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2023年11月

2023年11月30日 (木)

松島~蔵王御釜の旅 ⑵ 雄島 芭蕉の足跡を辿って

 「松島や ああ松島や 松島や」は後世の人が、芭蕉が絶句した気持ちをパロディ風に詠んだ句だそうです。松尾芭蕉はそのあまりの絶景に、得意の俳句を一句も詠めなかったといいます。そんな芭蕉ですが、奥の細道には松島雄島を訪れたことが記されていて、島にはその足跡が残されていました。

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 雄島へは朱塗りの渡月橋を渡って入ります。この橋は、かつて僧たちが雄島に入る際に陸地の俗世との縁を切ったことから「悪縁を断つ橋」ともいわれているのだとか。

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 この島は浄土の入口として、僧侶や巡礼者の修行の場となっていたのですね。仏像や法名などが彫られた岩窟や、板碑も数多く見られ、まさに霊場の趣です。鎌倉によくある“やぐら”を思わせました。

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 島の中ほどに松尾芭蕉の句碑もあり、曾良の句碑と並んで立っていました。左が芭蕉で、「朝よさを 誰(たが)まつしまぞ 片心」、右が曾良の「松島や 鶴に身をかれ ほととぎす」です。

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 既に夕刻の空模様でしたが、松の枝越しから見た美しい海の風景を目の中に収めて、島を出ました。

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2023年11月29日 (水)

松島~蔵王御釜の旅 ⑴ 瑞巌寺 豪華な金の襖絵に圧倒!

 今年9月半ば過ぎ、久しぶりに宮城県松島から蔵王御釜を見て帰るという旅をしました。私はウン十年という昔、松島を訪れたことがあったのですが、そのときとはやはりすべてが違っていて、新鮮でした。
 車を駐車して5大堂へ向かうと、インバウンドの人たちがいっぱい。さすが日本三景の一つという観光名所です。眺め良し、見どころ多し、みんなリラックスした様子で写真を撮ったりして楽しんでいました。

 まずは松島の国宝、瑞巌寺見学です。
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 参道沿いには洞窟群があって、観音像や石碑が納められ、荘厳な雰囲気に包まれています。
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 瑞巌寺本堂は臨済宗の禅寺らしいつくりで、庫裡が入口になっています。平成30年(2018年)に10年に及んだ「平成の大修理」が完了し、創建当初の姿が蘇っているとのことでした。
 驚かされたのは内部の装飾です。各室それぞれが絢爛豪華な金の襖絵で飾られていて、その煌びやかさにもう圧倒!されました。とりわけ見事だったのが室中の孔雀の間です。ここを再興した伊達政宗が好んだという、当時の華麗な桃山文化に想いを馳せました。(ここは残念ですが写真撮影禁止でした。)
 内側の祝祭の美と外側の侘び寂びの美、そのあまりにも対照的な美意識に日本文化の奥深さを改めて感じ入ったことでした。

 隣の宝物殿で開かれていた墨画展を一巡りして、名刹を後にしました。

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2023年11月28日 (火)

合同展「プラグイン│エディトリアル」 新しい“うねり”

 ファッションとライフスタイル雑貨の合同展「プラグイン│エディトリアル(PLUG IN│Editorial)」が10月24~26日、東京・恵比寿のエビス303にて開催されました。出展したのは75社・100ブランドで、うち7割が新規出展者でした。来場者は約2,034人と発表され、今年3月展より3%増えています。
 全体に多彩な顔触れが揃う、新しい“うねり”のようなものを感じた展示会でした。
 気になったアパレルブランドを紹介します。

ジャーニー&ジャージー(JOURNEY & JERSEY)
 洗練されたハイゲージ・ニットのカネマサ莫大小が、今年4月にローンチしたファクトリーブランドです。今回展から新設された「イーサロン・アワード」を受賞し、話題を集めていました。
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 コンセプトは「解き放つ服」で、伸縮性があり、リラックスした着心地のパジャマルックです。性別も、世代も、サイズも、着方も、時代も全てから解放される一着を目指すといいます。

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 2015年に岐阜県中津川市を拠点に、フルヤマモトミ(古山元美)さんが立ち上げたブランドです。ワークウェアをベースに、「全ての創る人に捧げる、ファッションとしての作業着」を目指し、作り手が主役になれる服づくりを心掛けているといいます。
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 ブースではシンプルでミニマルなデザインのジャンプスーツ(つなぎ)を提案していました。着るほどに体になじんでくれるコットン100%の生地が使われています。レディス向けにはジャンプスーツをイメージしたワンピースもデザインされていました。

ヨアケ(YOAKE)
 沖縄南風堂が今年2月に創設したブランドで、沖縄の伝統織柄である「ぐすく花織」をモダンにアレンジしたレディスアイテムをラインナップしています。
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 「ぐすく花織」は四つと五つのマス目からなる沖縄の伝統柄「ミンサー柄」や鳥の柄などを織り込んだ素材で、手織りの技を機械織りで再現したもの。デザインディレクターの越智美香さんによるスタイリッシュなデザインが目を惹きます。

あぽろん(Apron)
 上述の沖縄南風堂が立ち上げたばかりのアパレルブランドです。
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 ブルーにレモネード色をアクセントにドット柄をプラスして、軽やかな雰囲気のブラウスを中心に展開しています。生地はコットン100%を軸にリネンやレーヨン、等身大の自分らしさが心地よく感じられるコレクションです。

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2023年11月27日 (月)

サステナブルな社会を目指して ~ 環境への配慮とは~

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、アパレル・繊維産業は「世界で第2位の汚染産業」とみなされるほど、地球環境に与える負荷は大きいと言われています。2015年に国連総会でSDGsが採択されると、汚名返上への機運が世界的に高まり、サステナビリティという言葉が広く認識されるようになりました。
 中でももっとも重要なのが環境負荷を低減させるための素材とあって、テキスタイル業界では様々な取り組みが行われています。世界最高峰のテキスタイル見本市といわれるパリのプルミエールヴィジョンやミラノウニカといったでは数年前からサステナビリティ・プロジェクトを立ち上げて、シーズン毎に啓発活動に注力しています。
 日本でも小学生がSDGsを学ぶなど、SDGsやサステナビリティを耳にする機会が爆発的に増えました。そうなると熱しやすく冷めやすい日本人です。「サステナ疲れ」という言葉も聞かれるほどになりました。
 EUではこの問題がますます重みを増してきたようです。EUの主要機関は、域内で事業展開するアパレル事業者に売れ残った服や靴などの衣料品を廃棄するのを禁じる法案で大筋合意したとのニュースも飛び込んできました。この法案は今後正式な承認手続きに入り、2年後に施行されるとのことです。 

 こうした折り、11月20日~22日、開催されたJAPANTEX(一財)ボーケン品質評価機構 機能性事業本部 太田智子氏による「サステナブルな社会を目指して~環境への配慮って何をすればいいの?~」というトークイベントがありました。業界としてサステナビリティがなぜ必要なのか、日本の現状や取り組み事例などを分かりやすく解説され、大変興味深かったです。下記にその概要をまとめてみました。

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1. 環境配慮の必要性について
 サステナブルとは、サステイン(SUSTAIN)  + エイブル(AIBLE)を組み合わせた言葉で、「持続可能な」の意味。モノづくりの立場から、経済発展と社会や地球環境を守ることを両立させ、持続可能にしていこうという考え方です。
 サステナブルには3つの軸があり、1つ目が人権、2つ目が環境、3つ目が循環型経済です。この中ですべての活動の基本が人権で、この上に環境や循環型経済などの活動が成立しています。環境と循環型経済は密接に関わっており、循環型経済の中で、今とくに焦点が当てられているのが資源の循環です。
 また最近注目されているのが地球の境界(プラネタリー・バウンダリー)で、その9つの指標のうち6つ ―― 気候変動、生物圏の一体性、生物地球化学的循環(窒素・リン)、土地利用の変化、淡水利用、新規化学物質汚染 ―― がすでに限界点を超えていて、地球環境は相当深刻な状況になっているといいます。この壊滅的変化を回避するために、国連で人権、環境、循環を網羅するSDGs(17の目標)が設定されました。

