講演「Reconnectハイムテキスタイルのトレンドアーカイブ」
「インテリアライフスタイル2022」では恒例のライフスタイルサロンが開かれ、その一つ、「Reconnectハイムテキスタイルのトレンドアーカイブ」と題した対談形式の講演会に参加しました。 講師はハイムテキスタイル公式アンバサダー、ienotextile主宰 南村 弾氏で、聞き手は有限会社インテリア情報企画代表取締役 善明剛史氏です。
講演は南村氏が掘り起こしたハイムテキスタイルの膨大なトレンドアーカイブから、未来を探る、大変興味深い内容でした。
南村氏はまず、過去10年のアーカイブを振り返りました。次いでテキスタイルトレンドを「布の一生」というテーマで纏め、布を「人の一生」になぞらえて、3つのカテゴリーに分類し、その一つひとつを紹介しました。
それは⑴「ピュア」→⑵「グロー」→⑶「マチュア」で、全てつながっています。「ピュア」は生まれたばかりの新品で、「グロー」は中年でどこかで飽きられていたり傷んでいたり、リサイクルが鍵となる段階です。「マチュア」は晩年の硬くなった状態です。
この中でもっとも重要になってくるのが「グロー」であり、2030年に「マチュア」が「ピュア」に戻れるのか、「循環」が大きなポイントになってくるといいます。
⑴「ピュア」
サステナブルが言われる中で、新品は悪者のように言われることがありますが、決してそうではないと指摘します。大切なのはつくり方や次の段階を考えてつくることであり、悪いのは作り過ぎるビジネスの在り方といいます。
キーワードは「シンプル」です。元気で長生きになるとシンプルな生き方を求める人々が増えます。新品はシンプルで繊細、最新技術が用いられ、軽いけれど、見た目とは裏腹に耐久性があって長持ちします。色はバリエーションをつくりやすい白が中心です。光沢感が出て色が映えるのも新しいものならではです。
素材は天然繊維を中心に、適度に作れば合繊もよく、また天然自然といっても従来のものに加えてヤシやバナナ、海藻などのミネラル系繊維など、自然の恵みは無限です。「100年後も使えるものではなく、土に還るものであることが重要」と強調しました。
⑵「グロー」
新品に人の手を加えて、刺繍したり、プリントしたり、また継ぎ接ぎやパッチワーク、リペアなど未完成から完成品へ、さらにクリエーションからキュレーションへ変化する、人の力が大きい段階が「グロー」です。ところが世界中でこの「グロー」をビジネスにしている人は、インテリアではほとんどいないとか。
ファッションでは近年、古着屋が増えて、古着と組み合わせるクリエーションが面白くなっていますが、この動きはインテリアに波及して、2030年にはこのビジネスが大きく増えると予想しているといいます。新作展示会に「グロー」の展示会が登場し、かつてあった「ボロの美学」など、様々なアップサイクルが浮上するでしょう。カーテンはかけ替えたら、古いものを捨てずに再利用したり、はがした壁紙で新しいデザインをつくったり、昔あったものを見直して使ったり、ここはデザイナーのセンスや腕の見せ所です。南村氏は、ハイムテキスタイルの仕事をしていて、イメージが湧くのがまさにこの「グロー」なのだそうです。
カラーは何でもありですが、どちらかというとポジティブな温かみのある、強い色が主調です。とはいえ重みはなく軽やかに、ユニフォームブルーやアスファルトグレー、キャタピラーイエローなどを挙げます。
⑶「マチュア」
晩年の最終段階です。コロナ禍の2年、リサイクル技術のレベルが向上し、もともとあったモノを粉砕して固める技術が表面化してきたといいます。この先、いよいよ粉砕固める、そういう時代がやって来るということです。リサイクル素材使いのキッチンやベンチなどの家具、硬いパネルの使用が多くなってきます。デザインはクラシカルにして、色はしっとりと優しい雰囲気の耐久性のあるグレーが支持されるといいます。
最後にまとめとして、「この3段階の視点を持ってサステナブルを考えていこう」の善明氏の言葉で、講演を終えました。
それにしても、一枚の布を「人の一生」に例えるとは! 南村氏の斬新な発想に脱帽です。
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