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2020年7月

2020年7月31日 (金)

21春夏ミラノ・メンズFW ⑵ グッチ エピローグ発表

 ミラノ・メンズ・ファッションウィーク(FW)で、ビッグブランドのグッチ(GUCCI)が2021春夏コレクションをデジタル配信しています。そのストリーミングを視聴したのですが、あまりにも長かった! アトリエでの撮影からルックブックがつくられるまでの舞台裏の風景を延々12時間にわたって発信していました。これはこの2月に開催したコレクション「FAIRY TALE(おとぎ話)」3部作に続くものです。そしてこの最終章となるエピローグ・コレクション、21春夏メンズとプレ・ウイメンズが今、約20分間の動画に収められてYouTubeで発表されています。


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 クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)のメッセージとともに登場するのは男女76体です。モデルは皆、アトリエのスタッフだそうです。だからでしょうか。仕事をする人間らしい温かい雰囲気を感じます。ラグジュアリーがより親しみやすいものになっていると思いました。
 全体に70年代風のレトロ感が漂うコレクションで、セットアップやべルボトムパンツが当時を喚起させます。カラフルな花柄やペーズリー、爽やかなデニムブルー、それにグッチといえばお馴染みのディズニーアニメのモチーフも。ミッキーマウスやドナルドダックに加えて、今季新たに “ドラエモン ”(上の写真のバッグ)が加わっていて、ちょっとビックリ!でした。

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2020年7月30日 (木)

21春夏ミラノ・メンズFW ⑴ プラダ “洗練されてミニマル”

 オンラインで開催された2021春夏メンズ・ファッションウィーク(FW)。この7月14日から7月17日、パリに続いてミラノでデジタルファッションウィークが開催されました。参加した43ブランドの中から、そのいくつかをピックアップしてご紹介します。

 まずビッグブランドのプラダ(PRADA)です。今回はデジタル配信ということで、これまでだったら絶対にありえない方式がとられています。それは、従来のような単一のステートメントではない、世界的なアーティスト5人による複数の異なった視点からのアプローチです。
 その5人とは、ベルギー出身のファッション写真家、ウィリー・ヴァンデルパー(Willy Vanderperre)、マーク ジェイコブスの広告写真を撮り続けていることで知られる写真家、ユルゲン・テラー(Juergen Teller)、ロンドンを拠点に活動しているポーランドの写真家、ジョアンナ・ピオトロヴスカ((Joanna Piotrowska)、ロサンゼルスを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、マルティーヌ・シム(Martine Syms)、テキサス州ダラス出身のアメリカ人の映画作家で俳優、ミュージシャンのテレンス・ナンス(Terence Nance)です。
 彼ら一人ひとりが、プラダの2021春夏コレクションの一面を捉えたフィルムを制作し、それぞれの世界観を表現しています。その映像が興味深くて、さすがプラダと思いました。

 
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 彼らの目を通して発表された2021春夏コレクションは、一言で“洗練されてミニマル” です。端正なスーツやジャケット、ストレートなプリーツ入りパンツ、ポケットにロゴが施されたシャツなど。バッグ用に大ヒットした黒いナイロン生地を使用したドレスも見られます。
 プラダらしさを際立たせる象徴的なアイテムが目立つコレクションです。

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2020年7月29日 (水)

U.S.コットン・トラスト・プロトコル 持続可能へ要求高まる

 U.S.コットン・トラスト・プロトコルは先頃、コロナ禍の世界市場においてアパレルと小売のサステナビリティ(持続可能性)計画がどう変化したかを調べる調査を実施しました。調査結果によると新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降、消費者からのサステナビリティへの取り組み要求が一層高まり、公約を果たさないアパレルは顧客を失う可能性があると半数以上が回答したといいます。

 下記は、この調査結果をまとめたパネルです。
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 U.S.コットン・トラスト・プロトコルのプレジデントであるGary Adams博士も語られていますが---、新型コロナ感染拡大の影響によって経済的な問題が生じていることは明らかです。しかしこの調査を見れば、消費者は引き続きサステナビリティ(持続可能性)を重要視していることが分かります。ですからアパレルは、科学的根拠に基づく目標を満たしていることを示すことが必要で、このためのデータを入手できるU.S.コットン・トラスト・プロトコルのようなシステムが、これまで以上に重みを増すことになるのではないでしょうか。
 欧州のブランドはコロナ禍でもサステナビリティ投資を継続しているといいます。日本もこの取り組みをさらに推進させたいですね。

 一般財団法人日本綿業振興会のHP http://www.cotton.or.jp/pr2020-07-22.html にはこれに関する詳細なリリースが掲載されています。併せてご覧ください。
 


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2020年7月28日 (火)

21春夏パリ・メンズFW⑻ ダブレット 何でもない日大切に

 「ダブレット(doublet)」を手掛ける井野将之デザイナーは今シーズン、パリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)で、気持ちをホッコリとさせるメッセージ性のある動画を発表しています。
 テーマは“A VERY MERRY UNBIRTHDAY FOR YOU(何でもない日、おめでとう)”です。ベアのぬいぐるみに身を包んだ配達員、それは井野デザイナー自身だそうですが、あちらこちらにプレゼントを届けて回り、行く先々の人々を笑顔にするストーリーになっています。


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 プレゼントはもちろん同ブランドの新作アイテムです。さりげないチェックのシャツやテディベアのプリントブラウス、ハートのアップリケ、リボンディテールなど、やわらかい色使いでどこか懐かしい、心温まる感じのするものばかり。
 こういう時代だからこそ、なんでもない日を大切にしたいという、デザイナーの想いが伝わるコレクションです。

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2020年7月27日 (月)

21春夏パリ・メンズFW⑺ メゾン・ミハラヤスヒロ 人形劇

パリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)で、日本のブランド「メゾン・ミハラヤスヒロ(Maison MIHARAYASUHIRO)」が発表したのが、パペット人形劇を採り入れたコレクション動画です。パペット人形たちがファッションショーを風刺するようなコミカルな演出になっていて、見ていて楽しい!
 主人公はジャーナリストで、朝起きて支度してショー会場に行き、何とか中に潜り込みます。最前列で有名人と自撮りした写真をSNSにアップするなどしていると、幕か開いて、ランウェイショーが始まります。
 登場するモデルはすべて四角いお面をつけて頭を隠しているのが奇妙です。
 テーマは「モア・オア・レス(More or Less)=多かれ少なかれ」で、これについてブランドを手掛ける三原康弘デザイナーは、「ファッションは完璧を求めれば求めるほど、面白くなくなり、美しさを見出せなくなる。多かれ少なかれ、ゆがんでいたり曲がっていたりするものの方が美しい」と持論を述べ、自身のファッション哲学を次のように語っています。「ファッションとは、結局のところ、頼りないものであり非論理的で、コメディや人形劇と同じようなものにすぎない」と。
 フィナーレで、デザイナーをなぞるようなパペット人形が出てきて挨拶するのも意味深です。

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 ショーでは、このブランドらしい高いデザイン性と素材へのこだわりに注目です。新シリーズ「Spray on」は、京都の老舗加工工場で、染色したような風合いを出す特殊なハンドスプレー技術を用いて、縫製後にスプレーを施したものとか。独特の風合いと職人技が感じられるオンリーワンのアイテムに仕上がっていて、人気を集めそうです。また独自の接合技術もアップデートされて、ブルゾンやシャツなど実質的に2つのアイテムを袖付きで前後に接ぎ合わせたものや、脚の部分を分解して別のパンツに埋め込んだようなパンツなど、ユニークです。
 さらにブルゾンやカーディガンで、袖やアームホールを動かして肩を落とすように配置したり、パーツをつまんで大きなパーツを小さくする、いわゆる「リサイズ」という手法を活用したり。シルエットにもブランドのオリジナリティが追求されているのを目にすることができます。

 デザイナーの遊び心を感じるデザインが印象に残る今シーズンのコレクションでした。

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2020年7月26日 (日)

21春夏パリ・メンズFW ⑹ ヨウジヤマモト ダークな陰影

 2021春夏パリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)には日本からも11ブランドが参加しています。
 その大御所が「ヨウジヤマモト」です。デジタルで発表されたコレクションは、このブランドらしいダークな陰影に満ちています。 登場するワードローブに一点ずつ説明がついているのはデジテルならではの効用でしょう。