2. 日本の現状
 2016年に日本のSDGs達成度ランキングは世界ランキング18位でしたが、2023年は21位に下がっています。上位を示しているのは北欧の国々で、日本は他の国に遅れをとっている状況です。とくに日本の達成度や進捗度が低い目標は、目標5(ジェンダー平等)・目標10(不平等をなくす)・目標12(つくる責任つかう責任)・目標13(気候変動対策)・目標14(海の豊かさ)・目標15(陸の豊かさ)です。アパレル・繊維というものづくり立場からは目標12、目標13、目標14、目標15にシフトしていく必要があるといいます。
 それではどうしていくべきなのでしょうか。重要な考え方は持続可能な生産と消費の形態を確保することです。つまり少ない資源でより多く、より質の高いモノを得られるような生産と消費のパターンをつくり上げていくことで、このためのサプライチェーンの管理と資源循環の取り組みの強化が求められています。

3. 取組み事例 
 企業活動が地球環境に負荷をかけない、具体的な取り組み事例を紹介しました。
①温室効果ガス(GHG)プロトコルによる削減 ―― ファッション業界のサプライチェーンにおけるCO2排出量の内訳をみると、原材料の生産から糸・生地の生産、漂白・染色、縫製・加工までの排出量がほとんどで、71%を占めています。他に物流3%、小売3%、製品の使用・廃棄23%となっていますが、このプロトコルの活用によりどの部分を削減すべきかが分かります。
②循環型材料の使用 ―― 再生ポリエステルやバイオマス由来の素材を使う、また生分解性素材を使うなど、土壌や海で微生物により分解されるものに置き換えていくことが重要です。また遮熱機能素材も、カーテンなどに用いてエネルギーコストを削減します。
③ライフサイクルアセスメント(LCA)プログラムの導入 ―― これは原材料から廃棄までの工程をトータルで環境保護の観点から可視化するものです。たとえば再生ポリエステルの方がバージンポリエステルよりも本当にCO2排出量が少なくて、環境にやさしいのかなど、どのような形で環境負荷が発生しているのかを評価することができます。
④有害物質の使用禁止・含有の有無の確認 ―― 最近は規制が厳しくなっています。たとえば撥水性を有する PFAS(ピーファス<有機フッ素化合物>)が使えなくなるなど、環境に優しいモノづくりにこの規制は必須です。
⑤無水染色システム ―― その代表例が「超臨界流体染色」で水の替わりに超臨界状態の二酸化炭素を用いる染色法です。インクジェットプリントや昇華転写プリント、原着糸の活用など無水染色の動きは加速しています。
⑥生産工程における環境負荷削減の見直し ―― DXを利用し、3DCADなどデジタル機器を投入することで、商品化のリードタイムを短縮するなど、全体的な生産効率の向上で環境負荷削減を図ります。
⑦在庫の適正化 ―― とくに受注生産の実施が、廃棄ゼロを可能にします。
⑧モーダルシフト ―― 運送での排気ガス削減で、交通およびモビリティを再生可能エネルギー資源を使用した公共交通機関に転換します。
⑨製品寿命の延長 ―― リユースやリサイクル、アップサイクルへの取り組みを確立することにより自然環境を破壊から守ります。

 具体的な取り組みは様々あります。まずは行動することが大切と強調されたことも印象的でした。

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2023年11月26日 (日)

「ててて商談会2023. 秋」 伝え手と深める2日間

 「ものづくりの原点でありたい」と作り手と伝え手、地域や文化などが一つの生態系のようにお高いが影響し合う営みを目指す展示会、「ててて(TETETE)商談会」が、10月26日と17日の2日間、品川駅近くのコクヨビルTHE CAMPUSにて開かれました。
 出展したのは、ファッションや雑貨、ビューティ、食など70社です。
 
 「おやっ」と思ったブランドを紹介します。

ファクトリー Factory
 栃木県足利市を拠点に活動するブランドで、素材開発から手掛けているといいます。ナチュラルな質感を大切にした「ありのまま」の服づくりが魅力です。Img_92541

スガノオーガニック Sugano ORGANIC
 「よけいなものはいらない。毎日肌に触れるものだからこそ、からだが喜ぶ下着を届けたい」と、奈良の山間にあるちいさな工房で、オーガニックコットン100%の下着を仕立てているとのことです。人にも環境にも優しい素材使いで心地よさそうです。Img_92551_20231204191001

アフリクル AFRICL
 西アフリカのベナン伝統の手染めバティック(ろうけつ染め)を日本の丁寧な縫製で仕立てた、大人のためのアパレルブランドです。
 作り手の方々の想いが伝わってくるようでした。Img_92661

キット kitt
 和歌山の希少で繊細な編み機と、職人たちが長年培ってきた知恵と技術から生まれたスエットウェアのブランドです。ふっくらと柔らかく、驚くほど軽いパーカなどを、その心地よさをアピールしていました。Img_92571

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2023年11月25日 (土)

「人新世のデザイン」展 人新世を生きのびるためのデザイン

 この10月末、日本で34年ぶりに開催されたデザインの世界会議「WDO世界デザイン会議東京2023」に合わせて、東京・丸の内仲通りのデザインギャラリーGOOD DESIGN Marunouchiにて「人新世のデザイン」をテーマにした展示会及び連続トークが行われました。 

 「人新世(じんしんせい)」とは、21世紀に入ってから新たに提唱されている「人類の時代」という意味の地質学の新しい時代区分です。
 産業社会や資本主義の進展は、地球規模の大きな環境変化をもたらし、「人新世」という新たな時代に入ったと言われるようになりました。経済的な格差はますます拡大し、政治的な分断が広がり、気候変動や生物多様性の減衰などによって環境が激変し、破滅のシナリオが免れないような状況が迫りつつあるとも言われています。こうした中、生産と消費、技術と人間、社会と個人などをつなぐ手段として、ますます重要視されるようになっているのがデザインです。

 デザインはこの「人新世」を生きのびるために何ができるのでしょうか。
 ここではそうした重い問題に向き合う作品、トークゲストの作品11点と近年のグッドデザイン賞受賞デザイン12点が展示されていました。

 とくに気になったものを紹介します。

「都市林業の可能性」/ 湧口善之
  トークゲストの一人、都市森林(株)代表取締役湧口善之氏の作品です。Img_92331
 氏は、都市森林資源(街の木と建築廃材)の活用を掲げ、木工品の企画・製作・販売、オーダー家具、インテリアの設計製作を手掛けているといいます。ここではイチョウやソメイヨシノ、プラタナスなど、街の木を活用したハンガーラックを展示していました。シルクのストールも美しい。

 2022年グッドデザイン賞受賞デザインから、下記3点。

卵の殻から生まれたバイオマス食器「シェルミン」/ヤマト化工株式会社+アヅミ産業株式会社ほか
 卵料理の度に、殻をそのまま捨てるのが「もったいない」と思っていました。卵の殻は年間25万トンも廃棄されているそうです。
 展示されていたのは卵の殻を未焼成のまま再利用し、生物由来のパルプを加えたバイオマス素材からつくった食器アイテムです。

Img_92481_20231204173001  陶器のように美しい質感と重量感に感動しました。

繊維リサイクルボード 「PANECO(パネコ) 」/(株)ワークスタジオ
 リサイクルが困難な廃棄衣類繊維をアップサイクルした、サステナブルな繊維リサイクルボードで、国内外から注目されています。

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未活用の繊維素材を価値化するNUNOUS(ニューノス)/セイショク(株)

 同社は何種類もの繊維が混ざる繊維材料にも対応できる新しいアップサイクル製法を開発。

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 原料となる布の色や柄を残すことで、視覚的にも分かる物語性を素材に付与し価値化を促進、同時に切削、縫製、印刷、塗装、接着など加工開発も併せて行い、展開可能な分野を拡大しています。

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2023年11月24日 (金)

