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2023年9月

2023年9月30日 (土)

24春夏東コレ⑵ ナノアット 「Rest in peace(安らかに眠れ)」

 2024春夏楽天ファッションウィーク東京の初日、「ナノアット(NaNo Art)」のランウェイショーが表参道ヒルズで行われました。
 デザイナーは後藤 凪氏と田中睦人氏のデュオです。ブランド創設2020年で、アイテム一点一点に意味のある驚きと感動を詰めこんだ集合体を「NaNoサイズの美術館 」として提案。袖を通した時の高揚感は勿論、すれ違った第三者も楽しむことが出来る、「芸術品と工業品の間の洋服」に焦点を当ててシーズン毎に仕掛けを施しているといいます。

 今シーズンは、大阪のテキスタイルコンバーターであるV&A JAPAN社が開発した生分解ポリエステル素材「ReTE」を使用したコレクションでした。特定の堆肥に埋めると約1年で水と二酸化炭素に分解されるという素材で、デザイナーの二人はこの生分解する素材の特性に自らの死生観との共通点を見出したといいます。

Img_72901jpg  テーマは「Rest in peace(安らかに眠れ)」で、洋服を人体に見立て、命を吹き込んだかのようなデザインが散見されました。最も目立つ部分である襟を心臓部とし、静脈になぞらえたシャーリングや、三つ編み髪のようにゴム紐を編んだドローコードなど、人体を想起させるディテールがちりばめられています。
 パジャマやガウンといった寝具風のウェアは、パジャマをエレガントなセットアップ、ガウンをシックなコートとして着こなすことで、“部屋着感”を払拭。ウィットに富んだシティライクな雰囲気に仕上げていました。
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 カラーパレットは、ホワイトとブラックが中心。全体に厳かな雰囲気を演出していたのが印象的でした。

 

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2023年9月29日 (金)

24春夏東コレ ⑴ 「オープン、ファッションウィーク」

  日本最大のモードの祭典、楽天ファッションウィーク東京、東京コレクション(略して東コレ)が8月28日~9月2日、都内で開催されました。
  参加したのは50ブランドで、その内、35がフィジカルショー、15がデジタル発表でした。また新規に13ブランド、海外からも7ブランドが加わり、コロナ禍前の勢いが戻ってきました。

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 毎回注目のキービジュアルは今シーズン、「オープン、ファッションウィークOPEN, FASHION WEEK」がテーマでした。閉ざされていた世界が徐々に開かれ、動き始めた今を見つめて、「開かれたファッション」や「ファッションの解放」を表現しているといいます。初の3DCGでの制作も大きな話題となりました。          

 開幕に先駆けてメディアアート展「生成AIと解放展」も開かれました。初日、トークイベントやレセプションパーティも行われ、業界で初めてAIパブリックアートが公開されました。QRコードにアクセスするとキージュアルの八頭身モデルになれるファッション体験を実現するというもので、AI時代の幕開けを印象づけていました。

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2023年9月28日 (木)

石内都個展「初めての東京は銀座だった」

 1511 資生堂ギャラリーで開催中の石内都個展「初めての東京は銀座だった」に行ってきました。かつての銀座の記憶を映し出す写真が並んでいて、懐かしかったです。

 石内氏が初めて銀座を訪れたのは、1962年15歳の春だったそう。その後美大時代に画材の購入のためしばしば足を運ぶようになったといいます。チラシに使われている老舗画材店、月光荘の絵の具はきっと氏のお気に入りだったのですね。飯田久彦のファンだったことも、知りました。
 本展で展示されている約30点の写真は、その頃撮影されたものといいます。
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 オシャレなボーグの帽子、着物地を用いたスカジャン、粋な草履やアンティークボタン、資生堂パーラーの人気メニューだったオムライスや銀座天一の天ぷら、それに資生堂初の本格的な香水「花椿」も。

 当時、銀座は最先端のモノや人が集まるモダンな街でした。私も華やかな銀ブラに憧れていたことを思い出します。

 展覧会はそんな時代の銀座を象徴するような作品展でした。会期は10月15日までです。

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2023年9月27日 (水)

「カラーユニバーサルデザイン」人の多様な色覚に対応

 先般開催されたメディア・ユニバーサル・デザイン(MUD)協会「伝えるためのユニバーサルデザインフェア」のセミナーに、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDO副理事 伊賀 公一氏が登壇し、「『配慮』か『対応』か? 人の多様な色覚に対応したカラーユニバーサルデザインの濃い話」をテーマに講演しました。
 Img_70681_20231005185501 ちなみに「カラーユニバーサルデザイン」とは、「NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構」が作った名称で、色の見え方が一般と異なる人にも情報がきちんと伝わるよう、色使いに配慮したユニバーサルデザインのことです。
 自身も色弱という氏の、「誰もが自分の色の見え方に誇りを持てる社会にしたい」との思いが伝わる、題名通りの中身の濃いお話でした。

 まず「色弱」の定義から。「色弱」とは、「色弱者」の持つ視覚特性を意味し、「色弱者」とは色に配慮されていない社会における弱者という意味合いの言葉と言明。眼科では「色覚異常」と呼んでいるとのことです。2005年日本眼科学会が眼科用語集を改訂したことで、「色盲」という言葉が使われなくなり、総称として「色覚異常」という言葉が残ったといいます。
 色覚異常の検査は、その起源を辿ると、1875年に起きたスウェーデンのラーゲルンダ鉄道事故に行きつくそう。信号機に赤と緑を使ったことが原因とされ、この事故後、色覚検査が始まり、日本でも大正5年に導入されます。ところが日本の場合は、欧米と異なり、一律の学校色覚検査で、戦後も長く続けられました。他人の生命・財産に絡む仕事不可などと差別され、デメリットが大きいことが判明して、廃止されたのは2002年と、ずいぶん長い年月が経ってからのことだったのです。今では希望者のみに実施されることになり、職業選択の制限も一部の警察や交通関係に残るのみ、となっています。
 
 次に色を見分ける能力について。大きく3つの色型があり、2色型色覚は、青と緑のダブルトーンで見ている色弱者や、多くの哺乳類がこれで、色よりも形や模様を見分ける能力や暗視に優れているそう。3色型色覚は、ほとんどの人が持っている色覚で、形や模様よりも色を見ているといいます。4色型色覚は、哺乳類以外の爬虫類や鳥、昆虫などの生き物で、紫外線や赤外線の光を感知できると考えられている色覚です。
 色覚で2色型の人は、日本人男性の5%、20人に1人で、白人男性は5~10%、女性は500人に1人だそう。日本では320万人、世界では2~3億人いるとのことです。治療やメガネで3色型にすることは不可能で、色覚の異常が相当数の人々の悩みの種となっていることが分かりました。

 さらに色の見える眼の仕組みを図示し、色弱では、赤が暗いP型(1.5%)と、緑が暗いD型(3.5%)があることを解説。P型とD型色覚の人たちにとって、見分けられない色があり、この問題を解決する必要があると強調しました。
 例えば黒の背景色に赤の文字色では、赤の字が見えないので、赤をオレンジ系の朱色に変更すると見分けられるようになります。信号機の色は、かつて赤黄緑でしたが、色弱者が見分けられるように緑を青緑に変えました。これにより色弱者も車の運転ができるようになりました。細い線は太くしたり、面積の狭いものは広くしたりすることで見やすくなります。また色の名前を使ったやりとりが分からないので、色以外の情報である文字や形をつけて配慮することなど、様々な事例を紹介しました。

 最後に、カラーユニバーサルデザインのポイントを3つ挙げました。
①できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ。
②色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする。
③色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする。

 色弱ではなくても、高齢者は淡い色の文字が読みにくいといいます。色の見え方は人それぞれで微妙に異なっています。そうした多様な色覚を持つ人々のための当たり前のデザインとは何か、改めて考えたいと思いました。

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2023年9月26日 (火)

MUD協会「伝えるためのユニバーサルデザインフェア」

 この8月18日~20日、全国初のメディア・ユニバーサル・デザイン(Media Universal Design、略称 MUD)のイベント「伝えるためのユニバーサルデザインフェア~色・文字・かたちでみんなに分かりやすく~」が、東京都立産業貿易センター浜松町館にて開催されました。
メディア・ユニバーサル・デザイン(MUD)協会によると、MUDとは「様々な情報が高齢者・障がい者・色覚障がい者、外国人などにも、見やすく、伝わりやすくするための配慮手法のこと」です。
本イベントでは「MUDを見る・触れる・深める・感じる」をコンセプトに、6つの展示コーナーが設けられていました。

