« 2023年12月 | トップページ | 2024年2月 »

2024年1月

2024年1月31日 (水)

第10回ウェアラブルEXPO ウェアラブル開発・活用展

 第10回目を迎えたウェアラブルEXPOが1月25日~28日、東京ビッグサイトで開催されました。エレクトロニクス開発のネプコンジャパンや、クルマの先端技術展のオートモティブワールド、物流DX/ロボット/カーボンニュートラルのスマート物流EXPOと同時開催され、1,650もの企業が出展したとのことです。
 ウェアラブルEXPOでは、各社得意のスマートグラスやスマートウォッチ、AR/VR技術など新製品・新技術が展示されました。

 中でも私が注目した3社の製品を紹介します。

ポータブルフェイス美顔器 Zhejiang SUNLIKY New Material Technology Co.,Ltd.(中国・四川省成都)
 ポータブルで軽くて使いやすい美顔器であることをアピールしていました。中周波・低周波マイクロカレントが顔をマッサージして小顔に見せるという、女性にとっては願ってもない効果が期待できるといいます。

Img_01721jpg_20240128163201

 マスク型なので、美顔しながらハンズフリー、通勤中や仕事中、運動中など、場所を考えずに使えるというのがいいなと思いました。
 ちなみに、中周波マイクロカレントは皮下組織を刺激して皮膚を引き締め、コラーゲンを向上させるとのこと、また低周波マイクロカレントは血液循環をよくして、肌を持ち上げてたるみを引き上げ、輪郭を引き締める効能があるそうです。
 NHKなど多くのメディアがブースに詰めかけていたのが印象的でした。

Polar Verity Sense (腕心拍センサー)ポラール・エレクトロ・ジャパン 株式会社
 ポラール・エレクトロ(本社:フィンランド、設立:1977年)は、1982年に世界ではじめてトレーニング用心拍計モニター装置を開発した、心拍計測のスペシャリストだそう。その製品の正確さと性能の高さ、優れた心拍数モニター機能はトップアスリートや専門家に認められ現在、世界80カ国以上で販売されているといいます。
 Img_01751
 目に留まったのは、わずか19g(センサー本体5g)の超軽量心拍センサーです。上腕に着ける伸縮性のアームバンドで着用感良く、心拍計測精度は手首周りのウォッチ型より高いとのこと。
 心臓に何らかの問題を抱えている人には必携かな、と思いました。

アシストスーツ「メディエイド アシストギア 腰ユニット」日本シグマックス 株式会社
 整形医療分野で培ったノウハウを生かして開発したというアシストスーツに着目しました。腰痛対策や、作業負担の軽減に役立つといいます。
 Img_01811
 特徴は、太ももベルトとクロステープの適度な伸縮性により、荷物の上げ下げに伴う腰まわりの負担を軽減し、腰ベルトの腹腔圧上昇効果により腰を安定させて、長時間の同じ姿勢による負担を軽減。人体構造に即した設計と、パーツごとの適度な伸縮性により、動きを妨げずに作業姿勢をサポート。背中と腰のバックパネル、太ももベルトには、通気性に優れたメッシュ素材を使用して、長時間の着用も快適といいます。上下パーツ合わせて約460gの軽量設計で、身体サイズに合わせて、上下セパレーツでの購入も可能とのこと。

Img_01841_20240128163301  右は、腱鞘炎を防止する手首サポーターです。

 同社は創業以来「医療」、中でも「整形外科分野」に特化して各種関節用装具やギプスなどの外固定材、リハビリ関連製品などを製造・販売している会社。医療機器分野では、手術後の冷却療法のためのアイシングシステムのパイオニアであるとも。今後の注目企業の一つですね。

| | コメント (0)

2024年1月30日 (火)

落合陽一 個展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」

 麻布台ヒルズの飲食併設のアートギャラリー「Gallery & Restaurant 舞台裏」では、落合陽一 個展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」が開催中です。

 落合氏は3年くらい前から茶道の稽古を重ねているそうで、入場するとすぐ目の前に茶室が設置されています。茶室といっても、メディアアーティストらしい演出で、四方の壁が半透明に光り輝いています。これがタイトルにある「ヌル庵」です。

Img_02531

 そこには細部まで茶道の設えが見られますが、そこは落合流です。物質と非物質、現実と非現実の間にある何かが共鳴しているような、不思議な空気感が醸し出されているようでした。

Img_02501_20240128150901  茶花もユニークです。
 花器は茶道の炉に使う端正な「菊炭」をそえた、コンクリートブロックになっています。
 観音様が立っているようでもあり、ここにも落合氏の取り合わせの妙が感じられます。

 レストランには茶碗などの道具を準備する水屋(みずや)があり、中庭は茶庭に見立てられています。
 侘び寂びの情緒を漂わせているホッとする空間です。


 ここではツアー形式の茶事体験(薄茶、主菓子、お土産付で一般2,500円)もできます。実はこの体験こそ本展の神髄といいます。
 会期は3月17日(日)までで、茶事体験の予約は、ArtStickerで受け付けているとのことです。

| | コメント (0)

2024年1月29日 (月)

麻布台ヒルズ開館記念「オラファー・エリアソン」展

 先日、昨年11月、開業した麻布台ヒルズに行ってきました。まだ開いていない店舗が多数あって、緑は植栽中でした。でも2月9日にチームラボ・ミュージアムがオープンする2月中頃には、コンセプトにある通り、「人と人をつなぐ『広場』のような街―Modern Urban Village-」になると思いました。
 森JPタワーのオフィスロビーでは現在、「オラファー・エリアソン」の新作パブリックアート《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》が公開されています。Img_02371_20240128141201
 天井から吊るされているのがエリアソンのアートです。振動を表すリサジュー曲線に着想したというダイナミックな形態の4つの彫刻が、シンプルな吹き抜け空間を飾っています。周囲のモダンな風景に溶け込み、街全体をミュージアムにするという森ビルの構想と見事に調和していると感じました。
 
 それはともあれ、今回の私のお目当ては麻布台ヒルズギャラリーで開催されている、ギャラリー開館記念「オラファー・エリアソン」展です。

 まず目に入ったのが、ポスターにも使われている《蛍の生物圏(マグマの流星)》と名付けられた多面体ガラスの球体です。
 Img_02241jpg
 内部は宇宙空間のように光っています。その光がゆっくりと回りながら反射されて展示室の壁面にも投影され、カラフルで複雑な幾何学図形や影を生み出しています。

 次にドローイングマシーンによる作品群です。
 Img_02121jpg  
 ハーモノグラフを使って振り子が動くことで螺旋状の線を生成し続ける《終わりなき研究》、さらにエリアソンがカタール・ドーハ近郊の砂漠に設置したドローイングマシーンによる《太陽のドローイング》や《風の記述》のパターンにも興味津々。これらの作品はすべて太陽光や風力を介して制作されたといいます。

 最後の展示室は全体が《瞬間の家》と名付けられた、水を用いた巨大なインスタレーションです。
 1_20240128141601

 暗闇の空間にストロボの光で瞬間的に照らされて輝いているのは水の曲線です。その一つひとつが抽象彫刻のように儚い痕跡を残して消えていきます。水と光というシンプルな要素によって無限に生み出される水の曲線の美しさは、もう圧巻でした。(この写真はホームページから借用しました。)

 作品はいずれも自然や環境との関わり、空間の捉え方、観客との対話などに焦点が当てられています。エリアソンの美意識には自然と調和し、瞑想的で静謐な雰囲気を重視する傾向のある日本のそれと共通する側面があるように思われ、ますます親近感を持ちました。

 会期は3月31日まで。デジタル予約すると入館料が200円割引されます。

| | コメント (0)

2024年1月28日 (日)

古着の墓場ケニアから「服のおわりから問う」展

 先日、東京・虎ノ門のギャラリーSIGNALで2月22日まで開かれている「服のおわりから問う ― 古着の墓場ケニアからスラムの視点を交えて考える」展を見に行ってきました。
 ケニアのナイロビは“衣服の墓場”という不名誉な異名もある場所です。ファッションデザイナーの中里唯馬氏も昨年「パリ・オートクチュール・ファッションウィーク」で、このゴミ集積場での体験を基にコレクションを2期連続で発表しました。

 そんなことも頭に入れて、ふらりと立ち寄った小さな企画展でした。壁に貼られているのがケニアの巨大スラム街キベラの日常を写した写真作品です。その奥に古着をアップサイクルしたコレクションがハンガー展示されていました。いずれもここに暮らす若者たちとコラボレーションして現地で制作されたもので、刺繍入りのジャケットや継ぎのジーンズなど、人の手の温もりを感じさせるラインナップです。
 Img_01911_20240128110801
 ブランド名は「SHIFT 80」で、その名前の通り、利益の80%をアフリカに還元するエシカルファッションのブランドであるそう。

 「生まれた場所がちがうだけで」の詩にも共感させられました。

 売られている服、あなたの着ている服、足元にある布。
 それらはかつて、おなじ素材であったはず。
 なのに、かたや踏まれ、汚され、捨てられる。
 ほんの少し生まれた位置がずれていれば、運命は変わる。
 それは、生地だけじゃない。
 私たち人間も、おなじではないだろうか。

