JAPANTEX 2018 ⑵ マルナカのテキスタイル表現の魅力
先般のJAPANTEX 2018で行われたセミナーの一つに、「メーカーと語るテキスタイルの魅力~製品から織物組織を説明する、テキスタイル入門編~」というのがあり、参加しました。
登壇したのはマルナカの中里昌平社長です。日本テキスタイルデザイン協会理事補佐の宮嶋直子氏と対談形式で行われました。
マルナカは、埼玉県飯能市を拠点とする所沢産地に属する織物メーカーです。社長の中里氏は、デザイナーとイメージを共有しながら布を作り上げることでは先頭を行くことで知られている方で、私はこの度初めてお目にかかりました。御年80歳を越えてなお、現役でお元気に活動されていらっしゃいます。張りのあるお声で、同社のテキスタイル表現の魅力を語られました。
前段は織機の変遷についてのお話でした。
その始まりは豊田式半木製織機で 現在も豊田記念館で実演されているとのこと。その後シャトル(杼)を使ったシャトル織機やションヘル型毛織機が現れ、1950年代に入ると杼のない織機が登場し、高速運転の時代となります。ウォータージェットは水鉄砲のように緯糸を飛ばすので、水を吸わない合繊向け、エアジェットは空気噴射により緯糸を飛ばす織機です。今ではエアジェット機が主流となりましたが、複雑な織物は織りにくいといいます。
これらに対し、もう一つ、レピア織機というのがあります。これは2つのバンドあるいは棒が織物の中央でよこ糸を受け渡すつかみ式で、太糸でも細糸でも、またコンピュータ操作でリピートの巨大な絵心のあるものも楽に、もちろん型紙なしに柄織ができるそう。マルナカではこの織機、ドイツのドルニエ社製レピアを早期から導入し、ジャカードのデジタルシステム化を推進してきたといいます。今や全国一多い40台を保有し、これらの織機でどのようなタイプのものも織り出せるそうです。
後段からこのレピア織機により開発されたサンプル生地20点を一つずつ紹介していただきました。
異素材で糸の太さが違うもの、別ビーム送りのもの、縮絨、カット、ふくれ、多色表現など、様々です。
綿/麻/レーヨンのカットジャカード カットでファー調に
フクレ部分に何でも混入可能な特殊織 色数はほぼ無限
終盤、テキスタイル開発について、その考え方に触れ、技術者からデザイナーに求めることとして、「デザイナーはないものねだり。できてもできなくても、産地にイメージを伝え、アイデアをぶつけて欲しい。コラボを進める上で、今までにないものをつくることこそ大切」と強調。「これからの日本のテキスタイルづくりに重要なことは何か」の問いに、「デザイナーとつくり手がお互いの持ち分を出し合い分担してモノづくりをすること」と答えて、セミナーを締めくくりました。
デザイナーの要求に最大限に応えるモノづくりの姿勢、織物技術者としての在り方を、率直に述べられたのが印象的でした。
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