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2020年9月10日 (木)

ウェビナー中川政七氏「すべてはビジョンからはじまる」

 奈良を本拠に「中川政七商店」「遊 中川」「日本市」などの自社ブランドを確立し、業界特化型の経営コンサルティング事業に携わる中川政七商店。先般、代表取締役会長 中川政七氏が登壇するウェビナー「すべてはビジョンからはじまる」が開催されました。
 私は、中川政七商店が主催する「大日本市」のイベント(このブログ2019.9.17付け)や、この8月初めに東京駅の新商業施設「グランスタ東京」にオープンした「中川政七商店 分店 服」(このブログ2020.8.11付け)など、事あるごとに取材しています。
 今回の講演は、経営に効果的なビジョンの実践方法を分かりやすく解説するレクチャーでした。その概要を下記にまとめてご紹介します。

 まずは自己紹介から。同社のビジョン「日本の工芸を元気にする!」の基本は、「経済的自立」+「ものづくりの誇りを取り戻す」ことであり、このために次の二つの考え方、一つは流通の出口を確保し拡大することと、二つ目は経営再生コンサルティングを軸に事業展開しているという。
 流通の出口拡大といっても、そこには限界があると話す。2007年頃から経営再生コンサルティングに取組むようになり、10年で20社、産地の一番星をつくろうと活動を始めた。最初のクライアントが佐賀県波佐見焼のマルヒロで、HASAMIというブランドを立ち上げた。売上より借金が多かった会社だったが、今では優良企業になっている。このように年商1億円以下の赤字企業を再生し、その件数は累計で50社以上にも上るという。
  何故うまくいったのか。それは部分ではなく全体を見たことと分析する。 最初に見るのは決算書で、それを読み解いた上で、どう手をつけていくかを考え実行するのが最大のポイントという。 いわば経営者の家庭教師をやっているような感覚とか。
  Img_41591  販路開拓では「大日本市」と呼んでいる合同展示会(右の写真は2018年夏の会場風景)を開催、毎回約50社が出展し、大いににぎわっている。
 また地域の行政と組んで人材育成講座も開講、11期生まで出ている。講義の最終回は実践型の事業プレゼンで、そこから生まれたブランドで大ヒットしているものはいくつもある。
 とはいえ産地の衰退は予想以上に早い。サプライチェーン崩壊という現実にも直面しているが、立て直しには製造背景の統合が不可欠。しかしそれには投資が要る。投資にプラスアルファの価値を呼び込むために、日本工芸産地協会という業界団体を結成、観光や現地に足を運んでもらえる環境づくりにも力を入れている。同社はここ3~4年、奈良地域のブランディングにも取り組んでいるという。
 
 次に本題のブランディングとビジョンについて。ブランディングとは付加価値をつけることではないときっぱり。付加価値というと、いかに安くてよいモノをつくるかという足し算になり、価格競争しか生まない。その対極にあるのがブランディングで、ブランド価値は掛け算であり、その価値をいかにつくり込んでいくか、意味的価値をつけるのがブランディングであるという。
 この意味的価値や感じ方は時代と共に移り変わっていて、モノがない時代は「安心」を、次にラグジュアリーブランドなどへの「憧れ」の時代、近年はデジタルに需要が移っていることを大前提にした「共感」の時代へ動いている。
 このブランディングを時代変遷とともに読み解くと、「安心」「憧れ」の時代は、商品そのものがブランドの価値を生んでいた。しかし今や「共感」の時代となり、商品だけではない。モノからコトへと言われるように、ブランドのライフスタイル、ストーリーを伝えることで共感を得るのが今の時代のブランディングであるという。商品2~3割、ブランド7~8割の比重で伝えなければいけない時代になっている。
 ところが最近、それがまたしても変化しつつあると語る。共感はもう一つ上のレイヤー、会社そのもののビジョンや思想、つまり「スタンス」へ移っているというのである。ライフスタイルよりは「ライフスタンス」という言葉を10年前くらいから唱えてきたが、それがようやく共感を生む時代になってきているという。
 それではビジョンとは何か。ビジョンとは将来のあるべき姿を描いたものであり、未来の旗印みたいなもの、そこに向かってみんなが熱くなれるものという。中川政七商店が掲げるビジョン「日本の工芸を元気にする!」のように、ビジョンは会社の事業とつながっていて、そこに向かって前進する、実現するというものでないといけないとも。
 さらにビジョンを考える上で重要なのは、CSRよりもCSVと指摘する。企業が追求すべきは、もうかったときに余裕があるから貢献するCSRよりも、本業と社会貢献が混然一体となり、ビジネスに取り組むことと社会貢献が切り離せないCSV (Creating Shared Values)の方という。「利益追求」と「社会貢献」、「自己実現」の3者が重なり合う、その真ん中でピンを打っているようなものがビジョンであると図を使って解説した。
 最後にビジョンはつくった後が重要と、次の3つのポイントを挙げた。一つは、事業との整合性を担保して展開すること。二つ目は、社内での理解で、それを徹底的にやること。社員の自覚が必須という。三つ目は、ビジョンから別の戦略、例えばコンサルティングなどをスタートさせること。実際、ビジョンをかかげなかったらコンサルティングは始まらなかった。それ自体はもうからないが、やり続けたことで、2015年ポーター賞の受賞につながるなど評価され、その後の中川政七商店の戦略的優位を築くことができたという。

 まとめとして、ライフスタイルより一つ上のレイヤーが求められる時代になりつつあること。ビジョンは非常に大切で、掲げているだけでは意味がなく、それに対して真摯に向き合うと意外な効能もあり、それが競争戦略につながる。中川政七商店がこれだけできている理由はビジョンが定まったことと思う、と結んだ。

 これからの時代のブランディングや、ビジョンを実装させるための経営のヒントになるお話が詰まっている、さすがの講演でした。

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