、ポンピドゥー・センターの中核である近代美術館が収蔵する最高傑作と17人のファッションデザイナーの作品が対話する、絶妙な演出になっていました。
 そこにはキュレーターであるジャーナリストで作家のロランス・ベナイムのポンピドゥー・センターのコレクションに対する新しい視点が感じられました。実際、彼女は次のように述べています。「これはファッションと現代アートの類似性だけでなく、それらが作品同士で対話し合い、相互に影響し合う関係や内面的なつながりを追求することを目指す試みです」と。
 たとえば、ジャン=ポール・ゴルチエのシルバーのコルセットと、シュルレアリストの画家ウィルヘルム・フレディのエロティコ・ブラスフェミックな絵画とを対比させたり、マリン・セールのネオ・フューチャリストなルックと、マルセル・デュシャンの「故障した機械」と対置させたり。またアンリ・マティスのフォーヴィスムのパレットとイヴ・サンローランのエレガンス、ロベール・ドロネーの幾何学的狂気とシャルル・ド・ヴィルモランのサイケデリックなポップとの融合、さらにマルク・シャガールの「エッフェル塔の花婿花嫁」がイリス・ヴァン・ヘルペンの彫刻的なシルエットと一緒に舞い踊っていたり、マーシャル・ライスの金属製の肖像画がアルベール・エルバスと交差したり、ジョルジオ・デ・キリコの形而上学的な作品がマルタン・マルジェラの大胆さと組み合わさっていたり---。

 とくに注目は下記、日本人デザイナーの作品との対話でした。

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 左 Francis Picabia 右 Comme des Garcons (川久保 玲)
  色彩や音、情報の洪水に圧倒されたため、モノクロームの静けさを求めた川久保 玲。彼女のコレクションは黒がベースです。またピカビアの「Udnie(若い女性、ダンス)」は、その音楽の中から川久保に着想した服を着た踊り手が飛び出してくるような印象がありました。

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 左 Issey Miyake 右 Hans Hartung
 三宅一生の作品は、先進技術による軽やかなボリュームで、素朴で詩的な美しさを表現しています。彼の作品は未来を原始の夜へと連れ戻し、永遠へと回帰させます。それは戦争で片足を失ったハンス・ハルトゥングの黒い手のひらや、ハンスが幼い頃に雷を描いていたことと共鳴しているように思われました。

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 左 Kazuo Shiraga   右  Yohji Yamamoto
 白髪一雄は、足でキャンパスに絵を描く抽象画家で、絵画は彼にとって色との身体的な闘いです。一方、山本耀司は強い黒を使い、「包み込むような」傷だらけの表現をします。1981年のパリのデビューショーでは、裸足のモデルが生地を使い古したような服を着用しました。そのコレクションには、アンドロジナスな黒のフロックコートがあって、確かに白髪の絵画との類似性を感じさせられました。

 展示では、異なるものが引き合いながらも、親和性を表現し、異なるスタイルや時代間の関係がうまく調和していました。

 改めて、ファッションが芸術的表現であることを確認した展覧会。会期は4月22日までです。

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2024年3月22日 (金)

コム デ ギャルソンの新しいパリ旗艦店に行ってきました!

 パリのフォーブルサントノーレ通りは、パリで最もエクスクルーシブなショッピングストリートです。この2月、この通りをウインドーショッピングしていて見つけたのが、コム デ ギャルソンの新しいパリ旗艦店 (54-56 rue du Faubourg St-Honore 75008 Paris) でした。

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 再開は昨年秋、10月だったそうです。2012年にこのフォーブルサントノーレ通りにあったブティックを閉鎖して、再オープンしたのです。昨年7月にマレー地区にオープンしたドーバーストリートマーケットにも行ってみたのですが、そこはクローズでした。

 新店舗は800平方メートル、4階建てで、コム デ ギャルソンの販売スペースとしてパリで最大です。1階にはメインのコム デ ギャルソンラインとコム デ ギャルソンオムプリュス、2階はコム デ ギャルソン コム デ ギャルソンとコム デ ギャルソン オム・ドゥ、3階はジュンヤ・ワタナベ、ノワール・ケイ・ニノミヤ、コム デ ギャルソン オム、地下1階はコム デ ギャルソン シャツ、ブラック コム デ ギャルソンが入っています。

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 売り場には、写真で見たコムデギャルソンのカラフルな色と色がぶつかり合うルックが出ていて、いかにも楽しげ---。暗い状況だからこそ、明るく輝く未来を期待したい、そんな想いが込められたコレクションでした。

 未来的な美学に特徴づけられたショップです。ファッションリサーチの新しいチェックポイントがまた一つ、増えました。

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2024年3月21日 (木)

「建築家の息吹」展 人間と自然の関係に焦点を当てて

 パリのカルティエ財団現代美術館で開催されている「建築家の息吹(Breath of an Architect)」展が好評と聞き、見に行ってきました。 
 展覧会はインドのスタジオ・ムンバイの創設者である建築家ビジョイ・ジェインがカルティエ財団のために制作したものでした。スタジオ・ムンバイと言えば、職人による手作業で知られるインドの建築事務所です。人と自然の関係に焦点を当て、アート、建築、素材のつながりを追求する作品を生み出しています。