 
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 シルエットはルーズで、全体に退廃的な佇まいです。“取扱注意”や“こわれもの”といった文字を刺繍したパッチが付いていたり、デザイナーの山本耀司の首にナイフを突きつける女性の図像をプリントしたシャツが見られたり、どこか不穏な空気を感じます。とくに特徴的なのが「眼」を表現したボタンで、シュールな感覚です。これは監視カメラの隠喩でしょうか。
 19世紀のナポレオン風ミリタリールックにも注目です。
 モデルに俳優の東出昌大(上の写真)が出演したことも話題のコレクションでした。

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2020年7月25日 (土)

21春夏パリ・メンズFW ⑸ ベルルッティ 陶芸家とコラボ

 パリ・メンズFWでは、アーティストとのコラボレーションが多く見られます。アーティスティック・ディレクターのクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)が手がける「ベルルッティ(Berluti)」の2021年春夏コレクションもその一つです。
 今シーズンは、ロサンゼルスを拠点に活動するアメリカ人陶芸家ブライアン・ロシュフォールのとの遠距離コラボレーションフィルムを公開。ロシュフォール作品の有機的で立体的な質感や色彩を取り入れた力強いプリントデザインやニットが、何とも斬新なコレクションを見せています。
 

 クリスのクリエイティブなコレクションの背景には、このようなエモーショナルなクラフトアートがあったことを知る、貴重なムービーです。

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2020年7月24日 (金)

21春夏パリ・メンズFW ⑷ ロエベ "モダンクラフト”

 今回のパリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)で、興味を惹かれたのが、ロエベ(LOEWE)です。
 公開されたフィルムでは、クリエイティブディレク―のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が自ら、その2021春夏コレクションを語っていて、好感しました。
 映像では冒頭、「ショー・イン・ボックス(Show-in-a-Box)」というキットが紹介されます。これは報道関係者らに送付されたものだそうです。箱の中には新作を立体的にみられる紙の「飛び出す絵本」や生地サンプルなどが入っていて、実物を想像しやすくなっている様子。デジタル配信でもこういうのがあると親切ですね。バイイングの一助になります。ロエベの公式HPにはその詳細や型紙も見ることができるようになっていて、ステキなアイデアと思いました。



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 キーシルエットはクラシックを崩す、彫刻的なボリュームです。ねじれ、ループ、包み込むようなフォルムが衣服の3D的な存在感を伝えてくれます。 
 中でも注目は、"モダンクラフト" なアイテムの数々です。それはアンダーソンのコラボレーターたちによる丹精込めた手仕事で、レザーワーカーの協力を得てつくられたというバスケット織りのトップスや、ラフな3Dニット、しぼり柄が放射状に広がるチュニック、アメリカ人アーティストのポール・カドムスとのコラボ作品など。
 ものづくりをする人々、それに携わる職人への敬意にあふれたコレクションが印象的です。

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2020年7月23日 (木)

21春夏パリ・メンズFW⑶ ディオール アーティストの肖像

 パリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)で、ディオールオム(DIOR HOMME)のクリエイティブディレクター、キム・ジョーンズ(Kim Jones)は、ガーナ生まれのアーティスト、アモアコ・ボアフォ(Amoako Boafo)とコラボレーションしたコレクションをショートムービーで発表しています。
 ムービーは2部構成で、第一部ではアモアコ・ボアフォがアトリエでフィンガーペイントを用いて制作している様子を映し出しています。手袋をはめて指に絵具をつけて描くフィンガーペイントという技法が興味深いです。
 第二部では、ディオールらしいエレガントでスポーティなメンズファッションが登場します。ボアフォが描いた肖像画を大きくあしらったアイテムも目を惹きます。 

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 これまでも何度かアーティストと組んでコレクションを創作しているというキム・ジョーンズ。アフリカ生まれで、アフリカのアートは常に重要と考えてきたといいます。昔からアフリカ人アーティストと仕事したいと思っていたそうで、コレクションのスタイリングは、ボアフォが生み出す肖像画と現実に描いていたものに目を向け、別の方法で蘇らせたといいます。黒人の肖像とともに、アフリカの大地に咲く花のモチーフや光のイエロー、赤、グリーン、スカイブルーといった鮮やかな色彩が印象的です。
  
 ボアフォの作品がキム・ジョーンズの手法で服に生まれ変わっていく、その過程を目にする、またとない映像に注目です。

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2020年7月22日 (水)

21春夏パリ・メンズFW ⑵ ルイ・ヴィトン シーズンレスへ

 モード界で今、コロナ・ショックをきっかけに新作コレクションを発表するスケジュールや販売時期、セール期間を見直そうという動きが出ています。今回のパリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)で、これまでの「春夏」、「秋冬」というシーズンにとらわれない、シーズンレス体制への移行を宣言したのが、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)メンズです。
 ブランドを手掛けるアーティスティック・ディレクターのヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は初のオンラインコレクションで、「Message in a Bottle (瓶詰の手紙)」と題された新作のプレリュードとなるフィルムを公開しています。それは実写とアニメを組み合わせた、ヴァージルが「ズーム(Zoooom)と、その仲間たち」と呼ぶショートムービーです。

 

  スタートは、パリ郊外のアニエールに佇む歴史的なルイ・ヴィトン家の邸宅から。運送業者がコンテナを梱包してトラックに積み込んでいきます。そのときこっそりと乗り込んだのがアニメのキャラクターたちです。積荷は彼らとともにとともに、セーヌ川を下り、船で海外へ運ばれるというストーリーになっています。登場するキャラクターの動物たちがちょっとお茶目でかわいいです。
 最初の寄港先は中国・上海で、8月6日、この地でリアルなファッションショーを開催、その後、世界中を巡ることになっているといいます。東京にも来るかもしれないとか。箱を開けるのが楽しみですね。

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2020年7月21日 (火)

2021春夏パリ・メンズFW ⑴ エルメス 軽快でシンプル

 2021春夏パリ・メンズ・ファッションウィーク(FW)が7月9日~13日に、オンラインで開催されました。
 会期に先駆けて行われたのがエルメス(Hermes)です。初のデジタルによるメンズウェアコレクションは、フランス人アーティストのシリル・テスト(Cyril Teste)の演出によるライブパフォーマンスとともに披露されました。
 テーマは、「HORS- CHAMPS」で、ここでは“舞台裏”といった意味です。約7分の動画は、エレベーターに乗ったモデルが階下のアトリエに降り立つところから始まります。そこではショーのリハーサルが行われていて、ブランドを手掛けるアーティスティック・ディレクターのヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)が、モデルの着こなしを直したり、スタッフに指示を出したり、忙しそうに働いている姿を映し出しています。カメラワークもすばらしい。


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 発表されたルックスは、軽快でシンプル、クリーンといった表現がぴったりです。素材はカジュアル感のある上質の無地やストライプのコットンが中心で、エルメスらしい“馬のダンス”をモチーフにしたプリントシャツも見られます。
 カラーは涼しげなブルーやグレーにイエローを程よく効かせた上品な色合い。さわやかでさりげないエレガント感あふれるコレクションが展開されています。

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2020年7月20日 (月)

U.S.コットン・トラスト・プロトコル アパレルや小売が参加

 このほど一般財団法人日本綿業振興会の広報担当から次のリリースが届きました。
 「U.S.コットン・トラスト・プロトコルは、同プロトコルにアパレルや小売が参加可能になったことを発表。さらに自信を持ってアメリカ綿を調達して頂ける」という内容です。
 
