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2018年2月 8日 (木)

BFGU“ファッションとAI”―人間性とデジタルの共生

 第10回目を迎えたBFGU(文化ファッション大学院大学)ファッションウィークで、1月30日、シンポジウムが開催されました。テーマは「“ファッションとAI(人工知能)”―人間性とデジタルの共生」です。
Img_56281jpg  パネリストは、日本アイ・ビー・エム シニアマネージングコンサルタント GBS 事業本部 コグニティブ推進室の岡田明氏、YUIMA NAKAZATOブランドを手がけるデザイナーでアーティストの中里唯馬氏、文化ファッション大学院大学 ファッションクリエイション専攻 教授の吉田康成氏で、モデレーターとして日本放送協会 情報システム局 副部長小川徹氏が参加しました。

 口火を切ったのは、ファッションをライフワークとしているという小川氏です。最近のテクノロジーの変化に着目し、これまではワーキング・ウイズ・マシーンだったのが、これからはメイキング・ウイズ・マシーンとなり、ファッションの世界に一気にAIが入ってくるといいます。AIと人間がコラボしてアートを創る時代が来ているとし、とくに「AIとクリエイティブ」に絞って語り合いたいと提案しました。

 最新のテクノロジーとクラフトマンシップの融合で注目のデザイナー、中里氏は、終了したばかりの今春夏パリ・オートクチュールコレクションの新作について、次のように語りました。
 それは縫製がほとんどされていない、パズルのような組み立て式の服で、小さいパーツを組み合わせ、つなぎ合わせて仕立てられています。縫製しないメリットは、瞬時に組み換えが利く、サイズや形の変更はパーツの交換で可能、キモノのように一部調整するだけで代々着用できることなど。パーツは一つひとつ形が異なっていて、着る人独自の番号がふってあり、もしも壊れたらその部分だけ取り替えて修理できるそう。
 今シーズンは「宇宙」がテーマで、宇宙空間で長く着続けられる一着をJAXAとコラボレーションしてつくったといいます。首都高で使われなくなった横断幕をカットするなど、リサイクル素材も使用したとか。
 また服づくりの工程がすべて詰まっている移動式テーブルを発明。この机一つあればパターン作成・裁断などの作業が、AIの機能により自動的に最適化される仕組みで、データ入力などカスタマイズの時短につながるそうです。
 オートクチュールの民主化に向けて、いよいよ動き出したといった感じですね。

 岡田氏は、AIの進化について、IBMのAIワトソンとトミー・フィルフィガーとのコラボなどから、ある程度のクリエイティビティのパターン化はできるようになってきたといいます。しかしデザイナーの心中、思いまではコピーできないとも。
 提示はできても、決めるのはやはり人間といいます。

 吉田氏は、教育者としての立場から、AIの役割は、学生の創造力を引き出す手助けをするカウンセラー、といいます。AIと対話することで、先入観が壊れ、思いがけない気づきが与えられる、そこから新しいアイディアが生まれることを期待しているなどと語りました。

 これを受けて中里氏は、AIが出す最適解が果たして正解なのか、必ずしもそうとは限らないのではないか、といいます。確かに非合理的なものの方がよいということもあります。最適解を見つけるためにAIを利用してもよいとは思うけれど、デザイナーはその先をつくっていかないといけない。だからAIは現状、デザイナーのクリエーションのサポート役にはなれない、と。
 とはいえ、最後にAIの使い方について、次のように話したことが印象的でした。
 ―オートクチュールは客との対話が大事です。たくさんの人とコミュニケーションして、その人に合う一点ものを届けたいと思っているのに、それができない。だからデザイナーの代わりにAIがより多くの顧客とコミュニケーションしてくれるようになるといいと思うのです。―

 ファッションという人間の感性が問われる分野で、AIがどれだけ関われるのか、その可能性を探る、大変興味深いシンポジウムでした。

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