« JAPANTEX 2019 ⑵ 特別対談 わたなべひろこ×須藤玲子 | トップページ | IFFT/インテリアライフスタイルリビング ⑴ 注目の展示 »

2020年1月 8日 (水)

FB学会 特別講演 齊藤孝浩氏「ファッション・サバイバル」

 先般、ファッションビジネス(FB)学会2019全国大会で、昨年2月に上梓された「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞社刊)の著者、ディマンドワークス代表の齊藤孝浩氏が特別講演されました。Img_09702 テーマは「ファッション・サバイバル~これから10年のファッション消費の未来」です。講演は、ご著書「アパレル・サバイバル」に沿う内容で進められ、ITシフトにより大きく変わる「消費の形」とともに、進化するアパレル業界の最前線に迫る、という大変興味深いものでした。
 前半はデジタルショッピングを中心に、後半はサステナブルの考え方、とくにクローゼットに溢れている服やものの循環について語られました。
 冒頭挙げたのが日本の衣料品市場規模と販路別シェアの変化です。2008年から2017年までの10年間で、規模は7%シュリンクし、販路別では百貨店や量販店が減じた一方、専門店や通販は約4割増となり、プレイヤーが入れ替わったといいます。
 まず、ファッションの流通革新は10年周期で起こっているとし、これからの10年を意識して活動していかないといけないと注意喚起しました。1990年代後半にユニクロなどのベーシックSPAが登場し、2000年代後半にH&Mなどのファストファッションが旋風を巻き起こしました。その後2010年代後半にはショッピングのデジタル革新が起こり、ファストファッションには定着感があるといいます。2018年はポストファストファッションへ向けて節目の年だったと指摘します。
 次に日本は欧米から10年遅れで追随していると釘を刺します。欧米では既にオムニチャネルを卒業し2020年からサステナブルの時代に入っているのに、日本はまだオムニチャネル時代でECモール依存からも脱皮していないといいます。
 そこで変化のヒントをつかむべく、ポストファストファッション時代に向けて先行する欧米の事例を大きく4つ、紹介しました。
①都市型トレンドファッションディスカウンターの台頭。例えばH&Mの6掛けで販売する英国のプライマーク。また米国のオフプライスストア(ブランドの余剰在庫を低価格で販売する店舗)TJXカンパニーなど。TJXはもしかしたら世界一の売上高とか。日本でもワールドが子会社を通じてオフプライスストア「アンドブリッジ(&BRIDGE)」を展開しています。
②女性の内面の美にフォーカスするビューティ部門を導入したファッションストア。ビクトリアシークレットを始め、アンソロポロジーもスキンケアに乗り出しています。
③コト提案をする体験予約型ストア。教室やパーソナルカウンセリングに力を入れるルルレモンやセフォラなど。
④ショッピングのオンライン活用とオムニチャネルリテイリングOMOへの取り組み。アマゾンの自宅をフィッティングルームにする「アマゾン プライム ワードローブ」やゾゾのWEARなど。
 これら、とくに④のサービスがこれまでと違うのは、情報のパーソナライズを提供することで、時間短縮やコスト節約、それに加えて無駄足なし待ち時間なしでストレスを解消していることといいます。従来のオンラインショッピングは事前情報収集や店舗行き、商品探しといった消費者が抱えるショッピングの悩みを流通革新(イノベーション)により解決してきました。しかしこれからはアマゾンなどの例にみられるように、パーソナライズを通じて、顧客の発見の過程をさらに加速する(最適化)する時代になっているのです。
 その上で、オンラインショッピング時代に残された課題は、フィッティング、コーディネイト、商品受け取りであるとの見解を披露。デジタル時代の店舗革新の例として、英国ではクリック&コレクト、米国ではストアピックアップが進んでいること、また欧米店舗では、来店客のスマホを店頭でオンラインにつなぐことにより、ショッピングの体験価値を拡張する試みが進行中であるとレポートしました。情報収集~ショッピング~その後のフォローを途切れることなくシームレスにつなぐシームレスショッピングにより、とくにザラでは顧客に「失敗」させない最適解を提供しているといいます。
 またテクノロジーの進化に関する明言も興味深かったです。「これまでテクノロジーは企業の勝ち残りのためのものでした。しかしスマホ・4G以降、テクノロジーは消費者の豊かさのためのものになった」といいます。そして「次の革新は消費者のスマホの中で起こる。解決すべき消費者の課題は買うだけではなくその先にあるクローゼットにも広がっていく」。パラダイムシフトが「~1990年代のプロダクト・アウト」から「1990年代のマーケット・イン」へ、「2000年代はクローゼット・イン」へ変化している、との提言も目からウロコでした。
 さらに「革新の舞台は店頭から顧客のクローゼット最適化へ」お話は佳境に入っていきます。ここではスマホを舞台に繰り広げられる、主なワードローブ(服)の循環支援型ファッションテックをピックアップしました。
①コーディネイトをヒントに買い足しを手伝うシェアリングサービス
②ワードローブの着回し管理アプリ
③着なくなった服を下取りして新しい服を買うオンライン古着販売
④大好きな服と長く付き合うオンラインクリーニング完結型サービス
⑤オフシーズン服を預かり撮影、オンラインクローゼットにのせる都市型トランクルームサービス
⑥着なくなった服をもって買い物に行く、自己完結型衣料品循環プロジェクトなど
 ほんとうにいろいろな事例があっていずれも巨額の利益を出しているというのも驚きです。

41r20ccpbl  最後に「クリエイティブとは、新しいものを創り出すだけでなく、問題提起をし、解決策を提案すること」の言葉で締めくくりました。このことに気付いて実行できれば、未来は決して悲観するばかりではありません。逆に明るく楽しいショッピング環境が整うと、改めて思いました。

 今やサバイバルの分岐点、「アパレル・サバイバル」、ぜひ一読をお勧めします。

|

« JAPANTEX 2019 ⑵ 特別対談 わたなべひろこ×須藤玲子 | トップページ | IFFT/インテリアライフスタイルリビング ⑴ 注目の展示 »

ファッションビジネス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« JAPANTEX 2019 ⑵ 特別対談 わたなべひろこ×須藤玲子 | トップページ | IFFT/インテリアライフスタイルリビング ⑴ 注目の展示 »