落合陽一展「未知への追憶」記憶に潜むデジャヴを探して
今、丸井グループの渋谷モディで開催されている落合陽一個展「未知への追憶-イメージと物質 計算機と自然 質量への憧憬」に行ってきました。
落合陽一氏は、研究者や大学教員、実業家など多彩な顔を持つメディアアーティストです。メディアアートとは、文化庁の定義によると「コンピュータや電子機器などのテクノロジーを利用した芸術表現」をいうそう。従来の美術とは違い「装置を使った表現」なので、難解です。
落合氏の言葉もタイトルからして、意味が分かりませんでした。「未知への追憶」といっても、まだ見たことも聞いたこともないものを思い出すなんて、どういうことなのでしょう。
見終わって、不可解な作品の意味が何となくわかったような気がしました。それは記憶の底に潜んでいるデジャヴを探して、たゆたう心象風景のようなものを表していたのではないか、と思われたことです。
本展は「映像と物質」、「物質と記憶」、「情念と霊性」、「風景論」、「風景と自然」、「質量への憧憬」の7章構成で、2017年頃から2020年まで、全49点の作品が展示されています。
下記、私が注目した作品をご紹介します。
まず「映像と物質」の『アリスの時間』です。 12の円環状に配置された時計が次々と発光し、実在しない時間が壁面に映し出されます。映像というイメージと物質の違いを考えさせられる作品です。
次に「物質と記憶」から『計算機自然の視点』。 モノ化した計算機から見た自然に、不思議とノスタルジックな情緒を感じます。
さらに「風景論」では『焦点の散らばった窓』と『レビトロープ』。 テーブル上の球体が回転しながら浮遊します。磁場の働きでホバリング(空中浮遊)しているのですね。
背景の渋谷の街の風景を借景に取り込んでいるところは、日本の庭づくりの伝統を思わせます。畳が敷き詰められているのも日本的。禅の精神を意識させられるインスタレーションです。
「風景と自然」の『XXの風景(鳥)』。 計算と自然と風景がつながって一体化したデジタルネイチャー。
鳥の羽根や玉虫--、色彩表現のちょっと毒のある美しさに感動します。
「質量への憧憬」にみる『コロイドディスプレー』。 シャボン膜に浮かぶ蝶々の映像が神秘的!何度も見つめてしまいました。
他にもたくさん。コロナで変化する日常に、刺激を与えてくれた展覧会でした。
会期は8月末まででしたが、9月27日(日)まで延長されるとのこと。好評の様子です。
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