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2020年1月28日 (火)

ミナ ペルホネン/皆川明 つづく展 100年つづく人生の為に

 「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展が今、東京都現代美術館で開催されています。これはデザイナー人生25年を迎えた皆川明さん自身の企画による展覧会です。ちなみにブランド名はフィンランド語で、ミナは「私」、ペルホネンは「蝶」の意味だそう。蝶のモチーフ、確かに多いですね。
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 先般、この皆川さんが写真家 在本彌生さんと対談するイベントに行き、本展の図録にも掲載されている在本さんの写真を見て、服の空気感をもろに感じ、すばらしいな---と思いました。皆川さんの服には「着る」というだけではなく、服とともに「居る」という感覚があります。写真にはそれが見事に表現されているようでした。

 展覧会は、大きく8つのエリアで構成されています。<実>タンバリン、<森>洋服の森、<風>生活とデザイン、<芽>テキスタイルのためのデザイン、<種>アイデアと試み、<根>挿画、<土>洋服と記憶、<空>インタビュー映像です。各エリアに自然界における植物の永遠の循環を表す言葉が冠されていて、タイトルがなぜ「つづく」になっているのかがわかる気がしました。皆川さんは流行に流されずに、人生とともに歩み続ける、“100年つづく人生の為に”、服をつくっているのです。

 <森>洋服の森では、たくさんの服が森のように並んでいてその迫力に圧倒されます。
Img_26761  よく見ると年代順ではなくて、25年前の服も最新の服も混ぜこぜです。でも昔の服が少しも古臭くないのです。いつまでも着続けて欲しいという思いが込められているからでしょう。
 
 <種>アイデアと試みは、本展の核を成すエリアです。
Img_27101g   皆川さんのものづくりの哲学やアイデアが、過去・現在・未来を通して、様々なオブジェや映像、言葉など多様な形式で紹介されています。

Img_27291jpg  ここではもうファッションだけにとどまりません。「創造的なデザインやアイデアを社会に提供する集合体」をミナが目指していることが、わかるようなエリアになっていました。
 
Img_27061jpg  上はデニムのダメージですが、単なる修復ではなく、使い手とのコミュニケーションによってデザインを加えたものになっています。小花の刺繍が可愛いです。
Img_27241  右は「かくれんぼ」と名づけられたドレスの布です。
 服としてパーソナルな個性を出せないかという意識から生まれたという布で、円のシルエットの内側を切ると中からいろいろな白い蝶が現れます。
 
Img_27321  右のドレスには「時々幸せ」という題が付いています。

 一つの服に、一つの四つ葉のクローバーを見つけることができるようになっているとか。

 四つ葉が見つかったら、ちょっとうれしい気持ちになります。

 そんな控えめな幸せを想う服といいます。
 


Img_27341  上は「シェルハウス」です。これは皆川さんが構想している「簡素で心地よい宿」のプロトタイプだそう。ユニークな渦巻型の構造で、フィボナッチ数列から着想を得たものとか。旅の宿として快適な場所とは何かを問いかけているように思えます。
 
 <土>洋服と記憶のエリアは、私がもっとも心に響いたエリアです。
 ここではミナの服を着ていた人のかけがえのない一着が披露されているのです。(写真撮影が禁止で残念でした。)
 「このワンピースを着るといつも我が子の入学式のときを思い出す」とか、「14年前にセレクトショップで出会ったスカート」など、一つひとつの服に思い出が綴られています。
 長く着てこなれた服が魅力的に思えたり、使いなじんだシワに惹かれてみたり---、そんな風に思う服って確かにあります。皆川さんはそんな想いを大切に、まさに「記憶をつなぐ服」をつくっているのです。
 
 形がシンプルなので、布地へのこだわりも徹底しています! 生地はすべて職人さんとともに一からつくり上げたという独創的なものです。
 服飾評論家の深井晃子氏は「皆川さんの服づくりは着物をつくるステップに似ています。その服には日本の伝統が引き継がれているようです」と語っています。私もそんな風に思いました。皆川さんのテキスタイルデザインに着物の工芸文化を感じるのです。
 
  たとえば本展の最初のエリア、<実>タンバリンで展示されていた刺繍布は、51btrr64xl_sx330_bo1204203200_ 一見何でもない刺繍に見えます。でもその一つの輪をつくっている刺繍はみんな微妙に違っているのです。自然は不規則です。その不規則な“自然の揺らぎ”を機械刺繍でつくっているのですね。製造しているのは神奈川レースだそう。驚きの匠の技です。

 右は、図録の表紙に使われているミナを代表するタンバリンの生地です。(実はこのエリアも一般は撮影禁止でした。)
 
 ともあれそんな細かな気配りが込められているからこそ、ミナの服は何気ない日常の大切さを気づかせてくれる「特別な日常の服」なのですね。
 「100年つづく人生の為に」なくてはならない服になりそう。
 
 展覧会は2月16日まで。まだの方、どうぞお急ぎください。

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