 「リサイクル」という名の善意で輸出された古着の最終処分場となっているアフリカで、今何が起きているのか、希望とともにその不都合な真実も考えさせられた展覧会でした。

| | コメント (0)

2024年1月27日 (土)

サステナビリティのスタートラインは法令遵守が基盤

 「日本はファッション製品に対する化学物質規制は世界でもっとも緩い国」と知り、愕然としました。日本の規制の厳しさは世界最高峰と思い込んでいました。現実はその逆だったというのです。
 先般、そんなサステナビリティの基盤となる化学物質管理に関するセミナーを拝聴しました。登壇したのは、一般財団法人カケンテストセンター 国際部グローバルテクニカルサポート室長で繊維製品品質管理士・ZDHC認定トレーニングプロバイダーの志賀 聖氏です。

1_20240127144501   ちなみにZDHCとは、Zero Discharge of Hazardous Chemicalsの略で、繊維・皮革産業において有害物質の排出をゼロにするための活動をしている非営利団体です。

 EUでは、2022年3月に持続可能な循環型繊維製品戦略を公表し、日本でも環境省が「環境表示ガイドライン」を制定して、その遵守を奨励しています。しかし日本ではサプライチェーンにおける化学物質管理が十分に実施されていないとも言われています。
 志賀氏は「サステナビリティのスタートライン~グローバル化の為の製品コンプライアンスとは~」と題して講演。各国の化学物質規制を遵守するための管理システムの構築という観点からみたサステナビリティの考え方について解説しました。

 冒頭、氏は「環境配慮型製品の特長として最初に思いつく言葉は何か?」と問いかけました。圧倒的に多かったのが「リサイクル」でした。この言葉を確認した上で、日本の繊維産業界でサステナビリティと無関係と思われているテーマ、「化学物質管理」をメインに話したいと述べて、セミナーをスタートさせました。
 まず、海外に進出する先で人気のある国の繊維製品に適用される法令を紹介しました。日本のファッションを世界に輸出するためには法令に適合した製品を生産する必要があるからです。
 ファッション製品の法令コンプライアンスでは日本には表示法として家庭用品品質表示法、中国はGB/T5296.4、台湾服飾表示基準など、また安全性に関する化学物質規制では日本の有害家庭用品規制法、中国GB184017やGB30701、韓国KCマーク制度、EUはREACH規制、POPs規制などがあります
 とはいえ法令遵守すなわちサステナビリティではないことに釘を刺しました。

 1_20240125112101 次に、日本とEUのファッション製品に対する化学物質規制の違いを説明。日本ではホルムアルデヒド、殺生物剤、難燃剤、有機スズ化合物、アゾ染料の5つの物質群が規制されています。しかしEUではこの5つに加えて、ノニルフェノールエトキシレート、フタル酸 多環芳香族炭化水素、6価クロムなど17種類もの化学物質が規制されているのです。
 氏は、日本向け製品のサプライチェーンとEU向けのサプライチェーン管理では安全と環境のための化学物質管理に大きな差が開いていると指摘しました。日本では日本の規制の厳しさは世界最高峰と思い込んでいる人が多数います。しかし現実は正反対で、日本の化学物質規制は世界中で最高に緩い! と言っても過言ではないといいます。
 アジア圏の国々は緩いと思われるかもしれません。しかし日本は管理している化学物質の数が圧倒的に少なく、消費者や環境にやさしい製品を生産する基盤においてすでにEUや諸外国から大差がつけられていることを自覚しなければならないと警告しました。
 日本のファッションブランドが海外で販売する製品の法令コンプライアンスに関する相談でもっとも多いのは、品質表示に関する依頼であって、化学物質に関する問い合わせはほぼないとも。
 日本では日本以外の国の化学物質規制は無視されている状況があり、自社の化学物質管理は、サステナビリティの基盤であることをもう一度考え直すべきと問題提起しました。

 さらに製品コンプライアンスのためのRSL(Restricted Substance List=制限物質リスト)に触れ、これは化学物質管理に欠かせないツールと強調。ブランドを構築し、消費者の信頼を獲得すると同時に、有害な化学物質をサプライチェーンで排除することにより、消費者の健康と環境を守るために、世界各国の製品中の特定化学物質を禁止する規制要件と基準を遵守すべきと語気を強めました。
 最近では欧州で有機フッ素加工物(PHAS)規制が提出され、発がん性があり、分解しにくく残留性があることから使用不可になる可能性が高いことも。

 最後に、サステナビリティのスタートラインに立つために、不可欠なのは日本の法令ばかりでなく、世界の法令を見て、確実に遵守する体制をつくること、そしてそこからさらにそれを上回る環境管理をやっていくことこそサステナビリティへの道と言及。まずは法令の遵守、そこを超えることがサステナビリティと語って締めました。

 ビジネスをグローバルに進める際、避けて通ることのできない課題を取り上げた興味深いセミナーでした。

| | コメント (0)

2024年1月26日 (金)

フランスで「シーイン」の工場見学招待ツアーに賛否両論

 「シーイン(SHEIN)」は中国発の急成長する越境ECであり、そのプチプラ×高見えファッションが若者中心に世界的な人気を博しています。

Img_65401jpg_20240126235901     シーインの東京・原宿キャットストリートにあるショールーム

 しかしながら、シーインは工場で働く従業員の不安定な労働条件と非常に低い賃金に関する批判を受けていますし、過剰消費と資源の浪費を促進するファスト・ファッションに対する非難も浴びています。著作権や商標権の侵害など、多くのトラブルも報告されており、最近では「ユニクロ」による模倣品提訴など、法的な問題も浮上しています。

 フランスでは、昨秋にシーインが女性インフルエンサーを中国の工場見学ツアーに招待したキャンペーンが賛否を呼び起こしました。シーインはこの招待を通じて、工場での労働条件が世間で言われているほど酷くないことを示し、イメージアップを図ろうとしたと考えられています。
 一部のインフルエンサーは提案を受け入れ、自ら目で確かめるために中国の工場を訪れました。一方で、他のインフルエンサーは招待を拒否し、これを単なる売名行為として非難しました。視察に参加した女性インフルエンサーの評価も様々で、驚きを感じた者もいれば、見せられたものの信憑性に疑念を抱く者もいたといいます。
 ネットユーザーの意見も分かれ、現場の実態を示し、顧客を安心させる手段と捉える人もいれば、労働条件やファスト・ファッションの環境への影響に焦点を当てるべきだと見る人もいるとのこと。一部では、シーインが企画した視察が実際の労働環境を正確に代表していない可能性や、訪問を受けて一時的な改善が行われ、実情とは異なる印象を与えている可能性も指摘されています。
 私たちが考えなければならないことはインフルエンサーと消費者の倫理的な問題です。シーインを支持すべきか、それともより社会的・環境的に責任を持つブランドを支持すべきかについては、個々の信念や優先順位に基づいて選択する必要があります。
 何よりも自分の価値観に忠実であることが、今回のような難しい問題に対処する上での一つの指針となるのではないでしょうか。

| | コメント (0)

2024年1月25日 (木)

齊藤孝浩氏講演 「今、世界では何が起こっているのか?」

 先日、フルカイテン特別オンラインセミナーにファッション流通の在庫最適化コンサルタントとして著名なディマンドワークス代表 齊藤孝浩氏が登壇しました。
  「今、世界では何が起こっているのか?アパレルTOP10に見る店舗とECの未来図」と題して、Photo_20240122184101 グローバルトップ10企業の業績や動向を解説、これからのアパレルマーケットとの向き合い方のヒントを探る興味深い内容で、下記概要をまとめてみました。

 冒頭、2022年度世界アパレル専門店売上ランキング TOP10から、前年との売上比がダントツに高いのが「インディテックス」、また絶好調は「ルルレモン」、堅調は「ネクスト」、回復・好調とみられるのが「ファーストリテイリング」、「プライマーク」、「しまむら」、苦戦は「H&M」、「ギャップ」、「ヴィクトリアズシークレット」と指摘。
 トピック1は、店舗もECも伸ばす企業がある一方、店舗は回復したもののECが減少した企業があることです。氏は、売上を伸ばしている企業は店舗もECもグローバルに対応しており、越境してビジネスを拡大できるECという武器が好調・不振の明暗を分けたと分析。
小売業とECでは費用の掛けどころが異なり、小売業は家賃と人件費、ECは広告宣伝費と物流費と前置きした上で、トップ10企業のECの取り組みを次のように語られました。
 ECに取り組んでいないのが「プライマーク」です。低価格アパレルチェーンにとって宅配送料が割に合わないからです。オンラインサイトはあっても通販は行わず、商品紹介とどの店に行けば手に入るかの在庫情報の提供に徹しています。しまむらも同様で、ほとんどECをやらず、店頭受取です。
 とはいえ多くの企業がクリック&コレクト(BOPIS) などOMOを標準装備しています。これを徹底しているのが「インディテックス」で、世界全店舗とECの在庫一元化を完了しました。店舗のある94ヵ国から世界213か国に販売できる仕組みを整え、オンライン注文も店舗在庫を引き当て出荷可能、オンライン注文2時間で店舗での受取り可能で、このために店舗を大型化しているといいます。 
 独特なのが英国の「ネクスト」で、自社が構築したプラットフォームを使用して、他社の在庫も運送する取り組みを行っています。自社OMOを実現し、他社商品のECにおける運営を代行。自社商品および他社商品に対しては、クリック&コレクトのサービスを提供し、アマゾンハブカウンタ―とも提携して、高い営業利益率をあげています。

