コロナの時代に働く プラス思考で快適さを維持する服とは
大手アメリカのコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーは「危機の時代における北米ファッション産業の展望」の中で、次のように述べています。「テレワークやフレックスタイムといったワークライフバランスの重視が新たな規範となる中で、職場環境は多くの人にとってこれまでとは異なるものになるでしょう。アパレル購入の際、最重要視されるのは“快適さ”かもしれません。危機以前からすでに強く見られた『カジュアル化』の傾向はさらに加速する可能性があります。」
ここではコロナの時代に働く「プラス思考で快適さを維持する服とは」を考えます。 “ロサンゼルスタイムズ”のファッション編集者が最近、在宅勤務の人は「仕事のプロならきちんとした服を着るべきだ」と発して、物議をかもしたそうです。彼自身、実はスウェットパンツを着用して仕事に臨んでいたのです。(日本でも上着だけスーツでボトムはパジャマのニュースキャスターがいましたね。)
「消費者は快適な衣服でストレスを緩和している」といいます。このことは米国での調査資料からも見て取れます。EditedのKayla Marciによると、米国ではアクティブウェアの売れ行きが4月初旬、2019年同期に比べて40%増加。メンズのアクティブウェアでは18%増、ウィメンズはより大幅な増加で43%増。レギンスはボトムス全体の50%を占め、無地がプリントを上回り、柄物ではカラーブロックか、もしくは花柄、あるいはタイダイだったとのこと。さらにウォール・ストリート・ジャーナル紙に、トラックスーツの完売数が36%増加、スウェットパンツの完売数も39%増となり、もう一つの売れ筋、バスローブも29%の売上増を記録したことがレポートされています。
コロナ危機で、数えきれないほど多くの米国市民が自宅待機令を受け、不確実性とストレスに加えて、ドレスアップの機会もなくしました。この事実が、こうしたアイテムの売れ行きを伸ばし、日常の服装を変えてしまうことにつながっている、ということでしょう。
コットンインコーポレイテッドの「2020年コロナウイルス対策調査」(第1波、3月20日~25日)も、人々の行動が大きく変化したことを伝えています。10人に7人以上(71%)がテレビ、映画、ビデオをよく見るようになり、67%がニュースを読んだり見たり聞いたりするようになり、また62%が快適な服をよく着るようになり、54%が料理をするようになり、52%が快適な食べ物やスナック菓子を食べるようになったといいます。
待機が始まって以降、衣料品の買い物をする人のほぼ半数(46%)が、着心地の良い服を購入、その51パーセントが、快適な服がより重要と回答しています。このため3分の1以上(37パーセント)が天然繊維で作られた服を買い求め、34%が以前よりもカジュアルな服を着るようになったと答えています。
また消費者の42%が「長持ちする」、耐久性のある服を購入、40%がアクティブウェア/アスレチックウェアを求め、27%が待機前よりもアクティブなウェアを着用していると回答しています。
テレビを見たり、体を動かしたりするためのソフトなスウェットや汎用性の高いヨガパンツのようなアイテムの売り上げが増加していることは、未曾有の危機の中で消費者が自分を落ち着かせようとしていることを物語っているようです。
トレンド予測会社のWGSNは、コロナウイルスが人々の精神に大きな影響を与えていると指摘。「不安が重要な関心事となり、人々は健康だけではなく、収入の減少や失業の懸念という恐怖に襲われている」といいます。
上述の「コロナウイルス対策」調査で、「最近とても怖い」と答えているアメリカ人は63%に上り、4分の3 (75%) が「今すぐ居心地の良いベッドやブランケットで丸くなりたい」と回答。また70%の人が「人々がこのパンデミックを十分に真剣に受け止めていない」ことに、多少なりとも同意していて、危険から逃れるために、半数以上(54%)がオンラインショッピングを逃避手段と答えているとか。
「サバイバルモード」に移行するにつれて、人々は「安全性と安心感を反映した商品に惹かれていく」ことが分かります。消費者の4 分の3 (75%) が「快適な服を着ていると、気分が良くなる」と答えているのは、このためでしょう。
素材では、回答者の70 パーセントが、綿製品の服が最も快適だと答え、スパンデックス製の27%、ポリエステル製の22%、レーヨン/ビスコース/テンセル/モダール製の16%、ウールの服の17%を大きく上回ります。また5人に4人以上の消費者(82%)が、コットンは他の繊維よりも安全性が高い、と評価しています。
今後、ファッションブランドや小売は、アパレルに快適性と安全性を求める消費者の欲求の重要性を考慮する必要があるものと思われます。
最後に、“ネクスト・ノーマル(次の普通)”とは、人々がいつもカジュアルに見えることかも――というマッキンゼー・アンド・カンパニーの言葉で締めくくります。
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