ハイドサイン・ファクトリーツアー アトリエを訪問して

  楽天ファッションウィーク東京にて24春夏コレクションを発表した「ハイドサイン(HIDESIGN) 」(このブログ2023.10.12付け参照)が、アトリエを紹介するファクトリーツアーを10月11日に開催するとのお知らせがあり、参加しました。
 アトリエは隅田川を望む眺めのよい場所に位置しています。そこにはアパレルの最新機器を設備したファクトリーがあって、技術力の高い職人たちがデジタルCADを駆使して製品づくりに勤しんでいる姿がありました。
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 アトリエをご案内していただいたのは、ハイドサイン社長兼チーフデザイナーである吉井秀雄氏です。
 2005年にデザインや機能性を重視した制服の企画会社として独立し、“HIDE”と“SIGN”を信念に、表から隠れた構造をデザインの現れと捉えて、「ハイドサイン」をスタート。2022年より山口壮大デザイナーとの協業し“ファッションとしてのワークウェア”をベースに、「グレーカラー」シリーズを展開しています。グレーカラーは、知的労働者を表すホワイトカラーでもなく肉体労働者を示すブルーカラーでもありません。それらとは異なる色として「グレー カラー」を打ち出し、多種多様な環境で働く労働者それぞれに寄り添うユニフォームを提案しているといいます。
  23春夏は「コレクション1. グレーカラー」(このブログ2022.9.17付け参照)。次いで23/24秋冬「2. グレーカラー」、今回24春夏「3. グレーカラー」と続き、来年3月に予定されている24/25秋冬「4. グレーカラー」で、このシリーズは完結するとのことです。そして25年からいよいよ本格的な販売を始める計画とも。

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  展示されていたのは、創業以来のマクドナルドの制服や、東京ガス、ANAなど大手企業のワーカーたちの制服です。
 SDGs(持続可能な開発目標)を背景に、この知見を活かして、ハイドサインでは一人一人の日常に寄り添う高機能な服を企画。男女や年齢、また障害の有無も問わずに、防水や防風、防炎などの機能を備え、収納などもファッションに昇華した服を提案していることが分かりました。
  ファクトリーを見せていただき、型紙やグレーディング、仕様書の作成から、サンプルの縫製まで自社でこなせる体制を確立していることも目覚ましく思いました。
  この規模でこれだけのことができるデザイン会社は他にない、のではないでしょうか。

  次シーズンのコレクションも楽しみにしています。

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2023年11月23日 (木)

デニムのカイハラ展示会 「テンセル」と共同開発

 広島県福山市を拠点とする、世界屈指のデニムメーカーであるカイハラ(株)が、10月25日から27日、東京オフィスで初の単独展示会を開催しました。Img_92021
  展示されたのは、「FOREVER BLUE ~温故知新~」をテーマに、オーストリアのレンチング(Lenzing)社の精製セルロース繊維「テンセル」と共同開発したデニムコレクションです。
 カイハラは30年来、レンチング社とパートナーシップを結んでいるといいます。テンセルはデニムに柔らかな肌触りや光沢、吸放湿性の良さを与えるサステナブルな原料です。繰り返し洗濯可能で、移染や色落ちしない特徴があり、デニムで一般的な洗い加工、オゾン加工、レーザー加工でデニム特有のスレ・アタリ感を演出することも可能です。
 緯糸にテンセル・リヨセルを使ったセルビッジデニムや、テンセルスラブ糸使いのもの、経糸にテンセルを使ったモンスターストレッチシリーズ、インディゴ原着のテンセル・モダール使いなど、またリネン混や浅野撚糸とコラボした裏パイルデニムなど、バリエーション豊かな展開を見せていました。

 世界でも稀有なデニムの一貫生産体制を確立しているカイハラです。その開発力に改めて注目です。

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2023年11月22日 (水)

「プリスティン」KITTE丸の内店開店と「CARE認証」取得

 オーガニックコットンのパイオニア、(株)アバンティのオリジナルブランド「プリスティン(PRISTINE)」が先月半ば、国内で全12店舗目となるKITTE丸の内店開店と「CARE認証」取得の報告を兼ねたプレス発表会を開催しました。

 新店舗、KITTE丸の内店は東京駅直結という地の利を生かし、「PRISTINE gathering」 をコンセプトに、「あつまる。つながる。しる。わらう。」お店にしていくといいます。新作展示受注会やお話し会、映画上映会、ワークショップなどのイベントを開いたり、日本各地にいるプリスティンの作り手である職人や作家さんがお店に集ったり、ものづくりストーリーや暮らしの知識を発信したり。
 人と人の温もり、心の触れ合いのできる『場』を目指すとのことで、これからが楽しみです。

Img_91851_20231203164701  店内は、オーガニックコットンの優しくて温かい雰囲気がいっぱいでした。

 「CARE認証」は一般社団法人計量サステナビリティ学機構が運営する認証制度で、製品やサービスをつくる過程で人権が守られているどうかを評価し、誰にでも見えるかたちにできる世界初のESG認証システムです。人権負荷が低く優れていると判断された製品には「Platinum Blossom(世界上位5%)」「Gold Blossom(世界上位10%)」「Silver Blossom(世界上位25%)」「Bronze Blossom(世界上位50%)」のいずれかが授与されます。
 この7月、その第一号案件として、アバンティのオーガニックコットンのライフスタイル提案ブランド「プリスティン」にCARE Platinum Blossom認証が与えられました。半年に亘る厳格な審査の結果、プリスティン商品の人権負荷が全世界の衣類業界における上位4.2%に位置することが認証されたためだそうです。

Img_91891jpg  カウンター横に認証状が展示されていました。
 
 さすが社会貢献意識の高い企業です。同ブランドの価値がまた一つ、上がりました。すばらしいです。

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2023年11月21日 (火)

2023年毎日ファッション大賞 新人賞シンフラックスに注目

 2023年毎日ファッション大賞表彰式が10月16日、東京・渋谷区EBis303で開催されました。

Img_90131  大賞は、右写真のマメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)の黒河内真衣子さんです。
 黒河内さんは2014年(第32回)毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞しています。
 ファッション業界に貢献した人や団体に贈られる鯨岡阿美子賞は、ユナイテッドアローズ上級顧問の栗野宏文さん、話題賞はセイコーウォッチの高級ブランド「グランドセイコー」と、タレントののんさんに贈られ、特別賞は文化学園が受賞しました。
 中でも私がもっとも注目したのは、新人賞・資生堂奨励賞に輝いた「Synflux(シンフラックス)」代表取締役CEO の川崎和也さんです。ITやAI(人工知能)のテクノロジーとファッション製品の共振を目指すスペキュラティブ・ファッションデザイナーとして活躍されている姿を以前から目覚ましく思っていました。
 川崎さんは「私はコレクションデザイナーではなく、スタートアップとして活動しています。あるとき英国のデザイナー、ビビアン・ウエストウッドのドキュメンタリー映画を見て、ファッションへの興味をかき立てられました。そしてこの映画の影響もあって、洋服のパターンメイキングの際に生じる廃棄物を3分の1に大幅に削減するシステムを開発したのです。それが洋服の型紙を無駄なく配置するソフトウェア『アルゴリズミック・クチュール』です。デジタルテクノロジーを環境問題の解決に向けて、ファッションを通してつくり考えていきたいです」と挨拶しました。

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 表彰式後、受賞に伴うプレゼンテーションでは、ゴールドウインとシンフラックスの協業による「ザ・ノース・フェイス」の製品が披露されました。Img_90271

Img_90401jpg  また川崎さん(右写真)とイッセイミヤケの宮前義之デザイナーとの特別対談も行われました。 

 この対談で私がとくに興味深く思ったのは、下記のくだりでした。

 川崎さんが「ファッションを通して環境問題を考えることに、希望があると思っています。自分が着ている一着が自然や環境につながっていることを思えることは尊いことで、それに少しでも貢献することができたらという思いが強いです。」と述べると、宮前さんが、「イッセイミヤケの『一枚の布』、そこには日本の美意識があり、未来のものづくりへの可能性があります」と話し、これを受けて、川崎さんが『アルゴリズミック・クチュール』が2019年H&Mの「グローバル チェンジ アワード(GLOBAL CHANGE AWARD)」で「アーリー・バード特別賞」を受賞したときに、「これはきものだね」と言われたエピソードを語りました。
 日本のきものの伝統的パターンはまさに廃棄ゼロファッションです。『アルゴリズミック・クチュール』はこれを応用したパターンメイキングシステムと受け止められて高く評価されたといいます。
 二人は、「ファッション業界は世界で第2位の環境汚染産業とみなされています。でも希望を捨ててはいません。目に見えないところに価値があると信じて、ものづくりの可能性を模索していきたいです。皆で業界を盛り上げていきましょう」の言葉で締め括りました。

 今は時代の変わり目です。ファッション産業も転換期で、創り手=デザイナーではなくなりつつあります。新しい時代の空気を吹き込んでくれる、川崎さんのような広い意味での創り手に賞を贈る意味は大きい、と思われます。
 川崎さん、今回の受賞、ほんとうにおめでとうございます!