 トピック2は、販売期間の短いアパレルビジネスで、損益のカギを握るのは何か?です。
 従来のアパレルビジネスは需要予測に基づき見込み生産し、つくった商品を販売するために、安い人件費を求めて、産地は中国から東南アジアへと遠方になり、その結果リードタイムが長くなり、在庫リスクも拡大するというものでした。
 しかし「インディテックス」の「ザラ」は、これとは異なる需要連動生産を行っています。実需要を見てからつくり足す、つまり必要な分だけつくり、売れるものをつくり足すビジネスです。シーズン商品の3週分だけの商品を生産し、販売。毎週、顧客の反応に応じて改良商品を3週単位で追加生産し、むだな在庫をつくりません。プロパー消化率は85~88%といいます。
売上ランキング2位の「H&M」は売上高が伸びているものの、利益率減少に歯止めがかからず、営業利益は2015年でピークアウト、オンライン対応にも乗り遅れ、苦戦しています。
 こうした中、トップ3を追う急成長企業が台頭しています。その一つが「ルルレモン」です。カナダ本社、米国をマーケットに伸びているアクティブウェアブランドで、EC比率が高い。コミュニティストア型で店舗では無料ヨガ教室・ランニング教室を提供し、トレーナーやアンバサダーを中心にローカル・コミュニティを形成。オンラインでコンテンツを配信し、パンデミック下、顧客が自宅でエクササイズする巣ごもり需要が拡大し、TOP10ランキング入りしました。
 もう一つが「シーイン」です。非公開企業ながらクローバルトップ3の規模に急拡大中。世界の工場、中国からの越境ECで、「ザラ」よりも速く、「プライマーク」よりも安い。素材から製品まですべてが揃う産地、広州に拠点を置き、深?というアジアのシリコンバレーでオンラインの技術を駆使して、世界の消費者に売り込み、店舗を持たず産地から直送。短納、少量生産を実現しています。
 これまでのグローバルチェーンとは異なる業態で、今後アパレルのゲームチェンジャーとなるのではないか、と言及し、セミナーを結びました。

| | コメント (0)

2024年1月24日 (水)

文化服飾博物館「魔除け」展―見えない敵を服でブロック!

 今年も初詣してお守りや護符を購入し、常に持ち歩いていらっしゃる方も多いでしょう。私も邪気を祓い、開運・守護などの効果があるかもと、迷信と思いながらもバッグの底に潜ませています。
 そんな風に私たち人類は古今東西、服飾に「魔除け」を取り入れてきました。
C211856bb9d03a0e6590eff462a71376663c6d96  今、文化学園服飾博物館で開催されている「魔除け」展― 見えない敵を服でブロック! は、世界各地の民族衣裳に見られる「魔」から身を守る装飾を集大成した企画展です。「あなたはすでに守られている」という意味深な副題も付けられています。
 人はその昔、科学の理解が不十分だった時代に、病気や死の原因を「魔」と考え、自身を守るための服を作ったのですね。本展はそうした民族の歴史を振り返る展覧会でした。

 展示は下記の5つのテーマで構成されています。(写真はホームページから借用しました)

「魔」を遠ざける
 「魔」が苦手と考えられるものを装うことで、「魔」が遠ざかると、身に着けたのが光で反射する素材や、揺れることで音が鳴る装飾、強い匂いを発する装身具です。
2d3324196fa19154258180c16385cd841  現在も“光りもの”や揺れ動くフリンジなどのディテールが流行っています。そこには危険を避けるという意味もありそうです。
 右は、インドのミラーワークのブラウス(1970年代)です。

「魔」の侵入を防ぐ
  「魔」は衣服の開口部から侵入すると考えられており、袖口や首元、裾などに結界を築きました。
Bc2c2564d691dd06a7b7c348a62e5919  襟周りなど縁飾りに使うブレードにはそうした意味があったようです。
 また自身の目に届かない背中側に特徴的な装飾を施すことも行われました。
 “邪視”という俗信もあって、背面にはとりわけ念入りに装飾されたとのことです。 
 右は、女の子の着物で“背守り”(明治時代後半)が見られます。

「魔」をまどわせる
 1_20240121133401 人は獰猛な虎や毒のあるサソリ、ムカデ、蛇などをモチーフにした衣服や装身具を身に着けることで「魔」が憑依するのを躊躇させようしたといいます。
  右は、虎をかたどった中国の子どもの靴 (20世紀)です。

魔除けの「赤」
 血や炎、太陽を連想する赤は特別な力を持つ色と認識されており、「魔」を払う力があると考えられてきたといいます。1階展示室では赤い着物など、赤色の民族衣裳が勢揃いしていました。

祈りと願い
 神仏の加護や信仰の証として身に着けた模様や装飾品の展示コーナーです。

 各民族に伝統の「魔除け」と現代ファッションとのつながりを感じ取ることができた興味深い展覧会でした。開催は2月14日までです。

| | コメント (0)

2024年1月23日 (火)

2030に向けたファッションビジネスと人材に関する提言 ⑵

 「2030に向けたファッションビジネスと人材に関する提言」をテーマにしたシンポジウムで、基調講演に続くパネルディスカッションが実施されました。パネリストとしてエコテックジャパン(株)取締役会長 近藤 繁樹 氏、YUIMA NAKAZATO 代表・デザイナー 中里 唯馬 氏、学校法人上田学園 理事・上田安子服飾専門学校 校長 田島 等 氏が登壇。日本のアパレル産業が抱える人材育成などの課題について議論が交わされました。

Img_01651_20240120191001       シンポジウムの会場となった文化学園前の風景

 近藤 氏は、「世界中の工場数千社を回り、日本の700~800社を監査しました。2030年に向けて、人権や環境、持続可能性に関する規約や規定が標準装備になっていますが、日本では社内規定がなく、いくら『やっている』と言っても証拠はありません。整備が進んでいないのが実状です」と警鐘を鳴らしました。
 中里氏は、「2016年からオートクチュールという1点ものの世界でコレクションを発表しています。作る人と着る人の距離が近いので、クリエイティブな行為で着る人が喜んでくれることがデザイナーとしてシンプルにうれしいです。昨年、アフリカのケニアに行き、大量廃棄された古着の山を目にして、このままでは明らかに継続していかないことを痛感しました。人間の価値観が変化しているのに、前時代のそれが続いています。大量生産以外の在り方に目を向けるべきです。そのためには商品価値を高めていくことが重要で、新しいラグジュアリーの定義が求められています。そこには倫理に価値があると思っています。つまり一部の特権的な人ではない多くの人が享受できる新しい価値です。これを日本から発信する、このための人材が必要です」と。
 田島氏は、「国内は厳しい。私立大学の半数超で、昨春の入学者数が定員割れし、その3分の1が赤字です。それでも日本の教育レベルは高く、我が校では世界を相手にした人材育成を行っています。世界を視野に現状を変えることができれば未来は明るいのではないでしょうか」と話しました。

 締めの一言として。
 近藤氏は、「循環型社会は避けては通れない課題で、この問題に一番後れているのが日本です。SDGsをどう展開していくか、また3D CAD人材を育成していくことが大事」と指摘。
 中里氏は、「大量生産からの脱却が必要で、これを救うのがデジタル化です。企業が出資するなどして無料で学べる制度をつくることも重要」と提案。
 田島氏は、「企業が教育側に対して、もっと注文を付けて欲しい。人材への投資が少ない」と。

 最後に、質疑応答があり、中里氏が日本文化、とくに着物に内包されている哲学を次世代に継承していくことの重要性をコメントされたのが印象的でした。

| | コメント (0)

2024年1月22日 (月)

2030に向けたファッションビジネスと人材に関する提言 ⑴

 ファッションビジネス学会は昨年11月18日、学校法人文化学園にて30周年記念全国大会を開きました。
Fb  テーマは競争力のあるファッションビジネス創出に向けた「バリューチェンジ~知の新機軸」です。第1部は口頭とポスター展示による53の研究発表で、第2部が「2030に向けたファッションビジネスと人材に関する提言」と題したシンポジウムでした。
 シンポジウムでは基調講演とパネル ディスカッションが行われ、ファッションビジネス学会専務理事 福永成明氏が司会進行を務めました。

 基調講演に登壇したのは法政大学大学院政策創造研究科教授 ファッションビジネス学会会長代行・2030提言策定委員長、岡本 義行 氏。策定中の2030年への提言を紹介し、日本のアパレル産業が抱える人材育成などの課題について語られました。

