講演会デンマーク「ヒュゲを愛する暮らしのかたち」
このブログ2017.11.29付けで掲載した「デンマーク・デザイン展」の関連イベントとして、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催された講演会「ヒュゲを愛する暮らしのかたち」に行ってきました。講師はジャーナリストの萩原健太郎氏です。
その興味深い講演をざっとまとめてみましょう。
まず萩原氏が13年前に初めてデンマークを訪れたときのことから。空港の美しさに打たれた後、SASホテルのロビーで、憧れのアーネ・ヤコプスン(アルネ・ヤコブセン)のスワンチェアとエッグチェアがさりげなく置かれているのを見て、感動したといいます。
右写真は現在開催中の「デンマーク・デザイン展」のもので、SASホテルを背景にしたスワンチェアとエッグチェアです。
もう一つ、ヤコプスンがデザインしたアント(ありんこ)チェアについても語られました。人間の体の形に合わせてカットしていったら、蟻のような形になってしまったそうなのです。これは工業生産の原点となった椅子です。デンマークの家具といえば、職人の手作りのイメージがありますが、何でも手仕事である必要はないと考えられているそうで、機械も使用し、仕上げの部分のみ職人の手仕事というのが多いといいます。
このヤコプスンやコーオ・クリント、ウェグナー、フィン・ユール、またシドニーのオペラハウスの設計で有名なヨーン・ウッソンもデンマーク出身と紹介し、彼らが設計した多くの優品をビジュアルとともに解説していただきました。いずれもシンプルで美しく、機能的です。技術力に支えられたクオリティの高さは、デンマーク・デザインの大きな特徴をなしているようです。
街では自転車が目立ち、何と自転車通勤する人は5割にも達するそうです。クリスチャニア・バイクと呼ばれるちょっと変わったカーゴ付き3輪自転車も名物だそう。コペンハーゲン市からある程度の自治を認められている「クリスチャニア」と呼ばれるフリータウンのお話も飛び出し、そこはかつてのヒッピーの聖地だったと、懐かしく思い出しました。
次に語られたのが近代デザインの椅子に見る4大潮流についてのお話です。
一つは明式椅子です。コーオ・クリントはこれをヒントに人間工学を採り入れた椅子をリ・デザインし、その後1943年に巨匠ハンス・ウェグナーはチャイナチェアを生み出し、ラウンドチェア「ザ・チェア」を誕生させたといいます。現代のカール・ハンセンの機能的なYチェアのルーツはまさにこれだったのですね。
二つ目はウインザーチェアです。英国の木材加工の職人が制作したといわれる椅子です。ハンス・ウェグナーの代表作の一つ「ピーコックチェア」もここから来ているといいます。
三つ目はシェーカーチェアで、ウインザーチェアがアメリカに渡って、軽く機能的、すっきりとした直線のシンプルな形態に変化したものといいます。
四つ目はト―ネットの椅子です。産業革命後の19世紀半ば、ミヒャエル・ト―ネットが発明した曲木技術による曲木椅子ですね。アールヌーボー調のデザインで、現在も親しまれている、この椅子こそ量産を可能にしたといいます。
この椅子は分解して運搬できるのも特徴といい、消費者が組み立てるイケアの家具「フラットパック」はこれに倣ったものだそう。
最後に成形合板についても触れられ、この技術により椅子の背と座の一体化が可能になったことなども語っていただきました。
身近にありながら、知らなかったインテリアの世界を知り、大変勉強になった講演会でした。
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