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2019年7月 1日 (月)

Iris van Herpenとポストヒューマン ファッションデザイン

 先般、「イリス・ヴァン・ヘルペン(Iris van Herpen)とポストヒューマン ファッションデザイン」と題した講演会が、日本服飾文化振興財団にて開催されました。
 講師は『ファッションと哲学』(フィルムアート社)共編者でオランダのラドバウト大学教授のアネケ・スメリク氏です。来日を記念して、FashionStudies × 横浜国立大学のコラボレーションにより実現したもので、コメンテーターとして横浜国立大学都市イノベーション学府Y-GSCスタジオの室井尚教授と同学府博士課程後期在学中の福尾匠氏も参加されました。学生も多数来場し、熱気あふれる会場風景でした。

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 スメリク氏は、本講演の副題である「ファッションとテクノロジーの融合が作るイリスの美しいひだの表現を通して、ポストヒューマン ファッションを紐解く」に沿いながら、オランダ人ファッションデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペン(Iris van Herpen)のファッションデザインについて、ポストヒューマンの視点から語られました。
 冒頭、トレンド予測のフォーキャスターとして知られるリー・エデルコートの名言、「現代は新しい唯物論の時代に突入しています。形、色、機能に先立つものとして物質があるのです」を紹介。
 この新しい唯物論はポストヒューマンと密接に結びついているようです。ポストヒューマンとは、これまでのような人間中心ではない森羅万象すべてを含む世界観を指します。AIやロボットが登場し機械と人間の境界がどんどん曖昧化する世界の中、ファッションとして生み出されたのがイリスの3Dプリントで設計された複雑なひだ表現なのです。

 元来、自然を大切にしてきた日本人にとって、イリスのデザインは実はなじみやすいものだったのですね。
Img_27931  イリスの2016年秋冬コレクションのテーマは「Seijaku (静寂)」(右の写真)です。また最新の2019年秋冬物は「Shift Souls (魂にシフト)」で、魂という目に見えないものをモチーフとしていて、どこか日本の禅に通じるものを感じさせます。

 スメリク氏がここで決定的に重要なのがクラフトマンシップであると断言されていたのも印象的です。最先端テクノロジーが必須なのは言うまでもありませんが、最終的にモノづくりの90%は職人の手仕事でつくられるというのです。今やイリスのデザインも素材が進化し、非常にやわらかい弾力性のあるファイバーを用いることで、自然にインスパイアされた有機的なものをつくれるようになっているといいます。ファッションとは人体が身に着けるもの、まずはボディありきで考えるべきというのも、記憶に残る言葉です。

 ポストヒューマンのファッションデザインは、人間主体から脱却し、生きとし生けるものすべてを包含する“アッセンブラ―ジュ”の精神により構成されると結ばれ、講演をお終えました。

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