 まず、日本のアパレル業界の現状について。
 経産省データによると1990年に15兆円を超えていた国内アパレル市場規模は、2020年に8.6兆円に縮小しました。人口減少や古着流通形態、オンライン会議定着、実質所得の低下、生活様式の多様化や簡略化などが要因といいます。輸入浸透率も2021年98.2%に達し、国内製造は3%未満で、国内市場は輸入品に席巻されています。その原因は安価な賃金の海外生産へ移行したことにあると明言。それはコストが安くともリスクの大きい方向だったのです。
 日本の繊維産業概況を見ると、機械や生地は競争力があって成長していますが、衣料品は伸びていなくて横ばいです。「ユニクロ」を除けば、輸入は多いけれど輸出が極端に少なく、日本の製品輸出はフランス、イタリア、ドイツと比べ桁違いに低い状況です。
 そこで当面の課題は衣料品競争力をどう作っていくかです。このために日本の「強み」―― 生産技術や全国に広がる産地、関連機械産業の強さ、高水準の巨大消費市場、海外市場に向けた商社などのインフラの存在、ファッションと装いの伝統 ―― を確認して活かすことが重要といいます。

 次に、日本の衣料品産業はなぜ競争力に欠けるのか? について。そこには需要と供給の不均衡と、日本特有の産業構造があるといいます。日本のアパレルは、問屋としての特性が強く、リスク回避のために製造機能、すなわち工場を保有せず、代わりに製造を海外に委託しています。例えば「ザラ」などは本社に近いところで生産していますし、最近は「オンワード」も工場を持つようになりましたが、日本ではこれまでブランドのコアとなる生産技術を重視してきませんでした。この点を迅速に解決する必要があると語気を強めました。 

 さらに、消費市場からの情報を処理する体制づくりも課題と指摘。「ザラ」を例に、地域にリサーチャーを配置して、需要変化を素早く吸い上げ処理する体系を確立し、次の生産に活用している解説しました。手元にある工場で生産技術を蓄積し、デジタル化に基づく問題解決のためのPLM(商品ライフサイクルマネジメント = 製品の企画・生産・販売・廃棄までの一連の工程における情報を管理)を導入し、生産と企画の間の調整をいち早く行えるシステムが求められていると強調。

 最後に、モノより組織をデザインできる人材が必要とされていることなど、きめ細かい人材育成の重要性に言及して講演を結びました。

| | コメント (0)

2024年1月21日 (日)

寺山修司没後40年 ジャパン・アヴァンギャルドポスター展

 今、寺山修司の没後40年を記念した企画展「ジャパン・アヴァンギャルドポスター展」が渋谷ヒカリエホールにて開催されています。
 寺山修司と言えば1960年代から70年代に演劇実験室を標榜した前衛演劇グループ「天井桟敷」を主宰した劇作家です。私はそのアングラ演劇を見に行ったことはなかったのですが、その退廃的、諧謔的なポスターやちらしのどこか危険な香りに惹かれていたことが思い出されました。
 この強烈な個性を放った昭和のクリエイターが47歳の若さでこの世を去って、もう40年も経ったことに感慨を覚え、懐かしく拝見しました。  

 Img_01401 Img_01421pg
 「腰巻お仙」、「奴婢訓」「毛皮のマリー」、「少女仮面」、「星の王子様」など、寺山最盛期の演劇ポスターがズラリと展示されています。制作者は横尾忠則、宇野亜喜良、粟津潔、平野甲賀等々、錚々たる顔ぶれで、どれもコレクター垂涎ものと言える作品揃いです。
 現代ではもう見ることのできない日本独特のエログロナンセンスの美意識が刺激的で、ドキドキさせられました。
 会期は28日までです。興味のある方はお見逃しなく

| | コメント (0)

2024年1月20日 (土)

防災のためのファッション&グッズ ~防災グッズ大賞から~

 日本は自然災害が多い国ランキングで世界一です。マグニチュード6以上の地震の 約 2 割が、日本周辺で発生しています。このお正月には能登半島が震度7の地震に襲われ、激甚災害に指定される大災害となりました。
 災害大国日本だからこそ、私たち一人ひとりが基礎的な防災力を持つべきと、私が所属するユニバーサルファッション協会(UNIFA)では活動の一つとして、ユニバーサルファッションのフェーズフリーである「ユニバーサル フェーズフリー ウエア」をテーマに研究しています。ちなみにフェーズフリーとは災害時や平常時に関わらず、どの様な状況でも私たちの命や生活を守るデザインのことです。
 Photo_20240118105701
 先般、UNIFAが準会員となっている国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD) 主催・UNIFA共催により「防災のためのファッション&グッズ ~防災グッズ大賞から~」と題したセミナーを開催しました。講師にお迎えしたのは一般社団法人 災害防止研究所 代表理事 吉田 明生氏です。
Goods20231photo  災害防止研究所は災害防止の啓発・普及活動を通じて、安全安心な社会の実現に貢献している団体で、2019年に「防災グッズ大賞」を創設し、以来毎年、数多くの企業から応募を得て、防災グッズ大賞と各賞を選出するとともに、「防災グッズ大賞展」を開いています。(このブログ2023.10.24付け参照)
 本セミナーではこのイベントを基に、平常時からそのまま災害時にも安心・安全に用いることができるファッション&グッズはどうあるべきかが考察されました。 

 まず、「ファッションと防災」の観点から、優れた機能性と由緒がある衣服として次の2つの事例を解説。
 一つが「コックコート」です。Photo_20240118111101 フランス国立の料理学校では教育の最初に教えられるのが調理服で、ナポレオンジャケットから発展して来た衣服といいます。その特徴は調理時の事故を考慮したデザインです。燃えにくく、吸水性、速乾性に優れた素材を使用し、前身頃は二重仕立てで火や熱湯に強い。熱い鍋をつかめるように袖丈は指先まである長い丈で、布ボタンをほどけば、包帯にも使用できる仕様になっています。

 もう一つが「トレンチコート」です。その起源は第一次世界大戦のイギリス軍の、寒冷な欧州での戦いに対応する防水型の軍用コートで、「トレンチ(塹壕)」の称は、このコートが泥濘地での塹壕戦で耐候性を発揮したことによるといいます。平時のファッションとして用いられるようになってからも、軍服としての名残を多く残しているコートです。

 次に、「防災グッズ大賞」について、歴代の受賞企業と製品の中から繊維ファッション関連のものを取り上げ紹介しました。

大作商事(株)ネッククーラー、マジックール
 熱中症予防に効果的。水を含ませるだけで、抗菌・防臭性ビーズ配合の特殊ポリマーにより頸動脈を流れる血液を冷やし、冷感が20時間以上持続するといいます。

 無臭元工業(株)ニオイも安心の吸水パンツ
 アクティブシニア層向けに汗や尿の臭いの抑制に効果がある吸水パンツで、消臭機能が洗濯で回復するという、世界初の機能が注目されます。

(株)スギタ 全身反射ポンチョ
 捜索隊から発見されやすいように、素材全体に反射材のドットプリントが施されていて、夜間に極めて目立ちやすい仕様になっています。耐水度が通常の商品の100倍程度あり、かつ外気の寒さを20度近く遮断できる遮熱効果にも優れています。

(株)ワークマン プレミアム防水防寒コート
プロの職人の作業着を進化させた高機能、高品質、低価格のコートで、耐水圧は20,000mm、透湿度は40,000g/㎡/24hの最高レベルの基準をクリアしているといいます。

 (株)ウイード 耐切創性能に特化した手袋
 縫い目のない一体型成形の、操作性に優れた手袋で、切り傷に強く、世界一厳しい欧州の耐切創規格に適合している。温度が250度で15秒以内なら耐えられるといいます。

パナソニック・ライティング・デバイス(株)耐切創手袋(ストロングンテ)
 ダイヤに次いで硬いタングステン繊維を使用した、切り傷や擦れに強く、しなやかで手になじむ。ガーデニングやDIY、アウトドア、工作・カッター作業、災害時の備えにもおすすめの手袋といいます。

(株)Fine Track 撥水アンダーウエア
 登山の経験を生かして製品化された下着で、独自の「撥水」技術により、かいた汗は瞬時に肌から離れ、肌をドライにキープする。抗菌防臭性があり、汗冷えを抑えて身体を保護します。

  この他、いろいろ。

 氏は、昨今の防災非常用品の重要なポイントは、「日常の延長で備える」ことといいます。防災グッズ大賞の選定では、「防災グッズは、日々の生活の中で使われ、役に立つものでなければ、決して災害時に使われることがない」という観点から、「毎日、便利に楽しく使う」という視点で選出されているとのことでした。 

 最後に、防災の啓蒙・普及活動を取り上げ、危機管理を習慣化し、ライフスタイルとして定着するまで継続することが重要、と語って結ばれました。

| | コメント (0)

2024年1月19日 (金)

我が国の避難所の課題とイタリアから学ぶ支援のあり方

  昨夏の8月最後の日、翌日は9月1日の「防災の日」というタイミングで、国際ユニヴァーサルデザイン協議会主催、ユニバーサルファッション協会共催(IAUD X UNIFA)による災害支援に関するセミナーが開催されました。 その中で印象に残ったのが、Photo_20240117193101 日本と同じ地震国であるイタリアの避難所の先進性についての講演でした。
 講師はJパックス株式会社代表取締役社長で避難所・避難生活学会 常任理事の水谷 嘉浩氏で、災害による避難生活の必需品「段ボールベッド」を考案された方です。
 「我が国の避難所の課題とイタリアから学ぶ支援のあり方」をテーマに、避難所先進国イタリアと、立ち遅れる我が国の被災者支援を比較し、支援のあり方を考察する内容で、私も災害支援について改めて考えさせられました。

