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2017年6月 2日 (金)

「生誕100年 長沢 節展」“セツ” 美学は“ホネ” の美

 この4月、「セツ・モードセミナー」が静かに幕を閉じました。戦後日本のファッション・イラストレーション界をけん引した伝説的美術学校です。校長は長沢 節氏で、川久保玲や山本耀司、花井幸子など、Image日本を代表する数多くの有力デザイナーやクリエイターを輩出しました。女優の樹木希林もいたのですね。卒業生は1万人以上とか。私の知り合いにも、この学校出身は多くいます。閉校と聞いてショックだったのではないでしょうか。
 その最後の展覧会「生誕100年 長沢 節展」が今、東京の弥生美術館で開催されています。今年は長沢 節氏が生誕して100年という節目の年でもあるのですね。

 惜しくも18年前、自転車事故で亡くなられたセツ先生、誕生日は5月12日だそうで、Img_77191ちょうどその頃行われたギャラリートークに参加しました。(右は最晩年の肖像写真)
 学芸員のお話の中で、とくに印象的だったのは、“セツ” 美学は“ホネ” の美、というくだりでした。セツ先生は細くて骨ばった人体が好きで、ガリガリのモデルを好んで描いたそうです。脚フェチだったことも知りました。

 本展ではこのセツ先生が1967 年にプロデュースした伝説のファッション・ショウ「モノ・セックス・モード・ショウ」を再現しています。でもこれはすぐに満席となってしまいました。私はショウを見ることはできなかったのですが、ショーケースにはそのときの作品が置かれていました。何とほぼ半裸のようなスタイルです。古代ローマの戦士を思わせるような前衛的なフォルムで、モノ・セックスというように、男性もミニスカートをはいて、女性的に装っています。セツ先生は、男性優位の社会で、男女平等を実現するためには、男性らしさを弱めればいい、という考え方の持ち主だったといいます。このショウは1970年にも行われ、モデルが銀座の街を闊歩したりもしたそうです。さぞかし物議をかもしたことでしょう。

 出品されたスタイル画は約300点あり、年代順に展示されています。どれも瑞々しくて、いつの時代にも廃れない美を感じさせます。とくに晩年のものは筆致が軽やか。一筆描きのように描かれた筆のデッサンなど、さすが名手!としかいいようがありません。

 そこに驚きのゲストがお二人、駆けつけていらっしゃいました。一人は渡部倫枝(のりえ)さんです。卒業生で、セツ先生のお気に入りモデルだったそう。ポーズもとってくださったりして、さすがかっこよかった!です。
 そしてもう一人が劇画家として世界的に有名なバロン吉本さんです。教室での先生とのやりとりからパリやバカンス先での思い出話まで、楽しいエピソードをたくさん語っていただきました。 

 お二人のお話で、先生の教え方が自由放任だったということも伺いました。教えるというよりは一緒にデッサンしながら学ばせるやり方だったといいます。自由な環境の中で基礎をきちんと見につける、そんな授業だったようです。まさに今の教育を先取りしていますね。

 装苑のシネマコラムを30年間も続けるなど映画好きだったセツ先生、スターではアンソニー・パーキンスの大ファンだったとか。レオナルド・ディカプリオはだんだん太ってきて、お気に入りでなくなったことなど、“骨体美”にこだわっていた様子も話題になりました。

 “人体の美しさは骨格にある”という、それまでの美の概念を打ち破った長沢 節氏。その全貌を知る展覧会です。開催は6月25日まで。

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