 U.S.コットン・トラスト・プロトコルとは、責任ある綿花生産に定量化と検証が可能な目標と計測を取り入れたシステムで、国連のSDGsに則したサステナビリティ6分野に関する年間データを提供しています。初となる対前年比データは、アパレルや小売がサステナビリティ公約の達成度をより数値化しやすくするといいます。
 エグゼクティブ・ディレクターのKen Burton氏は、「トラスト・プロトコルを始めた目的のひとつは、アパレルや小売が製品の原料にアメリカ綿を使用することに一層の自信を持って頂くこと」と述べ、さらに「参加アパレルや小売は、各社の環境負荷削減やサステナビリティ目標における進捗を今後数字で示すことができるようになります」とプロトコルに参加する意義を語っています。
 このようにU.S.コットン・トラスト・プロトコルのメンバーになると、ブランドは水使用や温室効果ガス排出、エネルギー使用、土壌炭素、土地利用効率における対前年比集約データを入手できるようになります。
 ジーンズの世界的メーカー、リーバイ・ストラウス社(Levi Strauss & Co.) のGlobal Sustainability Integrationシニアマネージャーでトラスト・プロトコルの理事会メンバーでもある Liza Schillo氏は、「使用するコットンの品質とサステナビリティは、自社のビジネスにとって不可欠であり、顧客にとって重要です。我々はサステナブルなコットンを原料として使用し、水使用、炭素排出、化学薬品使用の削減に真剣に取り組んでいます。ですから我々は U.S.コットン・トラスト・プロトコルなどのサステナブルな綿花栽培を擁護し、また長期にわたるサステナブルな栽培の普及につながる基準の導入を強く支持します」と述べています。
 
 既にこのブログ2020.5.11付けでも掲載しているように、U.S.コットン・トラスト・プロトコルはテキスタイル・エクスチェンジの推奨繊維・素材リストに加わり、170を超える参加アパレルや小売がテキスタイル・エクスチェンジの素材切替指標(Material Change Index)プログラムの一環として選択できる36種類の繊維・素材の1つとなりました。
 
 下記にアメリカ綿が過去35年間に、責任ある綿花生産において大幅な改善を果たした実績を改めてご紹介します。

 【35年間の環境負荷軽減の実績】
351  (上記左から)土地利用31%削減、土壌侵食44%削減、水使用82%削減、エネルギー使用38%削減、温室効果ガス排出30%削減
 
 さらに前進し続けるため、トラスト・プロトコルは2025年に向けた意欲的な全米目標を掲げています。2025年までに、アメリカの全綿花の半分以上をこのプログラム対象の綿花とすることを目指しています。

 【継続的改善のために設けた2025年全米目標】20251

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2020年7月19日 (日)

ドレス・コード?─着る人たちのゲーム展 “着る”を再考察

 開催延期となっていた「ドレス・コード?─着る人たちのゲーム」展が、東京・初台のオペラシティアートギャラリーで開催されています。予告のオンライントーク動画(このブログ2020.6.1付け参照)が公開されていたこともあり、楽しみにしていた企画展です。オープンするとすぐに日時を指定して見に行って来ました。

  本展は、“着る”という行為そのものを再考察させられる点でユニークです。私たちが普段何気なく袖を通した服は、何らかの記号を表現している、つまりコードにつながっているのです。
 「今日着ている服、あなたはどうやって選びましたか?」と問われて、私たちは他者との関係を考えて服を選択していることに気付かされます。服と人との間には、“視る/視られる”という関係性があることを、約300点に及ぶ展示で紹介しています。

 鑑賞者はこの関係性にまつわる下記13項目の質問 (テーマ)を投げかけられながら、会場を巡ります。

 0.裸で外を歩いてはいけない?
 1.高貴な振る舞いをしなければならない?
 2.組織のルールを守らなければならない?
 3.働かざる者、着るべからず?
 4.生き残りをかけて闘わなければならない?
 5.見極める目を持たねばならない?
 6.教養は身に着けなければならない?
 7.服は意志をもって選ばなければならない?
 8.他人の眼を気にしなければならない?
 9.大人の言うことを聞いてはいけない?
 10.誰もがファッショナブルである?
 11.ファッションは終わりのないゲームである?
 12.与えよ、さらば与えられん?
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 注目したテーマをいくつかご紹介します。(写真は大部分が撮影不可でした。ここでは許可がおりているものだけを掲載しています。)

 まず1の「高貴な振る舞いをしなければならない?」です。18世紀ロココの衣裳が展示されています。これは上流階級であることを誇示する証です。そのバックに飾られているのが、坂本真一の漫画作品『イノサン』のキャラクター画で、両者を対比させているところがおもしろいです。Img_88071
 次に2の「組織のルールを守らなければならない?」です。
 ここではユニフォーム、制服に焦点が当てられています。服装は私たちの社会的属性を表す記号のようなもので、とくに集団を訴求する型が求められるのが制服です。でもその型の中で、着崩す、細かなアイテムで差別化を図るなどして、自身の個性を主張するのが人間なのですね。
 展示されているのは基本のスーツや学生服に様々なアレンジを加えたファッションデザイン。プリーツやスカートを穿いたメンズスーツなど、その脱ステレオタイプなバリエーションが興味深いです。

 3の「働かざる者、着るべからず?」では、かつて労働者階級の服だったジーンズが取り上げられています。今や現代ファッションに欠かせない一分野を形成しているデニムのファッションがエキサイティングです。
 玉井健太郎デザイナーが手がける「アシードンクラウド(Aseedoncloud)」(このブログ2020.4.2付け参照)の作品も出ていました。架空の職業で働く人の物語から生まれたキャラクターによる独特のワークウェアがイメージされています。 Img_73101jpg_20200719181901  上の写真はこの春の展示会のときのもので、炭鉱夫の一家という設定のストーリーから紡ぎ出されたコレクションです。

 4の「生き残りをかけて闘わなければならない?」では、軍服に端を発するバーバリーのトレンチコートや迷彩服が並んでいます。ジョン・ガリアーノによるクリスチャン・ディオールの2001春夏のドレスや、ジャン・ポール・ゴルチェの2000春夏のカモフラ―ジュプリントの浴衣など、平和な世の中でミリタリー気分を楽しむ多彩なファッションを見ることができます。

 ハイライトはやはり、6の「教養は身に着けなければならない?」です。アートとファッションの結び付きを主題とした作品が美しくディスプレーされています。
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 真っ先に目に飛び込んでくるのが、コム・デ・ギャルソン2018年春夏コレクションからの3体です。
 真ん中がチラシに大きく使われていた高橋真琴のアニメ少女をインクジェットプリントしたドレスです。両隣に雪村の水墨画とマニエリスムの画家アルチンボルドの絵画を大胆にあしらったドレスが置かれています。さすがに本展でひと際目立つ、ステキな展示風景でした。Img_88041jpg
0e5fb40b360412a9e5d1  このコーナーではイヴ・サンローランのモンドリアン・ドレスや、アンディ・ウォーホルのキャンベルズ・スープカンパニーのザ・スーパードレス、それにキッチュな絵画・彫刻で知られる美術家ジェフ・クーンズとルイ・ヴィトンのコラボバッグ(右)の展示も。
 また元祖・自撮り女王、シンディ・シャーマンの作品、それに並んで森村泰昌の「白いマリリン」のセルフポートレートが目を惹きます。

 ホールを抜けたコリドーで目を見張るのが、10の「誰もがファッショナブルである?」展です。
Img_87831   壁面全体をおおうのは写真家 都築響一の作品で、その異様な迫力に圧倒されます。モードの王道からはずれたストリートファッションやオタクファッション、ニッポンのニッチな「お水スーツ」や「ロリータ」、「ヤンキー成人式」、「極道ジャージ」、「異色肌」などから、ホームレスや田舎暮らしの老人まで、多種多様な人々がそれぞれのファッションを提唱している、見応えのある展示でした。

 続いて2階に上ると、最後の二つのテーマ展示があります。

 11の「ファッションは終わりのないゲームである?」。ここで目にするのは、演劇カンパニー「マームとジプシー」の藤田貴大によるインスタレーションです。Img_87901jpg  26人のポートレートとそれぞれのキャラクターから、ファッションによる新しいステレオタイプを生み出すことを試みる作品で、他者の視線がある限りファッションは終わりのないゲームなのかもしれないと結んでいます。
 
 最後は12の「与えよ、さらば与えられん?」です。
 Img_87961  チェルフィッチュを主宰する岡田利規の映像演劇で、カーテンの向こう側で、男性の影が「服をください」、ならば「与えよう」と応じ、「視る/視られる」のやりとりが交わされるというもの。
 
 ファッションは常にあるコードの下、視覚的なメッセージを発しています。その意味で気づきの多い展覧会でした。
 なお会期は8月30日までとなっています。ファッションに関心のある方はお早めにどうぞ。

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2020年7月18日 (土)

