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2024年1月27日 (土)

サステナビリティのスタートラインは法令遵守が基盤

 「日本はファッション製品に対する化学物質規制は世界でもっとも緩い国」と知り、愕然としました。日本の規制の厳しさは世界最高峰と思い込んでいました。現実はその逆だったというのです。
 先般、そんなサステナビリティの基盤となる化学物質管理に関するセミナーを拝聴しました。登壇したのは、一般財団法人カケンテストセンター 国際部グローバルテクニカルサポート室長で繊維製品品質管理士・ZDHC認定トレーニングプロバイダーの志賀 聖氏です。

1_20240127144501   ちなみにZDHCとは、Zero Discharge of Hazardous Chemicalsの略で、繊維・皮革産業において有害物質の排出をゼロにするための活動をしている非営利団体です。

 EUでは、2022年3月に持続可能な循環型繊維製品戦略を公表し、日本でも環境省が「環境表示ガイドライン」を制定して、その遵守を奨励しています。しかし日本ではサプライチェーンにおける化学物質管理が十分に実施されていないとも言われています。
 志賀氏は「サステナビリティのスタートライン~グローバル化の為の製品コンプライアンスとは~」と題して講演。各国の化学物質規制を遵守するための管理システムの構築という観点からみたサステナビリティの考え方について解説しました。

 冒頭、氏は「環境配慮型製品の特長として最初に思いつく言葉は何か?」と問いかけました。圧倒的に多かったのが「リサイクル」でした。この言葉を確認した上で、日本の繊維産業界でサステナビリティと無関係と思われているテーマ、「化学物質管理」をメインに話したいと述べて、セミナーをスタートさせました。
 まず、海外に進出する先で人気のある国の繊維製品に適用される法令を紹介しました。日本のファッションを世界に輸出するためには法令に適合した製品を生産する必要があるからです。
 ファッション製品の法令コンプライアンスでは日本には表示法として家庭用品品質表示法、中国はGB/T5296.4、台湾服飾表示基準など、また安全性に関する化学物質規制では日本の有害家庭用品規制法、中国GB184017やGB30701、韓国KCマーク制度、EUはREACH規制、POPs規制などがあります
 とはいえ法令遵守すなわちサステナビリティではないことに釘を刺しました。

 1_20240125112101 次に、日本とEUのファッション製品に対する化学物質規制の違いを説明。日本ではホルムアルデヒド、殺生物剤、難燃剤、有機スズ化合物、アゾ染料の5つの物質群が規制されています。しかしEUではこの5つに加えて、ノニルフェノールエトキシレート、フタル酸 多環芳香族炭化水素、6価クロムなど17種類もの化学物質が規制されているのです。
 氏は、日本向け製品のサプライチェーンとEU向けのサプライチェーン管理では安全と環境のための化学物質管理に大きな差が開いていると指摘しました。日本では日本の規制の厳しさは世界最高峰と思い込んでいる人が多数います。しかし現実は正反対で、日本の化学物質規制は世界中で最高に緩い! と言っても過言ではないといいます。
 アジア圏の国々は緩いと思われるかもしれません。しかし日本は管理している化学物質の数が圧倒的に少なく、消費者や環境にやさしい製品を生産する基盤においてすでにEUや諸外国から大差がつけられていることを自覚しなければならないと警告しました。
 日本のファッションブランドが海外で販売する製品の法令コンプライアンスに関する相談でもっとも多いのは、品質表示に関する依頼であって、化学物質に関する問い合わせはほぼないとも。
 日本では日本以外の国の化学物質規制は無視されている状況があり、自社の化学物質管理は、サステナビリティの基盤であることをもう一度考え直すべきと問題提起しました。

 さらに製品コンプライアンスのためのRSL(Restricted Substance List=制限物質リスト)に触れ、これは化学物質管理に欠かせないツールと強調。ブランドを構築し、消費者の信頼を獲得すると同時に、有害な化学物質をサプライチェーンで排除することにより、消費者の健康と環境を守るために、世界各国の製品中の特定化学物質を禁止する規制要件と基準を遵守すべきと語気を強めました。
 最近では欧州で有機フッ素加工物(PHAS)規制が提出され、発がん性があり、分解しにくく残留性があることから使用不可になる可能性が高いことも。

 最後に、サステナビリティのスタートラインに立つために、不可欠なのは日本の法令ばかりでなく、世界の法令を見て、確実に遵守する体制をつくること、そしてそこからさらにそれを上回る環境管理をやっていくことこそサステナビリティへの道と言及。まずは法令の遵守、そこを超えることがサステナビリティと語って締めました。

 ビジネスをグローバルに進める際、避けて通ることのできない課題を取り上げた興味深いセミナーでした。

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