 開口一番、「イタリアは進んでいるが、日本は本当に遅れている」と発言され、ちょっとビックリ!
 避難所は東日本大震災でも阪神淡路大震災でも過密な雑魚寝だったのです。2016年熊本地震頃から少しずつ改善されるようになり、2020年人吉市の豪雨災害でようやく400人分のベッドが届きましたが、まだその程度です。トイレも災害時にすぐ来なくて、3日くらいかかり、それも和式がほとんどで、食事もパン食でした。
 避難生活に伴う災害関連死は、平成の30年間で4,958人と発表されています。しかしこれは申請して認定された人数で、実際はもっと多いと推測されています。その原因は調査の結果、約51%が避難所における生活の肉体・精神的疲労で、環境さえよければ防ぎ得た死だったのです。とくにエコノミークラス症候群で死亡した現役女性、つまり母親世代の割合が高齢者より高かったことは注目に値するといいます。避難所における女性を取り巻く状況はより深刻であることを示している、ということでしょう。
 国内外で数多くの避難所を回った氏が、災害対策先進国としてもっとも高く評価するのが、日本と同じ地震国のイタリアです。そこで得たヒントが「TKB」と、次のように紹介しました。
 TKBとは、T(トイレ)、K (キッチン)、B (ベッド)のことです。Tは、トイレだけではなくシャワーも付いています。Kは食事で、食堂が設営され、キッチンで調理した料理が出ます。Bは睡眠と生活環境で、テントが用意され4人家族なら約100㎡の空間にベッドが入り、空調も完備されています。そこにはもちろん衣服もあり、防寒着や下着、中衣なども揃っています。
 イタリアには全国各地に巨大な備蓄基地が点在しているといいます。基地には常時約10,000人が長期避難生活を不自由なく過ごせる資機材が備蓄されていて、緊急時にはトラックで48時間以内に必要な物資が届けられるとのことです。また48時間以内にプロの調理師が出動し、臨床心理士もPTSD予防に向けて現地入りするそう。子どもの遊び場や、乳幼児を守るケアも48時間以内に整えられるとか。日本なら1か月以上かかる話ですね。
 では何故イタリアではこのような先進的な活動ができるのでしょうか。そこにはイタリア市民保護局という国家機関があるからといいます。これは欧米先進国やアジア諸国には必ずある組織だそうです。ところが日本には内閣府防災担当はあっても、このような国の機関はないとのことです。とはいえイタリアでも昔からあったわけではなく、災害頻発を受けて1992年に設立されたとの話。今では避難所の環境を起因とする死者はありえないといいます。
 その規模も日本とは大違いで、日本の内閣防災担当が90名なのに対して、ローマ市の市民保護局は800名が常時待機しているとか。
 避難所を運営するのは、約4,000あるというボランティア団体で、登録ボランティアは300万人(全人口の5%)。ボランティアとはいえ、志願者は職業を持ち、その職業を生かした災害を支援する訓練を受けている人々だそうです。

 日本でもイタリアのように、避難所環境を向上させて災害関連死を無くすには、どうしたらよいのでしょうか。氏は災害支援専門の省庁の設置が必須であり、法律を変える必要があると提言しました。

 下記に、関連死を防ぐための課題として:
・現在の災害救助法では避難所の設置期限は災害が起きてから「7日以内」などと定められているが、これは現実と乖離している。
・災害支援の市町村任せには限界があり、広域・複合災害を想定し、国全体で必要な緊急時対応が可能となる条項が必要。
・TKB導入の仕組みにオールジャパンで取り組むこと、など。

 最後に、イタリアで学んだこととして:
・「たった一人の犠牲者も出さない」強い決意。
・災害支援には哲学が必要。
・ボランティアではなく、あらゆる専門職種が関わる仕組み。
・敵は「災害」であり守るのは国民である。
・しかし被災者にとって本当の敵は「絶望」である。
・「絶望」から守るには、そのための国レベルでの標準化が必要。

 講演を聞いて、日本の避難所は、健常者も病気になってしまう劣悪な環境であることが分かりました。避難所での雑魚寝スタイルは、日本だけだそう!これでは要配慮者のことを考える余裕もありません。
 耐震性能では進んでいる日本ですが、イタリアでは災害時に手厚く快適な仮設住宅が48時間以内に設置されます。避難所でもしも死者が出れば、責任者が訴求されるとのことでした。
 日本は先進国と思っていましたが、災害支援ではスタート地点にも立てていない後進国だったのです。日本にもイタリア市民保護局のような機関ができるとよいのですが、それには政治の強力なリーダーシップが必要不可欠です。いつか災害支援を最優先課題にする政治家が現れることを期待していますが、現状をみるといつのことやら---です。災害が起こってからでは遅いのに、遅々とした歩みの日本です。
 イタリアに学び、少しでも遅れを取り戻したいものです。

| | コメント (0)

2024年1月18日 (木)

テックスワールド・エボリューション・パリ 事前の速報から

 この2月5日から7日まで、パリのポルト・ド・ベルサイユ見本市会場にて開催される2025年春夏「テックスワールド・エボリューション・パリ(TEXWORLD EVOLUTION PARIS)」。その事前のリリース速報が届きました。 
3_20240117182601
 今期2月展では、生地・副資材の「テックスワールド」とデニムに特化した「テックスワールド・デニム」、製品OEMの「アパレルソーシング」の3つの展示会が行われます。
 出展するのは「テックスワールド」と「アパレルソーシング」を合わせて1,260社で、2019年2月の記録を上回る見通しといいます。
  「テックスワールド」には760社が参加。最初に中国、次いで韓国が約40社、トルコも約100のメーカーが参加し、そのうち76社がイスタンブール商工会議所(ITO)のバナーの下にまとまっているとのこと。さらにインドと台湾も挙げられます。
  注目されるのはインドネシアで、高品質なシルキー製品とコットンの生地の幅広い製品群で復帰、またタイの刺繍メーカーもクローズアップされています。ヨーロッパ企業では高機能テキスタイルを得意とするイタリア勢が目立つといいます。
 500以上の企業が参加する「アパレルソーシング」では多くのヨーロッパのメーカーが出展するとのこと。ウクライナから9社の企業が参加するパビリオンや、約30のメーカーが出展するブルガリアなど。
 「テックスワールド・デニム」は、600平方メートル以上の空間に、原材料と完成品を提供する国際企業(バングラデシュ、中国、インド、パキスタン)が集まるといいます。

 また今年の展示会で、とくに焦点が当てられるのが、「エコノジー(Econogy)」という概念だそう。これはエコロジーと経済発展を組み合わせた造語で、サプライチェーン、素材、プロセス、戦略、革新に関する活動が第三者機関によって検証された出展者のブース(約80社)には、「エコノジー」のシンボルが付けられるとのことです。
 会場を移転して、アップデートされる「テックスワールド・エボリューション・パリ」、私も訪れるのを楽しみにしています。

| | コメント (0)

2024年1月17日 (水)

テックスワールド・エボリューション・パリ 「真実」テーマ

 テックスワールド・エボリューション・パリ(TEXWORLD EVOLUTION PARIS)が、今期から会場をこれまでのル・ブルジェからポルト・ド・ベルサイユ見本市会場に移して、この2月5日から7日まで開催されます。
 昨年末、2025年春夏シーズンのトレンドが発表されました。その興味深い内容をご紹介します。

 1_20240117152101 大テーマは「真実(Veritas)」です。各個人が「自分自身の真実」を求め、守ろうとする動きが世界中で広がっています。このアプローチでは、衣服が個々の人の「真実」へのコミットメントを反映しています。
 現代の成長と持続可能性に対する逆説に立ち向かいながら、私たちは一人ひとりが自分なりの世界観を表現しています。トレンド提案では初めてAI(人工知能)の要素を導入し、それぞれが持つ視点を新しい4つのテーマでまとめています。

Lenaekertlenaekerttweeterbreathlesssashl #1 BELIEF (信念)
 
これはあまり主張的でない、むしろ内向的で、優雅で控えめに表現されるテーマです。カラーは穏やかで、緑や青が主導する鉱物の色合いに傾く傾向です。テクスチャは物質感と揺れ動く感覚で表現されます。

Daviddeweerdtdaviddeweerdtcomdavidpeintl #2 IMMANENCE (イマネンス 内在)
 保守的で神秘的ながらも、BELIEFよりも見えやすいテーマです。「これが私たちに共通する生活の新しいルール」と主張する「ボヘミアン・シック」な世界を表現しています。カラーは豊かで暖かく、比較的クラシックです。ニットや刺繍、凹凸のある素材や霜のような外観のものが多く見られます。

1_20240117152201 #3 KOWLEDGE (知識)
 
自然、植物、花などの古典的なインスピレーションを取り入れ、それらを根本的に変革しようと自己主張するテーマ。色は強く、コントラスト配色が見られ、素材はくしゃくしゃ、液体のような流動感、透明な質感があるものが中心。

