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2020年9月 6日 (日)

横浜トリエンナーレ「光の破片をつかまえる」⑴ 横浜美術館

 先日、横浜トリエンナーレ2020に行ってきました。(3年前にも来たことが思い出されます。)コロナ禍で開催されている初の大規模な現代アートの国際展です。参加者は30か国から65組67人に上っています。

 20年目を迎えた今年、初めて海外からアーティスティック・ディレクターを招聘したそうで、それがインドの3人のアーティスト集団、「ラクス・メディア・コレクティブ」です。彼らは来日が叶わなかったのですが、「AFTERGLOW-光の破片をつかまえる」をテーマに、光の破片をつかまえて、次のステップへ歩むきっかけとなるようにと、企画したといいます。「自分で考え、光を発し、人をいたわり、共に生き、『毒』とも共存する」のコンセプトは、私たちに希望の光ととともに毒をも受け入れよ、ということでしょう。コロナの時代を生きる知恵となる考え方ですね。
 
 作品は横浜美術館とプロット48を中心に展示されています。まずはメイン会場の横浜美術館から見ていきましょう。
 
P_20200822_115405_vhdr_auto1  入口です。建物全体にブルーの幕が張ってあって、工事中なのかと思いましたら、そうではなくてそれも立派なアート、クロアチアのイヴァナ・フランケの《予期せぬ共鳴》と名付けられた作品でした。
 
P_20200822_115629_vhdr_auto1  吹き抜けのエントランスホールでは、巨大なモビールが目を惹きます。ニック・ケイヴの《回転する森》という作品です。
 キラキラ光って揺れているのは、アメリカの住宅の庭などによく見られる「ガーデン・ウインド・スピナー」と呼ばれる装飾だそう。スピナーをよく見るとピースマークもありますが、ピストルや弾丸の形をしたちょっと怖いモチーフのものも含まれています。美しくきらめく光の中には、怖い毒もある、そんな現代社会を映し出しているようです。

P_20200822_135241_vhdr_auto1  「えっ、これ何?」と思うような巨大な作品は、スペインのエヴァ・ファブレガスの《ポンピング》。人間の腸のかたちをしていて、シリコンやゴムなどでつくられているのか、弾力性があってやわらかい。私たちは腸内フローラと共生しながら生きているなど、意識が広がります。

P_20200822_135543_vhdr_auto1  突然出現するのが、体操競技場。ロシアのタウス・マハチェヴァの《目標の定量的無限性》。体操器具をよく見ると、鞍馬の持ち手は一つしかありませんし、平行棒は斜めになっています。耳を澄ますと、響いてくるのは私たちが日常生活でしばしば聞く、人の行動を制御するための抑圧的なフレーズ、「どうしてこんなことができないの?」とか、「もっと高く、もっと速く」といった言葉です。
 ジムで展開されるパフォーマンスから、現代社会における身体、規律、統制について問いを投げかける印象的な作品です。
 
P_20200822_140047_vhdr_auto1  スエーデンのインゲラ・イルマンによる大きな立体作品《ジャイアント・ホグウィード》です。ジャイアント・ホグウィードとは、花は美しいけれども、光が当たると毒をつくるという中央アジア原産の植物です。これはその姿を巨大化させたインスタレーションで、美しいのにかぶれてしまう毒との共生を考えさせられます。

P_20200822_120008_vhdr_auto1  新井 卓の《千人針》。一枚の布に千人の女の人が赤糸で一針ずつ刺して縫い玉をつくって出征兵士に贈ったものです。その縫い目を撮影した1,000枚のダゲレオタイプの写真を壁面いっぱいに並べて展示。戦争という暗い影の中に漂う祈りの気持ちを感じます。
 
P_20200822_124627_vhdr_auto1  ポーランド出身ズザ・ゴリンスカの《ランアップ》。赤いカーペットの段は硬いかと思ったら、ぐにゃっとしていてやわらかい。見た目と中身のギャップに戸惑います。

P_20200822_140608_vhdr_auto1  ツェリン・シェルパの《54の智慧と慈悲》。極彩色のチベット仏教絵画を54のパズルに分解。完璧に対する疑念を表現しているようです。
 
P_20200822_142800_vhdr_auto1  竹村 京の《修復されたY.N.のコーヒーカップ》。壊れた陶器の破損部分を絹糸で縫い直す「修復シリーズ」の一つ。カップを覆っている透ける薄地には光る糸で刺繍が施されています。この光る糸は、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質を創る遺伝子を用いて開発された蛍光シルクだそう。思い出の品と過ごした過去の時間が蘇ります。
 
P_20200822_143402_vhdr_auto1  1階ホールの階段上に設置されている大作は、青野文昭の《なおす・代用・合体・侵入・連置》。仙台出身のこの作家は、「なおす」という行為を主題に、使い古された家具や浜辺の漂着物などの欠損箇所から想像を膨らませ、異なるモノと結合させながら創造的復元を行っているといいます。
 これは東日本大震災の体験を新しいかたちに生まれ変わらせたというインスタレーションです。温かな家族があったことが思われ、しばし当時を偲びました。

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