「大日本市」工芸の未来を背負う気鋭のブランドが集結
この8月末の3日間、天王洲アイルの寺田倉庫ホールにて開催されていた「大日本市」に行って来ました。「夏のご縁市」の垂れ幕がお祭り気分を誘います。これは「日本の工芸を元気にする」というビジョンのもと、全国に51店舗の直営店を展開している中川政七商店が主催する合同展です。
この展示会が立ち上がったのは2011年で、私も何度か取材してきました。(このブログ2013.7.6付け、2014.6.20付け参照) それが今年の2月に初めて規模を拡大して行われたのですが、このとき私は行けませんでした。
2回目となる今回は、工芸の未来を背負う気鋭のブランド46社が集結。以前はなかった「食」のブランドも加わり、つくり手による実演も多くみられ、「衣・食・住」の暮らしのすべてにまつわる日本各地の工芸メーカーによる体験型イベントになっていました。
来場者は前回同様、約2,000人といい、盛況の様子で、私も楽しませていただきました。
様々なブランドが出展するなか、とくに繊維製品で注目したブランドをいくつかご紹介します。
◇Hirali (ヒラリ) 大阪府/堺市
大きな幾何学模様がモダンで目を惹きつけられました。これは竹野染工が手がけるブランドの一つ、Hiraliの手ぬぐいです。裏と表の色が異なる両面染色であることが他にない特徴で、同社が開発した独自のロール捺染技術によるものだそう。
一般に和晒の染色方法として注染という手法があります。しかし注染ですと表裏は必ず同色になります。この両面染色はロール捺染で、裏と表の色を変えて染めることができるのです。このような染め職人は同社でも希少な存在とか。実に貴重な技術なのですね。
手ぬぐいの他、ガーゼ生地を蚊帳生地で挟んで縫い合わせた薄手のふきん、肌触りの良いガーゼのストールなどを提案し、人気を集めていました。
◇THE (ザ)
THEとは、定冠詞そのもの、変わった名称ですね。これは「グッドデザインカンパニー」の水野 学氏、「中川政七商店」の中川 淳氏、「プロダクトデザインセンター」の鈴木啓太氏がタッグを組んで、「これこそは」と呼べる、これからの世の中のスタンダードをつくろうと、2012年に設立されたブランドです。
東京駅前の「キッテ」に直営店があって、私も行ったことがあります。どれも“普通”の顔をしていて、それが「いいな」と思いました。昨今は差別化され過ぎて、「これは」というものがなかなか見つかりません。そういう意味でまたとないブランドといえるでしょう。
上は、同ブランドで一番人気という醤油差しです。あの有名な醤油メーカーの醤油差しを基に改良を加えたものといいます。決して液だれしないのがご自慢とか。
少し小さめでクリスタルの透明感が美しいです。
◇大槌刺し子 岩手県/上閉伊郡
東日本大震災から生まれた刺し子ブランドです。
大槌町はあの震災で大きな被害があった町です。この地方には「南部菱刺し」という刺し子の伝統があるのですね。刺し子というと「津軽こぎん刺し」が有名で、「菱刺し」はあまり認知されていないようです。
とはいえ地元では、女性たちが継承活動に取り組まれていて、かつては400種類もの菱刺し模様があったとか。
絣や藍染の布地に草木染の糸で、大槌町の女性たちが心を込めて刺した“大槌刺し子”は、世界に一つだけの一点もの。一針一針に女性たちの思いが込められているようでした。
◇会津木綿 青㐂製織所 福島県/会津坂下町
会津木綿は、現在の福島県西部に伝わる伝統工芸品です。紺地に白い縞模様の他、赤や緑など様々な色の縞があり、汗をよく吸って丈夫で、縮みにくいのが特徴とか。
その特徴を活かしたブランド「IIE Lab(イ―ラボ)」で、ストールやエプロンなどの製品をアピールしていました。
◇白田のカシミヤ 宮城県/加美郡
熟練の職人が手動の編み機を使って、丁寧に編んでいたのが印象的です。カシミヤを手で編むと、とても柔らかく優しい肌触りが出せるそうです。
ブランド設立から早くも7年目。希少な手編み職人の技、受け継いでいって欲しいですね。
◇orit. (オリット) 兵庫県/加東市
歴史ある播州織の阿江ハンカチーフが2012年に立ち上げたブランドです。orit.(オリット)とは「織人」の意味だそう。織物の中でも高度な技術を必要とするハンカチーフ製造で培った技術力を活かし、コットンストールやミニチーフ、コットンマフラーなどを提案していました。
旧式の力織機で織られた布地は、ほんとうにしなやかで繊細、その洗練された美しい風合いに感動させられました。
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