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2023年11月20日 (月)

ユニクロ初の古着販売ポップアップストア 衝撃の価格と質!

 この10月、ユニクロ初の古着販売ポップアップストアが東京・原宿店地下1階 スペース・ストリートに出現したと聞き、行ってきました。

 お店の入り口は、ちょっと入ってみたくなるような好奇心をそそる外観でした。店名は「ユニクロ 古着プロジェクト」です。循環型社会を目指す「リ・ユニクロ(RE.UNIQLO)」の一環として立ち上がった店であることが分かります。

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 まず目に入ったのが、「丁寧な洗濯 ¥1,000~」の看板です。「リ・ユニクロ」のフリースジャケット¥1,000~とあり、その衝撃の価格と質! に驚かされました。
 Img_90971jpg  
 店内には回収したユニクロの古着がズラリと並んでいました。染めと洗い加工を施した製品染め加工のものと、染め加工をせず、丁寧に検品と洗浄をしたものの2種類が販売されていて、製品染めは小松マテーレ社の製品染加工素材「ガメダイ」によるものだそう。価格は¥1,990~、独特のヴィンテージ感が人気のようです。

 収益の一部は社会福祉法人「渋谷区社会福祉協議会」に寄付され、渋谷区の子どもの健全育成事業推進に役立てられるとか。

 期間限定ということで、終了してしまいましたが、またどこかでこのような取り組みに出会えますよう、期待しています。

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2023年11月19日 (日)

テキスタイルネットワーク展 「遊びませんか いろいろな秋」

 日本全国産地のテキスタイル職人による合同展示会、「テキスタイルネットワーク・ジャパン24/25秋冬東京」展が、10月19日~20日、会場を恵比寿303に移して開催されました。
 テーマは「遊びませんか いろいろな秋」です。付加価値の高い「良いモノづくり」を支える全国の産地から約20社が出展し、来場者は合計419人と発表されています。前回よりも展示場が少し狭くなったせいか、人の入りが多く感じられ、にぎやかな印象でした。

 コットン関連で気になった商品を紹介します。

(株)匠の夢 新潟県見附産地 
 Img_90461jpg ドビー織とジャガード織による先染め織物の凹凸のある演出に魅せられます。ニードルパンチを思わせるものも。
 綿や再生繊維、リサイクル糸の交織でSDGsを意識しているところもいいですね。

(有) 福田織物   静岡県浜松産地
Img_90761  今季は新しくリサイクルコットン使いの生地を訴求していました。糸は織物工場で出た“織りの捨て耳”を使用してつくったもので、生地には3%ですが、リサイクルコットンが入っているとのことです。
 それにしても“捨て耳”まで再利用して糸にするとは、まさに日本伝統の「もったいない」精神そのもの! 見事です。

遠孫織布(株) 兵庫県西脇産地
Img_90661_20231201194701  ジャカード織物専門に多彩な色柄や、立体感の表現を得意としている生地メーカーです。
 小ロット(10m~)から対応といいます。
 経糸・緯糸ともに別注色も可能で、独自の理想の生地をカスタマイズするとのことです。

(有) 坂田織物   福岡県久留米産地
Img_90861jpg  今回は、絣の表現に加え今まで使用していない素材や新たな加工を掛け合わせる事で、独創的な生地の表現に取り組んだ、といいます。
 伝統のカスリ織物がモダンにアップデート、フレッシュな表面感が目を惹きます。

(株)近藤紡績所  大阪
 高品質ピマ綿「SILKCOTT(シルコット)」100%や、超長綿にシルク20%を配合したオープンエンド糸「MULCOTT(マルコット)」使いのカットソーやシャツなどを展示。 Img_90561  さらっとしなやかでボリューミーのある素材をアピールして、人気を集めていました。

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2023年11月18日 (土)

FaW TOKYO秋 ⑶ ウェルネスファッションのいろいろ

 「第14回FaW TOKYO(ファッションワールド東京)秋」展で、今回初のウェルネスファッションEXPOが開催されました。健康や美容、アスレジャースポーツ、スマート衣料などウエルネスな付加価値を備えるファッション製品・素材が出展する専門エリアで、自然由来の素材、とくにコットンを中心に、着るだけで美容ケアになるものなど、バリエーション豊富な提案が見られました。

 そのいくつかをご紹介します。

瀧定名古屋(株)
 名古屋を拠点とする大手繊維商社です。提案していたのは、「トゥルーボーテ TrubeauteR」と名付けられた太陽光に含まれる近赤外線と紫外線を同時にカットする機能繊維で、肌の「光老化」を防ぐといいます。
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 外に出ても紫外線対策をしっかりしていればよいと思いがちですが、実はそれだけでは足りないのです。もう一つ、太陽光に約12%も含まれている「近赤外線」にも要注意で、最近の研究で私たちの肌に悪影響を及ぼしていることが分かってきたそうです。
 従来のUVカット素材と比べて、高い近赤外線遮断率を示し、アームカバーによる試験では肌の光老化を防ぐ高い効果が実証されたといいます。
 世界初の機能性素材、注目です。

(株)コムト
 同社は、東京の老舗ニットメーカーで、心地よく体の調子を整えてくれるデイリーウェア 「キュアモ(curemo)」を展開していました。
 Img_88251  
 素材は、丸安毛糸(株)が開発したイタドリやヨモギ、柿の葉をレーヨン繊維に練り込んだ「キュアフィーロ(curefilo)」です。健康な人の免疫機能を維持しサポートできるといいます。ストレス軽減効果やリラクゼーション効果、また就寝中の皮膚の乾燥を防ぐ効果の可能性も示唆されているとか。

(株)美光
 創業50年以上の下着メーカーで、「冷えは万病の元」をテーマに温活スタイルを訴求していました。1年を通して使えて、肌触りにこだわった天然素材を中心にラインナップしたインナーウェア、ナイトウェア、リラクシングウェアが揃えられています。

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 「いつまでも健康で美しく過ごしてほしい」という、つくり手の想いが伝わってくるようなコレクションでした。

(株)イフミックウェルネス
 同社は2022年に設立された(株)リグアと(株)テイコク製薬との共同出資による合弁会社です。
 社名の「IFMC.(イフミック)」は、テイコク製薬が温泉療法に着眼して製造したナノメーターレベルの非常に微小なミネラル結晶体で、非接触でも血行促進の効果が得られる新素材といいます。このイフミックを加工した衣類を身体に近接させることで血管から一酸化窒素が拡散し、血管が拡張することによる血行促進の効果を期待できるとか。

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 新しい血行促進衣の一つとして今後が楽しみです。

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2023年11月17日 (金)

FaW TOKYO秋⑵ サステナブルファッション さらなる進化

 「第14回FaW TOKYO(ファッションワールド東京)秋」展のサステナブルファッションEXPOでは、環境に配慮した製品・サービスのさらなる進化が見られました。

旭化成アドバンス(株)
 洗練されたブース展示に惹かれて立ち寄りました。打ち出していたのは「エコセンサー(ECOSENSOR)」で、2019年に同社が立ち上げた環境配慮型テキスタイルブランドです。今回はとくに有機フッ素化合物(PFAS)を含有しない撥水材を使用したアウトドア生地を提案していました。 Img_88821_20231127174701
 併せてスポットが当てられていたのが「ロイカ(ROICA)」です。これは廃棄されていた糸を再利用したリサイクルストレッチファイバーで、世界から脚光を浴びています。

東レ(株)
 愉快なシロクマがお出迎えするブースで、展開されていたのが「トレイン(TORAIN)」です。
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 トレインは有機フッ素化合物(PFAS)に依らない撥水高耐候性アウトドア素材です。耐洗濯性を向上し、更なる耐久性改善を図り、今後もさらに製品寿命が長いサステナブル製品としての完成度を高めていくといいます。