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・「MUDを知る」では、MUDの5原則であるアクセシビリティ(接近容易性)、ユーザビリティ(使いやすさ)、リテラシー(読めて理解できる)、デザイン(機能的で楽しい、美しい)、サステナビリティ(誰一人取り残さない世界に寄与する)を解説。これを基にMUDの対象者として色覚障がい者や高齢者、子ども、外国人のそれぞれの立場における困りごととMUDができる対策を事例とともに紹介、とくに高齢者では白内障患者の見え方のシミュレーションを取り上げていたのが興味深かったです。
・「学びのMUD」では、教科書や教材など教育関連が中心。(株)モリサワの「UDデジタル教科書体」の書体が注目されます。
・「命を守るMUD」では、防災や災害支援の情報にフォーカス。このための防災マップや視覚情報のユニバーサルデザインガイドブックなどが提案されていました。
・「くらしの中のMUD」では、とくに(株)山櫻の文房具2点Img_72661 に目が留まりました。
 一つは、 右の「おりやすいおりがみ」です。
 模様が折る位置のガイドになっていて、両面柄なのでいつでも模様が見えた状態で折れる折り紙です。

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 もう一つは、左の「UD封筒」です。
 模様がガイドになっているので、曲がらずに書くことができるようになっています。


・「UD関連団体」では、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構など、4団体を訴求。
・「MUDを感じる体験コーナー」では、「商品の見つけにくさに関する実験室」を始め、様々な研究発表とともに、MUDを体験するワークショップが行われていました。
 中でも印象に残ったのが「ユニカルタ」です。
Scan01891  文字が書いていなくてもコミュニケーションがとれるピクトグラムや標識を、カルタを通じて学んでいこうというものです。
 私も実際にこのカルタで遊んでみました。知らないグラフィック・シンボルがたくさんあって、落第点! いつも身近にユニカルタを置いておいて、覚えないと、と思ったことでした。

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2023年9月25日 (月)

「HENRI MATISSE The Path to Color : マティス展」

 東京都美術館で開催された「HENRI MATISSE The Path to Color : マティス展」、ちなみに「The Path to Color」 とは「色彩への道」の意味です。Photo_20231005112401 会期終盤の8月中旬、事前予約して見に行ってきました。 場内は混雑していましたが、予想していたほどではなかったです。
 私は何度もアンリ・マティスの作品を見ていますが、このようなまとまった構成の回顧展は初めてでした。
 出品されていたのは、パリ、ポンピドゥー・センターの名品約150点です。若き日の挑戦から晩年の大作まで、全8章で紹介されていました。(写真撮影が可能だったのは第4章の1920年代から第7章の切り紙絵までの一部作品のみで、ほぼ禁止でした。)

1_20231005111901  注目は、話題の《豪奢、静寂、逸楽》(1904年)で、日本初公開という初期の傑作です。
 右の写真がそれで、パンフレットからのものです。
 鮮やかな色と明るい光が“フォーヴィスムの夜明け”というのにふさわしい作品と、改めて思いました。
 
Img_70041jpg  上は、《赤いキュロットのオダリスク》(1921年)です。ニースに居を構えたマティスは、1910年代のキュービズム影響の濃い作品から小ぶりな肖像や室内情景、また風景画などを次々と制作していきます。この作品はお気に入りのフランス人モデルをイスラムの女性に扮装させ、アトリエを劇場のように飾り付けて描いた一枚とか。当時の異国趣味がありありと表れています。

Img_70171  上は、《夢》(1935年)。アシスタントからモデルとして、1954年より画家の死までマティスの傍にいたリディア・デレクトルスカヤを描いた作品の一つです。

Img_70471  上は、《マグノリアのある静物》(1941年)。花や貝を貼り付けたように描いた平面的な空間構成で、それらの事物はマグノリアの周りを浮遊しているように見えます。マティス自身が、「私のお気に入り」と語っていた作品といいます。
 Img_70521  上は、切り紙絵です。マティスは「色彩の魔術師」とも言われています。色彩を追求した結果、行き着いたのが切り紙絵で、マティス72歳頃のことだったといいます。「ハサミでデッサンすることで彫刻の直彫りを思い出す。---- 切り抜くことで、ペインティング、デッサン、彫刻を集約し、色彩と線描の造形要素を統一した」とのコメントが印象的でした。
 
 マティスの作風が次第に単純化して「切り絵」に至る過程を鑑賞し、もう最後の出口と思って足を踏み入れたのが、「ロザリオ礼拝堂」の映像コーナーでした。
 その大画面4K 映像は圧巻でした。ステンドグラスから溢れる色と光の交錯に、気分が明るくなった気がしました。次はぜひ、南仏ヴァンスまで足を伸ばし、訪れたいものです。

 今回のマティス展、最初は迷っていましたけれどやっぱり「行ってよかった!」展覧会でした。

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2023年9月24日 (日)

メゾンマルジェラ インスタレーション シネマ・インフェルノ

 この8月半ば、メゾンマルジェラでは表参道店のリロケーションオープニングを記念して、渋谷でインスタレーション「シネマ・インフェルノ」が開催され、私もしばし没入型体験をしてきました。

 「タワーリング・インフェルノ」ならぬ「シネマ・インフェルノ」とは、メゾン マルジェラ(Maison Margiela)のクリエイティブ・ディレクターであるジョン・ガリアーノ(John Galliano)が2022年アーティザナルコレクションの制作に合わせて構想した物語です。

 エントランスをくぐった1階のフロアは、全体が怪しげなライトに照らされた、劇場のセットさながらのインスタレーションルームになっていました。そこには役柄に沿ったアーティザナルのルックを身に着けたマネキンがディスプレーされていました。

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 アーティザナルの類稀なアイデアと職人技を惜しみなく注ぎ込んだドレスや一点物を間近で見ることができた稀有な機会でした。

 地下はシアターです。天井から床まで全てが鏡張りのミラールームになっていて、まるで異世界に迷い込んだかのようでした。
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 スクリーン版「シネマ・インフェルノ」が日本語の字幕付きで上映されていて、見る者も物語の一部となるような、没入体験を味わえる空間になっていたのが印象的でした。
 映画の舞台はアメリカ南部のアリゾナで、主人公のカウントとヘンは、シングルペアレント同士が結婚したことで義理の兄弟となるのですが、いつしか愛し合い、不運な運命を辿っていくという、ダークポエティックなストーリーです。
 監督はもちろん、ジョン・ガリアーノです。才気あふれるガリアーノはファッションに飽き足らず、とうとう映画の世界に乗り出しました。ほんとうにすごい才能の持ち主です。

 ガリアーノの退廃的な美の世界を堪能したひと時でした。

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2023年9月23日 (土)

24春夏オダカ展示会 ニキ・ド・サンファルに触発されて

 オダカ(ODAKHA)はデザイナーの小髙真理さんが手掛けるレディスニットウェアを中心とするファッションブランドです。始まりは2014/15年秋冬で、2023年秋冬よりブランド名をマラミュートからオダカ(ODAKHA)に改称しました。(このブログ2023年6月23日付け参照)

 この2024年春夏もの展示会が東京・渋谷で催され、見に行ってきました。今シーズンは現代を代表する女性彫刻家 ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle)の作品 「NANA シリーズ」に触発されて、Odakha24 女性の魅力を引き立てるランジェリーやコルセットの要素からデザインを構築したといいます。
 NANA シリーズはニキ・ド・サンファルが友人の妊婦姿から着想を得て制作した女性像のシリーズです。丸みを帯びた体つきの女性が飛び跳ねる姿は解放感と力強さを感じさせます。
 小髙さんはパリのポンピドゥーセンターで、廃材で作られた白一色の大きな彫刻『花嫁』と出会い、ニキ・ド・サンファルの作品に魅了され、女性の身体に向き合う重要性を再認識したといいます。

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 カラーパレットは、白をキーカラーに緑、赤、ネイビー、ブラック、カーキといった、優雅さと力強さが調和したカラーリングが特徴です。NANA シリーズに見られるような軽やかで躍動感のあるシルエットのアイテムが揃っています。オリジナルのレースをあしらったキャミソールや動きのあるフレアシルエットの MA-1、身体に寄り添うハンドニットコルセットなど。またダーツを取り入れ、フリルやレースを施した、ホールガーメントの限界に近い装飾性への新たな挑戦も見られます。

