企画展「モードとインテリアの20世紀展」
今、パナソニック 汐留ミュージアムで「モードとインテリアの20世紀展―ポワレからシャネル、サンローランまで―」が、11月23日まで開催されています。
先日、同企画展の担当学芸員、宮内真理子氏による「パナソニック汐留ミュージアムのファッション展と生活文化展」と題する講演会があり、企業ミュージアムならではの興味深いお話を伺いました。
本展は20世紀における西欧のモード史をインテリアと関連付けて俯瞰しています。服飾だけではなく、生活空間も交えた展示になっているところがユニークです。これにはパナソニック側からの強い要望があったといいます。
展示作品は130点。ほぼ全てが島根県立石見美術館の収蔵品で、宮内氏は以前から同美術館に強い思い入れを抱いていたそうです。実際、同館は、このブログ(2016.8.19付け)でも紹介しましたが、超といえる一級品の服飾コレクションを所蔵しています。
それら衣装を展示するインテリア空間には、相当にこだわられた様子です。椅子など実物の家具は置かず、背景として写真ではなくモノトーンのイラストを採用。照明も白熱灯の明かりに見せる最新LED演色効果のある器具を導入、作品保護のために最大照度も80ルクスに設定しているそうです。
20世紀、ファッションはめまぐるしく変化しました。その流れを4章仕立てで構成し、同時代の主要なインテリアと共に概観する宮内氏の試みは、大成功だったのではないでしょうか。
第1章は、1900-1919年代。アンピール様式とアールヌーボー様式の両輪で展開されたこの時代、モードを彩ったのは、ポール・ポワレやフォルチュニーらの衣装や、ポショワールと呼ばれるファッションプレートです。
第2章は、1929-1939年代。シャネルやヴィオネ、スキャパレリらの作品がズラリと陳列された広い空間です。ロシア・アヴァンギャルドの原画やソニア・ドローネーの作品など、ファッションとアートの関わりを示すコーナーも設けられています。アールデコ様式のインテリアから30年代に入るとモダニズムの影響がより色濃くなっていくのがわかります。
第3章は、1940-50年代。黒一色のランウェーで、来場者から「ここが一番好き」といわれているコーナーだそうです。ディオールやバレンシアガらの作品が並ぶ中、とくに人気は魚の絵柄のエルメスの水着とか。赤いジャンプスーツのスキーウェアにも注目です。
インテリアは、ミッドセンチュリースタイルで、アーウィン・ミラー邸をバックにチューリップチェアなどが紹介されています。
第4章は、1960年代。まず目に飛び込んでくるのがハナエ・モリの美しい着物風ドレスです。石見美術館といえば、森英恵の存在抜きには語れないと、この作品を象徴的に扱ったそうです。
当時を代表するクレージュやパコ・ラバンヌのアルミのメタリックドレス、それに近未来的な建築作品、さらにポストモダンの足音が聞こえるような作品も見られました。
来場者は圧倒的に女性とか。当初想定していた以上の来場があり、通常と異なり若年層が多いのも、今回の特徴といいます。グッズの売れ行きも好調で、図録やポストカードがよく売れているそうです。
ファッションとインテリアを立体的に見ることができる稀有な展覧会。ファッションを志す方にはとくにお勧めします。お見逃しのないように。
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