播州織工業組合
 ブースでは兵庫県西脇市の、播州織と呼ばれる先染織物を中心とした織物の仕上げ加工を行っている織物整理加工場が出展していました。Img_88451jpg
 その注目素材は、汗染み防止加工の「ミラクルコットン」です。肌に触れる面は通常の織物と同様に吸水性があり汗を吸収しますが、生地の表面には汗が染み出さない特殊加工が施されているため、吸水した汗が表面で目立たず汗による衣服のシミを防いでくれるといいます。ニット製品ではこのような製品は数多くありますが、厚みのない生地での汗染み防止加工はあまり見たことがありません。
 汗染みが目立たず見た目も爽やかで、風合いや通気性も損なわないとのこと。まさにミラクルなサステナブルコットンです。

服部テキスタイル(株)
 兵庫県多可郡で、日本全国の高級ホテル・旅館などにベッドシーツ等のベッドリネン、パジャマやスリッパ等のルームリネン、テーブルクロスやナフキンなどのテーブルリネンを製造し、提供しているメーカーです。
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 同社は、工場でホルマリンを使用した加工をせず、石油化学ゼロ加工、草木染めの人にやさしいものづくりを行っていることを訴求。また、太陽光発電事業によりカーボンニュートラルを実現していることもアピールしていました。

助野(株)
 漁師さんたちの足元の悩みを解消する高機能靴下「ペスカリー」を提案。Img_87791
 同社は富山県高岡市に拠点を置くレッグウェアメーカーです。長い時間、船上で過ごす漁師は足が疲れやすく、漁が始まると長靴の中で蒸れて、靴下がずれてもはき直すことができないそう。そんな過酷な猟場で漁師の足元を支える靴下の開発に着手。足底を波形状パイルにして、通気性のよいムレにくい構造にしたり、消臭効果や吸水・速乾性、軽量といった特性のある和紙を部分的に取り入れたり、通常の靴下よりも踵を大きく編んで、踵まわりにヒールロックサポートを入れて、足の形にしっかりとフィットする工夫を施したり。試作を繰り返して完成したのがこの高機能靴下で、ペスカ(漁業)とアリー(味方)を組み合わせ、「ペスカリー」と名告げたとか。
 素材は環境に配慮したオーガニックコットンが使われているといいます。

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2023年11月16日 (木)

FaW TOKYO秋⑴ サステナブルファッション 廃棄物ゼロへ

 日本最大のファッション展「第14回FaW TOKYO(ファッションワールド東京)秋」展が、10月10日~12日、東京ビッグサイトで開催されました。今回はジャパンファッションEXPO、サステナブルファッションEXPO、メガネ展、ブランド&デザイナーEXPO、ファッションDX EXPO、アジアの縫製・生産工場EXPOの6つに、初めてウェルネスファッションEXPOが加わり、世界30ケ国から計1,150社が出展した盛大なイベントとなりました。来場者数は3日間で27,000人と発表されています。

 中でも私が注目したのはサステナブルファッションEXPOです。今期は、「繊維の資源循環フェア」エリアが新設されるなど、回収・分別・再生システムやサーキュラー繊維・リサイクル繊維など、衣料廃棄物ゼロの未来を実現する最新製品・サービスが多数出展していました。
 とくに目新しく映ったものをご紹介します。

丸紅(株)
 同社が出資する繊維リサイクル技術を有する米国Circ, Inc.は、ケミカルリサイクルの中でも環境負荷の低い手法を用いて、「綿とポリエステルを“同時に”リサイクルする技術を持っている」とのことです。それは綿とポリエステルを加水分解してつくられる溶解パルプをセルロース繊維に、また生成された液体から分別したエチレングリコールと沈殿物のテレフタル酸を重合してポリエステル繊維に戻す技術とか。
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 ブースでは同社子会社の、(株)エムサーキュラーリソーシズが回収した古着をCirc社のケミカルリサイクルに繋げて、繊維資源を有効活用するスキームを打ち出していました。
 ポリエステル/綿混は素材の分離・回収が難しいと言われてきましたが、「2、3年以内には量産化できる」見込みとのことです。綿混もいよいよ「繊維to繊維の循環型」リサイクルへ本格的に動き出していることがわかりました。

豊田通商(株)
 同社はパタゴニア・インターナショナル日本支社と協業し、Tシャツのリサイクル事業『Tee-Cycle』に参画したり、タオル美術館グループと再生した綿糸を緯糸に使用した『REBORN COTTON』を誕生させたり---と、「繊維to繊維 (T2T) 」の循環を実現している企業です。
 ブースではとくに『コットンエイト(COTTON ∞)』の展示が目を惹きました。

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 コットンエイトはフェアトレードコットンを通じて、幸せの循環を生み出すプロジェクトです。豊田通商、シキボウ、信友の3社が共同で、国際フェアトレード認証コットンの普及を目指す活動で、豊田通商グループの綿花調達を担う東洋棉花、企画販売の豊通ファッションエクスプレスを巻き込み、8%から∞の可能性を広げていくといいます。

パネコ (PANECO)
 ワークスタジオが手がける廃棄衣類繊維を原料にしたリサイクルボードで、熱可塑性樹脂を含まないプレス成形で製造されているとのことです。1年間で約27トンの廃棄繊維を回収し、繊維リサイクル事業では難しかった回収繊維リサイクル率ほぼ100%を実現しているというのも、すばらしい!
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 以前はグレー一色でしたが、多彩な彩りのものが出ていて、進化を感じました。

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2023年11月15日 (水)

杉野学園衣裳博物館 民族文化を知る「民族衣装入門」展

 今、杉野学園衣裳博物館で「民族衣装入門」展が開催されています。私も少しの時間でしたが、学園の希少な民族衣装を閲覧しました。

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 1階展示室にはウズベキスタンやインド、グアテマラ、アイヌ民族の衣装、2階展示室にはブルガリアやルーマニアの衣装が展示されています。 

 民族衣装とは、気候や文化的生活様式を同じくする民族の衣裳です。フォークロア、またエスニックと呼ばれて、民族の要素がファッションの世界へと盛り込まれてきました。しかしグローバル化が進んだ昨今、「人種的」「宗教的」「知財搾取的」な問題をめぐって、文化の盗用が問題視されています。
 例えばメキシコ文化相がメキシコの先住民に特有の模様などをデザインに使用したとして、「ルイ・ヴィトン」や「マイケル・コース」、「キャロリーナ ヘレラ」、「イザベル マラン エトワール」などのブランドを非難したり、「コム・デ・ギャルソン」のメンズコレクションショーで黒人に多く見られる髪型のかつらを白人モデルに着用させたことが批判されたり---。
 装いという観点からアイデンティティへの意識が高まり、新たな論争が生まれているのです。
 本展では、そうしたことにも触れながら、見る者にしっかりとその歴史を学び敬意を払うことが今まで以上に求められていることを伝えていました。

 小規模ながら逸品揃いの、見ごたえのある展覧会でした。会期は1月29日までです。

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2023年11月14日 (火)

第60回 全国ファッションデザインコンテスト表彰式     日本綿業振興会賞は 中国の学生作品「文字青年」に授与

 第60回全国ファッションデザインコンテスト(一般財団法人ドレスメーカー服飾教育振興会・学校法人杉野学園主催) 表彰式が、この10月14日にスギノホールにて開催されました。
  今回のコンテストは、デザイン画による応募総数が1,681点だったとのことです。その内28点が第1次審査を通過し、実物作品を制作した26点が、ランウェイショー形式の最終審査会に臨みました。
 文部科学大臣賞をはじめとする各賞が決定する中、私も企業・関連団体賞の審査員の一人として参加しました。その結果、日本綿業振興会賞に中国人学生、卢 珏(リ・ジュエ)さんの作品「文字青年」を選出し、賞状とともにトロフィーをお贈りしました。