 女性性を肯定し、自分自身を謳歌する堂々とした“NANA”は、多くの人々に愛され続けています。そんな現代の女性たちへの賛歌ともいえるコレクションです。ますます期待しています。

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2023年9月22日 (金)

2024/25年秋冬コットン素材傾向―PV 及びMUより

 一般財団法人日本綿業振興会のHP内、「プレスリリース」(2023年9月15日)に、柳原美紗子が寄稿した「2024/25年秋冬コットン素材傾向 PREMIERE VISION PARIS 及び MILANO UNICAより」の記事が掲載されています。 https://cotton.or.jp/pr2023-09-15.html をクリックしてご覧ください。

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2023年9月21日 (木)

吉本英樹 初個展「DAWN」金沢箔と先端技術の融合

  この8月3日~7日、東京・渋谷のelephant STUDIOで「DAWN(=夜明け)」と名付けられた展覧会があり、ちょっと覗いてきました。
 室内は薄暗く、壁面には月食か金環食のような光の情景を写したアート作品が架かっていて、宇宙的な雰囲気です。

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 これはデザインエンジニアで東京大学先端科学技術研究センター特任准教授 吉本英樹氏の初個展「DAWN(=夜明け)」でした。テーマは「箔と透過光」で、よく見ると金色一色だと思っていた箔に青や茶、黒とさまざまな色がまだらに浮かび上がっています。
 金箔にレーザー加工で微細なメッシュ状の穴を開け、光を透過させた、新しい表現方法による作品で、金沢の「箔一」と東京大学先端技術センターとの共同研究プロジェクトから開発されたものといいます。

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 金沢箔と先端技術の融合が生み出した、これまで誰も見たことがなかった金箔の誕生です。まさに伝統工芸の「DAWN(夜明け)」を印象づけられたひと時でした。

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2023年9月20日 (水)

銀座メゾンエルメス フォーラム「エマイユと身体」展

 今夏、銀座メゾンエルメス フォーラムで「エマイユと身体」展が開催されました。エマイユとは陶芸に用いられる“釉薬(うわぐすり)”のことで、釉薬がもたらす色彩や効果を用いて、身体との対話を導き出そうという趣旨の展覧会でした。
 参加したのは7人のアーティストで、それぞれ釉薬という素材に着目し、粘土と身体の関係を探る作品を出品していました。

 中でも気になった作品を紹介します。

 まずもっとも興味深く思ったのが、フランス人作家のフランソワーズ・ペトロヴィッチ氏の作品です。
Img_68931  部屋一室がこの作家の展示室になっていました。モチーフは動物や少女で、不気味な可愛さがあります。

Img_68891_20231003171601  上はポスターにもなっていた「腹話術師」という作品です。生命が宿っているような神秘的なムードがあって、ちょっと怖いような印象でした。

 もう一人は日本人作家の安永正臣氏による実験的な作品です。
Img_68971  出土品のような造形と白い石とのコントラストが見事でした。

 湯河原町を拠点に活動しているという小川待子氏の始原的な作品も面白いと思いました。Img_68851jpg  タイルの上に今にも流れ出しそうな釉薬をあしらい、様々な破片を散りばめた有機的なオブジェで、作ることと壊れることの両義性を内包しています。

 さらにジャン・ジレル氏のレコードのような「風景ディスク」。深みのある色が美しかったです。Img_68831 氏は2000年にフランスの人間国宝に認定された陶芸家だそう。

 他にもいろいろ。

 エマイユに触発されたアーティストたちが創り出した、独自の世界を体験しました。

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2023年9月19日 (火)

「蔡國強 宇宙遊―〈原初火球〉から始まる」大迫力に圧倒!

 今夏、国立新美術館とサンローランの共催で開催された「蔡國強 宇宙遊―〈原初火球〉から始まる」を見てきました。
 火薬の爆発による独自の絵画を開拓し、一躍時の人となった蔡國強氏。中国出身でニューヨーク在住、日本とも縁の深い現代アーティストです。何度かその作品を拝見していますが、今回はほんとうに大迫力の連続で圧倒!されました。

 会場となった国立新美術館Eホールに入ると、柱や壁を取り払った2000㎡という巨大な広場に迎えられます。タイトルの〈原初火球〉とは「ビッグバン」のことで、展示室全体が宇宙人目線でつくられた1つの作品のようになっていました。
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 手前には、火薬で描いた7つの屏風ドローイングが放射状に広がり、奥の方にはキネティック・ライト・インスタレーションが展開していて、「UFO」や「巨大な顔」や「うずまき」がゆっくり動きながら赤や白、青など様々な色の光を発しています。
 Img_69211  LEDを使った《未知との遭遇》と題した大インスタレーションです。見る人は作品の中を自由に歩きながら体感することができます。

Img_69041  火薬ドローイングによる《胎動外星人のためのプロジェクト》

Img_69031  《外星人のためのプロジェクト》右下から左上に向けて、巨大な足跡が徐々に小さくなるように刻まれています。まるで地上から空に向けて巨人が歩き、最後は星のように輝いて消えていくように。

Img_69151_20231004061001  《歴史の足跡》のためのドローイング部分です。実際は33mもあります。蔡氏が手掛けた2008年北京オリンピック開幕式の打ち上げ花火「歴史の足跡」が目に浮かぶようでした。

 世界各地で爆発プロジェクトを展開してきた蔡氏。サンローランのコミッションで行われた、いわき白天花火《満天の桜が咲く日》の美しい動画が見つかりましたのでご覧ください。

 宇宙が膨張するかのように拡大してきた蔡國強氏の活動をたどる、壮大な旅路のような一大個展でした。

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2023年9月18日 (月)

第55回モード・イン・フランス展 出展者・来場者とも増加

 パリの合同展に先駆けて2024年春夏コレクションを発表する第55回モード・イン・フランス展が、7月25日~27日、東京・恵比寿にて開催されました。(主催:フランス婦人プレタポルテ連盟、在パリ) 
 出展したのは26社28ブランド、うち初出展は6ブランドで、前年比9社増。またメンズアイテムも5ブランドに増加しました。
 来場者数も多く、初日の午後4時に発表された数字では、来場社数で前年比70パーセント増、来場人数では同55パーセント増。
 記者会見で、フランス婦人プレタポルテ連盟のインターナショナル・プロジェクト・ディレクターのアンヌ・ロール・ドゥリュゲさんは、「日本は大切な貿易パートナーで、2023年には4月までで前年比38%増の8位にランクインしています。一方、フランスのプレタポルテ市場は、今夏のバーゲンセールの効果が以前ほどではなかったのですが、総じてコロナ前の水準に回復しました。日本を含めて世界全体に向けて輸出に力を入れていきたい」と語りました。

 今期出展企業の中から、新規出展のレディス3社、メンズ3社を紹介します。

グレース・アンド・ミラ(Grace & Mila)
 2011年にブランドを立ち上げたファミリー企業で、今回、初出展のレディスブランドです。アジアで販路拡大を目指し、Sよりも小さいXSサイズを増やしたといいます。
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 24年春夏テーマは「旅行」で、太陽と海、エスニック調をイメージしたコレクションです。

ヴェ・ド・ヴァンスター(V. de. Vinster.)
 コロナ禍前は売り上げの50%が日本とのビジネスで占められていましたが、今は30%に減少してしまい、日本市場強化のため、初参加したといいます。
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 「旅への誘い」をテーマに、タイ・アンド・ダイ、イカット柄、ブロックプリント、またパッチワークやハンド刺繍、インディゴなど、民族伝来の素材や製法で制作されたコレクションです。

パ・ズュヌ・マルク(Pas Une Marque)
 日本での販路拡大のため初出展。メンズブランドですが、ユニセックスでもあるといいます。ルネ・マグリットの絵画モチーフのプリントアイテムなど、単なるレーベルに止まらない、既成概念にとらわれない哲学的精神でモノづくりに取り組んでいるというラグジュアリーストリートウェアブランドです。Img_68471_20231003152001

