北関東織物の旅 ⑸ 結城紬奥順「つむぎの館」と工房見学
北関東織物の旅で、ハイライトは結城紬の奥順「つむぎの館」訪問でした。
本場結城紬は日本の絹織物の原点を今に伝える布です。その製作工程は、世界に誇るべき日本の技として、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。また「糸つむぎ・絣くくり・地機織り」の三工程は日本の重要無形文化財に指定されています。
奥順は結城紬の企画とデザイン及び販売流通を請け負う製造問屋です。2006年に資料館・つむぎの館を敷地内にオープンし、結城紬の生産に携わってきた産地の資料を一堂に集めて保存し、その文化を伝えています。
到着すると奥順の若旦那、代表取締役専務の奥澤順之が迎えてくれ、すぐに工房の須藤商店へ連れて行ってくれました。ちなみに須藤商店の代表、須藤〓(あきら)氏は本場結城紬染織製作技術者で、2015年度文化庁長官から表彰されています。
工房では、本場結城紬の代表的な3つの工程をじっくり見学しました。
まず「糸つむぎ」です。
右の写真のように「つくし」という道具に真綿を巻き付けて、指先で糸を紡いでいきます。
本場結城紬の糸は生糸ではなく、このように真綿から直接紡ぎ出してつくるのです。
左は紡がれたばかりの手紡ぎ糸です。
それを経糸にも緯糸にも使用するのが、他の紬にない結城紬の特徴とか。
極々繊細でやさしげですね。
次に「絣くくり」です。
柄にする部分に染料が染み込まないよう綿糸でくくっていきます。
1反の幅で一番単純な亀甲模様でも160カ所以上縛るそうですから、何とも根気のいる作業です。
さらに「地機(じばた)織り」です。
地機という手織り機は、もっとも古くから使われている織機です。居坐機(いざり)機とも呼ばれてきたものですね。
タテ糸を腰でつり、必要な時にだけタテ糸に張力をかけて織っていきます。
気が遠くなるような作業の連続にため息が出ました。
奥順「つむぎの館」に戻り、本場結城紬の展示場に入りました。
奥澤専務による解説があり、一同耳を傾けました。
糸をつくる真綿について、いかに軽くてふんわりとしているか、宙に浮かせて見せてくれたのも印象的でした。
結城紬の反物にも二種類あるそうです。
すべてが昔ながらの手作業でつくられる本場結城紬には「結」のマークが入っているとのことです。
左が「結」のマークの本場結城紬です。
なお「紬」マークのものは、「いしげ結城紬」と呼ばれていて半手仕事・半機械によるものだそうです。こちらの方が少しだけお値段がお手頃なのですね。
それにしても本場結城紬が世界的に注目されている、その理由がつかめた気がしました。何しろ2000年も前から技術に変わりがないのです。我が国最古の絹織物として、その技術が脈々と受け継がれてきた、その事実がここにありました。
「変わらない」ことがどんなに大変なことか、奥澤専務がとくに強調されていたことです。この伝統的な技術の継承者を増やす支援がもっともっと必要なのに----、と思わざるを得ません。ちょっと複雑な気持ちで、「つむぎの館」を後にしました。
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