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2018年1月28日 (日)

軍服の歴史 「紳士服のルーツは軍服だった」

 「紳士服のルーツは軍服だった」と語るのは軍装史の研究家、辻元よしふみ氏です。今のビジネススーツはルイ14世時代の軍服に由来していて、たとえばテーラーカラーは、当時の上着の立ち襟を折り返したもの、ネクタイはクロアチア傭兵のスカーフから来ているなど興味深い蘊蓄もたくさんお持ちです。

 この辻元氏と、夫人で画家・イラストレーターの辻元玲子氏による講演会が、「軍服 その歴史とイラストレーション」をテーマに、昨秋、服飾文化学会研究例会で開催されました。
Img_42851 お二人は「図説 軍服の歴史5000年」の著者でもあります。

 まずはユニフォーモロジー (Uniformology) =軍装史学/制服学についてです。外国には膨大な資料があり研究も盛んに行われているそうです。翻って日本では軍事アレルギーが強すぎるのか、必要以上に研究されていなくて、このままでは70年前の旧陸海軍の軍装はおろか、戦後の自衛隊の服制も忘れ去られる危険があると警告を発します。
 辻元氏は1年前に起こったアイドルグループ「欅坂46」の衣装騒動に触れ、軍服を無自覚に採り入れると物議をかもすことがあるともいいます。この騒動はアイドルたちの帽子の帽章がワシの意匠で、これがナチスそっくりと批判されたことから起こったのです。
 軍服はファッションデザインの有力なネタ元です。多くのデザイナーたちがコレクションの一部にかつての軍服の意匠を盛り込んでいます。しかしどこまでなら真似してもよいか、あるいは危険かといった判断は、日頃から勉強していないと難しいといいます。軍装はそのルーツを知った上で、使うべきものなのですね。

 次に軍服の歴史を解説されました。
 軍服は今から5000年前、古代シュメールで、すでに存在していたといいます。その変遷を辻元玲子氏の写実的な復元画とともに、わかりやすくお話しされました。
 中でも興味深かったのは、やはり近代的な軍服が出現する17世紀前半頃からです。徴兵制が始まり、国家の常備軍が整備されるようになり、軍人の階級制度も整って、軍服が普及していきます。銃器も発達し、重い甲冑が廃れていったといいます。17世紀後半になると三角帽にペルシア風ジュストコルとベストが登場し、華やかになっていきます。それが最も華美になったのは18世紀後半から19世紀初め頃だそう。とくにナポレオン時代には二角帽に騎兵用肋骨服が大流行します。派手な国家色も注目で、イングランドでは赤、プロイセンでは、プロシャンブルーなど、軍服は統一色で彩られるようになります。ところが19世紀後半以降、火器の能力向上で、遠くから狙撃される危険性が増し、目立たないカーキ色が浮上します。カーキ色は第一次世界大戦ではごく普通の色となり、第二次世界大戦で迷彩色が現れ、現在に至っているのです。
 海軍も調べるとおもしろいです。ネイビーは紺色の異称ですが、これは1748年に英国海軍が紺色を導入したからだそう。ブレザーに金ボタン、Pコート、セーラー服も海軍が原点ですし、Tシャツもそうですね。
 この他、塹壕で生まれたトレンチコート、空軍パイロットが着用したフライトジャケットなど、私たちが普段、身に着けている服のスタイルは、驚くほど軍隊から来ていることがわかります。

 戦争という極限状況を背景に生まれたサバイバル服、軍服。服飾史研究の重要な分野であることを強く印象付けられた講演会でした。

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