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2018年6月22日 (金)

FB学会東日本支部特別講演「シャネルの挑戦と近未来像」

 ファッションビジネス(FB)学会では前週に続き、東日本支部でも杉野学園ホールにて特別講演会を行いました。登壇したのはシャネル代表取締役 リシャール コラス氏です。
   学園の学生も揃って参加し、熱のこもった会場風景となりました。Img_07661コラス氏は、シャネル社に入社して35年、来日して25年になられるそうです。「グローバルファッションビジネス・シャネルの挑戦と近未来像(Vision)の戦略について」をテーマに、流暢な日本語でユーモアを交えて語られました。

 講演は究極のラグジュアリーハウスを創設したココ・シャネルの人物像から始まりました。シャネルは幼い頃、父親により修道院に預けられ、父親はそのまま蒸発してしまいます。修道院育ちのシャネルにとって、そのストイックな建物や白と黒、ベージュといった色は印象的なものだったに違いないと、コラス氏はいいます。それが後にシャネルのアイコンとなるリトルブラックドレスや、シャネルNo 5の香水瓶に見るシンプルなデザインにつながっていったのですね。

 またシャネル社では同社を支える高度な技術を持つ工房を、敬意を表してパラフェクション(paraffection)カンパニーと呼んでいるそうです。フェザークラフトのルマリエ(Lemarié)や刺繍のルサージュ(Lesage)などの仕事場を映像で紹介、さらにバッグ一つ作るのにも18時間、製造技術の修得に少なくとも3年を要するとも。伝統ある職人技が大切にされている様子がわかりました。「過去を生かしてより良い未来を作るのだ」(ゲーテの言葉)は、まさに同社の哲学といいます。 

 次にココ・シャネルの創作物が常に機能という目的を持っていたことを解説されました。
 一つはショルダーバッグです。当時は女性用のバッグといえば手提げのハンドバッグかクラッチしかありませんでした。そこで彼女は鎖のチェーンを付けてショルダー掛けにし、両手が使えるようにしたのです。また軽くするために薄い子羊革を選んで、キルティングを施し強度を高めると共に傷を目立ちづらくもしています。
 もう一つはリトルブラックドレスです。この黒いドレスはその頃「フォード・ドレス」と呼ばれていたそうです。フォードはアメリカの自動車メーカーで、大ヒットしたフォ―ドモデルTが黒一色だったからだそう。黒といえば喪服の時代に、シャネルはあえて男性の下着用だった黒のジャージを使って、歩きやすい膝丈のドレスをデザインし、新時代をリードしたのですね。
 この他、スポーツウェアからシューズ、ジュエリー、時計、化粧品と、機能を重視したクリエーションは枚挙にいとまがありません。初めて日焼け止めクリームを商品化し、リップスティックを考案したのもココ・シャネルだったといいます。

 さらにシャネルの銀座ビルについても興味深いお話しがありました。設計を担当したのは著名なアメリカ人建築家のピーター・マリノ氏です。外壁を四角いモザイク形状にし、LEDイリュミネーションによりシャネルツィードの模様を演出しています。動きのある表現は確かに見ていて飽きません。またココ・シャネルがアートのピグマリオン(アーティストを育てる人)でもあったことから、ネクサスホールというギャラリーを設け、展覧会を無償で開催したり、コンサートを催したり。10階のアラン・デュカスとのコラボレストランは、名称も彼女に因んで「ベージュ」にしたといいます。

 最後に驚かされたのが、このビルの建設に携わった2,500人もの職人の名前を刻んだ大理石の定礎板が、正面に設置されているという話題でした。コラス氏は、職人への感謝の気持ちを表現したかったといいます。銀ブラで通りかかった元職人が「これは私がつくった」と言ってくれたらうれしい---と。

 まさにシャネルのスピリットを体現されていると、感銘させられるエピソードが続々。心に残るすてきな講演会でした。

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