「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」展
今、東京都写真美術館で「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」展が開催されています。
これは90年代および現代における写真とファッションの関係性を探ることをテーマにした展覧会です。監修されているのが、資生堂の広報誌「花椿」編集者の林央子氏とのことで、興味をもって見に行ってきました。
展示されているのは、90年代以後からの4人の写真家の作品や、ファッションデザイナーを含む若手アーティストらとのコラボレーション作品、特別企画としてのインスタレーションなど約100点です。
ここでは写真というメディアがファッションと関わりながら変遷する軌跡が紹介されています。それは下記のようです。
1990年代に入ると、写真は人々の考え方やライフスタイルにも影響を与えるようになっていきます。人々に訴えかけるイメージを作り出す写真家や、インディペンデントなスタンスで情報を発信するファッション誌の登場はそのあらわれでした。写真はファッションの魅力を伝えるという枠組みを超える存在になります。
2000年代以降インターネットが普及すると、写真はさらに変化します。かつて新聞や雑誌の編集者、記者など、限られた人々を介して伝えられていた最新のファッションショーや展示会の様子も、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを通して、タイムラグなく一般の人々の手元に届けられるようになりました。また情報の受け手自身もタグ付けをしたセルフィー(自撮り)のように、様々な形で情報発信を行うようになっています。
写真とファッション、切っても切れない関係にある両者が時代とともに変容を遂げていることを、改めて考えさせられた展覧会でした。
上は、写真家のアンダース・エドストロームの作品で、90年代に活躍したデザイナー、マルタン・マルジェラの1994年春夏コレクションの写真です。本展のポスターやちらしにも使われています。エドストロームはマルジェラの作品撮影を長く手がけ、大胆な構図が反響を呼んだといいます。
フランス発のファッション・カルチャー誌「パープル」の展示もあり、懐かしい感じがしました。90年代に刊行され、インディペンデントな編集ポリシーと高いヴィジュアル・クオリティーで、世界中のアーティストや編集者から注目された雑誌です。
上の写真は、高橋恭司の「Tokyo Girl」と題したファッション写真で、ストリートファッション誌「CUTiE」1992年6月号に掲載されたものです。
90年代は、このようなストリートファッション誌が多数登場し、それとともに海外のクリエイターが“東京という場所”に注目しはじめた時代でもありました。
上は、大谷将弘と今福華凜のペアが2014年4月に立ち上げたファッションブランドPUGMENT(パグメント)のインスタレーションです。 ブランドのアーカイブの中から材料やつくり方が作品とともに展示されていて興味深く思いました。ファッションの機能や身体性に着目した実験的な服づくりがユニークです。
右は、2019年のパグメント(PUGMENT) ×ホンマタカシによる「Images」シリーズの一つで、迷彩柄のミリタリージャケットと白いパンツ姿の若い女性を沖縄で撮ったもの。
一連の作品は、多くの米軍基地がある沖縄を背景に、ミリタリーウェアを着こなす若者たちの姿を捉えたもので、“ミリタリー”という服のもつ価値や意味を考えさせられます。
なお、 本展開催は7月19日までとなっています。