オンライントーク「建築・デザインのこれから―Multiplication, CONNECT/DISCONNECT」
銀座・京橋のLIXILギャラリーが今月末で閉廊するそうです。私は同ギャラリーでの展示を毎回楽しみにしていましたので、ほんとうに惜しまれます。
その最後を飾るイベントとしてオンライントーク「建築・デザインのこれから―Multiplication, CONNECT/DISCONNECT」が、30日まで配信されています。
建築家の隈 研吾氏と美術家の野老朝雄氏、建築家でnoiz代表の豊田啓介の3名が登壇し、編集者でライターの青野尚子氏による司会進行で、「建築・デザインのこれから」と題し、同時期に開催されているオンライン展「Multiplication」と「CONNECT/DISCONNECT」の見どころを含め、幅広く語られています。
隈 研吾氏は、ご自身の作品「Multiplication」について、「仮想のゲーム空間を創ろうと思った」と話しています。大宰府天満宮をイメージしてつくったという空間では、靴音が聞こえてきて、人の動きまで伝わってくるようです。音は建築にとって重要で、リズムは建築に大切な要素であるといいます。
離散型住宅の概念にも触れられていたこともコロナ禍の今、興味深いです。
テレビ東京の「コロナに想う」に出演されたときには、次のように述べられていました。それは「箱=室内からの解放」です。コロナウイルスの教訓として「人間は自然の中に出ていくべき。自然と近づいて、もう一度健康を回復させ、自由を取り戻すこと」を提唱されています。
私もまったく同感で、今回の「Multiplication」にもこの考え方が表れているように思いました。
野老朝雄氏は「CONNECT/DISCONNECT」という作品を発表しています。それは豊田氏との協働作業による常滑焼のタイルのプロジェクトで、アナログなタイルの紋様とデジタルの融合が生む万華鏡のようなバーチャル世界です。無数の幾何学デザインの出現に圧倒されます。
トークで私がとくに関心を引かれたのが、隈氏が「粒子」について言及された箇所です。
東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場を設計した隈氏。全国の杉材を取り寄せて気づかれたことは、同じ杉なのにそれぞれ色が違っている、つまり粒子が異なっていることだったそう。そこでそれぞれに違う粒子の良さを活かして、ふわりと全体をまとめ上げる手法を採用したといいます。
「この手法はアジア的で、西欧にはないやり方」と隈氏は言います。「キリスト教的な設計というと、異質なものをアウフヘーベンするというもので、より高次のものを創り上げるために、違う要素を犠牲にする」というのです。これまでのモダニズムはずっとこの方式だったといいます。
反キリスト教的世界では、たとえばゼロを発見したインドのように、多様に存在する異質な粒子の隙間を開けて、何となく全体に気持ちいい環境をつくるそう。
隈氏はこのことをいくつもの例を挙げて紹介され、最近そうした考え方にとらわれ始めていると発言されたのが、印象的でした。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、建築デザインの世界もこれまで以上に東洋的な建築表現が広がりそう、と思ったことでした。
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