タキヒョー 滝 富夫氏が語る「ファッションビジネスのコツ」
先月23日、ファッションビジネス学会東日本支部研究発表会が開催され、タキヒョー名誉顧問 滝 富夫氏が基調講演されました。滝 富夫氏と言えば、伊藤操著「マネージ―ダナ・キャランを創った男」として、レジェンド的存在の方です。この講演も伊藤操氏のご尽力で実現したとのことでした。 タイトルは「ファッションビジネスのコツ」です。とはいうものの滝 氏は冒頭「ファッションビジネスにコツはない」ときっぱり。「当たり前のことをやればいい」と断言し「自分はラッキーでタイミングもよかった」といいます。
内容はこれまでのご自身のお仕事を振り返るもので、その波乱に富んだ体験談を語られました。お年は何と1935年生まれの84歳とか。とてもそのようには見えないしっかりとした語り口が印象的でした。
タキヒョー社長に就任されたのは1962年で、その後1973年にニューヨークのデザイナーブランド、アン・クライン社を買収します。しかしその翌年にデザイナーのアン・クラインが急死して大混乱に陥ります。しかし当時アシスタントをしていたダナ・キャランを起用し、セカンドラインのアン・クラインⅡを成功に導くのです。そのときのエピソードも面白かったです。あるときダナに「何故私を選んだの?」に訊かれて、「あなたには色彩感覚や素材選択眼、デザイン力だけではない、フィット性がある」と告げたそう。それは滝氏が、客が服を購入する最後の決め手は“フィット”にあると見極められていたからなのですね。数字を示すことでデザイナーは納得、仕事に打ち込まれていったそうです。
その後1985年に「ダナ・キャラン・ニューヨーク」を設立、1988年にその頭文字をとった「DKNY」を立ち上げて爆発的なヒットを呼び込みます。
このヒットの裏には、科学的な根拠があったと強調。クリエイティブな人はとかくビジネスを卑下する傾向があるが、実は論理的に筋道を立ててビジネスをすることが重要で、デザイナーに算数の話をしてびっくりさせたこともあったとか。
またシーズン最後の見切りをどのようにして減らすか。見切りは「身を切ること」で、このようなことを平気でやってはいけない。そこは出口改革を行って解決していくしかないとも。
この他、クリエイティブ・マネージメントの重要性など、様々な興味深いお話しの後、これからの商品開発で大切なのはお客様が心のうちに抱いているウオンツ(欲しいモノ)を掘り起こしていくことといいます。たくさんの目に見えない「困った」を引っ張り出してきたからこそ、ここまで走り続けてこられたと感慨深げに仰って、講演を終えました。
進藤由佳著「回想・滝富夫の流儀~困ったねから始まる」をプレゼントしていただき、再度読み直して、その経営の手腕に改めて感銘したことでした。
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