  リ・ジュエさんは同学園交流校の浙江理科大学4年生で23歳です。ショーを見た時、私は創作したのは男子学生と思っていました。ですから実際にお会いして女性でしたので、ちょっとびっくりしました。
 1pg 作品はベージュ色ニットのロングセーターとインディゴデニムのパンツ、白いロングシャツのスポーティなコーディネイトです。ジェンターレスで、男女両用を意識したといいます。
 このルックは既視感のある、ありふれた感じかもしれません。でも今回私は普段着として、着用できる作品を選びたく思っていました。こうしたコンテストというと、とかく現実離れした不思議なデザインや、コンテスト映えを意識したドリーミーなものになりがちです。
 とはいえこの作品は、いわゆる普通の服ではありませんでした。セーターはウールで、文字の模様がプリントではなく編み込み柄になっています。文字柄は、戦前の中華民国時代の新聞記事から取ったものだそうです。この時代に活躍した魯迅の短編小説「狂人日記」の文字が大きくあしらわれていて目立っています。
 それにしても現代に「狂人日記」とは、何故なのかと訊いてみました。すると今の中国ではチルしているZ世代の若者が多く、彼らは過去への想いが強いのだそうです。中国も古き良き時代のレトロが人気のようです。
 ともあれネットでは漢字を使用するのが流行っていて、このニットジャカード編みとデニム生地を組み合わせたデザインを通じて、ネットのトレンド言葉を実際のファッションに取り入れて、Z世代の多くに癒しを提供したいといいます。
 パンツもコットンデニムの端切れを使って、パッチワークしたサステナブルなデザインです。
 伝統的な美意識や規範に挑戦し、個性的な表現を追求したクリエーションで、Z世代に受けそうです。
 
 最後に卒業後の進路を伺いましたら、大学院へ進学し、何と日本へ行きたいとのことでした。

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2023年11月13日 (月)

「印刷博物館」印刷の過去/現在/未来 学び体験する見学会

 先般、(一財)日本ファッション協会うらら会主催による凸版印刷「印刷博物館」見学会に参加しました。
 同博物館は東京都文京区水道トッパン小石川ビルにあり、印刷文化の伝承・発展への寄与を目的に、2000年に設立され、2020年10月にリニューアルされた企業博物館です。約7万点の印刷関連史資料を有し、年間平均3万人もの人々が訪れるそうです。

 地下が博物館になっていて、学芸員の方が説明してくれました。

 まず印刷の世界史から。ラスコー洞窟の壁画やロゼッタストーンなどのレプリカが展示されています。
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 印刷は紙、火薬、羅針盤とともに古代中国の4大発明の一つと言われています。石刻文や拓本、印章と言った類似の行為が行われるなど、活版印刷も仏教文化と重なって、中国では11世紀に始まっていたといいます。

 15世紀、ヨーロッパではグーテンベルクが近代活版印刷術を生み出して、それが瞬く間に広まります。それ以前は書写でしたので、テキストが間違って伝わることも多かったのですが、以後は正しいテキストを残せるようになります。同時に複数の書物を安価につくれるようになって、コミュニケーションそのものが変化。人類の歴史が大きく変わったのがこの時だった、のですね。

Img_84801  現存する世界最古の木製手引き印刷機(レプリカ)

Img_84311jpg  グーテンブルグの活版印刷による聖書

 次に印刷の日本史です。
 古代、中世、近世と様々な展示がある中で、おもしろかったのは企画展、「家康は活字人間だった!」です。
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  徳川家康は銅を集めて硬貨を発行する一方、駿河版銅活字をつくっていたのです。江戸時代初期の50年間は、活字で印刷できることは権力の象徴だったといいます。
 また浮世絵が江戸時代のファッション雑誌だったことや、シーボルトが国外に持ち出そうとした日本地図などもあり、興味深かったです。

 常設展をじっくり展覧した後、印刷工房「印刷の家」で活字印刷を初めて体験しました。
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  スタッフの方が丁寧に教えてくれて、しおりを完成させることができて、ラッキー! でした。
 それにしても昔はこんなにも細かくて根気のいる作業をして、一枚一枚手で刷っていたのかと、感慨深かったです。

 すべてがすばらしい見学会でした。

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2023年11月12日 (日)

24年春夏ユキ トリヰ その日のあなたがハッピーになれる服

 ユキ トリヰ(YUKI TORII)2024年春夏コレクションが東京・晴海のESPACE YUKI TORIIで10月13日、発表されました。フィジカルなフロアショーは20年春夏ぶりでした。
 テーマは「その日のあなたがハッピーになれる服」で、世の中がどんどん変わっていく中で、“自分らしく”を大切に、との想いを込めたコレクションです。
Img_89442  最初はデニムの服です。若い人たちだけでなく、どんな年齢の人も着たくなるデニムをスカーフプリントと組み合わせるなど、軽やかでアクティブな新しいデニムのイメージを演出。
 次にみずみずしい花々のプリントドレスが登場。フレームの中に10種類もの花が入っていたり、サークルを描く花模様があったり、グラフィカルな世界をつくり上げています。
 そのほとんどがポケット付きで、モデルは手を突っ込んだままさっそうと歩く姿が印象的でした。
 中盤に現われたのがトロンプロイユ(だまし絵)シリーズです。ライダースジャケットと薔薇のプリントTシャツが目を惹きます。
 さらに人気の黒白のドレスが続きます。胸元のスクエアカットと丸みのある袖がフェミニンさを強調。
 フィナーレは、シァーなロマンティックなムードたっぷりのドレスがランウェイを席巻しました。
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 どれもがハッピーなオーラを纏い、着ている人はもちろん、見ている人までも幸せな気分にしてくれそうな、楽し気で華やかなムードに満ち溢れていました。
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 右は、今年80歳を迎えた鳥居ユキさんが今年9月に出版した著書「80歳、ハッピーに生きる80の言葉」です。日々の暮らしで、どのようにハッピーを見つけているのか、デザイナーとして活躍し続けるヒントとは?   ここには人生を前向きに生きていくための秘訣が詰まっているようです。

 主婦と生活社  税込み1,760円

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2023年11月11日 (土)

「クワイエット・ラグジュアリーの時代」寄稿

 今、ファッションの世界で新しい潮流「クワイエット・ラグジュアリー」がキーワードに
なっています。そこでこの動きをまとめた記事を、一般財団法人日本綿業振興会発行の機
関紙「COTTON PROMOTION コットンプロモーション」(2023年 秋号 557)のコラム「マーケ
ティング・アイ」に寄稿しました。
 本紙と併せてご覧下さい。(クリックで拡大します。)
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2023年11月10日 (金)

「桐生テキスタイルコレクション2024A/W」8社が出展

 24/25秋冬桐生テキスタイルが一堂に集まる「桐生テキスタイルコレクション2024A/W」が、この10月5日~6日、東京・原宿にて開催されました。
 出展したのは8社で、全体に目立つのはこの産地お得意のファンシーなジャカードです。それもカットヤーンのより長い新作が目に付きました。

(株)ミタショー
 カットジャカードやシルバーラメジャカードが秀逸です。
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C of H

 ふくらみのある温かなタッチの生地に癒されます。
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桐生整染商事(株)

 個性あふれるドビーやジャカードに魅せられます。
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トシテックス

Img_87461  右は、ニットテープ6cm幅とモール糸使いの生地を6cm幅にスリットして組み合わせたブロックパネル形状のファブリック。
 ユニークなモノづくりの提案で、いろいろな可能性がありそうです。

Tex.Box
Img_87301  ニードルパンチの新作、蜘蛛の巣のデザインに目が行きました。
 不気味な蜘蛛もいて、シュール感たっぷりでした。

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2023年11月 9日 (木)

2023東京きものコレクションショー「青野 保夫」ショー

 「2023東京きものコレクション」がこの9月30日、東京・日本橋室町三井ホールで開催されました。ランウェイショーで新作を披露したのは、京都の3メゾン、「青野 保夫」、「となみ織物」、「JOTARO SAITO」です。
 私はトップを飾った、青野工房を手掛ける「青野 保夫」ショーを拝見しました。
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 染色家で音楽活動も繰り広げる異色作家といわれる、青野 保夫氏。その作風は、鮮やかな色彩と大胆なデザインで、まさにモダンアートの絵画を見ているかのようでした。これがローケツ染め?とは思われない、絶妙なタッチの華やかさで惹き込まれました。
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 観客の多くが氏のファンらしい上品なきもの姿で、これもステキでした。

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2023年11月 8日 (水)