 メインホールには、全体を手編みの竹紐で編み上げた小屋が建てられていました。床に敷かれた泥は牛糞を混ぜたものとか。中央には糸を巻き付けた球体が置かれています。

Img_30301_20240410193801  これは火、水、空気、土の四大元素で表現されたパビリオンだそう。

Img_30321_20240410193801   この巨大なオブジェはヒンズー寺院の沐浴池をイメージしているとか。フランス産のチョーク材でつくられていて、その上に赤い線画が描かれています。

Img_30471  地下の展示室には、動物の姿を象った石の彫刻がごろごろ。

Img_30421  壁には牛糞泥を使ったファサードに彩色した作品が装飾されていました。

Img_30681  外に出ると、本館とガーデンの間にも不思議な彫刻が立っていて、よく見ると柔和な顔立ちです。仏像のようでもありました。

 この他、いろいろ。

 緑に囲まれた静寂な空間で、タイトルに「息吹」とあるように、建築家の息づかいが聞こえてきそうでした。
 昔の日本もこうだったのでは、と思う、どこか懐かしい気持ちになって帰路につきました。

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2024年3月20日 (水)

パリのシテ科学産業博物館で「貴重な廃棄物」展

 パリ市北部のシテ科学産業博物館(La cite des sciences et de l'industrie e)で、「貴重な廃棄物 (Precieux dechets)」展が開催されていました。これは2021年秋にロンドンのデザイン博物館が企画した展覧会「廃棄物の時代:デザインに何ができるか?(Waste Age: What Can Design Do?)」の巡回展です。
 本展は毎年世界中で20億トン以上ものごみが生成されるという現実に対する認識を高めることが目的とのこと。また、デザインの世界がこれらのごみを貴重な資源に変え、将来の無駄を減らす方法を考える手段としてどのように活用しているかを示す狙いもあるといいます。

 プラスティック廃棄物のリサイクルなど、様々な作品が展示されている中で、ファッション関連の作品は少なかったのですが、そのいくつかをご紹介します。

Img_29731  右は、ステラ・マッカートニーのコート(2021年秋冬)です。
 ステラは、設立当初から「サステナブル」を推進し、地球環境や動物愛護に前向きな姿勢で製品を作り続けているセレブに愛されているブランドです。
 創業以来レザーやファーを一切使用していないといいます。
 コートの素材は、米国デュポン社が開発した植物由来のSORONAで、さまざまな機関の認証を得ているサステナブルな高機能材料だそう。

 ミュウチャ・プラダによるネオプレンのコート(1995年)です。
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 ネオプレンの素材はリサイクルナイロン68%、ポリエステル25%、スパンデックス5%。

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 どれも循環型経済を考えた作品展示で、ごみゼロ社会を訴求していました。

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2024年3月19日 (火)

「イリス・ヴァン・ヘルペン 感覚を彫る」展 圧巻の没入感

 パリの装飾芸術美術館でイリス・ヴァン・ヘルペンのメゾン15周年記念回顧展「Iris van Herpen. Sculpting the Senses(イリス・ヴァン・ヘルペン、感覚を彫る)」が開催されています。私は渡仏する直前に事前予約し、見に行くことを楽しみにしておりました。
 期待通り、圧巻の素晴らしさでした。イリスの世界にすっかり没入し、しばらくは夢見心地で歩いていたのを思い出します。
 展示されていたのはパリのオートクチュール週間で発表したコレクション、約100点のコスチュームが中心です。そこにイリスとコラボレーションしているアーティストの作品、珊瑚や蛇などの化石が加わり、ファンタジーと神秘に満ちた演出を盛り上げていました。

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 イリスはアレクサンダー・マックィーンに師事したとはいえ、もうファッションデザイナーというよりもアーティストです。そのテクノロジーと職人技術を駆使した緻密なクリエイションはファッションデザインの域を超えています。会場にはタイトルにある「感覚を彫る」の言葉にふさわしい実験的アプローチあふれる作品がいっぱい。目くるめくようなインスタレーションに圧倒されました。

 中でも注目したのが、日本との繋がりを感じさせる作品です。
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 上は、「水と夢」のコーナーで見た「フローズン・フォールス」と名付けられたドレス(2018年)です。日本の小紋工房のオーガンジー、ポリエステルフィルム、チュールが使われています。

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 あちこちに日本の墨流しの技法も見られました。

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 江戸時代の武将の鎧も出品されていてビックリ(写真左)。日本への関心の高さが窺われて、嬉しくなりました。

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会期は4月28日まで。パリへ行ったら必見の展覧会です。

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2024年3月18日 (月)

