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2018年1月18日 (木)

インテリアライフスタイルリビング⑶ クロスオーバーとは

 先般のIFFTインテリアライフスタイルリビングの特別企画で、「新たなデザインの潮流/ 国際ホテルコンペSLEEPとクロスオーバーデザイン」と題したセミナーが行われました。クロスオーバーとは異質なものを融合することです。ファッションデザインでは以前からこのトレンドが続いています。インテリアデザインではどういうものを指していうのでしょう。興味を惹かれました。
Cimg09021_2  登壇したのは三井デザインテックのデザインマネジメント部部長 見月 伸一 氏です。ホテルデザインと新たな価値を生む空間デザインの潮流「クロスオーバーデザイン」について次のように語られました。

 まずホテルデザインの話題からです。三井デザインテックは、2016年11月にロンドンで開催されたホテルデザインのイベント「SLEEP」展のコンペに参加したそうです。講演は、このコンペで審査員特別賞を受賞したことからスタートしました。
 「SLEEP」展は日本ではあまり知られていません。しかし欧州ではかなり有名なイベントで、錚々たるラグジュアリーなホテルチェーンの経営者やデザイナーたちが集まるといいます。  
 ここではホテルの客室デザインに関するコンペが毎年開かれていて、多数の応募作品の中から5組を選出。同社はこの年初めて、その内の一つに選ばれたそうです。審査の結果、2位となり、同時に審査員特別賞も受賞したといいます。

1  写真左は、その客室です。
 伝統的価値観を重んじる人々、とくに欧州貴族のようなエスタブリッシュメントな地位にある人は、旅に何を求めているのか。それを大前提に、静寂でスピリチュアルな空間を追求したものだそう。無駄を徹底的に省き、静けさの漂う別世界をイメージし、「和」の精神を採り入れた作品に仕上げたといいます。

 ちなみに優勝したのは、ゲンスラー社のデジタル・アヴァンギャルドな客室でした。

 見月氏はこのコンペで、「和」への共感を強く感じ、ラグジュアリー空間への考え方が変化していることに気づいたといいます。いわゆる西洋的ラグジュアリーに懐疑が生まれているのではないか、というのです。いかにも金のかかったリッチな感覚は終焉を迎え、ラグジュアリーは精神的なものへ向かっている、と感想を述べられていたのが印象的でした。

 次に「クロスオーバーデザイン」です。昨今のインターネットの普及で空間を取り巻く環境が激変するなか、新たな価値を生む空間デザインの潮流は、コトとコトのクロスオーバーだといいます。それは既に始まっていて、たとえば一つには、あらゆる空間がオフィスになること。カフェや車内も仕事場になりつつあります。二つ目はシェアリングサービスの進展で、エアビーアンドビーのように個人の住宅もホテルになってくる。三つ目はEコマースの台頭で、店舗は物販から体験のための空間になる、というように。これまでの空間の役割は変容し、シームレスになるといいます。「ホテル×キャンプ場」のグランピングや、「カフェ×献血室」で若者に心地よく社会貢献してもらえる場づくり、「移動時間×アート」では新幹線で移動しながら現代アートを楽しむ「現美新幹線」の登場など。
 また時代を超越したコトとコトの結びつきも「クロスオーバーデザイン」の重要要素といいます。これは一昔前にあった生活体験が今の感性やニーズに適応する形で蘇っている現象で、たとえばアナログ盤が再評価されたり、ポラロイドカメラが戻ってきたり。そしてこうした動きをけん引しているのは、ミレニアル世代の存在と指摘します。彼らはアナログ的情緒のある体験を求めているといいます。
 階段というと、つい避けてしまいがちですが、新しいオフィス空間では、たとえば“イケア”の階段会議場のように、階段は交流の場になっているそうです。階段は移動手段であると同時に、健康志向のためのものであり、またコミュニュケ―ションの場でもあるのです。さらにかつてのアナログ要素のポテンシャルが再注目されている例として、古き良き最高級旅館のおもてなしが関心の的となっている“星のや東京”、散髪にカルチャーを持ち込んだ床屋さん、職人の靴磨き店----なども。
 モノよりもコトの時代といわれる今、人々の共感を得るのはアナログ的プロセスのヒューマンな体験価値であるようです。コトや時代を思い、要素をクロスオーバーさせる新潮流、これまでのヒューマンな体験が新しい価値を生み出す空間体験の時代が来ていると語って締めくくられました。なるほど、と思うセミナーでした。

 

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