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2017年4月25日 (火)

WEFシンポジウム ⑴ 無印良品の“感じ良いくらし"

 先月末、ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF)主催のシンポジウム「デザイン・シンキング(Design Thinking)-これからのファッション・ビジネスの価値創造に不可欠なアプローチ―」が、都内ホールで開催されました。
 冒頭、WEF尾原蓉子会長は、「ファッション・ビジネスは今、大きな壁にぶつかっている。これを打破するために、ゼロベースで消費者の本音に密着したビジネスモデルが求められている。そのリーダーに基調講演をお願いした」と挨拶。
Img_69781  その演者として最初に登壇したのが、(株)良品計画の代表取締役会長、金井政明氏です。
 金井氏は、「無印良品のデザイン哲学“感じ良いくらし”~グローバルブランドを育てた生活美学~」をテーマに、そのビジョンを語りました。

 まずデザイン哲学は、1980年の創業時と変わっていないといいます。当時、堤清二社長は消費社会に疑問を持ち、田中一光氏とともに、ブランドや印などつけずに販売することをコンセプトにしました。トレンドに流されない自分らしく美しく暮らしたい人々に向けて、「役に立つ」を大戦略とし、人間らしい生活の回復に焦点を当てたのですね。 
 ここで例として挙げたのが、フォーク&スプーンとお箸の比較です。前者は誰がやっても同じ結果を出せる “道具の脱人間化”、後者は練習により道具が自分の体の一部になる“道具の人間化”で、道具も人間と同じ自然の中で生きた存在になっているといいます。日本人の生活美学の一端が見えてくるようです。
 またもう一例として「自己家畜化」の話をされました。豚を家畜化すると人間にとって有益な能力は伸びるが、本来の力は退化します。人間も同様で、現代社会にあまり必要でない能力は退化していく。そこで無印良品では、この消費社会の中で失ったものを取り戻そうと、簡素で簡潔、しかも丁寧で調和のとれた生活美学を提案しているといいます。
 次に“感じ良いくらし”についてです。この考え方は、2011年の東日本大震災をきっかけに生まれたそうです。この頃から利他主義的な精神がリスペクトされるようになり、抑制や我慢が、むしろ“感じ良い”ものと思われるようになってきたといいます。モノづくりのビジョンも、「これがいい」ではなく「これでいい」へ、つまり価値観が従来の個性の強いモノから、理性的満足感のあるモノへ移行するようになっていきます。そこで省資源、省アイテム、汎用性の精神で、例えばお箸に通じるようなモノをつくる、それが足つきマットレスなどのヒット商品につながっていったといいます。

 今や「MUJI」は世界的に評価が高まっています。海外店舗数も2020年には国内を上回る400以上に増やすといいます。その背景には、そうした“感じ良いくらし”のデザイン哲学に世界の人々が共感する価値観の変化があるからでしょう。
 “感じ良いくらし”の持つ深い意味に気づかされた、目からウロコのご講演でした。

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