「ファッションとスポーツ ~表彰台から別の表彰台へ~」展

 数か月後に開催されるオリンピック準備が進むパリです。装飾芸術美術館ではこの一大イベントにちなんで「ファッションとスポーツ ~表彰台から別の表彰台へ~」展が開かれていました。
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 右は、本展のポスターです。
 テニスするモデルは、協賛企業の一社であるラコステがデザインしたクリノリンスタイルのポロ・クチュールドレス(2023年)を着用しています。
 古代ギリシャから始まり、現代まで、進化するスポーツウェアの歴史を紐解く壮大な展覧会でした。

Img_26631_20240409155101  左は、1912年のストックホルム大会、右は、1924年のパリ・オリンピックのポスターです。今年のパリは何と100年ぶりの貴重な大会!となります。
 この間、スポーツは一般大衆に浸透し、ファッションと融合し、今ではモードの先導役として、確固たる地位を獲得しています。
 
 数多くの展示作品の中から、とくに気になったものを紹介します。

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 左は、1900年のサイクリング用アンサンブルです。ネクタイにはサイクリストの刺繍が施されています。
 右は、1900年の水着で、チュニックとブルーマースがセットになっています。ウールツイルの織物製です。
 
 大ホールには、今日のトレンドをリードするラグジュアリーブランドが集結していました。Img_28021
Img_27731 Img_27891  

 

 

 

 

 






 左は、アレクサンダー・マックィーンの1999年春夏コレクションから。義足のモデルでアスリートとして知られるエイミー・マリンズが着用したコルセットとスカート、ヴィクトリア風のブーツのセットです。
 右は、コムデギャルソンのサッカーボールをイメージしたドレスで、2009年プレタポルテコレクションからのものです。

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 左は、コシェとナイキのコラボレーションによる2019/20年秋冬コレクション。
 右は、JWアンダーソンによる2023年春夏コレクションで、スケートボードを胸にのせた大胆なデザインです。

 他にもいろいろ。

 ファッションは今、「快適さ」への傾向をさらに強めています。この意味でも本展は現代ファッションにスポーツの要素がいかに重要かを示す展覧会だったと思います。

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2024年3月17日 (日)

「アライア/グレ モードの彼方に」展 似ている二人

 アズディン・アライア財団ではアライアとマダム・グレが初めて一堂に会した展覧会、「アライア/グレ モードの彼方に」が開催されていました。
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 Img_26191 二人のドレスは対に並べられて、まるで対話をしているようでした。この二人は実は一度も出会ったことがなかったといいます。でもこのようにディスプレーされると、とてもよく似ていて、作品解説プレートを見ないと区別がつきませんでした。アライアはマダム・グレに相当、親近感を持っていたのでしょう。
 写真左は、グレ シルククレープのカクテルドレス 1956年春夏オートクチュールコレクション、右は、アライア シルクシフォンのドレス 1990年春夏オートクチュールコレクションです。
 デザインと製作のすべてをマスターした最後のクチュリエと言われるアライアですが、一方で彼は偉大なコレクターでもあったのですね。アライア財団の目録には、マダム・グレのドレスが700着も収められているといいます。彼がいかにマダム・グレの仕事を尊崇していたかが分かる数字です。
 実際、マダム・グレが1930年代以降、芸術の域に高めたドレープ技術を、アライアはロングプリーツドレスに具現化しています。グレはドレープで、アライアはカットで、流れるようなシンプルなドレスの傑作を生み出しました。
Img_26061  また二人は彫刻家を目指していたといいます。展示されていた60点の作品にはそこかしこにその片鱗を見ることができました。それは彫刻家のように身体の形を切り出した、浮き彫りの彫刻のようなドレスです。
 まさに時代を超越したドレスの数々、圧巻の美しさでした。
 写真左は、グレ シルクファイユのカクテルドレス 1960年代のオートクチュールコレクション 右は、アライア ロングドレス 2017年秋冬オートクチュールコレクションです。

 最後に、今回から2階に展示室ができていて、その丸窓からアトリエを見ることができました。

Img_26401  上が初公開されたアトリエ風景です。

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2024年3月16日 (土)

ファッションテキスタイルセミナー開催のお知らせ

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 長年にわたり一般財団法人日本綿業振興会 ファッション ディレクターである柳原美紗子が、同会の協力を得て、ファッション マーケットの動向を考察しながら、2025年春夏ファッション テキスタイルの傾向、及び2025/26年秋冬コットン素材の見通しを、ZOOMオンラインにて解説いたします。今回もパリとミラノを訪れ、テキスタイル展の最高峰であるパリの「プルミエール ヴィジョン パリ」と「ミラノ ウニカ」を取材してまいりました。
 新企画、販売促進にご活用頂けるものと存じます。是非ご参加くださいますようご案内申し上げます。

【テーマ】2025年春夏~2025/26年秋冬ファッション テキスタイル
◇2025年春夏ファッション マーケット動向
◇2025年春夏ファッション テキスタイル傾向 - プルミエール ヴィジョン パリ、ミラノ ウニカ トレンド情報
◇2025/26年秋冬コットン素材の見通し