ザ・ハイドアウト・クロジング(The Hideout Clothing)
 パリが本拠地ですが、2018年にカリブ海の島国、トリニダード・トバゴで立ち上がったメンズ・ストリートウェアブランドです。マレ地区に200㎡のブティックをオープンするとのことで、日本のバイヤーにアピールしようと初出展したといいます。
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 今シーズンはカリブのスラム街の重々しい雰囲気とパリの軽やかな雰囲気をミックスしたデザインですが、いつか日本とのカルチャーミックスも手掛けたいと話していました。

アリストー(Aristow)
 20年以上前、2人のスポーツとファッションの愛好家の若者が立ち上げたスポーティなメンズウエアのブランドです。
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 ブランド名はギリシャ語で「より良い」という意味で、ゴルフ、セーリング、テニス、ポロなどをテーマに、来年のパリ五輪を意識させるコレクションを見せていました。韓国でライセンス展開していて、日本でもライセンスの相手を見つけたいと初出展したといいます。

ヴェルティカル・ラクセソワール(Vertical l’Accessoire)
 2015年に設立したという、サスペンダーやブレース、ベルト、携帯ストラップ、財布などを製造販売するブランドです。
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 使用されている皮革はEPV (Entreprise du Patrimoine Vivant)指定ラベル、つまり日本の無形文化財(国宝)に当たる企業のものといいます。生涯保証の製品を提供しているとあって、初日から注文があったそうです。

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2023年9月17日 (日)

イデー ブランドディレクター「ライフ イン アート」を語る

 コロナ禍以降、人々のライフスタイルは多様化し、インテリアブランドにとっても変化が求められる時代になりました。これまでのような家具・雑貨販売から、これからの豊かな暮らしを創作するきっかけや気づきを「もの」や「こと」を通して提案する方向へと転換するインテリアショップが増えています。
 その代表的なショップが、株式会社無印良品が運営するイデー(IDEE)です。先般、同ブランドが目指す「ライフ イン アート Life in Art(美意識のある暮らし)」を語るセミナーが催され、イデー ディレクター 大島 忠智氏が登壇しました。

 イデーとはフランス語でIDEE=理念です。ブランド創設は1975年で、当初はアンティークショップとしてスタートしたそうです。1980年代前半から「生活の探求、美意識のある暮らし」をコンセプトに、オリジナル家具や雑貨を制作販売するようになり、ショップは現在、関東中心に9店舗、無印良品の中に約40店舗、さらに海外の無印良品5店舗で展開されているとのことです。そこには生活を心地よくしてくれるものをセオリーにとらわれずに選び、表現し、それをかたちにしてきた歴史があるといいます。
 「ライフ イン アート」プロジェクトが立ち上がったのは2011年で、以来、美意識に囲まれた生活が豊かさにつながるとの想いから、“日常芸術”に力を入れているとのこと。そしてこのことがまさにイデーの強みになっている、と強調します。

 氏は直近の主なイベントを紹介しました。
 一つは、2019年に開業した「イデー東京」ギャラリーで、今夏、開かれていたアイルランドのセラミックアーティストのデレク・ウィルソンの作品展です。
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 私も見てきましたが、ものを入れるという機能を持ち、身近な生活の道具を連想する“器”を、抽象的なフォルムへと発展させたオブジェが印象的な展覧会(上の写真)でした。売却済のものも多く、盛況理に幕を閉じたようです。

 もう一つは、この4月末から6月、東京・銀座の無印良品で開催された日本のモダンデザインに焦点を当てた「東京モダニズム2023」。ムジ・ホテル・ギンザの客室を期間限定のショーケースにした特別展示&販売会には、国内の約30のギャラリーやヴィンテージショップが参加し、世界中のヴィンテージのモダンデザインが一堂に集結。個性豊かなオーナーたちの審美眼で見出された優れたデザインプロダクツが揃い、デザイナーや作り手が生み出したものと次なる使い手が出会い、未来へ継がれていく場となったといいます。

 さらにこの4月、伊勢丹新宿店でポップアップストアをオープンした“ハンド バイ プール(H& by POOL)”も注目です。これは「ミナ ペルホネン(MINA PERHONEN)」の皆川明デザイナーが監修したシリーズのコレクションで、生産現場や倉庫で生まれた残反や残糸、端切れなどを活用し、日本のものづくりで仕立てたアップサイクルな衣服を取り扱うプロジェクトです。サステナブルの観点からも期待されます。

 この他、2011年より発刊されていて只今休刊中のインタビューマガジン “ライフサイクリング ” や、様々な暮らしのあり方を発信するウェブメディア “アート アンサンブル オブ ライフ ” など、実例を挙げながらのお話は大変興味深いものでした。

 生活の中にアートを取り入れて、少しでも豊かな暮らしを!と呼びかけるイデー、今後の取り組みが楽しみです。

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2023年9月16日 (土)

2024年ヒットのキーワード 雑貨・食・ファッショントレンド

 今年、2023年はようやくコロナの呪縛が解けた年です。価値観やライフスタイルが大きく変化して新しい消費行動が生まれています。
  Img_85112                   (今夏の東京・表参道の街角風景)

  こうした折り、先般のライフスタイル Week夏展で、(株)日経BP 総合研究所 客員研究員 (日経エンタテインメント!創刊編集長) 品田 英雄氏による「先取り!2024年 ヒットのキーワード~雑貨・食・ファッションのトレンド予測~」と題したセミナーが行われました。
 氏は『日経エンタテインメント!』の創刊編集長を務め、30年以上に渡り、流行や世の中の気分を見つめてきたという人物です。2024年に向けて、リベンジ消費は本当にきているのか、人が引き寄せられるのはどのような匂いなのか。「ヒット誕生」のヒントとなるキーワードを端的に語られました。

 まず全般的なトレンドです。
● グローバリゼーションの影響: 世界が近くなり、国際的なつながりが強まっている。
● DX技術の進化: デジタル技術の発展により、生活がデジタル化されている。
● 情報の過多: 商品やコンテンツが過剰に提供され、何がどこにあるかが分かりにくい状況。

 次に生活者の消費傾向としては―
● コト消費・トキ消費: 全ての商品がモノ本来の機能ではなく、ストーリーが大切で、エンタメ化が進んでいる。どんな空気をまとうと売れるかがポイント。
● タイムパフォーマンス志向: コスパより時間が貴重で、迅速なサービスや商品が求められている。
● ネットとリアルのハイブリッド:  何でもネットで済むようになり、リモートワークもあって時間が自由になった。とはいえやはりリアルがよいという声も強く、ライブコンサートやお祭りが盛んになるなど、リアルの価値が上昇している。
● 二極化: 高額品や株式にお金が流れる一方、ニトリやサイゼリアなどインフレや円安で値頃なチェーンが人気。消費行動はより安く、買いやすいものを求めるグループと、価格にこだわらない、他と違うモノやコトを好むグループで2極化が顕著になっている。
  コロナ5類移行で、旅行やスポーツ観戦、映画、エンタメ、リアルな買い物を楽しむ人が増えたが、爆発的というほどではなかったのは、積極的に出たい人と出たくない人の二極化が起きているからとも。

 さらに食と雑貨とフッションのヒットのキーワードを紹介しました。
< 食 >
  「メインストリーム」手間をかけずに美味しい食事が提供されること。
  「サブ」健康志向が高まり、ダイエットや低GI値などに焦点を当てた食品が人気。
  「注目」ベトナム風料理。

<雑貨>
  「メインストリーム」ナチュラル感があり懐かしさを覚えるアイテム。
  「サブ」他の人が持っていない、独自性のあるアイテム。
  「注目」レトロ。手間がかかっても楽しい、非日常の世界。 

 <ファッション>
  「メインストリーム」白黒、目立ちたくない。
  「サブ」コスプレ感覚。ハリポタのコスプレやオペラや歌舞伎に着物で行くなど。
  「注目」エシカル。環境問題への関心。

 最後に、ヒットを生み出すのは難しいが、ターゲットを明確にし、自身の顧客層との繋がりやコミュニケーションを重視することが成功の鍵。商品やサービスが特定の顧客に受け入れられるかどうかを真剣に考えることが大切、と述べて締めくくりました。

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2023年9月15日 (金)

