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2024年1月19日 (金)

我が国の避難所の課題とイタリアから学ぶ支援のあり方

  昨夏の8月最後の日、翌日は9月1日の「防災の日」というタイミングで、国際ユニヴァーサルデザイン協議会主催、ユニバーサルファッション協会共催(IAUD X UNIFA)による災害支援に関するセミナーが開催されました。 その中で印象に残ったのが、Photo_20240117193101 日本と同じ地震国であるイタリアの避難所の先進性についての講演でした。
 講師はJパックス株式会社代表取締役社長で避難所・避難生活学会 常任理事の水谷 嘉浩氏で、災害による避難生活の必需品「段ボールベッド」を考案された方です。
 「我が国の避難所の課題とイタリアから学ぶ支援のあり方」をテーマに、避難所先進国イタリアと、立ち遅れる我が国の被災者支援を比較し、支援のあり方を考察する内容で、私も災害支援について改めて考えさせられました。

 開口一番、「イタリアは進んでいるが、日本は本当に遅れている」と発言され、ちょっとビックリ!
 避難所は東日本大震災でも阪神淡路大震災でも過密な雑魚寝だったのです。2016年熊本地震頃から少しずつ改善されるようになり、2020年人吉市の豪雨災害でようやく400人分のベッドが届きましたが、まだその程度です。トイレも災害時にすぐ来なくて、3日くらいかかり、それも和式がほとんどで、食事もパン食でした。
 避難生活に伴う災害関連死は、平成の30年間で4,958人と発表されています。しかしこれは申請して認定された人数で、実際はもっと多いと推測されています。その原因は調査の結果、約51%が避難所における生活の肉体・精神的疲労で、環境さえよければ防ぎ得た死だったのです。とくにエコノミークラス症候群で死亡した現役女性、つまり母親世代の割合が高齢者より高かったことは注目に値するといいます。避難所における女性を取り巻く状況はより深刻であることを示している、ということでしょう。
 国内外で数多くの避難所を回った氏が、災害対策先進国としてもっとも高く評価するのが、日本と同じ地震国のイタリアです。そこで得たヒントが「TKB」と、次のように紹介しました。
 TKBとは、T(トイレ)、K (キッチン)、B (ベッド)のことです。Tは、トイレだけではなくシャワーも付いています。Kは食事で、食堂が設営され、キッチンで調理した料理が出ます。Bは睡眠と生活環境で、テントが用意され4人家族なら約100㎡の空間にベッドが入り、空調も完備されています。そこにはもちろん衣服もあり、防寒着や下着、中衣なども揃っています。
 イタリアには全国各地に巨大な備蓄基地が点在しているといいます。基地には常時約10,000人が長期避難生活を不自由なく過ごせる資機材が備蓄されていて、緊急時にはトラックで48時間以内に必要な物資が届けられるとのことです。また48時間以内にプロの調理師が出動し、臨床心理士もPTSD予防に向けて現地入りするそう。子どもの遊び場や、乳幼児を守るケアも48時間以内に整えられるとか。日本なら1か月以上かかる話ですね。
 では何故イタリアではこのような先進的な活動ができるのでしょうか。そこにはイタリア市民保護局という国家機関があるからといいます。これは欧米先進国やアジア諸国には必ずある組織だそうです。ところが日本には内閣府防災担当はあっても、このような国の機関はないとのことです。とはいえイタリアでも昔からあったわけではなく、災害頻発を受けて1992年に設立されたとの話。今では避難所の環境を起因とする死者はありえないといいます。
 その規模も日本とは大違いで、日本の内閣防災担当が90名なのに対して、ローマ市の市民保護局は800名が常時待機しているとか。
 避難所を運営するのは、約4,000あるというボランティア団体で、登録ボランティアは300万人(全人口の5%)。ボランティアとはいえ、志願者は職業を持ち、その職業を生かした災害を支援する訓練を受けている人々だそうです。

 日本でもイタリアのように、避難所環境を向上させて災害関連死を無くすには、どうしたらよいのでしょうか。氏は災害支援専門の省庁の設置が必須であり、法律を変える必要があると提言しました。

 下記に、関連死を防ぐための課題として:
・現在の災害救助法では避難所の設置期限は災害が起きてから「7日以内」などと定められているが、これは現実と乖離している。
・災害支援の市町村任せには限界があり、広域・複合災害を想定し、国全体で必要な緊急時対応が可能となる条項が必要。
・TKB導入の仕組みにオールジャパンで取り組むこと、など。

 最後に、イタリアで学んだこととして:
・「たった一人の犠牲者も出さない」強い決意。
・災害支援には哲学が必要。
・ボランティアではなく、あらゆる専門職種が関わる仕組み。
・敵は「災害」であり守るのは国民である。
・しかし被災者にとって本当の敵は「絶望」である。
・「絶望」から守るには、そのための国レベルでの標準化が必要。

 講演を聞いて、日本の避難所は、健常者も病気になってしまう劣悪な環境であることが分かりました。避難所での雑魚寝スタイルは、日本だけだそう!これでは要配慮者のことを考える余裕もありません。
 耐震性能では進んでいる日本ですが、イタリアでは災害時に手厚く快適な仮設住宅が48時間以内に設置されます。避難所でもしも死者が出れば、責任者が訴求されるとのことでした。
 日本は先進国と思っていましたが、災害支援ではスタート地点にも立てていない後進国だったのです。日本にもイタリア市民保護局のような機関ができるとよいのですが、それには政治の強力なリーダーシップが必要不可欠です。いつか災害支援を最優先課題にする政治家が現れることを期待していますが、現状をみるといつのことやら---です。災害が起こってからでは遅いのに、遅々とした歩みの日本です。
 イタリアに学び、少しでも遅れを取り戻したいものです。

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