【日 程】 2024年4月17日(水) 14:00~16:00

【講 師】 柳原 美紗子 一般財団法人日本綿業振興会 ファッション ディレクター
フリー ファッション ジャーナリスト

【会 場】 ZOOMによるオンライン 

【受講料】 一般 ¥2,500(税込み)
学生 ¥1,500(税込み)

【お申込み先】Peatixの https://peatix.com/event/3872464 よりお申し込みください。
またPeatixへのアクセスが不都合の場合は、メール myanagiharantenne@gmail.com にてお問い合わせください。

 ご参加の皆様にはZOOM接続リンクとセミナー資料を前日までにご送付させていただきます。
 皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

 

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2024年3月15日 (金)

2025年春夏コットン素材傾向―PV 及びMUより

 一般財団法人日本綿業振興会のHP内、「プレスリリース」(2024年3月14日)に、柳原美紗子が寄稿した「2025年ル春夏コットン素材傾向 PREMIERE VISION PARIS 及び MILANO UNICAより」の記事が掲載されています。 https://cotton.or.jp/pr2024-03-14.htmlをクリックしてご覧ください。

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2024年3月14日 (木)

Mr. 個展「それを呼び起こせば 花が咲く」日本ポップの衝撃

 パリのホットスポット、マレー地区のギャラリー・ペロタンで、Mr. の新作個展「Invoke It and a Flower Shall Blossom それを呼び起こせば 花が咲く」展が開かれていました。

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 Mr. はカイカイキキの村上隆のアシスタントからスタートし、オタクの代表的存在となり、絵画や水彩画、彫刻、インスタレーション、映画、写真など幅広いメディアで活動しているアーティストです。ギャラリー・ペロタンでは8回目となる展覧会で、現代日本のポップな美学がフランスで衝撃を呼び起こしていることに改めて感動しました。

 フランスの美術評論家でジャーナリストのステファニー・ルモワーヌ氏は、これについて下記のようなレビューを掲載されています。
 「この日本人アーティストの作品は、フランス人にとって非常に親しみやすいものとされています。彼の作品は、1980年代以来、アメリカの作品とほぼ同じくらい青少年文化に影響を与えてきたアニメーション映画、アニメビデオ、ゲーム、マンガのイメージを豊かに再構築してきました。この視覚的な影響は、ヨーロッパにおいても非常に古い遺産として認識されています。実際、それは19世紀後半に浮世絵がヨーロッパで発見された際に引き起こした衝撃を再び思い起こさせるものです。日本の現代美術には、これらの美学が隔たりなく結びついています。1990年代には村上隆がスーパーフラット運動を提唱しました。この運動は、青少年文化に固有の美学を認めながら、二次元性から出発し、日本画や仏教図像の巨匠たちの遺産を引き継ぎ、現代美術シーンに重要な影響を及ぼしました。」

 展覧会ビデオもご覧ください

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2024年3月13日 (水)

パリのショップ「メルシー」 テーマは “パシフィック” の旅

 パリに行けば必ず訪れるセレクトショップが「メルシー」です。いつ行ってもその季節に合った新しいテーマで迎えてくれます。
 この2月は “パシフィック” の旅がテーマでした。プロデュースしたのはパリ発のライフスタイルブランド、ローラ・ジェームズ・ハーパーの創設者ラミ・メックダチ氏です。自身の家族と世界中を旅しながら、思い出の地の記憶を巡り、新しいフレグランスを調香し続けているパフューマーです。
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 旅と音楽をこよなく愛するというラミ・メックダチ氏、店内には太平洋岸から直輸入された香りやリラクシングな音楽が流れ、南太平洋のタヒチなどの島々の雰囲気を演出するなど、旅へと誘っていました。パリの暗い冬の真っただ中に明るい光が射し込んで、ここにいるだけで日常を忘れ、南国の楽園にいるかのような気分にさせられました。

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2024年3月12日 (火)

パリは地下鉄もアートの場 変身したシャトレ駅のホーム

 長らく工事中だったシャトレの駅です。久しぶりにメトロに乗り、降り立ったシャトレ駅のホームは、すっかり変身していました。ストリート・アーティストらによる都会的な作品に生まれ変わっていたのです。
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 長さ70メートル、高さ3メートルの2つの印象的なフレスコ画は、カラフルな色彩と熱帯植物をグラフィカルに組み合わせた大作で、壮観でした。
 芸術の都パリは、地下鉄もアートの場です。

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2024年3月11日 (月)

パリで「明日は中止です Demain Est Annule」展

 地球環境危機が叫ばれる中、今、パリで衝撃的なタイトルの展覧会が開かれています。題して「明日は中止です Demain Est Annule」です。この「明日はない」と言う意味の言葉に惹かれて、事前予約して訪れました。場所は7区レカミエ通りの袋小路にあるリノベ―ションされた空間です。広さ550㎡のこの空間の所有者は自然エネルギーグループEDF財団で、主催者も同じ財団です。
 これはアートとサイエンスの両方を兼ね備えたキュレーター集団によってデザインされた企画展で、副題は「アートと質素さ(簡素な生活)に関する視線」です。そのキーワードは「禁酒」で、アルコールや薬物依存症は急激な気候変動と関係があると言われています。
 中に入ってみると、タイトルに「Demain Est Annule」と取り消し線の横棒が入っていることに気づきました。「明日はないのではなくて、ある」と、希望を抱かせられたことでした。