Z世代消費行動と攻略のコツ~スマホ世代のニーズとは~

 先般開催された「ライフスタイルウィーク夏」で、マーケティングアナリスト/芝浦工業大学教授 原田 曜平氏が登壇するセミナーに参加しました。3nxxnc11qng59enzinsitex0hn0gr9xnzzvutmka 題して「Z世代の消費行動と攻略のコツ ~スマホ世代のニーズとは?~」です。
  「Z世代」とは90年代半ば以降に生まれたとされる世代です。彼らにとって人生一台目の携帯はスマホであり、複数のSNS(X、インスタ、TikTok)を使いこなします。また40年以上続いている少子化により、入学・進学・就職において引く手数多の人たちでもあります。
 Z世代の特性を知ることは将来の消費者を掴むこととイコールで、ファッション業界にとっても重要なターゲットです。同時に、Z世代の人口は少ないもののSNSにおいて圧倒的な利用率を誇り、企業が商品情報を拡散する上で手を組むことは、大きな可能性を持っています。
   氏は若者研究の第一人者で、Z世代に関する著書も多数出版されています。そんな氏の講演は、次なるマーケット戦略への一助となる大変興味深い内容でした。下記に概要を簡単にまとめてみました。

 まずZ世代の時代背景です。
 一つは、少子化と超人手不足社会です。人口は110万人と、その前のゆとり世代の120万人よりも少なく、競争が少ない。上の世代に比べ就職状況がよい。何もしなくても“食いっぱぐれ”はないし、福利厚生も手厚い、超ラッキーな世代です。
 そんな恩恵を思いっきり受けて育ってきたタイプの人たちですので、マイペースでゆっくりと居心地よく、「まったり」と過ごせればよい、「チルアウト=chill out冷静、落ち着き」の文化である「チル」意識の持ち主といいます。
 もう一つは、根っからのデジタルネイティブです。スマホ所有率はほぼ99%で、SNS人口はどの世代よりも大きく、とくにインスタとTik Tok利用率が高い。「インスタ映え」投稿をするのはこの世代で、テレビ離れが進み、YOUTUBE視聴は74.5%と初めてテレビを抜きました。
 子どもの頃から周囲に注目されて育ったZ世代は、自己表現力に長けていて、SNSを通じた自己承認欲求の強い世代、「ミー=me 自意識過剰」な人たちなのです。
これから自社ブランディングを広げたいなら、彼らと組む必要があります。彼らにアプローチするためには、彼らの特性である「チル」&「ミー」に刺さるマーケティングが重要と強調しました。
 ちなみに最近よく言われる環境意識について伺ったところ、日本では関心があるというZ世代は約13%と低いそう。欧米は地域にもよるとのことですが、平均約30%が意識しているといいます。日本の若い世代で低いというのが意外でした。

 次にZ世代の消費行動をそのニーズを解き明かしながら解説しました。
① 「チル」 ― 「まったり」の方向へ誘う「リラクゼーションドリンク」や「水タバコ」ブーム、夜ピク、サウナ、「ホテル」と「バカンス」を合わせた「ホカンス」など、「映え」目的のものも。
②「ミー」 ― 間接的に自慢する。例えば親自慢などして「イイネ」をもらい自己承認欲求を満たす。またカスタマイズしてセンスの良さを認めてもらうなど。
③親子や友達との絆を認め合う消費 ― 親子で押し活やデートするなど、絆を再構築。
④海外疑似体験 ― 韓国ブームや中国ブーム、米国影響のビーガンなど。
⑤「推し」  ―  昔のオタクと比べると規模が大きいが、より浅く広いが特徴。
⑥ニューレトロ ―  レトロではない横丁や居酒屋ブーム。
 次々に飛び出す新語からは、これまでとは明らかに異なる消費行動の変化が読み解けました。

 Z世代の自意識や彼らを取り巻く社会の価値観を垣間見えたように感じたセミナーでした。

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2023年9月14日 (木)

第18回ライフスタイルWeek 夏 「環境配慮」製品に注目

 第18回「ライフスタイル Week夏」が7月19日~21日、東京ビッグサイトで開催されました。雑貨・文具・ファッション・美容・インテリア・食器の商談展で、関連9展で1,000社が出展、とくに「韓国・中国・台湾」をはじめとしたアジア諸国や、「ウクライナ・ポーランド」などのヨーロッパ諸国、さらには「インド」や「ブラジル」など、海外勢の出展が目立ち、前回比1.5倍の規模に拡大して行われました。
 来場者数は31,925人と発表され、初日朝から活発な商談風景が見られ、盛況理に閉幕したといいます。

 多種多様な商材があふれる中、注目したのは「環境配慮」のファッション製品でした。気になったものをいくつかご紹介します。

「服の鉛筆」 (株)ミヤモリ  
 洋服を作る際に発生する裁断くずを間接過熱して、生地から炭を製造し、“鉛筆の芯”とした鉛筆です。これにより年間20トンの裁断くずを再利用できるそうです。Img_67871
 日本文具大賞2023サステナブル部門で優秀賞を受賞し、今後ヒットの予感!? がします。

「ヒビノワ HIBINOWA」 アンドウ(株) 
 Img_68031pg  
 京鹿子絞りを中心とした絞り染めから始まった京都の和装小物メーカーによるブランドで、京都の伝統美と現代のスタイリングを調和させた、新しい「和」の商品を提案しています。そこには細部まで職人の緻密な手仕事が詰め込まれているようでした。
 Img_68111_20230920175701  
 同社はラオスでの「ガラ紡」事業も手掛けています。上はガラ紡による製品です。
 自然と共生する原料を使用し、環境に配慮した作業工程で、手工芸の良さを伝える製品に取り組む、使命感あふれるビジネスに感銘しました。

「Pure Waste」 (株)三栄コーポレーション
 衣料品の製造工程で出るコットンの端材、端切れをリサイクルして服に作り直す、フィンランド発のアパレルブランドです。端材を色ごとに集めて再利用しているため、更なる染色の必要がなく、水質汚染の原因となる薬剤も一切使用していないといいます。
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 廃棄物に対する認識を変える、ステキなブランドです。

「マユケットmayu-ket」 米阪パイル織物(株)
 「柿渋」染めの温かいコットンケットです。つくっているのは和歌山県高野口の綿パイル織物メーカーです。綿という素材の特徴を熟知している同社は、パイル織物で「マユ」を思わせるデコボコのウェーブをつくれば、より保温性の高い、しかも軽い毛布ができると確信し、開発したといいます。Img_67991
 コットン100%なので、肌触りが良くて軽くて蒸れません。しかもあたたかくて静電気も発生しにくく安心です。これならきっと、これまでの一般の綿毛布で満足されていないお客様にも、満足していただける、と思いました。

「縫心 (NUIKO ぬいこ)」 (株)小林縫製工場
 「縫う」と「穿く」を極めた女性の下着を創り続けて50年という、栃木の老舗縫製工場のブランドです。
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 とくに「百年ショーツ」は、とちぎデザイン大賞を受賞した究極のスタンダードショーツで、手縫いによる立体的パターンを実現する縫製技術は同社の誇りと、アピールしていました。

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2023年9月13日 (水)

24プレ春夏「ネスト」合同展 プリント含む3ブランド出展

 2024春夏プレコレクションを発表するネスト クリエーション ラボ主催ファッション合同展「ネスト」が、7月18日~20日、東京・代官山のスピークフォーにて開かれました。
 出展したのは、「トーゲントーゲン(TOHGEN TOHGEN)」、初出展の「ゾエル(ZOELLE)」それに朝日染色「ソレヴァンテ1918 ( Sol Levante 1918)」の3ブランドです。
 いずれも現代女性の凛(りん)とした姿勢を感じさせるコレクションで、テクスチャーや加工の手法、グラフィックモチーフなどに、独自のアイデンティティーを持っています。

ゾエル(ZOELLE)
 元イッセイ ミヤケのプリーツプリーズのヘッドデザイナーだったゾーイ・チェンの( Zoe Chen)が立ち上げたブランドです。
 2_20230917174201 今回が初のお披露目でした。
 西洋のモダンなシルエットとアジア的スペクタクルの融合を感じるコレクションです。
 ランダムなプリーツ使いのシルエットは踊っているかのよう。
 色味のしっかり入ったグラフィカルなプリントデザインも目新しく映りました。Img_67351

ソレヴァンテ1918 ( Sol Levante 1918)
 ミラノウニカにも出展している朝日染色のプリント生地・製品の企画提案・営業を行なう事業部が、本展示会にも出ていました。
 10万柄を越えるというヴィンテージデザイン資料のストックを元に、トレンドのカラーやオリジナルの感覚を取り入れた独自企画が、デザイナーブランドに好評の様子です。