GUCCIMAZEの初個展「MAZE(メイズ)」に注目

 日本人グラフィックデザイナー/アーティストのGUCCIMAZE(グッチメイズ)の初めての個展が、東京・渋谷のDIESEL ART GALLERYにて開催されています。Img_86431jpg
Img_86441  タイトルは「MAZE(メイズ)」で、「迷路」の意味ですね。鋭いラインのレタリングやメタリックで立体的なタイポグラフィ、奇抜で毒々しさを感じる配色---、それらを見ていると確かに迷宮に入ったかのように惑わせられます。
 
 GUCCIMAZEは最近のサイケデリックデザインの新潮流「Acid Graphicsアシッド・グラフィックス」を牽引する存在だそうです。ここでは彼ととともに気鋭のクリエイターたちも参加して、新作を発表しています。
 
Img_86471  上は彫刻家・KOTARO YAMADAの作品。神秘的なマリア像を思わせます。
 
Img_86491  ミュージックにインスパイアされたTシャツなどアパレルも発表。ネオン管の光のアートワークも注目です。

 今、世界中から熱い視線が注がれている新しいスターデザイナー、GUCCIMAZE、今後の活躍が期待されます。

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2020年7月17日 (金)

篠原ともえ シカク展―シカクい生地と絵から生まれた服たち

 今、篠原ともえさんの初個展「シカクSHIKAKU展―シカクい生地と絵から生まれた服たち―」が、20日まで渋谷ヒカリエ8階のギャラリーCUBEで開催されています。
 副題に「シカクい生地と絵から生まれた服」とあるように、これはシカクから生まれた「絵を服に」した企画展です。シカクい生地とは、文字通り四角い端切れです。作品は、篠原さんがデザインしたコスチュームの余り布を集めてドレスに仕上げたものであるとのことです。
 そこには昨今の創作活動に欠かせないサステナビリティの精神が息づいているようです。デザインのヒントは日本の着物で、篠原さんは着物をほどいた時、その四角の合理的な形とつくりに感動したといいます。きものは布をシカクいまま使用しますから裁断が少なく、廃棄物もほとんど出ません。
 篠原さんは、そうしたモノを大切にする日本の文化を象徴する着物に着目し、四角い布を折ったり、重ねたりしながら、アーティスティックに造形したといいます。
 
Img_88771  上は、丸く立体的にふくらんだドレスで、一枚の布でつくられています。どこにもハサミが入っていなくて、すばらしいと思いました。光沢のある生地は生分解性のある素材だそうです。
 
Img_88741jpgImg_88691  小さく切った四角い布をレイヤーしたドレス作品など、手が込んでいます。ブルーやグレーのグラデーションも美しい。

1_20200717104401  篠原ともえさんは2015年の「コットンの日」のイベントに出演し、プロデューサー役を務めたことがありました。
 右はそのときの写真です。
 
 着用していた白いコットンのドレスはもちろん篠原さんの手づくりです。
 光をイメージしてデザインしたといいます。
 無数の綿の種がちりばめられていたのが印象的でした。
 
 1995年にデビューして「シノラー」ブームを巻き起こした篠原さんが、こんな風にアーティスト/ファッションデザイナーの顔をもつマルチタレントに変身していたとは!
 ほんとうなすてきな方ですね。ますますのご活躍を期待しています。

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2020年7月16日 (木)

パリ・オートクチュール⑻ まとめ

 2020/21秋冬オートクチュールコレクションが8日、3日間の幕を閉じました。参加した34のメゾンの新作をオンラインで配信し、デジタル時代の到来を実感します。
 本来ならフィジカルなランウェイショーとなり、限られたバイヤーや顧客、プレスのみが招待されるはずでした。それが新型コロナの影響で、世界中誰もがリアルタイムで視聴することができたのです。私も楽しませていただきました。
 デジタルに限界があることは確かです。しかしブランドの世界観やストーリーを伝えるのには適していると思われます。登場するモデル数も少なくて、わずか1点というブランドもありました。でも少ないからこそ、そのブランドのコンセプトをより強くアピールできたのではないでしょうか。無観客ショーというとクラシカルで定番的スタイルと思われがちですが、このブログでも既に取り上げたジャンバチスタ・ヴァリ(Giambattista Valli)やヴィクター&ロルフ(Victor&Rolf)、イリス・ヴァン・ヘルペン(Iris Van Herpen)には心を打つものがありました。

 以下は今回オンラインだったからこその新しい発表方式です。興味深く思ったものをご紹介します。
 まず一つは、発表の場所を問わないことです。例えばトップを飾ったスキャパレリ(SCHIAPARELLI)です。

 デザイナーは昨年春に新アーティスティック・ディレクターとして就任したアメリカ人デザイナーのダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)で、ニューヨーク在住と思われます。映像は、デザイナーがニューヨークのセントラルパークでデザイン画を描いているシーンを映し出していました。無理もありません。コロナの移動制限でパリのアトリエへ行くことができなかったのですから。でもこんな風にデジタルを使えば、どこにいても、またいつでもパリとつながって仕事ができます。

  二つ目は、ムービーです。娯楽映画でも見ているようなワクワク感、ドキドキ感のあるストーリーで魅せられます。マッテオ・ガロンヌ監督がデザイナーのマリア・グラツィア・キウリの依頼で、おとぎ話のような世界をイメージに落とし込んだディオール(このブログ2020.7.10付け参照)、ギリシヤ神話の「エレクトラ」をテーマに母と娘の関係を象徴するフィルム作品を見せたアントニオ・グリマルディ(Antonio Grimaldi)、医師にフィーチャーしたコレクションを見せたフランク・ソルビエ(FRANCK SORBIER)も。

 上は、フランク・ソルビエのオートクチュールコレクションです。
 
 ペストが流行した時代、医師は鳥を連想させる長いくちばしを持つマスクをつけて、木の杖を使って聴診したそうです。自由の女神像を縛って拘束するシーンもあり、今の新型コロナを連想させる、ちょっとホラーなショートムービーです。

 三つ目は、制作のプロセスを見せる動画です。ジュリアン・フールニエ(Julien Fournier)はアトリエを公開、スケッチから最終製品に至るまでオートクチュールコレクションの制作過程を紹介しています。普段なら見れないモードの舞台裏に興味津々です。

 この他、多々みられたのが、ミュージックビデオ(MTV)で、オリヴィエ・ティスケンスによるアザロ・クチュール(AZZARO COUTURE)や、既にこのブログ2020.7.13付けに掲載したシャネル(CHANEL)など。
 さらにコレクションのイメージビデオでは、自然への回帰を謳うエリーサーブ(ELIE SAAB)、サバンナと題して動物をモチーフにしたグオ・ペイ(GUO PEI)、蝶々が飛び交うラフル・ミシュラ(Rahul Mishra)も注目です。

 最後に、期待したメゾン・マルジェラ(MAISON MARGIELA)とヴァレンティノ(VALENTINO)は、ティーザーの予告だけで少しがっかり。ヴァレンティノは7月21日にローマでのライブ・パフォーマンスを発表するとのことです。

 初めてデジタルでの発表を余儀なくされたオートクチュールコレクションでしたが、やってみなければわかりません。そのメリットもいろいろ見つかったと思います。今後はこんな風にリアルにデジタルを上手に採り入れたコレクションが増えていくことになるのでしょう。

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2020年7月15日 (水)

パリ・オートクチュール⑺ ヴィクター&ロルフ「チェンジ」

 アートなモードで魅せるヴィクター&ロルフ(Viktor&Rolf)。2020/21秋冬オートクチュールコレクションはアムステルダムの5つ星ホテル、ウォルドーフ アストリアにて無観客で開催したショーを5分ほどのショートフィルムにまとめ、公開しています。
 テーマは「チェンジ(CHANGE)」です。ウイズコロナ時代に変化するクチュールのマインドセットを表現しています。3つのパートに分かれて、それぞれ3着ずつ、合わせて9着が登場します。

 
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 (写真はヴィクター&ロルフのオートクチュールコレクションから)

  最初のパートは、不安やおそれから身を守るといった感じのダークなローブやコートです。次にきれいな優しいピンクのドレッシングガウンが現れます。顔文字をちりばめたり、リボンをあしらったり、おとぎの国に行ったような楽しい気分です。最終パートには、温かい雰囲気のハートのモチーフが出現します。ハートのマークを飾ったワードローブで「愛」を謳うフィナーレです。
 コロナの影響を感じさせるのは、各パートに出てくる社会的な距離を保つために設計されたコートでしょう。もちろんマスクも。
 ヴィクター&ロルフらしいウィットに富んだコレクションでした。