 展示されていたのは、23人のアーティストによる作品です。それらが次の四つのセクション ―― 不確不実な道、すべての人のための世界、精霊の国 、そして進歩の道 ―― で構成されていました。いずれも現代の消費社会や生活習慣への風刺や問題提起の姿勢を感じさせるものばかり。ブラックユーモア的なインスタレーションもたくさん見られ、興味深かったです。
 とくに気になった下記2つを紹介します。

 一つは展示室中央に設けられたインスタレーションです。これはビアンカ・アルギモンによる『禅の庭』と名付けられた作品で、ビジネスマンたちを皮肉っています。真っ白な小石の庭で、頭を埋もれさせ、手や足を突き出したスーツ姿の一団は、もしかして日本人をイメージしているのではと、ギョッとさせられました。
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 将来が不確実になる一方の社会で、単にドライ・ジャニュアリーと断酒してもそれだけでストレスは晴らせません。でも作家はこの作品で、「私たちは砂に頭を埋めるのをやめなければならない」という雰囲気をはっきりと打ち出していました。印象的な逸品と思いました。
 
 もう一つはジョーダン・ロジャーの『Burn Them All』です。一見バービーランド、あるいはディズニー ワールドの世界からそのまま出てきたような陶器のおとぎ話の城です。でもよく見ると、きれいなキャンディー色の建物は崩れ落ち、炎が上がっているのがわかります。

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 この作品は、2022年に可決されたフロリダ州の「ゲイと言うな」法に触発されたものとのことです。小学校で教師が性的指向や性自認に関して話すことを事実上禁止する法案で、同性愛を否定する「キリスト教原理主義者」とも呼ばれる福音派にアピールするために、米保守派議員が提出したものとか。ディズニーはこの法案に反対声明を出しています。
 この他、夜に咲く「たんぽぽ」のミステリアスな映像など、多数。

 「未来を書き直して欲しい、視点を変えてもらいたい」と問いかける展覧会で、考えさせられる内容にちょっと身が引き締まる思いがしました。会期は9月までと長いので、またパリへ行ったら訪ねてみようかと思っています。

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2024年3月10日 (日)

パリ「ボン・マルシェ」 四角テーマにダニエル・ビュラン展

 この2月初めにパリを訪れ、最初に行ったのがデパート「ボン・マルシェ」でした。この時期は毎年、現代アーティストによる展覧会が開催されています。今年はストライプ柄でおなじみのコンセプチュアルアーティスト、ダニエル・ビュランによるインスタレーションでした。
 テーマはAu Bon Marche(オー・ボン・マルシェ)をもじった「Aux Beaux Carres(オー・ボー・カレ)」で、カレとは「四角」の意味。ボン・マルシェのガラス屋根から連なる夥しい数の正方形にライトを当て、反射する光と色のグラデーションを楽しむ趣向です。

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 美しい光の色が降ってくるアートの下で、ショッピングとは何とステキ!な空間と思いました。

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 3階の展示会場ではブルーとイエローと鏡のスクエアを組み合わせたインスタレーションが待っていて、しばしの没入感を体感しました。

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2024年3月 9日 (土)

25春夏PV (24) PVアクセサリー 変革へ新しい展開

 2025年の春夏シーズンは、社会の変化が生産方法や消費パターンに影響を与える移り変わりの時期です。この変革のコンセプトはアクセサリーに反映され、さまざまな形でその新しい展開が表れています。

フリーズ・フレーム Freeze Frame
 変態の瞬間が凍りついたように捉えられます。更新の象徴であるさなぎが、二つの状態の間にあるこの停滞した瞬間を表現しています。Ss25_access_valter_4679_01_65aaa2926abd6 変異した、透明な、虹色のアクセサリーも浮上します。


 変態の段階である繭が、透明感のあるアクセサリーに息づいています。
 右は、VALTER(イタリア)のブレスレット。

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イリディッセント(虹彩)

 今シーズン、光の演出は、移り変わるパステルのきらめきが装飾的なアクセサリーに現代風のタッチをもたらしています。
 右は、LAMPA(イタリア)のファンタジックなボタン。


ラディカルな企業論理 Radical Utilitarianism
 産業の進化を反映する新しい生産プロセスへ。自然と技術が共存し、職人技と革新を組み合わせた製品が生まれ、責任あるアプローチと持続可能な製品の道を開いています。

