JAPANTEX 2017 ⑵ 「和」の伝統工芸品の可能性
先般のJAPANTEX 2017のテーマは、「日本のおもてなし、ひとを想うデザイン美学」でした。
これを受けて具現化されたのが“「和」の素材、「和」のインテリアたち”のコーナーで、今回の見どころの一つになっていました。展示されたのは伝統的な色・柄・デザインをモチーフにしたカーテンや壁紙、カーペット、畳や襖、経師や建具などです。時代を経て磨かれてきた「和」の商材に再び注目が集っているようです。
関連イベントとして、「和」の伝統工芸をテーマにしたセミナーも行われました。
講師は、英国でインテリアデザイナーとして活躍されているNSDA澤山塾代表の澤山乃莉子さんです。
澤山さんは英国インテリアデザイン協会 (BIID) メンバーで、日本の伝統工芸品を欧州マーケットに普及するための「Buy J Crafts Campaign」活動を継続的に行っているといいます。
講演では「世界的視野から見た、優れた伝統工芸品のインテリア商材としての可能性」と題して、最近起こっている「和」のグローバル化について例を上げてわかりやすく語られました。
まずはヨーロッパの装飾芸術史からです。とくに19世紀半ば、ジャポニズムがヨーロッパを席巻しました。英国においては1868年のロンドン万博日本館でレベルの高い工芸品が展示されたことをきっかけにブームとなります。その頃日本趣味を先導する存在だったのは、ロンドンのリバティ社で、同社が開発したリバティプリントは日本の小紋柄に因んでいるとか。スコットランドのチャールズ・レニー・マッキントッシュもジャポニズムの一大ムーブメントに加担した建築家で、その影響はウィーンにまで及んだといいます。フランクロイドライトの建築にも桂離宮そっくりの作品が見られたりします。またティファニーが当時トップメーカーの座に躍進することができたのは、日本の高度な工芸技術を得たからだったのですね。
次に話は現代に移ります。日本の美意識は今や、様々な場面で再発見されているといいます。
澤山さんは日本美に大きく二つの世界があると分析します。一つは「雅(みやび)」な世界、もう一つは「侘び寂び」の世界です。「雅」は絢爛豪華な着物や、ケンゾーのファッションに見られるような華やかなデザイン、「侘び寂び」は逆に禅の世界を連想させるミニマリズムであるといいます。装飾性を排した独自の建築的アプローチで知られる建築家ジョン・ポーソンは、まさに侘び寂びを表現しているといいます。2017年のパリのメゾン・エ・オブジェでも、「サイレンス」をテーマに侘び寂びの幽玄な世界が打ち出されたことは記憶に新しいところですね。
昨今、デザイナーたちは、この二つの世界を結びつけて、新境地を開拓しているともいいます。たとえば有田焼の美、また2016年ミラノサローネで提案されたモロソ(MOROSO)のスシコレクション(SUSHI COLLECTION)などもそうといいます。
歴史の長い日本文化は「雅(みやび)」から「侘び寂び」まで、奥が深い。ロンドンでは今、様々なイースト・ミーツ・ウエストの催しが好評といいます。澤山さんはツァーを組むなど、「和」のグローバル化に積極的に取り組まれている様子です。これはライフワークであるとも。日本のインテリアデザイン業界をもっと元気にしたい、と意気込まれていたのが印象的でした。
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