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2016年8月 6日 (土)

経済産業省からアパレル業界への提言

 先月中旬、「経済産業省からアパレル業界への提言」と題したセミナーが、繊研新聞社において開催されました。Img_74691
 Fashion Studies と繊研新聞社との共催による特別企画で、講師は、経済産業省製造産業局 生活製品課 課長補佐(総括担当)菅野将史氏です。 担当官として「アパレル・サプライチェーン研究会」に参加され、この6月17日に発表された報告書について解説されました。(なおこの報告書はWEBサイトで一般公開されています。)

 開口一番、日本のファッションビジネスは非常に厳しい環境に置かれているといいます。ファストファッションやラグジュアリーブランドの台頭で、このままでは最終製品のよいところをすべて海外勢力にとられてしまうと警告します。また日本の繊維産業は産業用途では非常に強いが、生活用途では脆弱と言い切り、省庁として生活用途に注力していく考えであることを表明しました。

 現状の課題として、一つはアパレルと生地・コンバーターとのつながりの希薄さを指摘。有力SPA型多店舗小売業のように、素材メーカーと強固なサプライチェーンを築き、流通コストを削減することが急務といいます。
 二つ目はアパレルの国際競争力のなさです。繊維製品の輸入浸透率は今や数量で96.4%にも上っています。とはいえ金額ベースでは73%で、日本製はそれでも23%あり健闘しているといいます。それは生地が競争力をもっているからです。織物の輸出額を見ると、日本はイタリア、ドイツに次いで第3位、とくに伝統的な素材に強い。翻って韓国は化繊しかないそうです。アパレルは国産の上質な素材にもっと目を向けて、と発奮を促しました。
 三つ目は半年に1回という展示会サイクルの見直しです。NYファッションウィークでのSee Now Buy Nowの動きや、ザラの2週間単位という生産流通体制など、世界の新しい流れを紹介しました。
 さらに日本人の得意分野としてカテゴリー特化型を挙げ、デニムやメンズシャツなどの成功事例をプレゼン。物理的制約がある方が燃えるのが日本人、と推測されていたのも印象的です。

 今後の方向性として、まず取り上げたのが生地輸出の問題点。何と真面目と思われている日本人が納期を守らないというのです。日本はメーカー直ではなく、商社を通す方式が多いので、そうしたことが多々起きるのかもしれません。早急に改善する必要がありそうです。
 次に商取引慣行の是正です。オムニチャネル化対応が求められる中で、国際的に一般的な買い取り方式か、アパレルの直販売などが望まれています。それなのに委託方式という、いまだ古い慣習が消え去っていない現実に、唖然とさせられます。
 最後にデジタル化に触れ、ビジネスプロトコルの標準化や電子タグRFID、人工知能など革新的なサービスの重要性を実例で提示。取引のグローバル化に対応する新たな仕組みの導入など、アナログの多いアパレルには問題山積です。
 とはいえファッションウィーク東京のスポンサーもIT企業になりました。業界の風向きも変化しているようです。世界に打って出るチャンスは広がりそうですね。

 今回の報告書では、経産省と危機意識を共有できたこと、それ自体が大きな成果だったのではないでしょうか。これをたたき台に、業界のさらなる発展を期待しています。

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