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2020年7月14日 (火)

パリ・オートクチュール⑹ ユイマ ナカザト「Face to Face」

 パリ・オートクチュールの公式ゲストメンバーとして、今シーズンで8回目を迎える「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」は、ドキュメンタリーフィルム「オンライン オーダーメイド プロジェクト」を発表しています。
 フィルムのテーマは「Face to Face(フェイス トゥ フェイス)」です。これは「面と向かって」という意味ですね。コロナで移動が制限されている今だから余計にこの言葉が、心に刺さります。ブランドを手掛ける中里唯馬デザイナーが「社会的距離を保たなければならない現状が、逆に人と人との間に精神的な繋がりを築くことの大切さを気付かせてくれた」と語っているのも印象的です。
 
 
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(写真はユイマ ナカザト・オートクチュールコレクションから)

  これまでオーダーメイドといえば、客に会い、採寸などを行いながら仕立てていくものでした。が、しかしこのオンライン オーダーメイドなら、客に実際に会わなくても、世界で1着の服をデザインして制作できるといいます。 
 その仕組みは次のようです。客から白いシャツを預かり、それをオンラインで客と対話しながら新しい服につくり直し、できあがった服を2~3週間で客に届けるというもの。客にとっては元の価値以上の価値ある服を手に入れることができるうれしいサービスです。
 この5月にプロジェクトを開始以降、世界中から25人もの参加があったといいます。ファッションを通じて少しでも気持ちをポジティブに、という願いからチャリティーとして無料で提供したということにも敬意を表します。
 このオンライン オーダーメイド プロジェクト、デザイナーも語っているように、サステナブルで豊かな未来に向けた次世代へのヒントになりそうです。このすばらしい取り組みが日本の若手デザイナーによるものとは、何とも誇らしい!

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2020年7月13日 (月)

パリ・オートクチュール⑸ シャネル パンクスタイルを演出

 パリ・オートクチュールの2日目、期待のシャネル(CHANEL)が登場し、2020/21年秋冬コレクションを短い動画で発表しました。短すぎるのと、早いので、あっけないくらいでした。



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(写真はシャネルのオートクチュールコレクションから) 

 ブランドを手がけるのは、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏後任のヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=クリエイティブ・スタジオ・ディレクターです。
 今シーズンは、メゾンの伝統というよりも、タフタのドレスや刺繍の入ったツイードのスーツ、ネックライン、フリル、フェザー、ジュエリーで、パンクスタイルの女性像を演出したといいます。たとえばカール・ラガーフェルド氏と一緒に、ナイトクラブ「ル・パラス」に行くような、エキセントリックな魅力を放つ女性であるとも。
 輝き、豪華さ、クラフツマンシップを備えた、ココよりもカールらしい、煌びやかな華やかさにあふれたコレクションです。

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2020年7月12日 (日)

パリ・オートクチュール⑷ ジャンバティスタ・ヴァリとパリ

 ジャンバティスタ・ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLI)の2020/21秋冬オートクチュールコレクションが初日、10分ほどのショートムービーで発表されました。ヴァリはイタリア人クチュリエの中でも最もパリらしいといわれているクチュリエですね。
 映像にはヴァリのパリへの情熱が、華麗なクリエーションに溶け込んでいるようでした。ドレスは一着ずつ、各々インスパイアされたと思われるパリの風景、エッフェル塔から枯れ葉、雪をまとった樹木、セーヌ川、きらめく水面、優雅に泳ぐ白鳥などと対比させる形式で披露されていきます。メゾンのDNAを彷彿させるイブニングドレスが次々と---。チュールは何層にも重ねられてフリルのカスカードのようです。シフォンやモスリンは巧みにドレープされ、ファイユやタフタはリボンに命を吹き込みます。ベールのマスクのルックも印象的です。それらはもうファブリックの彫刻!
  まとうのは、ソマリア出身のモデル、アマリア・ヴィアレッリ(Amalia Vairelli、元YSLのミューズ)です。ドレスの魅惑を伝えるしなやかな動き、その群を抜く美しさに魅了されます。
 
 
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(写真はジャンバチスタ・ヴァリのオートクチュールコレクションから)
 
 すばらしい夢でも見ているかのようなコレクションでした。

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2020年7月11日 (土)

パリ・オートクチュール⑶ イリスの「トランスモーション」

 3Dプリントや3Dデザインテクノロジーを活用したウエアで知られるオランダ人クチュールデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペン。パリ・オートクチュールコレクション初日に発表されたショートフィルムで目にしたのは、精巧極まりない美しいドレスでした。

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 (写真はイリス・ヴァン・ヘルペンのオートクチュールコレクションから)

 テーマは「トランスモーション(Transmotion)」です。変化や移ろいといった意味の言葉で、ここでは黒い粒の種子が芽を出し、枝葉をつけて、花を咲かせる、生命の「成長と再生」がコンセプトといいます。
 白いシルクオーガンザのドレスは、花のような輝きを放ち、半透明のレイヤーが起伏のあるフォルムの中でプリーツ状に重ねられ、流動的なアウトラインをなぞっています。シアーな花びらの儚さと対照的なのが、衣服の中心部を占める黒い枝のようなモチーフです。これは日系の彫刻家、ルース・アサワ(Ruth Asawa)の複雑なアートに由来するものとか。上品な光沢を放つ最高級サテン地をレーザーカットし手縫いでつくられているそう。先端に種子のようなものをつけた伸びる糸は、まるで雄しべのよう。
 最先端テクノロジーを駆使して、自然界に息づく新しい生命の姿を繊細に表現した作品。もう、ため息ものの美しさでした。

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2020年7月10日 (金)

パリ・オートクチュール⑵ 「ディオール神話」圧巻の美

 今シーズンのオートクチュールコレクションは、この6日~8日に開催され、全部で34のクチュールメゾンが、2020/21秋冬に向けたクリエーションをオンラインで発表しました。朝から夜まで1時間刻みに組まれたスケジュールの下、各ブランドは映像を通して、コレクションの考え方や思想、美的センスを披露しています。
 ここではとくに記憶に残ったブランドをピックアップしてご紹介します。
 
 初日、ハイライトとなったのがディオール(Dior)です。「ディオール神話」と題したショートムービーは圧巻の美しさでした。10分程度の短いものですが、撮影したのは、あの「ゴモラ」などで知られるマッテオ・ガッローネ(Matteo Garrone)監督です。古代ローマの遺跡を背景に撮り下ろした映像は、さすがに本格的で、すっかり引き込まれてしまいました。

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(写真はディオールのオートクチュールコレクションから)

 冒頭、ミニチュアのマネキンの服をつくっている工房の風景が出てきます。これは何なのかな、と思っていましたら、その後登場する二人組が担いでいるトランクの中に入っていたマネキン人形でした。
 トランクはディオールのパリ旗艦店を象っています。扉を開くと、そこは人形によるファッションショーの舞台です。これは第二次世界大戦後、疲弊したオートクチュールを立て直すためにつくられた「テアトル・ド・ラ・モード」を模したものだったのです。
 そこにはコロナ危機を乗り越えて、モード業界を復興させたいというディオールの強い意志のあらわれを感じます。デザイナーのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は今シーズン、現在を戦後の復興期になぞらえて、原点への回帰を提案しているようです。
 ムービーには、美しい人魚や森の精霊、ニンフたち、半獣神といった存在が現れ、トランクの中にあったクチュールコレクションを身にまとって、美しく変身していきます。
 そのこの世のものとは思われない美しい姿は、これぞオートクチュール! 圧倒されました。

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2020年7月 9日 (木)

パリ・オートクチュール⑴ オープニングで「多様性」を訴求

 2020/21秋冬パリ・オートクチュールコレクションが、デジタル配信で6日開幕しました。当初はパンデミックの影響で中止と公表されていたのですが、急遽、初のオンライン開催となったのです。
 パスカル・モラン オートクチュール・プレタポルテ連合会 (通称、サンディカ)会長は、これについてビデオメッセージを発信しています。要約しますと、「デジタル化が加速しても、100%デジタルファッションになることは絶対ない。重要なのはデジタルテクノロジーがクリエーションと組み合わさり、新しい表現を生み出すことであり、テクノロジーの利用は21世紀の価値観でありフレームワークなのです」と。