Dashaplesendashaplesencomdashaplesencoml #4 EXPERIENCE (エクスペリエンス)
 
これは、個人が自分の信じる真実に深くコミットするテーマです。要するに、「自分を信じ、疑ってテストし、他の誰かを信じないで。自分の経験から学べ」というアイデアです。色は非常に大胆で、人目を引く色合い。活き活きとした甘い色調が主で、シティやスポーツのコードを想起させる素材が使用されます。たとえば引き裂いたような効果や、光沢のある外観、セカンドスキンのようなオーガニック、レースや透明感のあるものなど。

| | コメント (0)

2024年1月16日 (火)

エコロジー:循環を巡るダイアローグ1 新たな生 崔在銀展

 エルメス財団によるアートにおけるエコロジーの実践を問う企画展「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ1 新たな生 崔在銀(チェ・ジェウン)」が、東京・銀座の銀座メゾンエルメスフォーラムで開催中です。
 今、森美術館では開館20周年記念展「私たちのエコロジー」が開かれていますが、本展はその関連企画で、ダイアローグ1は、崔在銀の40年にわたる作家活動を振り返る個展形式の展覧会です。
 崔在銀は韓国・ソウル出身で環境や自然との対話を継続してきた作家の1人といいます。
 会場で私がもっとも目を奪われたのが、2023年新作《White Death(白い死)》の巨大なインスターションでした。積み上げられているたくさんの白い石のようなものは、よく見ると死んだ珊瑚で、その上に光るミラーの破片が散らばっているのが不気味さを強調していました。

Img_01041_20240117105001
 制作のきっかけは、崔が沖縄を訪れた際に浜に打ち上げられていた大量の死珊瑚を目撃したことだったそう。沖縄の海域では、地球温暖化や水質汚染による生態系の破壊の結果、現在90%もの珊瑚礁が白化しているのだとか。白化したサンゴを救うためには、海水温の上昇を防ぐしかないのです。環境問題を改めて考えさせられる作品でした。
 なおこれらの死珊瑚は、沖縄県の許可を得て使用されており、展示が終了した後は元の海に還元される予定だそう。

 またもう一つ気になったのが、上と同じ2023年の「ある詩人のアトリエ」より《内面への光》です。
Img_01111
Img_01131  「ある詩人のアトリエ」は、自然や生命に関して知ることを実践してきた崔自身の様子がうかがえるシリーズで、《内なる光》ではランプシェードに押し花のような植物が飾られています。

 また《私たちが初めて会ったとき》は、漆仕上げの木板に押し葉加工の植物を143枚並べた作品です。毎朝出会う道端の雑草や花から、絶滅危惧種まで名前が入っていて、まるで植物図鑑のようです。
 そこには私たちの日常に在りながら、名前も知らぬまま消えてゆく、崔の植物への温かな眼差しが感じられました。

 他にも世界7カ国に和紙を埋めたのち時を経て掘り起こした「World Underground Project(ワールド・アンダーグラウンド・プロジェクト)」や、朝鮮半島を南北に隔てる非武装地帯(DMZ)で自然が自己組織を通じて実現している生態系に想いを馳せ、森の復元を試みる「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」など、切迫した環境危機の様相に静かに迫る作品群がインスタレーションされています。

 人類は自然といかに共存していくか、その可能性を作家とともに探る展覧会でした。

| | コメント (0)

2024年1月15日 (月)

ミラノウニカ2月展 日本パビリオンに過去最大の37社出展

  25年春夏素材を発表する第38回国際素材見本市「ミラノウニカ(略してMU)」が1月30日~2月1日、ミラノで開催されます。
Key_visual
 MUに日本パビリオン「The Japan Observatory (JOB)」が初めて出展したのは2014年9月展でした。そこから数えて今年は10周年の記念の年です。MUオープニングセレモニーでは、JFW事務局長の登壇やカクテルパーティーでの日本特集の演出など、存在感を高めるための仕掛けが施されるといいます。
 出展者は37社で、その内訳は34社がブース出展し、出展者不在エリアの「JOBプラス」に3社が出るとのことです。
 初出展は5社で、株式会社ベルテックス、株式会社パノコトレーディング、伊藤忠商事株式会社 繊維カンパニー、株式会社タケミクロス、株式会社シャンブレー(JOBプラス)。
 円安環境の中、輸出に期待する日本企業は多く、JOBの春展としては過去最大規模の出展になるといいます。
 私も現地に行って取材する予定です。日本企業に少しでも追い風が吹いてくれますように願っています。

| | コメント (0)

2024年1月14日 (日)

日本アパレル・ファッション産業協会新年会 約500名来場

 日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC) が1月11日、都心のホテルで開催した新年会に行ってきました。
 来場者は約500名を数え、久しぶりの盛大なパーティでした。
 Img_01161
 冒頭、鈴木恒則理事長が挨拶し、能登半島地震により被災された方々へのお見舞いと地域の復旧・復興への言葉を述べられ、本年のJAFIC事業活動の主要ポイントとして下記3つを挙げました。
1.サステナビリティの推進
2.DX (デジタルトランスフォーメーション)の推進
3.会員企業間の連携強化と情報共有の場の拡充
  とくに1. と2. には力を入れて取り組んでいくといいます。
 次に野田聖子繊維・ファッション議員連盟会長、伊吹英明経済産業省製造産業局長、小池百合子都知事から年頭の所感が語られ、活発な交流が行われました。
 気後れしていた私も、思いがけない方々にお会いするなどして、やっぱり来てよかったと思った、明るさの漂う新年の集いでした。

| | コメント (0)

2024年1月13日 (土)

円覚寺雲頂庵 中島千波画伯による襖絵「牡丹」お披露目

 先般、ついに鎌倉円覚寺雲頂庵に日本画家の中島千波による襖絵「牡丹」が届き、お披露目の会が開かれました。これはこのブログでご紹介した「桜」の襖絵(このブログ2023.5.18付け参照)と対になる作品です。17026462174421
 ご住職によると、雲頂庵では以前、お庭で牡丹を栽培されていたのですが、ある時、枯れてしまい、惜しまれていたことから、中島画伯に「牡丹」の絵を依頼されたのだそうです。
 以前から雲頂庵と中島画伯の結びつきを不思議に思っていた私に、ご住職がこのご縁について話してくれました。そのいきさつは次のようです。
20231209111603dsc_01021pg  中島千波画伯が師と仰ぐのは故前田青邨画伯です。前田画伯は雲頂庵のすぐそばにお住まいだったそうで、雲頂庵の牡丹を写生しによく訪れていたといいます。中島画伯も時折ご一緒に来られていて、この襖絵の牡丹は、この時の面影を宿した花々だったのです。
  「牡丹」というと、あでやかなイメージの花という印象ですが、ここでは華やか過ぎない、ふんわりと優しい表情で描かれています。優美な哀愁を漂わせている「桜」と似合っていて素敵でした。
 これから行事のときに、出していただけるようで楽しみです。

| | コメント (0)

2024年1月12日 (金)

イエール国際フェスPVグランプリ イゴール・デリック受賞

 毎年、南フランスで開催されるイエール国際フェスティバル(International FestivalFashion, Photography and Fashion Accessories in Hyeres)は、ファッション業界が注目する若手デザイナーの登竜門です。プルミエール・ヴィジョン(PV)は、過去11年来、このフェスティバル会期中に行われるファッション・コンペティションのグランプリを提供しています。
 第38回目となる今年度のファイナリストは昨年10月中旬に発表された10名で、過去にないハイレベルなコンペティションだったといいます。

  この中で栄えあるPV審査員グランプリを受賞したのが弱冠24歳のベルギー人デザイナー、イゴール・ディエリックさんでした。
 2_20240115154001 彼はグランプリのほか、Le19Mメティエダール賞と市民賞と3冠を獲得し、賞を総なめにしました。 
 受賞作は、ユニセックスを意識したコレクションで、右は「イエッサー」と呼んでいる、ホテルのフロント係に着想した実験的なテーラーリングです。
 ディエリックさんにはPVから奨励金2万ユーロが贈られ、副賞としてPVパリ2月展の会場でグランプリコレクションが展示されることになっていています。
 私も拝見するのを楽しみにしています。

| | コメント (0)

2024年1月11日 (木)

アニッシュ・カプーア 個展「奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」

 インド・ムンバイ生まれで英国を代表する彫刻家、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)の個展が今、東京・神宮前のGYRE GALLERYで開催されています。
 「奪われた自由への眼差し_監視社会の未来」というショッキングなタイトルに惹かれて見に行ってきました。「監視社会」とあるので、IT社会の闇がテーマなのかと、デジタルの響きを想像していましたが、大間違いでした。

Img_00921_20240112201901
   目に飛び込んできたのは、火山の噴火で溶岩流が固まったような、あるいはどろどろの赤い血の塊か、むき出しにされた内臓か、何ともグロテスク、と思える不気味なオブジェのインスタレーションでした。そこには激しい感情の流れがせき止められたような苦悩が込められているようにも思われました。