トーゲントーゲン (TOHGEN TOHGEN)
 しなやかさを持ちながらも、現実を見て生きる大人の女性の心に寄り添うコレクションを発表しています。
 Img_67281 オリジナル素材にこだわっていて、とくにソレヴァンテ1918のプリント生地を使用したデザインはファッションの夢を誘うようです。魅力的なアイテムが揃っていました。

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2023年9月12日 (火)

「インドトレンドフェア東京2023」持続可能な製品目立つ

 第12回目を迎える「インドトレンドフェア東京2023」が、7月中旬、ベルサール渋谷ガーデンで開催されました。最近、インドと取引されている企業の方と知り合ったこともあり、私も様子を見に、初めて訪れました。
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 出展したのは、インドのテキスタイル・アパレルメーカー約180の企業・団体です。提案していたのは、アパレル主体にアクセサリーやテキスタイル、それにホームファッブリックやインテリア分野の商材も見られました。とくにリサイクルやアップサイクル、GOTS認証などオーガニックで持続可能な製品を打ち出している企業が目立っていたのが印象的でした。

 インドのアパレル エクスポート プロモーション カウンシル(AEPC)会長のナレン・ゴエンカ氏は次のようなメッセージを発信しています。
 「日本の貿易は今『インディアンブーム』に湧いています。良好な政治情勢もあり、両国間の貿易はインドから日本へのアパレル輸出を後押しするとみられています。
 日本のアパレル輸入は過去5年間でプラスとなっています。中でも増えているのがインドから日本への輸出で、インドのシェアは2018年に0.89%だったのが、2022年には0.96%に増加しました。インド企業は、日本市場において自社を強化することで戦略的輸出パートナーシップを拡大することに注力しています」と。
 またインドのアパレル産業は新たな貿易促進制度により、インド政府から多大な支援を受けており、海外直接投資を強化、さらに輸出を伸ばすことを期待されているそうです。「インドブランドの製品は、持続可能であり、すべての社会的、環境的コンプライアンスを満たしている」と、語られていたのも、勢いを感じました。

 インドから日本へ、熱い視線が送られていた展示会でした。

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2023年9月11日 (月)

「木村英輝 EXHIBITION 大人のストリ―トア―ト」展

 この7月、銀座ポーラ ミュージアム アネックスで開催されていた「木村英輝 EXHIBITION 大人のストリ―トア―ト」展に立ち寄りました。
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 出迎えてくれたのは、入り口から通路いっぱいに広がるたくさんの「鯉の滝登り?」の絵でした。「Carp in Dragon in Heaven」と名付けられています。
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 ギャラリーには魚や鳥や伝説上の不思議な動物たちをモチーフにした作品がいっぱい! でした。
 生き物たちをこんなに生き生きと楽しく描く画家がいるとは、驚きました。それが木村英輝氏で、絵筆をとったのは還暦を過ぎてからだったそう。それまではロックミュージックのプロデューサーとして活躍されていたといいますから、異色のキャリアの持主ですね。 
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 その一番奥に展示されていたのが上の写真の板戸です。親交のあった女優の樹木希林さんの依頼を受けて制作したもので、娘の内田也哉子さんが「蘇る蓮 Lotus revives」と命名した本邦初公開の作品といいます。

 ロックとともに歩まれてきたこそのリズム感や躍動感にあふれた作品の数々---、元気をもらって会場を後にしました

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2023年9月10日 (日)

グッチ銀座 羽生結弦さんをフィーチャーした写真展

 グッチ銀座7階にグッチギャラリーがオープンし、その柿(こけら)落としとして、この夏、エル・ジャポン誌8月号に掲載されたプロ フィギュアスケーターの羽生結弦さんをフィーチャーした写真展「YUZURU HANYU: A JOURNEY BEYOND DREAMS featured by ELLE」(撮影 : TAKAY氏)が開催されました。
 羽生結弦さんと言えば皆誰もが知っているトップアスリートです。私も“ユヅリスト” というほどではありませんが、隠れファンの一人です。
 入場はラインによる完全予約制で、少人数ずつ入る仕組みでしたのでじっくり見ることができました。
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 ギャラリーは白で統一されたシンプルな空間です。そこに羽生結弦さんの色を抑えた写真が架かっていました。床は磨かれてピカピカなので写真が反射して見えます。
 躍動感あふれる、流れるような一瞬の動きをとらえたショットや、きりりと引き締まった面持ちのクローズアップ、鋭い視線の中にある優しい柔和な表情など、20点ほどのポートレートが展示されています。奥にはミニシアターもあり、撮影シーンをまとめたスペシャルムービーも鑑賞しました。
Img_66931  そこにはテレビで見るのとはまた違う羽生結弦さんがいて、その存在感に圧倒されました。

 この階を降りると、羽生結弦さんが着用したグッチのスーツの展示(右写真)が行われていて、興味深く拝見しました。

 ついでにお店を見て回ったりして---、こんな風に本展はグッチ銀座の来客数増加につながる展覧会でした。PRの上手なやり方、さすがグッチです。

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2023年9月 9日 (土)

パリ 造花カフェ・レストランがあちらこちらに

 パリではファサードをお花 (といっても造花ですが) で飾ったカフェ・レストランがあちらこちらに増えています。
 これは昨年秋頃からの現象で、この2月にマレ地区を訪れた時に気づいたことでした。
Img_93321_20230915111201  上は、メトロのサン・ポール駅すぐ近くのラ・ファヴォリットというブラッスリーです。あふれんばかりのピンクの花々に囲まれていて、入ってみようかな、と思わせられました。

 今回宿泊したホテルの前にあるカフェ・レストランも造花がキュートでした。
 パリもコロナ禍で店が減ったといいます。人出不足も深刻らしく、人がなかなか来てくれなくてしびれを切らして出てしまったこともありました。
 それでも少しでも外観を華やかに見せて、集客を図ろうと必死のカフェ・レストランです。それが功を奏してか、ホテル周辺は夜中零時を過ぎても人がいっぱい。すっかりあのパリの喧騒が戻っていました。

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2023年9月 8日 (金)

パリからメゾン城へ 「バロック・マジック」展

 この7月初め、パリに滞在したある日の午後、パリから郊外線に乗って北西部のメゾン・ラフィットに行き、徒歩10分ほどのメゾン城を訪れました。持ち前の好奇心から、興味を持ったのは、このお城で開催されていた「バロック・マジック」展という展覧会でした。
 会場となっていたお城の地下室に入ると、そこにはバロック時代の不思議な世界が広がっていました。
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 展示されていたのは魔女たちの魅惑的なインスタレーションで、ルネサンスからバロック文学作品に登場する3大魔女にスポットが当てられています。
 ホメロスの『オデュッセイア』でユリシーズを誘惑しようとする妖女「キルケ」、イタリアの叙事詩『狂えるオルランド』に登場する魔女「アルチーナ」、イタリアの詩人ル・タッセが創作し、敵のルノーと恋に落ちる「アルミード」。共通点はいずれも恋する女性であり、拒絶される女性であること。彼女たちは力強く、牧歌的な王国が破壊されたり損なわれたりする前に、その王国の頂点に君臨し、その後恐ろしい存在に変身して堕落していく...。

 当時の宮廷のバレエやスペクタクルで、魔女が果たした役割が偲ばれる展示で、光と音声がその神秘的な雰囲気を一層盛り上げていました。

 本展を見学後、メゾン城内を巡りました。
 この城は1630年から1651年にかけてフランソワ・マンサールによって設計されたフランス・バロック建築の代表例で、あのベルサイユ宮殿を建てたルイ14世がモデルにしたお城でした。ルイ14世が実際に滞在したとのことで、重厚な暖炉の上にはイアサント・リゴー(1659-1743)作のルイ14世の肖像画の模写が架かっていました。Img_50101 
 バロックという時代に誘われて、一時のタイムスリップを楽しんだひと時でした。

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2023年9月 7日 (木)

パリ ケ・ブランリ美術館「もののけ姫」タピストリー初公開

 この夏限定で宮崎駿監督のアニメ映画「もののけ姫」の一場面を織った大型タペストリーが、ケ・ブランリ美術館にて初公開されました。

 話に聞いていたのですが、私も行ってみて、その大きさに驚きました。高さ5メートル、幅4.6メートルもある大作でした。
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 Img_49521 深みのあるタペストリーの前に立つと、森の中に引き込まれそうになります。そこには「腕についた呪いの傷を癒すアシタカ」のシーンが描かれていて、「大丈夫?」って声をかけたくなりました。

