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2020年7月19日 (日)

ドレス・コード?─着る人たちのゲーム展 “着る”を再考察

 開催延期となっていた「ドレス・コード?─着る人たちのゲーム」展が、東京・初台のオペラシティアートギャラリーで開催されています。予告のオンライントーク動画(このブログ2020.6.1付け参照)が公開されていたこともあり、楽しみにしていた企画展です。オープンするとすぐに日時を指定して見に行って来ました。

  本展は、“着る”という行為そのものを再考察させられる点でユニークです。私たちが普段何気なく袖を通した服は、何らかの記号を表現している、つまりコードにつながっているのです。
 「今日着ている服、あなたはどうやって選びましたか?」と問われて、私たちは他者との関係を考えて服を選択していることに気付かされます。服と人との間には、“視る/視られる”という関係性があることを、約300点に及ぶ展示で紹介しています。

 鑑賞者はこの関係性にまつわる下記13項目の質問 (テーマ)を投げかけられながら、会場を巡ります。

 0.裸で外を歩いてはいけない?
 1.高貴な振る舞いをしなければならない?
 2.組織のルールを守らなければならない?
 3.働かざる者、着るべからず?
 4.生き残りをかけて闘わなければならない?
 5.見極める目を持たねばならない?
 6.教養は身に着けなければならない?
 7.服は意志をもって選ばなければならない?
 8.他人の眼を気にしなければならない?
 9.大人の言うことを聞いてはいけない?
 10.誰もがファッショナブルである?
 11.ファッションは終わりのないゲームである?
 12.与えよ、さらば与えられん?
Scan0170  
 注目したテーマをいくつかご紹介します。(写真は大部分が撮影不可でした。ここでは許可がおりているものだけを掲載しています。)

 まず1の「高貴な振る舞いをしなければならない?」です。18世紀ロココの衣裳が展示されています。これは上流階級であることを誇示する証です。そのバックに飾られているのが、坂本真一の漫画作品『イノサン』のキャラクター画で、両者を対比させているところがおもしろいです。Img_88071
 次に2の「組織のルールを守らなければならない?」です。
 ここではユニフォーム、制服に焦点が当てられています。服装は私たちの社会的属性を表す記号のようなもので、とくに集団を訴求する型が求められるのが制服です。でもその型の中で、着崩す、細かなアイテムで差別化を図るなどして、自身の個性を主張するのが人間なのですね。
 展示されているのは基本のスーツや学生服に様々なアレンジを加えたファッションデザイン。プリーツやスカートを穿いたメンズスーツなど、その脱ステレオタイプなバリエーションが興味深いです。

 3の「働かざる者、着るべからず?」では、かつて労働者階級の服だったジーンズが取り上げられています。今や現代ファッションに欠かせない一分野を形成しているデニムのファッションがエキサイティングです。
 玉井健太郎デザイナーが手がける「アシードンクラウド(Aseedoncloud)」(このブログ2020.4.2付け参照)の作品も出ていました。架空の職業で働く人の物語から生まれたキャラクターによる独特のワークウェアがイメージされています。 Img_73101jpg_20200719181901  上の写真はこの春の展示会のときのもので、炭鉱夫の一家という設定のストーリーから紡ぎ出されたコレクションです。

 4の「生き残りをかけて闘わなければならない?」では、軍服に端を発するバーバリーのトレンチコートや迷彩服が並んでいます。ジョン・ガリアーノによるクリスチャン・ディオールの2001春夏のドレスや、ジャン・ポール・ゴルチェの2000春夏のカモフラ―ジュプリントの浴衣など、平和な世の中でミリタリー気分を楽しむ多彩なファッションを見ることができます。

 ハイライトはやはり、6の「教養は身に着けなければならない?」です。アートとファッションの結び付きを主題とした作品が美しくディスプレーされています。
Img_87131  
 真っ先に目に飛び込んでくるのが、コム・デ・ギャルソン2018年春夏コレクションからの3体です。
 真ん中がチラシに大きく使われていた高橋真琴のアニメ少女をインクジェットプリントしたドレスです。両隣に雪村の水墨画とマニエリスムの画家アルチンボルドの絵画を大胆にあしらったドレスが置かれています。さすがに本展でひと際目立つ、ステキな展示風景でした。Img_88041jpg
0e5fb40b360412a9e5d1  このコーナーではイヴ・サンローランのモンドリアン・ドレスや、アンディ・ウォーホルのキャンベルズ・スープカンパニーのザ・スーパードレス、それにキッチュな絵画・彫刻で知られる美術家ジェフ・クーンズとルイ・ヴィトンのコラボバッグ(右)の展示も。
 また元祖・自撮り女王、シンディ・シャーマンの作品、それに並んで森村泰昌の「白いマリリン」のセルフポートレートが目を惹きます。

 ホールを抜けたコリドーで目を見張るのが、10の「誰もがファッショナブルである?」展です。
Img_87831   壁面全体をおおうのは写真家 都築響一の作品で、その異様な迫力に圧倒されます。モードの王道からはずれたストリートファッションやオタクファッション、ニッポンのニッチな「お水スーツ」や「ロリータ」、「ヤンキー成人式」、「極道ジャージ」、「異色肌」などから、ホームレスや田舎暮らしの老人まで、多種多様な人々がそれぞれのファッションを提唱している、見応えのある展示でした。

 続いて2階に上ると、最後の二つのテーマ展示があります。

 11の「ファッションは終わりのないゲームである?」。ここで目にするのは、演劇カンパニー「マームとジプシー」の藤田貴大によるインスタレーションです。Img_87901jpg  26人のポートレートとそれぞれのキャラクターから、ファッションによる新しいステレオタイプを生み出すことを試みる作品で、他者の視線がある限りファッションは終わりのないゲームなのかもしれないと結んでいます。
 
 最後は12の「与えよ、さらば与えられん?」です。
 Img_87961  チェルフィッチュを主宰する岡田利規の映像演劇で、カーテンの向こう側で、男性の影が「服をください」、ならば「与えよう」と応じ、「視る/視られる」のやりとりが交わされるというもの。
 
 ファッションは常にあるコードの下、視覚的なメッセージを発しています。その意味で気づきの多い展覧会でした。
 なお会期は8月30日までとなっています。ファッションに関心のある方はお早めにどうぞ。

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