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2020年10月12日 (月)

「ゲーム空間」と「ファッションとアイデンティティ」

 ステイホームで人が集まる場所がオンラインに移行し、社会現象になったのが任天堂の「あつまれ動物の森」、通称「あつ森」です。この3月に発売が開始されて以来、「人とつながるツール」として重宝されて、ファッション業界を巻き込んで大ヒットしています。有力ファッションブランドの「マーク・ジェイコブス」や「ヴァレンチノ」、「H&M」などが新作のデザインを提供するほどのモテぶりです。

Img_11041  渋谷パルコ6階にある任天堂オフィシャルストアでは、「あつ森」のキャラクターファッションやグッズが満載で、驚かされます。
 
 こうした中、開催されたのが「ゲーム空間」と「ファッションとアイデンティティ」と題したオンライン・シンポジウム(Fashion Studies主催)です。
 気鋭の研究者2名と現役の大学院生が登壇し、ゲーム空間は現実の代替として機能しているのか、ゲーム内でファッションを纏うという行為とアイデンティティの関係は何か、などが語り合われました。

 トップバッターは二松学舎大学都市文化デザイン学科教授 松本 健太郎氏です。
 『アバターによる「自己イメージ」の再構成―ゲームのなかの「私」と、それをデザインする私』をテーマに、まず「アバターとは何か」を考えます。ご自身、Facebookでバーチャルアバターを作成し、現実の私と虚構の私を思索したといいます。ゼミでは「あつ森」にはまる学生たち、ゲームの世界観を再現する学生もいればネカマプレイ(男性が女性キャラクターを演じるなど)をしてゲームを楽しんだ学生などと議論し、ゲーム空間が自己イメージを巡る編集の実験の場と化している、といった印象を持ったそう。
 アバターとは「自分の分身」という意味合いがあり、それ的なものは、社会に既に広く散見されるといいます。写真然り、最近ではZOZOスーツ、また移動の制約を克服し、その場にいるようなコミュニケ―ションを実現する分身ロボットOriHime(オリヒメ)もそう。その上でアバターは、①コミュニケ―ションメディアであり、②「自己イメージ」の再構成を促すものと言及しました。
 次にゲームについてです。そのポイントはアバターとプレイヤーとの「等価性」であり、「非対称性」を隠ぺいした上で成立する「等価性」であるといいます。ゲームとは、現実社会の中で実現不可能なものを実現させてくれるものと定義しました。終盤のサンリオピューロランドの“キティ" 研究も興味深かったです。

 二番手は明治大学大学院 情報コミュニケーション研究科修士課程で、『オンラインゲームにおけるファッションとアイデンティティ』を研究しているというソ シカン氏です。
 主に中国のオンラインゲームにおけるキャラクターのファッションを民族性、ジェンダー、階級との関係から論考。事例を通してキャラクターのファッションとプレイヤーのアイデンティティの関連性に関する論文を発表されました。
 おもしろかったのは、高級ファッションブランドが「あつ森」で商品を公開しているのは、ゲームで商品を販売することではないと指摘されたことです。仮想世界では誰でも買えますが、現実はもちろんそうではありません。有名ブランドがゲーム会社とコラボする目的は、若いユーザーと密接な関係を築きたいと思っているから、ユーザーの若者が将来、ブランドの最も重要な消費者になることを期待しているから、といいます。裏の意図がわかって納得です。
 
 トリは、明治大学情報コミュニケーション学部准教授の高馬 京子氏です。テーマは『ゲーム空間におけるファッションとアイデンティティ』。ゲーム空間において、仮想身体を得、ファッションを纏うことは、いかなる「私」になろうとしているのか、を考察されました。
 まず「あつ森」がいかに世界中のメディアで取り上げられているかです。ルモンドやワシントンポストから、日本でも雑誌スイッチ7月号、日経など、とくにボーグジャパン10月号とのタイアップ記事「あつ森なら好きな環境で生き、なりたい自分になれる」はキーワードといいます。
 次にファッション情報を入手するメディアと実践する場の変遷を上げ、2020年代は、ゲームがファッションメディアとして誕生し、ファッション実践の場の一つとなった時代と解説。「あつ森」におけるファッション実践例を紹介しました。
 さらにオンラインゲーム空間は今までのファッションメディアとどのように異なっているのか、いかなるアイデンティティを構築させようとするのかなどについて、下記の視点で問題を提起。
①ファッションメディアにより構築される理想像を踏まえて、ファッションはなりたい自分になるための装置なのか。
②ファッション、身体、アイデンティティを通して、新しい身体を入手することと身体の放棄、ファッション機能の強化とは何か。
③身体に制限されない社会規範を再構築する世界とは。

 最後にフリートークとなり、活発な議論が交わされました。
・仮想の中で作り上げたものと現実の身体をどうとらえるのか。
・自分の身体ありきのコスプレと身体がないアバターとの違い。アバターで人種や性別など枠を乗り越えて、人は何故自分ではない人になりたいのか。
・ネットの世界にも規範はある。「あつ森」ならカワイイ感覚というように一定の枠組の中にしか選択肢はないことなど。
 
 ゲームの世界に疎い私です。お話しを伺って視野が広がりました。次回も期待しています。


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