« 眞田塾展「Sense of color 色の触感」色の新たな知覚を提案 | トップページ | 「ゆかた 浴衣 YUKATA すずしさのデザイン、いまむかし」 »

2019年6月 7日 (金)

講演 パリコレ エシカル・サステナブルファッション考現

 ファッションの絶対的ミッションとなってきた「エシカル」や「サステナブル」。パリコレの常連も「サステナブルでなければファッションではない」という認識が当たり前になってきているといいます。 
 こうした中、去る5月18日、新宿の文化女子大学にて開催されたファッションビジネス学会特別講演会で、この問題を語るにふさわしい講師が招かれ、多くの関心を集めました。
Img_22071jpg   登壇したのはパリコレ取材で活躍されている朝日新聞社 東京本社報道局 文化くらし報道部 編集委員の高橋 牧子さんです。「パリコレクションにおけるクリエーションの傾向―エシカル・サスティナブルファッション考現―」と題して、ラグジュアリーブランドの世界で今、何が起こっているのか、語られました。
 
 お話の中で驚かされたのは、パリの気候があまりにも極端になっていることです。昨年は3月なのにマイナス12度にもなったそう。また7月には37度の高温で体調を悪くする人が続出したとも。自然環境問題はもう避けて通れないと、多くのデザイナーたちがメッセージを発しているようです。
 
 まず注目の若手から。真っ先に挙げたのがマリーン・セールです。2017年のLVMHプライズでグランプリを受賞し、廃棄された素材を利用したコレクションで頭角を現しているデザイナーです。 今秋冬コレクションは核戦争による地球滅亡をテーマに、核シェルターに見立てた洞窟を設け、そこからガスマスクをつけたモデルを登場させたといいます。
Img_22111  右は、この洞窟の中で光っていたアクセサリーで、インビテーションとともにプレゼントされたものだそう。
 このマリーン・セールの才能を引き出したのがバレンシアガのデムナ・ヴァザリアです。地球の危機を訴え、3Dプリンターで型をつくり、針と糸を極力使わない立体的な構造の、無駄のないミニマルなシルエットを提案しています。とはいえ、そこには伝統を大切にするオートクチュール・メゾンの、精緻な職人の手仕事との複合があることもポイントです。
 またエシカルでサステナブルといえば、その代表はステラ・マッカートニーでしょう。菜食主義者の両親に育てられたこともあり、社会活動を志し、ファッションデザイナーとなっても、ファーやレザー、シルク、ラムウールを拒否し、動物愛護活動にも熱心です。
 
 次に超巨大資本、昨年度の売上げ5兆8千億円のLVMHグループと1兆7千億円のケリンググループの取り組みについてです。両者はともに、サステナビリティの分野でも競争しているようです。つい先頃も火災に遭ったノートルダム寺院への支援で、ケリングが120億ユーロ出すなら、LVMHは250億ユーロ拠出すると言っています。
 LVMHは、2020年までに輸送にかかるCO2排出量をパッケージの縮小などにより、25%削減すると宣言。素材もサステナブルなものに変えていくとのこと。
 ケリングは動物福祉の改善が業界の急務と、新たな規定を公開。また18歳未満のモデルの起用を禁止すると表明しています。 
 もう一つ、リシュモングループでは、昨年時計の「ボーム」を誕生させています。これはストラップがコルクやコットン、レザーなど生分解性のある素材で製造されるなど、あらゆる面でエコを追求した新ブランドです。ショパールも、時計とジュエリーに「エシカルゴールド」の使用を決定したと発表しています。
 
 さらにファーやレザーについても、グッチやジバンシーなど多くのメゾンがリアルファーそっくりのエコファーへの切り替えを進行中。その方が表現の幅が広がるという利点もあるようで、本物のファー使いのブランドは減少しているといいます。
 シャネルは、元々ファーは使っていないそう。昨年末、他ブランドに先駆けて、ワニやパイソンなどのエキゾティックレザーの不使用宣言をしています。
 この他、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョンにも触れ、人種差別や年齢、性別、体型の枠を取り払うブランドのさらなる増加が顕著になってきたといいます。
 
 ファッション産業は、2番目に環境を汚染している業界とも言われています。これを打開するために求められるのが、まさに産業の変革で、その要になるのがグローバルに展開するブランドやビッグなコレクションブランドです。
 今回の講演でパリコレに参加しているクリエイティブなブランドが、いかにサステナブルに注力し始めているか、その事例を多数伺い、希望のようなものを感じました。但し危機を煽って、偽善に陥ることがないように---。この路線を前向きに進んでいってくれることを願っています。

|

« 眞田塾展「Sense of color 色の触感」色の新たな知覚を提案 | トップページ | 「ゆかた 浴衣 YUKATA すずしさのデザイン、いまむかし」 »

ファッションビジネス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 眞田塾展「Sense of color 色の触感」色の新たな知覚を提案 | トップページ | 「ゆかた 浴衣 YUKATA すずしさのデザイン、いまむかし」 »