クリーン・クラフトマンシップ
Ss25_access_ayb_hislabor_154225_030_2402  クラフトマンシップ(職人の技)が注目を浴びています。籐細工、編み込み、織り構造は、プリミティブな材料でつくられ、人の手の痕跡を想起させるさまざまな表面に見えるテキスタイル構造ですが、決して粗野ではないのが特徴です。
 右は、AyB Hislabor(スペイン)のブレード。

マイクロ・プレシジョン
Ss25_access_mode_harmony_56608_2210_01_6   3Dプリントが複雑な構造への道を開きます。
 クリーンでテクニカルな装飾用アクセサリーに向けて、マットなゴールドや黒ずんだシルバーなどのクールでプレシャスなカラーが特徴。
 右は、MODE HARMONY(フランス)のボタン。

クラシックの再来 Revisited classics
 25春夏シーズンのトレンドは、変化をテーマにしています。装飾においては、植物や動物をイメージした自然のモチーフを基にしたファンタジーなハイブリッドが注目され、伝統的なクラシックスタイルが新たな視点で再考されています。ストライプや他の古典的なデザインも、サイズや色のバリエーションを通じて新しく解釈されています。

自然の強調
Ss25_access_lampo__lanfranchi_3052_01_65  花や植物をモチーフにしたデザインは、現実を超えた幻想的な世界を表現しています。自然はパターンとテクスチャの無限の源です。自然の豊かな創造性は、甲虫から水蛇までさまざまな生物によって表現され、光沢のある表面や深い虹色の反射も特徴です。
 右は、Lampo Lanfranchi(イタリア)のファスナー。

Ss25_access_goretti_hand_made_weaving_45 迷走するストライプ
 ストライプという最高のアイコニックなモチーフは、新しい色、厚み、リズム、方向を採用するなど通常のストーリーから解放され変容しています。
 右は、Goretti(イタリア)のブレード。

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2024年3月 8日 (金)

25春夏PV (23) PVデザイン 底流に「ミューテーション」

 25春夏のデザインの底流にあるのは「ミューテーション(突然変異)」です。テキスタイルデザインでは、この変化への称賛の意がさまざまな形で表れています。

ブリーチド (BLEACHED)
 同系色のパステルカラーのパターンがぶつかり合い、重なり合い、抽象的で漂白されたような効果を生み出しています。

ミルキーアブストラクト 
5_20240330183601  シミのような花のモチーフを連想させる、はっきりしない形が、乳白色と水彩画を思わせる効果の間を揺れ動いているデザインです。
 希薄に見える有機的あるいは抽象的なフォルムは、不思議な柔らかさを帯びています。花々は抽象的なまでに歪み、ミルキーな淡い色彩とぼやけた輪郭は、穏やかな憂いを帯びているようです。

ウォーターダウン
6_20240330183701  「ウォーターダウン」とは、水で薄める、という意味です。
 花などのモチーフは、水彩絵の具が水増しされて、淡い色調になり、パステルカラーが混ざり合ったり、コントラストをつけるダークトーンも分解されたり---。ランダムなぼかしの効果で、純粋に具象的でもなく、完全に抽象的でもない、魅力的な模様に仕上げられています。

XXL ミニマリズム (XXL MINIMALISM)
 「ミューテーション(突然変異)」のストーリーは、絵画技法の選択にも受け継がれています。インク消費量の制約を考慮しながら、強い視覚的インパクトを持つ版画を作るにはどうすればいいのでしょうか。その主な方向性が、XXLミニマリズムです。これは、大きなモチーフと限られたパレットを組み合わせ、スケールの効果を楽しむテーマです。

ナイーブなバイカラーデザイン
1_20240330183201  ナイーブな切り絵はその純粋なシンプルさに感情が揺さぶられます。
 ミニマルなデザインをテキスタイルに応用すると、プリントに必要な顔料が少なくて済み、環境フットプリントが削減されます。同時に、強烈な視覚的インパクトを生み出すデザインも可能になります。

線描きの花
2_20240330183301  控えめで詩的な線描きの花柄は、科学的な図解を思わせる細密なデザインから、より様式化されたバージョンまで、さまざまなスタイルで単一のモチーフを表現しています。
 ツートンの組み合わせは、ナチュラルな色合い(ベージュ地に黒のラインなど)だけでなく、対照的なビビッドカラーの組み合わせでサイケデリックなムードを醸し出したりもします。

マルチプリケーション(MULTIPLICATION 増殖) 
 物質の核心を想起させる視覚的インスピレーションとして、生命に不可欠な増殖する細胞を想起させるパターンが浮上しています。ミクロの斑点模様は、カモフラージュや動物のモチーフを思わせ、デザインに生命を吹き込みます。

生きている世界
3_20240330183401  今季の中心テーマである「ミューテーション(突然変異)」は、自然の回復力に敬意を表しています。あらゆる場所で、あらゆる規模で、無限のサイクルで発展し、増殖する生命のグラフィカルな表現や幾何学的なパターンが組み合わさったり、重ね合わさったり。ミクロのスケールで遊び心たっぷりに、また目の錯覚を生み出すキネティック・アート風に表現されたりします。