Img_00831_20240112202201
 ペインティングやドローイングは、私たち自身が持っている “情念の炎” を色と形で写し出した、といった作品です。人間存在そのものに潜むカオスの表象ともいえる、その無意識の世界に東洋のイメージが重なりました。
 なぜカプーアが、欧米的な価値観の域を超えた、東洋的な思想に基づくアーティストと言われるのか、少し分かった気がしました。

 現代社会の行き詰まりを表現し、見る者の心をざわつかせる展覧会でした。会期は1月28日までです。

| | コメント (0)

2024年1月10日 (水)

PVパリ2月展 25春夏トレンドテーマ「ミューテーション」

 プルミエール・ヴィジョン・パリ(PVパリ)2024年2月展では、25春夏シーズンに向けてインスピレーションを与えるトレンドテーマとして「ミューテーション(MUTATION = 突然変異)」を発信しています。 

Pv-mutation

 現在、ファッション業界は大きな変化に直面しています。それは環境への配慮から生まれる持続可能なモデルへの移行であり、変化を受け入れざるを得ない重要な段階となっています。
 この変動の中心にあるのが、「ミューテーション(MUTATION =突然変異)」という概念です。これが25春夏シーズン全体で変革のプロセスを観察し実験する場として機能することになります。美学とプロセスに影響を与える重要な総合的なコンセプトが取り入れられ、異なる方向への探求が推進されています。これはまさに新しい時代の中でクリエイティビティと革新が芽生える場であり、業界全体が意味深い変革に向かって進んでいることを示しています。

 Regenerationでは、自然界の驚くべき側面に焦点を当て、動物の世界の見過ごされがちな部分で驚きと不思議を追求します。この視点の転換は、生き物たちと協力的なアプローチを促進し、これらの生態系を長期的に保護しようとします。素材は自然な資源と製造プロセスに依存し、生態系の再生に寄与するものが選択されます。

 Transformationでは、変態をコレクションの新しい美的提案の原動力として積極的に追求します。素材、色、外観、振る舞いの根本的な変更により、変容の瞬間が捉えられ、変異体やハイブリッドの宇宙が生み出されます。

 Adaptationでは、新しい均衡と、実用的なミニマリズムが生み出されます。適応は進化したデザインプロセスであり、素材と技術が使用に適応し、製品の寿命と耐久性を重視します。

 25春夏は変化の視点から見ると、転換点となる特別なシーズンです。慎重に時間をかけて形成されるプロジェクトを称賛し、ファッションの季節性を超越します。

 この季節は、変異がコレクションの中で創造的なエネルギーと捉えられ、脱皮やさなぎの象徴として、豊かな変化が生まれる時期です。創造性に深い意味が与えられ、すべての生き物と調和する手助けをするシーズンと位置づけられています。

| | コメント (0)

2024年1月 9日 (火)

PVパリ2024年2月展 注目プログラム 日本から46社出展

 クリエイティブなファッションのプロたちに向けた国際的な商談の場である仏プルミエール・ヴィジョン・パリ(PVパリ)が、今年 2 月 6 日~8 日にパリ・ノール ヴィルパント見本市会場で開催されます。

Pvpfeb24homepage
 国際的な出展社は約1,200 社です。ヤーンメーカー、テキスタイルメーカー、タンナー、テキスタイルデザインスタジオ、服飾資材・部材メーカー、縫製・製造業者が、2025 年春夏シーズン向けコレクションを発表します。

 各種プログラムが行われる中、とくに注目されるのが下記です。
〇サステナブルファッションに向けて、前回展でローンチされた A BETTER WAY(ベター・ウェイ)プログラムの提案拡充やデッドストックエリアの刷新。
〇メゾン・デクセプションの開設。特別かつ最先端のノウハウを持つアトリエが集積するエリアで、入場には、招待が必須。
〇ファッションインスピレーションの提供。シーズンの最もクリエイティブな開発にスポットを当てる5 つのファッションフォーラムと、2025 年春夏シーズンのトレンドを読み解くセミナーの実施など。
 
 なお、日本からは次の46社(内6社)が出展します。ちなみに昨年2月展は49社でした。
〇PVファブリック=エイガールズ、チクマ、国島、茅ケ崎紡織、デビス、広撚、北高、ケイライン、コッカ、興和、クロキ、桑村繊維、リリーレース・インターナショナル、植山テキスタイル、ミナミ、三菱ケミカル、森下メリヤス工場、日本綿布、ニッケテキスタイル、栄レース、柴屋、サンコロナ小田、サンウェル、タキヒヨー、瀧定名古屋、卓Edge、帝人フロンティア、東光商事、東レ、トスコ、宇仁繊維、ヤギ、スタイレム瀧定大阪、ジャパンブルー、小原屋繊維(初)、古橋織布(初)
〇PVアクセサリー=落合レース、SHINDO
〇スマートクリエーション=スパイバー、バイオワークス、ウィゾール(初)
〇メゾン・デクセプション=下川織物、カサギファイバースタジオ、青藍工房(初)、近江上布(初)、湧元(初)

| | コメント (0)

2024年1月 8日 (月)

メゾン・エ・オブジェ1月展 デザイナー・オブ・ザ・イヤー

 メゾン・エ・オブジェ2024年1月展で「デザイナー・オブ・ザ・イヤー2024」に選ばれたのかマチュー・ルアヌール(Mathieu Lehanneur) 氏です。
47novtmathieulehanneurdoty__2880x1580_ma
 この賞は、デザインやデコレーションの国際シーンにおいて重要な役割を持つ人物に贈られます。フランス人デザイナーであるマチュー・ルアヌール氏は、その独特な世界観とクリエイティブなアプローチで、デザインやデコレーションのコミュニティにとっての先駆者としての業績を高く評価されました。

 氏は、アート・デザイン・科学・テクノロジーを共存させる才能によって世界的に知られる1974年生まれのクリエーターです。彼のアプローチは極めて学際的で、オブジェから建築、アート、製品、一点もの、先端技術にいたるまで、非常に多岐にわたっています。
 その萌芽は卒業制作の段階から表れていて、学位取得のためのワークでは、患者とその病気・治療との関係を改善することを目的に、薬のデザインにフォーカスしました。この作品はニューヨーク近代美術館の目に留まり、すぐさまパーマネントコレクションに加えられたとのことです。2001年、卒業後すぐに自身のスタジオを設立し、カルティエやヴーヴ・クリコといったラグジュアリーブランドとのコラボレートや、インテリア開発、家具・オブジェの製作などを行っています。 2007年には、ハーバード大学と協力して空気清浄機「アンドレア」を開発。 2010年に自宅でくつろぎたいというニーズに応えて、 オテル・デュ・マルクのリニューアルオープンのためにカプセルルーム『Once Upon a Dream』を考案。47novtmathieulehanneurdoty__1120x600_ima より回復効果の高い睡眠を促す理想的な部屋として話題を集めました。 2018年には自身の名を冠したブランドを立ち上げ、独立を宣言。2020年のパンデミック期間中には、歴史的変遷を各国の人 口 ピ ラ ミ ッ ド に 刻 ん だ ア ル ミ 彫 刻 の コ レ ク シ ョ ン『State of the World(世界の状態)』を制作しました。最近では、パリ2024オリンピック・パラリンピックのトーチ(右の写真)をデザインし、間もなく聖火台も披露されるとのことです。

 「デザイナー・オブ・ザ・イヤー2024」を受賞したメゾン・エ・オブジェでは、「Outonomy(オトノミー=自律性)」プロジェクト(下の写真)を発表する予定といいます。
 1_20240108123101
 これは「逃げる、巧みに切り抜ける、呼吸する、生きる…」といった行動で要約されるプロジェクトで、あらゆる雑音や密集状態から離れて生きる、独立と自由という考え方をベースに構築されるといいます。ミニマルであると同時に、最も望ましい生命のエコシステムへ、各自が生き方を考え直し、自身をとりまく環境と影響し合えるような、ここではないどこか異郷を目指す、イグルーや山小屋、ヒュッテ、ユルトといった、隔絶された住居にまつわる様々な試み、解決策、提案などが散りばめられているとのことです。

 時代のニーズと現代のテクノロジーを組み合わせたプロジェクト、「Outonomy」の反響が注目されます。

| | コメント (0)

2024年1月 7日 (日)

パリ メゾン・エ・オブジェ1月展 テーマ「テック・エデン」

 デザインとライフスタイルの総合見本市「メゾン・エ・オブジェ2024年1月展」(SAFI主催)がこの1月18~22日、仏・パリのノール見本市会場で開催されます。
 出展者は147ヵ国から約2,300ブランドで、その内、新規は約600ブランドです。日本からも約90ブランドが出展するといいます。また来場者は約7万人が見込まれています。 

Maison-et-object
 2014年は開催30年の節目の年です。アニバーサリーイヤーを迎える今年は、「TECH EDEN(テック・エデン)」をテーマに、来場者を新たな魔法がかかった未来への旅へと誘います。テクノロジーと自然が調和を取り戻す世界を目指して---。
 