 そんなインパクトのあるタペストリーを制作したのは、フランス中部クルーズ県にあるオービュッソンという町の工房です。「オービュッソンのタペストリー」として2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。

 今回の展示は、オービュッソン国際タピスリーセンターとスタジオ・ジブリによる「オービュッソン、宮崎駿の空想世界を織る」プロジェクトの全5作のうちの第1作目だそう。昨年完成し、既に「千と千尋の神隠し」の1場面、「ハウルの動く城」の2場面を合わせた計4枚が織り上がっているとのことです。現在5作目の「風の谷のナウシカ」を制作中で、来年後半に完成の予定とか。

 それにしても大変細かい緻密な作業です。大木の幹の表面は太目の毛糸で粗い感じに、岩肌は麻糸を用いツルッとした鉱物的な質感に表現されていたりして、そのすばらしい職人の技に感銘しました。

 宮崎監督の永遠の名作タピスリー、来日が楽しみです。そのときは日本中が大騒ぎになりそうですが---。

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2023年9月 6日 (水)

パリで「サラ・ベルナール:スターを生み出した女性」展

 パリでは、「サラ・ベルナール:スターを生み出した女性」展が開催中でした。すぐに予約して会場のプティパレを訪れました。

 プティパレは1900年パリ万博の際に建築された古代ギリシア様式を取り入れた格調高い建物です。1844年に生まれ1923年に没したサラ・ベルナールは、この建物が建てられるのを横目で見ていたことでしょう。当時は「ベルエポック」と呼ばれた時代でした。今年は、このベルエポック期に世界初の国際女優として活躍したサラ・ベルナールの没後100年です。プティパレではこれを記念して本展をオープン。私としてはどうしても見逃がせない展覧会でした。

 展覧会場はベルエポックさながらの演出、19世紀末から20世紀初頭を彷彿とさせていました。

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 中でも目を惹いたのがサラ・ベルナールの肖像画の架かったサロン風のインスタレーションでした。

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 上は、サラ・ベルナールの肖像画(1876)で、ジョルジュ・クレラン制作のもの。サラは32歳頃だったそうです。前をじっと見つめる青い大きな瞳は自信にあふれています。何が何でもやってやる、という不屈の精神を感じさせて、さすが大女優の風格と思いました。後で「quant meme(それでも)」という言葉が彼女のモットーだったと知り、さもありなん、でした。

Img_49311jpg  「クレオパトラ」(1890)を演じたときの舞台衣装です。煌びやかなゴールドで、さぞゴージャスに映えたことでしょう。

Img_49211  サラ・ベルナールはアルフォンス・ミュシャと6年の契約を結び、数々のポスターを制作しています。
 本展にもそのポスターがたくさん出品されていました。

 その一つが、右の「椿姫」です。
 ミュシャがまだ無名だった頃の作品です。

 ミュシャの名が一気に世界に広まったのは、このポスターがきっかけだったといいます。

 Img_49331_20230912145701  上は、「ジャンヌダルク」(1890)の舞台衣装です。繊細な刺繍が往時を偲ばせまていました。

 「パリ散歩」でステキな動画を見つけました。ご覧ください。

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2023年9月 5日 (火)

パリのチュイルリー駅がボタニカルにリニューアル!

 最近、パリではメトロの駅がアートなモチーフに彩られて、ステキな空間に変身しています。駅は乗客がアートと出会うユニークな場所と捉えられているのです。
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 チュイルリー公園のあるチュイルリー駅は、ボタニカルな図柄でリニューアル!されていました。壁面全体が巨大な植物図鑑でも見ているかのようです。公園の緑の風を感じる意匠で、暑さが和らいだ気がしました。
 これもエコを促進しているパリ市だからこその都市デザインと、納得です。

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2023年9月 4日 (月)

パリ 装飾芸術美術館 「髪と体毛」展

 パリの装飾芸術美術館で開催されていた「髪と体毛」をテーマした、ちょっと珍しい、でもワクワクする企画展に行ってきました。

1_20230911170201  常に生え変わる髪や体毛。そのあり様は、実は私たちの社会と身体を支配する多くのルールの象徴であり、宗教や政治、ファッション、健康、世の中の動きとともに変化しています。
 本展は15世紀から現代まで、時代や社会の意識とともに移り変わってきた髪型や顔のうぶ毛、体の毛の歴史を探りながら、人々がどのような意識で採り入れ、描写してきたかを読み解く展覧会でした。展示総数600点以上という大規模展です。マリー・アントワネットのお気に入りのカリスマ美容師であるレオナール・オーティエから、カリタ姉妹、ヘアアクセサリーのアレクサンドル・ド・パリなど、昔も今も続く職業と技術が、その象徴的な人物とともに紹介されていました。 

 展示は全5章構成で、その内容を章別にまとめてみました。

第1章「モードと奇抜さ」
 ここでは女性の髪型の変遷が焦点です。
Img_48011  中世では15世紀頃まで、聖パウロの戒めに従い、女性にはベールの着用が義務付けられていましたが、徐々に女性たちはベールを捨て、新しい奇抜な髪型を採用していきます。
 17世紀末には、ルイ14世の愛人にちなんだ「フォンタンジュ」(右の写真)が大流行します。そして18世紀後期には「プーフ」と呼ばれた高く結い上げた巨大髪型が出現しました。 
 19世紀初期には、古代ギリシャに触発された髪型が登場、中期には巻き毛が全盛となり、後期にはロココを再現したような「ポンパドゥール風」と呼ばれる髪型など、様々な精巧なヘアスタイルが現れました。

第2章「毛か、それとも無毛か」
 中世には、顔の無毛が主流でしたが、1520年ごろになると、ひげが勇気と力のシンボルとして台頭します。

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 16世紀初頭には、フランソワ1世、ヘンリー8世(上の写真)、カール5世など、西洋の三大君主が若くして、ひげを持つことは男らしさと戦士の精神を表すものとされるようになります。
 1630年代から18世紀末までは、無髭の顔とかつらが宮廷社交界の男性のスタイルでした。顔の毛は19世紀初頭に再び到来、口ひげやもみあげ、ひげが一般的になります。この時代は男性ファッション史上、最も毛深い時代だったとされています。ひげや口ひげに対する熱狂を示す多くの小道具(ひげ固定具、ブラシ、パーマ用のアイロン、ワックスなど)が登場しました。
 20世紀になると、ひげ、口ひげ、無髭のスタイルが繰り返し現れるようになります。現代は、ひげを薄くする方向にシフトしていますが、1970年代以来見かけなかった口ひげが再び人気となるなど変化が見られます。
 また体の他の部位の毛を保持、除去、隠す、または公然と表示する選択も、展示されていました。古典絵画ではつるつるの体が理想の体を表す一方、毛深い体は男らしさや下品さと結びついていたといいます。
 現代では1970年代に、男性の体毛やそれに伴う男らしさが堂々と表現されるようになりましたが、しかしそれまでは、とくに50年代に多毛は時代遅れとされていたのです。21世紀に入り、裸で写真を撮るスポーツ選手たちは、厳密に整えられた体毛を持つようになっています。

第3章「自然と人工の間で」
 髪を整えることは、個人的な行為であり、良家の女性は髪が乱れている姿を公然と見せることはなかったといいます。

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 1864年にフランツ・クサーヴァー・ウィンターハルターによって描かれた、皇后エリーザベト(通称シシー)が部屋着姿で髪を解いた絵(上の写真)は、厳格にフランツ・ヨーゼフの個人の部屋に飾られていたそうです。
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 また非常に若い頃に禿げてしまったルイ14世(上の写真)も、いわゆる「生えている髪」のかつらを着用し、宮廷にそのスタイルを広めました。
 20世紀には、アンディ・ウォーホルも同じ経験をしたといいます。彼が禿げを隠すために着用したかつらが、芸術家のアイコンとして称えられたのです。現代では、かつらやかつらのような髪の付け毛は、ハイファッションやファッションショー、そしてもちろん、髪の薄毛を補うために使用されています。
 また、髪の自然な色とその象徴性についても研究が行われ、髪の色が伝えるメッセージが解説されていました。ブロンドは女性や子供の色であり、赤毛は誘惑的な女性や魔女、そして一部の有名な女優に関連付けられています。黒髪やブラウンヘアは強い気性を示すものとされていたとか。19世紀の実験的な髪の色付けから、1920年代以降の確立された染料まで、人工的な髪の色のプレゼンテーションも見られました。