 こうしてオンラインとなったイベントですが、多くの人は歓迎しているのではないでしょうか。通常でしたら特別なプレスやバイヤーしか見ることができないコレクションショーです。それを今季はPCやスマホがあれば誰でも視聴できるのです。今年は「オンライン・デモクラシー元年」ともいわれるそうですが、まさに言い得て妙ですね。

 そのオープニングに登場したのが、英国出身スーパーモデルのナオミ・キャンベルさんです。「Phenomenally Black(素晴らしき黒人)」のロゴ入りTシャツを着用したキャンベルさんは、サンディカが用意した動画に出演し、「もっと多様性(ダイバーシティ)を受け入れて」と訴求したのです。実際、黒人モデルやデザイナーは以前より多くなったとはいえ、まだ非常に少数です。
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 「ファッション業界も ” Black Lives Matter(黒人の命は大切)" 運動に歩調を合わせていく必要があり、不平等や多様性の問題に目を向けて、業界全体の責任として取り組んで欲しい」と呼びかけたキャンベルさん。ほんとうにステキですね。

 それにしてもオートクチュールコレクションという、モードの最高峰の舞台で、 冒頭にこのようなトピックをもってくるとは、何という粋なはからい! 改めてフランスの「自由、平等、博愛」の精神に触れた気がして、うれしくなりました。

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2020年7月 8日 (水)

2020年秋冬プロスペール展示会 コロナ禍もポジティブに

 デザイナーブランドビジネスを支えるプロスペール(PROSPERE)が、この1日~3日、同社ショールームにて2020年秋冬展示会を開催しました。 
 コロナ禍で春ものがキャンセルされたデザイナーブランドは、どこも大変な苦境に立たされています。新作と言いながら、前シーズンのものを見せるブランドも数多く見られる、そんな状況になっているのです。
 それでもこの危機に負けないと、ポジティブに乗り越えようとしているブランドがあります。そのいくつかを紹介します。

チョノ(CHONO)
  ブランドを手掛けるのは、テキスタイルデザイナーでもある中園わたるさん。コレクションはその90%以上が、中園さん自身がデザインしたオリジナルファブリックでつくられているといいます。 
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 今秋冬のテーマは「Captivating bird(カササギ)」です。美しい羽根の色や可憐なさえずりで、愛されてきた鳥ですね。
 そういえば昨日は七夕でした。カササギは幾羽にも連なって七夕の日に、織姫と牽牛を天の川を渡って引き合わせる、掛け橋の役割を果たしたともいわれています。そんな言い伝えが今も残っているように、自然と一体となって私たちの生活に溶け込んできた鳥です。
 Img_86251jpg この魅惑的な鳥にフォーカスして、職人の手を借りてつくったファブリックを用い、一着一着丁寧に仕上げたワードローブの数々を披露。
 デザイナーの想いが感じられるコレクションです。

ライフ ウィズ フラワーズ(LIFE WITH FLOWERS)
 2015年、ロイスクレヨンよりスタートしたブランドで、コンセプトは「STANDARDを大切に、遊び心を感じる新しさの提案」とか。
 シンプルでシャープなシルエットの美しさと素材の質感の良さで、心地よい雰囲気を漂わせている注目のブランドです。Img_86141jpg

フラース(FRAAS)
  日本初上陸となるドイツのマフラーブランドで、創業140年の歴史を持ち、世界トップクラスの生産量を誇るといいます。
 Img_86341  2020年秋冬のテーマは「地球・自然への共感、尊敬と調和」です。
 植物や大地からの発想でリサイクル素材を用いた「自然との調和」から、ピンクをフェミニズムの象徴と捉えた自由なイメージの「パンク・クイーン」、女らしい優しさとエレガントな雰囲気にあふれる「あなたと私」まで、様々な大判のマフラーやスカーフが勢揃いしていました。

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2020年7月 7日 (火)

特別展「きもの KIMONO」壮大な時代絵巻の世界に浸る

Img_85941  今、東京国立博物館平成館で特別展「きもの KIMONO」が開催されています。
 現代のきものの源流は鎌倉時代に生まれた「小袖」です。先日、その系譜をたどる壮大な時代絵巻の世界に浸ってきました。
 Img_86031  写真撮影が可能だったのは、上の写真の2点です。
 いずれも江戸時代18世紀の複製のきものです。
 左は白縮緬に梅と鷹の模様の振袖です。
 右は通称「冬木小袖」と呼ばれる小袖です。実物は300年の時を経て修理が必要となり、寄付を募っています。尾形光琳が冬木家夫人のために、白綾地に秋草模様を描いたもので、当時、尾形光琳の「光琳ブランド」が流行したといいます。
 
 本展では選りすぐりの300点が、時代を追って展示されています。
 私がとくに興味深く思った作品をいくつかご紹介しましょう。(なお写真はポスターやチラシに掲載されているものです。)

 第1章「モードの誕生」では、安土桃山時代の華麗な縫箔のきものに目を奪われます。
 当時は全身を模様違いの布で区切るデザインが大流行したようです。その模様に立体感をつける日本刺繍の精巧さに驚嘆させられました。

 第2章「京モード 江戸モード」
 Photo_20200706172301 まず目を見張ったのが寛文小袖の代表作です。
 波のようにデフォルメされた網干模様は、確かに筍のようにも見えます。
 遊び心を感じるデザインがおもしろいです。
  
Uid000318_20200615112934827ef1bc  本展のポスターやちらしに大きく扱われて目立っていたのが、郵便切手でお馴染みの菱川師宣筆「見返り美人図」です。

 髪は玉結び、帯は吉弥結びで、これが元禄時代の最新流行だったのですね。

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   次に染め模様のきもののコーナーです。
  晴れやかな友禅染めきものがズラリ!と並んでいました。 
 中でも豪華絢爛なのが右の熨斗模様の振袖です。
 これはもうあまりの艶やかな美しさにため息!でした。
 
 第3章「男の美学」
 ここでは粋な火消し袢纏のコレクションが素晴らしかったです。
Jpg_20200706172401  とくに船弁慶をテーマにした模様には、前面にドクロも描かれていて、江戸のパンク?と思いました。
 
 右は、織田信長が所用したという陣羽織です。
 ほんものの山鳥の黒羽根を植え付け、その上に白い羽根で蝶の形を表現しています。
 まさに他に類をみない手技の世界、圧倒されました。
 
 第4章「モダニズムきもの(明治・大正・昭和初期)」
20191021_06   綸子に友禅染めのこのきもの(右)は、ヨーロッパの宮殿にでも迷い込んだような華やいだデザインです。
 宝石をちりばめたシャンデリア模様が目を惹きます。
 
 ここにはまた、銘仙のきものがたくさん集められていました。
 
 第5章「KIMONOの現在」
 岡本太郎原案の大胆な「TAROきもの」や久保田一竹のインスタレーション、人間国宝といわれる方々の作品が揃っています。
 ここで私が注目したのは、鈴田滋人氏の木版摺更紗の着物です。というのも2012年の夏に佐賀県鹿島市にある鈴田氏の工房を訪問(このブログ2012.8.9付け参照)させていただいたことがあったからです。鍋島更紗の伝統を引く、自然を題材にした精巧な木版摺の模様は洗練されていてモダン、今にも動き出しそうなリズム感にあふれています。
 
 最後を締めるのは、何とあのヨシキさんの「ヨシキモノ」でした。通常のキモノをドレス風に着付けたドレスキモノは、キモノの可能性を引き出す革新的なスタイルです。人気アニメ「進撃の巨人」のモチーフを採り入れたものも出品されていました。
 Img_93021jpg_20200706172801  写真は、昨年10月の東京コレクションでのフィナーレの写真です。真ん中はヨシキさん。
 
 それにしてもこれだけの重文級きものが勢揃いする機会はめったにないと思います。見応えのある展覧会でした。
 なお会期は延期されて8月23日までで、日時指定制となっています。興味のある方はどうぞお早めに。

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2020年7月 6日 (月)

