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2020年3月23日 (月)

「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識

  先般開催の「rooms 40」で、メディア環境学者の久保友香さんによる『「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』と題した講演会が行われました。
Img_69661  日本学術会議の公開シンポジウム(このブログ2016.7.27付け参照)の折り、久保さんの活動に興味を持った私。昨春、久保さんが出版された著書『「盛り」の誕生』も拝読しました。ここではその一部始終を簡単にまとめてみます。

412yqu7be9l_sx339_bo1204203200_  理系の研究者ながら日本文化に関心を持つようになり、日本文化を数字で解明しようと取り組んでいる久保さん。近年、とくに注目しているのが女の子の「盛り(大量に何かを付け加えること)」の文化だそう。カワイイギャルからヤマンバギャル、インスタ映え、最近では“消えそうな色コーデ”も「盛り」。この現象に共通するのは、盛っている女の子は皆そっくりに見えること。没個性と批判されたり、クリエイテイブとは正反対の扱いを受けることも多かったりするといいます。またもう一つ、「盛り」には実際の姿がどんなものかわからなくさせるところがあること。これについては自己肯定感が日本の女の子は他国に比べて低いのではないかと分析。ユニリーバの調査(2017年)によると、10代の少女たちの93%が自分の見た目に自信がないと答えているそうです。ちなみに他の国々は50%くらいとか。日本では自信のない女の子が圧倒的に多く、これが見た目を隠して盛ってしまうことと関連があるのではないか、とみられているようです。
 「盛り」を研究するようになった経緯については次のように語っています。きっかけとなったのはポップティーン2011年2月号の表紙写真と喜多川歌麿の浮世絵「寛政三美人」が似ていると思ったことから。「寛政三美人」は三人ともそっくりで、何かしら加工が施されているとみていて、源氏物語絵巻の女性も、大正時代の竹久夢二が描く女性もそっくり。こうしたことから日本には「盛る」文化が歴史に深く根付いているのではないかと推察できるといいます。
 この日本の美意識を解き明かそうと、思い立ったのが得意の数学を使って数値化する試み。最初に対象としたのが絵画の構図で、透視図法を基本とする西洋画に対し、あえて透視図法を採り入れない日本画のデフォルメ具合のデータ化にチャレンジしたといいます。
 次に「盛り」の歴史を大きく4期に分類して解説されました。目が盛られて大きくなっていくのが、2期と3期の間の1900年頃からだそう。というのも明治維新後、西洋から新しい化粧道具が入ってきて、それまで白い粉化粧で目を細くしていた女性たちは、アイシャドーやマスカラなどを使った黒化粧をするようになったのです。
 現代に目を移すと、デカ目の始まりはプリクラという「盛り」を自動化したマシーンの登場からで、プリクラはその後、日本の女の子のニーズに合わせて独自に変化していったといいます。
 その歴史を紐解くと、1995年、初登場したのがプリクラ「プリント倶楽部」で、画像処理はほとんどなかったそう。1998年に画像処理が入って来て、美肌・つや髪がもてはやされます。2003年頃から目の強調が始まり、目ぢから期となります。2007年には見るからにデカ目期となり、目はどんどん大きくなり、2011年にピークを迎えて、その後ナチュラル盛り期が到来。大きい彫りの深い目で、陰影でナチュラルにつくるようになったとか。
 さらに「女の子は何故盛るのか」です。これについてはたくさんの女の子たちにインタビューされ、得られた結論が「自分らしくあるため」だったとか。自分らしくとは、そっくりにつくる「盛り」とは真逆です。自分らしい「個性」という言葉にたどり着いたことが不可解に思えたといいます。しかし次第に、盛った目に一人一人の違う個性が見えてきたそうで、コミュニティの中でデカ目を守った上で表現する個性だったと気づかれたとか。そしてそれは日本文化の思想にある「守破離」という考え方に近いと指摘。型を守った上で個性を出す「盛り」は日本的と、改めて納得したと話されました。
 この間、アイメイクレコーダーや「盛り」専用の分析装置の開発に乗り出したそうですが、装置ができ上ったときにはデカ目ブームは終わっていたとか。盛りの計測ができきらない状態が続いているといいます。
 最後に「盛り」の語について、これは割合、最近の言葉であるそう。初めて使われたのは「ランズキ」2003年11月号のプリクラ特集の中でのこと。しかしその前からプリ帖では散見されていて、写真の自分を重要視したことから「盛る」が登場。プリクラがこの言葉を拡散していったといいます。その後2009年カメラ付き携帯で自撮りが盛んになると、つけまつげやカラコンが大流行。目は盛られて大きくなり、2014年頃にピークを迎えると、急速にデカ目ブームは終了。現在はアイメイクコミュニュケ―ションはスマホになり、インスタ映えするように、トータルでシーン全体を盛るようになっていると語られました。
 「盛り」は今もずっと続いています。人気の韓国風オルチャンメイクは「盛り」から来ていますし、日本ではもうやらなくなっている“原宿カワイイ”は世界中に広がっています。既にこの文中でも触れましたが、自分の容姿に自信がない女の子は日本では93%、世界でも50%いて、彼女たちの間ではつくられたビジュアルを評価し合う傾向が強まっているとか。「盛り」はこれからも拡大して、世界の女の子たちを取り込んでいくと思われる、と結論づけて講演を締め括りました。

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