絡み合う葉
4_20240330183501  植物をモチーフとしたデザインは、自然の美しさや生命力を表現するだけでなく、持続可能性や環境への配慮を象徴する要素としてもクローズアップされます。
 エキゾチックで豊かなヤシの葉などが交差し、絡み合います。透明感や反射する光の演出で、目を欺くイリュージョンを生み出していていたりするものも見られます。

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2024年3月 7日 (木)

25春夏PV (22) ウルトラスエード フォトクロミックが楽しい

  プルミエールヴィジョン(PV)パリでもミラノウニカでも、いつも興味深く見ているのが、東レのウルトラスエードです。かつてはエクセーヌというブランド名で親しまれていましたが、いつの間にかこの名称に統合されました。
  材料はポリエステル繊維ですが、絶え間ない技術革新で、天然皮革スエードを超える特性を持った素材として社会に広く浸透しています。
植物由来の再生資源や東レの工場から出るポリエステルフィルム屑等に産業廃棄物を粗原料の一部に使用し、ISO 14001と ISO 9001認証にREACH登録と、環境配慮にも抜かりはありません。

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  今シーズンは前回のレーザーカット・ボンディングに加えて、三井化学のフォトクロミック加工を打ち出していました。人の手の熱で色が浮き上がってくるのが楽しいです。
 手をかざすと、右のようなきれいな赤に染まります。
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 再帰反射やアルミホイル使いの形状記憶のものなど、ウルトラスエードは遊び心いっぱい。ファンを惹き付けています。

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2024年3月 6日 (水)

25春夏PV (21) エンブロイダリーやレース メンズにも

  シャツ地や、メッシュ、その他の3Dニットにも表現の可能性を広げているエンブロイダリーやレース。メンズファッションにもロマンティックなタッチを加えています。
  繊細な糸刺繍やスパンコール、ビーズ、アイレット刺繍、ときにはオールオーバーで、輝くアラベスクから幾何学模様、アニマル柄など。とくに今シーズンは海のモチーフに注目です。うねる海藻や白みを帯びたサンゴ、真珠の光沢など。

リリーレース
 京都で創立50周年を迎えるレース製造卸の老舗です。ラッシェルレースを中心に、ジャカードレースやチュールレース、エンブロイダリーレースなど、Img_41601 加工法もこれまで見たことのないような工夫を凝らしたレースを提案していて、トレンドエリアで目立つ存在になっています。
 右は、フロッキー加工のレースです。

Img_4162  右は、光沢のある海藻を思わせる特殊加工のレースです。

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2024年3月 5日 (火)

25春夏PV ⒆ プリント 新しい視覚表現へ

 プリントはますますぼやけ、捉えにくいものへ。花やグリーンのモチーフは抽象化され、水彩画を思わせたり、柔らかなグラデーションを描いていたり。新しい視覚イメージを表現するものが増えています。

北高
 毎年1,000種類以上の新デザインを発表し、短納期を実現するためにそのすべてを在庫しているという同社。Img_41531 今回はメゾン系から中堅どころのバイヤーが多くなり、ビジネスは好調といいます。
 人気は、ボカシたようなタイダイ風のプリントとか。右はナイロン生地のものです。
 また日本画に見る、松に丹頂鶴を描いたような風景柄を大きく展示していたのも印象に残りました。Img_41491

コッカ
 大阪を拠点に自社開発のテキスタイルを専門にデザインしている老舗で、Img_41431 上の北高と同様、プルミエールヴィジョンのプリント分野ではお馴染みの企業です。
 今シーズンはコットンのカットドビープリントが人気で、右は「スノーカット小紋」と名付けた柄のもの。

Img_41461  また水彩画家の伊藤尚美さんとのコラボレーションシリーズも好評で、右のような自然の面影をとらえた配色が美しい絵画的なグラフィックプリントが注目されます。

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2024年3月 4日 (月)

25春夏PV ⒅ ニット これまでの伝統を破るニット生地

 アイコニックなカットソーやジャージー、ピケ、リブが重みを変え、これまでにない編成を駆使して伝統を打ち破るニット生地が増えています。密度の高いフリースやインターロック、極細ジャージーにスラブやドライな麻タッチがクラシックな雰囲気に独自の要素をプラス。ジャカードニットは幾何学的リズムのオープンワークで心地よいファンタジーを追求しています。

エイガールズ 
 今シーズンは未来に向けたサステナビリティへの取り組みとして、スパイバーとのコラボレーションコレクションや、リサイクルナイロンや耐久Img_44331 性に優れたコーデュラ使い、PLAポリ乳酸繊維のニットシリーズなどを訴求していたのが印象的でした。
 右は、ブースで人気のダメージ加工スエット生地です。

ミナミ
Img_41731pg  天然繊維を中心に、高品質・高技術・長寿命のニットテキスタイルを生産している同社。ブースでの人気素材は、右の綿/麻のナチュラルな感覚のニットや、玉虫調の天竺とのこと。