中川政七商店主催『大日本市』展 語りたくなるものづくり

 恒例の中川政七商店主催『大日本市』合同展示会が「語りたくなるものづくり」をテーマに、9月6日~8日開催され、久しぶりに見に行ってきました。日本全国津々浦々、各地で生まれた工芸やその土地ならではのモチーフにこだわって、息の長い商品を展開しているブランドが東京・恵比寿に集結していました。

 まず目に付いたのが中川政七商店とカリモク家具のコラボコーナーでした。
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 「ソファーがあるのに、つい床に座ってしまう」日本人。そんな低い生活に合わせてつくった白木の座椅子とナチュラルな手織り風の布で包まれた空間構成です。そこだけ、しっとりとした空気感が漂っているかのようでした。都会の喧騒を離れて暮らす庵を思わせ、心惹かれました。
Img_81121  その隣には早くも来年のお正月飾りが並んでいました。2024年の干支である辰に願いを込めてつくられたお飾りです。中川政七商店らしい設えでした。

 会場となったホールにはそこかしこに賑やかな商談風景が広がっていました。衣・食・住にまたがる全75ブランドの中から、繊維製品で今回とくに気になった商品をご紹介します。

226(つつむ)
 日本一のニット産地「新潟県五泉市」のニットメーカー「サイフク」が作る、ニットでつつむ雑貨ブランド「226(つつむ)」です。
新色の「ニットバッグ」や「三角サコッシュ」から、頭や手足、お腹などカラダの一部から、インテリアなど生活を彩るプロダクトまで、楽しい工夫でつつむアイテムが揃えられています。
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 中でも注目したのが上の「見せるハラマキ」です。お腹を温めてくれるだけではなく、トップスの裾出しスタイルでも着こなせます。素材はオーガニックコットン100%。装いのアクセントとして、なくてはならないアイテムの一つになりそうです。価格は4,950円(税込) ~ 6,600円(税込)。
(実はこの会社のもう一つの人気ブランド「mino」について、このブログで2015年に記事を掲載しています。2015.2.2付けもご覧ください。)

HUIS (ハウス)
 素材はすべて静岡県遠州産地のもので、低速シャトル織機で織られた生地、愛称「育つ生地。」にこだわっているブランドです。(このブログの2022.10.16付けでも取り上げていますのでご覧ください。)
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 今回、上のメンズシャツを提案していたのが目新しかったです。コットンポプリンで首周りの形状を工夫し、オンにもオフにも格好よく着用できるデザインになっているとのこと。価格は22,000円(税込)。

me. (ミードット)
 リラックスインナーウェアのブランドで、2018年より、関西を中心にものづくりをスタートしたといいます。メインはコットンやシルクといった天然素材の糸から編み立てたやオリジナル生地を使ったシリーズで、これなら日々のストレスや疲れをいやしてくれそうです。
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 ありそうでなかなか見つからないブランドと思いました。

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2023年11月 7日 (火)

24/25年秋冬尾州マテリアル・エキシビション 「ファンタスム」

 今シーズンも一宮地場産業ファッションデザインセンター(FDC)主催の「尾州マテリアル・エキシビション(BME)」が24/25年秋冬の新作を揃えて、9月27日~28日、原宿で開催されました。
 出展したのは12社で、商談は約1,020点の新作とFDCが提携しているパリのネリーロディ社のトレンド情報を基に製作した開発素材約150点を展示して進められたとのことです。また前回(4月)のBMEに続き、来場できない層をターゲットとした「尾州マテリアル・エキシビション オンライン」も同時開催されました。
 その結果、リアル展示会の来場者は、コロナ禍の令和4年の秋冬展と比較して約41.8%増の868名(オンライン展示会を含めた来場者は約33.6%増の966名)となり、大盛況で閉幕。また、出展企業12社の合計サンプルリクエスト点数は延べ6,328点で、社数では延べ968社となったと発表されました。
 生地の傾向としては、表情があるものや質感の良いもの、ナチュラル系やパステルカラーの明るい色目のもの、ウールと他の素材を掛け合わせた素材や起毛素材、ジャガードの人気が高く、来場者からは「統一感があって良かった」と好評だったといいます。

 トレンド素材の展示コーナーは、ネリーロディ社の情報に基づき、メインテーマが「ファンタスム (FANTASM)」でした。アフターコロナや国際紛争、異常気象、物価高騰などの厳しい現実に対峙するか、あるいは逆に現実逃避するか、二つの相反する対応の狭間で、新しい現実のもと理想への解決策を探していこうという意味が込められているといいます。

 「ファンタスム」は下記3つのテーマで構成されていました。

ファンタスティック テイルズ (FANTASTIC TAILES)
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 Img_85871jpg現実の喧騒から離れて、子どもの頃に読んだ童話の中の空想の世界へ。カラーは秋のベリー類の煌めく色や神秘的な下草にふさわしいダークカラーです。
 <日本エース(株)リサイクル チェスツィード> 

ソフトドリーム(SOFTDREAM)Img_85491jpg
Img_85591jpg  誰もが守られ、安心して自分の望みを追求できる世界へ。
 カラーは夢幻的な優しさのある白っぽいパステルやパールがかったシルバーグレーが中心。
<ファインテキスタイル(株)かすりツィード> 

ユニバーサル ユニフォーム (UNIVERSAL UNIFORM)Img_85621jpg
Img_85751pg  違いが差別や障害とならない、むしろ和解を可能にする世界へ。ベーシックなニュートラル カラーでワークウェアのユニフォームにインスパイアされた淡色や濃色です。<時田毛織(株)ノンミュールジングウール ヴィンテージヘリンボン>

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2023年11月 6日 (月)

高野口パイルファブリック展 「ぷわぷわ19」

 ファーと言えばゴージャスさをプラスする憧れのアイテムです。それが近年、動物愛護などの観点から人工的に作られたフェイクファーパイルが注目されるようになり、今ではフェイク(偽)とは言えないほどに進化して、SDGsへの流れもあって「エコファー」と呼ばれています。
 この「エコファー」の日本における唯一のパイル産地が、世界遺産高野山の麓に位置する高野口産地です。この9月末の27~28日、今回で19回目となる高野口パイルファブリック展「ぷわぷわ19」(主催 紀州繊維工業協同組合) が表参道にて開催されました。
 Img_85341jpg  
 出展したのは新たに2社の染工場を含む12社です。生地ハンガー総数は600点以上とのことで、各社が同型のベストとクッションを各々のイチ押し素材を使用して製作展示していたのも印象的でした。

 展示では重みを増しているのがサステナビリティです。
 とくに目立ったのは、初出展したシルク100%腹巻きが人気の木下染工場と、SDGs達成に向けて取り組んでいる東陽染業です。

 東陽染業は、同じ和歌山県のニッター、今城メリヤスとコラボし、同社の吊り編み天竺に伝統の染色技術で染めた綿ニットを披露。独自技術による深みのある色彩をアピールしていました。Img_85221jpg

 杉村繊維工業の「再織」(シェニール織)も目立っていました。
 Img_85331pg これは一度織り上げた生地をタテ糸に沿って裁断し、モール状に仕上げ、そのモール糸をヨコ糸に使い再度織り上げたもので、表裏の無い美しい表情を持つ織物です。
 1柄31配色まで使用可能で、綿の持つやわらかな風合いをより艶やかに表現しています。今までにない素材を使用しての製織にも挑戦しているとのことです。

 妙中パイル織物は、同社の代表的な製品、コットンベルベットやジャガードベルベット、レーヨンファッションファー、デニムファーなどを展開。とくに豹(ひょう)などアニマルファーを模したエコファーに目が惹かれました。Img_85251

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2023年11月 5日 (日)

アンリアレイジ ほぼ非日常な体験型展覧会「6DOORS」

  この9月から10月、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」と「ほぼ日曜日」のコラボレーションイベント、ほぼ非日常な体験型展覧会「6DOORS」が渋谷PARCOで開催されました。
 文字通り6つのドアで仕切られた空間には、アンリアレイジのコレクションが展示されていて、同ブランドの新旧様々な作品を体験できるようになっていました。

Img_84821  2009年春夏「〇△□」体に合わない服を考え抜いたコレクション。
 Img_85011  2021年秋冬「GROUND」天と地が逆転した世界を表現したオンラインだからこそのコレクション。
 Img_84961jpg  2022年春夏「DIMENSION」現実世界と仮想世界を行き交う服。 
 Img_84871  2022/23年秋冬「PLANET」宇宙をテーマに地球と月を繋ぐ未来の服。
 
