ギフト・ショー秋2018 喜多俊之氏が基調講演
先般、東京ビッグサイトで開催された第86回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2018 (9月4日~7日)で基調講演されたのがプロダクトデザイナーの喜多俊之氏です。「発展する暮らし産業に向けて」をテーマに、住環境に関する興味深い講演をされました。
冒頭、「衣・食・住」の語を「住・食・衣」に改める方がよいのではないかと提言されて「衣」に携わる身の私としては、愕然としました。でもおっしゃるように「住」はコミュニケ―ションの場として大切です。それなのに日本では欧米や中国などと比べ、「住」はおろそかにされているようです。「住」文化は未だに貧弱、と気づかされました。
まず最近行かれた中国の成都でのお話から。ごく普通のサラリーマン家庭を訪問して、インテリア産業がブームのようになっていることに驚かれたそうです。住居面積は平均120~130㎡で、そこにスマホとつながるAI家電が導入されて、モノのインターネット化が凄い勢いで進んでいるといいます。スマホのメーカーが家電業界に進出していることもあり、日本の家電はもう壊滅状態とか。4Kテレビも普及しているそうです。
次に喜多氏が在住されているイタリアです。ここは戦禍に遭ったドイツとともにリノベーションで立ち直った国で、残存したものを活かして使うリノベーション産業が発達しているといいます。200年前の建物も外観は古くても、内部はモダンに改修されていて、ITへの対応もバッチリとか。
また1983年にイタリアで執筆した「住まいは社交の場」と題した新聞記事も紹介。この記事によると自宅に客が来ることの多い生活スタイルもあって、きちんとした服が求められ、イタリアのファッション業界はそれに応えるかたちで発展してきたといいます。日本も10年も経てばそうなると思っていたのに、実際にはそうならなかったのですね。今では中国に先を越されてしまったようです。
この日本の暮らし産業を立て直そうと、喜多氏が今、取り組まれているのが日本各地の伝統工芸や地場産業の活性化です。同氏は、今回もまたこのギフトショー会場に人が集う空間をつくるリノベーション・プロジェクト「リノベッタ RENOVETTA🄬」の住まいを構築し、そのお披露目をされていました。
これは日本の平均的な間取り(約70㎡)の仕切りをはずした一室です。部屋はスタイリッシュな日本の木工家具や小田原の寄木細工のトレー、春慶塗のお重、有田焼のお皿、美濃和紙の照明器具などで演出されています。片隅には障子と畳のある小さな和室も設けられていて、日本の生活文化の豊かさを感じさせてくれます。
住む人のライフスタイルに合わせてリノベーションし、こだわりの家具や伝統工芸、インテリアグッズを採り入れることで、大切な人たちを家に招くことができるようになるという、見本の一つがここにありました。
日本は本来暮らし大国だったといいます。リノベーションで本来の住まいを取り戻そう、次の基幹産業はリノベーションと断言して、講演を締めくくりました。
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