「ニューマン横浜」横浜駅西口に巨大商業施設オープン

 横浜駅西口に直結するJR横浜タワーに6月24日、巨大商業施設「ニューマン横浜」がオープンしました。開業予定は5月末でしたが、コロナで延期となっていたものです。Img_86621jpg
 どうなっているのか、ワクワク感で行ってみると、意外にもゆったりとした広いつくりになっていました。すっきりとした洗練された感覚で、駅ビルというと縁日的感覚がありますけれど、ここはまったくそれらしくないモダンな空間です。ロンドン“カナリーワーフ”ショッピングモールにほんの少し似ている感じもしました。デザインしたのは若手建築家の多根 剛氏とのことです。Img_86631Img_86641
 1階はグッチとバレンシアガ、ティファニー、2階はサンローランとボッテガベネタ、モンクレールが陣取っています。

Img_86761  3階にオーダーメイドブランドの「カシヤマ(KASHIYAMA)」が入っていました。「カシヤマ・ザ・スマートテイラー」の女性版店舗で、全国で2店目だそう。女性のオーダースーツを20,000円~、シューズは6,900円~、つくっていただけるとのことです。
 オーダーで自分だけのこだわりのモノを求めている女性たちが増えているのですね。

 その隣に位置しているのが、ランジェリー専門店の「アンジェリーク(L’ANGELIQUE)」です。Img_86791jpg カドリールインターナショナルのブランドで、パリの見本市「パリモードシティ」に長年出展しています。私も昨年取材させていただきました。(このブログの2019.7.28付け参照)
 新宿ニューマンに続いての出店ですね。
 店頭では右のような肌に優しいコットン100%カットボイルのリラクシングウェアを打ち出していました。

 この他、「ルフィル(LE PHIL)」などエレガントなレディスウェアブランドが目に付きます。

 4階には「ザ・ノース・フェイス」や「アーペーセー」、「マーガレット・ハウエル」など人気ブランドが揃っています。

 駅ビルにしては贅沢な雰囲気いっぱい、百貨店顔負けのSCでした。

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2020年7月 5日 (日)

2021春夏「楽天ファッション・ウィーク東京」開催の見通し

 「楽天ファッション・ウィーク東京」が、10月12日から18日までの予定で開催実施を決定したというニュースが飛び込んできました。コロナ禍で世界各地のファッション・ウィークが変更を余儀なくされる中、東京も危ぶまれていたのです。
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 これにより2021春夏東京コレクションが発表される見通しとなります。ランウェイショー以外の発表形式の増加も予想されることから、参加ブランドにはヒアリングを事前に行い、デジタル・プラットフォームも用意されるとのことです。
 まずは一安心といったところですね。
 さらに来年の開催時期について、10月開催を8月開催に前倒しすることになったそうです。以前から東京コレクションは時期が遅すぎると批判されてきましたから、致し方のない判断だったのでしょう。
 コロナで延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催月でもあり、結果オーライになるといいな、と思います

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2020年7月 4日 (土)

「エコアルフ渋谷」スペイン発サステナブルブランド旗艦店

 今話題の「エコアルフ 渋谷」、先日、見に行ってきました。
 「エコアルフ(ECOALF)」は、2009年に立ち上がったスペイン発サステナブルファッションブランドです。日本での展開は、三陽商会が担い、この3月、オープンしたのがこの「エコアルフ渋谷」で、アジア初の旗艦店といいます。これに次いで「エコアルフ銀座タイムレス8」や「エコアルフ二子玉川」も開業しています。
 店内にはリサイクル素材や環境負荷の低い素材のみを使用した衣服や雑貨が並んでいます。
Img_85441   入口近くの壁面を飾るスニーカーは、海洋ゴミとなったペットボトルや漁網ナイロンを原料とした再生素材を使っているそう。
Img_85451  このブランドは、「アップサイクリング・ジ・オーシャンズ」という、海洋ゴミの回収・分別・再生・製品化するプロジェクトに取り組んでいるといいます。
  Img_85571  写真のカラフルなビーチサンダルは廃棄されたタイヤからつくられているそうです。
 Img_85471  オーガニックコットンやリサイクルコットン、リサイクルポリエステルなどを使ったウェアも多数。いずれも飽きのこないベーシックなデザインです。
 
Img_85541jpg  2階の売場です。一番奥に巨大スクリーンのあるコーナーがあって、サステナブルに関する座談会などができるようになっていました。
 
 SDGsを体感できる画期的な店舗として注目されます。

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2020年7月 3日 (金)

対談 佐々木康弘×坊垣佳奈「D2Cが小売りの主役になる日

 D2C (DtoC メーカー直販)がコロナショックもあって需要が急激に伸びています。
  先般WEBセミナーで、TAKRAMディレクター佐々木康弘氏とマクアケ共同創業者の坊垣佳奈氏によるJpg 、「D2Cが小売りの主役になる日」をテーマにした対談がありました。
  D2Cが小売業界をどのように変えていくのか、その成功の鍵は哲学と倫理にある、といった興味深い内容でした。下記にその概要をまとめてみます。
 
 まずコロナショックによってD2Cはどのように変わるのか?
 佐々木氏は、「普遍的なものになっていく」といいます。「EC比率が5%から16%になるのに10年かかったが、コロナにより8週間で16%が27%になった。コロナはまさに未来加速装置のようなもので、ハインツはハインツ・トゥ・ホームを3週間で始めたし、ペプシもスナックス・ドットコムをスタートさせるなど、大企業がどんどんD2Cに乗り出している。これからはあらゆる小売業がD2Cを手掛けるようになるだろう。コロナでデジタルと顧客が半強制的につながった。これはアフターコロナもアセットとして残り続ける」。
 坊垣氏は、「D2Cをスタートアップではない伝統的な老舗企業が始めたことが象徴的」といいます。「従来、卸に出していた酒蔵が、酒屋が店を閉じたため直接オンラインで売るようになった。このようにこれまで業界的にやりづらかったことが日本には多くあった。コロナを機に非合理的を合理的に変えるチャンスが来ている。こういうことが各業界で起きている気がする」。
 佐々木氏は、「既存の流通に配慮してD2Cをやらなかった業界は多いと思う。これまでは店舗が主でD2Cは副だったが、D2Cが本丸に上がりつつある」。
 ここで話題となったのがアパレルで、アパレル業界はコロナの影響で廃業になっている業界の第3位にランキングされているといいます。ちなみに1位と2位は、それぞれ飲食とホテル業界です。
 坊垣氏は、「試着して買うと思われていたアパレルが、インスタライブを始めるなど、一気にオンラインにシフトするようになった。自分もそうだが、女子たちはみんなオンラインで服を購入している」。「オンラインでより買いやすくすることが進んだ業界がアパレルだ」といいます。
 
 次にD2Cとはそもそも「何か」です。
 佐々木氏は、「D2Cの本質は、ただのECではなくモノを買う以外のコミュニケーションをどれだけふくらませられるかにあり、それがこれからのD2C企業に問われている」といいます。「モノの良さを押し出すコミュニケ―ションは否定しないが、つくっている人の背景のストーリー、製造している人の顔が見えることも大事。最近はBLM運動などに見るように、社会的メッセージを発信することも増えている。ただしメッセージを出すだけではなく日々の行動をどうやっているのか、真実が沁み出ているメッセージなのかどうかが問い質されている」とも。
 これを受けて坊垣氏は、「オンラインコミュニケーションのコンサルティングのニーズが上昇している」といい、「コミュニケーションに必要なのは“誠実さ”であり、一本筋が通ったものがないと、ボロが出る」と話します。 
 佐々木氏は、「モノをきちんと理解して共感してもらって購入することが大切になっている。キーワードは坊垣さんの言う“誠実さ”と思う。そうであれば、これまでは知り合いだけに売っていたのが、D2Cにより昔の商店街のように、クチコミで広がる。長野県の名産品などをD2Cで購入するなど、敷居が低くなって、買った本人も多幸感がある」。
 