 2023/24秋冬「“=(イコール)”」全く別の視点から見る世界と自分が見る世界は、決してイコールではない”という点にフォーカスしたコレクション。

 そして最後にアンリアレイジがブランド設立当初から作り続けている「パッチワーク」の技術を使い、オーダーメイドで仕上げた最新作が展示されていました。(このスペースは撮影禁止でした。)
 このプロジェクトに参加したのはお笑い芸人の又吉直樹さん、人間国宝の志村ふくみさんと志村洋子さん親娘です。それぞれが大切にしていた服が、パッチワークで新しい服に変身した作品が展示されていました。また糸井重里さんや関係者が大切にしていた服からつくられた、パッチワークの服も見られました。
 そこにはもうほんとうに細かい手仕事の技が詰まっていて、圧倒されました。

 アンリアレイジならではの、独創的で刺激的なコレクション展でした。

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2023年11月 4日 (土)

2024春夏ミランニ展示会 テーマは “Overlap (重複)

 久しぶりにファッションブランド「ミランニ(Millanni)」の展示会に行ってきました。会場は渋谷ヒカリエ8階のクリエイティブラウンジです。
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 シーズンテーマは“Overlap (重複)”です。コレクションにはブランドを手掛ける二人のデザイナー、根本貴史さんと伊藤理恵子さんの子ども時代の思い出が重なります。Img_85071 色の重ね、垂れたペンキ、固まった筆、切り貼りした色紙、日記に挟んだ花、水溜りで遊んだ泥の汚れ、口の周りのチョコレート、カーテンに隠れて遊んだかくれんぼなど、どこか懐かしいノスタルジックなイメージです。
 そこには常に昔のものを尊重し、職人の技術を多く採り入れ、1点1点に多くの時間と手間をかけて作り上げた貴重なワードローブの数々が並んでいました。カラーは白黒モノトーンが主で、差し色としてロイヤルブルーやゴールドのタッチが加わっています。
 服が着る人にロマンティックな夢を語ってくれる心躍るブランド、ミランニ。今後を楽しみに見ています。

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2023年11月 3日 (金)

「吉岡徳仁 FLAME ガラスのトーチとモニュメント」展

 21_21 DESIGN SIGHTのギャラリー3で開催されていたのが、「吉岡徳仁 FLAME ガラスのトーチとモニュメント」展です。
 吉岡徳仁氏といえば、TOKYO 2020オリンピックで桜をモチーフにした「聖火リレートーチ」を手掛けて大きな話題となりました。
 本展では来年行われる国民スポーツ大会(旧国体)SAGA2024のセレモニーに向けて制作した新作「ガラスのトーチ」と「炎のモニュメント-ガラスの炬火台」が発表されていて、興味深かったです。

Img_83931  トーチは正面入口に展示され、近くのモニターには火を灯した映像が流れていました。
 厚さ2mmの透明なガラスの造形で、炎が空中に浮遊するように設計されています。全体が二重構造で、熱を分散し、空気を通して燃焼を持続させることが可能になっているといいます。
 炬火台は屋外に展示されていて、トーチ同様に点火をすると炎が浮遊するように見える設計で、囲いの隙間から風が吹き込むことでトルネードの炎を生み出すとか。炬火台への点火式も実施されましたが、私は残念ですが見に行けませんでした。

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 また炎を灯すセレモニーのためにMIYAKE DESIGN STUDIOが手がけたプリーツドレスが展示されていたのも目を惹きました。

 どれもシンプルな美しい造形で、炎そのものを際立たせるデザインになっていたのが印象的でした。

  来年の佐賀国体が楽しみですね。

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2023年11月 2日 (木)

企画展「Material, or 」人間と素材の関係を捉え直す

 21_21 DESIGN SIGHTで開催されていた企画展「Material, or 」は、「素材」をテーマにした展覧会でした。

 日頃から使っている「素材」という言葉ですが、ここではそれを二つに分けていました。一つは素材を自然に存在する「マテリアル」と、もう一つは何かをつくるために人間の意図が付与された「素材」です。本展ディレクターの吉泉 聡 氏は、このように分類することで、人間と素材との関係を捉え直すことに挑戦したといいます。例えば「木」はマテリアルですが、「木材」になると素材という意味になります。しかしそもそも素材とされているものは人間のために存在していたわけではありません。マテリアルとして地球に存在しているものは人間と共存しているものであるはずであり、そこをどう捉え直していけるかが、サステナビリティを考える上で必要なのではないか、と問いかけます。

 会場には参加作家の「マテリアル」に対する様々な思考の断片が点在し、人間と「マテリアル」の関係性を「地球」という広大な文脈から読み解き、そのつながりを再発見しようと試みる作品の数々が展示されていました。

 繊維に興味のある私、とくに気になったものをいくつかご紹介します。

Img_82741  上はTAKT PROJECT「glow ⇆ grow : globe」。光で固まる樹脂をプログラミングしたLEDに垂らし続けることで成長を続けるオブジェクトです。人工と自然の両者が融合するものの生まれ方を体現するものとか。

Img_83291  本田沙映《Cryptid》。廃棄される予定のフェイクファーの端切れを絡ませ、手作業で繋ぎ合わせた新しい毛皮です。

Img_83011jpg  2018年創業のAMPHICO(アンフィコ)が開発したアンフィテックス《AMPHITEX》です。100%リサイクルが可能で有害物質を一切含まない透湿防水性テキスタイルで、自然界にある蓮の葉に触発されて誕生したバイオミメティクス素材。アウトドアアパレル市場に新風を吹き込む可能性を秘めた次世代素材として期待されているといいます。

Img_83451  上はソフィア・コラー《HUman Material Loop Prototype 1.0》のセーターです。なんと美容室で廃棄された髪の毛を集め、それを加工して、高性能な糸にしたものを素材につくられているとか。人の毛髪はウール同様にケラチンタンパク質の繊維で、両者の性質に違いはほとんどないそうです。産業革命以前は靴下や靴などの繊維製品やロープなどに活用されていましたが、繊維産業の発展とともに活用は見送られるようになったといいます。
 環境負荷について改めて考えさせられる作品でした。

Img_83251  チラシに使われていた三澤遥+三澤デザイン研究室《ものうちぎわ》です。砂浜の波打ち際のように、小さなものが散りばめられています。小石や貝殻、木片など、自然のマテリアルもあれば、もとはプラスチック製品やタイルなどの「もの」だったものも。確かに浜辺は、地球のあらゆるものが集まる場所のひとつであるかもしれません。

 他にもいろいろ。
 マテリアルが織り成す新しい世界を感じることのできた展覧会でした。

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2023年11月 1日 (水)

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

 今、国立新美術館で開催中の「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」に行ってきました。
 私はパリで何度もイヴ・サンローラン美術館で企画展を見ているのですが、本展は日本では没後初となる大回顧展で、このようにまとまって見れるのはありがたかったです。

 イヴ・サンローランは1936年、当時フランス領だったアルジェリアのオランで生まれ、17歳でパリへ旅立ち、急死したクリスチャン・ディオールの後継者として弱冠21歳でコレクションデビューし、1961年に自身のオートクチュール メゾンを設立しました。本展ではこの時代から約40年の創造活動から生み出されたオートクチュールのルックを中心に、ジュエリーやドローイング、写真などを計262点が展示されています。

Img_84191  1960年代に打ち出したパンツスーツ、サファリ・ルック、タキシードルックは現代に続く、永遠のジェンダーレス・スタイルです。当時の女性のワードローブに一大変革をもたらしました。改めて女性たちの熱狂ぶりに想いを馳せたことでした。
  ハイライトはアートのエッセンスを取り入れたドレスの数々です。
 有名な1965年のモンドリアンルックやポップアートルックから、シュールで大胆なモチーフ、鮮やかでカラフルな民族調のデザインなど、さす が「モードの帝王」!

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 写真は、唯一撮影が可能だった展示室のものです。
 唯一無二でありながら、豪華絢爛な美の世界を間近で堪能しました。

 「ファッションは色あせるが、スタイルは永遠に残り続ける」、イヴ・サンローランの記憶に残る名言です。

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