第4章「美容関連の職業と技術」
  髪や毛のケアに関連する様々な職業、理髪師や理髪師兼外科医、髪をスチームで整える人、かつら師、女性の髪をセットする美容師などと、古文書や様々な小道具、看板、ツール、美容機器、さらに1920年代の驚くべきパーマネントマシンなどの機械の展示も行われていました。
 美容関連の技術はとくに1945年にフランス高級美容術(Haute Coiffure Francaise)グループが創設されたことにより、芸術的な分野へと高められ、フランス独自の技術として確立したといいます。この高級美容術は今では一流ファッションブランドのショーやトップモデル、ショービズで表現され、進化している様子です。 

第5章「100年の髪型を振り返る」
 このセクションでは、20世紀と21世紀のアイコニックな髪型を振り返ります。1900年代のシニョン、1920年代のボーイッシュ・カット、1930年代のパーマとウェーブ、1960年代のピクシーカットとビッグヘア、1970年代のロングヘア、1980年代のボリュームのある髪型、1990年代のレイヤーカットとブロンドのハイライト、ナッピーヘア(黒人女性の髪型)など、時代を代表するヘアスタイルの数々がディスプレーされていました。
 中でも興味深かったのは、特定のグループに属することを表明する髪型で、パンクのモヒカンやグランジの乱れた髪、スキンヘッドの坊主刈りなどです。社会や既存の秩序に対抗する政治的、文化的な表現として機能し、社会的なメッセージを発信する重要な要素となっていました。
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 最後が現代のデザイナーによる実験的な試みです。そこに見られたのはマルタン・マルジェラやジョセフス・ティミスターらによる、髪の毛をファッションの対象に昇華させたコレクション(上の写真)でした。
 他人の髪を着用するという不気味な行為は、反道徳的ではと思われてきましたが、彼らはいともたやすくこの迷信を断ち切ったのです。

 本物であろうと人工であろうと、毛髪の可能性は大きいと感じた展覧会でした。

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2023年9月 3日 (日)

ルイ・ヴィトン財団 「バスキア×ウォーホル 4本の手」展

 パリに来て、この春からフォンダシォン・ルイ・ヴィトンで開催されていた「バスキア×ウォーホル 4つの手」展を訪れました。猛暑が続いているときでしたが、来場者が多く、会場はかなり混んでいました。

  本展はジャン=ミシェル・バスキア(1960-1988)とアンディ・ウォーホル(1928-1987)という二人のアメリカ人アーティストが、1984年から1985年にかけて、制作した約160点を展示する展覧会です。

 1_20230910193901 タイトルの「4本の手」はこれらの作品群が二人の協働によるものであることを表しています。
 架かっていたのは、広い壁を埋める巨大な大作です。その一つ一つに二人の深い友情が感じられ、何とステキなこと! と思いながら鑑賞しました。
 実際、バスキアは、ウォーホルをアートの世界の重要人物でありポップカルチャーを開拓した年長者として賞賛していましたし、ウォーホルは、バスキアの中に絵画への新たな関心を見出し、非常に大きなスケールの絵を描くようになったといいます。

Img_47571_20230910192201  上の写真左手前は、バスキア×ウォーホルの“ZENITH” (1984- 85)と名付けられた作品です。2014年のオークションで1145万ドルで落札され、ポップアートの中では最高額を記録した作品の一つといいます。

Img_47851_20230910192401  上は、バスキア×ウォーホルの“エッフェル塔” (1985)です。来年はパリ五輪の年とあって、主催者が二人のフランス愛を象徴するような作品を出品したのかなと思いました。

 お互いの自画像も出品されていて興味深かったです。

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 Img_47701_20230910192201 上は、バスキアがウォーホルを描いた作品 (1984)です。
  当時ウォーホルは手術や暗殺未遂のために、体に多くの傷跡があったそうです。
 そんな傷ついたウォーホルを、バスキアはウィットを効かせて描写しています。

 右は、ウォーホルの作品(1984)で、バスキアをダビデ王として描いたもの。

 見どころはいろいろあって尽きないのですが、最後に印象に残った作品を紹介します。

Img_47651_20230910192301  それが上の“Gravestone(墓石)”です。

 1987年、ウォーホルは胆嚢手術を受けた際に、急に容態が悪化し、58歳で亡くなってしまいました。バスキアは彼の死を悼み、この作品を制作したといいます。でもそれなのにバスキアもウォーホルが亡くなった翌年に、薬物依存が酷くなって、27歳の若さでこの世を去ってしまうのです。
 1980年代のニューヨークといえば、エイズの出現や人種差別、暴力、宗教などで揺れていた時代でした。二人の類まれな作品には、当時のアーティストたちの悩みが窺えるようでした。
 アートシーンに彗星のように現れ、悲劇的な死を遂げたバスキア。その短い生涯で、永遠のインスピレーションとなり、アートの歴史に深い足跡を残しました。

 ウォーホルとの「4本の手」、久しぶりに心に響く感動を呼び起こした展覧会でした。

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2023年9月 2日 (土)

パリ イヴ・サンローラン美術館「シェイプ&フォルム」展

 パリのイヴ・サンローラン美術館では、毎回訪れるたびに時代を切り開いてきたイヴ・サンローランの作品展が開かれています。今回は、現代アートや幾何学的な構造に焦点を当てた「シェイプ&フォルム」展で、ドイツのアーティスト、クラウディア・ヴィーザーとコラボレーションした展覧会でした。
 クラウディア・ヴィーザーはカンディンスキーや パウル・クレーのような偉大な画家からインスピレーションを受けたと言われている作家です。幾何学的な形、色、質感を駆使して、美的で調和のとれたインスタレーションを作り出しています。

 館内にはヴィーザーの作品とイヴ・サンローランの象徴的な作品を融合した、形と創造性に溢れた空間が広がっていました。

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Img_46921  イヴ・サンローランのアトリエを再現した展示室には、有名なモンドリアンルック(1965年)が展示されていたのも印象的でした。
 幾何学的な構造により、色とりどりの曲線、直角、球体、折れ線など、二人のクリエイティブな世界観を堪能しました。

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2023年9月 1日 (金)

アズディン・アライア、アーサー・エルゴート Freedom展

 7月初めのパリで、アズディン・アライア財団にて開催されていたファッション&写真展「アズディン・アライア、アーサー・エルゴート Freedom」展を見てきました。
 アズディン・アライアはチュニジア出身で1950年代にパリに移住したファッションデザイナーです。強いタイトフィットでボディラインを大胆に強調したシルエットが一世を風靡し、1980年代のファッション界をリードしました。
 アーサー・エルゴートは1960年代、ニューヨークの店で買った最初のポラロイドで写真術に目覚め、その後ヴォーグ誌の偉大なディレクター、アレクサンダー・リバーマンに見出されて、名物編集者のグレース・コディントンとともに仕事をするようになったフォトグラファーです。
 ともにパリで1980年代に女性の「Freedom(自由)」を形作り、自己主張と自立に満ちた女性像の刷新に貢献しました。
 二人はパリで出会い、アライアはエルゴートのカジュアルでありながらきちんとしたスタイルに惹かれたといいます。エルゴートはそんなアライアにモノクロの写真で、即興性を表現した、楽しい生き生きとしたショットを提供しました。

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 本展では、80年代のアライア作品28点とその作品を着装したスーパーモデルを写したエルゴートの写真を並べて展示、二人の共作はまさに壮観でした。

 その一部をご紹介します。

Img_47151jpg  1987秋冬コレクション ボートネックのショート丈スケータースカートのドレスです。モデルはイギリス人ファッションモデルのナオミ・キャンベル。

Img_47131jpg  1987春夏コレクション ビスコースジャージーのアンサンブルです。モデルはイギリス人ファッションモデルのヤスミン・ル・ボン。

Img_47081_20230909200801  1988春夏コレクション ベージュ色のコットンギャバジンのコルセットとコットンのショーツです。モデルは「伯爵夫人」のあだ名で知られるオランダ人ファッションモデルのマルペッサ・ヘニンクです。

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