ヤギ
 ニット生地の在庫は300点以上。1m/1色から販売するとのことです。一方で裏毛の別注も、オーガニックやエシカルをテーマに打ち出していました。Img_41811

モリシタ
Img_45171_20240327205501  ウールやコットンを中心に、サステナビリティにこだわった繊細で滑らかなタッチのジャージーを数多く提案しています。
 右は、今シ―ズン好評だったという、ラメ糸使いの上品な光沢のあるジャージーです。

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2024年3月 3日 (日)

25春夏PV ⒄ デニム 多様な提案に注目

 柔らかさを取り入れ、褪せたウォッシュデニムを中心に、ジャカードや光沢加工のものなど、多様性に富んだ提案が見られます。

クロキ
 昨年春は高級ブランド最大手のLVMHと日本初のパートナーシップを結んだことで大きな話題となった同社。熟練の技術と感性でコットンやインディゴの特性を最大限に引き出すデニムで、メイドインジャパンのクオリティーの高さと魅力がさらに世界に広がります。 
 Img_41321  ブースでは友禅染のきものを飾って、日本発信であることを強調していました。

ジャパンブルー
 デニムの聖地と言われる岡山県倉敷市児島のデニムメーカーです。プルミエールヴィジョン・パリは二回目の出展で、リピーターも多く好調といいます。

Img_41381  今回は、デニムはもちろんですが、ミリタリーのヴィンテージウェアをリプロダクションしたコレクションを打ち出して、人気を集めていたのが印象的でした。

日本綿布
 目に付いたのはジャカードデニム新作です。つくれば売れると、絶好調の様子でした。
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2024年3月 2日 (土)

25春夏PV ⒃ テイラリング 遊び心のあるスーツ地

 スーツ向け生地メーカーが集まるテイラリングエリアでは、クラシックをひねったフレッシュな遊び心のあるスーツ地に目が向けられています。軽やかなスーパーファインウールからしなやかなクレープ、植物繊維やセルロース繊維使いのドライなタッチのものも。

瀧定名古屋
 レスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)認証を取得し、デッドストックを利用してトートバッグを製作するなど、サステナビリティに力を入れています。
Img_44511  人気の生地は2層ではない3層のしっかりしたボンディングとのこと。プルミエールヴィジョンの今季トレンドテーマ「トランスフォーメーション」を意識させる、移り変わる色のグラデーションが美しい絞りや流し染め風との組み合わせが目を惹いていました。

小原屋繊維
 今回、販路拡大を目指してプルミエールヴィジョン・パリに初出展したとのこと。大阪を拠点とする繊維商社です。海外との差別化を図るため、日本でしか作れないと思われる生地を打ち出していました。
 Img_44711 その一つが右の備長炭墨染めのリネン/和紙の生地です。他に柿渋染めのものも。
 スタッフはお祭り半纏を着装して日本ムードを盛り上げていたのが印象的でした。

タケ・バイ・チクマ
 1903年の創業以来、日本の職人技と技術を生かしたさまざまなファブリックを、国内の小規模工場と共同で開発している繊維専門商社です。
Img_45041_20240327165101  右は、合繊タッチの光沢のあるコットンサテンです。今季人気の生地の一つといいます。

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2024年3月 1日 (金)

25春夏PV ⒂ ハイファンシー ジャカードや意匠デザイン

  ジャカードや意匠デザインが注目されるこの分野では、さらなる質感の高さが際立ちます。以前のようなバロック的なオーラは弱まって、洗練された色合いや上品なゴールド系の光沢感など、独特の静けさに満ちたムードが広がっています。

スタイレム大阪瀧定
 大きく打ち出しているのがZEN Kiwami(ゼンキワミ)です。欧米市場向けに、日本の各産地の特徴を活かした独自開発のテキスタイルを展開しています。
Img_44421  シーズンの人気素材は多数あり、その一つが、右の陰影のあるジャージーです。オーガニックコットン/ポリエステル/ポリウレタン混で、アイボリーのカラーミックスが繊細な奥行を感じさせます。

タキヒョー
 日本の職人によるアイデア満載のオリジナルハイブリッドファブリック。Img_44752 とくに英国の紡績機ブラッドフォード・システムでつくられたオリジナル糸を使用したコレクションが魅力です。
 右は、経糸シルク、緯糸ウールの高密度織物で、シルクの気品のある光沢が美しい生地です。

タクエッジ

 名古屋を拠点に日本のクラフトマンシップと革新的な新しい技術を融合させた高品質の工場と取引しているテキスタイルサプライヤーです。

Img_42011  今シーズンも日本ならではの絞り染めや墨流し模様の生地を前面に押し出していたのが印象的です。

コボ クニシマ
   尾州産地の老舗でラグジュアリーブランドを中心にビシネスを展開している同社。Img_41901 責任あるウール規格であるRWS 認証を取得し、オーガニックウールにも取り組み始めたといいます。
 右は、プラチナのようなしっとりとした光沢のジャカードです。

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 右は、紙繊維使いのファンシーなコットン混ツイードです。

 

 

 

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