 「TECH EDEN]は、前回のテーマ「ENJOY!]に続き、フォルムやカラーを通じて夢のような楽観主義を発信するといいます。今回はとくに、未来的なバイオフィリア(自然愛)に焦点を当て、新たなウェルビーイングの世界を展開するとのこと。 
 マネージングディレクターのメラニー・ルロワは、「クリエイティビティとイノベーション、環境への配慮を結び付け、デコレーション、デザイン、ライフスタイルのマーケットに生かせるあらゆる可能性を分かりやすく解説し、その発展を積極的にサポートします」と語っています。
 またデザイナー・オブ・ザ・イヤーの革新的な提案、リテール分野の課題に具体的な答えをもたらす進化した「What’s New」の企画展示、ホスピタリティ空間の融合という未来に目を向けた独自のヴィジョンを具現化する「ホスピタリティ・ラボ」などが予定されているとのことです。

 私は現地に取材に行けなくて残念ですが、未来に向けて大きな可能性を感じる見本市になりそうです。

| | コメント (0)

2024年1月 5日 (金)

快晴の丸沼高原スキー場 山頂駅からの絶景を楽しんで

 雲一つない快晴の一日、丸沼高原スキー場でスキーを楽しみました。
 今シーズンは雪不足のスキー場が多いようですが、ここはほぼ全面滑走可でした。雪質もコブがほぼ無くて、なく下手な私でも滑りやすかったです。スノーボーダーが多い印象でした。

20240105105848imgp43391jpg
 白根ロープウェイというゴンドラで、標高1,400mのゲレンデから2,000mの山頂駅に登りました。

20240105105646imgp43301  
 目の前にドーンとそびえている山が日光白根山です。丸い岩峰が3つ見えて、迫力満点です。

20240105105502imgp43201

 足湯側からは雪山の絶景が広がっていました。遠く浅間山から四阿山、谷川岳、武尊山、至仏山、燧ケ岳まで百名山がずらりと並ぶ大パノラマは、ほんとうにすばらしかったです。10年前に尾瀬の燧ケ岳から至仏山を踏破したことが思い出されました。

20240105111930imgp43621
 二荒山神社に初詣して、4kmのロングコースを休み休み降りました。

 久しぶりのスキーを満喫した一日でした。

| | コメント (0)

2024年1月 4日 (木)

ロックハート城 群馬県高山村 英国から移築された古城訪問

 群馬県のスキー場へ行く途中、立ち寄ったのが「ロックハート城」です。1829年に英国スコットランドのエジンバラ南西50kmに建てられた古城を、1988年に日本の群馬県高山村に輸入移築して、3年がかりで建設し1993年に復元されたというお城です。
 Img_0069j1pg
 「ここは小さなヨーロッパ」というキャッチフレーズ通り、ヨーロッパの田舎町に佇んでいる古城の風格があります。映画ロケ地にも使用されているとのことで、サインギャラリーにはたくさんの芸能人の色紙が飾られていました。
 外観はまさに英国らしい荘厳な趣です。
 20240104123856imgp40881
 再現された中世の街並みを歩いて、スプリングベルと呼ばれている鐘楼に登って鐘を鳴らすと、ヨーロッパのどこかの街に来たような感覚になりました。
 20240104124248imgp41031
 でも城の内部は室内装飾など、英国風が凝らされてはいたものの、全体にちゃちな感じでした。でもそんなことを期待して入ったわけではありませんので、そこは十分に楽しめました。

20240104124806imgp41181
  J.F.ケネディ大統領夫人やマリリンモンロー、シャネルのコスチュームジュエリーやレアな香水瓶、古書本など、これだけのものをよく集めたと思うコレクションが展示されています。

20240104130230imgp41331
 2階がまた驚きの展示室になっていました。そこは津川雅彦サンタミュージアムです。俳優の故津川雅彦さんが世界中から集めたサンタクロースが1,000体以上並んでいました。ほんとうにスゴイ!としか言いようがありません。

  津川さんは、1987年にエジンバラで探し求めた朽ちたロックハート城に出会い、「日本の子どもたちにもヨーロッパの本物のお城を見せてあげたい」と、1億円で購入。それをシベリア鉄道で15億円もかけて日本に運んだそうです。津川さんはこの城を北海道広尾町に計画していたレジャーランドの中核施設にしようとしたのですが、資金計画で頓挫。宙に浮いていたお城を沼田市の(株)サンポウが買い取り、現在の姿に再現したとのことです。
 この城はまさに津川さんの情熱が詰まったお城でした。

 プリンセス体験の設備もあり、ロングドレスをまとった若い女性たちを見かけたのも微笑ましい思い出です。隣接の石造りのチャペルでは結婚式を挙げるカップルがそれなりにいるようです。

20240104133136imgp41471  ダイアナ妃が乗られたというロールスロイスも展示されていました。

 薔薇の花の季節はきっと見事と思う、英国庭園なども散策し、英国らしさを堪能しました。

| | コメント (0)

2024年1月 3日 (水)

今年は辰年 龍口明神に初詣

 神社仏閣はどこへ行っても人、人、人---。少しでも空いているところを、と初詣に出たのが我が家の近くにある龍口明神でした。
 Imgp39991
 今年は辰年でもあり、龍神様を祀るこの神社もやはり混んでいました。少し行列して無事参拝し、龍神おみくじを購入したら「大吉」と出て、まずは一安心、でした。
Imgp39961  右はその龍神おみくじです。辰が小さくてかわいい!
 赤や青などいろいろな色がありましたが、この金色のものが一番人気だそうです。
 一個500円。

 龍口明神の歴史は古く、創建は欽明13年(552年)といいますから、まさに古墳時代です。鎌倉で一番古い神社なのです。御祭神は頭が5つある五頭龍大明神で、龍神様の中でも力が一際強い龍神様とされているんだとか。
Img_00341jpg
 境内には神社を象徴する五頭龍大明神の像が建っています。
 住宅街の真ん中に位置することもあって、そんな由緒のある神社とは知らずに過ごしていました。
 今年は天高くのぼる龍に守られて、明るい活気あふれる一年を期待しています。

| | コメント (0)

2024年1月 2日 (火)

円覚寺塔頭 雲頂庵 お年始の会で閻魔大王と地蔵菩薩像

 北鎌倉円覚寺塔頭 雲頂庵のお年始の会に行きましたら本堂に、今まで見たことのなかった仏像が置かれていました。それが閻魔大王と地蔵菩薩像です。同寺院が保存管理していた焔魔堂に安置されていたものといいます。20240102102652dsc_04311pg
 和尚さんはこの閻魔大王と地蔵菩薩にまつわる地蔵十王経に関する法話をされました。それが大変興味深かったので簡単にご紹介します。
 人が亡くなることを「お迎えが来る」と言いますが、迎えに来てくれるのは地蔵菩薩です。お地蔵さまに導かれて三途の川にたどり着くと関所があり、そこを渡ろうとすると閻魔さまが現れて死者の生前の罪を裁きます。そのとき救いの手を差し伸べてくれるのがお地蔵さまで、これを初七日から7回繰り返した四十九日目が最終審判の日です。地獄に落とすのが閻魔なら、それを救うのが地蔵菩薩で、両者は裏表の関係にあり、だからこそ対でお祀りされているといいます。
 「人はどんなに悪いことをしても、お地蔵さまがどこか一つ良いところを見つけ出して助けてくれる」、和尚さんは、それが仏教のいいところと語られました。
 引用されたのが芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」です。主人公は極悪人でしたが、小さな蜘蛛の命を助けたことがあり、お釈迦さまは地獄からこの男を救い出そうと蜘蛛の糸を垂らします。男は脱出しようとこの糸をよじ登ります。ふと後ろを振り替えるとたくさんの罪人たちが糸にしがみついています。男が「この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。下りろ。下りろ」と蹴落とすと、糸はぷっつりと切れて、彼は罪人たちといっしょに暗闇へと、まっさかさまに落ちていった、という物語です。

 自分さえよければいい、そんな考えがはびこっているのが今の世の中です。ですから争いや紛争が絶えません。世界中がその塊になっていて何が本当なのか嘘なのかも分からなくなっています。そんな時代に「自分だけは誠実に生きていきたい」と語られた和尚さんの言葉が印象的でした。
 以前から知っていた閻魔大王と地蔵菩薩の説話や「蜘蛛の糸」のお話ですが、改めてお伺いして、今年の人生訓としたいと思いました。

| | コメント (0)

2024年1月 1日 (月)

明けましておめでとうございます。

 今年も初日の出を見に長谷寺へ行ってきました。空は快晴、清々しい朝です。見晴台にはもうたくさんの人が集っていて、日が昇るのを今か今かと待ちかまえていました。6時50分頃、相模湾の対岸にある光明寺の裏山に赤味が射してきて、太陽が顔を出しました。
 Imgp38182jpg
 自然はいつも同じことを繰り返しているのに、元旦の初日は特別な日の出です。今年も皆が笑顔で暮らせる幸せな一年でありますように、お祈りしました。

 境内の池の淵にはもう木瓜(ぼけ)の花が咲いていました。
  Img_00181jpg 赤い木瓜の花には「春をいち早く作り出す花」という意味があるそうです。
 ふっくらと丸い小さな花に、ほっこりと、春を感じてうれしくなりました。

| | コメント (0)

« 2023年12月 | トップページ | 2024年2月 »