 またブランドの軸となる世界観について、軸とは宗教性なのか倫理性なのかといった話も出ました。
 佐々木氏は、「消費者のモチベーションはマズローのいう5段階欲求の最高段階である自己実現のその上の自己超越に来ている。企業に要望されるのはeコマースだけではない社会的倫理であり、メッセージを届けるだけでなく、心からの共感でアクションさせていくことが求められている」。
 坊垣氏も、「ブランドは“売れればよい”がよしとされない空気があって、これが一気に広がった。成功者の定義が変わり、何を自身が叶えたのか、そこには社会のためという要素が入っていることが大切で、その意識は地球環境への貢献などをみても、若い世代ほど高い」。
 
 分断が激しさを増すアメリカも話題に上りました。
 佐々木氏は、「コロナはイコライザー"equalizer(均衡を保つもの)"という人がいる。確かにウイルスは人を選ばない。しかし今起きている現象はイコライザーではないと思う。米国では中間層が減少して、経済的分断が大きくなっている」。
 これに対して坊垣氏は、「昔より正義感が強まっている。平等意識が高まり、政治と民衆の距離が近くなっている気がする。日本もテラス事件のように動いたら変わる感覚が少し出てきていると感じている」といいます。
 佐々木氏もこれに合わせるように、「思想的格差が少なくなり良い意味でいい方向へ向かっている」。そして「東京圏を“東京国”、地方自治体を“オンライン国”とすると、田舎と思っていた“オンライン国”がコロナで成長している」という面白い例え話を披露。コロナは地方と東京の差を縮めたといいます。
 
 さらにこれからのブランドは「“鏡”から“窓”へ」に言及。
 佐々木氏は、「ビジョンが重要であり、判断軸のある経営が求められている。ビジョンがあれば社員が目指す道筋も整えられる」といい、ビジョン達成の在り方として、「これからのブランドは、マーケットを分析しそれを反映する“鏡”から、消費者との間に壁がない“窓”が開いている状態にならないといけない」と持論を述べます。「透ける壁の向こうでどういう人がつくっていて、オフィスの中にはなにがあるのか、見える状態にしていくために不可欠なのかミッションやビジョンで、それがないとバラバラになる」と、またしてもビジョンの重要性を強調しました。
 坊垣氏も、「カスタマーサポートの返信の一つであっても、経営判断と紐づく状態をつくっていかないとブランドの一貫性がなくなる。組織経営に一貫性を持たせるビジョンやカルチャーは必須」と応じます。
 
 今後のD2Cサービスとは?
 佐々木氏が挙げたのが、エクササイズ・エアロバイクの“ペロトン(Peloton)”。自宅にいながら非接触でトレーニングできて、しかもオンラインで世界中の人々と共有する楽しさがあり、アメリカで大人気のブランドになっているとか。
 坊垣氏は、視点を変えて「レガシーな業界が手がけたら上手くいくかも」といいます。佐々木氏も、「D2Cはこれまでスタートアップが中心だったが、今では大手老舗も取り組んでいるし、小さなコミュニティ向けにやっているのもある。いろいろなタイプが生まれてくると思う」と。
 未来的D2Cといっても、坊垣氏によると、それは「新しいモノではなくあるべき姿だったみたいなモノで、特別感は持っていない」。佐々木氏も「突き抜けたものが生まれるというよりは、いろいろなところに染み渡るように広がっていく」とみているそう。
 日本からグローバルブランドを生み出すために、佐々木氏は「マインドセットの変更が大切」であり、「プロダクツの意味を拡張する必要がある」といいます。
 坊垣氏は、「海外から賞賛されるレベルのものをつくる技術がいろいろなエリアに残っている。それを言語化して表現する技術とそのこだわりをコミュニケーションにも発揮させることが必要不可欠。しかしその人たちができるかというと、できないと思う方がよくて、そこは割り切ることが肝要。こだわってモノづくりする精神と世の中に発信する技術は、真逆を向いている。だから外部にサポートを依頼することはやむを得ない選択」と主張します。
 
 最後に佐々木氏が、「D2Cプレイヤーに要求されるのは、企業家の思いを純度100%で届けることがもっとも重要。元々何をしたいのか、届けた相手をどういう感情にしたいのか、そういうところの磨き込みがあれば後は何とでもなると思っている。つまりは最初の問い、哲学に戻るということ」と述べて、締め括りました。
 
 「あらゆるブランドがD2C化する」、その意味をようやく理解できたかな、と思う対談でした。

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2020年7月 2日 (木)

北欧家具イケアが初の都心型店舗「イケア原宿」オープン

 先日、この6月8日にオープンした「イケア原宿」に行ってきました。ユニクロ原宿店の隣で原宿駅前の好立地です。当初は入場整理券を配布して、人数制限をしていましたが、今はそんなこともなく体温測定と手指の消毒だけで入れます。
 イケアは北欧スエーデン発の世界最大の家具メーカーで、日本にある店舗はどこも巨大です。イケア港北も営業面積25,000平米の超大型店で、目を回したことを覚えています。
 それに比べればここはその10分の1の規模でコンパクトな都心型です。
Img_85001  入口のウインドーディスプレーも、大都会に住む独り住まいの若い人をターゲットにしていることがわかるつくりになっています。
 
Img_84991jpg  中に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、シンプルで実用的、カラフルな彩りの北欧テイストのインテリアです。
 
Img_84891  温かくて親しみやすい雰囲気がいっぱい。
 売場は「眠る」、「整える」、「くつろぐ」、「料理する」の 4つの暮らしのニーズを反映した構成で、洗練されているのに気取らない楽しさがあります。
 「スウェーデンコンビニ」も設置されていて、お手頃な価格で購入できるというのも人気の秘密でしょう。
 
Img_84931  館内は吹き抜けの2フロア構造で、明るい開放感にあふれています。
 
Img_84981  2階の半個室感覚のカフェレストランもおしゃれ感たっぷり。
 
Img_84971  フォトスポットも用意されていて、インスタ映えする大きなチェアも鎮座していました。
 
 コロナ自粛で4月末の開業予定が延期されて、ようやく開業した「イケア原宿」。この賑いぶりが続くことを願っています。

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2020年7月 1日 (水)

U.S.コットン・トラスト・プロトコル サステナブルへ強化

 コットンUSAから、次のようなリリースが届きました。
Uscotton_trustprotocol_logo_sustainabiliField-to-market




  それは、U.S.コットン・トラスト・プロトコルがアメリカの綿花生産についてサステナブルな成果を文書化し加速するため、フィールド・トゥ・マーケット(Field to Marketサステナブルな農業を目指す団体)と正式にパートナーシップを締結することに合意したとのニュースです。
   この新たな提携は、両団体の業界をリードするサステナビリティ評価フレームワークを結びつけ、綿花生産農家とバリューチェーンの継続的な改善を推進する能力を強化するものといいます。

 締結された合意内容は下記のようです。
・フィールド・トゥ・マーケットのフィールドプリント・プラットフォーム(FieldprintÒ Platform)の測定指標を活用することで、綿作農家によるサステナビリティ測定が促進され、農業手法とサステナビリティ成果の関係性を分析できるようにする。
・業界で設定した環境目標に対する進捗状況を伝えるフィールド・トゥ・マーケットの『ナショナル・インジケーターズ・レポート』(National Indicators Report)の継続的な発行を通じて、アメリカ綿のサステナビリティの取り組み状況を追跡していく。
・相互の会議やワークセッションに参加することで、協力関係を一層深めていく。

 これにより両者は、アメリカ綿花業界が設定した環境目標に対する進捗状況を共同で評価していくことになるといいます。その環境目標とは、2025年までに土壌侵食、水使用、温室効果ガス排出、エネルギー使用の削減目標を達成するとともに、土地の利用効率を向上させ、土壌炭素を増加させることです。
 U.S.コットン・トラスト・プロトコルのエグゼクティブ・ディレクターであるKen Burton氏は、次のように述べています。「消費者、アパレル、小売業者から繊維メーカーに至るまで、アメリカ綿バリューチェーンにとってサステナビリティの重要度はますます高まっています。U.S.コットン・トラスト・プロトコルは、フィールド・トゥ・マーケットと協力することで、サステナビリティに対する影響度を高め、業界目標を達成し、アメリカ綿のサステナビリティを強化できるものと期待しています」。
 
 U.S.トラスト・プロトコルは、2019年の試験運用を終え、2020年末までに500以上の生産者の参加を目指して、2020年にプログラムの本格運用を開始するとのことです。
 フィールド・トゥ・マーケットとの取り組みの成果が楽しみです。

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